IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドレッサ、インクの特許一覧

特許7465627安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定
<>
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図1
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図2
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図3
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図4
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図5
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図6
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図7
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図8
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図9
  • 特許-安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20240404BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16K37/00 F
F16K17/04 E
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019006731
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2019152330
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】15/878,152
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502122473
【氏名又は名称】ドレッサ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Dresser,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・デール・ダンジー
(72)【発明者】
【氏名】ラジェッシュ・キリシュヴァサン
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-201310(JP,A)
【文献】特開2012-197938(JP,A)
【文献】中国実用新案第205618755(CN,U)
【文献】実開平4-54373(JP,U)
【文献】特開2018-6667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 17/00-17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座(112)に対して移動可能な閉鎖構成要素(110)、及び前記閉鎖構成要素(110)と結合された予荷重ユニット(114)を備え、前記予荷重ユニット(114)は圧縮ばね(118)を備える、弁機構(108)と、
前記圧縮ばね(118)上に配設されたひずみゲージ(120)であって、前記ひずみゲージ(120)が前記圧縮ばね(118)の両端から離れた巻き部分に固定されたひずみゲージ(120)と、
前記ひずみゲージ(120)に接続された処理ユニット(132)と、
を備え、
前記処理ユニット(132)は、プロセッサと、当該プロセッサに接続され、実行可能命令が記憶されたメモリを備え、当該実行可能命令を実行することで、
前記ひずみゲージ(120)からのひずみデータを分析して当該ひずみデータ自体から最大ひずみ及び最小ひずみを検出し、
前記最大ひずみ及び最小ひずみに基づいて、前記ひずみデータの少なくとも一部における、前記弁座(112)に対する前記閉鎖構成要素(110)の経時的な移動を定量化して、前記弁座(112)に対する前記閉鎖構成要素(110)の開いている時間及び開かれた距離に応じて前記弁座(112)を流れる流体の体積を計算するように構成されている、安全弁(100)。
【請求項2】
前記ひずみゲージ(120)はホイートストンブリッジ回路を備える、請求項1記載の安全弁(100)。
【請求項3】
前記ひずみゲージ(120)は、前記圧縮ばね(118)に接着される電気回路を備える、請求項1又は2記載の安全弁(100)。
【請求項4】
前記ひずみゲージ(120)と結合された無線通信機(130)
を更に備える、請求項1から3のいずれか1項記載の安全弁(100)。
【請求項5】
前記処理ユニット(132)は、前記ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、前記圧縮ばね(118)のばね力を計算するように構成されている、請求項1から4のいずれか1項記載の安全弁(100)。
【請求項6】
前記処理ユニット(132)は、前記ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、前記圧縮ばね(118)の変形を判定するように構成されている、請求項1から5のいずれか1項記載の安全弁(100)。
【請求項7】
前記処理ユニット(132)は、前記ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、前記圧縮ばね(118)の変形が設定圧力に関連する閾値基準から逸脱するとの警告を生成するように構成されている、請求項1から6のいずれか1項記載の安全弁(100)。
【請求項8】
前記処理ユニット(132)は、前記ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、前記圧縮ばね(118)を圧縮するために必要な圧力を判定するように構成されている、請求項1から7のいずれか1項記載の安全弁(100)。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項記載の安全弁(100)と、
前記安全弁(100)のひずみゲージ(120)からのデータを使用して、前記安全弁(100)の圧縮ばね(118)を圧縮するために必要な前記安全弁(100)の閉鎖構成要素(110)に対する圧力を判定するように構成された、監視ユニット(102)と、
を備える、システム(122)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁の性能を監視するための圧縮ばねの変形の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
熱水力が関与する発電プラントでは、冷却水及び蒸気を運ぶラインに対する圧力の急激な増加からの保護を行う「フェ-ルセーフ」デバイスを使用する。これらのデバイスは、「安全」弁又は「圧力解放」弁としても知られ、設備を又は施設のある部分を損傷させる可能性のある、「超過圧力」状態を回避するために必要である。特に原子力施設において、大きな損傷が生じる可能性のあることは、操作者がこれらのデバイスの性能を監視しなければならない理由の1つである。安全弁が設定された規制性能規準を満たすことを保証するために、安全弁の性能を評価するための定期的な点検もまた必要である。これらの点検は多くの場合、安全弁が開いて処理ラインにおける圧力が緩和されるときの圧力を規定する、設定圧力(又は「設定点」)に重点を置いている。ただ1つのデバイスが、例えば設定圧力の僅か1%の不具合を起こしても、操作者はその施設内のありとあらゆるデバイスを評価する必要があり得る。施設内には何百という安全弁があるので、この「フリート」評価のために、操作者は労働と中断時間の両方において負担を強いられる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の主題は、これら包括的なフリート評価の結果生じることの多い、高コストの労働と施設の中断時間とを回避するための改善に関する。本明細書において特に対象となるのは、圧縮コイルばねなどの荷重を生む構成要素の、機械的特性を反映したデータを生成する安全弁である。このデータは、安全弁の設定点及び動作に関わる他の計測値と、良好に相関している。このように、本実施形態では、通常義務付けられているあらゆる性能点検とは別に、プラントの操作者及び技術者に、要件を満たさない可能性のある性能欠陥に対する警告を発して、適時の保守又は評価を促進するための手段が提供される。
【0004】
本明細書における実施形態は、弁組立体の性能を監視する従来の慣行を上回る利点を提供する。それらの慣行ではひずみゲージを用いる場合があるが、これらのゲージからのデータは通常、(弁の上流の)流体圧力、又は弁棒(若しくはスピンドル)などの構成要素のひずみに関連するものである。他方で、圧縮ばねは、これがひずみゲージを装着するためのより大きい面積を提供することから、及び、圧縮ばねが、デバイスの動作への感度が特に高いことから、ひずみの測定により適している。この感度の高さは設定圧力を予測するのに特に有用であり、このことが以下の表1及び表2に示されている。これらの表では、異なる設定圧力に関して定格を定められた、圧縮ばね(「ばね」)の計算されたひずみ値と、弁上のスピンドル、圧縮ねじ(「ねじ」)、及びばねワッシャ(「ワッシャ」)などの、他の構成要素の計算されたひずみ値とが比較されている。
【0005】
【表1】
【0006】
【表2】
上記の表1及び表2中の値に関する計算は、下記の表3に記載した参考文献に基づいている(変量及び前提条件を説明するデータについては、図7図8図9、及び図10を参照)。
【0007】
【表3】
上記の表1及び表2中の情報は、ばねにおいて測定したひずみが、弁組立体上にある他の構成要素(例えば、ねじ、ワッシャ、スピンドル、等)において測定したひずみよりも、少なくとも60%大きいことを示している。これらの発見は、本実施形態の方が、性能特性の非常に小さい変化を検出する可能性がより高いことを示しているが、その理由は、そのような変化がもたらすひずみの変化は、弁組立体上の他の構成要素上では小さすぎて測定できないと考えられるからである。
【0008】
以下では、下記の添付の図面を手短に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】安全弁の例示的な実施形態の概略図である。
図2図1の安全弁からのデータを処理するための方法の例示的な実施形態の流れ図である。
図3】データを送信するための構造を有する図1の安全弁の概略図である。
図4】データを処理し送信するための構造を有する図1の安全弁の概略図である。
図5】ウェブサーバを使用してネットワークを介してデータを送信するための構造を有する、図1の安全弁の概略図である。
図6図1の安全弁に関する例示的な構造の斜視図である。
図7図6の安全弁において使用される圧縮ばねのひずみ値を計算するために使用するデータの表である。
図8図6の安全弁において使用される圧縮ねじのひずみ値を計算するために使用するデータの表である。
図9図6の安全弁において使用されるばねワッシャのひずみ値を計算するために使用するデータの表である。
図10図6の安全弁において使用されるスピンドルのひずみ値を計算するために使用するデータの表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
同様の参照符号は、適用可能である場合、いくつかの図の全てにわたって、同一の又は対応する構成要素及びユニットを指す。これらの図は、特に指示がない限り正確な縮尺では描かれていない。本明細書に開示する実施形態には、いくつかの図のうちの1つ若しくは複数に現れる要素、又は、いくつかの図の組み合わせに現れる要素が含まれ得る。更に、方法は例示的なものに過ぎず、例えば、個々の段の順序変更、追加、削除、及び/又は変更を行うことによって、修正することができる。
【0011】
以下の考察では、処理ライン上の所定位置において、その場でデータを生成できる安全弁の実施形態について記載する。本実施形態では構成要素、すなわち圧縮ばねの機械的特性を測定するが、このことは、安全弁の近傍における周囲温度若しくは湿度、デバイスの上流及び下流の流体圧、又は更には、弁棒などの特定の部品の物理的条件(例えば位置)若しくは機械的特性といった、動作条件に重点を置く従来の慣行とは異なっている。他方で、圧縮ばねはデバイスの動作への感度が特に高いので、この構成要素の使用は有益である。結果的に得られるデータは、設定点の変化を予測するのに有用である。追加の利点として、このデータは、安全弁が開いて圧力が緩和されたことを示すこと、及び、デバイスの動作に関わる他の動作計測値の中でも特に、失われた物質の体積を計算するための基礎を提供することができる。これらの特徴により、プラントの操作者は便益を得ることができ、理想的には、義務付けられた点検の結果生じ得る高コストで時間のかかる分析(及び保守)を回避することができる。他の実施形態は、本主題の範囲内にある。
【0012】
図1には、安全弁100の例示的な実施形態の全体的な概略図が描かれている。この実施形態は、信号104を介してデータが交換される監視ユニット102と結合されてもよい。監視ユニット102はまた、コンピュータ(例えば、ラップトップ若しくはデスクトップ)又はハンドヘルドデバイス(例えば、タブレット若しくはスマートフォン)などの、遠隔の端末106と結合されてもよい。示されているように、安全弁100は、閉鎖部材110と弁座112とを有する、弁機構108を備えてもよい。閉鎖部材110に対する荷重Lを生成するために、所定位置に予荷重ユニット114がある。予荷重ユニット114はこの目的のために、ばね力Fを生成する付勢構成要素116、例えば圧縮コイルばね118を含んでもよい。センサ120は、圧縮ばね118と結合されてもよい。
【0013】
大まかに言えば、安全弁100は、デバイス上の構成要素に関連するデータを生成するように構成されてもよい。これらの構成は、変形、例えば圧縮ばね118のひずみを測定してもよい。ひずみの変化は、安全弁100の性能に影響し得る様々な要因の結果として生じる。ひずみは、ばね力Fを変動させ安全弁100の設定点に不利に作用する、圧縮ばね118の「弛緩」を特定するのに、特に有益である。ばねの弛緩を引き起こし得る要因としては、(a)高い周囲温度への暴露、(b)高い周囲温度への長時間の曝露、(c)周期的な温度変化への長時間の曝露、(d)動作温度の変化、(e)圧力解放弁の荷重のかかる部品の材料特性の劣化、(f)圧力解放弁の部品の永久変形、(g)デバイスの動作上の不具合(例えば、ハングアップ、かじり、局所的な降伏、等)、(h)入口フランジにおける管の荷重、及び(i)出口フランジにおける管の荷重、を特に挙げることができる。大規模な施設では、操作者は、本実施形態をデバイスのフリート全体にわたって活用して、例えば、義務付けられた任意の点検の前に適切な予防保守又は修理が行われるのを保証することができる。この特徴により、義務付けられた点検においていずれか1つのデバイスが不合格になる可能性を大きく低減することができ、したがって、施設に計画外の追加の中断時間をもたらし得る、実行するのにコストのかかる全体的なフリート評価を行う必要を、無くすことができる。
【0014】
監視ユニット102は、ひずみデータを処理するように構成されてもよい。これらの構成により、安全弁100の設定点又は動作に関わる他の計測値を予測する値を、定量化(又は定性化)することができる。端末106は、プラントの操作者が検討できるようにこれらの値を表示する、対話型ユーザインタフェースを提供してもよい。このインタフェースは、プラントの操作者がリアルタイムで又は安全弁100の動作と並行して安全弁100の性能を容易に評価できるようにする形で、値を提示してもよい。
【0015】
弁機構108は、超過圧力状態からの保護をもたらすように構成されてもよい。これらの構成は、熱水力が関与する発電プラント、例えば原子力施設で使用することが考えられ、これらのプラントではボイラ又は原子炉の温度を放散させるために、非常に高圧の冷却水が流される。ただし本開示では、本明細書中の概念が、ある範囲にわたる圧力の液体を取り扱う同様の状況に置かれたデバイス及びシステムに適用され得ることを企図している。典型的には、デバイスは初期状態において、閉鎖構成要素110が弁座構成要素112と接触した状態で、閉位置にある。構成要素110、112の好適な構造では、金属対金属の封止が作り出される。この特徴は、極端な温度又は圧力の下で並びに腐食性物質又は危険物質があっても、弁108が動作できるようにするのに、有益である。
【0016】
予荷重ユニット114は、閉鎖構成要素110の下流の高圧下であっても金属対金属の封止を維持するように構成されている。これらの構成は、付勢構成要素116に予荷重を加えるための機構を含んでもよい。これらの機構は、安全弁100をその閉位置に維持して弁座112を通って物質が流れるのを防止するための荷重Lを達成するために必要なばね力Fを生成する量だけ、圧縮ばね118を圧縮することができる。荷重Lを上回る閉鎖構成要素110の下流の圧力により、圧縮ばね118が圧縮されて、閉鎖構成要素110が弁座112から離れるように移動させられ得る。この開位置において、弁座112を通って物質が流れることになる。安全弁100は、閉鎖部材110の下流の圧力が荷重Lよりも低くなって、圧縮ばね118がその以前の閉位置に戻ることができるようになるまで、開いたままである。
【0017】
センサ120は、圧縮ばね118の変形における何らかの変化を測定するように構成されてもよい。好適なデバイスは、非常に小さいひずみの変化(例えば、ねじりひずみ、軸ひずみ、曲げひずみ、又はせん断ひずみ)に応答し得る。ただし本開示では、圧縮ばね118に関する温度(例えば表面温度)又は類似の変量への感度が高いデバイスもまた含まれ得ることを企図している。例示的なひずみゲージは、例えば、薄いキャリア又は基板上に配設された、グリッドを形成するように配置構成されている結合された金属ワイヤ又は金属箔からできている、電気回路を備えてもよい。1つの例示的な配置構成では、ホイートストンブリッジ回路が形成されるが、他の配置構成も同様に広く用いられ得る。ホイートストンブリッジ回路は、その抵抗率が圧縮ばね118のひずみに比例するので、有用である。キャリアは、エポキシなどの接着剤、又は他の好適に配置された材料を使用して、圧縮ばね118に固定されてもよい。電気回路及びひずみゲージ用の他の構成要素を、圧縮ばねの材料の表面に又は中にプリント、エンボス加工、又は刻設するための技術は、デバイスの製造にとっても有用となる場合がある。
【0018】
図2には、安全弁100からのデータを使用するための例示的な方法200の流れ図が示されている。この図には、コンピュータが実装する1つ又は複数の方法及び/又はプログラムに関する実行可能命令を具現化し得る段の概要が示されている。これらの実行可能命令は、監視ユニット102にファームウェアまたはソフトウェアとして記憶されてもよい。この実施形態における各段は、いくつかの実施形態では、変更する、組み合わせる、省略する、及び/又は並び替えることができる。
【0019】
方法200の実施により、安全弁100の性能診断が可能になり得る。方法200は、段202において、センサからのひずみデータを受信することと、段204において、ひずみデータの分析を行って動作に関わる計測値を得ることと、を含んでもよい。方法200はまた、段206において、動作に関わる計測値を閾値基準と比較することも含んでよい。方法200は、段208において、動作に関わる計測値と閾値基準との間の関係を反映した出力を生成することを更に含んでもよい。
【0020】
段202において、監視ユニット102は、センサ120からひずみデータを受信してもよい。ひずみデータは、安全弁100が事前に設定された入口圧力で開くことを可能にする、圧縮ばね118の変形と相関し得る。この段は、例えば固定されたいくらかの時間期間又は間隔で、センサからデータをサンプリングするための段を含んでもよい。サンプリングはまた、施設において出力される計測値を測定する、システム制御部からのトリガ又は警告に応答して行われてもよい。システムはまた、データを連続的に「ストリーム送信」させてもよい。この特徴により、データをストレージメモリ(又はリポジトリ)に記憶する(又は書き込む)ための、追加の段が必要となる場合がある。
【0021】
段204では、監視ユニット102は、ひずみデータの分析を行ってもよい。この分析は、ひずみデータを処理又は使用して弁108にかかる「合力」を計算するための段を含んでもよい。上記したように、(圧縮ばね118の)ひずみはばね力に比例するので、ひずみデータが好ましい。合力は、弁108をその閉位置に維持する、ばね力及び他の弁構成要素の重力による重量の両方から成る。次に、更なる分析により、事前に設定された入口圧力に応じて、この合力を、弁112の設定点又は圧縮ばね118を圧縮するために必要な圧力と一致させることができる。他の分析は、データを使用して閉鎖構成要素110の移動を判定するための段を含んでもよい。これらの段は、データの最大値及び最小値を検出することを含んでもよく、これらの値は、弁108の状態の変化と相関する、その開位置とその閉位置との間などでの移動を記述し得る。このようにして、方法200は、弁108が「開く」若しくは「閉じる」両方の回数を、又は、弁108が開いた(若しくは閉じた)ままである時間を、定量化する値に到達し得る。「開いている」時間及び開かれた距離は、弁108を通して放出される流体の体積を示す根拠となり得る。
【0022】
段206において、監視ユニット102は、計測値を閾値基準と比較してもよい。この段は、例えば安全弁100の「スタンプ付きの」設定点として、閾値基準を割り当てるための段を含んでもよい。スタンプ付きの値の例としては、ASME BPVC Section XIの要件に従うものを挙げることができる。
【0023】
段208において、監視ユニット102は、出力を生成してもよい。この段は、安全弁100に関する潜在的な性能問題を示す警告を生成してもよい。これらの問題は、上記したスタンプ付きの設定点を含む、安全弁100に関する工場設定からの変化と、軌を一にしている場合がある。この警告は、操作者に安全弁100に関する設定の変更を促してもよい。例えば、この警告は、圧縮ばね118の圧縮の量を増加又は減少させてばね力を変化させるように、操作者が予荷重ユニット114を調節することを要求してもよい。この特徴により、通常の評価期間外で、操作者が安全弁100の設定点を調整して、規制性能規準に適合する状態に戻すことが可能になり得る。
【0024】
図3には、安全弁100が、センサ120からのひずみデータの処理を助け得る監視システム122の一部として、概略的に描かれている。監視ユニット102は、安全弁100の構造に固着される搭載デバイス124を含んでもよい。搭載デバイス124は、例えば、ワイヤ又はケーブルを具現化し得る接続部126を介して、センサ120と結合されてもよい。搭載デバイス124の構造は、接続部126と接続されるように構成された基板128、例えばプリント回路基板(PCB)を活用してもよい。PCB128はまた、様々なデータ処理機能を共に助長するために、複数の個別のデバイス(例えば、圧力変換器、温度センサ、音響センサ、等)を支持し、1つに接続してもよい。これらの個別のデバイスには、信号104を送受信するように構成され得る、通信ユニット130が含まれてもよい。1つの実装形態では、これらの構成は、ひずみデータを(信号104を介して)安全弁100から処理ユニット132へとワイヤレスに送信するために、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、又は類似のワイヤレス若しくはセルラーのプロトコルを活用する無線通信又はアンテナの使用に対応する機能性を有してもよい。ただし本開示は、処理ユニット132と接続するためのワイヤ又はケーブルを受けるためのコネクタを搭載デバイス124が含む必要もあることを、排除するものではない。処理ユニット132の例としては、演算コンポーネント、例えば、プロセッサ134及び実行可能命令138が記憶されたメモリ136を挙げることができる。これらの構成要素は、PCB128上に別々に定置されてもよく、又は、マイクロコントローラに見られるように1つに統合されていてもよい。ICインタフェースなどのバス構造140により、演算コンポーネント134、136、138の間でのデータの交換が可能になり得る。
【0025】
図4には、図2のシステム122の概略図が描かれている。搭載デバイス124は、処理ユニット132を含んでもよい。この特徴により、安全弁100はデータを処理するための機能性をも備えることができ、この場合、動作に関わる計測値についての「値」が端末106に送られて、ユーザインタフェース上に表示される。この特定の設計を実装するためのこの追加の処理機能性に安全弁100が対応できるかどうかは、電力の利用可能状況による場合がある。
【0026】
図5には、図2のシステム122の概略図が描かれている。システム122は、搭載デバイス124と端末106との間の通信を容易にするために、ネットワーク142を活用してもよい。実行可能命令138により、データ及び情報をフォーマットしネットワーク106を介して端末106に「提供する(serve up)」ように搭載デバイス124を構成する、「ウェブサーバ」を実装してもよい。このウェブサーバにより、最終使用者は、データの分析及び検討のために、端末106上でウェブベースのブラウザを使用することが可能となり得る。この特徴により、事実上、安全弁100を自律的診断プラットフォームとして具現化できる。ウェブブラウザを介した双方向遠隔アクセスにより、最終使用者は更に、単一の場所からの、安全弁100又はこれに対応するフリートの制御、及びこれらへのアクセスが可能になる。
【0027】
ネットワーク142は、資産管理プラットフォーム(Asset Management Platform、AMP)の一部として構成されてもよい。General Electric(「GE」)から入手可能なPredix(商標)プラットフォームは、製造者の資産知見を組み込むことを可能にする、現行技術の最先端のツール及びクラウドコンピューティング技法によって実現した、AMP技術の新規な具体例であり、一式の開発ツール及びベストプラクティスにより、資産使用者がソフトウェアと運用との間のギャップに橋渡しして、能力を向上させ、革新を助長し、最終的に経済的な価値をもたらすことが可能になる。そのようなシステムの使用を通して、本明細書での安全弁などの産業資産の製造者及び操作者は、産業資産自体、かかる資産のモデル、及びかかる資産の産業上の運用又は応用についてのその理解を活用するための独自の環境に置かれ、資産知見を通して業界顧客にとっての新しい価値を生み出すことが可能になる。
【0028】
ネットワーク142、並びに産業資産を管理するための他のシステム及び方法は、産業分野向けモノのインターネット(Industrial Internet of Things、IIoT)を含み得るか、又はその一部であり得る。ある例では、IIoTにより、安全弁などの産業資産が、何らかの意味のある方法で、インターネット若しくはクラウドに、又は互いに接続される。本明細書に記載するシステム及び方法は、「クラウド」又は遠隔の若しくは分散した演算リソース又はサービスを使用することを含み得る。クラウドを使用して、1つ又は複数の産業資産を表す情報又はそれに関する情報を、受信する、中継する、送信する、記憶する、分析する、又はそれ以外で処理することができる。ある例では、クラウドコンピューティングシステムは、少なくとも1つのプロセッサ回路と、少なくとも1つのデータベースと、クラウドコンピューティングシステムとデータ通信を行う複数の使用者又は資産と、を含む。クラウドコンピューティングシステムは、特定のタスクを行うように、例えば、資産の保守、分析、データ保管、セキュリティ、又は他の何らかの機能と関連したタスクを行うように構成された、1つ若しくは複数の他のプロセッサ回路若しくはモジュールを更に含み得るか、又はこれらと結合され得る。
【0029】
一般に、IIoTを可能にするために産業資産を遠隔演算リソースと統合することは、多くの場合、特定の産業とは及びコンピュータネットワークとは別個の異なる技術的な困難を伴う。分散した演算リソースとの間でデータを送受信するために、所与の産業資産を、新規なインタフェース及び通信プロトコルを備えるように構成する必要のある場合がある。所与の産業資産が、コスト、重量、セキュリティ、性能、信号インタフェースなどに関して厳しい要件を有する場合があり、このため、そのようなインタフェースを実現することが、産業資産を汎用コンピューティングデバイスと組み合わせることと同程度に簡単であることは稀である。
【0030】
実施形態では、遠隔の演算プラットフォーム及びフレームワークを介して、産業資産との通信及びこれら資産の構成を容易にして、これらの課題及び特定の産業分野とIIoTとが交わる結果生じる他の課題に対処するための、改善されたインタフェース、技法、プロトコル、及びアルゴリズムを実現し得る。改善は、この点に関して、これらの遠隔演算プラットフォーム及びフレームワークを用いて特定の産業資産(例えば安全弁)の使用に関連する特定の課題に対処するこれらの産業資産に関連する特定の困難に対処する改善と、更に、産業資産の構成、分析、及び遠隔管理用の改善された機構を提供するためのプラットフォーム自体の運用に関連する困難に対処する改善と、の両方に関連し得る。
【0031】
図6には、安全弁100に関する構造の斜視図が描かれている。構造は、1対の開口部(例えば、第1の開口部148及び第2の開口部150)を有する堅牢な流体継手146を形成する、本体144を含んでもよい。流体継手146は、冷却流体と、原子力施設及び類似の発電プラントに通常見られる、結果的に生じる蒸気と、の両方の圧力に対応できるように構成されてもよい。これらの構成は、管P1と管P2との間を流体が流れるための流体通路を形成するような、典型的には鋳造、鍛造、又は機械加工した金属の構造を有してもよい。フランジ152(又は他の連結接続部)が、開口部148、150において管P1、P2に結合するために、流体継手146に設けられていてもよい。確実な接続を保証するために、ボルトなどの固定具を使用してもよい。構造はまた、流体継手146に取り付けられる構造部材156を有する、ボンネット154も有してよい。構造部材156は、様々な構造のものであってよい。ボンネット154の上に機械式アクチュエータ158が定置されてもよい。機械式アクチュエータ158は、圧縮ばね118に予荷重を加えるために、予荷重ユニット114と結合されてもよい。
【0032】
前述の考察に照らせば、発電プラント及び類似の施設は、ひずみ(又は他の機械的特性)の直接的な尺度を提供する本明細書の実施形態の使用により、便益を得ることができる。結果的に得られるデータは、デバイスの性能の変化を特定するための基礎を形成し得る。技術的効果として、設定点の変化が検出され、その結果、操作者がそのフリート全体に対して行わなければならないいずれかの義務付けられた点検又は試験の前に、適切な修正を行うことが可能になるということがある。
【0033】
この書面による説明では、最良の形態を含め本発明を開示するために、並びに、任意のデバイス又はシステムの製作及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含め、任意の当業者が本発明を実践できるようにするために、例を使用している。単語「a」又は「an」に続けて単数形で記載された要素又は機能は、複数の当該の要素又は機能を除外することが明示的に記載されていない限りは、そのような除外をしないものと理解されるべきである。特許請求される発明の「1つの実施形態」への言及は、記載された特徴を同様に組み込んだ更なる実施形態の存在を除外するものとして解釈されるべきではない。更に、各請求項は、本発明の特許可能な範囲を定めるいくつかの例に過ぎない。この範囲は、当業者が想到する他の例を含むこと及び企図することができる。そのような他の例は、これらが特許請求の範囲の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、又は、これらが特許請求の範囲の文字通りの言語とほとんど異ならない等価な構造要素を含む場合は、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。
【0034】
以下に例を挙げるが、これらの例は、1つ又は複数を他の要素及び条項と組み合わせることのできる特定の要素又は条項を含んでおり、本開示の範囲及び趣旨内で企図される実施形態について記載している。
【0035】
最後に、代表的な実施態様を以下に示す。
[実施態様1]
弁座(112)に対して移動可能な閉鎖構成要素(110)、及び閉鎖構成要素(110)と結合された予荷重ユニット(114)を備え、予荷重ユニット(114)は圧縮ばね(118)を備える、弁機構(108)と、
圧縮ばね(118)上に配設されたひずみゲージ(120)と、
を備える、安全弁(100)。
[実施態様2]
ひずみゲージ(120)はホイートストンブリッジ回路を備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様3]
ひずみゲージ(120)は、ばねに接着される電気回路を備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様4]
ひずみゲージ(120)と結合された無線通信機(130)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様5]
ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、圧縮ばね(118)のばね力を計算するように構成された、処理ユニット(132)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様6]
ひずみゲージ(120)からのデータを使用して圧縮ばね(118)の変形を判定するように構成された、処理ユニット(132)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様7]
ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、圧縮ばね(118)の変形が設定圧力に関連する閾値基準から逸脱するとの警告を生成するように構成された、処理ユニット(132)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様8]
ひずみゲージ(120)からのデータを使用して圧縮ばね(118)を圧縮するために必要な圧力を判定するように構成された処理ユニット(132)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様9]
ひずみゲージ(120)からのデータを使用して、弁座(112)に対する閉鎖構成要素(110)の経時的な移動を定量化するように構成された、処理ユニット(132)
を更に備える、実施態様1に記載の安全弁(100)。
[実施態様10]
弁座(112)、弁座(112)に対して移動可能な閉鎖構成要素(110)、及び閉鎖構成要素(110)を弁座(112)と接触した状態に維持するように変形可能な圧縮ばね(118)を備える、弁組立体と、
圧縮ばね(118)の機械的特性を測定するように構成されたセンサ(120)と、
センサ(120)からのデータを使用して、圧縮ばね(118)を圧縮するために必要な閉鎖構成要素(110)に対する圧力を判定するように構成された、監視ユニット(102)と、
を備える、システム(122)。
[実施態様11]
機械的特性によって圧縮ばね(118)の変形が定まる、実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様12]
機械的特性を反映したデータを生成するために圧縮ばね(118)上にセンサ(120)が定置される、実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様13]
センサ(120)は、機械的特性を反映したデータを生成するために圧縮ばね(118)上に定置されるひずみゲージ(120)を備える、実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様14]
センサ(120)は、機械的特性を反映したデータを生成するために圧縮ばね(118)上に定置される電気回路を備える、実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様15]
センサ(120)は、機械的特性を反映したデータを生成するために圧縮ばね(118)上に定置されるホイートストンブリッジ回路を備える、実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様16]
センサ(120)と監視ユニット(102)との間でデータを交換するための無線アンテナを更に備える、
実施態様10に記載のシステム(122)。
[実施態様17]
安全弁(100)上の圧縮ばね(118)上のセンサ(120)からのひずみデータを受信することであって、圧縮ばね(118)の変形により安全弁(100)が事前に設定された入口圧力で開くことが可能になる、受信することと、
ひずみデータを使用して、事前に設定された入口圧力に応じて圧縮ばね(118)を圧縮するために必要な圧力を判定することと、
圧力が閾値基準から逸脱することに応答して安全弁(100)に対する予防保守を行わせるように構成されている、出力を生成することと、
を含む、方法(200)。
[実施態様18]
閾値基準は安全弁(100)の設定圧力である、実施態様17に記載の方法(200)。
[実施態様19]
ばね力を高めて圧力を閾値基準に近付けるための、圧縮ばね(118)に対する予荷重を特定することを更に含み、出力はこの予荷重を含む予防保守命令を提供する、
実施態様17に記載の方法(200)。
[実施態様20]
ひずみデータが圧縮ばねのばね力に比例することを使用して圧力を計算すること
を更に含む、実施態様17に記載の方法(200)。
【符号の説明】
【0036】
100 安全弁
102 監視ユニット
104 信号
106 端末
108 弁機構
110 閉鎖部材
112 弁座
114 予荷重ユニット
116 付勢構成要素
118 圧縮ばね
120 センサ
122 監視システム
124 搭載デバイス
126 接続部
128 基板
130 通信ユニット
132 処理ユニット
134 プロセッサ
136 メモリ
138 実行可能命令
140 バス構造
142 ネットワーク
144 本体
146 流体継手
148 第1の開口部
150 第2の開口部
152 フランジ
154 ボンネット
156 構造部材
158 機械式アクチュエータ
200 方法
202 段
204 段
206 段
208 段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10