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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】グラビア印刷版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20240404BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41N1/06
H05K3/12 630Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019235319
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102328
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】橋村 智薫
(72)【発明者】
【氏名】若曽根 志保
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-086545(JP,A)
【文献】特開2012-114434(JP,A)
【文献】特開2010-260176(JP,A)
【文献】特開平06-316174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0096473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00 - 99/00
H05K 3/10 - 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の輪郭線及び第2の輪郭線から構成される直線状画線部を含む画線部を印刷するための円柱状のグラビア印刷版であって、
上記第1の輪郭線を印刷する基準セルと、
上記基準セルを上記第1の輪郭線に対して直交する方向に上記第2の輪郭線まで投影させた投影部分に存在する一個又複数個の画線構成セルと
を含むセル群を有し、
同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルのそれぞれのセルにおいて、上記第1の輪郭線の延長方向の寸法が、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルの相加平均値の±5%以内に含まれていると共に、
同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルのそれぞれのセルにおいて、上記第1の輪郭線の延長方向に直交する方向の寸法が、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルの相加平均値の±5%以内に含まれており、
上記第1の輪郭線が、上記直線状画線部の幅方向における一端を構成し、且つ、上記第2の輪郭線が、上記直線状画線部の幅方向における他端を構成し、
同一セル群内における互いに隣接するセル間の距離が全て、同一セル群内に存在するセル間の距離の相加平均値の±10%以内であり、
上記第1の輪郭線の延長方向が上記グラビア印刷版の軸芯方向に対して直交又は平行となるように構成されており、
上記第1の輪郭線の延長方向が上記グラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合、上記基準セル及び上記画線構成セルの開口端における上記第1の輪郭線の延長方向の寸法L 1 が35~290μmであり、上記基準セル及び上記画線構成セルの開口端における上記第1の輪郭線の延長方向に直交する方向の寸法W 1 が50~130μmであり、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルにおいて、互いに隣接するセル間の距離Jが5~30μmであり、上記第1の輪郭線の延長方向に互いに隣接するセル群間の距離Hが5~30μmであり、
上記第1の輪郭線の延長方向が上記グラビア印刷版の軸芯方向に平行である場合、上記基準セル及び上記画線構成セルの開口端における上記第1の輪郭線の延長方向の寸法L 2 が50~180μmであり、上記基準セル及び上記画線構成セルの開口端における上記第1の輪郭線の延長方向に直交する方向の寸法W 2 が50~140μmであり、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルにおいて、互いに隣接するセル間の距離Jが5~30μmであり、上記第1の輪郭線の延長方向に互いに隣接するセル群間の距離Hが5~30μmであることを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項2】
同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルにおいて、第1の輪郭線の延長方向の寸法が同一であり、且つ、上記第1の輪郭線の延長方向に直交する方向の寸法が同一であることを特徴とする請求項1に記載のグラビア印刷版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品の回路印刷などの様々な用途にグラビア印刷が用いられている。近年、電波を用いてRFIDタグのデータを非接触で読み書きするシステムで用いられるRFIDの回路パターン作製にグラビア印刷が用いられている。
【0003】
特許文献1には、導電ペーストのグラビア印刷により形成された導体を有するセラミック電子部品の製造方法であって、セラミックグリーンシートを用意する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導電ペーストを、所定の図形となるようにグラビア印刷する工程とを備え、前記所定の図形が印刷方向と平行な方向が長さ方向である第1の図形部分と、印刷方向と直交する方向が長さ方向である第2の図形部分とを有し、前記グラビア印刷にあたり、第1の図形部分を印刷するための複数の第1のセルと、第2の図形部分を印刷するための複数の第2のセルとを有し、第1のセルと第2のセルの形状が異なっているグラビア印刷用版を用いるセラミック電子部品の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-207641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記セラミック電子部品の製造方法では、第1のセルは、印刷方向に連続しており、線状画線部の線幅方向のセル形状が一定でないと共に、第2のセルも線状画線部の線幅方向のセル幅が一定でないため、セル内に充填したインキを印刷部材に安定的に転写させることができず、印刷抜けなどの印刷不良を生じるという問題点を有する。
【0006】
本発明は、セルに充填されたインキを被印刷体に安定的に転写することができるグラビア印刷版を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラビア印刷版は、第1の輪郭線及び第2の輪郭線から構成される直線状画線部を含む画線部を印刷するためのグラビア印刷版であって、
上記第1の輪郭線を印刷する基準セルと、
上記基準セルを上記第1の輪郭線に対して直交する方向に上記第2の輪郭線まで投影させた投影部分に存在する一個又複数個の画線構成セルと
を含むセル群を有し、
同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルのそれぞれのセルにおいて、上記第1の輪郭線の延長方向の寸法が、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルの相加平均値の±5%以内に含まれていると共に、
同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルのそれぞれのセルにおいて、上記第1の輪郭線の延長方向に直交する方向の寸法が、同一のセル群を構成している上記基準セル及び上記画線構成セルの相加平均値の±5%以内に含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグラビア印刷版は、セルに充填されたインキを被印刷体に安定的に転写することにより、直線状画線部を精度良く印刷することができる。
【0009】
本発明のグラビア印刷版を用いて被印刷体に印刷された直線状画線部は、その延長方向に印刷抜けに起因した切断部は発生しておらず、延長方向に連続的に連なった状態に形成されている。よって、本発明のグラビア印刷版によれば、電子部品の回路パターン、回路パターンを形成するためのエッチングレジストパターン(フォトレジスト膜)、一次元コード及び二次元コードなどを精度良く印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】グラビア印刷版の一例を示した斜視図である。
図2】グラビア印刷版の他の一例を示した斜視図である。
図3】セルの一例を示した平面図である。
図4】セルの一例を示した断面図である。
図5】グラビア印刷版のセルの形成状態を示した展開図である。
図6】グラビア印刷装置の一例を示した模式図である。
図7】実施例2における被印刷体に施した直線状画線部を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のグラビア印刷版の一例を図面を参照しつつ説明する。グラビア印刷版Aは、図1及び図2に示したように、円柱状のグラビア印刷版本体1の周面に多数のセル2が、被印刷体に形成する画線部の形態に合わせて形成されて構成されている。
【0012】
セル2は、グラビア印刷版本体1の周面11に全面的に開口した状態で形成されている。セル2の開口部は、セル2に充填したインキを円滑に被印刷体に転写させることができるので、四角形状に形成されていることが好ましい。図3に示したように、セル2の開口端を構成している辺は、外方に向かって膨らむ円弧状であってもよい。又、セル2の開口端を構成している辺同士の交点は円弧状に形成されていてもよい。なお、セル2は、図4に示したように、断面凹円弧状に形成された底面2aと、底面2aの外周縁からグラビア印刷版本体1の周面(表面)に向かって徐々に外方に向かって拡がっている周壁部2bとを含んでいる。
【0013】
グラビア印刷版Aを用いてグラビア印刷を行う場合、後述するように、グラビア印刷版を塗工液パン4に浸け、塗工液パン4内のインキFをグラビア印刷版Aのセル2内に充填する。インキFをグラビア印刷版Aのセル2内に充填した後、グラビア印刷版Aの外周面及びセル2の余分なインキFをドクターブレード5で除去する。
【0014】
ドクターブレードの刃先と呼ばれる薄板の縁(エッジ)をグラビア印刷版の周面に直接接触させて、グラビア印刷版の周面及びセルの余分なインキを除去している。セルごとに開口形状(特にサイズ)が異なると、ドクターブレードによるインキFの掻き取り状態がセルごとに異なったり、非印刷体に対するインキFの転写状態がセルごとに異なったりし得る。その結果、インキFの転写量がセル間で不均一となり、インキFのカスレやにじみが生じ、直線状画線部の輪郭の直線性が悪くなるという問題があった。更に、直線状画線部の線幅が細くなった場合には、直線状画線部が途切れてしまうという問題があった。
【0015】
グラビア印刷版Aによって被印刷体に形成される画線部Bは、直線状画線部B1を含んでいればよく、直線状画線部B1以外に、曲線を含む曲線状画線部B2が含まれていてもよい。直線状画線部B1とは、画線部を構成する一対の輪郭線B11、B12が、直線であり且つ互いに平行である画線部をいう。画線部のうち、直線状画線部B1を除いた画線部を曲線状画線部B2という。
【0016】
図5に示したように、グラビア印刷版Aは、直線状画線部B1を構成する一対の輪郭線B11、B12のうちの何れか一方の輪郭線、即ち、第1の輪郭線B11を印刷する基準セル21と、この基準セル21を第1の輪郭線B11に対して直交する方向に第2(他方)の輪郭線B12まで投影させた投影部分Cに存在する一個又は複数個の画線構成セル22とを含むセル群とを有する。
【0017】
直線状画線部B1を構成する一対の輪郭線B11、B12のうちの任意の輪郭線が、基準セル21を特定する際に用いられる第1の輪郭線B11として選択されればよい。この選択された輪郭線B11を印刷するセル(充填されたインキを被印刷体に転写した時に、このインキが輪郭線B11の一部を構成するセル)が基準セル21となる。
【0018】
グラビア印刷版本体1の周面を平面状に展開し、この展開状態において、基準セル21の開口端を第1の輪郭線B11に対して直交する方向に第2の輪郭線B12まで投影し、この投影部分C内に存在する一個又は複数個のセルを画線構成セル22とする。「基準セル21を第1の輪郭線B11に対して直交する方向に第2の輪郭線B12まで投影して形成される投影部分C」とは、基準セル21における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の先端211、211のそれぞれから第1の輪郭線B11に直交する一対の投影線C1、C2を描き、この投影線C1、C2と、第2の輪郭線B12と、基準セル21の開口端のうちの第2の輪郭線B12に対向する開口端縁部分とで囲まれた部分とする。
【0019】
そして、上述のように規定された投影部分C内に存在する一個又は複数個のセルを画線構成セル22とする。投影部分C内に存在するセルとは、セルの開口端の面積のうち、50%を超える部分が投影部分C内に存在しているセルとする。
【0020】
基準セル21と、一個又は複数個の画線構成セル22とによってセル群が形成されている。このセル群を構成している基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の寸法は、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の寸法の相加平均値の±5%以内[(相加平均値×0.95)~(相加平均値×1.05)]に含まれている。同一のセル群において、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の寸法は、同一であることが好ましい。
【0021】
更に、上記セル群を構成している基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に直交する方向の寸法は、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に直交する方向の寸法の相加平均値の±5%以内[(相加平均値×0.95)~(相加平均値×1.05)]に含まれている。同一のセル群において、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に直交する方向の寸法は、同一であることが好ましい。
【0022】
上述のように、セル群を構成している基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向及びこれに直交する方向の寸法が略同一寸法に形成されているので、セルの開口形状を全体的に略均一なものとすることができる。
【0023】
従って、セル21、22ごとのインキの転写量の不均一さを抑制でき、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0024】
同一のセル群において、基準セル21を第1の輪郭線B11に対して直交する方向に第2の輪郭線B12まで投影して形成された投影部分C内に、画線構成セル22以外のセルが存在しないことが好ましい。
【0025】
同一のセル群において、全ての画線構成セル22の開口端の全体が投影部分C内に存在していることが好ましい。換言すれば、画線構成セル22の各セルの開口端が投影部分Cからはみ出ることなく投影部分C内に存在していることが好ましい。
【0026】
このように、画線構成セル22の開口端の全てが投影部分C内にはみ出ることなく存在していること、又は、投影部分C内に画線構成セル22以外のセルが存在しないことによって、ドクターブレードによるインキの掻取りをより均一に且つセル内におけるインキの充填密度をより均一に保持することができる。
【0027】
同一のセル群内において、画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の先端221が、投影線C1、C2上に位置していることが好ましい。画線構成セル22の開口端において、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の何れか一方の先端221が投影線C1、C2上に位置しているセルの画線構成セル22中における割合は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、100%がより好ましい。画線構成セル22の開口端において、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の両先端221、221が投影線C1、C2上に位置しているセルの画線構成セル22中における割合は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、100%がより好ましい。
【0028】
本発明において、セルの所定方向(「D方向」とする)の寸法とは、セル上にD方向に延びる任意の直線Qを描き、この直線Qとセルの開口端縁との交点N、N間の距離のうち、最大の値をいう。直線Qは、その全長がセルの開口端縁よりも内側にあり、交点N、N以外において開口端縁と接触していないものとする。
【0029】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11方向の寸法L1は、30~480μmが好ましく、35~290μmがより好ましく、35~240μmがより好ましく、40~185μmがより好ましい。寸法L1が上記範囲内であると、インキを被印刷体に安定して転写することができ、グラビア印刷版の軸芯方向に直交する方向の線(直線状画線部の構成要素)を安定した幅で再現できる。
【0030】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11方向に直交する方向の寸法W1は、30~230μmが好ましく、40~228μmがより好ましく、50~225μmがより好ましい。寸法W1が上記範囲内であると、インキを被印刷体に安定して転写することができ、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0031】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に平行である場合、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11方向の寸法L2は、30~590μmが好ましく、35~450μmがより好ましく、40~400μmがより好ましく、50~180μmがより好ましい。寸法L2が上記範囲内であると、インキを被印刷体に安定して転写することができ、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0032】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に平行である場合、基準セル21及び画線構成セル22の開口端における第1の輪郭線B11方向に直交する方向の寸法W2は、30~230μmが好ましく、45~200μmがより好ましく、60~140μmがより好ましい。寸法W2が上記範囲内であると、インキを被印刷体に安定して転写することができ、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0033】
基準セル21及び画線構成セル22の最大深さGは、5~50μmが好ましく、10~45μmがより好ましく、20~35μmがより好ましく、23~33μmがより好ましい。基準セル21及び画線構成セル22の最大深さGとは、セルを形成する前のグラビア印刷版本体1の周面からこの周面に対して直交する方向のセルの底面2aまでの距離のうち、最大値をいう。
【0034】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合、同一のセル群を構成している基準セル21及び画線構成セル22において、互いに隣接するセル間の距離Jは、1~30μmが好ましく、3~25μmがより好ましく、5~20μmがより好ましい。同一セル群内における互いに隣接するセル間の距離Jは全て、同一セル群内に存在するセル間の距離Jの相加平均値の±10%以内であることが好ましく、同一セル群内に存在するセル間の距離Jの相加平均値の±5%以内であることがより好ましい。セル間の距離Jが上記範囲であると、インキを被印刷体に安定して転写することができ、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0035】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に平行である場合、同一のセル群を構成している基準セル21及び画線構成セル22において、互いに隣接するセル間の距離Jは、1~30μmが好ましく、3~25μmがより好ましく、5~20μmがより好ましい。同一セル群内における互いに隣接するセル間の距離Jは全て、同一セル群内に存在するセル間の距離Jの相加平均値の±10%以内[(相加平均値×0.9)~(相加平均値×1.1)]であることが好ましく、同一セル群内に存在するセル間の距離Jの相加平均値の±5%以内[(相加平均値×0.95)~(相加平均値×1.05)]であることがより好ましい。
【0036】
なお、互いに隣接するセル間の距離Jとは、第1の輪郭線B11に直交する方向において、互いに隣接するセルの開口端縁間の最短距離をいう。
【0037】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に互いに隣接するセル群間において、セル群間の距離は、1~30μmが好ましく、3~25μmがより好ましく、5~20μmが特に好ましい。
【0038】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に平行である場合、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に互いに隣接するセル群の距離は、1~30μmが好ましく、3~25μmがより好ましく、5~20μmが特に好ましい。
【0039】
セル群間の距離Hとは、互いに隣接するセル群において、一方のセル群にて設定され且つ他方のセル群に対向する投影線C1と、他方のセル群にて設定され且つ一方のセル群に対向する投影縁C1との距離をいう。
【0040】
第1及び第2の輪郭線B11、B12間に配設される画線構成セル22の数は、特に限定されず、第1及び第2の輪郭線B11、B12間の距離(直線状画線部の幅)に応じて、適宜調整されればよい。
【0041】
第1の輪郭線B11と第2の輪郭線B12との間をこれら輪郭線B11、B12に平行な仮想直線で所望数の区画に分割形成し(好ましくは等間隔に分割形成し)、各区画に基準セル21又は画線構成セル22を一個ずつ形成することが好ましい。
【0042】
第1の輪郭線B11と第2の輪郭線B12との間が2個の区画に分割形成される場合は、第1の輪郭線B11側の区画に基準セルが形成され、第2の輪郭線B12側の区画に1個の画線構成セル22が形成される。
【0043】
第1の輪郭線B11と第2の輪郭線B12との間が3個以上の区画に分割形成される場合は、第1の輪郭線B11とこれに隣接する仮想直線とで形成される区画に基準セル21が形成され、それ以外の残余の区画のそれぞれに1個の画線構成セル22が形成される。
【0044】
このように、グラビア印刷版Aは、基準セル21及び画線構成セル22が所定の条件下に形成されているので、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0045】
次に、グラビア印刷版Aの製造方法について説明する。グラビア印刷版Aは、公知の製造方法によって製造することができる。
【0046】
上記グラビア印刷版本体1は、通常、鉄やアルミニウムなどの金属から形成されており、表面には銅などから形成されたメッキ層(表面層)が施されている。そして、グラビア印刷版本体1のメッキ層の表面に、化学的な方法や機械的な方法を用いて、セルを形成してグラビア印刷版Aを製造することができる。なお、グラビア印刷版本体1のメッキ層にセル2を形成した後にメッキ層の表面にクロームメッキなどが施されてもよい。
【0047】
化学的な方法によってセルを形成する方法としては、グラビア印刷版本体1のメッキ層の表面を鏡面状に研磨した上でメッキ層(表面層)の表面に感光剤を塗布する。感光剤をセルパターン(ドットパターン)のネガ型を形成するように硬化させた後、未硬化の感光剤を除去する。感光剤によって被覆されていないメッキ層を腐食液によって腐食させ凹ませてセルを形成することができる。
【0048】
又、機械的な方法によってセルを形成する方法としては、例えば、グラビア印刷版本体1のメッキ層(表面層)を鏡面状に研磨した後、スタイラスと呼ばれるダイヤモンドの針でメッキ層の表面に彫刻を施して凹ませてセルを形成することができる。
【0049】
グラビア印刷版Aを用いて被印刷体に印刷する要領を説明する。先ず、グラビア印刷方法で用いられるグラビア印刷装置について説明する。図6中、グラビア印刷版Aの下方にはインキFを溜めておく塗工液パン4が配設されている。なお、グラビア印刷版Aの側方には、グラビア印刷版Aの周面及びセルの余分なインキを除去するためのドクターブレード5が配設されている。
【0050】
更に、グラビア印刷版Aの上方にはバックアップロール3が配設されており、グラビア印刷版Aとバックアップロール3との対向面間に供給された被印刷体Eが順次、挟圧されるように構成されている。被印刷体Eの供給速度は、20~150m/分が好ましく、30~100m/分がより好ましく、40~60m/分が特に好ましい。なお、被印刷体Eは、グラビア印刷によって印刷可能なものであればよく、例えば、金属箔、合成樹脂シート、紙及びこれらの積層シートなどが挙げられる。
【0051】
更に、塗工液パン4内にインキFを供給する。グラビア印刷版Aは、その下部が塗工液パン4内のインキF中に浸かっており、グラビア印刷版Aを図6において時計回りに回転させると共に、グラビア印刷版Aの周面及びセルの余分なインキFをドクターブレード5によって除去する。グラビア印刷版Aの回転速度は、30~300rpmが好ましく、45~200rpmがより好ましく、60~120rpmがより好ましい。又、インキのザーンカップ#3での粘度は、13~40秒が好ましく、16~35秒がより好ましく、18~30秒がより好ましく、19~25秒がより好ましい。
【0052】
グラビア印刷版Aは、そのセルが上述のように形成されているので、グラビア印刷版Aの周面及びセルの余分なインキFをドクターブレード5によって除去する際に、セル内に充填されたインキが不均一に掻き取られ、又は、セル内においてインキの充填密度が不均一になるようなことはない。従って、グラビア印刷版Aのセルから所望量のインキを被印刷体に精度よく転写させることができ、直線状画線部を高精度に印刷することができる。
【0053】
そして、グラビア印刷版Aの基準セル21及び画線構成セル22に充填されているインキを被印刷体E上に転写させた後、インキを乾燥させることによって所望の印刷形態を施すことができる。
【0054】
グラビア印刷版Aを用いてグラビア印刷することができる印刷形態は、特に限定されないが、RFiDタグの回路パターン及び電子部品の電子回路パターンを製造するためのエッチングレジストパターン、バーコードなどの一次元コード、QRコード(登録商標)などの二次元コードなどの高い印刷精度を必要とする印刷形態が好ましい。
【0055】
被印刷体Eに印刷された印刷形態がエッチングレジストパターンである場合、グラビア印刷が施された被印刷体Eは、合成樹脂シートと金属箔との積層シートであり、金属箔上に所望形態の印刷が施されている。積層シートの金属箔にエッチング液を用いてエッチングの処理を施して金属箔の不要部分(エッチングレジストパターンが施されていない部分)を溶解、除去することによって、所望の回路パターンを作製することができる。なお、エッチング液としては、従来公知のものが用いられ、例えば、塩酸、硝酸、塩化鉄(III)などが挙げられる。
【0056】
上記では、直線状画線部を構成している第1の輪郭線B11及び第2の輪郭線B12の延長方向(長さ方向)が、グラビア印刷版の回転の軸芯方向又はこの軸芯方向に直交する場合を説明したが、これに限定されるものではなく、第1の輪郭線B11及び第2の輪郭線B12が、グラビア印刷版の回転の軸芯方向に対して交差している場合にも同様に適用することができる。
【0057】
(実験例)
本発明における適切なセルの開口形状を特定するための実験を行った。以下、その実験について説明する。図6に示したグラビア印刷装置を用いてグラビア印刷を行った。先ず、厚さ38μmのポリエステルフィルムと、厚さ10μmのアルミニウム箔とがポリウレタン系接着剤を介して積層一体化してなる長尺状の基材シートSを被印刷体として用意した。
【0058】
トルエン10重量部、酢酸エチル10重量部、酢酸ブチル10重量部、イソプロピルアルコール20重量部及びメチルエチルケトン10重量部からなる有機溶媒中に顔料10重量部及びアクリル系樹脂30重量部を溶解させてなるレジストインキ(ザーンカップ#3での粘度:22秒)を作製した。
【0059】
そして、刃先部の厚さが60μm、硬度がHV580、幅が1250mm、刃先部が研磨されたスウェーデン鋼ドクターブレード5(ロルフ・マイヤー製)を用意した。
【0060】
幅(長さ)1100mmのグラビア印刷版Aを用意した。このグラビア印刷版Aの表面には、表1及び2に示した方向に延び且つ互いに平行な第1の輪郭線及び第2の輪郭線から構成される直線状画線部を印刷するための基準セル21及び画線構成セル22が形成されており、基準セル21及び画線構成セル22によってセル群が構成されていた。本実験は、単一のセル群(基準セル21及び画線構成セル22が一直線状かつ一列に並ぶセル群)によって、一端が第1の輪郭線B11を構成し、もう一端(他端)が第2の輪郭線B12を構成する直線状の画線要素を印刷することにより行った。画線構成セル22は、投影部分Cからはみ出すことなく全体が投影部分C内に存在していた。なお、表1及び表2において、第1の輪郭線及び第2の輪郭線が、グラビア印刷版Aの回転軸の軸芯方向に延びている場合は「軸芯方向」と、グラビア印刷版Aの回転軸の軸芯方向に直交する方向に延びている場合は「直交方向」と表記した。
【0061】
基準セル21及び画線構成セル22は、図4に示したように、断面凹円弧状に形成された底面2aと、底面2aの外周縁からグラビア印刷版本体1の周面(表面)に向かって徐々に外方に向かって拡がっている周壁部2bとを含んでいた。
【0062】
基準セル21及び画線構成セル22の開口端について、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)の寸法L1又はL2、及び、第1の輪郭線B11の延長方向(長さ方向)に直交する方向の寸法W1又はW2を表1及び表2に示した。基準セル21及び画線構成セル22の最大深さGを表1及び表2に示した。基準セル21及び画線構成セル22の開口端は、図3に示したように、平面長方形状に形成されており、各辺は外方に膨らんだ円弧状に形成され且つ各頂点も円弧状に形成されていた。実験例1~24において、基準セル21及び画線構成セル22の開口端は全て、同一形状及び同一大きさを有しており、上記寸法L1(L2)及びW1(W2)並びに最大深さGは全て同一とした。
【0063】
画線構成セル22における第1の輪郭線B11の延長方向の両先端221、221は全て、投影線C1、C2上に位置していた。
【0064】
同一のセル群内において、互いに隣接するセル間の距離Jを表1及び2に示した。実験例1~24においては、同一のセル群内において、互いに隣接するセル間の距離Jは全て同一とした。
【0065】
そして、上記グラビア印刷版Aを用いると共に、塗工液パン4内に上記レジストインキFを供給してグラビア印刷版Aの下部がレジストインキF中に浸かった状態とした。次に、グラビア印刷版Aを図6において時計回りに一定速度で軸芯を中心にして表1及び2に示した回転速度で回転させると共に、ドクターブレード5をその刃先部がグラビア印刷版Aの周面に押し付けられた状態で接触させ、ドクターブレード5をグラビア印刷版Aの回転軸の軸芯方向(グラビア印刷版の幅方向)に左右往復動させた。
【0066】
次に、長尺状の基材シートSをグラビア印刷版Aとバックアップロール3との対向面間に連続的に50m/分の供給速度で供給し、基材シートSをグラビア印刷版Aとバックアップロール3とで両側から押圧することによって、基材シートSのアルミニウム箔の表面に、グラビア印刷版Aの基準セル21及び画線構成セル22内に充填したレジストインキFを転移、塗工させて、直線状の画線要素を印刷した。
【0067】
しかる後、基材シートSを熱風乾燥炉に供給した。熱風乾燥炉は、120℃に維持された第1乾燥部と、この第1乾燥部の下流側に連続的に接続され且つ140℃に維持された第2乾燥部と、この第2乾燥部の下流側に連続的に接続され且つ160℃に維持された第3乾燥部とから構成されていた。基材シートSは、第1乾燥部、第2乾燥部及び第3乾燥部に順次供給され、それぞれの乾燥部にて3秒間乾燥され、レジストインキを乾燥させて長さ1~15μmの直線状の画線要素を印刷した。
【0068】
以上のようにして得られた印刷結果を、マイクロスコープを用いて300倍に拡大した拡大写真を撮影し、画線要素の線幅の最大値から最小値を減算することにより、線幅差異Xを算出した。表1及び表2に示すように、線幅差異Xが小さく、良好な印刷結果を得ることができた。第1の輪郭線B11と第2の輪郭線B12との間において複数の画線要素が第1の輪郭線B11に直交する方向において配列することにより、直線状画線部を再現することが予想できる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【実施例
【0071】
以上においては、単一のセル群(基準セル21及び画線構成セル22が一直線状に且つ一列に並ぶセル群)によって画線要素を印刷した実験結果を示した。次に、複数のセル群を第1の輪郭線B11の方向に並べて配置することにより、直線状画線部を高精度に印刷できることを、以下の実験によって確認した。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
表3及び表4は、1個の基準セル21と1個の画線構成セル22とによって構成されるセル群が第1の輪郭線B11の方向に並んだグラビア版を用いて上述と同様の要領で印刷を行った実施例1~9についての印刷結果を示す。実施例1~9のそれぞれにおいて、セル群間の距離Hは一定であった。また、セル群間の距離Hとして、上述した実験において画線要素を良好に印刷できた距離J(表1及び表2)を採用した。
【0075】
以上のようにして得られた印刷結果を、マイクロスコープを用いて300倍に拡大した拡大写真を撮影し、直線状画線部の線幅の最大値から最小値を減算することにより、線幅差異Yを算出した。図7は、表4の実施例2において被印刷体上に施された線状画線部の写真を示す。図7に示した写真上に線状画線部に対応する基準セル21及び画線構成セル22を点線で示した。図7並びに表3及び4に示すように、線幅差異Yが小さく、直線状画線部を高精度に印刷することができた。また、直線状画線部の内部が欠損する不良(印刷抜け)の発生も見られなかった。
【0076】
第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合におけるセル群間の距離Hは、第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向である場合におけるセル間の距離Jと同様に設定すればよい。第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向である場合におけるセル群間の距離Hは、第1の輪郭線B11の延長方向がグラビア印刷版の軸芯方向に直交している場合におけるセル間の距離Jと同様に設定すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 グラビア印刷版本体
2 セル
21 基準セル
22 画線構成セル
3 バックアップロール
4 塗工液パン
5 ドクターブレード
A グラビア印刷版
B 画線部
B1 直線状画線部
B11 第1の輪郭線
B12 第2の輪郭線
B2 曲線状画線部
C 投影部分
C1 投影線
E 被印刷体
F インキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7