(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】保存安定性に優れた全脂組織状蛋白
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240404BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23L11/00 A
(21)【出願番号】P 2023529707
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021081
(87)【国際公開番号】W WO2022270190
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021103457
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009874
【氏名又は名称】株式会社ペリカン
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】原田 洋志
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-079320(JP,A)
【文献】特開平04-299955(JP,A)
【文献】特開昭64-067153(JP,A)
【文献】特開昭63-240749(JP,A)
【文献】特開昭60-199350(JP,A)
【文献】特開昭62-186752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/16
A23L 11/00
A23L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆からなる大豆原料が、一軸又は二軸のエクストルーダーを用いて組織化されてなる組織状である全脂組織状蛋白であって、
前記全脂組織状蛋白の前記エクストルーダー処理される大豆原料中の前記大豆の割合が100質量%であり、前記エクストルーダー処理される前記大豆原料中の水分が6質量%以上7質量%以下であり、
前記エクストルーダー処理される前記大豆の油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%であり、
前記大豆として、大豆を粉砕した粉末状の粉砕大豆を用い、前記粉砕大豆の粒子径が、100メッシュパス~800メッシュパスの範囲に90%以上あり、前記粉砕大豆のNSI(可溶性窒素指数)が30~80であり、
前記粉砕大豆において、圧搾機を用いた0.8MPaの圧力での加圧処理時に油の滲みだしが見られず、
前記全脂組織状蛋白の油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%であることを特徴とする全脂組織状蛋白。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記大豆が丸大豆または脱皮大豆であることを特徴とする請求項1記載の全脂組織状蛋白。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
請求項1記載の全脂組織状蛋白の製造方法であり、
大豆の割合が100質量%であり、エクストルーダー処理される大豆原料を準備する工程と、
前記大豆原料を一軸又は二軸のエクストルーダーを用いて加工処理を行うことにより、組織化された前記全脂組織状蛋白を得る、エクストルーダー処理工程と、を含み、
前記エクストルーダー処理される前記大豆原料中の水分が6質量%以上7質量%以下であり、
前記エクストルーダー処理される前記大豆の油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%であり、
前記大豆として、大豆を粉砕した粉末状の粉砕大豆を用い、前記粉砕大豆の粒子径が、100メッシュパス~800メッシュパスの範囲に90%以上あり、前記粉砕大豆のNSI(可溶性窒素指数)が30~80であり、
前記粉砕大豆において、圧搾機を用いた0.8MPaの圧力での加圧処理時に油の滲みだしが見られず、
前記全脂組織状蛋白の油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%である、
全脂組織状蛋白の製造方法。
【請求項10】
前記大豆を粉砕した粉末状の粉砕大豆を得るための大豆の粉砕工程をさらに有し、
前記粉砕工程が、
20~40メッシュパスに粉砕する粗粉砕工程と、
100~800メッシュパスに粉砕する微粉砕工程と、
の2段階で行われてなる、請求項9記載の全脂組織状蛋白の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた全脂組織状蛋白に関する。より詳細には、全脂組織状蛋白および全脂組織状蛋白を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より組織状蛋白の製造方法において、脱脂大豆粉末を原料として押出成形機により製造する方法が示されている(特許文献1)。更に原料としてNSI(可溶性窒素指数)が40以下の脱脂大豆を用いたり(特許文献2)、小麦グルテンを併用したり(特許文献3)されたものが示されている。また、丸大豆を粉砕してエクストルーダーにより組織化される技術も公開されている(特許文献4)。さらに、大豆蛋白に水系で加熱処理した大豆を加える方法も提案されている(特許文献5)。
【0003】
また、油糧種子蛋白に油を加え二軸スクリューを有する押出機(二軸エクストルーダー)で製造する方法も開示されている(特許文献6)。さらに、全粒の豆類を使用したスナック様菓子の製造方法も記載されている(特許文献7)。また、近年ベジミート(大豆等を主原料とする植物由来の肉様食品)の製造方法において、全粒大豆を使用し豆乳を成形し混合押出処理する方法も提案されている(特許文献8)。さらに脱脂大豆の胚芽由来の黒粒を目立たなくした粒状蛋白の製造方法において、粒子径が200μm以上の画分が15%以下でNSIが80%以上であることをも述べられている(特許文献9)。
【0004】
しかし、いずれも組織化または繊維化に関しては述べられているが、その製品の保存安定性に関する記載がない。このような組織化または繊維化に関し、通常、蛋白質がその主な要因であり、油脂に関しては繊維化に寄与しないため脱脂大豆を使用するか圧搾により油分を絞る方法が用いられている(非特許文献1)。
【0005】
また剥皮丸大豆の0.95mmパス(20メッシュパス)品をエクストルーダー処理した例も報告されている(非特許文献2)。しかしながら、油分を含んだ繊維状蛋白は空気中の酸素による酸化が起こるため保存安定性に欠ける結果になるが、油分を除去せず丸大豆を使用した保存安定性の良い全脂繊維状蛋白に関しては報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭54-37845
【文献】特開昭56-55158
【文献】特開昭60-221041
【文献】特許第4928688号
【文献】特開平4-84862
【文献】特開平4-30756
【文献】特開昭61-58539
【文献】特開2008-17831
【文献】特開2016-182107
【非特許文献】
【0007】
【文献】食品産業新聞社2021年1月22日記事
【文献】日本食品工業学会誌Vol.38,No.9,842ページ~849ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は全脂組織状蛋白を保存時に酸化による劣化を起こさない手段を提供することを一つの目的としている。
本発明の一実施態様によれば保存安定性に優れた全脂組織状蛋白が提供される。
本発明の別の実施態様によれば保存安定性の優れた全脂組織状蛋白の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、丸大豆を粉砕し粒度・NSI・油の滲みだしにおいて一定の条件の加工を施しエクストルーダーにより成形すると保存安定性に優れた全脂組織状蛋白が得られることを見出し、本発明に至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の全脂組織状蛋白の第一の態様は、油分が15~30質量%の大豆を主原料とし、油分が15~30質量%であり、組織状であることを特徴とする。
【0011】
本発明の全脂組織状蛋白の第二の態様は、蛋白質含有量が25~60質量%の大豆を主原料とし、蛋白質含有量が25~60質量%であり、組織状であることを特徴とする。
【0012】
本発明の全脂組織状蛋白の第三の態様は、油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%の大豆を主原料とし、油分が15~30質量%且つ蛋白含有量が25~60質量%であり、組織状であることを特徴とする。
【0013】
前記大豆が丸大豆または脱皮大豆であることが好適である。
【0014】
前記大豆として、大豆を粉砕した粉砕大豆を用いることが好ましい。
前記粉砕大豆の粒子径が5mmパス~900メッシュパスの範囲に99%以上あることが好適である。
前記粉砕大豆のNSI(可溶性窒素指数)が30~80であることが好ましい。
前記粉砕大豆において、圧搾機を用いた0.8MPaの圧力での加圧処理時に油の滲みだしが見られないことが好適である。
【0015】
本発明の全脂組織状蛋白の製造方法は、前記全脂組織状蛋白の製造方法であり、一軸又は二軸のエクストルーダーを用いるエクストルーダー処理工程を含んでなる全脂組織状蛋白の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保存安定性に優れた全脂組織状蛋白及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、全脂組織状蛋白を保存時に酸化による劣化を起こさない手段を提供することができる。
さらに、本発明の全脂組織状蛋白は、肉様食品の原料として好適であり、食感、味、風味に優れた肉様食品を提供することができるという効果も達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0018】
本発明の全脂組織状蛋白の第一の態様は、油分が15~30質量%の大豆を主原料とし、油分が15~30質量%であり、組織状であることを特徴とする。なお、本願明細書において、質量%を単に%と称することもある。
本発明の全脂組織状蛋白は、油分が15~30質量%の大豆を主原料としたものを、エクストルーダー(押出機)を用いた組織化の加工処理を行う方法により好適に製造することができるが、油分の範囲が15%未満であるとエクストルーダー処理において油脂の滲みだしが見られないためもともと保存安定性に影響がなく、30%を超えるとエクストルーダー処理において油の滲みだしが起こり安定性を悪くするからである。
よって、油分が15~30質量%の非脱脂大豆(好ましくは全脂大豆)を主原料として用いることにより、油分が15~30質量%であり、且つ保存時に酸化による劣化を起こさないという極めて保存安定性に優れた、組織状の全脂組織状蛋白を得ることができる。
【0019】
本発明の全脂組織状蛋白は、脱脂大豆を用い、油分を別途添加することにより得られる組織状蛋白に比べて、保存安定性に優れるという利点がある。
【0020】
本発明において、油分とは、試料からジエチルエーテルを用いて抽出される物質の試料に対する百分率を意味し、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定)1.5-2013 油分に基づいて測定することができる。
原料とされる大豆の油分は15%以上30%以下であり、18%以上28%以下がより好ましい。
前記全脂組織状蛋白の油分は15%以上30%以下であり、18%以上28%以下がより好ましい。
【0021】
本発明において、組織状とは、繊維状に成形したものであつて、かつ、肉様の組織を有することを意味する。
【0022】
本発明の全脂組織状蛋白の第二の態様は、蛋白質含有量が25~60質量%の大豆を主原料とし、蛋白質含有量が25~60質量%であり、組織状であることを特徴とする。蛋白含有量が25%未満であると繊維化が起こりにくくなり、60%を超える原材料は存在しないからである。
よって、蛋白質含有量が25~60%の大豆を主原料として用いることにより、蛋白質含有量が25~60質量%であり、組織化が良好な組織状蛋白を得ることができる。
【0023】
本発明の全脂組織状蛋白は、従来の調整された大豆蛋白を別途添加する方法により得られる組織状蛋白に比べて、官能評価に優れるという利点がある。
【0024】
原料とされる大豆の蛋白質含有量は25%以上60%以下であり、30%以上50%以下がより好ましい。
前記全脂組織状蛋白の蛋白質含有量は25%以上60%以下であり、30%以上50%以下がより好ましい。
前記大豆及び全脂組織状蛋白中の蛋白質含有量は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定)1.7-2013 全窒素及び粗タンパク質に準じて、ケルダール法により試料の全窒素量を測定し、大豆の窒素・たんぱく質換算係数5.71を用いて蛋白質の含有量を算出することができる。
【0025】
本発明の全脂組織状蛋白の第三の態様は、油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%の大豆を主原料とし、油分が15~30質量%且つ蛋白含有量が25~60質量%であり、組織状であることを特徴とする。
【0026】
油分が15~30質量%且つ蛋白質含有量が25~60質量%の大豆を主原料として用いることにより、油分が15~30質量%及び蛋白質含有量が25~60質量%であり、保存時に酸化による劣化を起こさないという極めて保存安定性に優れ、且つ組織化が良好な組織状の全脂組織状蛋白を得ることができる。
【0027】
さらに、このような油分が15~30質量%及び蛋白質含有量が25~60質量%である全脂組織状蛋白は、保存安定性に優れると共に、肉様食品の原料として好適であり、食感、味、風味に優れた肉様食品を提供することができる。
【0028】
原料の大豆は食用大豆(IPハンドリングを含む)であればいずれもよく、国産品・海外品の種類を問わない。前記大豆が丸大豆または脱皮大豆であることが好適である。
【0029】
前記大豆として、大豆を粉砕した粉砕大豆を用いることが好ましい。前記粉砕大豆の粉砕度は特に制限はなく、粗粉砕された半割状、ひき割り状、粗粒状等の粗粉砕大豆、中粉砕又は微粉砕された粉末状の粉砕大豆、圧扁されたフレーク状の粉砕大豆等のいずれも使用可能である。本明細書において、粉末状の粉砕大豆を大豆粉と称する。
前記粉砕大豆の粒子径としては、5mmパス~900メッシュ(16μm)パスの範囲に99%以上あることが好適である。また、前記粉砕大豆が大豆粉の場合は、該大豆粉の粒子径が100メッシュ(140μm)パス~800メッシュ(18μm)パスの範囲に90%以上あることが好適である。大豆粉の粒度が100メッシュ未満のものが多く混入するとエクストルーダー処理時に油の滲みだしが起こり酸化安定性を悪くし、800メッシュを超える粒径を多く得ようとすると大豆粉の調製時にオイルボディが破壊され原料大豆粉の段階で油の滲みだしが起こってしまう場合があるからである。
前記粉砕大豆の粒子径は、粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0030】
前記粉砕大豆のNSI(可溶性窒素指数)が30~80であることが好ましい。NSIが30未満であると繊維化が難しくなり80を超えると加熱失活効果が得られ難いという欠点を有するからである。
NSIは、試料中に含まれる全窒素に占める水溶性窒素の割合を示す指数(単位:%)であり、粉砕大豆のNSIは、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定)1.8.1-2013水溶性窒素指数(40℃法)に基づいて算出することができる。
【0031】
前記粉砕大豆において、圧搾機を用いた0.8MPaの圧力での加圧試験における加圧処理時に油の滲みだしが見られないことが好適である。加圧試験において油の滲みだしがみられる原材料を用いエクストルーダー処理を行ったものは酸化安定性が非常に悪いという欠点を有しているからである。
前記加圧試験において、加圧に際しては通常の圧搾機と呼ばれているものであれば特に限定されない。加圧試験の条件は常温で処理されるものである。また、加圧試験に用いるサンプルは測定容器に収める方法により調製したものを用いることが好適である。
【0032】
粉砕大豆の製造においては、下記工程(A)~(E)を経ることが望ましい。
(A)大豆の選別工程→(B)脱皮工程→(C)加熱失活工程→(D)乾燥工程→(E)粉砕工程。
このうち(B)脱皮工程に関しては必要に応じて処理してよい。
【0033】
前記(A)選別工程は、大豆とそれ以外の夾雑物を分けることを目的としており、篩・色選などの工程を経ることが好適である。
前記(B)脱皮工程は、大豆子葉と大豆皮及び胚軸を分ける工程で加熱・はく皮・色選・風選などの工程を経ることが好適である。
【0034】
前記(C)加熱失活工程は、公知の脱臭機を利用することができ、蒸煮に関しては熱水または水蒸気により処理が行われ、70~125℃の温度範囲(好ましくは86~105℃の温度範囲)で60~300秒処理を行うことが好適である。特に、得られる大豆粉のNSIが30~80の範囲となるように加熱処理を行うことが好ましい。
前記(D)乾燥工程は、公知の乾燥機を利用でき、水分量7質量%以下(好ましくは6~7質量%)程度まで乾燥する工程を経ることが好適である。
【0035】
前記(E)粉砕工程は、公知の粉砕機を用いて所定の粒子径となるように大豆を粉砕することが好適である。(E)粉砕工程における粉砕度は特に制限はなく、必要に応じて、粗粉砕(半割状、ひき割り状、粗粒状等に粗粉砕)、中粉砕、微粉砕等を適宜選択すればよい。
前記粉砕大豆として大豆粉を用いる場合は、前記(E)粉砕工程は、粗粉砕と微粉砕の2段階で行うことが望ましい。粗粉砕により20~40メッシュ(380~860μm)パスに粉砕した後、微粉砕により100~800メッシュ(18~140μm)パス程度に粉砕する工程を経ることが好適である。
【0036】
前記大豆を原材料として含む全脂組織状蛋白の原料組成物を、エクストルーダー(押出機)を用いて加工処理を行うことにより、組織化された全脂組織状蛋白を得ることができる。
組織化に関しては公知のエクストルーダーを用いることができ、一軸又は二軸スクリューを有するエクストルーダーが好適に用いられるが、製造安定性の観点から二軸エクストルーダーを用いたほうがよい。
【0037】
前記全脂組織状蛋白の原料組成物は、大豆を主な原材料として含むものであり、原料組成物中の大豆の割合が50~100%であることが好ましく、75~100%であることがより好ましい。
【0038】
前記全脂組織状蛋白の原料組成物は、前記大豆以外の成分を含んでいても良い。
大豆以外の成分としては、例えば、水、他の添加物(例えば、加工澱粉等)、食物繊維等が挙げられる。
前記原料組成物中の油分は、15~30%であることが好適である。
前記原料組成物中の蛋白質含有量は、25~60%であることが好適である。
前記原料組成物中の水分は、1~15%であることが好ましく、3~13%であることがより好ましい。
【0039】
本発明の全脂組織状蛋白の製造方法は、前記全脂組織状蛋白の製造方法であり、一軸又は二軸のエクストルーダーを用いるエクストルーダー処理工程を含んでなる全脂組織状蛋白の製造方法である。
前記エクストルーダーを用いることにより、原料組成物と同じ成分組成であり、組織化が良好である全脂組織状蛋白を容易に製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0041】
(実施例1)
米国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分22%、蛋白質33%)を原料として用いた。実施例において大豆中の油分の測定は、前述の如く、基準油脂分析試験法に従い行った。大豆中の蛋白質含有量の測定は、前述の如く、基準油脂分析試験法に準じて行った。
まず、選別工程を以下のように実施し、原料大豆から選別大豆を得た。
原料大豆を100kg用意し、市販の粗選別機にかけて大豆より大きい異物(コーン、泥塊など)又は大豆より小さい異物(草の実、朝顔の種など)を除き、市販のグラビティ・セパレータにより、軽量異物(埃、皮、小ゴミなど)を除去し、市販の石抜機によって混入している大豆よりも重い石等の夾雑物を除き、市販のロール選別機に通して異形物を除去し、市販の粒径選別機により大豆を粒径別に選別した。
次に、脱皮工程を以下のように実施し、無菌脱皮大豆を得た。
市販の加熱機で、熱風空気温度約100℃、品温約60℃で5分程度加熱し、この加熱した大豆を、市販の補助脱皮機(二本のゴムローラーの隙間は、1~5mm、二本のゴムローラーの回転は、1本が809回転/分、他の1本が1050回転/分で、両者の回転数の差は約20%の条件で使用した。)にかけて大豆に亀裂をおこさせた。
この亀裂のおきた大豆を、市販の剥皮機(複数の羽根の回転数は、300回転/分とした。)で剥皮し、集塵装置によって剥皮された皮の半分程度を除去した。市販の風選機によって剥離された皮のうち上記集塵装置によって除去されなかったものを除去した。
皮を除去した残りの大豆混合物を市販の多段式篩装置にかけて子葉と胚芽とに分離した。すなわち、風選処理された大豆混合物を第1の篩にかけて未だ脱皮されていない丸大豆(未脱皮丸大豆)と、二つの子葉に分かれた子葉(半割れ子葉)と胚芽との混合物とに分け、次いで、子葉と胚芽との混合物を、第2の篩にかけて半割れ子葉と胚芽とに分離した。
この分離された子葉には多少の皮が残存しているが、この分離された子葉を市販の冷却タンク(冷却ファン付、容量約8m3)によって、常温風冷で冷却し、この冷却した子葉を市販の剥皮機で再度剥皮処理して子葉に残った皮を分離した。
得られた子葉について、「食品衛生検査指針」(厚生省生活衛生局監修)に準じて、細菌数の測定を行い、細菌数が300個/g以下であることを検査して確認した。
前記原料大豆の選別工程及び脱皮工程にて得られた子葉(無菌脱皮大豆)に対し、蒸煮機(株式会社エイユー工業製)を用い、105℃の温度の過熱水蒸気で120秒間蒸煮した後、乾燥機を用いた乾燥工程を経て、水分量6%の大豆中間品を得た。
この大豆中間品に対し衝撃型分級機内蔵微粉砕機(ACMパルベライザ)を用いて所定の粒子径となるように粉砕し(粉砕工程)、粉末状の粉砕大豆(大豆粉、油分22%、蛋白質33%、水分6%)を得た。
【0042】
前記得られた粉砕大豆の粒子径(粒度)を粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 MT-3000II)を用いて、粒子径分布が90%以上及び99%以上の粒度範囲を測定した。結果を表1に示す。表中、粒度測定の数値の単位はメッシュパスである。
【0043】
前記得られた粉砕大豆のNSIを、前述の如く、基準油脂分析試験法に従い測定した。結果を表1に示す。
【0044】
(加圧試験)
圧搾機(ケニス(株)製、卓上プレス機TB-20H)を用い、前記得られた粉砕大豆10gを該圧搾機に供して、0.8MPaの圧力で加圧後、油の滲みだしの有無を目視で確認した。結果を表1に示す。
【0045】
(エクストルーダー処理)
前記得られた粉砕大豆を原料として二軸エクストルーダー(株式会社スエヒロEPM社製、EA-100)を用い、フィードバレルより供給し、中間バレル先端バレルにニーディング・スクリューを組みあわせ、出口温度220℃にて全脂組織状蛋白を得た。
実施例1では、原料として前述の如く調製した粉砕大豆のみを用いている為、得られた全脂組織状蛋白の油分及び蛋白質含有量は原料の粉砕大豆のものと同じである。
【0046】
前記全脂組織状蛋白の組織化の評価は、JAS0838に定める植物性たん白の日本農林規格のかみごたえの測定方法(改正 平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に基づき行った。かみごたえを有しているものを組織化良好と評価し、有していないものを組織化不良と評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(保存安定性試験)
前記得られた全脂組織状蛋白を50℃恒温槽にて7日間保管したのち官能評価にて劣化臭の測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
※1 〇:油の滲みだしなし、×:油の滲みだしあり。
※2 〇:組織化良好、×:組織化不良。
※3 〇:異臭なし、△:異臭を感じる、×:激しい異臭を感じる。
【0049】
(実施例2)
米国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分29%、蛋白質30%)を原料として用いた。前記原料大豆を用いて実施例1と同様の方法により水分量6%の大豆中間品を得た後、該大豆中間品を粉砕し、粉末状の粉砕大豆(大豆粉、油分29%、蛋白質30%、水分6%)を得た。
前記得られた大豆粉に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
前記得られた大豆粉を原料として用いて、実施例1と同様のエクストルーダー処理を行い、全脂組織状蛋白を得た。前記得られた全脂組織状蛋白に対し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
加工用国産大豆(丸大豆、油分20%、蛋白質45%)を原料として用いた。前記原料大豆を用いて実施例1と同様の方法により水分量6%の大豆中間品を得た後、該大豆中間品を粉砕し、粉末状の粉砕大豆(大豆粉、油分20%、蛋白質45%、水分6%)を得た。
前記得られた大豆粉に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
前記得られた大豆粉を原料として用いて、実施例1と同様のエクストルーダー処理を行い、全脂組織状蛋白を得た。前記得られた全脂組織状蛋白に対し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
米国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分22%、蛋白質33%)を原料として用いた。前記原料大豆を用いて実施例1と同様の方法により水分量6%の大豆中間品を得た後、該大豆中間品を実施例1とは目的の粒子径を変えて粉砕し、粉末状の粉砕大豆(大豆粉、油分22%、蛋白質33%、水分6%)を得た。
前記得られた大豆粉に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
前記得られた大豆粉を原料として用いて、実施例1と同様のエクストルーダー処理を行い、全脂組織状蛋白を得た。前記得られた全脂組織状蛋白に対し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実験例1)
大豆中間品の粉砕工程を下記条件に変更した以外は実施例1と同様の方法によりひき割り状の粉砕大豆(ひき割り粉砕大豆、油分22%、蛋白質33%、水分6%)を得た。実験例1の粉砕工程では、粉砕機としてピンミル型粉砕機を用い、実施例1とは目的の粒子径を変えて粉砕を行った。
前記得られたひき割り粉砕大豆に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
前記得られたひき割り粉砕大豆を原料として用いて、実施例1と同様のエクストルーダー処理を行い、全脂組織状蛋白を得た。前記得られた全脂組織状蛋白に対し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分22%、蛋白質33%)を原料として用いた。前記原料大豆を用いて実施例1と同様の方法により水分量6%の大豆中間品を得た後、該大豆中間品を粉砕し大豆粉を得た。
この大豆粉100質量部に対し油分78質量部を添加し、油分55%にした大豆粉とし、エクストルーダー処理前の原料組成物(油分55%、蛋白質19%、水分3%)を調製した。
前記油分55%の原料組成物に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0054】
前記得られた原料組成物に対し、実施例1と同様の方法により、エクストルーダー処理を行い、エクストルーダー処理品を得た。得られたエクストルーダー処理品に対して、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
※1 〇:油の滲みだしなし、×:油の滲みだしあり。
※2 〇:組織化良好、×:組織化不良。
※3 〇:異臭なし、△:異臭を感じる、×:激しい異臭を感じる。
【0056】
(比較例2)
国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分22%、蛋白質33%)を原料として用いた。
前記原料大豆を用い、選別工程及び脱皮工程にて得られた子葉に対し、蒸煮機(株式会社エイユー工業製)を用い、130℃の温度の過熱水蒸気で350秒間蒸煮した後、乾燥工程を経て、水分量6%の大豆中間品を得た。この大豆中間品に対しACMパルベライザを用い粉砕し大豆粉(油分22%、蛋白質33%、水分6%)を得た。
前記得られた大豆粉に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0057】
前記得られた大豆粉を原材料として用い、実施例1と同様の方法により、エクストルーダー処理を行い、エクストルーダー処理品を得た。得られたエクストルーダー処理品に対して、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(比較例3)
国産IPハンドリング大豆(丸大豆、油分22%、蛋白質33%)を原料として用いた。前記原料大豆を用い、実施例1と同様の方法により水分量6%の大豆中間品を得た後、該大豆中間品を粉砕し大豆粉を得た。
この大豆粉100質量部に対し食物繊維65質量部を添加し、蛋白質含有量20%の原料組成物(油分13%、蛋白質20%、水分3%)を調製した。
前記原料組成物に対し、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0059】
前記得られた原料組成物に対し、実施例1と同様の方法により、エクストルーダー処理を行い、エクストルーダー処理品を得た。得られたエクストルーダー処理品に対して、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。結果を表2に示す。
【0060】
表1に示した如く、実施例1~実施例4の全脂組織状白は、組織化が良好であり且つ保存安定性にも優れていた。一方、油分55%の原料組成物を用いた比較例1では、保存安定性が非常に悪かった。NSIが25の大豆粉を用いた比較例2では、組織化が不良であった。蛋白質含有量20%の原料組成物を用いた比較例3では、組織化が不良であり、保存安定性も悪かった。