IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ THK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図1
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図2
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図3
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図4
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図5
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図6
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図7
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図8
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図9
  • 特許-逆入力遮断クラッチ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/10 20060101AFI20240404BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D63/00 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019213916
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085448
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特公昭39-014861(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/10
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
入力部材と共通の中心線を持つ出力部材と、
被押圧部材と、
前記中心線と直角な中心線を中心に揺動可能な揺動部材と、を備え、
前記入力部材にトルクが入力される際、前記揺動部材が一方向に揺動して、前記入力部材に入力されたトルクが前記揺動部材を介して前記出力部材に伝達され、
前記出力部材にトルクが逆入力される際、前記揺動部材が反対方向に揺動して、前記揺動部材が前記被押圧部材に接触し、前記出力部材に逆入力されたトルクの少なくとも一部が遮断される逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記入力部材と前記出力部材が前記中心線の方向の全長に渡って中空に形成されることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記揺動部材が前記入力部材と前記出力部材に跨るように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
入力部材と、
入力部材と共通の中心線を持つ出力部材と、
被押圧部材と、
前記中心線と直角な中心線を中心に揺動可能な揺動部材と、を備え、
前記入力部材にトルクが入力される際、前記揺動部材が一方向に揺動して、前記入力部材に入力されたトルクが前記出力部材に伝達され、
前記出力部材にトルクが逆入力される際、前記揺動部材が反対方向に揺動して、前記揺動部材が前記被押圧部材に接触し、前記出力部材に逆入力されたトルクの少なくとも一部が遮断され、
前記揺動部材が前記入力部材と前記出力部材との間に設けられる中間部材に揺動可能に支持される逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記中間部材には、前記入力部材のカム溝に係合し、前記揺動部材に接触可能な作動部材が移動可能に設けられることを特徴とする請求項4に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記揺動部材と前記作動部材との間にばねが設けられることを特徴とする請求項5に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
入力部材と、
入力部材と共通の中心線を持つ出力部材と、
被押圧部材と、
前記中心線と直角な中心線を中心に揺動可能な揺動部材と、を備え、
前記入力部材にトルクが入力される際、前記揺動部材が一方向に揺動して、前記入力部材に入力されたトルクが前記出力部材に伝達され、
前記出力部材にトルクが逆入力される際、前記揺動部材が反対方向に揺動して、前記揺動部材が前記被押圧部材に接触し、前記出力部材に逆入力されたトルクの少なくとも一部が遮断され、
前記入力部材と前記出力部材との間に設けられる出力側中間部材には、前記出力部材を把持可能であり、前記揺動部材に接触可能な把持部材が移動可能に設けられる逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材にトルクが入力される際、入力部材に入力されたトルクを出力部材に伝達し、出力部材にトルクが逆入力される際、出力部材に逆入力されたトルクの少なくとも一部を遮断する逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、例えばモータに連結され、モータのトルクを可動部に伝達するのに用いられる。もし、モータに一般的な継手を連結し、モータのトルクを可動部に伝達するならば、可動部に逆入力されたトルクによって、モータが逆回転してしまう。モータの逆回転を防止し、逆入力トルクに耐えるためには、モータに電流を流し続けなければならない。逆入力遮断クラッチは、この問題を解決し、逆入力されたトルクを遮断することを目的とする。
【0003】
従来の逆入力遮断クラッチとして、特許文献1には、入力部材と、出力部材と、被押圧部材と、一対の係合体と、を備えるものが開示されている。入力部材と出力部材とは、共通の中心線の回りを回転可能である。一対の係合体は、入力部材と出力部材に係合する。入力部材にトルクが入力される際、入力部材に係合する一対の係合体が互いに接近するように移動して、出力部材を把持する。これにより、入力部材に入力されたトルクが出力部材に伝達される。一方、出力部材にトルクが逆入力される際、出力部材に係合する一対の係合体が互いから離れるように移動して、被押圧部材に接触する。これにより、出力部材に逆入力されたトルクが遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/026794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載の逆入力クラッチは、一対の係合体の半径方向の接近・離間を利用し、入力部材に入力されたトルクを出力部材に伝達(すなわち入力伝達)し、出力部材に逆入力されたトルクを遮断(すなわち逆入力遮断)する。
【0006】
本発明は、従来の逆入力遮断クラッチとは作動原理が異なる新たな逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、入力部材と、入力部材と共通の中心線を持つ出力部材と、被押圧部材と、前記中心線と直角な中心線を中心に揺動可能な揺動部材と、を備え、前記入力部材にトルクが入力される際、前記揺動部材が一方向に揺動して、前記入力部材に入力されたトルクが前記揺動部材を介して前記出力部材に伝達され、前記出力部材にトルクが逆入力される際、前記揺動部材が反対方向に揺動して、前記揺動部材が前記被押圧部材に接触し、前記出力部材に逆入力されたトルクの少なくとも一部が遮断される逆入力遮断クラッチである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揺動部材の揺動を利用して、入力伝達と逆入力遮断を切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の逆入力遮断クラッチの外観斜視図(一部断面図を含む)である(図1(a)は入力部材側から見た斜視図、図1(b)は出力部材側から見た斜視図)。
図2】本実施形態の逆入力遮断クラッチの分解斜視図である。
図3】無負荷時の逆入力遮断クラッチの動作を示す図である(図3(a)は入力部材側から見た逆入力遮断クラッチの一部を示す図、図3(b)は中心線に沿った逆入力遮断クラッチの断面図、図3(c)は出力部材側から見た逆入力遮断クラッチの一部を示す図)。
図4】駆動入力時の逆入力遮断クラッチの動作を示す図である(図4(a)~図4(c)は図3(a)~(c)と同様である)。
図5】逆入力時の逆入力遮断クラッチの動作を示す図である(図5(a)~図5(c)は図3(a)~(c)と同様である)。
図6】逆入力遮断クラッチの主要部の模式図である(図6(a)は斜視図、図6(b)は正面図)。
図7】出力部材の突起と把持部材の詳細図である(無負荷時又は駆動入力時)。
図8】出力部材の突起と把持部材の詳細図である(逆入力時)。
図9】本実施形態の逆入力遮断クラッチを組み込んだサスペンションの模式図である。
図10】本実施形態の逆入力遮断クラッチを組み込んだ一軸アクチュエータの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の逆入力遮断クラッチを詳細に説明する。ただし、本発明の逆入力遮断クラッチは、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(本実施形態の逆入力遮断クラッチ)
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の逆入力遮断クラッチ1の外観斜視図(一部断面図を含む)である。図1(a)は入力部材2側から見た斜視図であり、図1(b)は出力部材3側から見た斜視図である。
【0012】
4はハウジング、2は入力部材、3は出力部材、5は被押圧部材、6は揺動部材である。ハウジング4には、軸受8を介して入力部材2が回転可能に支持される。また、ハウジング4には、出力部材3が軸受9を介して回転可能に支持される。入力部材2と出力部材3とは、共通の中心線Cを持ち、軸方向に並べられる。
【0013】
入力部材2にトルクが入力される際、揺動部材6が一方向に揺動して、入力部材2に入力されるトルク(以下、入力トルクという)が出力部材3に伝達される。本実施形態では、入力部材2が時計方向に回転しても反時計方向に回転しても、入力部材2の入力トルクが出力部材3に伝達される。すなわち、入力部材2の双方向の入力トルクが出力部材3に伝達される。
【0014】
一方、出力部材3にトルクが逆入力される際、揺動部材6が他方向に揺動して、被押圧部材5に接触する。このため、出力部材3に逆入力されたトルク(以下、逆入力トルクという)が遮断される。本実施形態では、出力部材3が時計方向に回転しても反時計方向に回転しても、出力部材3の逆入力トルクが遮断される、すなわち、出力部材3の双方向の逆入力トルクが遮断され、出力部材3がロックする。
【0015】
なお、本実施形態では、出力部材3の逆入力トルクの全部を遮断しているが、出力部材3の逆入力トルクの一部を遮断し、残部が入力部材2に伝わるようにしてもよい。
【0016】
図2は、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1の分解斜視図である。以下に、逆入力遮断クラッチ1の各部品の構成を詳細に説明する。
【0017】
ハウジング4は、略有底円筒状のハウジング本体4aと、ハウジング本体4aの開口部を塞ぐ蓋体4bと、を備える。ハウジング本体4aには、軸受8を介して入力部材2が回転可能に支持される。蓋体4bには、軸受9を介して出力部材3が回転可能に支持される。ハウジング本体4aと蓋体4bとは、ボルト等の締結部材10によって互いに締結される。
【0018】
ハウジング4の内面には、リング状の被押圧部材5が固定される。被押圧部材5の内面が被押圧面5aである。被押圧面5aには、揺動部材6の他端部6bが接触可能である。被押圧部材5は、例えばピン11によってハウジング4に回り止めされる。
【0019】
入力部材2は、中空の略筒状に形成される。入力部材2の外面には、軸方向に延びるカム溝2aが形成される。カム溝2aの断面は、例えばV字状である。カム溝2aは、入力部材2の円周方向に等配される。
【0020】
入力部材2と出力部材3との間には、中間部材12と出力側中間部材13が配置される。中間部材12の部品中心は、入力部材2の中心線Cと一致する。中間部材12と入力部材2との間には、スライドワッシャ16が介在する。入力部材2は、中間部材12に対して微小角度だけ相対的に回転可能である。
【0021】
中間部材12は、端部に略三角状のフランジ12aを有する。中間部材12には、貫通孔12bが形成される。入力部材2は、フランジ12aに突き当たるまで中間部材12の貫通孔12bに挿入される。フランジ12aの各頂部には、中心線Cと直角な方向を向く軸18が固定される。この軸18に揺動部材6が揺動可能に支持される。揺動部材6は、軸18を中心にして、すなわち中心線Cと直角な中心線を中心にして揺動可能である。
【0022】
揺動部材6は、中心線C方向から見て、入力部材2と出力部材3の半径方向の外側に配置される。揺動部材6は、入力部材2と出力部材3の円周方向に等配される。揺動部材6は、棒状であり、中心線Cと平行な方向に延びる。揺動部材6は、入力部材2と出力部材3に跨るように配置される。揺動部材6の外側は、被押圧部材5の被押圧面5aに合わせた曲面に形成される。揺動部材6の長さ方向の一端部6aは、作動部材としてのロッド7に接触可能である。揺動部材6の長さ方向の他端部6bは、被押圧部材5の被押圧面5aと把持部材19に接触可能である。
【0023】
中間部材12には、ロッド7が半径方向に移動可能に設けられる。中間部材12には、半径方向に延びる穴が空けられていて、穴にロッド7が移動可能に収容される。ロッド7の長さ方向の一端部は、入力部材2のカム溝2aに係合する。ロッド7の長さ方向の他端部は、揺動部材6に接触可能である。揺動部材6とロッド7との間には、ロッド7をカム溝2aに付勢するばね20が設けられる。ロッド7とばね20は、円周方向に等配される。
【0024】
出力側中間部材13は、略三角形の板状である。出力側中間部材13には、貫通孔13aが形成される。出力側中間部材13の各頂部には、切欠き13bが形成される。切欠き13bは、略5角形状である。切欠き13b内の半径方向外側には、把持部材19が移動可能に収容される。切欠き13bと把持部材19は、円周方向に等配される。出力側中間部材13と中間部材12との間には、スライドワッシャ17が介在する。
【0025】
把持部材19は、略台形状である。把持部材19の側面19aは、半径方向外側に向かって幅が狭くなるテーパに形成される。切欠き13bの内面の、把持部材19との当接面13b1は、把持部材19の側面に合わせたテーパに形成される。把持部材19の頂部には、断面V字状の溝19bが形成される。把持部材19は、溝19b部分で揺動部材6に接触する。切欠き13b内の半径方向内側には、出力部材3の突起3aが挿入される。すなわち、切欠き13b内において、半径方向外側に把持部材19が挿入され、半径方向内側に突起3aが挿入される。
【0026】
出力部材3は、略筒状で、その端部に略三角状のフランジ3bを有する。フランジ3bには、突起3aが一体に形成される。突起3aには、把持部材19に接触する平坦面3a1が形成される。突起3aは、円周方向に等配される。出力部材3と出力側中間部材13との間には、スライドワッシャ22が介在する。
【0027】
次に、図3ないし図5を参照して、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1の作用を説明する。これらの図において、わかり易くするために、逆入力遮断クラッチ1の主要部を示す。また、これらの図において、(a)は入力部材2側から見た逆入力遮断クラッチ1の一部を示し、(b)は中心線に沿った逆入力遮断クラッチ1の断面図を示し、(c)は出力部材3側から見た逆入力遮断クラッチ1の一部を示す。
【0028】
図3は無負荷時、すなわち入力部材2にトルクが入力されず、出力部材3にもトルクが逆入力されない時の逆入力遮断クラッチ1の動作を示す。このとき、図3(a)(b)に示すように、ロッド7は、ばね20によって入力部材2のカム溝2aに付勢される。揺動部材6の一端部6aは、ばね20によって半径方向の外側に付勢される。ロッド7と揺動部材6との間には僅かな隙間δ1が空く。そして、図3(c)に示すように、揺動部材6の他端部6bは、ばね20によって把持部材19に接触する。揺動部材6の他端部6bと被押圧部材5の被押圧面5aとの間には、微小なすきまδ2が空く。把持部材19は、揺動部材6の他端部6bに押されて出力部材3の突起3aに接触する。無負荷時には、入力部材2と出力部材3が共に回転可能な状態にある。
【0029】
図4は駆動入力時、正確に言えば、入力部材2の入力トルクが出力部材3の逆入力トルクを上回る時の逆入力遮断クラッチ1の動作を示す。このとき、図4(a)に示すように、中間部材12に対して入力部材2が微小量相対回転するので、入力部材2のカム溝2aによってロッド7が半径方向外側に移動する。そして、図4(b)に示すように、ロッド7が揺動部材6の一端部6aに接触して、揺動部材6の一端部6aを持ち上げる。このため、揺動部材6が一方向(反時計方向)に揺動する。図4(c)に示すように、揺動部材6の揺動により、揺動部材6の他端部6bが把持部材19を押し下げ、把持部材19が出力部材3の突起3aに強い力で押し付けられる。出力部材3は、3つの把持部材19で3方向から強い力で把持されるようになる。ロッド7が半径方向外側に移動しても、ロッド7は入力部材2のカム溝2aに係合したままである。入力部材2の入力トルクは、ロッド7、中間部材12、揺動部材6を介して出力部材3に伝達される。
【0030】
駆動入力時には、図6(a)(b)に示すように、入力部材2、ロッド7、揺動部材6、中間部材12、出力側中間部材13、把持部材19、出力部材3が一体的に、被押圧部材5に対して回転する。なお、図6(a)(b)の各部品の形状は図3の各部品の形状と一部相違するが、基本構成は同一である。
【0031】
図5は逆入力時、正確にいえば出力部材3の逆入力トルクが入力部材2の入力トルクを上回る時の逆入力遮断クラッチ1の動作を示す。このとき、図5(c)に示すように、出力部材3が出力側中間部材13に対して微小量相対回転し、出力部材3の突起3aによって、把持部材19が半径方向外側に押し出される。
【0032】
図7図8は、出力部材3の突起3aと把持部材19の詳細図を示す。図7は出力部材3が相対回転前(無負荷時又は駆動入力時)を示し、図8は出力部材3が相対回転後(逆入力時)を示す。図7図8に示すように、出力部材3の時計方向への相対回転によって、把持部材19が半径方向外側に押し出され、出力部材3の平坦面3a1が傾くのがわかる。その際、出力側中間部材13の切欠き13bのテーパ状の当接面13b1がガイドとなり、把持部材19の円周方向への移動を制限するので、把持部材19は半径方向外側のみへ押し出される。
【0033】
図5(c)に示すように、半径方向外側に移動した把持部材19は、揺動部材6の他端部6bを押し上げる。このため、図5(b)に示すように、揺動部材6が他方向(時計方向)に揺動し、揺動部材6の他端部6bが把持部材19のテーパ状の側面19aのくさび効果によって被押圧部材5の被押圧面5aに強い力で押し付けられる。この結果、揺動部材6の他端部6bと被押圧部材5との間に大きな摩擦力が発生し、出力部材3がロックする。上述のように、無負荷時に揺動部材6の一端部6aとロッド7との間には隙間δ1が存在する(図3(b)参照)ので、揺動部材6が時計方向に揺動しても、図5(b)に示すように、揺動部材6の一端部6aとロッド7との間に微小な隙間δ3が残り、図5(a)に示すように、逆入力トルクは入力部材2には伝達されない。
【0034】
なお、逆入力遮断クラッチ1の用途によっては、無負荷時、駆動入力時、及び逆入力時の3つが存在する場合もあるし、駆動入力時と逆入力時の2つしか存在しない場合もある。
【0035】
以下に本実施形態の逆入力遮断クラッチ1の効果を説明する。
【0036】
揺動部材6の揺動を利用して、入力伝達と逆入力遮断を切り換えることができるので、出力部材3の逆入力トルクに対抗する動力の供給が不要であり、省電力化を実現できる。出力部材3に逆入力トルクが負荷されている状況で、入力部材2の入力トルク遮断が起きた際にも、出力部材3の逆入力トルクによる逆駆動を遮断できるので、危険を回避できる。また、逆入力トルクの遮断にあたって、出力部材3の逆入力のエネルギを利用するので、入力部材2の入力トルクを出力部材3にリニアに伝達することができる。
【0037】
入力部材2と出力部材3が中心線方向の全長に渡って中空に形成されるので、入力部材2と出力部材3の内部スペースを有効利用することができる。例えば逆入力遮断クラッチ1が組み込まれるサスペンション、アクチュエータ等の装置の全長を短くすることができる。
【0038】
揺動部材6が入力部材2と出力部材3に跨るように配置されるので、入力部材2の入力トルクを出力部材3に容易に伝達することができる。
【0039】
揺動部材6が中間部材12に揺動可能に支持されるので、揺動部材6を容易に揺動させることができる。
【0040】
入力部材2のカム溝2aに係合し、揺動部材6に接触可能なロッド7を設けるので、駆動入力時にロッド7によって揺動部材6を容易に一方向に揺動させることができる。
【0041】
揺動部材6と作動部材(ロッド7)との間にばね20を設けるので、揺動部材6とロッド7の動きを安定させることができる。
【0042】
出力側中間部材13に把持部材19を移動可能に設けるので、逆入力時に把持部材19によって揺動部材6を容易に他方向に揺動させることができる。
(本実施形態の逆入力遮断クラッチを組み込んだサスペンション)
【0043】
図9は、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1を組み込んだサスペンションの模式図である。サスペンションは、車体側部と車輪側部との間に設けられ、道路の面の凹凸を吸収し、車体の安定性、乗り心地をよくする装置である。31はケース、32はモータ、1は逆入力遮断クラッチ、33はナット、34はねじ軸、35はショックアブソーバ、36は懸架ばねである。
【0044】
モータ軸は、逆入力遮断クラッチ1を介してナット33に連結される。ナット33には、ねじ軸34が螺合する。ナット33を回転させると、ねじ軸34が軸方向に移動する。ねじ軸34には、ショックアブソーバ35のケース35aとばね受け36aが連結されるので、これらが軸方向に移動する。このため、モータ32を駆動させることによって、車高を調整したり、減衰力を調整したりすることができる。なお、ナット33を回転させる替わりにねじ軸34を回転させてもよい。
【0045】
車体の重量及び/又は路面からの入力によって、逆入力遮断クラッチ1の出力部材3に逆入力トルクが負荷される時、逆入力遮断クラッチ1が出力部材3の逆入力トルクを遮断する。このため、モータに逆入力トルクに耐えるための電流を流す必要がない。
(本実施形態の逆入力遮断クラッチを組み込んだアクチュエータ)
【0046】
図10は、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1を組み込んだ一軸アクチュエータの外観図である。41は直線的に延びるベース、42はねじ軸、43はねじ軸42に螺合するナットを有するスライダ、44はスライダに連結されるテーブル、1は逆入力遮断クラッチ、45はモータである。
【0047】
モータ軸は、逆入力遮断クラッチ1を介してねじ軸42に連結される。ねじ軸42には、スライダ43に設けたナットが螺合する。ねじ軸42を回転させると、スライダ43が軸方向に移動し、スライダ43に連結されるテーブル44が軸方向に移動する。
【0048】
テーブル44からの入力によって、逆入力遮断クラッチ1の出力部材3に逆入力トルクが負荷される時、逆入力遮断クラッチ1が出力部材3の逆入力トルクを遮断する。このため、モータ45に逆入力トルクに耐えるための電流を流す必要がない。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に変更可能である。
【0050】
上記実施形態では、ロッド、揺動部材、把持部材が別部品であるが、これらを一体化させて一部品にしてもよい。
【0051】
本発明の逆入力遮断クラッチの用途は、サスペンション、アクチュエータに限られない。例えば、逆入力遮断クラッチを電動パワーステアリング装置、電動ドア装置、電動パワーウィンドウ装置、内燃機関に組み込まれる電動バルブタイミング装置、内燃機関に組み込まれ、内燃機関の圧縮比を変化させる可変圧縮比装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…逆入力遮断クラッチ、2…入力部材、2a…カム溝、3…出力部材、5…被押圧部材、6…揺動部材、6a…一端部、6b…他端部、7…ロッド(作動部材)、12…中間部材、13…出力側中間部材、19…把持部材、20…ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10