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  • 特許-水晶振動子 図1
  • 特許-水晶振動子 図2
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  • 特許-水晶振動子 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水晶振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20240404BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03H9/02 K
H03H9/02 N
H03H9/10
H01L25/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020089712
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184565
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関口 浩基
(72)【発明者】
【氏名】有路 巧
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065211(JP,A)
【文献】特開2015-029201(JP,A)
【文献】特開2019-114937(JP,A)
【文献】特開2018-033062(JP,A)
【文献】特開2020-010817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L25/00-25/16
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースに実装された台座と、前記台座の第1面に実装された水晶片と、前記台座の前記第1面とは反対面の第2面に実装された温度センサと、前記ベースに接合され前記ベースと共に前記水晶片を密閉する蓋部材と、を備え、
前記台座は、前記温度センサを前記ベースから離すため前記温度センサの厚さより大きい高さの凸部を備え、かつ、前記温度センサの一部分に対応する箇所に、前記第1面から前記第2面に貫通している開口部を備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記温度センサを、両端に接続端子を持つチップ部品とし、
前記開口部を、前記温度センサの前記接続端子以外の部分を露出する開口部とし、
当該台座の当該開口部の脇に、前記接続端子に接続する端子を備えたことを特徴とする請求項に記載の水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶片を、台座を介して容器に実装した構造を有し、かつ、当該容器内に温度センサを備えた、温度センサ付き水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶片と温度センサとを、1部屋の容器内に収容した構造の水晶振動子は、1部屋型の温度センサ付き水晶振動子と呼ばれる。
【0003】
1部屋型の温度センサ付き水晶振動子の一例は、例えば特許文献1に開示されている。
この水晶振動子では、セラミック製の容器に備わる凹部内に、水晶片が片持ち構造で実装され、当該凹部の底面に温度センサとしての例えばサーミスタが実装されている(特許文献1の図2)。
【0004】
一方、水晶振動子自体の改良型として、水晶片を台座に実装し、そして、この台座を容器本体の凹部の底面に実装する構造の水晶振動子がある(例えば特許文献2等)。台座を用いると水晶片は台座を介して容器に実装されるため、そうでない場合に比べ、外部からの振動の影響を低減できる。その結果、位相雑音特性が向上する等の利点が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-205938号公報
【文献】特開2019-220938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような台座を用いた水晶振動子について、温度センサを付加する際の好ましい構造が望まれる。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、台座を用いた水晶振動子に温度センサを付加する際の好ましい構造を有した水晶振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、この出願の水晶振動子によれば、ベースと、前記ベースに実装された台座と、前記台座の第1面に実装された水晶片と、前記台座の前記第1面とは反対面の第2面に実装された温度センサと、前記ベースに接合され前記ベースと共に前記水晶片を密閉する蓋部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明を実施するに当たり、前記台座は、前記温度センサを前記ベースから離すための凸部を有し、かつ、当該凸部の高さが前記台座の厚さより厚い(大きな寸法としてある)ものが好ましい。
このような構成とすれば、温度センサには、べース側からの温度の影響に比べ、台座側の温度の影響すなわち水晶片が在る側の雰囲気の温度の影響が伝わり易くなるので、温度センサは、水晶片の実情に即した温度情報を検出するため、台座が存在しても、水晶振動子の周波数温度特性の補償を良好に行える。
【0009】
さらに、この発明を実施するに当たり、前記台座は、前記温度センサの一部分に対応する箇所に、前記第1面から前記第2面に貫通している開口部を備えたものとすることが好ましい。
開口部を備えた構成とすれば、開口部が無い場合に比べて、温度センサに水晶片側の温度雰囲気が伝わり易いので、温度センサは水晶片の実情に即した温度情報を検出するため、台座が存在しても、水晶振動子の周波数温度特性の補償を良好に行える。
【0010】
さらに、この発明を実施するに当たり、前記温度センサを、両端に接続端子を持つチップ部品とし、前記開口部は、前記温度センサの前記接続端子以外の部分を露出する開口部とし、当該台座の当該開口部の脇に、前記接続端子に接続する端子を備えたものとすることが好ましい。
このような構成とすれば、温度センサを台座に所望の通り実装できる。しかも、開口部を介して、温度センサの接続端子以外の部分に、水晶片側の空間の雰囲気が及ぶので、温度センサは、水晶片の実情に即した温度情報を検出するため、台座が存在しても、水晶振動子の周波数温度特性の補償を良好に行える。
【0011】
なお、この発明でいうベースは、典型的には、水晶片を実装する凹部を有したセラミック製容器であることが好ましい。ただし、ベースが平板状のものであって、この平板状のベース上に上記の台座を設け、この台座の第1面に水晶片を設け、かつ、この第1面と対向する第2面に温度センサを設け、そして、当該平板状のべーすをキャップ状の蓋部材で封止した構造も本発明に含まれる(図4参照)。
【発明の効果】
【0012】
この発明の水晶振動子によれば、水晶片が実装された台座の裏面側に温度センサが実装された構造であるため、水晶片側の雰囲気温度が台座を介してすぐに温度センサに伝わるので、台座が存在しても、水晶振動子の周波数温度特性の補償を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)、(B)、(C)は、実施形態の水晶振動子10の説明図である。
図2】(A)、(B)は、実施形態の水晶振動子10の図1に続く説明図である。
図3】(A)、(B)は、実施形態の水晶振動子10に用いる台座の好ましい構造例の説明図である。
図4】他の実施形態の水晶振動子30を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の水晶振動子の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれらの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる構造例、使用部材等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
図1は、実施形態の水晶振動子10を説明する図である。特に、図1(A)は水晶振動子10の上面図、図1(B)は図1(A)中のP-P線に沿った断面図、図1(C)は台座13に着目した上面図である。ただし、図1(A)では、蓋部材19を外した状態を示してある。また、図2(A)は、台座13に対する水晶片15と温度センサ17との接続関係を示した平面図である。また、図2(B)は、水晶片15と、温度センサ17と、ベース11の裏面に設けた外部実装端子11cと、の接続関係を示した平面図である。また、図3(A)、(B)は、台座13の好ましい構造例を示した斜視図である。
【0016】
この水晶振動子10は、ベース11と、台座13と、水晶片15と、温度センサ17と、蓋部材19と、を備えている。以下、各構成成分の具体的構造について説明する。
ベース11は、この場合、平面形状が四角形状、具体的には長方形状で、水晶片15を内包できる凹部11aを有したセラミック製パッケージで構成してある。凹部11aは、平面形状が四角形状となっている。
また、ベース11は、凹部11aの底面の例えば四隅付近各々に接続パッド11bを備えている。これら4つの接続パッドのうちの2つは水晶片15と接続するものであり、残りの2つは温度センサ17と接続するものである。
また、ベース11は、裏面の四隅各々に、外部実装端子11cを備えている。外部実装端子11cと、上記の接続パッド11bとは、図示しないビア配線又はキャスタレーションによって、電気的に接続されている。
また、この場合のベース11は、凹部11aの周囲の土手部分に、シーム封止用のシールリング11dを備えていて、このシールリング11dに蓋部材19が溶接されて、蓋部材19と共に水晶片15を密閉している。ただし、封止構造は、シーム封止構造に限られず、金錫等のロー材による封止構造、ガラス封止構造等、他の構造でも良い。
【0017】
台座13は、水晶片15を実装するための中間部材としての役割を持つものである。台台座13は、平面的に見て長方形状のものとしてある。台座13は、セラミック製、ガラス製、水晶製、出ガスが生じにくい樹脂製等、封止雰囲気を損ねない材料であれば任意のもので良いが、セラミック製、ガラス製、水晶製が好ましい。水晶製台座は、水晶片15との熱膨張係数が同程度にできるので、応力の影響が低減できるので好ましい。セラミック製台座は、製造が容易であるため好ましい。ガラス製台座は、安価なので好ましい。
台座13の第1の面13aに、水晶片13を接続するための端子13eが、また、第1の面13aと対向する第2の面13bに、温度センサ17を接続するための端子13eが、それぞれ所定の位置に設けてある。これら端子13eは、台座13に設けてある側面配線やビア配線(図示を省略)などによって、ベース11の対応する接続パッド11bに、それぞれ接続されている。
台座13の第1の面13aに、水晶片15が、第2の面13bに温度センサ17がそれぞれ実装されている。そして、この台座13は、ベース11の凹部11aの底面に、接続パッド11bを介して、好適な導電性部材によって実装してある。これら実装構造の詳細については、後に説明する。
【0018】
また、台座13は、この場合、温度センサ17をベース11の凹部11aの底面から離すための凸部13cを有している。凸部13cの高さhは、台座の厚さtより厚く、すなわち大きな寸法にしてある。高さhは、高すぎては水晶振動子10の厚さを厚くしてしまうので、このことと温度センサ17の厚さより厚いことを条件に、設計に応じて設定する。
なお、凸部13cを設ける位置は、設計に応じた任意の位置にできる。凸部13cは、例えば、台座の短辺側の両端に設けても良く(図3(A))、台座の長辺、短辺各々の中央部に設けても良い(図3(B))。
【0019】
また、台座13は、この場合、温度センサ17の一部分に対応する箇所に、第1面13aから第2面13bに貫通している開口部13dを備えている。
なお、この実施形態の場合は、温度センサ17として両端に接続端子17aを有したチップ部品を用いていて、従って、開口部13dは、温度センサ17の接続端子17a以外の部分17bすなわち温度センサ17の中央部分17bを露出する開口部13dであって、平面形状が四角形状の開口部13dとしてある。台座13の開口部13dの脇に温度センサ17に接続する端子13eを設けてある。
【0020】
水晶片15は、典型的には、ATカットの水晶片である。水晶片15は、平面形状が長方形状で、表裏の面に励振用電極15aと引き出し電極15bとを備えている。この例の場合の引き出し電極15bは、励振用電極15aから水晶片15の一方の短辺側に引き出してある。
水晶片15は、引き出し電極15bの位置で、台座13の端子13eに例えばシリコーン系導電性接着剤21によって実装してある。
【0021】
温度センサ17は、サーミスタ又はダイオードのPN接合部を利用するもの等で構成できる。この例の場合は、両端に接続端子17aを有したチップ部品型のサーミスタ17を用いている。温度センサ17は、接続端子17aを台座13の第2面13bに備わる端子13eに、好適な導電性部材例えばハンダ又は導電性接着剤例えば水晶片15の固定に用いたシリコーン系導電性接着剤によって接続することで、台座13の第2面13bに実装してある。
蓋部材19は、封止構造に応じたもので、この場合はシーム封止用の金属製リッドを用いている。
【0022】
この実施形態の水晶振動子10では、水晶片15が台座17を介してベース11に実装されていると共に、台座15の水晶片15を実装した面の裏側面に温度センサ17を実装してあるので、温度センサ17は、水晶片の実情に即した温度情報を検出し易い。しかも、台座13に開口部13dを設け、凸部13cの高さも所定高さとしてあるため、温度センサ17は、水晶片の実情に即した温度情報を一層検出し易い。従って、台座が存在しても、水晶振動子の周波数温度特性の補償を良好に行える。
【0023】
図4は、他の実施形態の水晶振動子30を説明する図であって、図1(B)と同様な位置での断面で示した図である。
この水晶振動子30は、ベースとして平板上のセラミック製ベース31を用い、蓋部材として、台座13及び振動片15を内包できるキャップ状の蓋部材33を用いたものである。平板状のセラミック製ベース31は、実施形態の水晶振動子10のベース11と同様に、接続パッド11b及び外部接続端子11cを備えている。キャップ状の蓋部材33は例えば金属製のキャップで構成できる。平板状のベース31の蓋部材33が接合される領域には、メタライズ膜(図示せず)設けてある。そして、平板状のベース31と、キャップ状の蓋部材33とは、例えば金錫等のロー材(図示を省略)によって、接続してある。 この水晶振動子30においても、水晶振動子10で得られる効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0024】
10:実施形態の水晶振動子、 11:ベース、
11a:凹部、 11b:接続パッド、
11c:外部実装端子、 13:台座、
13a:台座の第1面、 13b:台座の第2面
13c:凸部、 13d:開口部
13e:端子、 15:水晶片
15a:励振用電極、 15b:引き出し電極
17:温度センサ、 17a:温度センサの接続端子、
17b:温度センサの接続端子以外の部分、
19:蓋部材、 21:導電性接着剤
図1
図2
図3
図4