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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240404BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G02B3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019126797
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021012309
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 大介
(72)【発明者】
【氏名】重本 憲
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09188874(US,B1)
【文献】特開2018-041025(JP,A)
【文献】特開2008-292916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
G02B 1/00-1/08、3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画装置であって、
光源部と、
複数の光変調素子が配列されており、前記光源部からの光が照射される空間光変調器と、
前記複数の光変調素子のうちON状態の光変調素子から出射される光を光軸に沿って対象物上に導く投影光学系と、
前記対象物上における前記光の照射位置を移動する移動機構と、
前記移動機構による前記照射位置の移動に同期して前記空間光変調器を制御する制御部と、
を備え、
前記投影光学系が、
複数の要素レンズが配列されたレンズアレイと、
前記光軸上において前記空間光変調器と前記レンズアレイとの間に配置され、前記複数の光変調素子がON状態である場合に、前記複数の光変調素子から出射される複数の光束を前記複数の要素レンズにそれぞれ入射させる第1光学系と、
前記レンズアレイの近傍において前記複数の光束がそれぞれ集光することにより複数の集光点が形成され、前記複数の集光点の像を前記対象物上に拡大して形成する第2光学系と、
を備え、
前記第2光学系における像面湾曲を補正するように、前記レンズアレイにおいて、前記光軸の方向に関する前記複数の要素レンズの位置がずれており、
前記レンズアレイにおいて、前記複数の要素レンズが、光を透過させる板状のベース部上に設けられ、
前記投影光学系が、前記ベース部を湾曲させた状態で保持するホルダをさらに備え、
前記ベース部を湾曲させない状態で、前記対象物上に相当する面で取得した像面湾曲の測定結果を近似した近似曲線の湾曲量を、前記第2光学系の結像倍率を横倍率としたときの縦倍率で除した湾曲量にて、前記ベース部が湾曲していることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記ベース部において、前記複数の要素レンズとは異なる位置に突起部が設けられ、
前記ホルダが、
前記複数の要素レンズと重なる開口を有し、前記開口の周囲にて前記突起部と接触する板状のホルダ本体と、
前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記ホルダが、
前記複数の要素レンズと重なる開口を有する板状のホルダ本体と、
前記ホルダ本体に設けられ、前記開口の周囲にて前記ベース部と接触する突起部と、
前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
描画装置であって、
光源部と、
複数の光変調素子が配列されており、前記光源部からの光が照射される空間光変調器と、
前記複数の光変調素子のうちON状態の光変調素子から出射される光を光軸に沿って対象物上に導く投影光学系と、
前記対象物上における前記光の照射位置を移動する移動機構と、
前記移動機構による前記照射位置の移動に同期して前記空間光変調器を制御する制御部と、
を備え、
前記投影光学系が、
複数の要素レンズが配列されたレンズアレイと、
前記光軸上において前記空間光変調器と前記レンズアレイとの間に配置され、前記複数の光変調素子がON状態である場合に、前記複数の光変調素子から出射される複数の光束を前記複数の要素レンズにそれぞれ入射させる第1光学系と、
前記レンズアレイの近傍において前記複数の光束がそれぞれ集光することにより複数の集光点が形成され、前記複数の集光点の像を前記対象物上に形成する第2光学系と、
を備え、
前記第2光学系における像面湾曲を補正するように、前記レンズアレイにおいて、前記光軸の方向に関する前記複数の要素レンズの位置がずれており、
前記レンズアレイにおいて、前記複数の要素レンズが、光を透過させる板状のベース部上に設けられ、
前記投影光学系が、前記ベース部を湾曲させた状態で保持するホルダをさらに備え、
前記ベース部を湾曲させない状態で、前記対象物上に相当する面で取得した像面湾曲の測定結果を近似した近似曲線の湾曲量を、前記第2光学系の結像倍率を横倍率としたときの縦倍率で除した湾曲量にて、前記ベース部が湾曲しており、
前記ベース部において、前記複数の要素レンズとは異なる位置に突起部が設けられ、
前記ホルダが、
前記複数の要素レンズと重なる開口を有し、前記開口の周囲にて前記突起部と接触する板状のホルダ本体と、
前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部と、
を備え、
前記突起部が、前記ベース部および前記複数の要素レンズと一体的に形成されることを特徴とする描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光材料が形成された対象物に空間変調された光を照射しつつ、当該光の照射位置を対象物上にて移動することによりパターンを描画する描画装置(直接描画装置とも呼ばれる。)が知られている。例えば、特許文献1の描画装置では、複数の微小ミラーが2次元に配列されたDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)が空間光変調器として利用される。当該描画装置では、第1の結像光学系によりDMDの各微小ミラーに対応する光束が結像する。結像位置の近傍には、マイクロレンズを2次元状に配列してなるマイクロレンズアレイが配置され、各光束がマイクロレンズを個別に通過する。そして、第2の結像光学系により、マイクロレンズを通過した各光束を感光材料上に結像させるようにして、2次元パターンの像が感光材料上に形成される。このように、DMDおよびレンズアレイを用いた描画装置では、感光材料上においてDMDの各微小ミラーに対応する領域のサイズを小さくして(スポット状として)、描画するパターンの高精細化を図ることが可能である。
【0003】
なお、特許文献2では、光源装置から放射される光束を偏向させ、偏向光束を結像レンズ系により被走査面上に光スポットとして集光して光走査を行う装置が開示されている。当該装置では、結像レンズ系が、副走査方向にのみ正の屈折力を有するホログラムレンズを有する。結像レンズ系の像面湾曲を補正するように、当該ホログラムレンズが主走査方向に対して滑らかに曲げられることにより、像面湾曲による光スポット径変動が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-208432号公報
【文献】特開平6-11661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、生産性向上を図るために、描画装置において対象物上における光の照射範囲を大きくすることが求められている。この場合、投影光学系において大口径のレンズが必要となるが、このようなレンズを有する投影光学系では、像面湾曲が大きくなりうる。これにより、照射範囲内において対象物上のスポット径が位置によってばらついてしまう。実際には、対象物の表面のうねり等の影響も相俟って、対象物上のスポット径が大きく変動してしまい、パターンを精度よく描画することができなくなる。特許文献1では、各結像光学系に対して、液晶素子である結像位置補正部を設けることにより、当該結像光学系により結像させる各光束の結像位置を補正する手法が開示されているが、結像位置補正部の制御が複雑であるとともに、描画装置の製造コストも高くなってしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、像面湾曲による対象物上のスポット径のばらつきを簡単な構成により抑制して、パターンを精度よく描画することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、描画装置であって、光源部と、複数の光変調素子が配列されており、前記光源部からの光が照射される空間光変調器と、前記複数の光変調素子のうちON状態の光変調素子から出射される光を光軸に沿って対象物上に導く投影光学系と、前記対象物上における前記光の照射位置を移動する移動機構と、前記移動機構による前記照射位置の移動に同期して前記空間光変調器を制御する制御部とを備え、前記投影光学系が、複数の要素レンズが配列されたレンズアレイと、前記光軸上において前記空間光変調器と前記レンズアレイとの間に配置され、前記複数の光変調素子がON状態である場合に、前記複数の光変調素子から出射される複数の光束を前記複数の要素レンズにそれぞれ入射させる第1光学系と、前記レンズアレイの近傍において前記複数の光束がそれぞれ集光することにより複数の集光点が形成され、前記複数の集光点の像を前記対象物上に拡大して形成する第2光学系とを備え、前記第2光学系における像面湾曲を補正するように、前記レンズアレイにおいて、前記光軸の方向に関する前記複数の要素レンズの位置がずれており、前記レンズアレイにおいて、前記複数の要素レンズが、光を透過させる板状のベース部上に設けられ、前記投影光学系が、前記ベース部を湾曲させた状態で保持するホルダをさらに備え、前記ベース部を湾曲させない状態で、前記対象物上に相当する面で取得した像面湾曲の測定結果を近似した近似曲線の湾曲量を、前記第2光学系の結像倍率を横倍率としたときの縦倍率で除した湾曲量にて、前記ベース部が湾曲している。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の描画装置であって、前記ベース部において、前記複数の要素レンズとは異なる位置に突起部が設けられ、前記ホルダが、前記複数の要素レンズと重なる開口を有し、前記開口の周囲にて前記突起部と接触する板状のホルダ本体と、前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部とを備える。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記ホルダが、前記複数の要素レンズと重なる開口を有する板状のホルダ本体と、前記ホルダ本体に設けられ、前記開口の周囲にて前記ベース部と接触する突起部と、前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部とを備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、描画装置であって、光源部と、複数の光変調素子が配列されており、前記光源部からの光が照射される空間光変調器と、前記複数の光変調素子のうちON状態の光変調素子から出射される光を光軸に沿って対象物上に導く投影光学系と、前記対象物上における前記光の照射位置を移動する移動機構と、前記移動機構による前記照射位置の移動に同期して前記空間光変調器を制御する制御部とを備え、前記投影光学系が、複数の要素レンズが配列されたレンズアレイと、前記光軸上において前記空間光変調器と前記レンズアレイとの間に配置され、前記複数の光変調素子がON状態である場合に、前記複数の光変調素子から出射される複数の光束を前記複数の要素レンズにそれぞれ入射させる第1光学系と、前記レンズアレイの近傍において前記複数の光束がそれぞれ集光することにより複数の集光点が形成され、前記複数の集光点の像を前記対象物上に形成する第2光学系とを備え、前記第2光学系における像面湾曲を補正するように、前記レンズアレイにおいて、前記光軸の方向に関する前記複数の要素レンズの位置がずれており、前記レンズアレイにおいて、前記複数の要素レンズが、光を透過させる板状のベース部上に設けられ、前記投影光学系が、前記ベース部を湾曲させた状態で保持するホルダをさらに備え、前記ベース部を湾曲させない状態で、前記対象物上に相当する面で取得した像面湾曲の測定結果を近似した近似曲線の湾曲量を、前記第2光学系の結像倍率を横倍率としたときの縦倍率で除した湾曲量にて、前記ベース部が湾曲しており、前記ベース部において、前記複数の要素レンズとは異なる位置に突起部が設けられ、前記ホルダが、前記複数の要素レンズと重なる開口を有し、前記開口の周囲にて前記突起部と接触する板状のホルダ本体と、前記突起部から離れた位置において前記ベース部を前記ホルダ本体に対して押さえる押さえ部とを備え、前記突起部が、前記ベース部および前記複数の要素レンズと一体的に形成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、像面湾曲による対象物上のスポット径のばらつきを簡単な構成により抑制して、パターンを精度よく描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】描画装置の構成を示す正面図である。
図2】描画ヘッドの内部構成を示す図である。
図3】レンズアレイおよびホルダを示す図である。
図4】レンズアレイおよびホルダを示す図である。
図5】比較例の描画ヘッドにおいて像面湾曲を測定した結果を示す図である。
図6】レンズアレイおよびホルダの他の例を示す図である。
図7】レンズアレイおよびホルダの他の例を示す図である。
図8】レンズアレイおよびホルダのさらに他の例を示す図である。
図9】レンズアレイおよびホルダのさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1の構成を示す正面図である。描画装置1は、空間変調された光を対象物上の感光材料に照射しつつ、対象物上における当該光の照射位置を移動(走査)することによりパターンの描画を行う直接描画装置(いわゆる、直描装置)である。図1に示す例では、対象物は、プリント配線基板9(以下、単に「基板9」という。)である。基板9では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9のレジスト膜に回路パターンが描画される。
【0015】
描画装置1は、ステージ21と、移動機構22と、描画部3と、制御部10とを備える。制御部10は、例えばCPU等を有するコンピュータであり、描画装置1の全体制御を担う。ステージ21は、基板9を下側から保持する保持部である。移動機構22は、基板9をステージ21と共に描画部3に対して相対的に移動する。移動機構22は、第1移動機構23と、第2移動機構24とを備える。第1移動機構23および第2移動機構24のそれぞれは、例えば、ボールねじが接続されたモータ、または、リニアモータを有する。第1移動機構23は、図1の紙面に垂直な方向(以下、「主走査方向」という。)にステージ21を移動する。第2移動機構24は、ステージ21を主走査方向に垂直な図1中の横方向(以下、「副走査方向」という。)に移動する。なお、描画装置1では、ステージ21を上下方向に平行な軸を中心として回転する機構が設けられてもよい。
【0016】
描画部3は、副走査方向に配列される複数(例えば、5個)の描画ヘッド31を備える。複数の描画ヘッド31は、互いに同様の構造を有する。各描画ヘッド31は、空間変調された光を基板9の上面91(上方を向く主面91)に照射する。描画装置1では、描画ヘッド31の数は適宜変更されてよい。描画ヘッド31の内部構成については、後述する。
【0017】
描画装置1におけるパターンの描画では、第1移動機構23により基板9が主走査方向に移動する。これにより、各描画ヘッド31からの光の照射位置が基板9上にて主走査方向に(相対的に)移動する。また、基板9上における照射位置の移動に同期して、制御部10により描画ヘッド31の後述する空間光変調器34(図2参照)が制御される。その結果、主走査方向に延びる基板9の上面91上の帯領域に対して、各描画ヘッド31によるパターンの描画が行われる。続いて、第2移動機構24により基板9が副走査方向に所定の距離だけ移動する。その後、基板9が主走査方向に移動しつつ、描画ヘッド31の空間光変調器34が制御される。このように、基板9の主走査方向への移動、および、副走査方向への移動が繰り返されることにより、基板9の全体に対してパターンの描画が行われる。
【0018】
図2は、1つの描画ヘッド31の内部構成を示す図である。図2では、描画ヘッド31の構成を簡略化して示しており、実際には、さらに多くの光学素子(主としてレンズ)が配置される。描画ヘッド31は、光源部32と、照明光学系33と、空間光変調器34と、投影光学系4とを備える。光源部32は、例えば、複数のレーザダイオード(LD)と、インテグレータとを備える。複数のレーザダイオードからの光は、インテグレータにより均一化されて出射される。光源部32から出射される光は、例えば紫外光である。もちろん、当該光は、紫外光以外であってもよい。照明光学系33は、例えば、複数のレンズ331,332と、複数のミラー333,334とを備える。照明光学系33により、光源部32から出射された光が空間光変調器34へと導かれる。
【0019】
空間光変調器34は、2次元に配列された複数の光変調素子341を備える。複数の光変調素子341には、光源部32からの光が照射される。本実施の形態における空間光変調器34は、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)である。DMDは、シリコン基板上に設けられた微小ミラー群を備える。微小ミラー群では、それぞれが光変調素子341である複数の微小ミラーが、互いに直交する2方向に一定のピッチで配列される。DMDでは、各微小ミラーに対応するメモリセルに書き込まれた値に従って、当該微小ミラーが静電作用によりシリコン基板の表面に対して所定の角度だけ傾く。例えば、メモリセルに一の値が書き込まれた微小ミラーは、当該微小ミラーに照射される光を投影光学系4に向けて反射する姿勢(以下、「ON状態」という。)となる。メモリセルに他の値が書き込まれた微小ミラーは、当該微小ミラーに照射される光を投影光学系4とは異なる方向に向けて反射する姿勢(以下、「OFF状態」という。)となる。
【0020】
以上のように、空間光変調器34では、ON状態の光変調素子341から出射される光束の集合(すなわち、空間変調された光)が、投影光学系4へと導かれる。描画装置1では、DMD以外の種類の空間光変調器34が用いられてもよい。また、光変調素子341におけるON状態は、後述するように、当該光変調素子341に照射された光が投影光学系4を介して基板9上に導かれる状態であることを意味し、当該光変調素子341における通電状態を意味するものではない。
【0021】
投影光学系4は、複数の光変調素子341のうちON状態の光変調素子341から出射される光を光軸J1に沿って基板9上に導く。投影光学系4は、第1光学系41と、レンズアレイ5と、第2光学系42とを備える。第1光学系41、レンズアレイ5および第2光学系42は、空間光変調器34から基板9に向かって、この順序で光軸J1上に配置される。すなわち、投影光学系4の光軸J1上において、第1光学系41は、空間光変調器34とレンズアレイ5との間に配置され、第2光学系42は、レンズアレイ5と基板9との間に配置される。
【0022】
第1光学系41は、複数のレンズ411,412を有する。複数のレンズ411,412は、例えば、両側テレセントリック光学系を構成する。第1光学系41は、仮にレンズアレイ5を取り除いた場合に、ON状態の光変調素子341の像を、当該レンズアレイ5が配置されていた位置近傍に形成する。すなわち、空間光変調器34における全ての光変調素子341(パターンの描画に利用される光変調素子341の全てであり、パターンの描画に利用されない光変調素子341は含まない。以下同様である。)がON状態である場合に、当該全ての光変調素子341の像をレンズアレイ5の位置近傍に形成可能であるように、第1光学系41が構成される。
【0023】
レンズアレイ5は、複数の要素レンズ(マイクロレンズ)51を備える。レンズアレイ5は、後述のホルダ6(図3参照)により支持される。複数の要素レンズ51は、空間光変調器34の複数の光変調素子341と同様に、光軸J1に垂直かつ、互いに直交する2方向に一定のピッチで配列される。空間光変調器34の全ての光変調素子341がON状態である場合に、当該全ての光変調素子341から出射される複数の光束は、第1光学系41により複数の要素レンズ51にそれぞれ入射する。各要素レンズ51を通過した光束は、当該要素レンズ51の作用により、その出射面(第2光学系42側のレンズ面)近傍において集光し、集光点P1が形成される。このように、レンズアレイ5の第2光学系42側近傍には、ON状態の光変調素子341にそれぞれ対応する複数の集光点P1が形成される。
【0024】
第2光学系42は、ミラー421と、複数のレンズ422,423とを備える。複数のレンズ422,423は、例えば、両側テレセントリック光学系を構成する。第2光学系42は、複数の集光点P1の像を基板9の上面91に拡大して形成する。以下の説明では、第2光学系42により上面91に形成される集光点P1の像を「スポット像」という。空間光変調器34の全ての光変調素子341がON状態である場合には、互いに直交する2方向に配列された複数のスポット像が上面91に形成される。複数のスポット像の配列方向は、移動機構22における主走査方向および副走査方向に対して傾斜してもよい。図2の例では、第2光学系42において最も基板9に近接するレンズ423が、投影光学系4に含まれるレンズのうち最大の口径を有するものである。レンズ423の口径は、例えば、100~200mmである。
【0025】
図3は、光軸J1に垂直な方向から見たレンズアレイ5およびホルダ6を示す図であり、図4は、光軸J1に沿って見たレンズアレイ5およびホルダ6を示す図である。図3および図4では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として示している。Z方向は、投影光学系4の光軸J1に平行であり、(-Z)側が第1光学系41側であり、(+Z)側が第2光学系42側である。すなわち、(+Z)方向は、光の進行方向である。
【0026】
レンズアレイ5は、ベース部52と、既述の複数の要素レンズ51とを備える。ベース部52は、X方向およびY方向に広がる矩形の板状である。図4の例では、ベース部52のX方向の長さは、Y方向の長さよりも大きい。ベース部52は、複数の要素レンズ51と同様に、光を透過させる材料(例えば、石英ガラス)により形成される。複数の要素レンズ51は、互いに同じ形状であり、ベース部52の中央部においてX方向およびY方向に一定のピッチで配列される。各要素レンズ51は、例えばベース部52から(+Z)側に突出する凸レンズである。
【0027】
ベース部52において、複数の要素レンズ51の(+X)側および(-X)側のそれぞれに位置する部位、すなわち、X方向におけるベース部52の各端部では、複数の突起部53がY方向に配列される。各突起部53は、要素レンズ51と同様に、ベース部52から(+Z)側に突出する。好ましいレンズアレイ5では、複数の突起部53は、ベース部52および複数の要素レンズ51と同じ材料により一体的に形成される。突起部53は、レンズとしての機能を有さない。個別に形成された突起部53が、ベース部52に固定されてもよい。
【0028】
既述のように、空間光変調器34の全ての光変調素子341がON状態である場合に、レンズアレイ5の(+Z)側近傍では、複数の要素レンズ51により複数の集光点P1が形成される(図2参照)。図4の例では、X方向に並ぶ要素レンズ51の個数が、Y方向に並ぶ要素レンズ51の個数よりも多く、複数の集光点P1の配列においても、X方向に並ぶ集光点P1の個数が、Y方向に並ぶ集光点P1の個数よりも多くなる。同様に、基板9上に形成される複数のスポット像の配列においても、X方向に対応する方向に並ぶスポット像の個数が、Y方向に対応する方向に並ぶスポット像の個数よりも多くなる。以下の説明では、基板9上において当該複数のスポット像を含む最小の矩形領域を「照射範囲」といい、X方向に対応する方向を「照射範囲の長手方向」という。
【0029】
投影光学系4は、レンズアレイ5を支持するホルダ6をさらに備える。ホルダ6は、ホルダ本体61と、押さえ部62とを備える。ホルダ本体61は、X方向およびY方向に広がる矩形の板状であり、例えば金属により形成される。図4の例では、ホルダ本体61のX方向の長さは、Y方向の長さよりも大きい。ホルダ本体61の中央部には、X方向およびY方向に広がる矩形の開口611が形成される。レンズアレイ5は、ホルダ本体61の(-Z)側の面に接触するように、ホルダ本体61に重ねられる。光軸J1に沿って見た場合に、レンズアレイ5の複数の要素レンズ51は開口611と重なる。
【0030】
押さえ部62は、レンズアレイ5をホルダ本体61に対して押さえる。詳細には、押さえ部62は、ねじ621、スペーサ622および押さえ板623の複数の組合せを備える。スペーサ622は、筒状であり、レンズアレイ5のベース部52とほぼ同じ厚さを有する。押さえ板623は、矩形の薄板であり、ねじ621の軸部が挿入される貫通孔が設けられる。X方向におけるホルダ本体61の中央において、開口611の(+Y)側および(-Y)側の近傍には、ねじ孔が設けられる。ねじ621の軸部は、押さえ板623の貫通孔、および、筒状のスペーサ622に挿入され、当該ねじ孔に締結される。これにより、ベース部52のX方向に沿う縁部においてX方向の中央近傍の部位が押さえ板623とホルダ本体61との間で挟持される。すなわち、レンズアレイ5が押さえ部62によりホルダ本体61に対して押さえられ、ホルダ6に固定される。
【0031】
このとき、ベース部52の両端部に設けられた複数の突起部53が、開口611の(+X)側および(-X)側の近傍において、ホルダ本体61の(-Z)側の面に接触する。換言すると、ベース部52の当該両端部は、ホルダ本体61の(-Z)側の面から突起部53の高さだけ離間する。一方、X方向におけるベース部52の中央近傍では、既述のように、X方向に沿う縁部がホルダ本体61の(-Z)側の面に接触する。これにより、図3に示すようにY方向に沿って見た場合に、ベース部52が(+Z)側(すなわち、光の進行方向)に向かって突出するように、緩やかに湾曲する(撓む)。ベース部52が湾曲したレンズアレイ5では、X方向における中央から両端に向かうに従って、要素レンズ51が(-Z)側に配置される。このように、ホルダ6に固定されたレンズアレイ5では、光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置がずれている。
【0032】
ここで、投影光学系4において、レンズアレイのベース部を湾曲させていない比較例の描画ヘッドについて述べる。比較例の描画ヘッドでは、図3中に二点鎖線で示すように、複数の突起部53を省略したレンズアレイ8が用いられ、レンズアレイ8のベース部81は湾曲しない。比較例の描画ヘッドの他の構成は、描画ヘッド31と同様である。既述のように、投影光学系4の第2光学系42では、大口径のレンズ423が用いられるため、比較例の描画ヘッドでは、像面湾曲が大きくなりやすい。
【0033】
図5は、比較例の描画ヘッドにおいて像面湾曲を測定した結果を示す図である。像面湾曲の測定では、描画装置1において、ステージ21上の基板9の上面91に相当する面(光軸J1に垂直な面)を撮像可能な撮像部を設けた。当該撮像部を光軸J1に沿う方向の複数の位置に配置しつつ、各位置において当該撮像部による撮像を行った。そして、最小のスポット径が撮像された位置をフォーカス位置とした。上記フォーカス位置の測定は、光軸J1に垂直、かつ、図4中のX方向に対応する方向(すなわち、照射範囲の長手方向)の複数の位置で行った。
【0034】
図5では、照射範囲の長手方向の中央(図5中で0の位置)におけるフォーカス位置を0とし、光軸J1に沿う方向におけるレンズ423側を正とし、レンズ423とは反対側を負としている。比較例の描画ヘッドにおける像面湾曲の測定結果では、図5中に実線L0で示すように、照射範囲の長手方向に関して中央から少し離れた位置のフォーカス位置は、正となっており、中央のフォーカス位置よりもレンズ423に僅かに近づく。また、中央からさらに離れた位置のフォーカス位置は、負となっており、中央のフォーカス位置よりもレンズ423から離れる(すなわち、光の進行方向に離れる)。図5の線L0は、幾何光学計算により得られる像面湾曲とほぼ同じである。
【0035】
ここで、比較例の描画ヘッドにおける像面湾曲の測定結果を示す線L0を、図5中に破線L1で示すように、レンズ423側に向かって突出する(光の進行方向に対しては凹状となる)曲線で近似する。曲線(近似曲線)L1は、例えば円弧であり、照射範囲の長手方向の中央の線に対して線対称である。照射範囲の長手方向の各位置において、像面湾曲の測定結果を示す線L0と曲線L1との差を求めた場合に、線L0のフォーカス位置が曲線L1よりも大きい位置での当該差の最大値d1と、線L0のフォーカス位置が曲線L1よりも小さい位置での当該差の最大値d2との和(d1+d2)は、曲線L0の最大値と最小値との差d3よりも小さいことが好ましい。以下の説明では、曲線L1の最大値と最小値との差(レンジであり、図5中で矢印C1で示す差)を「湾曲量」という。図3のベース部52の湾曲形状についても同様である。
【0036】
描画ヘッド31における図3のレンズアレイ5では、既述のように光の進行方向((+Z)方向)に対して凸状の湾曲が与えられている。したがって、要素レンズ51の位置がX方向における中央から離れるに従って、要素レンズ51により形成される集光点P1が(-Z)側に配置される。すなわち、要素レンズ51の位置がX方向における中央から離れるに従って、要素レンズ51に対応する集光点P1の基板9近傍における結像位置が、比較例の描画ヘッドに比べて光の進行方向の後側に位置する。また、ベース部52の湾曲量は、曲線L1に応じて決定されている。例えば、第2光学系42における結像倍率(横倍率)が2倍である場合、縦倍率は4倍となるため、ベース部52の湾曲量が曲線L1の湾曲量の1/4倍とされる。このようなベース部52の湾曲は、光軸J1の方向における突起部53の高さを、当該湾曲量と同じにすることにより可能となる。
【0037】
以上のように、第2光学系42における縦倍率を考慮して、曲線L1の湾曲量に応じた湾曲量にて、光の進行方向に対して曲線L1とは逆向きに突出する湾曲が、ベース部52に対して与えられる。これにより、ベース部52を湾曲させない場合に曲線L1で示す像面湾曲が発生する投影光学系4では、複数の集光点P1の結像面を基板9の上面91にほぼ平行とすることが可能である。ベース部52を湾曲させない場合に実際に発生する像面湾曲は、図5中の線L0で示すように曲線L1とは相違するが、曲線L1に応じてベース部52を湾曲させた投影光学系4では、実際の像面湾曲におけるフォーカス位置の最大値と最小値との差を、ベース部52を湾曲させない比較例における像面湾曲の当該差よりも小さくすることが可能となる。好ましい投影光学系4では、実際の像面湾曲におけるフォーカス位置の最大値と最小値との差が、焦点深度以内となる。なお、ベース部52を湾曲させることにより、各要素レンズ51の光軸が、投影光学系4の光軸J1に対して僅かに傾くが、実際の湾曲量は僅かであるため、基板9の上面91に形成される像の品質にはほとんど影響はない。
【0038】
以上に説明したように、描画装置1の投影光学系4では、複数の光変調素子341がON状態である場合に、当該複数の光変調素子341から出射される複数の光束が、第1光学系41によりレンズアレイ5の複数の要素レンズ51にそれぞれ入射する。レンズアレイ5の近傍において当該複数の光束がそれぞれ集光することにより複数の集光点P1が形成され、第2光学系42により当該複数の集光点P1の像が基板9上に形成される。レンズアレイ5では、第2光学系42における像面湾曲を補正するように、光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置がずれている。
【0039】
このように、描画装置1では、各光束の結像位置を補正するための液晶素子等を設けることなく、簡単な構成により第2光学系42における像面湾曲を補正することができる。その結果、描画装置1の製造コストを増大させることなく、基板9上のスポット径のばらつきを抑制することができ、パターンを精度よく描画することができる。光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置をずらす上記手法は、光軸J1の方向における複数の集光点P1の位置を実質的にずらすものであるため、投影光学系4における他の種類の収差等に大きな影響が生じることを抑制して、基板9の上面91に形成される像の一定の品質を確保することが可能である。
【0040】
また、レンズアレイ5において、複数の要素レンズ51が、光を透過させる板状のベース部52上に設けられ、ベース部52を湾曲させた状態でレンズアレイ5がホルダ6により保持される。これにより、光軸J1の方向に関して複数の要素レンズ51の位置がずれたレンズアレイ5を容易に実現することができる。なお、レンズアレイ5のベース部52を適切に湾曲させるという観点では、ベース部52の厚さは、例えば0.1mm以上かつ5mm以下であり、好ましくは、3mm以下である。
【0041】
ベース部52では、複数の要素レンズ51とは異なる位置に突起部53が設けられる。ホルダ6のホルダ本体61では、複数の要素レンズ51と重なる開口611が設けられ、開口611の周囲にて突起部53がホルダ本体61と接触する。また、突起部53から離れた位置において、押さえ部62によりベース部52がホルダ本体61に対して押さえられる。これにより、湾曲させた状態のレンズアレイ5を容易に実現することができる。突起部53が、ベース部52および複数の要素レンズ51と一体的に形成されることにより、レンズアレイ5を容易に作製することができる。
【0042】
図6および図7は、レンズアレイ5およびホルダ6の他の例を示す図である。図6は、図3に対応し、図7は、(+Z)側から(-Z)方向を向いて見たレンズアレイ5およびホルダ6を示す。図6および図7の例では、レンズアレイ5において突起部53が省略される。また、レンズアレイ5は、ホルダ本体61の(+Z)側の面に接触するように、ホルダ本体61に重ねられる。
【0043】
ホルダ6は、ホルダ本体61および押さえ部62に加えて、2つの突起部63を有する。2つの突起部63は、X方向におけるホルダ本体61の中央において、開口611の(+Y)側および(-Y)側の近傍に設けられる。2つの突起部63は、(+Z)側、すなわち、レンズアレイ5側に突出する。押さえ部62は、2つのねじ621、2つのスペーサ622、および、1つの押さえ板623の2つの組合せを備える。ホルダ本体61において、開口611に対して(+X)側および(-X)側のそれぞれには、2つのねじ孔が設けられる。各ねじ621の軸部を押さえ板623の貫通孔およびスペーサ622に挿入し、ねじ孔に締結することにより、ベース部52におけるX方向の両端部が、押さえ板623とホルダ本体61との間で挟持される。すなわち、押さえ部62によりレンズアレイ5がホルダ本体61に対して押さえられ、ホルダ6に固定される。
【0044】
このとき、X方向におけるホルダ本体61の中央に設けられた2つの突起部63が、開口611の(+Y)側および(-Y)側の近傍において、ベース部52の(-Z)側の面に接触する。換言すると、X方向におけるベース部52の中央は、ホルダ本体61の(+Z)側の面から突起部63の高さだけ離間する。一方、X方向におけるベース部52の両端部では、Y方向に沿う縁部がホルダ本体61の(+Z)側の面に接触する。これにより、図6に示すようにY方向に沿って見た場合に、ベース部52が(+Z)側(すなわち、光の進行方向)に向かって突出するように、緩やかに湾曲する。ベース部52が湾曲したレンズアレイ5では、X方向における中央から両端に向かうに従って、要素レンズ51が(-Z)側に配置される。
【0045】
図6および図7のレンズアレイ5およびホルダ6を有する描画装置1においても、第2光学系42における像面湾曲を補正するように、レンズアレイ5において、光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置がずれている。これにより、像面湾曲による基板9上のスポット径のばらつきを簡単な構成により抑制して、パターンを精度よく描画することが可能となる。
【0046】
ホルダ6のホルダ本体61では、複数の要素レンズ51と重なる開口611が形成される。また、開口611の周囲にてベース部52と接触する突起部63が設けられ、突起部63から離れた位置において押さえ部62によりベース部52がホルダ本体61に対して押さえられる。これにより、湾曲させた状態のレンズアレイ5を容易に実現することができる。
【0047】
上記描画装置1では様々な変形が可能である。
【0048】
上記実施の形態では、ベース部52を光の進行方向((+Z)方向)に対して凸状に湾曲させる場合について説明したが、ベース部52を湾曲させない場合における像面湾曲が、光の進行方向に対して凸状となる曲線で近似される場合には、図8および図9に示すように、光の進行方向に対して凹状の湾曲が、ベース部52に与えられる。図8の例では、レンズアレイ5がホルダ本体61の(-Z)側に配置され、ベース部52のX方向に沿う両縁部において、X方向の中央に形成された2つの突起部53がホルダ本体61に接触する。また、X方向におけるベース部52の両端部が、押さえ部62によりホルダ本体61に対して押さえられる。図9の例では、レンズアレイ5がホルダ本体61の(+Z)側に配置され、ホルダ本体61において開口611の(+X)側および(-X)側の近傍にそれぞれ形成された2つの突起部63がベース部52に接触する。また、ベース部52のX方向に沿う両縁部において、X方向の中央の部位が、押さえ部62によりホルダ本体61に対して押さえられる。
【0049】
また、ホルダ本体61の表面が曲面とされ、当該表面に沿うようにベース部52を湾曲させた状態で、レンズアレイ5がホルダ6に保持されてもよい。以上のように、ベース部52を湾曲させた状態(すなわち、撓ませた状態)で保持するホルダ6は、様々な態様で実現することが可能である。
【0050】
レンズアレイ5の製造手法によっては、ベース部52が予め湾曲した状態のレンズアレイ5が用いられてもよい。また、ベース部52を湾曲させることなく、光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置をずらしたレンズアレイ5が製造され、描画装置1において用いられてもよい。
【0051】
例えば、比較例の描画ヘッドにおける像面湾曲の測定結果に応じた形状、すなわち、図5中の線L0を上下に反転した形状となるように、ベース部52を複雑に湾曲させてもよい。また、像面湾曲を測定することなく、幾何光学計算により得られる像面湾曲に基づいてベース部52を湾曲させてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、照射範囲の長手方向における像面湾曲が補正されるが、X方向に沿っても見た場合におけるベース部52を湾曲させることにより、照射範囲の他の方向(長手方向に垂直な方向)における像面湾曲が補正されてもよい。また、照射範囲の2方向の双方における像面湾曲が補正されてもよい。
【0053】
レンズアレイ5においてX方向に並ぶ要素レンズ51の個数と、Y方向に並ぶ要素レンズ51の個数とがほぼ同じとされ、略正方形の照射範囲が形成されてもよい。
【0054】
投影光学系4の設計によっては、各光変調素子341からの光束が集光する集光点P1が、要素レンズ51の出射面よりも第1光学系41側(例えば、要素レンズ51の内部)に形成されてもよい。この場合も、レンズアレイ5において、光軸J1の方向に関する複数の要素レンズ51の位置をずらすことにより、第2光学系42における像面湾曲を補正することが可能である。このように、投影光学系4では、集光点P1がレンズアレイ5の近傍(レンズアレイ5の内部を含む。)に形成されていればよい。
【0055】
空間光変調器34は、DMD以外であってもよい。例えば、GLV(グレーチング・ライト・バルブ)(登録商標)等、複数の光変調素子341が1次元に配列された空間光変調器が用いられてもよい。この場合、レンズアレイ5における複数の要素レンズ51も1次元に配列される。また、空間光変調器34は、反射型の光変調器には限定されず、例えば、液晶素子を用いた透過型の光変調器であってもよい。
【0056】
描画装置1では、描画部3を移動することにより、基板9上における光の照射位置が移動してもよい。
【0057】
パターンが描画される基板9は、プリント配線基板以外に、半導体基板やガラス基板等であってもよい。また、描画装置1では、基板9以外の対象物にパターンが描画されてもよい。
【0058】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0059】
1 描画装置
4 投影光学系
5 レンズアレイ
6 ホルダ
9 基板
10 制御部
22 移動機構
32 光源部
34 空間光変調器
41 第1光学系
42 第2光学系
51 要素レンズ
52 ベース部
53 (レンズアレイの)突起部
61 ホルダ本体
62 押さえ部
63 (ホルダの)突起部
341 光変調素子
611 開口
J1 光軸
P1 集光点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9