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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/02 20060101AFI20240404BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A41D1/02 E
A41D27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022077757
(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公開番号】P2023166902
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 彰大
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢晃
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261118(JP,A)
【文献】特開2020-165051(JP,A)
【文献】特開2020-023758(JP,A)
【文献】特開2003-013347(JP,A)
【文献】特開2013-087403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00
A41D 1/02
A41D 13/00
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃とを備え、
前記前身頃及び前記後身頃のそれぞれは、アームホールを形成するためのアームホール形成端部を有し、
前記前身頃及び前記後身頃は、よこ方向における伸長率が100%以上を示す高伸縮部と、前記高伸縮部よりも低い伸縮性を示す低伸縮部とを有し、
前記高伸縮部は、前記後身頃に設けられ着用者の左右の肩甲骨を被覆する第1高伸縮部と、前記前身頃に設けられ幅方向に延びる帯状の第2高伸縮部とを含み、
前記第2高伸縮部は、前記第1高伸縮部よりも上下方向の長さが短く形成され、該第2高伸縮部の両端部が前記第1高伸縮部に接合されており、前記アームホール形成端部の下方において前記前身頃の幅方向にわたって延びており、
前記低伸縮部は、前記第2高伸縮部から前記前身頃の上端部にわたって形成されており、
前記第1高伸縮部は、前記第2高伸縮部の前記両端部との接合位置から前記後身頃の上端部にわたって且つ前記後身頃の両側端縁であって前記接合位置から前記後身頃の上端部に延びる両側端縁をなして該両側端縁の間に延在するように形成されており、
前記高伸縮部が、60秒以下の吸水速度を示す、シャツ。
【請求項2】
前記高伸縮部は、30%伸長時の伸長回復力が0.5N以上を示す、請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
前記高伸縮部が、20cm/cm・s以上の通気性を示す、請求項1又は2に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の姿勢を矯正するように構成されたシャツが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用者の左右の肩甲骨に交差し得るように、後身頃のベース生地に伸縮性を有する伸縮部材が接合されたシャツが記載されている。かかるシャツによれば、伸縮部材の左右方向の収縮によって左右の肩甲骨を互いに引き寄せ、着用者の姿勢を矯正できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/017204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシャツは、着用者の動作に伴う伸縮部材の伸縮により、前身頃が位置ずれするという問題点を有する。特に、着用者がゴルフ等のスポーツを行う場合、体幹の回旋等の動作によって伸縮部材が伸縮し、それによって、前身頃や後身頃がずり上がるように位置ずれするという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載のシャツのように、従来の姿勢矯正を目的としたシャツは、伸縮部材がゴム成分で形成されており、吸水性に優れるとは言い難い。このため、特にスポーツを行う着用者においては、伸縮部材の接合位置において蒸れが生じ易く、着用時の不快感の原因となる。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、着用時の位置ずれを抑制しつつ着用者の姿勢を矯正することができ、着用時の不快感が抑制されたシャツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシャツは、
前身頃と、後身頃とを備え、
前記前身頃及び前記後身頃は、よこ方向における伸長率が100%以上を示す高伸縮部を有し、
前記高伸縮部は、前記後身頃に設けられ着用者の左右の肩甲骨を被覆する第1高伸縮部と、前記前身頃に設けられ幅方向に延びる第2高伸縮部とを含み、
前記第2高伸縮部は、前記第1高伸縮部よりも上下方向の長さが短く形成され、該第2高伸縮部の両端部が前記第1高伸縮部に接合されており、
前記高伸縮部が、60秒以下の吸水速度を示す。
【0009】
斯かる構成によれば、上記のような所定の伸長率を示す第1高伸縮部と第2高伸縮部とが共働して着用者に向かって収縮するように作用するため、着用時の位置ずれを抑制することができる。
また、第2高伸縮部が第1高伸縮部に接合されていることによって、第1高伸縮部の位置ずれが抑制され、第1高伸縮部が姿勢矯正に適切な部位に配され得る。さらに、第2高伸縮部が第1高伸縮部よりも上下方向の長さが短く形成されているため、第1高伸縮部の収縮による姿勢の矯正の作用が、第2高伸縮部に阻害されにくくなる。
しかも、高伸縮部が60秒以下の吸水速度を示すため、吸水性に優れ、着用時の蒸れなどの不快感が抑制される。
以上より、本発明によれば、着用時の位置ずれを抑制しつつ着用者の姿勢を矯正することができ、着用時の不快感が抑制されたシャツが提供される。
【0010】
また、本発明に係るシャツは、好ましくは、
前記第1高伸縮部は、上端部から上下方向の中央部にまで広がり、
前記第2高伸縮部は、上下方向の中央部に延びる帯状であり、
前記第2高伸縮部の両端部が、前記第1高伸縮部の下端部に接合されている。
【0011】
斯かる構成によれば、第1高伸縮部が後身頃の上端部から中央部にまで広がっているため、第1高伸縮部が姿勢矯正に適切な部位に配され易くなる。また、第2高伸縮部の両端部が第1高伸縮部の下端部に接合されているため、第1高伸縮部の収縮による姿勢の矯正の作用が阻害されにくくなる。
【0012】
また、本発明に係るシャツは、好ましくは、
前記高伸縮部は、30%伸長時の伸長回復力が0.5N以上を示す。
【0013】
斯かる構成によれば、高伸縮部の30%伸長時の伸長回復力が0.5N以上であることによって、着用時の位置ずれがさらに抑制され、且つ、姿勢の矯正に優れるものとなる。
【0014】
また、本発明に係るシャツは、好ましくは、
前記高伸縮部が、20cm/cm・s以上の通気性を示す。
【0015】
斯かる構成によれば、高伸縮部が20cm/cm・s以上の通気性を示すことによって、着用時の不快感がさらに抑制されたものとなる。
【発明の効果】
【0016】
以上の通り、本発明によれば、着用時の位置ずれを抑制しつつ着用者の姿勢を矯正することができ、着用時の不快感が抑制されたシャツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るシャツの正面図である。
図2図1のシャツの背面図である。
図3図1のシャツの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るシャツについて説明する。
【0019】
図1図3に示すように、本実施形態に係るシャツ1は、半袖Tシャツであり、着用者の正面を被覆する前身頃1aと、着用者の背面を被覆する後身頃1bと、着用者の左右の上腕を被覆する一対の袖部1cと、着用者の首周りを囲う首リブ1dとを備えている。なお、以下では、シャツ1の着丈方向を上下方向やたて方向などと称し、着丈方向に直交する方向を幅方向やよこ方向などと称する。
【0020】
前身頃1aは、上下方向に延びる一対の側端縁部11aを有する。各側端縁部11aは、アームホールを形成するためのアームホール形成端部111aを有する。アームホール形成端部111aには袖部1cが接合されている。前身頃1aの上端部には、首リブ1dが接合されている。
【0021】
後身頃1bは、上下方向に延びる一対の側端縁部11bを有する。各側端縁部11bは、アームホールを形成するためのアームホール形成端部111bを有する。アームホール形成端部111bには袖部1cが接合されている。後身頃1bの上端部には、首リブ1dが接合されている。
【0022】
前身頃1a及び後身頃1bのそれぞれは、高伸縮性を示すストレッチ生地によって形成された高伸縮部Hと、前記ストレッチ生地よりも低い伸縮性を示す低伸縮生地によって形成された低伸縮部Lとで構成されている。
【0023】
本実施形態のシャツ1による着用者の姿勢矯正では、高伸縮部Hのうち、後身頃1bに形成された第1高伸縮部H1が主たる機能を担う。具体的には、第1高伸縮部H1は、着用者の左右の肩甲骨を近付けるように収縮し、これによって、着用者の胸を反らせ、猫背姿勢を矯正するように機能する。一方、前身頃1aに形成された第2高伸縮部H2は、第1高伸縮部H1を下方から支持して第1高伸縮部H1の機能を補助するように機能する。また、前身頃1aに形成された第1低伸縮部L1が、第1高伸縮部H1に対向するように配されており、それによって、第1低伸縮部L1が第1高伸縮部H1の上記機能を阻害しないようになっている。
【0024】
前身頃1aは、低伸縮部Lとして、着用者の左右の肩から胸部を被覆する第1低伸縮部L1と、着用者の腹部を被覆する第2低伸縮部L2とを有する。また、前身頃1aは、高伸縮部Hとして、第1低伸縮部L1と第2低伸縮部L2との間に形成された帯状の第2高伸縮部H2を有する。
【0025】
第1低伸縮部L1は、前身頃1aの上端部から前身頃1aの上下方向の中央部にまで広がっている。第1低伸縮部L1は、前身頃1aの上端縁及び側端縁の一部をなしている。第2低伸縮部L2は、前身頃1aの上下方向の中央部から前身頃1aの下端部にまで広がっている。第2低伸縮部L2は、前身頃1aの側端縁の一部及び下端縁をなしている。
【0026】
第2高伸縮部H2は、幅方向に沿って延びている。より具体的には、第2高伸縮部H2は、着用者の胸部の下端に沿うように延びている。第2高伸縮部H2は、アームホール形成端部111aよりも下方において幅方向に延びている。第2高伸縮部H2の上下方向の幅は、0.5~5cmであることが好ましく、1~3cmであることがより好ましい。
【0027】
本実施形態では、第2高伸縮部H2が、アームホール形成端部111aから下方に離れた位置に形成され、且つ、第1低伸縮部L1が、第2高伸縮部H2から上方に広がるように形成されている。なお、第2高伸縮部H2は、アームホール形成端部111aの下端と交差するように形成されていてもよい。第2高伸縮部H2の上端とアームホール形成端部111aの下端との間隔は、0~10cmであることが好ましく、1~7cmであることがより好ましい。本実施形態のように、第2高伸縮部H2がアームホール形成端部111aから下方に離れた位置に形成されていると、着用者の腕のつけ根周りの可動を阻害しにくくなるため、好ましい。
【0028】
後身頃1bは、少なくとも着用者の左右の肩甲骨を被覆する第1高伸縮部H1を有する。本実施形態の第1高伸縮部H1は、後身頃1bの上端部から後身頃1bの上下方向の中央部にまで広がっている。これによって、本実施形態の第1高伸縮部H1は、着用者の背部を被覆し得るものとなる。第1高伸縮部H1は、後身頃1bの上端縁の一部及び側端縁の一部をなしている。
【0029】
また、後身頃1bは、低伸縮部Lとして、着用者の左右の肩を被覆する一対の第3低伸縮部L3と、着用者の腰部を被覆する第4低伸縮部L4とを有する。
【0030】
第1高伸縮部H1は、後身頃1bの上端部から後身頃1bの上下方向の中央部にまで広がっている。第1高伸縮部H1は、後身頃1bの上端縁の一部及び側端縁の一部をなしている。第1高伸縮部H1は、アームホール形成端部111bよりも下方にまで広がっている。第1高伸縮部H1の下端とアームホール形成端部111bの下端との間隔は、0~10cmであることが好ましく、1~7cmであることがより好ましい。
【0031】
第1高伸縮部H1の上端部は、幅方向中央部において首リブ1dに接合されており、幅方向両端部において前身頃1aの上端部に接合されている。第1高伸縮部H1の上端縁は、中央から両端にかけて下方に傾斜する一対の傾斜部H11を有する。そして、この傾斜部H11の上方に、第3低伸縮部L3が形成されている。これによって、本実施形態のシャツ1は、第1高伸縮部H1が着用者の肩周りの可動を阻害しにくいものとなっている。
【0032】
第4低伸縮部L4は、後身頃1bの上下方向の中央部から後身頃1bの下端部にまで広がっている。第4低伸縮部L4は、後身頃1bの側端縁の一部及び下端縁をなしている。
【0033】
本実施形態では、第1高伸縮部H1と第2高伸縮部H2とは、アームホールの下方において接合されている。具体的には、第2高伸縮部H2の両端部が、第1高伸縮部H1の下端部に接合されている。また、第1高伸縮部H1の下端と第2高伸縮部H2の下端とが連続するように幅方向に延びている。なお、第1高伸縮部H1の下端と第2高伸縮部H2の上端とが連続するように延びていてもよく、第1高伸縮部H1の下端よりも下方において、第2高伸縮部H2の下端が延びていてもよい。
【0034】
図3に示すように、第2高伸縮部H2は、第1高伸縮部H1の上方への収縮を抑制するように第1高伸縮部H1の下端部に接合されている。また、第2高伸縮部H2は、第1高伸縮部H1と共働して高伸縮の環状領域HARを形成している。環状領域HARは、径方向内方に(着用者に向かって)収縮する領域である。この環状領域HARは、前身頃1a及び後身頃1bを着用者に支持するように機能する。これによって、第1高伸縮部H1の姿勢矯正において適切な位置からの位置ずれが抑制される。また、上下方向へ収縮する第1高伸縮部H1への第1低伸縮部L1の追従が抑制され、延いては、前身頃1aの位置ずれが抑制される。
【0035】
前身頃1aの第2低伸縮部L2と、後身頃1bの第4低伸縮部L4とは、対向するように形成されている。
【0036】
首リブ1dは、前記低伸縮生地によって構成されている。
【0037】
本実施形態の高伸縮部Hを形成する前記ストレッチ生地は、よこ方向における伸長率が、100%以上を示すことが好ましく、150%以上を示すことがより好ましく、200%以上を示すことがさらに好ましい。また、たて方向における伸長率が30%以上を示すことが好ましく、50%以上を示すことがより好ましく、100%以上を示すことがさらに好ましく、150%以上を示すことがより一層好ましく、200%以上を示すことがとりわけ好ましい。
【0038】
前記ストレッチ生地は、よこ方向における30%伸長時の伸長回復力が、0.5N以上であることが好ましく、1.0N以上であることがより好ましい。また、たて方向における30%伸長時の伸長回復力が、0.5N以上であることが好ましく、1.0N以上であることがより好ましい。前記ストレッチ生地は、通常、よこ方向及びたて方向における30%伸長時の伸長回復力が5N以下を示す。
【0039】
一方、本実施形態の低伸縮部Lを形成する前記低伸縮生地は、よこ方向における伸長率が、200%未満を示すことが好ましく、150%以下を示すことがより好ましい。また、たて方向における伸長率が200%未満を示すことが好ましく、150%以下を示すことがより好ましい。
【0040】
前記低伸縮生地は、よこ方向及びたて方向における30%伸長時の伸長回復力が0.1N以上0.5N未満を示す。
【0041】
前記低伸縮生地は、前記ストレッチ生地よりも、よこ方向における伸長率が50%以上小さい値を示すことが好ましく、100%以上小さい値を示すことがより好ましい。また、前記低伸縮生地は、前記ストレッチ生地よりも、たて方向における伸長率が50%以上小さい値を示すことが好ましい。
【0042】
また、前記低伸縮生地は、前記ストレッチ生地よりも、よこ方向における30%伸長時の伸長回復力が0.5N以上小さい値を示すことが好ましい。また、前記低伸縮生地は、前記ストレッチ生地よりも、たて方向における30%伸長時の伸長回復力が0.5N以上小さい値を示すことが好ましい。これによって、第1低伸縮部L1が、第1高伸縮部H1の姿勢矯正の機能を阻害しにくくなる。
【0043】
前記伸長率は、JIS L 1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)に規定のA法(カットストリップ法)で測定されるものとする。
【0044】
前記伸長回復力は、次のように測定されるものとする。まず、試験片の形状は、長さ160mm、幅25mmの長方形状とする。引張速度及び除荷速度を300mm±20mm/分とし、前記試験片を自然長の80%に相当する長さまで3回繰り返し引っ張り、このうち1回目と3回目の30%伸長時の伸長力・回復力を測定し、2回の平均値を伸長回復力とする。なお、試験片の上端部25mm及び下端部35mmを掴み代とする。
【0045】
前記ストレッチ生地は、JIS L 1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)に規定のD法(繰返し定伸長法)で測定される、よこ方向の伸長弾性率が、70%以上を示すことが好ましく、80%以上を示すことがより好ましい。また、前記ストレッチ生地は、たて方向の伸長弾性率が、70%以上を示すことが好ましく、80%以上を示すことがより好ましい。
【0046】
前記低伸縮生地は、よこ方向及びたて方向の伸長弾性率が、70%以上を示すことが好ましい。
【0047】
高伸縮部Hを形成する前記ストレッチ生地は、JIS L 1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)に規定の測定方法で測定される通気性(A法(フラジール形法))が20cm/cm・s以上を示す。前記ストレッチ生地は、通気性が30cm/cm・s以上を示すことが好ましい。
【0048】
低伸縮部Lを形成する前記低伸縮生地は、通気性が50cm/cm・s以上を示すことが好ましく、100cm/cm・s以上を示すことがより好ましく、200cm/cm・s以上を示すことがさらに好ましい。
【0049】
前記ストレッチ生地及び前記低伸縮生地は、JIS L 1097:2010(繊維製品の吸水性試験方法)に規定の滴下法により測定される吸水速度が60秒以下を示すことが好ましく、30秒以下を示すことがより好ましい。
【0050】
本実施形態の前記ストレッチ生地は、ポリウレタン系繊維とポリエステル系繊維との撚り合わせによって形成されたストレッチ糸で構成されている。本実施形態のストレッチ糸は、芯糸と鞘糸とで構成されている。前記ストレッチ糸におけるポリウレタン系繊維の割合は10~50質量%であり、ポリエステル系繊維の割合は50~90質量%である。これによって、後身頃1bの姿勢矯正並びに前身頃1a及び後身頃1bの位置ずれ抑制に対して、前記ストレッチ生地の伸長率及び伸長回復力を適切な値に設定することができる。なお、前記ストレッチ糸は、ポリエステル系繊維のみで形成されていてもよい。
【0051】
また、前記低伸縮生地は、ポリエステル系繊維で形成された低伸縮糸で構成されている。前記低伸縮糸におけるポリエステル系繊維の割合は90質量%以上である。
【0052】
前記ストレッチ糸における前記鞘糸は、仮撚加工糸であることが好ましい。また、前記ストレッチ糸がポリエステル系繊維のみで形成されている場合には、該ポリエステル系繊維は、仮撚加工が施されたものであることが好ましい。これによって、前記ストレッチ生地の伸縮性を高めることができる。また、前記ストレッチ生地及び前記低伸縮生地の嵩高性を高めることができ、高伸縮部H及び低伸縮部Lに良好な風合いを付与することができる。
【0053】
前記ストレッチ糸及び前記低伸縮糸は、マルチフィラメント糸であることが好ましい。これによって、前記ストレッチ生地及び前記低伸縮生地が、吸水性に優れるものとなる。また、前記ストレッチ糸及び前記低伸縮糸は、吸水性、ストレッチ性を向上させる上で、仮撚捲縮加工が施された仮撚捲縮加工糸、空気加工糸、2種以上の構成糸条を空気混繊加工や複合仮撚加工させた複合糸であることが好ましい。
【0054】
前記ポリエステル系繊維は、単糸繊度が0.5dtex以上であることが好ましく、1.0dtex以上であることがより好ましい。これによって、前記ストレッチ糸及び前記低伸縮糸の摩耗に対する強度が向上する。前記ポリエステル系繊維は、単糸繊度が2.5dtex以下であることが好ましく、1.5dtex以下であることがより好ましい。これによって、前記ストレッチ生地及び前記低伸縮生地が、吸水性及び通気性に優れるものとなる。
【0055】
前記ポリエステル系繊維の単繊維横断面形状は、円形状であってもよく、三角形状、矩形状、複数のくびれを有する形状、中空状など異型断面形状であってもよい。前記ポリエステル系繊維は、異種のポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維とポリトリメチレンテレフタレート繊維とからなる2種の繊維)が接合されたサイドバイサイド型繊維のような複合繊維であることが好ましい。前記サイドバイサイド型繊維は、潜在捲縮を発現するため、これを用いて構成された糸は伸縮性に優れるものとなる。よって、特に、高伸縮部Hのポリエステル系繊維に前記サイドバイサイド型繊維が用いられることで、比較的少ない量で高伸縮部Hに優れた伸縮性を付与することができるため、高伸縮部Hに通気性を付与し易くなる。
【0056】
前記ポリエステル系繊維を形成するためのポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸等が挙げられる。前記ポリエステル樹脂は、他のモノマーを共重合させた二元共重合体や三元共重合体であってもよい。さらに、前記ポリエステルは、リサイクルにより得られたものであることが好ましい。
【0057】
前記ポリエステル系繊維は、前記ポリエステル樹脂と添加剤とを含む樹脂組成物によって形成されていてもよい。前記添加剤としては、酸化チタン等の艶消し剤、抗菌剤、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が挙げられ、これらは1種又は2種以上用いられてもよい。例えば、前記艶消し材を含む前記樹脂組成物で形成されたポリエステル繊維は、セミダル繊維又はフルダル繊維となり、生地に防透け性、赤外線・紫外線遮蔽性を付与することができ、好ましい。
【0058】
本実施形態のストレッチ生地は、前記ストレッチ糸及び前記低伸縮糸の組み合わせにより形成された編物である。また、本実施形態の低伸縮生地は、前記低伸縮糸により形成された編物である。そして、本実施形態のシャツ1は、前記ストレッチ生地と前記低伸縮生地とが、縫合糸や接着剤等の接合材を用いない無縫製(ホールガーメント)で編成されている。言い換えれば、本実施形態のシャツ1は、前記ストレッチ生地と前記低伸縮生地とが前記接合材を介さずにつながっている。より具体的には、前記ストレッチ生地を構成する前記ストレッチ糸と、前記低伸縮生地を構成する前記低伸縮糸とが係合することによって、前記ストレッチ生地と前記低伸縮生地とがつながっている。
【0059】
本実施形態のシャツ1は、ゴルフスイングの正しい動きを習得する際に用いられ得る。ゴルフスイングでは胸を張った正しい姿勢をとることが重要であるところ、本実施形態のシャツ1を着用した着用者は、ゴルフスイングにおいて正しい姿勢を維持することができる。
【0060】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るシャツは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るシャツは、上記作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るシャツは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、後身頃1bの第1高伸縮部H1は、後身頃1bの上端部における右端部から後身頃1bの上下方向中央部の左端部に延びる帯状の左下がり高伸縮部と、後身頃1bの上端部における左端部から後身頃1bの上下方向中央部の右端部に延びる帯状の右下がり高伸縮部とが交差するX字状に形成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係るシャツ1は、前記ストレッチ生地と前記低伸縮生地とが、縫合糸や接着剤等の接合材を用いない無縫製(ホールガーメント)で編成されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、前記ストレッチ生地と前記低伸縮生地とが縫製されたカットソーであってもよく、前記前身頃と前記後身頃とが縫製されたカットソーであってもよい。
【実施例
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0064】
図1図3に示す態様のシャツを作製し、性能について評価することとした。
【0065】
[実施例1に係るシャツの製造例]
高伸縮部の形成には、ポリウレタン系繊維とポリエステル系繊維との撚り合わせによって形成されたストレッチ糸(ポリウレタン系繊維:20質量%、ポリエステル系繊維:80質量%)を用いた。一方、低伸縮部の形成には、ポリエステル系繊維を撚り合わせて形成された低伸縮糸(ポリエステル系繊維:100質量%)を用いた。そして、ホールガーメントにより、前身頃及び後身頃の所定の位置に、高伸縮部及び低伸縮部を形成した。表1に、作製したシャツの各部分の大きさ等について示した。また、表2に、上記の測定方法に従って測定した高伸縮部及び低伸縮部の物性を示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
[比較例1に係るシャツの製造例]
高伸縮部を後身頃の第1高伸縮部のみ(前身頃の第2高伸縮部なし)とした以外は、実施例1と同様にしてシャツを作製した。
【0069】
実施例1及び比較例1のシャツについて、下記の評価方法に従って評価した。結果は、表3に示したとおりである。
【0070】
[評価方法]
モニター10名に、実施例1及び比較例1のシャツを着用させ、腕を上下に振る動作、及び、5分間の歩行をさせた。そして、シャツのずれ上がり(すなわち位置ずれ)の有無について評価した。また、上記のモニター10名に肩及び背中の負担感を5段階(1:負担感小~5:負担感大)で評価させ、10名の平均値を算出した。さらに、肩及び背中の矯正感(1:矯正感小~5:矯正感大、数値が大きいほど良好)、不快感(1:不快感小~5:不快感大)についても同様に5段階で評価させ、10名の平均値を算出した。なお、矯正感とは、モニターがシャツによって肩甲骨が寄せられている程度を意味する。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示したように、実施例1のシャツは、着用時の位置ずれの抑制、姿勢矯正、及び不快感の抑制に優れることが認められた。
【符号の説明】
【0073】
1: シャツ、1a:前身頃、11a:側端縁部、111a:アームホール形成端部、1b:後身頃、11b:側端縁部、111b:アームホール形成端部、1c:袖部、1d:首リブ、H:高伸縮部、H1:第1高伸縮部、H11:傾斜部、H2:第2高伸縮部、HAR:高伸縮の環状領域、L:低伸縮部、L1:第1低伸縮部、L2:第2低伸縮部、L3:第3低伸縮部、L4:第4低伸縮部
図1
図2
図3