(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240404BHJP
C10M 105/34 20060101ALN20240404BHJP
C10M 129/74 20060101ALN20240404BHJP
C10M 129/76 20060101ALN20240404BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240404BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20240404BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240404BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240404BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/34
C10M129/74
C10M129/76
C10N30:02
C10N30:08
C10N30:12
C10N40:02
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2019137223
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188949
【氏名又は名称】田中 成典
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 早季
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-146381(JP,A)
【文献】特開2010-180331(JP,A)
【文献】特開2011-157542(JP,A)
【文献】特開2017-165912(JP,A)
【文献】特開2002-212580(JP,A)
【文献】特開2003-292984(JP,A)
【文献】特開2009-144045(JP,A)
【文献】特開2005-036194(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172275(WO,A1)
【文献】特開2003-336637(JP,A)
【文献】特開2013-100397(JP,A)
【文献】特開2002-206094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:基油と、(B)成分:エステル系防錆剤とを含有し、
前記(A)成分:基油が、エステル系基油を含み、
前記(B)成分:エステル系防錆剤が、(B1)成分:多価アルコールの部分エステルを含み、
前記エステル系基油が、下記一般式(A1-1)で表されるエステル化合物を含
み、
前記(B)成分:エステル系防錆剤の含有量が、潤滑油組成物全量100質量%に対して、1.0質量%未満であり、冷却油として用いられる、潤滑油組成物。
【化1】
[式中、R
1は、炭素数4~21のアルケニル基、アルカジエニル基、又はアルカトリエニル基である。R
2は、炭素数4~22の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項2】
さらに、(L)成分:流動点降下剤を含有する、請求項
1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は、一般的には、機械要素間の潤滑のために用いられる油であり、多くの機械装置に用いられている。
【0003】
従来、潤滑油としては、安価で入手容易な観点から、鉱物油が使用されていた。
しかしながら、要求特性の向上により、目的に適した分子設計が可能な合成油も使用されるようになってきている。
【0004】
近年、潤滑油に求められる性能として、例えば消防法での危険物取扱量(指定数量)を増加させる観点からの高引火点化、寒冷地などの低温環境で使用する観点からの低温流動性の向上が挙げられる。
【0005】
このような、引火点及び低温流動性を考慮した潤滑油として、例えば、特許文献1には、トリメチロールプロパンを90重量%以上含むアルコール成分と、炭素数8~12の1価脂肪酸及びアジピン酸を含み、かつ、炭素数8~12の1価脂肪酸及びアジピン酸を総量で90重量%以上含むカルボン酸成分とを反応させて得られる合成エステルからなる潤滑油基油であって、前記炭素数8~12の1価脂肪酸が、カプリル酸及び/又はカプリン酸を含み、かつ、前記カプリル酸及び前記カプリン酸を総量で90重量%以上含むものであり、前記アジピン酸と前記トリメチロールプロパンとのモル比(アジピン酸/トリメチロールプロパン)が0.65~0.74であり、前記合成エステルの酸価が1mgKOH/g以下であり、水酸基価が10~70mgKOH/gである潤滑油基油、及び該潤滑油基油を含有する潤滑油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような従来の潤滑油では、引火点及び低温流動性を高くしようとすると、動粘度も高くなってしまうため、引火点及び低温流動性と低動粘度化との両立が困難であった。
【0008】
加えて、防錆性を向上させるために特許文献1のような従来の潤滑油に一般的な防錆剤を適用したとしても、十分な防錆性が得られない場合があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、引火点及び低温流動性を高めつつ、低動粘度化を図り、さらに防錆性も良好な潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、(A)成分:基油と、(B)成分:エステル系防錆剤とを含有し、前記(A)成分:基油が、エステル系基油を含み、前記(B)成分:エステル系防錆剤が、(B1)成分:多価アルコールの部分エステルを含む、潤滑油組成物である。
【0011】
本発明の第1の態様においては、前記(B)成分:エステル系防錆剤の含有量が、潤滑油組成物全量100質量%に対して、1.0質量%未満であることが好ましい。
本発明の第1の態様においては、前記エステル系基油が、下記一般式(A1-1)で表されるエステル化合物、及び下記一般式(A1-2)で表されるエステル化合物からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0012】
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。]
【0013】
【化2】
[式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。Xは、炭素数2~10のアルキレン基である。]
【0014】
本発明の第1の態様においては、さらに、(C)成分:流動点降下剤を含有してもよい。
本発明の第1の態様の潤滑油組成物は、軸受用潤滑油として用いられてもよい。
本発明の第1の態様の潤滑油組成物は、冷却油として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、引火点及び低温流動性が高く、低粘度であり、防錆性も良好な潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、動粘度は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
本明細書において、引火点は、JIS K 2265(2007)に準拠して測定される値を意味する。
本明細書において、流動点は、JIS K 2269(1987)に準拠して測定される値を意味する。
【0017】
(潤滑油組成物)
本実施形態の潤滑油組成物は、(A)成分:基油と、(B)成分:エステル系防錆剤とを含有し、(A)成分が、エステル系基油を含み、(B)成分が、(B1)成分:多価アルコールの部分エステルを含む。
また本実施形態の潤滑油組成物は、40℃における動粘度が、15mm2/s以下であることが好ましく、引火点が、200℃以上であることが好ましく、流動点が、-20℃以下であることが好ましい。
【0018】
本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度は、好ましくは15mm2/s以下であり、より好ましくは14mm2/s以下であり、さらに好ましくは12mm2/s以下であり、特に好ましくは10mm2/s以下である。
一方、本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上であり、より好ましくは2mm2/s以上であり、さらに好ましくは4mm2/s以上である。
例えば、本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度は、1mm2/s以上15mm2/s以下が好ましく、2mm2/s以上14mm2/s以下がより好ましく、4mm2/s以上12mm2/s以下がさらに好ましく、4mm2/s以上10mm2/s以下が特に好ましい。
【0019】
本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度が、上記の好ましい上限値以下であれば、潤滑油の粘性抵抗に由来する機械装置の運転エネルギー消費量をより低減することできる。
【0020】
本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度が、上記の好ましい下限値以上であれば、油膜の形成能がより高められやすくなるため潤滑性がより向上する。
【0021】
本実施形態の潤滑油組成物の引火点は、好ましくは200℃以上である。
潤滑油組成物の引火点が、200℃以上であれば、消防法上の潤滑油組成物の分類が第3石油類から第4石油類となるため、危険物取扱量(指定数量)を増加させることができる。
一方、本実施形態の潤滑油組成物の引火点の上限値は、特に限定されず、例えば、400℃以下である。
【0022】
本実施形態の潤滑油組成物の流動点は、好ましくは-20℃以下である。
潤滑油組成物の流動点が、-20℃以下であれば、寒冷地や高空などの低温環境でも潤滑油をより使用しやすくなる。
【0023】
<(A)成分:基油>
本実施形態の潤滑油組成物は、(A)成分:基油を含有し、該(A)成分は(A1)成分:エステル系基油を含む。
(A1)成分としては、植物油若しくは合成油又はこれらの混合油を含むものが挙げられる。
本実施形態におけるエステル系基油として、具体的には、有機酸エステル系基油、リン酸エステル系基油、ケイ酸エステル系基油等が挙げられる。
また、本実施形態におけるエステル系基油としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル結合(-O-)を有するエステル系基油であってもよい。
上記の中でも、低温流動性、引火点の向上の観点から、(A1)成分としては、有機酸エステル系基油であることが好ましく、下記一般式(A1-1)で表されるエステル化合物(以下、(A1-1)成分ともいう)、及び下記一般式(A1-2)で表されるエステル化合物(以下、(A1-2)成分ともいう)からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0024】
≪(A1-1)成分:一般式(A1-1)で表されるエステル化合物≫
(A1-1)成分は、下記一般式(A1-1)で表されるエステル化合物である。
【0025】
【化3】
[式中、R
1は、炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。R
2は、炭素数4~22の脂肪族炭化水素基である。]
【0026】
式(A1-1)中、R1は、炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
該脂肪族炭化水素基として、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等が挙げられる。
【0027】
・炭素数4~21のアルキル基
炭素数4~21直鎖状のアルキル基として、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基が挙げられる。
【0028】
炭素数4~21の分岐鎖状のアルキル基として、具体的には、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、10-メチルオクタデシル基等が挙げられる。
【0029】
・炭素数4~21のアルケニル基
炭素数4~21直鎖状のアルケニル基として、具体的には、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基が挙げられる。なお、二重結合の位置は任意であり、例えば、8-トリデセニル基、8-ペンタデセニル基、8-ヘプタデセニル基、10-ノナデセニル基等が挙げられる。
炭素数4~21分岐鎖状のアルケニル基として、具体的には、上記直鎖状のアルケニル基の水素原子の一部又は全部が上述したアルキル基に置換された基等が挙げられる。
【0030】
アルカジエニル基としては、8,11-ヘプタデカジエニル基等、アルカトリエニル基としては、8,11,14-ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。
【0031】
式(A1-1)中、R1は、上述した中でも、炭素数4~21のアルキル基又は炭素数4~21のアルケニル基が好ましく、炭素数4~21のアルキル基がより好ましく、炭素数4~21直鎖状のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、低温流動性、引火点の向上の観点から、トリデシル基が好ましい。
【0032】
式(A1-1)中、R2は、炭素数4~22の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
該脂肪族炭化水素基として、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等が挙げられる。その中でも、低温流動性、引火点、貯蔵安定性、加水分解安定性等の向上の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0033】
・炭素数4~22のアルキル基
炭素数4~22直鎖状のアルキル基として、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基が挙げられる。
【0034】
炭素数4~22の分岐鎖状のアルキル基として、具体的には、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基(2-エチルヘキシル基等)、イソノニル基(3,5,5-トリメチルヘキシル基等)、イソデシル基(8-メチルノニル基等)、イソウンデシル基、イソドデシル基(10-メチルウンデシル基等)、イソトリデシル基(11-メチルドデシル基等)などが挙げられる。
【0035】
式(A1-1)中、R2は、上述した中でも、n-ブチル基、イソオクチル基(2-エチルヘキシル基)が好ましい。
【0036】
本実施形態における(A1-1)成分として、具体的には、n-ドデカン酸オクチル、n-ドデカン酸ノニル、n-ドデカン酸デシル、n-ドデカン酸イソオクチル、n-ドデカン酸イソノニル、n-ドデカン酸イソデシル、n-ドデカン酸イソウンデシル、n-ドデカン酸イソドデシル、n-ドデカン酸イソトリデシル、n-テトラデカン酸オクチル、n-テトラデカン酸ノニル(ミリスチン酸ノニル)、n-テトラデカン酸デシル(ミリスチン酸デシル)、n-テトラデカン酸イソオクチル(ミリスチン酸イソオクチル)、n-テトラデカン酸イソノニル(ミリスチン酸イソノニル)、n-テトラデカン酸イソデシル(ミリスチン酸イソデシル)、n-テトラデカン酸イソウンデシル(ミリスチン酸イソウンデシル)、n-テトラデカン酸イソドデシル(ミリスチン酸イソドデシル)、n-テトラデカン酸イソトリデシル(ミリスチン酸イソトリデシル)、n-ヘキサデカン酸n-ノニル、n-ヘキサデカン酸n-デシル、n-ヘキサデカン酸イソオクチル、n-ヘキサデカン酸イソノニル、n-ヘキサデカン酸イソデシル、n-ヘキサデカン酸イソウンデシル、n-ヘキサデカン酸イソドデシル、n-ヘキサデカン酸イソトリデシル、n-オクタデカン酸n-ノニル、n-オクタデカン酸n-デシル、n-オクタデカン酸2-エチルヘキシル、n-オクタデカン酸イソオクチル、n-オクタデカン酸イソノニル、n-オクタデカン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、n-オクタデカン酸イソデシル、n-オクタデカン酸イソウンデシル、n-オクタデカン酸イソドデシル、n-オクタデカン酸イソトリデシル等の飽和脂肪酸エステル;9-オクタデセン酸ブチル(オレイン酸ブチル)、9-オクタデセン酸デシル(オレイン酸デシル)、9-オクタデセン酸イソトリデシル(オレイン酸イソトリデシル)等の不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられる。その中でも、低温流動性、引火点、貯蔵安定性、加水分解安定性等の向上の観点から、n-テトラデカン酸イソオクチル(ミリスチン酸イソオクチル)が好ましく、具体的には、n-テトラデカン酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0037】
本実施形態における(A1-1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
≪(A1-2)成分:一般式(A1-2)で表されるエステル化合物≫
(A1-2)成分は、下記一般式(A1-2)で表されるエステル化合物である。
【0039】
【化4】
[式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。Xは、炭素数2~10のアルキレン基である。]
【0040】
式(A1-2)中、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数4~21の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基としては、上述した式(A1-1)中のR1と同様のものが挙げられる。
【0041】
式(A1-2)中、Xは、炭素数2~10のアルキレン基であり、該アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
直鎖状のアルキレン基としては、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキレン基としては、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0042】
式(A1-2)中、Xは、上述した中でも、分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、アルキルエチレン基であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態における(A1-2)成分として、具体的には、以下の脂肪酸2つ(1種2つ又は2種1つずつ)と2価のアルコールとをエステル化することに得られるエステル化合物挙げられる。
【0044】
・脂肪酸
上記脂肪酸としては、n-ブタン酸、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-ノナン酸、n-デカン酸(カプリン酸)、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸(ラウリン酸)、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(ステアリン酸)、n-イコサン酸(アラキジン酸)、イソブタン酸、イソペンタン酸、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソイコサン酸等の飽和脂肪酸;9-テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9-オクタデセン酸(オレイン酸)、エイコセン酸、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0045】
・2価のアルコール
上記2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘプタンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、1,7-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-ノナンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、5-メチル-1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチルプロパンジオール、2-ブチル2-エチルプロパンンジオール等が挙げられる。
【0046】
本実施形態における(A1-2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本実施形態における(A1)成分としては、上記の中でも、(A1-1)成分を含むことが特に好ましい。
【0048】
本実施形態における基油としては、上述した(A1)成分:エステル系基油以外の成分を含有してもよい。その他の基油としては、(A2)成分:鉱油が挙げられる。
【0049】
≪(A2)成分:鉱油≫
(A2)成分における鉱油として、具体的には、パラフィン系又はナフテン系の原油の蒸留により得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られるノルマルパラフィン;パラフィン系又はナフテン系の原油の蒸留により得られる潤滑油留分;潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等);ガス・トゥー・リキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、GTLワックス等)を原料とし、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1つ又は2つ以上組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油が挙げられる。
【0050】
上記鉱油中の芳香族分は特に制限されないが、作業環境の観点から、好ましくは5容量%以下、より好ましくは3容量%以下、さらに好ましくは1容量%以下、特に好ましくは0.5容量%以下である。ここで、芳香族分とは、JIS K2536「石油製品-炭化水素タイプ試験」の蛍光指示薬吸着法に準拠して測定された値を意味する。
【0051】
(A2)成分として、具体的には、米国石油協会(American Petroleum Institute:API)でのベースオイルの分類における、グループI~Vのいずれも用いることができる。
【0052】
本実施形態における(A2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
本実施形態における(A)成分:基油の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
一方で、上限値は特に限定されず、例えば、99.5質量%以下である。
【0054】
本実施形態における(A1)成分及び(A2)成分の含有量は、(A)成分:基油全量に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0055】
本実施形態における(A)成分:基油は、上述した(A1)成分及び(A2)成分を混合して用いることが好ましい。(A1)成分及び(A2)成分を混合して用いることにより、コストを下げることができる。
(A1)成分と(A2)成分との混合比(質量比)は、(A1)成分:(A2)成分=95:5~20:80が好ましく、(A1)成分:(A2)成分=95:5~40:60がより好ましく、(A1)成分:(A2)成分=95:5~50:50がさらに好ましい。
【0056】
本実施形態における(A)成分:基油の40℃における動粘度は、好ましくは15mm2/s以下であり、より好ましくは14mm2/s以下であり、さらに好ましくは12mm2/s以下であり、特に好ましくは10mm2/s以下である。
一方、本実施形態における(A)成分:基油の40℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上であり、より好ましくは2mm2/s以上であり、さらに好ましくは4mm2/s以上である。
例えば、本実施形態における(A)成分:基油の40℃における動粘度は、1mm2/s以上15mm2/s以下が好ましく、2mm2/s以上14mm2/s以下がより好ましく、4mm2/s以上12mm2/s以下がさらに好ましく、4mm2/s以上10mm2/s以下が特に好ましい。
【0057】
本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度が、上記の好ましい上限値以下であれば、潤滑油の粘性抵抗に由来する機械装置の運転エネルギー消費量をより低減することできる。
【0058】
本実施形態の潤滑油組成物における40℃における動粘度が、上記の好ましい下限値以上であれば、油膜の形成能がより高められやすくなるため潤滑性がより向上する。
【0059】
<(B)成分:エステル系防錆剤>
本実施形態の潤滑油組成物は、(B)成分:エステル系防錆剤を含有し、該(B)成分は、(B1)成分:多価アルコールの部分エステルを含む。
【0060】
≪(B1)成分:多価アルコールの部分エステル≫
多価アルコールの部分エステルは、多価アルコール中のヒドロキシ基の少なくとも1つ以上がエステル化されておらず、ヒドロキシ基のままで残っているエステルである。
【0061】
多価アルコールの部分エステルの原料である多価アルコールとしては、分子中のヒドロキシ基の数が、好ましくは2~10(より好ましくは3~6)であり、かつ、炭素数が2~20(より好ましくは3~10)である多価アルコールが挙げられる。
これらの多価アルコールの中でも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを用いることが好ましい。
【0062】
多価アルコールの部分エステルの原料であるカルボン酸としては、カルボン酸の炭素数が、好ましくは2~30、より好ましくは6~24、さらに好ましくは10~22である。
当該カルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよく、また直鎖状カルボン酸であっても分岐鎖状カルボン酸であってもよい。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪酸;ドデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸等)、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸等)、9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)、エイコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0063】
多価アルコールの部分エステルとしては、上記の中でも、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンが好ましい。
【0064】
本実施形態における(B1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態における(B1)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、1.0質量%未満であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以下であることが特に好ましい。
一方で、本実施形態における(B1)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。
例えば、本実施形態における(B1)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%未満、より好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上0.2質量%以下である。
【0065】
本実施形態における(B1)成分の含有量が、上記の好ましい上限値以下であれば、抗乳化性がより向上する。
一方で、本実施形態における(B1)成分の含有量が、上記の好ましい下限値以上であれば、防錆性がより向上する。
【0066】
本実施形態における(B1)成分の含有量は、(B)成分:エステル系防錆剤全量100質量%に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0067】
本実施形態における(B)成分:エステル系防錆剤は上述した(B1)成分以外のエステル系防錆剤を含有してもよい。その他のエステル系防錆剤としては、エステル化酸化ワックス、エステル化ラノリン脂肪酸、アルキル又はアルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
【0068】
・エステル化酸化ワックス
エステル化酸化ワックスは、酸化ワックスとアルコール類とを反応させ、酸化ワックスが有するカルボキシ基の一部又は全部をエステル化させたものである。
エステル化酸化ワックスの原料として使用される酸化ワックスとして、具体的には、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム、合成により得られるポリオレフィンワックス等が挙げられる。
エステル化酸化ワックスの原料として使用されるアルコール類としては、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の飽和1価アルコール、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の不飽和1価アルコール、上記多価アルコールの部分エステルにおいて説明した多価アルコール、ラノリンの加水分解により得られるアルコール等が挙げられる。
【0069】
・エステル化ラノリン脂肪酸
エステル化ラノリン脂肪酸は、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られたラノリン脂肪酸とアルコールとを反応させて得られたものである。ここで、エステル化ラノリン脂肪酸の原料として使用されるアルコールとしては、上記のエステル化酸化ワックスにおいて説明したアルコールと同様のものが挙げられる。その中でも多価アルコールが好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセリンがより好ましい。
【0070】
・アルキル又はアルケニルコハク酸エステル
アルキル又はアルケニルコハク酸エステルは、アルキル又はアルケニルコハク酸とアルコールとを反応させて得られたものである。ここで、アルキル又はアルケニルコハク酸エステルの原料として使用されるアルコールとしては、上記のエステル化酸化ワックスにおいて説明したアルコールと同様のものが挙げられる。
【0071】
<任意成分>
本実施形態の潤滑油組成物は、上述した(A)成分、(B)成分以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
かかる任意成分としては、例えば、以下に示す(L)成分:流動点降下剤、(E)成分:酸化防止剤、(F)成分:金属不活性化剤等が挙げられる。
【0072】
≪(L)成分:流動点降下剤≫
流動点降下剤は、低温における潤滑油組成物中のろう分の結晶化を防止し、流動点を低下させ、潤滑油組成物の適用温度範囲を広げるものである。
流動点降下剤としては、スチレン-ブタジエン水添加重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリメタクリレートなどの高分子化合物が挙げられる。その中でも、構成単位に極性基を有さない高分子化合物(以下、「高分子化合物(P)」ともいう)が好ましい。
高分子化合物(P)としては、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン等のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0073】
高分子化合物(P)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、50000~500000が好ましく、60000~400000がより好ましく、70000~300000がさらに好ましい。
高分子化合物(P)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0074】
本実施形態における(L)成分:流動点降下剤の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
一方で、本実施形態における(L)成分:流動点降下剤の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。
例えば、本実施形態における(L)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上3質量%以下である。
【0075】
(L)成分の含有量が、上記好ましい上限値以下であれば、潤滑油の粘性抵抗に由来する機械装置の運転エネルギー消費量をより低減することできる。
(L)成分の含有量が上記好ましい下限値以上であれば、低温流動性がより向上する。
【0076】
≪(E)成分:酸化防止剤≫
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、サリチル酸エステル系酸化防止剤、トリアジン系酸化防止剤等が挙げられる。その中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールがより好ましい。
【0077】
本実施形態の潤滑油組成物に含まれる(E)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
(E)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。
一方で、(E)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0078】
≪(F)成分:金属不活性化剤≫
金属不活性剤は、劣化した潤滑油から発生した有機酸や外来の腐食性の物質から金属表面を保護し、腐食を防ぐものである。
金属不活性剤としては、溶解金属(金属イオン)と反応して不活性な物質(キレート化合物)を作るものや、金属表面に付着し保護皮膜を生成するものが挙げられる。
金属不活性化剤として、具体的には、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体(トリルトリアゾール誘導体等)、チアジアゾール誘導体が挙げられる。その中でも、トリルトリアゾール誘導体が好ましく、具体的には、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールが好ましい。
【0079】
本実施形態における(F)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(F)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
一方で、本実施形態における(F)成分の含有量は、潤滑油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。
【0080】
本実施形態の潤滑油組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含有させてもよい。具体的には、造膜剤、消泡剤、界面活性剤、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0081】
以上説明した本実施形態の潤滑油組成物は、(A)成分:基油と、(B)成分:エステル系防錆剤とを含有し、(A)成分が、エステル系基油を含み、(B)成分が、(B1)成分:多価アルコールの部分エステルを含む。該エステル系基油と(B1)成分を併用することにより、防錆性がより向上する。また、本実施形態の潤滑油組成物は、上記構成により引火点および低温流動性が高く、低動粘度である。
【0082】
本実施形態の潤滑油組成物の用途としては、特に限定されず、油圧作業油、タービン油、ギヤ油、摺動面油、圧縮基油、真空ポンプ油、冷凍機油、熱媒体油、軸受油、食品機械用潤滑油、電気絶縁油、冷却油等として用いられる。
本実施形態の潤滑油組成物は、上記の中でも、引火点及び低温流動性が高く、低動粘度であり、防錆性にも優れることから、軸受油、冷却油として用いられることが好ましい。
なお、本実施形態の潤滑油組成物は軸受油として用いながら、該軸受油を装置内で循環させ、冷却油として用いてもよい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0084】
<(A)成分:基油について>
各例における(A)成分としては、表1に示すアルコールとカルボン酸との縮合反応により得られるエステル化合物を含有する基油を用いた。
なお、表1中の40℃における動粘度(40℃動粘度)は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定した値である。
また、表1中の引火点はJIS K 2265(2007)に準拠して測定した値である。
【0085】
【0086】
<潤滑油組成物の調製>
(実施例1、2、比較例1、参考例1、2)
表2に示す各成分を用いて、潤滑油組成物全量が100質量%となるように各例の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
なお、表2中の40℃における動粘度(40℃動粘度)は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定した値である。
表2中の40℃における動粘度(40℃動粘度)は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定した値である。
表2中の引火点はJIS K 2265(2007)に準拠して測定した値である。
表2中の流動点はJIS K 2269(1987)に準拠して測定した値である。
【0087】
[防錆性の評価]
JIS K2510「潤滑油-防錆性能試験方法」に準拠して、各例の潤滑油組成物の防錆性を評価した。評価は24時間行った。試験片はJIS G3108に規定する記号SGD3Mを用いた。
その結果をそれぞれ表2に示す。
【0088】
[抗乳化性の評価]
JISK 2520に準拠して、各例の潤滑油組成物40mLに、水40mlを加えて撹拌混合して、放置した。その後、該混合液が水層と油層とに分離するまでの時間を計測し、抗乳化性を評価した。
評価基準は以下に示す通りである。
その結果をそれぞれ表2に示す。
A:水層と油層とに分離するまでの時間が5分未満であった
B:水層と油層とに分離するまでの時間が5分以上60分未満であった
C:水層と油層とに分離するまでの時間が60分以上、又は完全には分離せず乳化層が残った
【0089】
【0090】
表2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。
(B1)-1:ステアリン酸ソルビタン
(B1)-2:オレイン酸ソルビタン
(E)-1:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
(F)-1:1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール
(L)-1:エチレン-プロピレン共重合体(PARATONE8057、シェブロンジャパン社製、Mn:54800、Mw:119000)
【0091】
表2に示す結果から、実施例1及び2の潤滑油組成物は、引火点および低温流動性が高いのに加えて、40℃における動粘度が低く、防錆性にも優れることが確認できる。
【0092】
また、表2に示す結果から、(B)成分:エステル系防錆剤の含有量が、潤滑油組成物全量100質量%に対して、1.0質量%未満であれば、抗乳化性がより向上することが確認できる。