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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ガソリン直噴レール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20240404BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F02M55/02 360C
F02M55/02 330D
F02M55/02 350B
F02M55/02 350H
F02M37/00 321A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019015072
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122438
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 洋行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀司
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】山本 信平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251462(JP,A)
【文献】特開2005-147075(JP,A)
【文献】特開2013-245561(JP,A)
【文献】特開2011-220262(JP,A)
【文献】特開2007-21508(JP,A)
【文献】特開2003-120466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周断面形状を四角形、内周断面形状を円形とするとともに、外周面及び内周面を貫通する貫通孔を複数個所に貫通形成したレール本体と、このレール本体の外周面に面接触可能な平坦面を設け、この平坦面に、上記レール本体の貫通孔に挿入可能な筒部を突設するとともに当該筒部よりも肉厚に形成した筒型の接続部材とを備え、この接続部材の平坦面をレール本体の外周面に面接触させるとともに上記筒部をレール本体の貫通孔に貫通させて、この筒部の先端をこのレール本体の内周面から突出させた状態で、上記レール本体と接続部材とを面接触させた状態で組み付けて成り、高圧のガソリン直噴システムに使用されることを特徴とするガソリン直噴レール。
【請求項2】
レール本体は、外周面も切削加工を施したことを特徴とする請求項1のガソリン直噴レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール本体と接続部材とを備えたガソリン直噴レールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1や図5~7に示す如く、円筒状のレール本体(31)の壁面(35)にこのレール本体(31)の内部と外部とを連通する貫通孔(32)を複数個所に貫通形成したガソリン直噴レールが既に知られている。そしてこの貫通孔(32)の形成位置には、インジェクターホルダー等の接続部材(33)がろう付け固定されるとともに、レール本体(31)の内部と接続部材(33)とが貫通孔(32)を通じて連通した状態となっている。
【文献】特開2010-7651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如く貫通孔(32)を設けたレール本体(31)を高圧のガソリン直噴システムに使用した場合には、この貫通孔(32)に応力が集中するものとなり、レール本体(31)の破損の原因となっていた。このような応力集中を回避するためには、接続部材(33)に、貫通孔(32)に挿通可能な筒部(図示せず。)を突出形成し、この筒部を貫通孔(32)に挿通した状態でレール本体(31)を接続部材(33)に組み付ける構成が考えられる。
【0004】
しかしながら、従来のレール本体(31)は、特許文献1及び図5、6に示す如く筒状の形をしていることから、このレール本体(31)に組み付ける接続部材(33)のレール本体(31)との接続面を、上記レール本体(31)に面接触させるために引用文献1や図7に示す如く湾曲状に凹んだ湾曲面(34)としなければならない。しかしながら、このような湾曲面(34)に貫通孔(32)に挿通するための筒部を形成することは技術的に難しいため、接続部材(33)に筒部を形成し、この筒部を貫通孔(32)に挿通配置して貫通孔(32)への応力集中を防ぐという方法は困難なものであった。
【0005】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、レール本体及び接続部材の形状を、このレール本体の貫通孔に上記接続部材の筒部を挿通可能な形状として貫通孔への応力集中を防ぎ、耐圧性向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は上述の如き課題を解決したものであって、外周断面形状を四角形、内周断面形状を円形とするとともに、外周面及び内周面を貫通する貫通孔を複数個所に貫通形成したレール本体と、このレール本体の外周面に面接触可能な平坦面を設け、この平坦面に、上記レール本体の貫通孔に挿入可能な筒部を突設するとともに当該筒部よりも肉厚に形成した筒型の接続部材とを備え、この接続部材の平坦面をレール本体の外周面に面接触させるとともに上記筒部をレール本体の貫通孔に貫通させて、この筒部の先端をこのレール本体の内周面から突出させた状態で、上記レール本体と接続部材とを面接触させた状態で組み付けて成り、高圧のガソリン直噴システムに使用されるものである。

【0007】
上記の如く、レール本体の外周断面形状を四角形とすることにより、このレール本体に組み付ける接続部材のレール本体への接触面を平坦面とすることが可能となり、この平坦面に筒部を突出形成することが技術的に容易となる。従って、この接続部材の筒部をレール本体の貫通孔に貫通配置してレール本体に接続部材を組み付けることが可能となるため、これにより貫通孔への高圧システムによる応力の集中化を防いでレール本体の破損を防止可能とすることができる。
【0008】
またレール本体は引き抜き加工を行った後、あるいは引き抜き加工を行わずに切削加工にて形成し、更に内周面に切削加工を施したものである。また、引き抜き加工のみで成形したものであっても良い。
【0009】
また、レール本体は、外周面も表面切削加工を施したものであってもよい。このように外周面にも表面切削加工を施すことによって、レール本体断面の外周形状を容易に四角形に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は上記の如くレール本体の外周断面形状を四角形とすることにより、このレール本体に組み付ける接続部材のレール本体への接触面を平坦面とすることができる。そのため、接続部材に平坦面を形成するとともにこの平坦面に筒部を突出形成することができるものとなる。従って、この接続部材の筒部をレール本体の貫通孔に貫通配置することにより、貫通孔への高圧システムによる応力の集中化を防ぐことができる。
【0011】
またレール本体の外周断面形状を四角形、内周断面形状を円形とすることにより、従来の外周及び内周断面形状が円形であるレール本体と比較して、構造上の強度を向上させることができる。そのため、レール本体への内圧付加時にレール本体の壁面が変形するのを抑制することが可能となる。よって、レール本体の変形を防ぐためのブラケットの剛性を過度に上げる必要がなく簡素化できるため、製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1を示す断面図。
図2】実施例1に示すレール本体の断面図。
図3】実施例1に示す接続部材の斜視図。
図4図1の部分拡大断面図。
図5】従来例を示す断面図。
図6図5の部分拡大断面図。
図7】従来例の接続部材を示す斜視図。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1について、図1~4において以下に説明する。まず、図1に示す如く(1)はレール本体であって、長尺な管状に形成するともに、図2に示す如く外周断面形状を四角形、内周断面形状を円形としている。このように外周断面形状を四角形、内周断面形状を円形とすることにより、従来の外周及び内周断面形状が円形の場合と比較して、構造上の強度が向上するものとなる。そのため、内圧付加時に発生するレール本体(1)の変形の抑制効果を更に高める事ができる。
【0014】
また図1、4に示す如く、このレール本体(1)の壁面(4)には、このレール本体(1)の内周面(3)と外周面(2)とを連通する貫通孔(5)を3ヶ所設けている。また、このレール本体(1)の両端にはエンドキャップ(6)を設けている。
【0015】
またこのレール本体(1)は、全切削加工にて形成したものであって、内周面(3)及び外周面(2)にも切削加工が施されている。
【0016】
尚、本実施例ではレール本体(1)を全切削加工にて形成しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、引き抜き加工を行った後、内周面及び外周面、又は内周面のみに最終工程として切削加工を施したものであっても良いし、引き抜き加工のみで成形したものであっても良い。
【0017】
また上記の如く形成した貫通孔(5)には、図3に示す如き接続部材(8)を組み付けている。この接続部材(8)は、一端に平坦面(10)を形成した略筒型であって、この平坦面(10)
の中央部から筒部(11)を突設している。
【0018】
そして図4に示す如く、上記の如く形成した接続部材(8)の筒部(11)を、レール本体(1)の貫通孔(5)に挿通配置するとともに、このレール本体(1)と接続部材(8)とをろう付けすることにより両者が組み付けられるものとなる。この時、上記の如くレール本体(1)の外周断面形状を四角形としていることから、このレール本体(1)に面接触させて組み付ける接続部材(8)の上面を平坦面(10)とし、この平坦面(10)に、上記レール本体(1)に設けた貫通孔(5)に貫通可能な筒部(11)を容易に突出形成することができる。
【0019】
また、図3に示す筒部(11)の突出高さtを、この筒部(11)をレール本体(1)の貫通孔(5)に組み付けた際に、筒部(11)の先端がレール本体(1)の内周面から突出する高さとしている。そのため、上記レール本体(1)に接続部材(8)を組み付けた際には、図4に示す如く筒部(11)がレール本体(1)の内周面(3)よりも内方に突出した状態で配置されるものとなる。
【0020】
ここで、上記の如く形成した本実施例のガソリン直噴レールと、本実施例のレール本体(1)と同じ内径のレール本体(31)にて構成した、図5~7に示す従来のガソリン直噴レールとを用いて、内圧を付加した場合の応力発生状況についてのCAE解析を行い、内圧をかけた際の各レール本体(1)(31)の貫通孔(5)(32)付近に発生する応力について、シミュレーション解析を行った。
【0021】
この解析により、本実施例のガソリン直噴レールを用いることにより、従来のガソリン直噴レールよりも貫通孔(5)付近に発生する応力を約13%程度低減させることができることが明らかとなった。よってこの解析結果から、本実施例のガソリン直噴レールでは、貫通孔(5)への高圧システムによる応力集中化の低減を可能とすることが実証された。
【符号の説明】
【0022】
1 レール本体
2 外周面
3 内周面
5 貫通孔
8 接続部材
10 平坦面
11 筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7