(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】創傷治療薬の製造におけるポリペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20240404BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240404BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61K38/10
A61P17/02
C07K7/08 ZNA
(21)【出願番号】P 2023504234
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021108508
(87)【国際公開番号】W WO2022022475
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202010726801.1
(32)【優先日】2020-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523022631
【氏名又は名称】武漢益承生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN YICHENG BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】R & D Building B1 Zones B, C And D, Wuhan National Biological Industry Base Project, No. 666, Gaoxin Avenue, East-Lake Development Zone Wuhan, Hubei 430000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】夏 献民
(72)【発明者】
【氏名】孫 項
(72)【発明者】
【氏名】李 朝興
(72)【発明者】
【氏名】高 潔
(72)【発明者】
【氏名】況 修麗
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107929121(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/10
A61P 17/02
A61P 43/00
C07K 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列SEQ ID No.1に示すポリペプチドの火傷を治療するための外用薬の製造における使用であって、
上記の火傷はII度火傷
であることを特徴とする火傷を治療するための外用薬の製造におけるポリペプチドの使用。
【請求項2】
前記外用薬中のポリペプチドの含有量は≧0.01%wtであることを特徴とする、請求項1に記載の火傷を治療するための外用薬の製造におけるポリペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、創傷治療薬の製造におけるポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷は、例えば機械、高温、寒さ、電流、放射線、酸、アルカリ、毒ガス、毒虫などの外部の要素による人体組織や器官の損傷である。よく見られる創傷は交通創傷、墜落による創傷、機械創傷、鋭利な器物による創傷、転倒創傷、火器創傷などである。
【0003】
火傷・熱傷は深さによって一般的にI度火傷、浅達性II度火傷、深達性II度火傷、III度火傷及びIV度火傷に分けられる。その中で、I度火傷は表皮の一部しか傷つかないが、発毛層は健在であるため、増殖再生能力が活発であり、3~5日以内に癒合し、瘢痕を残さないことが多い。浅達性II度熱傷は全表皮と一部の乳頭層を傷つけ、発毛層の部分が損傷したため、上皮の再生は残存する発毛層と皮膚付属器、例えば汗腺と毛包の上皮の増殖に依存する。深達性II度熱傷では、熱傷の深さは真皮乳頭層以下であるが、真皮と皮膚付属器の一部が残っており、癒合は皮膚付属器の上皮、特に毛包突起部内の表皮前駆細胞の増殖に依存している。III度火傷は、焼痂火傷とも呼ばれ、一般に全層皮膚の火傷を指し、表皮、真皮及び皮膚付属器はすべて毀損し、創面の修復は手術植皮や皮弁の修復に依存する。IV度火傷では、火傷の深さは筋肉、骨、さらには内臓器官にまで及び、創面の修復は手術植皮や皮弁の修復に依存し、厳重な場合は手足を切断する必要がある。
【0004】
現在、熱傷・火傷が深い場合の創面の治療によく採用されている組換えヒト上皮成長因子ゲル、GENE TIME(組換えヒト上皮成長因子外用溶液(I))、湿潤熱傷ペーストなどの薬物がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は創傷治療薬の製造におけるポリペプチドの使用を提供することを目的とする。本発明に係るポリペプチドは
既存の薬物であり、15アミノ酸からなるポリペプチドであり、その配列はSEQ ID NO.1に示され、具体的には以下の通りである。
【0006】
本発明は、火傷・熱傷薬の製造における上記ポリペプチドの使用、及び創傷薬の製造における上記ポリペプチドの使用を提供する。
【0007】
好ましくは、上記ポリペプチドは、火傷・熱傷薬や創傷薬を製造する際に、製造される薬物中に0.01wt%以上含有される。実験データによると、含有量が0.01wt%以上の場合に効果があり、含有量の増加に従って効果が向上し、0.1wt%の含有量では効果は比較的に良く、この含有量の値を超えると、効果の差が弱まった。
【0008】
上記ポリペプチドは、熱傷の治療に対して、傷跡の増殖を抑制し、皮膚の損傷を修復することができる効果を示す。
【0009】
また、本発明は、細胞分化を促進する薬物の製造における上記ポリペプチドの使用も開示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリペプチドを含有する薬物は動物の火傷・熱傷モデル及び創傷モデルに対する治療効果が高く、毒性や副作用が少なく、開発の将来性が期待され、かつ火傷・熱傷治療に有効で、安全で低毒性であり、品質を制御できる外用薬である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】動物実験1における火傷・熱傷のモデリングに成功した後の陽性薬物群の治療前後の比較写真である。
【
図2】動物実験1における火傷・熱傷のモデリングに成功した後の軟膏群の治療前後の比較写真である。
【
図3】動物実験1における火傷・熱傷のモデリングに成功した後の陽性薬物群と陽性対照のHE病理画像である。
【
図4】動物実験1における火傷・熱傷のモデリングに成功した後の軟膏群と軟膏対照群のHE病理画像である。
【
図5】動物実験2における皮膚創傷のモデリングに成功した後の陽性薬物群の治療後の比較写真である。
【
図6】動物実験2における皮膚創傷のモデリングに成功した後の軟膏群の治療後の比較写真である。
【
図7】動物実験2における皮膚創傷のモデリングに成功した後の陽性薬物群と陽性対照のHE病理画像である。
【
図8】動物実験2における皮膚創傷のモデリングに成功した後のゲル群とゲル対照群のHE病理画像である。
【
図9】症例1における患者が本発明のポリペプチド薬物を使用する前の写真と使用後の写真を比較したものである。
【
図10】症例2における患者が本発明のポリペプチド薬物を使用する前の写真と使用後の写真を比較したものである。
【
図11】N15ポリペプチドで処理したHaCAT細胞の分化状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面及び特定の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例で使用される試薬又は製品は、由来が表示されていない限り、市販されており、本発明を限定するものではない。
【0013】
以下の実施例又は実験に係るポリペプチドは既存の薬物であり、その配列はSEQ ID NO.1に示される。
【0014】
実施例1:液体薬剤
ポリペプチドで製造された創傷治療薬であって、ポリペプチド原薬と生理食塩水とを含む(液体)製剤である。具体的な製造方法は以下のとおりである。ポリペプチド原薬を生理食塩水で0.1重量%溶解すればよい。
【0015】
実施例2:軟膏薬剤
ポリペプチドで製造された創傷治療薬であって、ポリペプチド原薬、グリセリン、ステアリン酸、エチルパラベン、ワセリン及び水等を含み、ポリペプチドの含有量は0.1wt%である軟膏剤形である。具体的には、製造する際に、グリセリン、ステアリン酸、エチルパラベン、及びワセリンを加熱して溶解し、均一に撹拌して油相を得た。ポリペプチド原薬を水で溶解した後、油相にゆっくりと加えて、同じ方向に添加しながら撹拌し、凝縮するまで撹拌すると得られた。
【0016】
実施例3:ゲル薬剤
ポリペプチドで製造された創傷治療薬であって、ポリペプチド原薬、水、ヒドロキシメタクリレートと架橋剤との共重合体を含み、ポリペプチドの含有量は0.1wt%であるゲル剤形である。具体的には、製造する際に、ヒドロキシメタクリレートと架橋剤との共重合体とポリペプチド原薬をそれぞれ水に加えて溶解し、2種類の溶液を別々の型にゆっくりと注入し、無菌環境下で、ヒドロキシメタクリレートと架橋剤との共重合体ヒドロゲルを薬物活性成分水溶液に入れて、水溶液がヒドロゲルに完全に吸収されると、生成物を得た。
【0017】
以上の実施例1~3は、本発明のポリペプチド薬物の製造方法及び具体的な剤形をさらに説明するために挙げた例であり、請求項に係る保護範囲の限定を構成するものではない。該薬物中のポリペプチドの含有量及び剤形は、実際の必要に応じて調整することができる。
【0018】
以下、実施例1~3で製造された薬剤の創傷や火傷・熱傷に対する治療機能を実験例により検証する。ラット火傷・熱傷モデル又はラット創傷モデルを構築し、ポリペプチド含有薬物の薬効作用を評価する。
【0019】
動物実験1
実験目的:本発明のポリペプチド含有薬物の熱傷に対する治療効果の検討
実験薬物:
実施例2におけるポリペプチド軟膏、市場で購入した組換えヒト表皮因子ゲル(酵母)、桂林華諾威遺伝子薬業有限公司製、国薬準字S20020111。
実験動物:SDラット、雌雄それぞれ半分、200g±10g。
モデリング計画:ラット背部実験を行う前日に10%硫化バリウムで脱毛し、熱傷前に腹腔注射麻酔を行い、恒温定圧熱傷作製装置を用いてモデリングし、熱傷を付けた直後に乳酸リンゲル溶液5mlを腹腔注射して抗ショックを施した。
モデリング成功の基準:熱傷の局所表皮が消失し、表皮、真皮及び皮下組織で血管拡張が認められ、皮下組織が浮腫し、真皮、皮下組織に急性慢性炎細胞浸潤が見られ、深達性II度熱傷であった。
動物群分け:合計8匹のSDラット
軟膏群(実施例2のポリペプチド軟膏)4匹:雌雄それぞれ半分、両側に熱傷を付けて、熱傷を付けた後、一方の側で投与し、他方の側を対照とした。
陽性薬物対照群(組換えヒト表皮因子ゲル)4匹:雌雄それぞれ半分、両側に熱傷を付けて、熱傷を付けた後、一方の側で投与し、他方の側を対照とした。
モデリング:
動物準備:ラットの後背部を剃毛した後に10%硫化ナトリウム溶液で脱毛し、24時間後に脱毛領域に損傷がないことを確認した。
致傷器具:恒温定圧熱傷作製装置。
熱傷作製装置のパラメータ:220vの交流電流を入れ、致傷温度を80℃に調整し、致傷圧力を熱傷作製棒の自重0.5kgとした。パーマヘッドの面積は2.5cm
2とした。熱傷作製時間はそれぞれ8sであった。
致傷部位:ラット後肢大腿骨の上端を中心点とし、各側にそれぞれ1つの火傷創面を左右対称に作成した。
致傷過程:まず、熱傷の温度、圧力及び時間を設定して、動物の体位と致傷の皮膚の平坦度を調整して、熱傷作製棒を皮膚の表面と垂直に接触させ、熱傷作製装置のカウントダウンタイマーは自動的に時間を計時し始め、計時が終わると、タイマーが鳴って、熱傷作製棒を皮膚の表面から迅速に離した。
投与方法:
軟膏群では、一方の側に熱傷創面を覆うように軟膏を14日間連続して1日2回塗布した。反対側は何もしない。
陽性薬物群:一方の側は薬物説明書に従って投与した。反対側は何もしない。
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、動物を殺し、病変部位をHE染色した。
観察指標:
1. 14日後の観察と癒合率。
癒合率=癒合面積/創傷初期面積
*100%
2.病理学的にHE染色を行い、40倍写真撮影を行った。
実験結果
1、写真を撮って観察した結果
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、種々の癒合状況を
図1~2に示すが、図から、ポリペプチドクリーム投与群は陽性薬物群より高いことが分かり、その結果、ポリペプチドクリームはラット全層の皮膚欠損創面の癒合を顕著に促進することが示唆された。
2、HE病理染色結果
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、動物を殺し、病変部位をHE染色した。具体的には、
図3~4を参照する。陽性薬物投与群では、視野中に局所表皮が欠損し、少量の壊死細胞破片が見られ、真皮層に大量の肉芽組織が見られ、肉芽組織内に大量の繊維細胞と繊維芽細胞が見られ、陽性薬物投与群は回復しており、大量の好酸性滲出物や壊死細胞破片が見られなかったが、対照群にはこれらのものがあり、薬物群の回復効果が良好であることを示した。軟膏投与群では、視野には大量の肉芽組織が見られたが、対照群では、大量の表皮壊死があった。以上のことから、本発明のポリペプチド含有薬物は、火傷・熱傷に対して、炎症部位の新生血管の発生を低下させ、表皮の新生を促進し、火傷・熱傷部位の回復を促進することができることが示された。
【0020】
動物実験2
実験目的:本発明のポリペプチド含有薬物の皮膚外傷に対する治療効果の検討
実験薬物:実施例2におけるポリペプチドゲル、市場で購入した組換えヒト表皮因子ゲル(酵母)、桂林華諾威遺伝子薬業有限公司製、国薬準字S20020111。
実験動物:SDラット、雌雄それぞれ半分、200g±10g。
モデリング計画:ラット背部実験を行う前日に10%硫化バリウムで脱毛し、熱傷前に腹腔注射麻酔を行い、消毒後、ラット背部の脊柱の両側に直径8mmの円形医療用穿孔器でラット背部から全層皮膚を筋膜まで切り取り、全層皮膚創傷動物モデルを構築し、別々のケージで飼育した。
動物群分け:合計8匹のSDラット
ゲル投与群(実施例3におけるポリペプチドゲル)4匹:雌雄それぞれ半分、両側にモデルを作成し、一方の側で投与し、他方の側を対照とした。
陽性薬物対照群(組換えヒト表皮因子ゲル)4匹:雌雄それぞれ半分、両側にモデルを作成し、一方の側で投与し、他方の側を対照とした。
動物準備:ラットの後背部を剃毛した後に10%硫化ナトリウム溶液で脱毛し、24時間後に脱毛領域に損傷がないことを確認した。
致傷部位:ラット後肢大腿骨の上端を中心点とし、各側にそれぞれ1つの創面を左右対称に作成した。
投与方法:
ゲル群では、一方の側に傷面を覆うようにゲルを14日間連続して1日2回塗布した。反対側は何もしない。
陽性薬物群:一方の側は薬物説明書に従って投与した。反対側は何もしない。
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、動物を殺し、病変部位をHE染色した。
観察指標
1.14日後に癒合率を観察した。
癒合率=癒合面積/創傷初期面積
*100%
2.病理学的にHE染色を行い、40倍写真撮影を行った。
実験結果
1、写真を撮って観察した結果
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、各群のラットの創面はすべてかさぶたが剥がれ、そして異なる程度の新生上皮が出現し、具体的には
図5~6に示される。ソフトウェアを用いて各群の創面の面積を精確に計算し、ラットの創傷癒合率を統計し、創傷の癒合率で表すと、ポリペプチドゲル投与群は陽性薬物群より高く、結果により、ポリペプチドゲルはラットの全層皮膚欠損創面の癒合を明らかに促進することができることが示唆された。
2、HE病理染色結果
計画通りに薬を投与して14日間治療した後、動物を殺し、病変部位をHE染色した。具体的には、
図7~8に示される。損傷14日間後、ポリペプチドゲル群では、新生肉芽組織の表面はすでに厚く連続した上皮組織で覆われ、線維芽細胞は基本的に長紡錘状の線維細胞に変化し、炎症反応は基本的に消失したが、陽性薬物群では、創傷面のかさぶたが依然として見られ、上皮層は薄い。2群の対照群では、視野中に表皮が見られず、真皮外に大量の好酸性滲出物や壊死細胞破片が見られ、真皮層の毛包、皮脂腺構造が消失した。このことから、2群の薬物の投与群はいずれも対照群よりも良好であり、ポリペプチドゲル群は陽性薬物群よりも良好な回復を示した。
結論
上記の動物モデル実験では、ポリペプチド薬物を用いた場合、有意な治療効果を有し、ポリペプチドを用いた動物では、有意な影響は認められなかった。このことから、ポリペプチド含有薬物は動物の火傷・熱傷モデルと創傷モデルに対する治療効果が良く、毒性や副作用が小さく、良好な開発の将来性が期待でき、しかも火傷・熱傷治療に有効で、安全で低毒性であり、品質を制御できる新規薬物であることがわかった。
【0021】
本発明によるポリペプチド軟膏については、現在、ボランティアを募集して試用してもらったが、ポリペプチド軟膏の治療効果をさらに証明するために、参考のために症例の一部を提供する。
【0022】
症例1:宋某、男性、熱湯で熱傷を受けて5日経過した。周囲の皮膚をアルコールで消毒し、死んだ皮膚を切り取り、傷口を塩水で洗浄し、冷やして乾燥させ、さらに本発明のポリペプチド軟膏を塗布し、二層ガーゼで被覆した。その使用前と使用後の写真を
図9に示す。投与初日は昨日の午前より色が濃くなり、少し痛みがあって、少し黄色の滲出物が見られ、組織の修復や炎症と関係があると考えている。投与後2日目は色が薄くなり、分泌物がなく、投与後3日目に炎症がコントロールされ、傷口が修復され、痛みが明らかに緩和された。
【0023】
症例2:張某、女性。鉄鍋で熱傷を受けて2日経過、水ぶくれができて、自分で破って、痛みがある。アルコールで消毒した後、本発明のポリペプチド軟膏を塗布した。その使用前と使用後の写真を
図10に示す。投与初日は症例1と同様に発赤した。投与翌日、傷口は少し乾燥し、分泌物がなく、感染がなく、表皮は脱皮し、新しい組織ができた。投与4日目は傷口が乾燥し、色が薄くなり、新組織が成長した。投与5日目に傷口の色は薄くなり、乾燥し、組織の修復は速かった。投与7日目は傷口が癒合した。
【0024】
細胞分化実験
1.細胞蘇生
(1) HaCAT細胞(ヒト不死化表皮細胞、武漢大学細胞保存センターから購入、GDC106)を液体窒素から取り出し、速やかに37℃の水浴鍋に入れ、凍結保存管を軽く振って凍結保存液を溶解させた。
(2) 溶解後、細胞を5ml培地を含む遠心管に移し、遠心で細胞を収集し、室温、1000rmpで5min遠心し、上澄みを廃棄した。
(3)10%の牛胎児血清を含む完全培地で細胞を懸濁させ、培養皿に接種し、軽くピペッティングして均一に混ぜ、37℃、5%CO
2飽和湿度の条件下で培養した。
2.細胞継代
細胞の密度が80%に達したら、次のように細胞を継代した。
(1) 培地を捨て、PBSで1回洗浄した。
(2) 0.25%トリプシンを1~2ml加えて細胞を消化し、顕微鏡下で観察し、1~2min消化すると、細胞が互いに分離して丸くなることが見られ、すなわち消化が完了した。
(3) パンクレアチンを急速に捨て、完全培地に加え、細胞をピペッティングし、単細胞懸濁液を作り、1:3の割合で継代し、37℃、5%CO
2飽和湿度の条件下で拡大培養した。
3.細胞処理
(1)接種:対数成長期のHaCAT細胞を取り、0.25%のパンクレアチンで消化した後、DMEM培地(10%FBS+1%二重抗体)で細胞を懸濁させ、1×10
5個/ウェルで6ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO
2飽和湿度の条件下で一晩培養した。
(2)HaCAT細胞+10μl N15ポリペプチド(10mg/ml)で48h作用させた。
(3)写真を撮ってみると、正常な細胞は円形で、分化後に長い触角があり、
図11に示すように、一部の細胞は、ポリペプチドによって分化が生じていた。
【配列表】