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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 23/04 20060101AFI20240404BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20240404BHJP
   C21D 1/10 20060101ALI20240404BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B23P23/04
B23Q7/00 F
C21D1/10 Z
B23Q11/10 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021160839
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050638
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】須永 頼匡
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530260(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111231(WO,A1)
【文献】特開2010-131718(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109980(WO,A1)
【文献】特開2002-137136(JP,A)
【文献】特開2010-017735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 23/04
B23B 1/00
B23Q 7/00
C21D 1/10
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転可能にするテーブルと、
前記テーブルに構成され、前記ワークを支持するワーク支持手段と、
前記ワーク支持手段に支持された前記ワークを切削する切削機構と、
前記ワーク支持手段に支持された前記ワークを熱処理する熱処理機構と、
前記切削機構と、前記熱処理機構と、前記テーブルとを収容する加工室と、を備え、
前記熱処理機構は、前記ワークを誘導加熱するコイル部を有し、
前記コイル部と前記ワーク支持手段に支持された前記ワークとが、相対移動可能であり、
複数の前記テーブルと、複数の前記テーブルにそれぞれ構成され前記ワークをそれぞれ支持する複数の前記ワーク支持手段と、前記テーブルをそれぞれ載置する複数のパレットと、前記加工室の内部と外部との間で前記パレットを入れ替えるパレットチェンジャとを有する、加工装置。
【請求項2】
熱処理時に前記ワークに供給された冷却液を回収する冷却液回収機構をさらに備える、請求項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、切削処理に加えてレーザー焼入れも可能な加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-238253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は、ワークの切削処理及び焼入れ等の熱処理を効率的に実施することができる加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る加工装置は、
ワークを回転可能にするテーブルと、
前記テーブルに構成され、前記ワークを支持するワーク支持手段と、
前記ワーク支持手段に支持された前記ワークを切削する切削機構と、
前記ワーク支持手段に支持された前記ワークを熱処理する熱処理機構と、を備え、
前記熱処理機構は、前記ワークを誘導加熱するコイル部を有し、
前記コイル部と前記ワーク支持手段に支持された前記ワークとが、相対移動可能である。
【0006】
本発明では、熱処理機構がコイル部による誘導加熱を採用する。誘導加熱は、所望の温度まで正確に急速加熱することができるため、効率的である。また、本発明では、切削処理と、誘導加熱による熱処理とを連続的に行うことができるため、効率的である。更に、コイル部とワークとが相対移動可能であることによって、ワークの所望の箇所に誘導加熱による熱処理を実施することができるため、より効率的なものとなる。
【0007】
また、本発明に係る加熱装置は、
前記切削機構と、前記熱処理機構と、前記テーブルとを収容する加工室をさらに備え、
複数の前記テーブルと、複数の前記テーブルにそれぞれ構成され前記ワークをそれぞれ支持する複数の前記ワーク支持手段と、前記テーブルをそれぞれ載置する複数のパレットと、前記加工室の内部と外部との間で前記パレットを入れ替えるパレットチェンジャとを有する。
【0008】
斯かる構成によれば、上記のようなパレットチェンジャを有することによって、加工室の内部と外部との間における処理前後のワークの入れ替えが可能になる。
【0009】
また、本発明に係る加工装置は、
熱処理時に前記ワークに供給された冷却液を回収する冷却液回収機構をさらに備える。
【0010】
斯かる構成によれば、冷却液回収機構を備えることによって、冷却液の再利用が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
以上の通り、本発明によれば、ワークの切削処理及び焼入れ等の熱処理を効率的に実施することができる加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る加工装置の模式図である。
図2】第2実施形態に係る加工装置の模式図である。
図3】テーブル(ワーク支持手段)の変形例を示す模式図である。
図4】熱処理機構におけるコイル部の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、本発明を次のように考え、創作するに至った。
まず、誘導加熱は、所望の温度までワークを正確に急速加熱することができるため効率的である。このことから、本発明者らは、特許文献1のレーザー焼入れに換えて、誘導加熱を採用することを着想した。しかしながら、加熱方式の異なる熱処理機構は、それぞれに特有の仕様が必要となる。例えば、誘導加熱では、ワークに対するコイルの配置が重要となる。よって、このような要求を満たしつつ、加工装置の効率化を図る必要がある。
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る加工装置について説明する。
【0015】
図1は第1実施形態に係る加工装置の模式図である。
図1に示されるように、本実施形態の加工装置1xは、ワークWを回転可能にするテーブル10と、ワークWを支持するワーク支持手段11と、ワークWを切削する切削機構20と、複数の切削工具を格納する工具マガジン30と、ワークWを誘導加熱により熱処理する熱処理機構40とを備えている。また、加工装置1xは、各機構を収容する加工室50と、各機構の動作を制御する制御部60とを備えている。
【0016】
本実施形態のワークWは、図1に示すように、円板状のフランジ部w1と、フランジ部w1の中心部からフランジ部w1の径方向に直交する方向に沿って延びる円柱状の延出部w2とを有する。フランジ部w1と延出部w2とは、同一軸線上に形成されている。ワークWは、炭素を含む鋼材から作製されたものである。
ここで、本実施形態のワークWは、円板状のフランジ部w1と円柱状の延出部w2を有するワークを例として挙げたが、ワークWは特に限定されない。
【0017】
本実施形態の加工装置1xは、図1に示すように、ワークWを回転可能にし、ワークWの回転軸が垂直方向に沿うようにワークWを支持し、該ワークWに切削処理及び熱処理の両方を実施可能な複合化された装置である。ここで、支持された状態のワークWの回転軸の延びる方向(軸方向)すなわち垂直方向をZ方向と称する。また、水平方向のうち、Z方向に直交する第1の水平方向をY方向とし、Z方向及びY方向のそれぞれに直交する第2の水平方向をX方向と称する。
【0018】
本実施形態のテーブル10は、ワークWの回転軸が垂直方向に沿うようにワークWを回転可能に支持する。
【0019】
テーブル10は、図1に示すように、ワークWの回転軸を垂直方向に対して傾斜させるように回動可能である。
【0020】
また、テーブル10は、X方向及びZ方向に移動可能である。具体的には、テーブル10は、X方向及びZ方向における移動を駆動する駆動部(不図示)と、X方向及びZ方向における移動を案内するレールなどの第1ガイド部(不図示)とを有し、これによって、X方向及びZ方向に移動可能とされている。
【0021】
テーブル10は、誘導加熱が生じない材料によって形成されている。当該材料は、特に限定されないが、ステンレスや銅が挙げられる。
【0022】
ワーク支持手段11は、図1に示すように、テーブル10に構成されており、ワークWの回転軸が垂直方向に沿うようにワークWの一端部を支持する。すなわち、ワーク支持手段11は、ワークWの片側(下面)を支持する。ワーク支持手段11は、例えば、3つ爪チャック、マシンバイス、クランプ、マグネットである。
【0023】
また、ワーク支持手段11は、X方向及びZ方向に移動可能である。具体的には、ワーク支持手段11はテーブル10に構成されているため、テーブル10のX方向及びZ方向の移動にともなって、ワーク支持手段11もX方向及びZ方向に移動する。
【0024】
ワーク支持手段11の材料は、特に限定されないが、ワーク支持手段11に誘導加熱に対するシールド効果が必要な場合は、誘導加熱が生じない材料によって形成する。当該材料としては、特に限定されないが、ステンレスや銅が挙げられる。
【0025】
本実施形態の切削機構20は、図1に示すように、テーブル10よりも上方に配置されている。切削機構20は、ワークWを切削する切削工具211を支持する刃物台21を有する。また、刃物台21は、ワークWに切削液を供給する切削液供給部(不図示)と、切削液を貯留する切削液タンク(不図示)とを有する。
【0026】
刃物台21は、X方向及びZ方向に移動可能である。具体的には、切削機構20は、刃物台21のX方向及びZ方向における移動を駆動する駆動部(不図示)と、刃物台21のX方向及びZ方向における移動を案内するレールなどの第2ガイド部(不図示)とを有し、これによって、刃物台21がX方向及びZ方向に移動可能とされている。
【0027】
また、刃物台21は、切削工具211の軸周りに(Z方向を軸として)切削工具211を回転させることが可能である。また、刃物台21は、切削工具211の回転軸が一方向(例えばZ方向)に沿う第1の状態と、該第1の状態に対して回転軸を任意の方向に傾斜させる第2の状態とをとるように、切削工具211を回動させることが可能である。
【0028】
切削工具211としては、切削工具211を回転させる場合は、例えば、フライス及びエンドミル、切削工具211を回転させない場合は、例えば、超鋼のスローアウェイチップを用いることができる。
【0029】
切削液供給部(不図示)は、刃物台21の移動にともなって、切削工具211とともにX方向及びZ方向に移動し、切削面に切削液を供給できる構成を有している。
【0030】
切削液供給部(不図示)によって噴出された切削液は、加工装置1x内で回収可能である。具体的には、加工装置1xは、ワークWに供給された切削液を回収する切削液回収機構(不図示)を備えている。本実施形態の切削液回収機構(不図示)は、ワークWに供給された切削液をろ過処理し、切屑を除去した切削液を回収し、前記切削液供給部に供給する循環型である。
【0031】
本実施形態の工具マガジン30は、図1に示すように、切屑や切削液などから切削工具211を保護するために、加工室50の第1隔離室51内に配置されている。加工室50は、ワークWに加工を施す加工領域50aと、切削工具211を格納する格納領域50bとに、隔離壁52によって区画されている。また、第1隔離室51は、切削機構20と工具マガジン30との間の切削工具211の受け渡しが可能なように、加工領域50aと格納領域50bとを連通させる開閉部を有する。前記開閉部は、隔離壁52をシャッター構造にすることによって設けてもよい。
【0032】
工具マガジン30は、切削機構20の切削工具211の交換を可能にする自動工具交換装置(ATC、不図示)を有する。具体的には、工具マガジン30は、複数の工具ホルダ311を外周部に沿って配列するように保持する回転ドラム31を有する。また、前記自動工具交換装置は、切削機構20の刃物台21と回転ドラム31との間で切削工具211の受け渡しを可能にする搬送部を有する。前記搬送部は、刃物台21と回転ドラム31との間を可動するアーム部と、切削工具211を把持するクランプ部とを有していてもよい。
【0033】
本実施形態の熱処理機構40は、図1に示すように、ワークWの表面を硬化させるための焼き入れを行うものである。熱処理機構40は、テーブル10よりも上方に配置されている。
【0034】
熱処理機構40は、ワークWを誘導加熱するコイル部41と、コイル部41に印加される電圧の周波数を調節する高周波電源42と、ワークWに冷却液を供給する冷却液供給部43と、冷却液を貯留する冷却液タンク(不図示)とを有する。本実施形態では、コイル部41及び冷却液供給部43が高周波電源42に搭載されている。また、高周波電源42が、ワークWに対して移動可能である。これにより、高周波電源42のワークWに対する移動にともなって、コイル部41及び冷却液供給部43がワークWに対して移動可能となっている。
【0035】
コイル部41は、ワークWの表面温度が100℃~1200℃となるように、ワークWを誘導加熱する。
【0036】
コイル部41は、ワークWのフランジ部w1を囲み得るように形成された環状部411を有する。これによって、コイル部41の環状部411は、ワークWの延出部w2も囲み得る。環状部411は、所定の径を有する円に沿ってらせん状に進行する銅管によって形成されている。言い換えれば、コイル部41は、環状のターンコイルによって構成されている。
なお、コイル部41の形状は、環状部を有することを例として挙げたが、コイル部41の形状は特に限定されない。かかる形状としては、棒状、円弧状、螺旋状が挙げられる。
【0037】
コイル部41は、高周波電源42のZ方向における移動にともなって下方に移動し、環状部411の内側にワークWを配することが可能となっている。本実施形態では、上記のように、コイル部41が、高周波電源42に搭載されている。また、コイル部41と高周波電源42は、コイルリード(不図示)で接続されている。高周波電源42は、例えば、マッチングトランスやカレントトランスである。
また、コイル部41とコイルリードは切屑による短絡を防止するためのカバー(不図示)が用いられていてもよい。ただし、コイル部41と高周波電源42とを接続するコイルリードが短い方が電力の損失が少ないため、コイル部41は高周波電源42に搭載されることが好ましい。また、切削処理時のコイル部41への切屑や切削液の付着を防止する上でも、コイル部41は高周波電源42に搭載されることが好ましい。
【0038】
また、コイル部41は、ワークWに印加する電圧の周波数を、0.3kHz~400kHzの範囲で設定することができる。前記周波数は、高周波電源42の機種、仕様により設定することができる。これによって、コイル部41は、ワークWに高周波誘導加熱を生じさせることができる。
【0039】
高周波電源42は、内部に冷水を循環させるための冷水ケーブル421を有する。
【0040】
高周波電源42は、X方向及びZ方向に移動可能である。具体的には、熱処理機構40は、高周波電源42のX方向及びZ方向における移動を駆動する駆動部(不図示)と、高周波電源42のX方向及びZ方向における移動を案内するレールなどの第3ガイド部(不図示)とを有し、これによって、高周波電源42がX方向及びZ方向に移動可能とされている。
なお、高周波電源42は、前記第3ガイド部に代えて、切削機構20の前記第2ガイド部により案内されてもよい。すなわち、熱処理機構40と切削機構20とは、一つのガイド部を共有してもよい。
【0041】
冷却液供給部43は、ワークWの誘導加熱後、3.0秒以内に冷却液をワークWに供給可能である。冷却液供給部43は、ワークWの表面に冷却液を供給する噴出部431と、噴出部431を回動させる回動部432と、噴出部431から分岐した長尺状の分岐配管部433とを有する。
【0042】
噴出部431は、高周波電源42に搭載されている。噴出部431は、高周波電源42の移動により、ワークWの所定の位置に冷却液を供給可能となっている。切削液への冷却液の混入の防止や、誘導加熱後、所定時間以内に冷却液をワークWに供給する必要があることから、噴出部431は、高周波電源42に搭載されていることが好ましい。
【0043】
噴出部431は、冷却液を噴出させる噴出口4311を有する。
【0044】
回動部432は、冷却液がワークWの加熱領域に供給されるように噴出口4311の向きを調節可能なように噴出部431を回動させてもよい。また、回動部432は、噴出部431を傾斜させることでZ方向に対して所定角度傾斜した方向に噴出口4311から冷却液を噴出可能であってもよい。
【0045】
分岐配管部433の末端部(噴出部431の接続端部とは反対側の端部)は、前記冷却液タンクにポンプを介して接続されている。
【0046】
本実施形態では、冷却液供給部43によって噴出された冷却液は、加工装置1x内で回収可能である。具体的には、加工装置1xは、ワークWに供給された冷却液を回収する冷却液回収機構(不図示)を内部に(具体的には加工領域50a内に)有している。冷却液回収機構(不図示)は、ワークWに供給された冷却液を回収し、前記冷却供給部に供給する循環型である。
【0047】
本実施形態の熱処理機構40は、非作動時には、加工室50における第2隔離室(不図示)に格納されている。具体的には、ワークWが切削処理される非作動時には、切削液や切屑の付着の防止のために、熱処理機構40は、前記第2隔離室に格納される。なお、熱処理機構40は、切削液や切屑の付着を防止する隔離壁によって保護されてもよい。
【0048】
本実施形態の加工室50のうち、少なくとも隔離壁51は、コイル部41が誘起する磁束を遮蔽可能な材料によって形成されていてもよい。かかる材料としては、電磁誘導されない非鉄金属が挙げられる。
【0049】
本実施形態の制御部60は、上記の各機構の移動量、テーブル10及び切削工具211の回転数、ワーク支持手段11によるワークWの支持、及び切削液や冷却液の供給のタイミングや供給量などを制御する。
【0050】
次に、上記構成の加工装置1xの動作について、ワークWを切削処理した後に熱処理する場合を例示する。なお、加工装置1xは、ワークWを熱処理した後に切削処理してもよい。また、加工装置1xは、切削処理と熱処理を同時にしてもよい。更に、切削処理及び熱処理の回数は適宜変更・設定することができる。
【0051】
(準備段階)
まず、加工装置1xは、テーブル10によって回転軸が水平方向に沿うようにワークWを回転可能にし、当該テーブル10構成されているワーク支持手段11によってワークWを支持する。
【0052】
(切削処理段階)
加工装置1xは、ワークWに対して、刃物台21をワークWの所定の位置に移動させる。このとき、必要に応じてワークWを回転軸が垂直方向に沿うようにワークWを回転させる。次に、切削工具211をワークWに接触するように進行させるとともに、切削液供給部によりワークWに切削液を供給することによって、ワークWを切削処理する。このとき、必要に応じて切削工具211を軸回りに回転させる。また、テーブル10をX方向又はZ方向に移動させるとともに、刃物台21をX方向又はZ方向に移動させることによって、ワークWに対して切削工具211を位置合わせしてもよい。
【0053】
(熱処理段階)
加工装置1xは、ワークWに対して、コイル部41をワークWの所定の位置に移動させ、ワークWを誘導加熱後、所定時間(例えば3.0秒)以内に、冷却液供給部43によりワークWへ冷却液を供給する。このとき、必要に応じてワークWを回転させる。これによって、ワークWの表面を硬化させる。熱処理時にはワークWを回転させなくてもよいが、ワークWを均一に加熱するために、ワークWを回転させてもよい。また、ワーク支持手段11を有するテーブル10をX方向又はZ方向に移動させるとともに、コイル部41もX方向又はZ方向に移動させることによって、ワークWに対してコイル部41を位置合わせしてもよい。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態に係る加工装置について説明する。なお、第1実施形態の加工装置1xと同じ構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図2に示されるように、本実施形態に係る加工装置1yは、回転軸が水平方向に沿うようにワークWを支持し、該ワークWに切削処理及び熱処理の両方を実施する装置である。ここでは、支持された状態のワークWの回転軸の延びる方向(軸方向)すなわち水平方向をZ方向と称する。また、水平方向のうち、Z方向に直交する水平方向をY方向とする。また、Z方向及びY方向のそれぞれに直交する方向、すなわち、垂直方向をX方向と称する。
【0056】
本実施形態の加工装置1yは、図2に示すように、複数のテーブル10、複数のワーク支持手段11、切削機構20、工具マガジン30、熱処理機構40、加工室50、及び制御部60に加えて、加工室50の内部と外部との間でテーブル10の入れ替えを可能にするパレットチェンジャ70及び複数のパレット71と、熱処理時にワークWに供給された冷却液を回収する冷却液回収機構80とを備えている。
【0057】
本実施形態のテーブル10は、図2に示すように、回転軸が水平方向に沿うようにワークWを回転可能にする複数のテーブル10x、10yを有する。
【0058】
ワーク支持手段11は、図2に示すように、テーブル10に構成されており、ワークWの回転軸が水平方向に沿うようにワークWの一端部を支持する複数のワーク支持手段11x、11yを有する。
【0059】
パレットチェンジャ70は、図2に示すように、テーブル10を載置する複数のパレット71x、71yを有する。パレット71x、71yは、加工室50の内部においては、X方向及びZ方向に移動可能である。具体的には、パレットチェンジャ70は、X方向及びZ方向における移動を駆動する駆動部(不図示)と、X方向及びZ方向における移動を案内するレールなどの室内ガイド部(不図示)とを有し、これによって、パレット71x、71yがX方向及びZ方向に移動可能とされている。
【0060】
また、パレットチェンジャ70は、前記室内ガイド部から分岐し且つ加工室50の外部にまで延在する室外ガイド部(不図示)を有する。かかる室外ガイド部によって、パレットチェンジャ70が、加工室50の内部にあるパレット71xと外部にあるパレット71yの入れ替えを可能にする。延いては、かかるパレット71x、71yの移動によって、加工室50の内部にあるテーブル10x及びワーク支持手段11xと、加工室50の外部にあるテーブル10y及びワーク支持手段11yとの入れ替えが可能となる。これによって、加工室50における切削処理前後又は熱処理前後のワークWの入れ替えが可能となる。特に、切削処理後のワークWに切屑や切削液の付着が認められる場合、熱処理前に、かかるワークWを加工室50の外部に移動させ、切屑などを除去する前処理が実施されることが好ましい。上記パレットチェンジャ70を備えることによって、かかる前処理の実施が容易になる。また、かかる前処理中に、別のワークWに切削処理や熱処理を実施可能となり、効率的である。
【0061】
パレット71x、71yは、それぞれ一つのテーブル10x、10yを載置する。パレット71x、71yは、ワークWの回転軸を水平方向に対して傾斜させるように回動可能である。
【0062】
本実施形態の冷却液回収機構80は、図2に示すように、ワークWに供給された冷却液を受ける受部81と、受部81内の冷却液を回収する回収配管部82と、受部81を開閉可能にする蓋部83とを有する。
【0063】
受部81は、加工室50の底部に埋設され且つ上方に開口した容器によって構成されている。また、回収配管部82は、吸引によって冷却液を回収する。回収配管部82は、前記冷却液タンクに接続されている。これによって、冷却液の循環使用が可能となる。
【0064】
蓋部83は、冷却液供給部43がワークWに冷却液を供給する際には受部81を開放する開状態と、切削処理時や誘導加熱時などの冷却液供給部43による冷却液の供給が必要とされない際には受部81を閉塞する閉状態とをとるように構成されている。
【0065】
以上のように、例示として2つの実施形態を示したが、本発明に係る加工装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る加工装置は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係る加工装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、熱処理機構40は、熱処理として焼入れを行うものであるが、これに限らず、熱処理機構は、焼きならし、高周波加熱、高周波焼戻し、高周波焼鈍などを行うものであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、環状部411を有するコイル部41を例示したが、これに限らず、コイル部41は、ワークWの延出部w2の側面に対向するように形成された湾曲面部を有していてもよく、それによって、コイル部41が、前記湾曲面部とワークWとの距離を任意に調節するようにワークWの周りを移動可能であってもよい。
【0068】
また、テーブル10は、図3に示すような態様であってもよい。すなわち、図3には、ワークWaとWbが示されており、この複数のワークをテーブル10に配置してもよい。この場合、図3のように、1つのテーブル10が、複数のワーク支持手段11aとワーク支持手段11bとを構成してもよい。また、複数のワークは、それぞれが同じワークでもよく、それぞれが(外形や大きさ、又は支持状態において)異なっていてもよい。さらには、複数のワーク支持手段は、それぞれが同じワーク支持手段でもよく、それぞれが異なるワーク支持手段でもよい。
【0069】
また、コイル部41は、図4に示す態様のものであってもよい。すなわち、図4のコイル部41は、ワークWの全ての箇所との距離が所定値以下となるようにワークWに接近可能に形成された矩形状の対向面部412を有する。対向面部412は、一平面に沿うように形成されている。かかる対向面部412は、環状部411などと比較して、ワークWの角部や凹部等の表面の起伏が大きい箇所に近付け易いため、ワークWの熱処理領域をより柔軟に設定することが可能となる。例えば、図4に示されるように、対向面部412をワークWの外縁に沿って移動させることによって、ワークWのフランジ部w1から延出部w2に連続した熱処理領域を形成することができる。
【0070】
さらに、熱処理機構40は、形状の異なる複数のコイル部41を有していてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1x、1y:加工装置、10、10x、10y:テーブル、11、11a、11b:ワーク支持手段、20:切削機構、21:刃物台、211:切削工具、30:工具マガジン、31:回転ドラム、40:熱処理機構、41:コイル部、411:環状部、412:対向面部、42:高周波電源、421:冷水ケーブル、43:冷却液供給部、431:噴出部、4311:噴出口、432:回動部、433:分岐配管部、50:加工室、50a:加工領域、50b:格納領域、51:第1隔離室、52:隔離壁、60:制御部、70:パレットチェンジャ、71x、71y:パレット、80:冷却液回収機構、81:受部、82:回収配管部、83:蓋部、W、Wa、Wb:ワーク、w1:フランジ部、w2:延出部
図1
図2
図3
図4