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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240404BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240404BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240404BHJP
【FI】
A61B6/00 550A
A61B6/40 500D
A61B6/42 500X
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019035450
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137796
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 学昌
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊平
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源及びX線検出器を支持するアームと、
被検体の3次元画像を取得する3次元画像取得部と、
前記3次元画像に対して、観察対象であるターゲットの位置を指定するターゲット指定部と、
前記X線源及びX線検出器を用いたX線撮像によってX線画像を順次生成するX線画像生成部と、
前記3次元画像中の前記ターゲットの位置情報を用いてディスプレイに表示された拡大前の前記X線画像の中心に対するターゲットの位置を特定する工程と、前記ターゲットが前記拡大前の前記X線画像の中心に位置するように前記ディスプレイの表示領域内で平行移動させる平行移動処理を行う工程と当該平行移動処理後に前記ターゲットが拡大後の前記X線画像の中心に位置するように前記ターゲットの位置を中心にして前記X線画像の拡大処理を行う工程と、の少なくとも3工程を行う拡大処理部と、を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記ターゲット指定部は、前記3次元画像に対するユーザの操作に基づいて前記ターゲットの位置を手動指定する、又は、前記3次元画像に対する解析処理に基づいて自動指定する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記3次元画像は、前記X線源及び前記X線検出器を前記アームによって前記被検体周りに回転移動させて取集したデータを再構成することにより生成される、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
ユーザによる前記3次元画像の回転操作に基づいて、前記ターゲットの観察アングルを設定すると共に、前記3次元画像を前記観察アングル方向から投影した投影画像を生成する観察アングル設定部と、
前記X線源及びX線検出器を用いたX線透視の透視角度が、前記観察アングルに合致するように前記アームを制御するアーム制御部と、を備え、
前記ターゲット指定部は、前記3次元画像の投影画像に対して前記ターゲットの位置を指定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記拡大処理部は、前記投影画像における中心位置と前記ターゲットの位置、前記3次元画像を取得した時の撮影条件、及び、前記X線画像を取得している時の撮影条件を用いて、前記X線画像の中心に対する前記ターゲットの位置を特定することにより、前記ターゲットが拡大後の前記X線画像の中心に位置するように、拡大処理を行う、請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記撮影条件は、前記X線源と前記X線検出器との間の距離、寝台の高さ、FOVの大きさ、及び、デジタルズームの拡大率の少なくとも1つを含む、請求項5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記ターゲット指定部は、前記3次元画像における前記ターゲットの位置、及び、前記3次元画像を取得したときの撮影条件に基づいて、前記ターゲットの位置を3次元座標として算出し、
前記拡大処理部は、算出した前記3次元座標上の前記ターゲットの位置と、前記X線画像を取得している時の撮影条件を用いて、前記X線画像の中心に対する前記ターゲットの位置を特定することにより、前記ターゲットが拡大後の前記X線画像の中心に位置するように、拡大処理を行う、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記撮影条件は、前記X線源と前記X線検出器との間の距離、寝台の高さ、FOVの大きさ、及び、デジタルズームの拡大率の少なくとも1つを含む、請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記拡大処理部は、前記アーム及び寝台の少なくとも一方が移動した場合には、前記アーム及び前記寝台の少なくとも一方の動きに追従させて、前記ターゲットが拡大後の前記X線画像の中心に位置するように、拡大処理を行う、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記拡大処理部は、前記ターゲットの位置が拡大後の前記X線画像の範囲外になる場合には、前記拡大処理を停止する、請求項9に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記3次元画像は、本装置とは異なる他の撮影装置で取得した3次元画像であり、
前記他の撮影装置で取得した3次元画像と、本装置で撮影した2次元画像又は3次元画像とを位置合わせする位置合わせ部、をさらに備え、
前記拡大処理部は、前記3次元画像に対して指定されたターゲット位置と、前記位置合わせによって得られる位置合わせ情報とを用いて、前記ターゲットが、拡大後の前記X線画像の中心に位置するように拡大処理を行う、請求項1に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置の中に、脳血管や心臓、冠動脈等の循環器系を撮影する循環器系X線診断装置がある。循環器系X線診断装置は、X線アンギオグラフィ装置とも呼ばれる。循環器系X線診断装置では、X線源とX線検出器の対を、例えばCアームと呼ばれる保持装置の両端部に保持し、被検体の関心領域に対するX線照射方向を任意に変えながらで撮影することができる。
【0003】
塞栓術等の手技では、X線診断装置を用いてX線透視画像を注視しながら医師が動脈瘤に対してコイル留置やクリッピング等の手技を行う。このような手技では、動脈瘤が撮影された部位を拡大して観察する必要がある。
【0004】
しかしながら、従来のX線診断装置は、画像拡大の仕組みが、画像の中央を中心に拡大するセンターズーム方式となっている。このため、動脈瘤などのターゲットが画像の中央からずれている状態で画像拡大を行うと、ターゲットが画像の端に逃げてしまったり、画像の外に出てしまったりすることがしばしば発生していた。
【0005】
このような場合、ユーザは手技中にCアームや寝台の位置等を操作して、動脈瘤などターゲットが、拡大した画像の中央に位置するようにする必要があり、円滑な治療を妨げる要因となっていた。また、Cアームや寝台の操作によって治療時間が長引くことにより、X線透視の時間も長くなるため、患者に対する被曝の観点からも不都合であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-158697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、手技中に撮影されるX線透視画像をリアルタイムで拡大させた場合であっても、観察対象の中心を常に画像の中心に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態のX線診断装置は、アームと、3次元画像取得部と、ターゲット指定部と、X線画像生成部と、拡大処理部と、を備える。アームはX線源及びX線検出器を支持する。3次元画像取得部は被検体の3次元画像を取得する。ターゲット指定部は、前記3次元画像に対して、観察対象であるターゲットの位置を指定する。X線画像生成部は、前記X線源及びX線検出器を用いたX線透視によってX線画像を順次生成する。拡大処理部は、前記3次元画像中の前記ターゲットの位置情報を用いて前記X線画像中のターゲット位置を特定することにより、前記ターゲットが拡大前の前記X線画像の中心からシフトしている場合であっても、前記ターゲットが拡大後の前記X線画像の中心に位置するように、拡大処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るX線診断装置の全体構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態のコンソールの細部構成例及び機能構成例を示すブロック図。
図3】第1の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図4】取得した3次元画像に対してターゲットと観察アングルとを設定し、観察アングル方向から投影した投影画像を生成するまでの処理の概念を説明する図。
図5】X線透視を開始し、透視画像の中のターゲットの位置を特定するまでの処理の概念を説明する図。
図6】透視画像の中心にターゲットが位置するようにして透視画像を拡大する処理の概念を説明する図。
図7】第2の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図8】第3の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図9】第4の実施形態のコンソールの細部構成例及び機能構成例を示すブロック図。
図10】第4の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の全体構成を示すブロック図である。第1の実施形態のX線診断装置1は、コンソール10、寝台20、及び、スキャナ30を備えて構成されている。
【0012】
スキャナ30は、X線源34、X線検出器36、Cアーム33、Cアーム駆動機構32等を有している。Cアーム33は、一方の端部にX線源34を保持し、他方の端部にX線源33を保持し、被検体を中心にX線源34とX線検出器36とを対向配置している。
【0013】
Cアーム33は、Cアーム駆動機構32によって支持されている。Cアーム駆動機構32は、コンソール10からの制御によって、Cアーム33の円弧方向に沿って、X線源34とX線検出器36とを一体的に円弧動させる。更に、Cアーム駆動機構32は、コンソール10からの制御によって、Cアーム33を図1の一点鎖線で示す回転軸周りに回転させ、X線源34とX線検出器36とを被検体の周りに一体的に回転させることができる。
【0014】
X線源34とX線検出器36を結ぶ線分の中点をアイソセンタとするとき、コンソール10からの制御により、X線源34とX線検出器36は、このアイソセンタを通る任意の傾きの平面上における円周軌道に沿って回転することができる。
【0015】
X線源34には、高電圧電力の供給を受けて、被検体の方向にX線を照射するX線管の他、複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りや、シリコンゴム等で形成されハレーションを防止するために所定量の照射X線を減衰させる補償フィルタ等が設けられている。
【0016】
X線検出器36は、平面検出器(FPD:flat panel detector)を備え、2次元平面上に配列された検出素子により、被検体を透過したX線を検出して電気信号に変換する。X線検出器36は、FPDに換えて、I.I.(image intensifier)及びTVを有する構成としてもよい。X線検出器36は、X線から変換されたアナログ電気信号を更にデジタル信号に変換し、コンソール10に出力する。
【0017】
寝台20は、被検体が載置される天板22、天板を支持する天板支持部21、及び、コンソールからの指示により、天板22を水平方向、及び、垂直方向に駆動する寝台駆動機構23を備えて構成される。
【0018】
コンソール10は、スキャナ30、及び、寝台20を制御すると共に、X線検出器36から出力される信号に基づいて、X線撮影画像(静止画)や、X線透視画像(ライブ画像)を生成する。
【0019】
図2は、第1の実施形態のコンソール10の細部構成例、及び、機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、コンソール10は、操作パネル11、記憶回路12、ディスプレイ13、外部通信I/F14、及び、処理回路15を有している。
【0020】
操作パネル11は、スキャナ30の各種の撮影条件の設定、Cアーム33や寝台20の駆動に関する指定等の各種情報やデータを入力するための入力デバイスを備えて構成される。操作パネル11は、各種情報やデータを入力するため、例えば、ジョイスティック、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、テンキー、タッチパネル等の入力デバイスを備えている。
【0021】
ディスプレイ13は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示デバイスとして構成され、X線透視画像やX線撮影画像等の画像の他、各種情報や各種データを表示する。
【0022】
外部通信I/F14は、各種の通信プロトコルに従ってX線診断装置1と他の機器とを接続する。この接続には、無線/有線の病院内LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークの各種の通信ネットワークを利用することができる。
【0023】
記憶回路12は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記憶回路12は、画像や各種撮像条件に関するデータの他、プロセッサが実行する各種のソフトウェアプログラムを記憶する。
【0024】
処理回路15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路12に記憶した各種のプログラムを実行することによって、以下に説明する各種の機能を実現する。処理回路15は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路15は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0025】
また、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0026】
次に、処理回路15が実現する機能について説明する。図2に示すように、処理回路15は、3次元画像生成機能101、3次元画像取得機能102、ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)103、撮影条件設定機能(3次元画像)104、撮影条件設定機能(透視画像)105、透視画像生成機能106、及び、拡大処理機能107の各機能を実現する。拡大処理機能107は、ターゲット位置特定機能(透視画像)110、及び、ターゲットシフト/透視画像拡大機能111の各機能を含んでいる。
【0027】
図3は、第1の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。図3のフローチャートに沿って、図2に示す各機能をより詳しく説明する。
【0028】
まず、ステップST10で被検体の3次元画像を取得する。具体的には、X線源34及びX線検出器36を、Cアーム33によって被検体周りに回転移動させながら収集した複数の投影データを、フェルドカンプ法等の公知技術によって再構成することにより、被検体の関心領域、例えば、被検体の頭部の3次元画像を取得する。
【0029】
ステップST10は、撮影条件設定機能(3次元画像)104,3次元画像生成機能101、及び、3次元画像取得機能102に対応する処理である。撮影条件設定機能(3次元画像)104で設定する撮影条件には、画像内の撮影対象物の大きさに関係する撮像条件、例えば、SID(Source Image Distance: X線源34とX線検出器36との間の距離)、寝台の高さ方向の位置、FOV(Field Of View)の大きさ、デジタルズームの拡大率等が含まれる。
【0030】
つぎに、ステップST11では、3次元画像に対してターゲットを指定する。そして、ステップST12では、ユーザに因る3次元画像の回転操作に基づいて、ターゲットの観察アングルを設定する。さらに、ステップST13では、3次元画像を観察アングル方向から投影した投影画像を生成する。
【0031】
ステップST12とステップST13とは、通常は、同時並行的に行われる。つまり、医師等のユーザが、3次元画像に対して回転操作を行うことにより、投影画像の投影角を変化させ、ターゲットの観察に最も適したアングルを特定し、そのアングルを観察アングルとして設定する。
【0032】
ステップST11の処理は、図3のフローチャートに示すように、ステップST12及びステップST13の前でもよいが、逆に、ステップST12及びステップST13の後でもよい。
【0033】
ステップST11では、ディスプレイ13に3次元画像を表示させ、表示された3次元画像に対するユーザの操作に基づいてターゲットの位置を手動で指定することができる。例えば、表示された3次元画像に対して、マウス等の入力デバイスを用いてポインタを移動させることによって、ターゲットの位置を手動で指定することができる。
【0034】
また、ステップST11では、このような手動による指定に換えて、ターゲットの形状認識等の解析処理により、ターゲットの位置を自動検出することで、ターゲットの位置を自動的に指定することもできる。ステップST11は、ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)103に対応する処理である。
【0035】
ここで、ターゲットとは、例えば、脳血管における動脈瘤の部位や、頸動脈における狭窄部位等のように、検査や治療のための観察の対象部位のことである。また、ターゲットは、動脈瘤等の患部に対して行うコイリングやクリッピング、或いは、狭窄部位に対して行うステント留置等のカテーテル治療の対象部位でもある。
【0036】
図4は、ステップST10~ステップST13までの処理の概念を説明する図である。図4の左図には、Cアーム33の回転によって収集されたデータを再構成して生成された3次元画像として、脳血管の3次元画像が例示されている。また、図4の左図では、脳血管内の動脈瘤をターゲット(図4右図において黒丸で示されている部分)として指定している例が示されている。さらに、図4左図では、ユーザによって設定された観察アングルの方向、太い矢印で示している。
【0037】
一方、図4右図には、図4左図の3次元画像を、設定された観察アングルの方向から投影した投影画像(ステップST13で生成される投影画像)が示されている。
【0038】
図3に戻り、ステップST14で、X線透視が開始される。そして、ステップST15にて、X線透視の透視角度が、ステップST12で設定された観察アングルに合致するように、Cアーム33を制御する。そして、このようにして設定された透視角度から透視された透視画像が生成される。ステップST14、及び、ステップST15は、撮影条件設定機能(透視画像)105、及び、透視画像生成機能106に対応する処理である。
【0039】
次に、ステップST16において、a)3次元画像を観察アングル方向から投影した投影画像におけるターゲット位置、b)3次元画像の取得時の撮影条件、及び、c)現在のX線透視の撮影条件、を用いて、透視画像中におけるターゲット位置を特定する。ステップST16は、拡大処理機能107のうち、ターゲット位置特定機能(透視画像)110に対応する処理である。
【0040】
図5は、ステップST13~ステップST16までの処理の概念を説明する図である。図5左図は、実質的に図4右図と同じ図であり、3次元画像を観察アングル方向から投影した投影画像である。図5左図では、図4右図と同様に、指定されたターゲットの位置を黒丸印で示している。ここで、投影画像の中心を原点(0, 0)とするとき、投影画像内におけるターゲットの位置(x, y)は、ユーザによって指定された位置、又は、本装置によって自動検出された位置であるため、既知である。
【0041】
図5中央図は、3次元画像に対して設定された観察アングル方向にCアーム33を移動させて、X線透視を実施したときの透視画像(即ち、ライブ画像)を示している。即ち、ステップST15の処理の直後に得られる透視画像が、図5中央図に対応している。
【0042】
図5右図は、ステップST16の処理により、透視画像中におけるターゲットの位置が特定された後の透視画像を示している。図5右図では、透視画像の中心を原点(0, 0)とするとき、透視画像中において特定されたターゲットの位置(x, y)を、黒三角印で示している。
【0043】
第1の実施形態では、投影画像における投影方向と、透視画像における透視方向とは合致している。また、3次元画像取得時における撮影対象物の大きさに関する撮像条件(SID、寝台の位置、FOVの大きさ、デジタルズームの拡大率等)と、現在の透視画像(ライブ画像)取得時における撮影対象物の大きさに関する撮像条件(SID、寝台の位置、FOVの大きさ、デジタルズームの拡大率等)は、いずれも既知である。
【0044】
したがって、上述したように、a)3次元画像を観察アングル方向から投影した投影画像におけるターゲット位置(x, y)を、b)3次元画像の取得時の撮影条件、及び、c)現在のX線透視の撮影条件、を用いて変換することにより、透視画像中におけるターゲット位置を(x, y)を算出することが可能となる。
【0045】
図3に戻り、ステップST17では、透視画像の中心にターゲットが位置するようにして、透視画像を拡大する。ステップST17は、拡大処理機能107のうち、ターゲットシフト/透視画像拡大機能111に対応する処理である。
【0046】
図6は、ステップST17の処理の概念を説明する図である。図6左図は、拡大前の透視画像を示し、図6右図は、拡大後の透視画像を示している。
【0047】
図6左図における正方形の外枠はFOVを示し、図6左図における太い正方向の内枠は、拡大前におけるにおける、ターゲット位置を中心とする部分画像を示している。透視画像におけるターゲットの位置(x, y)は既にステップST16において特定されている。このため、拡大前の部分画像を、座標(x, y)だけ平行移動させることにより、ターゲット位置を透視画像の中心に位置させることができる。同時に、ターゲット位置を中心とする部分画像を、ターゲット位置を中心にして拡大することにより、拡大後の透視画像においても、ターゲット位置を中心に位置させることができる。
【0048】
上述した第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、拡大前の透視画像において、ターゲットが中心からシフトしている場合であっても、拡大後の透視画像において、ターゲットが中心に位置するように、拡大処理を行うことができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。ステップST20では、第1の実施形態のステップST10と同様に、Cアーム33を被検体周りに回転させて収集したデータから3次元画像を再構成する。
【0050】
次のステップST21の処理も、第1の実施形態のステップST11と同様に、再構成した3次元画像に対して、ユーザによる手動操作に基づいて、或いは、ターゲットの自動検出に基づいて、ターゲットの位置を指定する。
【0051】
ステップST22は、第2の実施形態に特有の処理であり、第1の実施形態では行っていない処理である。ステップST22では、ステップST21で指定されたターゲットの位置、及び、3次元画像取得時の撮影条件から、ターゲットの絶対位置を3次元座標(x, y, z)として算出する。ターゲットの絶対位置は、例えば、検査室の室内座標系で表されたターゲットの位置でもよいし、本装置(X線診断装置1)の所定の部位の特定の位置を基準とする、装置座標系で表されたターゲットの位置でもよい。
【0052】
次に、ステップST23において、3次元画像に対して設定した観察アングル方向から、3次元画像を投影した投影画像を生成する。なお、第2の実施形態では、ステップST23の処理を省略することもできる。
【0053】
ステップST24でX線透視を開始する。その後、ステップST25で、ユーザが透視画像をモニタしながらCアーム33を移動させることによって、X線透視の透視角度を調整し、Cアーム33を所望の観察アングルに設定する。なお、第1の実施形態とは異なり、ステップST25においてCアーム33に対して設定される観察アングルと、ステップST23において3次元画像に対して設定される観察アングルは、必ずしも合致させる必要はない。
【0054】
次に、ステップST26において、ターゲットの絶対位置、及び、現在のX線透視の撮影条件を用いて、透視画像中の中心に対するターゲット位置を算出し、特定する。特定された透視画像中のターゲット位置は、第1の実施形態の図5右図や図6左図のように、透視画像の中心を原点(0, 0)とする2次元座標(x, y)で表される。
【0055】
ステップST27は、第1の実施形態のステップST17と同じであり、図6に示すように、透視画像の中心にターゲットが位置するようにして透視画像を拡大する。
【0056】
第2の実施形態に係るX線診断装置1によっても、第1の実施形態と同様に、拡大前の透視画像において、ターゲットが中心からシフトしている場合であっても、拡大後の透視画像において、ターゲットが中心に位置するように、拡大処理を行うことができる。また、第2の実施形態では、3次元座標で表現されたターゲットの絶対位置を用いて、透視画像中のターゲット座標を算出するようにして。このため、第1の実施形態に比べると算出処理が若干複雑になるものの、X線透視の開始後にCアーム33に対して設定される観察アングルと、3次元画像に対して設定される観察アングルとを、必ずしも合致させる必要がない。
【0057】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。第3の実施形態では、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態によって、透視画像の中心にターゲットが位置するようにして透視画像を拡大した後のX線診断装置1の動作を規定している。
【0058】
図8のステップST30~ステップST37は、第1の実施形態のステップST10~ステップST17と同じである。ステップST38では、ステップST37の処理の後に、Cアーム33、及び、寝台20の天板22の少なくとも一方が移動したか否かを判定する。移動していない場合は、引き続き移動の有無をモニタする。
【0059】
一方、Cアーム33、及び、寝台20の天板22の少なくとも一方が移動したと判定された場合には、ステップST39において、その移動量を算出する。Cアーム33、及び、寝台20の天板22の少なくとも一方が移動した場合、図6左図のFOV、及び、部分画像がターゲットの位置に対して相対的に移動することになる。そこで、算出した移動量が相殺されるように、図6左図のFOVから切り取る部分画像の位置を移動させてやれば、ターゲットの位置が常に中心に位置するようにして透視画像を拡大することができる。
【0060】
このように、第3の実施形態のX線診断装置1によれば、Cアーム33、及び、寝台20の天板22の少なくとも一方が動いた場合であっても、これらの動きに追従させて、拡大後の透視画像の中心にターゲットが常に位置するように拡大処理を行うことができる。
【0061】
なお、Cアーム33、及び、寝台20の天板22の少なくとも一方の動きにより、ターゲットの位置がFOVの範囲外になる場合には、拡大後の透視画像においても、ターゲットの位置がその範囲外となる。このような場合には、拡大処理を停止する。
【0062】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態のコンソール10の細部構成例、及び、機能構成例を示すブロック図である。第4の実施形態のX線診断装置1のコンソール10のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様に(第2及び第3の実施形態も同様)、操作パネル11、記憶回路12、ディスプレイ13、外部通信I/F14、及び、処理回路15を有している。
【0063】
一方、第4の実施形態の処理回路15が実現する機能は、第1の実施形態と若干異なっている。図9に示すように、処理回路15は、3次元画像取得機能200、レジストレーション機能201を有している。図9に示すその他の機能、即ち、ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)103、撮影条件設定機能(透視画像)105、透視画像生成機能106、及び、拡大処理機能107の各機能は第1乃至第3の実施形態と同様である。
【0064】
図10は、第4の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。第1~第3の実施形態では、本装置(X線診断装置1)で生成した3次元画像に対してターゲットを指定している。これに対して、第4の実施形態のX線診断装置1では、本装置以外の他の医用画像撮影装置、例えば、X線CT装置、MRI装置、或いは、超音波画像診断装置で収集した同一被検体の3次元画像を、ステップST40で取得する。ステップST40は、3次元画像取得機能200に対応する処理である。
【0065】
次に、ステップST41でX線透視を開始する。そして、ステップST42において、X線透視によって生成された透視画像と、ステップST40で取得した3次元画像との間での位置合わせ処理、即ち、レジストレーションを実施する。ステップST40では、所望の1方向から透視した2次元の透視画像と3次元画像との間で行う、2D-3Dレジストレーションを行ってもよい。或いは、これに換えて、ステップST40では、複数の方向から透視した複数の透視画像から3次元の透視画像を再構成し、この3次元の透視画像と、ステップST40で取得した3次元画像との間で行う、3D-3Dレジストレーションを行ってもよい。
【0066】
ステップST40で行われるレジストレーションによって、外部から取得した3次元画像と、本装置で撮影した透視画像との間でのレジストレーション情報、即ち、位置合わせ情報が得られる。
【0067】
次に、ステップST43において、3次元画像に対してターゲットの位置を指定する。そして、ステップST44において、指定されたターゲットの位置と、レジストレーション情報とから、ターゲットの絶対位置を3次元座標(x, y, z)として算出する。ターゲットの絶対位置は、第2の実施形態と同様に、例えば、検査室の室内座標系で表されたターゲットの位置でもよいし、本装置(X線診断装置1)の装置座標系で表されたターゲットの位置でもよい。
【0068】
ステップST45~ステップST46の処理は、第2の実施形態(図7)のステップST25~ステップST27の処理と同じである。具体的には、ステップST45では、ユーザが透視画像をモニタしながらCアーム33を移動させることによって、X線透視の透視角度を調整し、Cアーム33を所望の観察アングルに設定する。ステップST46では、ステップST44で算出されたターゲットの絶対位置、及び、現在のX線透視の撮影条件を用いて、透視画像中の中心に対するターゲット位置を算出し、特定する。そして、ステップST47において、透視画像の中心にターゲットが位置するようにして透視画像を拡大する。
【0069】
上述したように、第4の実施形態のX線診断装置1によれば、X線CT装置等の本装置以外の医用画像撮影装置で取得した3次元画像を利用して、ターゲットが透視画像の中心に位置するように拡大処理を行うことができる。
【0070】
以上説明してきたように、各実施形態のX線診断装置は、手技中に撮影されるX線透視画像をリアルタイムで拡大させた場合であっても、観察対象の中心を常に画像の中心に設定することができる。
【0071】
なお、各実施形態の記載における3次元画像取得機能、ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)、透視画像生成機能、拡大処理機能、及び、レジストレーション機能は、夫々、特許請求の範囲の記載における、3次元画像取得部、ターゲット指定部、透視画像生成部、拡大処理部、及び、位置合わせ部の一例である。また、各実施形態の記載における、ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)、及び、撮影条件設定機能(透視画像)は、夫々、特許請求の範囲の記載における、観察アングル設定部、及び、アーム制御部の一例である。また、各実施形態の記載及び図面における「透視画像」との用語、又は、「透視画像」と組み合わせた用語は、特許請求の範囲の記載における「X線画像」との用語、又は、「X線画像」と組み合わせた用語の一例である。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 X線診断装置
10 コンソール
13 ディスプレイ
15 処理回路
20 寝台
33 Cアーム
34 X線源
36 X線検出器
101 3次元画像生成機能
102 3次元画像取得機能
103 ターゲット位置検出/指定機能(3次元画像)
104 撮影条件設定機能(3次元画像)
105 撮影条件設定機能(透視画像)
106 透視画像生成機能
107 拡大処理機能
200 3次元画像取得機能
201 レジストレーション機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10