(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】自発光表示パネルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/842 20230101AFI20240404BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240404BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240404BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240404BHJP
H10K 50/125 20230101ALI20240404BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240404BHJP
H10K 50/88 20230101ALI20240404BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
H10K50/842 141
G02B5/20 101
G09F9/00 338
G09F9/30 309
G09F9/30 338
G09F9/30 349A
G09F9/30 365
H10K50/125
H10K50/842 426
H10K50/844
H10K50/88
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2019220600
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖川 昌史
(72)【発明者】
【氏名】原田 健史
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121575(JP,A)
【文献】特開2018-200787(JP,A)
【文献】特開2018-181578(JP,A)
【文献】特開2018-063910(JP,A)
【文献】特開2009-259509(JP,A)
【文献】特開2008-091237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0173048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/842
G02B 5/20
G09F 9/00
G09F 9/30
H10K 50/125
H10K 50/844
H10K 50/88
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において、画像表示領域とその周辺の周辺領域とを有する自発光表示パネルであって、
第1基板と、
前記第1基板の上方に配された絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の上方の前記画像表示領域に配された複数の自発光素子と、
前記複数の自発光素子の上方に配された封止部と、
前記封止部上に配された第2基板と、
を備え、
前記絶縁樹脂層は、前記周辺領域において前記画像表示領域を囲繞するように形成された周溝によって内側絶縁樹脂層部と外側絶縁樹脂層部に分けられており、
前記封止部は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側絶縁樹脂層部に至る範囲において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層されてなると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層されてなり、
前記第2基板は、
前記第2基板の周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内に配された接合層を介して、前記封止部上に貼着されており、
前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面
において、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部が、前記周溝の内側縁部より外側であり、前記周溝の幅内に位置していること
を特徴とする自発光表示パネル。
【請求項2】
平面視において、画像表示領域とその周辺の周辺領域とを有する自発光表示パネルであって、
第1基板と、
前記第1基板の上方に配された絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の上方の前記画像表示領域に配された複数の自発光素子と、
前記複数の自発光素子の上方に配された封止部と、
前記封止部上に配された第2基板と、
を備え、
前記絶縁樹脂層は、前記周辺領域において前記画像表示領域を囲繞するように形成された周溝によって内側絶縁樹脂層部と外側絶縁樹脂層部に分けられており、
前記封止部は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側絶縁樹脂層部に至る範囲において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層されてなると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層されてなり、
前記第2基板は、
前記第2基板の周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内に配された接合層を介して、前記封止部上に貼着されており、
前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面
において、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部が、前記周溝の内側縁部より外側に位置しており、
前記周辺シール層は、紫外線硬化性樹脂材料に球状のギャップ形成部材が分散されてなる
こと
を特徴とする自発光表示パネル。
【請求項3】
前記周辺シール層の内側端部の位置における、前記第2封止層の厚さが前記外側絶縁樹脂層部の平坦部の厚さより薄い
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自発光表示パネル。
【請求項4】
前記封止部の前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層された部分が、前記外側絶縁樹脂層部の外側端部を覆うように延在している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自発光表示パネル。
【請求項5】
平面視において、前記周辺シール層の外側端部の位置は、前記外側絶縁樹脂層部の外側端部よりも外方の位置にある
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自発光表示パネル。
【請求項6】
前記第2基板は、少なくとも、赤色、緑色、青色の各色のフィルターを有するカラーフィルタ基板である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自発光表示パネル。
【請求項7】
前記第2封止層は、塗布膜からなる
ことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の自発光表示パネル。
【請求項8】
平面視において画像表示領域とその周辺の周辺領域を有する自発光表示パネルの製造方法であって、
第1基板を準備する第1工程と、
前記第1基板の上方に絶縁樹脂層を形成する第2工程と、
前記絶縁樹脂層の上方であって前記画像表示領域内に複数の自発光素子を形成する第3工程と、
前記複数の自発光素子の上方を覆う封止部を形成する第4工程と、
前記封止部上に第2基板を貼着する第5工程と、
を含み、
前記第2工程は、前記絶縁樹脂層の前記周辺領域において周溝を形成して、前記絶縁樹脂層を
内側絶縁樹脂層部と
外側絶縁樹脂層部に分かつ周溝形成工程を含み、
前記第4工程は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記
外側絶縁樹脂層部に至る範囲内において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層すると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層を直接積層し、
前記第5工程は、前記第2基板を、
前記第2基板の周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内にある接合層を介して、前記封止部上に貼着し、
前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面
において、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部は、前記周溝の内側縁部より外側であり、前記周溝の幅内に位置していること
を特徴とする自発光表示パネルの製造方法。
【請求項9】
平面視において画像表示領域とその周辺の周辺領域を有する自発光表示パネルの製造方法であって、
第1基板を準備する第1工程と、
前記第1基板の上方に絶縁樹脂層を形成する第2工程と、
前記絶縁樹脂層の上方であって前記画像表示領域内に複数の自発光素子を形成する第3工程と、
前記複数の自発光素子の上方を覆う封止部を形成する第4工程と、
前記封止部上に第2基板を貼着する第5工程と、
を含み、
前記第2工程は、前記絶縁樹脂層の前記周辺領域において周溝を形成して、前記絶縁樹脂層を
内側絶縁樹脂層部と
外側絶縁樹脂層部に分かつ周溝形成工程を含み、
前記第4工程は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記
外側絶縁樹脂層部に至る範囲内において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層すると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層を直接積層し、
前記第5工程は、前記第2基板を、
前記第2基板の周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内にある接合層を介して、前記封止部上に貼着し、
前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面
において、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部は、前記周溝の内側縁部より外側に位置しており、
前記周辺シール層は、紫外線硬化性樹脂材料に球状のギャップ形成部材が分散されてなること
を特徴とする自発光表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの自発光素子を複数有する自発光表示パネルおよびその製造方法に関し、特に、外部環境に存在する水分の浸入を抑制するための封止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子を複数含む有機EL表示パネルが知られている。有機EL素子は、各種材料の薄膜を積層した多層構造を有し、平坦化絶縁層に覆われたTFT(薄膜トランジスタ:Thin Film Transistor)基板上に、少なくとも、画素電極と、共通電極と、これらに挟まれた有機発光層とを備える。画素電極と有機発光層の間、または、共通電極と有機発光層の間には、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などが設けられる。
【0003】
これらの層は、水分と反応すると発光特性が劣化する材料を含むことがある。そこで、有機EL表示パネルの表示品質の経時的な劣化を抑制するために、外部環境に存在する水分の浸入を抑制するため共通電極の上層に封止層が形成されている。
【0004】
このような封止層として、窒化シリコンなどの無機材料をCVD法などのドライプロセスにより形成していた。窒化シリコンなどの無機材料は、水分やガスを透過させない点で優れているが、その一方で外力の付加などによりクラックが生じやすいという短所がある。
【0005】
そこで、封止層を3層構造にして、第1層と第3層を無機材料で形成すると共に、当該第1層と第3層の間に、樹脂材料からなる第2層を介在させて緩衝作用を持たせることによりクラックの発生を抑制しつつ封止性を向上させることが考案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
通常、有機EL表示パネルにあっては、封止層の上にさらにカラーフィルタ基板(CF基板)を配して、各発光層からの発光色の色度を調整する場合が多い。
図12は、この場合に想定される有機EL表示パネルの周辺部の構造を示す模式断面図である。
【0007】
同図において、基板601の上に絶縁樹脂層602を介して、複数の有機EL素子が行列状に配された層(以下、「有機EL層」という。)603が形成される。
【0008】
この有機EL層603を覆うようにして封止層610が形成されている。封止層610は、3層構造をしており、窒化シリコンからなる第1層604と第3層606の間に、樹脂材料からなる第2層605が介在してなる。
【0009】
第1層604は、窒化シリコンをCVD法などのドライプロセスで形成され、その上に樹脂材料を含むインクを塗布法により塗布した後、硬化させ、第2層605の上面にさらに窒化シリコンの膜をCVD法で成膜して第3層606を形成する。
【0010】
通常、第2層は、加工性やプロセスコストの観点から、樹脂材料を含むインクをインクジェット法により複数のノズルから目的の範囲にインク滴を滴下して塗布するようになっている。
【0011】
この場合、ノズル詰まりが生じないように、インクの粘度が低く押さえられており、そのためインクは目標の塗布領域に濡れ広がり、その外周縁部ではインクの表面張力により断面の表面の輪郭が、
図12に示すように緩やかに曲線を描くようにして徐々に膜厚が薄くなっていく形状となる(以下、この部分を「垂れ部」という。)。
【0012】
このように外周部に垂れ部605aを有する第2層605の上に第3層606、接合層607、CF基板608を配していくと、垂れ部605aの曲面に沿って、CF基板608にも垂れ部608aが形成される。
【0013】
このように最終的なCF基板608にその外周部に垂れ部608aが生じると、垂れ部608aの表面が曲面であるため、有機EL表示パネルの表示画面の中央部と外周縁では、視野角が異なってしまい、視野角むらが発生する。そのため、特に表示画面を斜めから見たときに、中央部と外周縁部とで色の見え方が異なり、これがノイズとして認識され画像品質を劣化させる要因となる。
【0014】
そこで、例えば、特許文献2では、CF基板608の外周縁の内側部分にスペーサ部材を配して、CF基板608の外周部に上記垂れ部608aが生じないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2000-223264号公報
【文献】特開2009-176756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、特許文献2のような構成によれば、外周縁部における視野角むらの発生を抑制することに貢献できるが、その一方で封止層の封止性が劣化するおそれがあることが分かった。
【0017】
図13は、この原因を説明するための有機EL表示パネルの外周部における模式的な断面図である。
【0018】
同図に示すように、垂れ部605a上に周辺シール層609を配し、この周辺シール層609を介して、CF基板608を貼着しているため、CF基板608には
図12で見られたような垂れ部608aが発生せず、CF基板608の周縁部が平坦になる。これにより、画像表示領域周縁部における視野角むらの発生が抑えられる。
【0019】
しかしながら、周辺シール層609は、流動性を有する樹脂材料内に固形状のギャップ形成部材6092を混入させた周辺シール層用樹脂材料をCF基板608の外周縁の内側に塗布して、CF基板608を基板601上の封止層610に圧着させてなる。
【0020】
CF基板608を、真空中で圧着させる際に、比較的強い力がかかるので、ギャップ形成部材6092の底が、第3層606に当たって突き破って亀裂cが生じてしまうおそれがある。一般に樹脂材料は、水分や空気に対してバリア性が強くなく、当該亀裂cを介して外部の水分や空気の内部への浸入を十分阻止できないため、水分や空気(とりわけ酸素)が有機EL素子の構成要素と反応して劣化させる結果になる。
【0021】
なお、
図13においては、ギャップ形成部材6092は、縦長の楕円状に描かれているが、これは、有機EL表示パネルの積層構造が理解しやすいように厚み方向(Z方向)の倍率を横方向(X方向)の倍率よりもかなり大きくして表示しているためであって、実際はほぼ球状のものが用いられる。
【0022】
上記と同様な課題は、自発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示パネル以外にも、無機EL素子を用いた無機EL表示パネルや、量子ドット発光素子(QLED:quantum dot-LED)を用いた量子ドット表示パネルなど、およそ外部の水分や酸素と反応して劣化するおそれがある自発光素子を備えた自発光表示パネルにおいて共通に生じる課題である。
【0023】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内部の自発光素子が劣化しないように十分な封止性を確保しつつ、画像表示領域の周縁部における視野角むらの発生が抑制された自発光表示パネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る自発光表示パネルは、平面視において、画像表示領域とその周辺の周辺領域とを有する自発光表示パネルであって、第1基板と、前記第1基板の上方に配された絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の上方の前記画像表示領域に配された複数の自発光素子と、前記複数の自発光素子の上方に配された封止部と、前記封止部上に配された第2基板と、を備え、前記絶縁樹脂層は、前記周辺領域において前記画像表示領域を囲繞するように形成された周溝によって内側絶縁樹脂層部と外側絶縁樹脂層部に分かたれており、前記封止部は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側絶縁樹脂層部に至る範囲において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層されてなると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層されてなり、前記第2基板は、その周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内に配された接合層を介して、前記封止部上に貼着されており、前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面をおいて、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部が、前記周溝の内側縁部より外側に位置していることを特徴とする。
【0025】
また、本開示の別の態様に係る自発光表示パネルの製造方法は、平面視において画像表示領域とその周辺の周辺領域を有する自発光表示パネルの製造方法であって、第1基板を準備する第1工程と、前記第1基板の上方に絶縁樹脂層を形成する第2工程と、前記絶縁樹脂層の上方であって前記画像表示領域内に複数の自発光素子を形成する第3工程と、前記複数の自発光素子の上方を覆う封止部を形成する第4工程と、前記封止部上に第2基板を貼着する第5工程と、を含み、前記第2工程は、前記絶縁樹脂層の前記周辺領域において周溝を形成して、前記絶縁樹脂層を内側樹脂層と外側樹脂層に分かつ周溝形成工程を含み、前記第4工程は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側樹脂層に至る範囲内において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層すると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層を直接積層し、前記第5工程は、前記第2基板を、その周縁部内側に設けられた周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内にある接合層を介して、前記封止部上に貼着し、前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面をおいて、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部は、前記周溝の内側縁部より外側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本開示の態様に係る自発光表示パネルおよびその製造方法によれば、封止性を確保して自発光素子の劣化を防止しつつ、画像表示領域周縁部における視野角むらの発生による画像品質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示の一態様である第1の実施の形態に係る有機EL表示パネルの平面レイアウト図である。
【
図2】
図1の領域A内のB-B線における有機EL表示パネルの積層構造を示す概略断面図である。
【
図3】上記実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】(a)~(c)は、上記有機EL表示パネルの製造工程の一部を説明するための概略断面図である。
【
図5】(a)~(g)は、上記有機EL表示パネルのCF基板の製造工程を説明するための概略断面図である。
【
図6】(a)~(d)は、有機EL表示パネルの中間製品にCF基板を貼着させるための行程を説明するための図である。
【
図7】(a)、(b)は、
図6に続く有機EL表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係る有機EL表示パネルを組み入れた有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【
図9】本実施の形態に係る有機EL表示パネルにおける封止構造の第2の実施の形態を示す概略断面図である。
【
図10】本実施の形態に係る有機EL表示パネルにおける封止構造の第1の変形例を示す概略断面図である。
【
図11】本実施の形態に係る有機EL表示パネルにおける封止構造の第2の変形例を示す概略断面図である。
【
図12】本発明の課題を説明するための前提となる有機EL表示パネルの周縁部における積層構造を示す概略断面図である。
【
図13】従来の有機EL表示パネルの周縁部における積層構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、平面視において、画像表示領域とその周辺の周辺領域とを有する自発光表示パネルであって、第1基板と、前記第1基板の上方に配された絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の上方の前記画像表示領域に配された複数の自発光素子と、前記複数の自発光素子の上方に配された封止部と、前記封止部上に配された第2基板と、を備え、前記絶縁樹脂層は、前記周辺領域において前記画像表示領域を囲繞するように形成された周溝によって内側絶縁樹脂層部と外側絶縁樹脂層部に分かたれており、前記封止部は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側絶縁樹脂層部に至る範囲において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層されてなると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層されてなり、前記第2基板は、その周縁部内側に配された周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内に配された接合層を介して、前記封止部上に貼着されており、前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面をおいて、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部が、前記周溝の内側縁部より外側に位置している。
【0029】
係る態様により、封止性を確保して自発光素子の劣化を防止しつつ、画像表示領域周縁部における視野角むらの発生による画像品質の劣化を抑制することができる。
【0030】
また、本開示の別の態様では、前記周辺シール層の内側端部の位置における、前記第2封止層の厚さが前記外側絶縁樹脂層部の平坦部の厚さより薄い。
【0031】
これにより、少なくとも従来の構成よりは、前記周辺シール層の内側端部により、前記封止部の第3封止層に加わる押圧力が和らぐため、第3封止層が破損して封止性が劣化するおそれが低減する。なお、ここで、「前記周辺シール層の内側端部の位置における、前記第2封止層の厚さが前記外側絶縁樹脂層部の平坦部の厚さより薄い」とは、周辺シール層の内側端部の位置における第2封止層の厚さが「0」の場合、すなわち、前記周辺シール層の内側縁部の位置まで第2封止層が延びていない場合も含む。
【0032】
また、本開示の別の態様は、前記封止部の前記第1封止層と前記第3封止層が直接積層された部分が、前記外側絶縁樹脂層部の外周側端面を覆うように延在している。
【0033】
係る態様により、外側絶縁樹脂層部から水分などが浸入するのを防ぐことができ、より封止性を高めることができる。
【0034】
また、本開示の別の態様は、平面視において、前記周辺シール層の外側端部の位置は、前記外側絶縁樹脂層部の外周縁よりも外方の位置にある。
【0035】
係る態様によっても、外側絶縁樹脂層部から水分などが浸入するのを防ぐことができ、より封止性を高めることができる。
【0036】
また、本開示の別の態様は、前記第2基板は、少なくとも、赤色、緑色、青色の各色のフィルターを有するカラーフィルタ基板である。
【0037】
係る態様により、第2基板は封止性の向上のみならず、各色の発光素子の発光色の純度を高める機能も有する。
【0038】
また、本開示の別の態様は、前記第2封止層は、塗布膜からなる。
【0039】
係る態様により第2封止層が塗布法により容易に形成される。
【0040】
また、本開示の別の態様は、前記周辺シール層は、紫外線硬化性樹脂材料に球状のギャップ形成部材が分散されてなる。
【0041】
係る態様により、周辺シール層による厚み規制が、ギャップ形成部材によって容易に行える。
【0042】
また、本開示の別の態様に係る自発光表示パネルの製造方法は、平面視において画像表示領域とその周辺の周辺領域を有する自発光表示パネルの製造方法であって、第1基板を準備する第1工程と、前記第1基板の上方に絶縁樹脂層を形成する第2工程と、前記絶縁樹脂層の上方であって前記画像表示領域内に複数の自発光素子を形成する第3工程と、前記複数の自発光素子の上方を覆う封止部を形成する第4工程と、前記封止部上に第2基板を貼着する第5工程と、を含み、前記第2工程は、前記絶縁樹脂層の前記周辺領域において周溝を形成して、前記絶縁樹脂層を内側樹脂層と外側樹脂層に分かつ周溝形成工程を含み、前記第4工程は、平面視において、前記画像表示領域を含み最大でも前記外側樹脂層に至る範囲内において、前記第1基板に近い側から、無機材料からなる第1封止層、樹脂材料からなる第2封止層、無機材料からなる第3封止層の順に積層すると共に、それよりも外側の範囲においては、前記第2封止層が存在せずに前記第1封止層と前記第3封止層を直接積層し、前記第5工程は、前記第2基板を、その周縁部内側に設けられた周辺シール層と前記周辺シール層に囲まれた範囲内にある接合層を介して、前記封止部上に貼着し、前記第1基板の主面に垂直でかつ前記周溝を横切る断面をおいて、前記外側絶縁樹脂層部の上に前記周辺シール層の少なくとも一部が存すると共に、前記周辺シール層の内側端部は、前記周溝の内側縁部より外側に位置している。
【0043】
係る態様により、封止性を確保して自発光素子の劣化を防止しつつ、画像表示領域周縁部における視野角むらの発生による画像品質の劣化を抑制することができる。
【0044】
なお、上記各開示の態様において「上」とは、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、自発光表示パネルの積層構造における積層順を基に、相対的な位置関係により規定されるものである。具体的には、自発光表示パネルにおいて、基板の主面に垂直な方向であって、基板から積層物側に向かう側を上方向とする。また、例えば「基板上」と表現した場合は、基板に直接接する領域のみを指すのではなく、積層物を介した基板の上方の領域も含めるものとする。また、例えば「基板の上方」と表現した場合、基板と間隔を空けた上方領域のみを指すのではなく、基板上の領域も含めるものとする。
【0045】
≪実施の形態≫
以下、本開示の一態様に係る自発光表示パネルについて、トップエミッション型の有機EL表示パネルを例にして、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
【0046】
<第1の実施の形態>
1.有機EL表示パネル100の構成
1.1 構成概要
図1は、第1の実施の形態に係る有機EL表示パネル100の平面レイアウト図である。
【0047】
同図に示すように有機EL表示パネル100は、平面視したとき、画像表示領域10と、画像表示領域10を囲繞する周辺領域20とを有する。
【0048】
画像表示領域10には、複数の画素がマトリクス状に配列されている。それぞれの画素は色の異なる複数のサブ画素を含み、本実施の形態では、画素が赤色サブ画素、緑色サブ画素、および青色サブ画素を含んでいる。1つのサブ画素が1つの有機EL素子から構成されている。
【0049】
また、周辺領域20には、外部のドライブ回路に電気的に接続するための複数の端子(不図示)が配設される。
【0050】
1.2 有機EL表示パネル100の積層構造
図2は、有機EL表示パネル100の外周縁部における積層構造を示す部分断面図であり、
図1の領域AにおけるB-B線での断面を図示している。
【0051】
同図に示すように、有機EL表示パネル100は、下部基板101(第1基板)、層間絶縁層(絶縁樹脂層)102、画素電極103、隔壁層104、発光層105、電子輸送層106、対向電極107、封止層108、上部基板であるカラーフィルタ基板111(第2基板)、並びに配線層112、パッシベーション膜113、を備える。このうち、主に画素電極103、隔壁層104、発光層105は、画素ごとに形成されている。
【0052】
(1)下部基板(第1基板)
下部基板101は、絶縁材料である基材101aと、TFT(Thin Film Transistor)層101bとを含む。TFT層101bには、TFTからなる公知の駆動回路が画素ごとに形成されてなる。
【0053】
基材101aには、通常、ガラスシートが用いられるが、フレキシブル性を優先する場合には絶縁性の樹脂材料からなるシートを用いるのが好ましい。この場合の樹脂材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0054】
(2)配線層
配線層112は、TFT層101bから引き出された複数の配線を含む。各配線は、互いに間隔を置いて形成され、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)などの金属や、合金(例えば、MoW、MoCr、NiCr)等の導電材料からなる。
【0055】
(3)パッシベーション膜
パッシベーション膜113は、TFT層101bと、配線層112とを覆う絶縁性の保護膜であり、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)等で形成される。周辺領域20において配線層112から引き出された接続端子(不図示)がパッシベーション膜113から露出し、後述の駆動回路に接続される。
【0056】
(4)層間絶縁層
層間絶縁層(絶縁樹脂層)102は、下部基板101の上方に形成されている。層間絶縁層102は、絶縁性の樹脂材料からなり、例えば、3μmの厚さであって、TFT層101b上に形成されるパッシベーション膜113の上面の段差を平坦化するものである。樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。
【0057】
なお、層間絶縁層102の周辺領域20には、当該層間絶縁層102の外周縁に沿うようにして溝(以下、「周溝」という。)1022が形成され(
図1参照)、これにより層間絶縁層102が内側絶縁層1023と外側絶縁層1021に完全に分離されており、周溝1022の底部はパッシベーション膜113が露出している。
【0058】
上述のとおり、層間絶縁層102は、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料からなり、水分を吸着しやすい性質を有する。しかしながら、周溝1022を設けることにより、仮に、周溝1022の外側の外側絶縁層1021に基板の外縁方向から水分が進入した場合でも、画像表示領域10への水分の浸入を抑制できる。
【0059】
また、封止層108の第2封止層1082を塗布法により形成する際、その材料である樹脂は塗布時点で流動性があるので、外部接続用の接続端子1121の位置まで塗り広がるおそれがあるが、このように周溝1022を設けることにより、この溝が「堀」の役目をして、その画像表示領域10側の縁で第2封止層1082形成時に樹脂材料が必要以上に濡れ広がるのを阻止することができる。
【0060】
また、万が一、樹脂材料が周溝1022内に流れ込んだとしても、外側絶縁層1021がいわば「ダム」の役目を果たすので、第2封止層1082の形成のため塗布した樹脂材料の濡れ広がりを、外側絶縁層1021の内周縁の部分で阻止することができる。
【0061】
(5)画素電極
画素電極103は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層102上に形成されている。画素電極103は、画素ごとに設けられ、コンタクトホールを介してTFT層101bと電気的に接続されている。
【0062】
本実施の形態においては、画素電極103は、陽極として機能する。
【0063】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0064】
画素電極103は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0065】
(6)隔壁層
隔壁層104は、画素電極103の上面の一部を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で形成されている。
【0066】
画素電極103上面において隔壁層104で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブ画素に対応している。
【0067】
隔壁層104は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁層104は、発光層105を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層105を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。
【0068】
(7)発光層
発光層105は、隔壁層104の開口部内に形成されており、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。
【0069】
発光層105の材料としては、公知の材料を利用することができる。具体的には、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0070】
(8)電子輸送層
電子輸送層106は、対向電極107からの電子を発光層105へ輸送する機能を有する。電子輸送層106は、例えば、電子輸送性が高い有機材料からなり、具体的には、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料からなる。電子輸送層106は、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属から選択されるドープ金属がドープされていてもよい。または、例えば、電子輸送層106は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される金属の単体またはフッ化物から形成されてもよい。
【0071】
(9)対向電極
対向電極107は、透光性の導電性材料からなり、電子輸送層106上に形成されている。対向電極107は、陰極として機能する。
【0072】
対向電極107の材料としては、例えば、ITOやIZOなどを用いることができる。あるいは、対向電極107の材料として、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属の薄膜を用いてもよい。
【0073】
(10)封止層
封止層108は、発光層105、電子輸送層106などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有する。
【0074】
封止層108は、それぞれ透光性を有する第1封止層1081、第2封止層1082、第3封止層1083の3層からなる。
【0075】
第1封止層1081は、窒化シリコン(SiN)の薄膜であって、対向電極107の上面を被覆する。
【0076】
第2封止層1082は、樹脂からなり第1封止層1081の上面をその周縁部を除いて被覆する。第2封止層1082を形成する樹脂材料として、例えば、透明なエポキシ系やアクリル系の樹脂が使用される。
【0077】
第3封止層1083も、第1封止層1081と同様な窒化シリコンの薄膜であって、第2封止層1082の上面を被覆している。
【0078】
第1封止層1081は、周辺領域20では、平面視において樹脂材料からなる外側絶縁層1021の外周端面を覆う位置まで延在し、外側絶縁層1021の表面全部を皮膜する。そのため、外側絶縁層1021を介して水分などが内部に侵入するのを防ぐことができる。
【0079】
第2封止層1082は、樹脂材料を第1封止層1081上にインクジェット法等の塗布法により形成される。第2封止層1082の厚さは、画像表示領域10内において、例えば、3μmの略均一な厚さとなるように形成される。また、第2封止層1082の外縁は、外側絶縁層1021の内周縁(平坦部の内周縁)より画像表示領域10寄りに位置しておればよく、
図2では、第2封止層1082の外縁が周溝1022の内周縁より画像表示領域10寄りに位置する実施の形態を示している。この実施の形態では、周辺シール層110の内周端部の位置P1における第2封止層1082の厚さは、「0」となる。
【0080】
周溝1022内の位置P1においては、ギャップ形成部材1101が、第3封止層1083に当接することなく、また、第3封止層1083の下方に第2封止層1082も介在していないので、封止層108の封止性が損なわれることはない。
【0081】
なお、第3封止層1083は、外側絶縁層1021の外方まで延在しており、第1と第3の封止層1081、1083の外縁部は、第2封止層1082を介せずに直接密着する。
【0082】
これにより、基板外方から層間絶縁層102および第2封止層1082へ水分が直接浸入するのを防ぐことができ、封止層108の封止性をより高めることができる。
【0083】
(11)カラーフィルタ(CF)基板(第2基板)
カラーフィルタ基板111は、シート基材1111の一方の主面にカラーフィルタ層1112が形成されてなり、当該カラーフィルタ層1112側を下に向けて、封止層108の上に接合層109および周辺シール層110を介して貼着される。
【0084】
シート基材1111は、例えば、カバーガラス、透明樹脂フィルムなどの光透過性材料が用いられる。また、シート基材1111により、有機EL表示パネル100の剛性向上、水分や空気などの侵入防止などを図ることができる。
【0085】
カラーフィルタ層1112には、各画素に対応する位置に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルタ1113R、1113G、1113Bが形成されており、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させる。各色の有機EL素子から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。
【0086】
(12)接合層および周辺シール層
接合層109は、透明な紫外線硬化性樹脂を硬化させてなり、カラーフィルタ基板111を封止層108の上面に貼り付ける際の接着剤として機能する。
【0087】
また、周辺シール層110は、紫外線硬化性樹脂内に球体状のギャップ形成部材1101を混入させてなり、カラーフィルタ基板111の周縁部に配され(
図1参照)、これによりカラーフィルタ基板111が、その全面において下部基板101と平行な状態で維持される(
図2参照)。
【0088】
この接合層109により、外部の水分や空気などが有機EL表示パネル100内部に侵入するのをさらに防止することができる。
【0089】
図2を見ても分かるように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル100では、周辺シール層110によりカラーフィルタ基板111の端部が水平に保たれるため、視野角むらが発生せず、画像表示部の周縁部において画像ノイズが発生しない。
【0090】
しかも、
図2の構成では、周辺シール層110の内側端部110aの位置P1が、周溝1022の幅内にあって、従来の
図13で示したように周辺シール層110のギャップ形成部材1101が、第3封止層1083に当接して強く押し下げることはないので、カラーフィルタ基板111を圧着させる際にギャップ形成部材1101が封止層108の第3封止層1083を破損することなく、優れた封止性が維持される。
【0091】
なお、
図2に記入されている寸法はあくまでも参考のための例示であり、また、積層構造をわかりやすくするため、各部の長さや幅も、必ずしも当該寸法の比の通りになっていない。
【0092】
2.有機EL表示パネルの製造方法
有機EL表示パネル100の製造方法について、図面を用いて説明する。
【0093】
図3は、有機EL表示パネル100の製造工程を示すフローチャートである。
【0094】
(1)下部基板101の形成
まず、基材101a上に、TFT層101bおよび配線層112を形成して下部基板101を形成する(
図3のステップS1)。TFT層101bおよび配線層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
【0095】
さらに、TFT層101b上にパッシベーション膜113を形成する。このパッシベーション膜113は、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)等で形成されており、層間絶縁層102や隔壁層104に含まれる不純物の侵入を防いでTFT層101bや配線層112を保護する。パッシベーション膜113は、たとえばプラズマCVD法もしくはスパッタリング法などにより形成される。
【0096】
上記パッシベーション膜113上に層間絶縁層102を形成する。層間絶縁層102は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0097】
次に、層間絶縁層102における、TFT層101bのソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部に例えばTFTのソース電極の表面が露出するように形成される。
【0098】
また、同様にドライエッチング法により層間絶縁層102の周縁部に周溝1022を形成して、層間絶縁層102を外側絶縁層1021と内側絶縁層1023に分離する。周溝1022の底には層間絶縁層102はなく、パッシベーション膜113の上面が露出するまでドライエッチングされる。
【0099】
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極103aを形成する。接続電極の上部は、その一部が層間絶縁層102、パッシベーション膜113上に配される。接続電極の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることでなされる。
【0100】
なお、層間絶縁層102は、公知のフォトレジスト法により形成しても構わない。
【0101】
(2)画素電極103の形成
次に、層間絶縁層102上に画素電極材料層を形成する。画素電極材料層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0102】
次に、画素電極材料層をエッチングによりパターニングして、サブ画素ごとに区画された複数の画素電極103を形成する(
図3のステップS2)。
【0103】
(3)隔壁層(バンク)104の形成
次に、画素電極103および層間絶縁層102上に、隔壁層104の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層を形成する。
【0104】
隔壁材料層は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極103上および層間絶縁層102上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、隔壁材料層にパターン露光と現像を行うことで隔壁層(バンク)104を形成し(
図3のステップS3)、隔壁層104を焼成する(ステップS4)。これにより、発光層105の形成領域となる開口部が規定される。隔壁層104の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0105】
また、隔壁層104の形成工程においては、さらに、隔壁層104の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部に塗布するインク(溶液)に対する隔壁層104の表面に撥水性を付与して、インク塗布時に混色が生じないようにする。
【0106】
(4)発光層105の形成
次に、隔壁層104が規定する開口部に対し、発光層105の構成材料を含むインクを、インクジェット装置を用いて塗布し、乾燥(焼成)を行って発光層105を形成する(
図3のステップS5)。その他の塗布方法として、ディスペンス法、スクリーン印刷法などがある。
【0107】
(5)電子輸送層106の形成
次に、発光層105および隔壁層104上に、電子輸送層106を成膜する(
図3のステップS6)。電子輸送層106は、例えば、蒸着法により各サブ画素に共通して成膜することにより形成される。
【0108】
(6)対向電極107の形成
次に、電子輸送層106上に、対向電極107を成膜する(
図3のステップS7)。対向電極107は、例えば、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
【0109】
(7)封止層108の形成
対向電極107上に、封止層108を形成する(
図3のステップS8)。
【0110】
まず、第1封止層1081を、SiNを、例えばプラズマCVD法により成膜することにより形成する(
図4(a))。原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH
4)とアンモニア(NH
3)が用いられ、さらに、窒素(N
2)を用いてもよい。
【0111】
第1封止層1081の外縁は、周辺領域20における外側絶縁層1021の端縁よりも外方の位置まで伸びる。このとき、第1封止層1081は、周溝1022の底の部分および外側絶縁層1021の外方部分において、パッシベーション膜113に直接接触している。
【0112】
次に、第2封止層1082は、樹脂材料を第1封止層1081上にインクジェット装置のヘッド部300のノズル310から吐出することにより形成し(
図4(b))、これを硬化させる。例えば、これらの樹脂材料が熱硬化性を有すれば加熱し、これらの樹脂材料が紫外線硬化性を有すれば紫外線を照射することにより硬化させることができる。
【0113】
なお、有機材料を塗布する方法としては、上記のインクジェット法以外にスクリーン印刷法やディスペンス法やスピンコート法などを用いることができる。
【0114】
第3封止層1083が、第1封止層1081と同一の成膜条件により、第2封止層1082上に形成される(
図4(c))。
【0115】
上述の通り、周溝1022による縁切り効果により、第2封止層1082の外縁は、周溝1022の内周縁よりも内側絶縁層1023側(発光領域側)に位置しており、第1封止層1081と第3封止層1083は、平面視において外側絶縁層1021の外方まで延在するため、第1封止層1081と第3封止層1083はその外縁部において第2封止層1082を介さずに直接積層される。第2封止層1082の樹脂が外部に露出するおそれがないので、大気中の水分などが、第2封止層1082内に浸入しにくい。
【0116】
(8)カラーフィルタ基板111の形成・貼着
次に、カラーフィルタ基板111を形成して、封止層108上に貼着する(
図3のステップS9)。
【0117】
(8-1)カラーフィルタ基板111の形成
まず、透明なシート基材1111を準備し、紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに黒色顔料を添加してなる遮光層1114の材料を透明なシート基材1111の一方の面に塗布して遮光材料層1114aを形成する(
図5(a))。
【0118】
塗布した遮光材料層1114aの上面に所定の開口部が施されたパターンマスクPM1を重ね、その上から紫外線照射を行う(
図5(b))。
【0119】
その後、パターンマスクPM1及び未硬化の遮光材料層1114aを除去して現像し、キュアすることにより、例えば、概矩形状の断面形状の遮光層1114が完成する(
図5(c))。
【0120】
次に、遮光層1114を形成したシート基材1111表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ1113(例えば、G)のペースト1113Gを塗布し(
図5(d))、所定のパターンマスクPM2を載置して紫外線照射を行う(
図5(e))。
【0121】
その後はキュアを行い、パターンマスクPM2及び未硬化のペーストを除去して現像すると、カラーフィルタ1113Gが形成される(
図5(f))。
【0122】
この
図5(d)、(e)、(f)の工程を赤色と青色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、カラーフィルタ1113R、1113Bを形成する(
図5(g))。
【0123】
なお、各色のペーストを用いる代わりに市販されているカラーフィルタ製品を利用してもよい。以上でカラーフィルタ基板111が形成される。
【0124】
上記カラーフィルタ基板111の形成は、
図3の製造工程と並行して、もしくは先だって実行されてもよい。
【0125】
(8-2)カラーフィルタ基板111の貼着工程
次に、下部基板101から封止層108までの各層からなる有機EL表示パネルの中間品(以下、「背面パネル1200」という)に、上記カラーフィルタ基板111を貼り合わせる。
【0126】
図6(a)~(d)は、その手順を模式的に示す工程図である。
【0127】
まず、シート基材1111カラーフィルタ基板111のカラーフィルタ層1112が形成されている面を上に向けて、その外周縁の内側部分にインク滴下装置のノズル301から周辺シール層110の材料となるインクを当該外周縁に沿って枠状に塗布して周辺シール層前駆体1100を形成する(
図6(a))。
【0128】
この時のインクは、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などの紫外線硬化型樹脂を主成分とする樹脂材料1102に直径が15μmの球状の固形のギャップ形成部材1101を多数混入させたものが使用され、次に述べる接合層109を形成するための樹脂材料よりもやや粘度が高いことが望ましい。
【0129】
カラーフィルタ基板111を背面パネル1200に圧着する際に、押しつぶされた接合層用樹脂材料が外側に漏れないように、いわば「ダム」の機能も有するからである。
【0130】
なお、ギャップ形成部材1101の直径は厳密に15μmである必要はなく、製造上の公差を含んでもよい。多少の誤差があっても、少なくとも、従来よりは視野角むらが改善されるからである。
【0131】
次に、シート基材1111の上記枠状の周辺シール層前駆体1100が形成された部分の内側の領域にノズル302から、接合層109となるべき樹脂材料を含むインクを適当な間隔を開けて複数のインク塊1090を形成する(
図6(b))。この接合層109用のインクも紫外線硬化樹脂を主成分とする。
【0132】
そして、シート基材1111の上方から、周辺シール層前駆体1100とインク塊1090に紫外線ランプ303により、紫外線を照射して周辺シール層前駆体1100およびインク塊1090を半硬化状態にする(
図6(c))。
【0133】
そして、背面パネル1200とカラーフィルタ基板111との相対的位置関係を合せた状態で両基板を貼り合わせて、真空チャンバー400内に搬入し、真空チャンバー400内の空気を抜いて真空圧着させることにより、有機EL表示パネル100の半完成品1000を生成する。
【0134】
このときに、インク塊1090は押し潰されて封止層108の上面に密着した接合層となる。周辺シール層前駆体1100も押し潰されるが、内部にギャップ形成部材1101が含まれているため、ギャップ形成部材1101の径以下には潰されずにスペーサとしての機能を果たす。
【0135】
また、上述のように周辺シール層前駆体1100はダムの役目を果たしているので、内部のインク塊1090が外部に漏れるのを防止する。したがって、インク塊1090の滴下量を適当に調整することにより、カラーフィルタ基板111をその平面性を維持したまま、封止層108上に密着させた状態で接合させることができる。
【0136】
その後、半完成品1000を真空チャンバー400から取り出して、上下を反転させ、加熱チャンバー500に収納して、所定の温度で加熱して焼成すること(
図7(b))により有機EL表示パネル100が完成する。
【0137】
なお、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
【0138】
3.有機EL表示装置
図8は、上記有機EL表示パネル100を表示部として搭載した有機EL表示装置1の全体構成を示すブロック図である。有機EL表示装置1は、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイ(電子看板、商業施設用大型スクリーン)などに用いられる表示装置である。
【0139】
有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル100と、これに電気的に接続された駆動制御部200とを備える。
【0140】
駆動制御部200は、有機EL表示パネル100に接続された駆動回路210~240と、計算機などの外部装置又はアンテナなどの受信装置に接続された制御回路250とを有する。駆動回路210~240は、各有機EL素子に電力を供給する電源回路、各有機EL素子への供給電力を制御する電圧信号を印加する信号回路、一定の間隔ごとに電圧信号を印加する箇所を切り替える走査回路などを有する。
【0141】
制御回路250は、外部装置や受信装置から入力された画像情報を含むデータに応じて、駆動回路210~240の動作を制御する。
【0142】
なお、
図1では、一例として、4つの駆動回路210~240が有機EL表示パネル100の周囲に1つずつ配置されているが、駆動制御部200の構成はこれに限定されるものではなく、駆動回路210~240の数や位置は適宜変更可能である。
【0143】
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では、第2封止層1082の樹脂材料は、周溝1022の内周縁部の内側(画像表示領域10側)で、濡れ広がりが止まっている例で説明したが(
図2参照)、温度などの製造環境の変化、インク濃度の微少な変動、インクの材料の種類による粘度の相違などによっては、
図9に示すように、第2封止層1082の周縁部が周溝1022内にまで入り込む場合もあり得る。しかし、外側絶縁層1021がダムの役目をしているので、第2封止層1082の周縁部が、外側絶縁層1021の内側の端面を乗り上げて、それよりも外側(外側絶縁層1021の頂面の平坦部)に延びることはない。
【0144】
なお、
図9では、厚み方向に倍率を誇張して示しているが、実際は、封止層108の厚みは、画像表示領域10において最大でも5μm程度であり(
図2参照)、周溝1022の内周縁の位置P4ではせいぜい全体で3μm程度であり、しかも周溝1022において急激に下方に下がり、周辺シール層110の内縁における、第2封止層1082の厚さt2が外側絶縁層1021の平坦部の厚さt1より薄くなっている。
【0145】
したがって、第2封止層1082の周縁部が、周溝1022内にまで入り込んだとしても、外側絶縁層1021の上面とカラーフィルタ基板111の下面との間にあるギャップ形成部材1101によりしっかり、ギャップを形成して位置決めされているため、周辺シール層110の最内側に位置するギャップ形成部材1101の底の部分が封止層108の第3封止層1083を強く押圧することはない。
【0146】
また、
図9においては、わかりやすいように、Z方向の倍率をX方向の倍率よりもかなり大きくしているため、周溝1022の内側縁部の位置P4における第2封止層1082の膜厚t3が厚く見えるが、塗布された第2封止層1082のインクが位置P4を越えて塗り広がると、当該外周縁部のインクが一挙に周溝1022に流れ込むので、位置P4における第2封止層1082の膜厚t3は実際には非常に薄く、せいぜい1μm程度に過ぎない。したがって、それより外側(外側絶縁層1021側)における第3封止層1083の上面の高さは一挙に低くなる。
【0147】
そのため、周辺シール層110の内側端部110aの位置が、位置P4より外側(外側絶縁層1021側)にある限り、周辺シール層110の内側端部110aが、第3封止層1083に当接したとしても、外側絶縁層1021上のギャップ形成部材1101の規制を受けているため、第2封止層1082の樹脂層の柔軟性も手伝って、周辺シール層110の最内側に位置するギャップ形成部材1101の底の部分が封止層108の第3封止層1083を突き破るまでの押圧力を加えることはない。
【0148】
このように、周溝1022を設けると共に、周辺シール層110の内側端部110aが、周溝1022の内側縁部の位置P4よりも外側(外側絶縁層1021側)に位置するように構成することにより、周辺シール層110の内側端部110aの位置における第2封止層1082の厚みを、外側絶縁層1021の平坦部の厚み(t1)より薄くすることが可能となり、少なくとも
図13に示した従来の構成よりは、周辺シール層110の内側端部により第3封止層1083に加わる押圧力が抑制され、第3封止層1083が破損して封止性が劣化するおそれが大幅に低減する。
【0149】
<効果のまとめ>
上記各実施の形態における開示により、次のような効果が得られる。
【0150】
(1)層間絶縁層に周溝1022を形成して、外側絶縁層1021と内側絶縁層1023に2分したので、封止層108の第2封止層1082を塗布法で形成する際にその外周部の濡れ広がりが、外側絶縁層1021の内周縁部を越えることがない。また、周辺シール層110の内側端部110aが周溝1022内にあり、周辺シール層110の内側端部110aの位置における、第2封止層1082の厚さが外側絶縁層1021の平坦部の厚さより薄くなっている(第2封止層1082の厚さが「0」の場合を含む)ため、カラーフィルタ基板111を圧着させる際に、ギャップ形成部材1101が封止層108の第3封止層1083を押圧して毀損することがなく、封止性を維持できる。
【0151】
この際、外側絶縁層1021上方に存する周辺シール層110を介してカラーフィルタ基板111の周縁部が支持されて、
図12に示すような垂れ部が生じないので、視野角むらがなくなり画像の品質が向上する。
【0152】
(2)水分を吸着しない無機材料からなる第1封止層1081、第3封止層1083により、樹脂からなり水分を吸着しやすい性質を有する層間絶縁層102を、その外側端部まで被覆することにより、下部基板101に沿った方向から水分が浸入することを効果的に防止できる。
【0153】
(3)層間絶縁層102が周溝1022により外側絶縁層1021と内側絶縁層1023に完全に分離されており、周溝1022の内側面および底部が第1封止層1081により皮膜されているため、たとえ、外側絶縁層1021内に水分が浸入したとしても、周溝1022および第1封止層1081により遮断されて、内側絶縁層1023まで浸入しにくい。
【0154】
≪変形例≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0155】
以下、有機EL表示パネルの変形例について説明する。
【0156】
(1)上記各実施の形態では、下部基板101に垂直で、周溝1022を横断するような断面において周辺シール層110の外周端面の位置が外側絶縁層1021の上面の平坦部におけるP2の位置にくるように形成したが(
図2、
図9参照、)、
図10に示すように周辺シール層110の幅をさらに広げて、その外側端部110bが、外側絶縁層1021の外周端面より外側のP3の位置までくるように形成してもよい。
【0157】
このようにすることにより、もし、第1封止層1081、第3封止層1083にピンホールなどの封止欠陥があったとしても、周辺シール層110の樹脂材料1102により水分が直接それらに接触することが抑制されるので、外側絶縁層1021に水分などがより浸入しにくくなり、封止性が向上する。
【0158】
(2)上記第2の実施の形態(
図9参照)の有機EL表示パネル100において、全体がフレキシブルに構成されている場合には、パネルを撓ませる度に、周辺シール層110の最内側であって、樹脂材料からなる第2封止層1082が直下にある位置にあるギャップ形成部材1101の底部により第3封止層1083に大きな圧力が作用して第3封止層1083に損傷を与えるおそれがあるので、この場合には
図11に示すように周辺シール層110の内側端部110aの位置を外側絶縁層1021上面の平坦部における内側縁部の位置P5よりも外側に位置させるように形成することが望ましい。
【0159】
(3)上記実施の形態では、発光層の形成方法としては、スクリーン印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。さらに、各構成部位の材料には、公知の材料を適宜採用することができる。
【0160】
(4)上記実施の形態では、第1封止層1081の成膜条件および組成と第3封止層1081の成膜条件および組成は同一であるとしたが、必ずしも完全に一致する必要はなく、当業者により適宜変更されてよい。
【0161】
また、一般的に無機材料は樹脂材料に比して水分を吸収しにくい特性を有するので、第1封止層1081、第3封止層1083の材料として、上述の窒化シリコン(SiN)のほかに、他の適当な無機材料(例えば、酸窒化シリコン(SiON)、炭化シリコン(SiC)等)を使用してもよい。
【0162】
(5)上記実施の形態では、封止層108上に貼着する第2基板としてカラーフィルタ基板111について説明したが、カラーフィルタ基板111以外でも公知の偏光板フィルム(例えば、特開平7-142170号公報、特開2001-4837号公報など参照)を貼着させてもよい。上記偏光板フィルムは、外部から入射して有機EL表示パネル100内部(特に、画素電極103)で反射した光を外部に透過させにくくするので、屋外などにおける有機EL表示パネル100の視認性を増すことができる。
【0163】
また、上記実施の形態では、発光層105としてR、G、Bの個別の発光色を有する有機材料を用いたが、白色のみ発光する有機材料を使用し、カラーフィルタ基板111によりカラー表示させるようにしても構わない。
【0164】
(6)上記実施の形態のように、基材101aが樹脂からなるフレキシブル基板である場合には、基材101aとTFT層101bとの間に、実施の形態に係る第1封止層1081や第3封止層1083と同様な封止膜を備える構成としてもよい。本構成により、基板側からの水分の侵入を抑止することができる。
【0165】
(7)上記実施の形態では、各有機EL素子が、画素電極、発光層、電子輸送層、対向電極からなる構成であるとしたが、例えば、画素電極と発光層との間に正孔注入層や正孔輸送層を含む構成であってもよいし、電子輸送層と対向電極との間に電子注入層を含む構成であってもよい。
【0166】
また、上記実施の形態では、画素電極が反射型電極、対向電極が透過型電極であるトップエミッション型であるとしたが、画素電極が透過型電極、対向電極が反射型電極であるボトムエミッション型であるとしてもよい。
【0167】
(8)上記実施の形態では、
図2などに示すように第1封止層1081と第3封止層1083のいずれの端縁も、外側絶縁層1021の外周端面よりも外側に延びて、外側絶縁層1021の頂部および外側の側面を覆うように構成したが、第1と第3の封止層のうち少なくとも一方の封止層が、外側絶縁層1021の頂部および外側の側面を覆うようにすれば、外側絶縁層1021内に外部から容易に水分が浸入しないようにすることができる。
【0168】
(9)上記実施の形態では、周辺シール層110内に球体状のギャップ形成部材1101を混入させていたが、確実に一定の厚みを確保できるものであれば、例えば、短い繊維状のフィラをギャップ形成部材1101として混入させることも可能である。
【0169】
(10)上記実施の形態では、発光層として有機ELを使用した有機EL表示パネルについて説明したが、その他、発光層として無機ELを使用した無機ELパネルや、発光層に量子ドットを使用した量子ドットパネル(例えば、特開2010-199067号公報参照)などの自発光表示パネルについても、発光層の種類が異なるだけで、画素電極と対向電極との間に発光層を介在させるという構成において有機EL表示パネルと同じであり、上記実施の形態と同様な封止構造にすることにより、封止性を向上しつつ、画像表示領域周辺部における視野角むらを解消して質の高い表示画面を得ることができる。
【0170】
≪補足≫
以上、本開示に係る自発光表示パネルの一例として有機EL表示パネルおよびその製造方法について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本開示に係る自発光表示パネルは、良好な封止性を確保しつつ、画像表示領域の周縁部における画像ノイズの発生を抑制する表示パネルとして好適である。
【符号の説明】
【0172】
10 表示領域
20 周辺領域
100 有機EL表示パネル
101 基板
101a 基材
101b TFT層
102 層間絶縁層(絶縁樹脂層)
1021 外側絶縁層
1022 周溝
1023 内側絶縁層
103 画素電極
104 隔壁層
105 発光層
106 電子輸送層
107 対向電極
108 封止層
1081 第1封止層
1082 第2封止層
1083 第3封止層
109 接合層
110 周辺シール層
111 カラーフィルタ基板
113 パッシベーション膜