(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電磁誘導タッチペン及び多機能ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240404BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20240404BHJP
B43K 27/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/046 A
B43K27/08
(21)【出願番号】P 2020036892
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2019085936
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕介
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-194574(JP,A)
【文献】特開2018-163687(JP,A)
【文献】特開2017-035868(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183526(WO,A1)
【文献】特開2019-046429(JP,A)
【文献】特開2009-086925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333588(US,A1)
【文献】特開2018-097458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 ー 3/047
B43K 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の開口部である先端開口を有する軸筒と、
前記軸筒の内部に収容されるとともに前記先端開口から出没可能な接触先端を有し、電磁誘導方式による入力に用いられる電磁誘導リフィルと、
前記電磁誘導リフィルを前記軸筒の軸方向に移動させる移動機構と、
前記電磁誘導リフィルの後端に装着された耐衝撃性を有する変形部材と、
を備える
とともに、
前記変形部材は、筒状であるとともに、前記電磁誘導リフィルが装着される前記変形部材の先端側に設けられた薄肉部と、前記変形部材の後端側に設けられ、前記薄肉部よりも前記変形部材の径方向に肉厚な厚肉部と、を備える電磁誘導タッチペン。
【請求項2】
前記電磁誘導リフィルの後端には、前記変形部材の内部に圧入される圧入部と、前記圧入部から前記接触先端側に延びる延出部と、が設けられ、
前記延出部の外径は、前記延出部が収容される前記薄肉部の内径よりも小さい
とともに、
前記変形部材は、前後方向に貫通した貫通孔を有する合成樹脂製の筒状体であるとともに、前記電磁誘導リフィルの後端の外周との圧接により径方向に弾性変形可能な弾性変形部を先端に有する請求項
1に記載の電磁誘導タッチペン。
【請求項3】
前記変形部材は不等ピッチコイルスプリングである請求項1
又は請求項
2に記載の電磁誘導タッチペン。
【請求項4】
前記軸筒の後端側には、電子ペン機能を有する
静電容量式による入力部が設けられている請求項1から請求項
3までの何れか1項に記載の電磁誘導タッチペン。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までの何れか1項に記載の電磁誘導タッチペンに設けられた前記電磁誘導リフィルと、
前記軸筒の内部に収容され、前記先端開口から出没可能な筆記先端を有し、前記電磁誘導リフィルの最大径よりも最大径が小さい筆記リフィルと、
を備え、
前記軸筒は、前記軸方向に沿う胴部と、前記胴部の先端に連続し、前記軸方向の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部と、を備え、
前記テーパ部の先端側の内部には、前記電磁誘導リフィルの最大径よりも大きい内径を有するよう前記軸方向に沿って拡径した拡径部が設けられている
とともに、
前記移動機構は、前記電磁誘導リフィル及び前記筆記リフィルを前記軸方向に移動させるノック機構であり、
前記ノック機構は、ノック操作により前記電磁誘導リフィル又は前記筆記リフィルを前記軸方向に移動させるノック棒を複数備えており、
前記電磁誘導リフィルを前記軸方向に移動させるための前記ノック棒には、クリップが設けられている多機能ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導タッチペン及び多機能ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画面上への物理的な接触により入力を行う、デジタイザ等のポインティングデバイスが広く用いられている。すなわち、ペン型に形成された位置指示器で、位置検出装置が設けられた板状の入力装置の入力面に接触して接触位置を検出するものである。
【0003】
このようなデジタイザには様々な方式があるが、その中に、電磁誘導方式がある。これは、位置指示器の中に、入力装置の入力面の下に設置されている位置検出装置が発生する特定の周波数の電磁波に対して共振する電磁誘導コイルが設けられていて、この共振が生じた位置を入力位置として認識するものである。
このような技術としては、下記特許文献1及び下記特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO 2016/121478 A1
【文献】WO 2016/129614 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電磁誘導方式のデジタイザ(電磁誘導タッチペン)においては、ノック衝撃により、電磁誘導方式による入力に用いられる電磁誘導リフィル内の銅線が断線することが生じうるため、電磁誘導リフィルに伝わる衝撃を緩和する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、軸筒の軸方向に電磁誘導リフィルが移動可能な電磁誘導タッチペンにおいて、移動時に電磁誘導リフィルに伝わる衝撃を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、以下のような構成を備える。
【0008】
(1)第1の実施態様
本発明の第1の実施態様における電磁誘導タッチペンは、先端の開口部である先端開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容されるとともに前記先端開口から出没可能な接触先端を有し、電磁誘導方式による入力に用いられる電磁誘導リフィルと、前記電磁誘導リフィルを前記軸筒の軸方向に移動させる移動機構と、前記電磁誘導リフィルの後端に装着された耐衝撃性を有する変形部材と、を備える。
【0009】
(2)第2の実施態様
本発明の第2の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第1の実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記変形部材は、筒状であるとともに、前記電磁誘導リフィルが装着される前記変形部材の先端側に設けられた薄肉部と、前記変形部材の後端側に設けられ、前記薄肉部よりも前記変形部材の径方向に肉厚な厚肉部と、を備える。
【0010】
(3)第3の実施態様
本発明の第3の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第2の実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記電磁誘導リフィルの後端には、前記変形部材の内部に圧入される圧入部と、前記圧入部から前記接触先端側に延びる延出部と、が設けられ、前記延出部の外径は、前記延出部が収容される前記薄肉部の内径よりも小さい。
【0011】
(4)第4の実施態様
本発明の第4の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第1から第3までの何れかの実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記変形部材は、ゴム弾性を有する材料で形成されている。
【0012】
(5)第5の実施態様
本発明の第5の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第1から第3までの何れかの実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記変形部材は不等ピッチコイルスプリングである。
【0013】
(6)第6の実施態様
本発明の第6の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第1から第3までの何れかの実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記変形部材は、前後方向に貫通した貫通孔を有する合成樹脂製の筒状体であるとともに、前記電磁誘導リフィルの後端の外周との圧接により径方向に弾性変形可能な弾性変形部を先端に有する。
【0014】
(7)第7の実施態様
本発明の第7の実施態様における電磁誘導タッチペンは、第1から第6までの何れかの実施態様の電磁誘導タッチペンであって、前記軸筒の後端側には、電子ペン機能を有する入力部が設けられている。
【0015】
(8)第8の実施態様
本発明の第8の実施態様における多機能ペンは、第1から第7までの何れかの実施態様に記載の電磁誘導タッチペンに設けられた前記電磁誘導リフィルと、前記軸筒の内部に収容され、前記先端開口から出没可能な筆記先端を有し、前記電磁誘導リフィルの最大径よりも最大径が小さい筆記リフィルと、を備え、前記軸筒は、前記軸方向に沿う胴部と、前記胴部の先端に連続し、前記軸方向の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部と、を備え、前記テーパ部の先端側の内部には、前記電磁誘導リフィルの最大径よりも大きい内径を有するよう前記軸方向に沿って拡径した拡径部が設けられている。
【0016】
(9)第9の実施態様
本発明の第9の実施態様における多機能ペンは、第8の実施態様の多機能ペンであって、前記移動機構は、前記電磁誘導リフィル及び前記筆記リフィルを前記軸方向に移動させるノック機構であり、前記ノック機構は、ノック操作により前記電磁誘導リフィル又は前記筆記リフィルを前記軸方向に移動させるノック棒を複数備えており、前記電磁誘導リフィルを前記軸方向に移動させるための前記ノック棒には、クリップが設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軸筒の軸方向に電磁誘導リフィルが移動可能な電磁誘導タッチペンにおいて、移動時に電磁誘導リフィルに伝わる衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る多機能ペンの没入状態における正面図(A)、側面図(B)及び(A)のI-I断面図(C)である。
【
図2】本実施の形態に係る先軸の斜視図(A)、正面図(B)、(B)のII-II断面図(C)及び(C)の一部拡大図(D)である。
【
図3】
図2(A)の一部を断面で示した斜視図(A)及び(B)である。
【
図4】本実施の形態に係る筆記リフィルの正面図(A)、電磁誘導リフィルの正面図(B)、(A)のIII-III断面図(C)、(B)のIV-IV断面図(D)及び(D)の一部拡大図(E)である。
【
図5】本実施の形態に係る変形部材の斜視図(A)、正面図(B)及び(B)のV-V断面図(C)である。
【
図6】本実施の形態に係る多機能ペンの露出状態における正面図(A)、側面図(B)、(A)のVI-VI断面図(C)、(C)の先端側の一部拡大図(D)及び(C)の後端側の一部拡大図(E)である。
【
図7】本実施の形態に係る多機能ペンの露出状態における正面図(A)、側面図(B)、(A)のVII-VII断面図(C)及び(C)の一部拡大図(D)である。
【
図8】本実施の形態の第1変形例に係る変形部材の斜視図(A)、正面図(B)及び(B)のVIII-VIII断面図(C)である。
【
図9】本実施の形態の第2変形例に係る変形部材の斜視図(A)及び正面図(B)である。
【
図10】本実施の形態の第3変形例に係る変形部材の斜視図(A)、正面図(B)及び(B)のX-X断面図(C)である。
【
図11】本実施の形態の第4変形例に係る変形部材の斜視図(A)、正面図(B)、側面図(C)、底面図(D)及び(B)のXI-XI断面図(E)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態における多機能ペン10を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明における「先端側」とは、後述する軸筒20の軸方向のうち、後述する先軸22に向かう一方側をいい、「後端側」とは、後述する後軸24に向かう他方側をいう。また、軸方向を「前後」と表現することもある。
【0020】
(1)多機能ペン10外観
本実施の形態に係る多機能ペン10は
図1(A)及び(B)に示すような外観を呈する。
【0021】
この多機能ペン10は、その外部構造として、先端に開口部を有する軸筒20を備えている。この軸筒20は、後端側に位置する後軸24と、先端側に位置する先軸22とが互いに螺合されて形成される。そして、先軸22の先端には、後述する筆記リフィル50のボールペンチップ56又は後述する電磁誘導リフィル60の接触先端64が出没可能な先端の開口部である先端開口23が形成されている。なお、本実施の形態では、「筆記リフィル50」として「ボールペンリフィル」を用いている。
【0022】
後軸24の後端側には、軸方向に沿った長孔である窓孔24A(
図1(B)参照)が3つ形成されている。各窓孔24Aからは、ノック操作により筆記リフィル50又は電磁誘導リフィル60を前後に移動させるための3本のノック棒25が露出している。また、ノック棒25は、対応する窓孔24Aに沿って前後に移動可能である。
【0023】
また、
図1(B)に示すように、一の窓孔24Aから露出するノック棒25、具体的には、電磁誘導リフィル60を前後に移動させるための電磁誘導リフィル用ノック棒30のノック突起30Aにはクリップ30Bが装着されている。このクリップ30Bの先端部分は、軸筒20の軸心側に向かって突出した挟持部30Cとなっており、後軸24の外周面に形成されたクリップ突起24Bと接触している。なお、クリップ30Bは、軽量の樹脂素材で成形されている。一方、その他の2本のノック棒25は、それぞれインク色の異なる筆記リフィル50を前後に移動させるための筆記リフィル用ノック棒32となっている。
【0024】
さらに、後軸24の後端には、電子ペン機能を有する入力部としての機能部材26が設けられている。この機能部材26は、電子ペン機能として、具体的には、静電容量式による入力機能を備えている。
【0025】
機能部材26は、後軸24の後端に接続された接続部26Aと、接続部26Aの後端から後端側に延びる略半球状の半球部26Bと、を備えている。
【0026】
機能部材26は、少なくとも半球部26Bが、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)で形成されている。この合成樹脂としては、例えば、シリコン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等があげられ、繰り返しの使用に耐えうる低摩耗性の粘弾性材料で構成される。
【0027】
さらに、機能部材26は、少なくとも半球部26Bを、金属粉末、導電性樹脂、又は導電性繊維等の導電性材料を上記の合成樹脂に混ぜ込んだ導電性ゴムとすることで、スマートフォン等の入力装置(図示せず)へ接触させた際の入力装置の傷付きを抑制することができる。この導電性ゴムは、市販の導電性ゴム材料を成形することで製造することができる。この市販の導電性ゴム材料としては、信越化学工業(株)製のECシリーズ・シリコーンゴム、ライオン(株)製のレオパウンドシリーズ、JFEテクノリサーチ(株)製のサステックシリーズ等が例示できる。
【0028】
(2)多機能ペン10内観
図1(C)は、
図1(A)のI-I断面図である。
【0029】
図1(C)に示すように、多機能ペン10は、電磁誘導リフィル60及び筆記リフィル50を前後に移動させる移動機構としてのノック機構35を備えている。このノック機構35は、内筒40、ノック棒25、ガイド筒42、及びスプリング34、36を備えている。
【0030】
後軸24の内部空間の後端側には、各ノック棒25を収容するとともに、ノック棒25の前後の移動を導く内筒40が配置されている。この内筒40には、各ノック棒25を収容するための収容溝(図示せず)が軸方向に沿って形成されている。
【0031】
電磁誘導リフィル用ノック棒30を例にノック棒25の構造を説明すると、ノック棒25は、内筒40の収容溝に収容されるノック棒胴部30Dと、ノック棒胴部30Dの後端から軸筒20の軸心の反対側に向かって突出したノック突起30Aと、を備えている。そして、上記のように、電磁誘導リフィル用ノック棒30のノック突起30Aにはクリップ30Bが装着されている。電磁誘導リフィル用ノック棒30の形状は、クリップ30Bが装着されていることで、筆記リフィル用ノック棒32の形状とは相違している。
【0032】
また、ノック棒25は、ノック棒胴部30Dの後端から軸筒20の軸心側に向かって突出した解除突起30Eを備えている。この解除突起30Eは、他の2つのノック棒25にも設けられており、先端開口23から接触先端64又はボールペンチップ56が露出した露出状態を解除する際に用いられる。
【0033】
ノック棒胴部30Dの先端側には、軸筒20の軸心の反対側に向かって突出した係止突起30Fが形成されている。そして、この係止突起30Fの後端に設けられた係止段差30Gは、内筒40の先端と係止することで、ノック棒25の抜け止めに寄与する。
ノック棒胴部30Dの先端からは、先端側に延出した装着部30Hが設けられている。この装着部30Hの先端部分は、筆記リフィル50の後端、及び後述する変形部材70の後端に圧入される。
【0034】
また、装着部30Hとノック棒胴部30Dとの径差で形成された段差は、スプリング34、36の後端を支持するスプリング支持端30Iとなっている。
【0035】
また、後軸24の内部空間における内筒40よりも先端側には、筆記リフィル50及び電磁誘導リフィル60の前後の移動を導くガイド筒42が配置されている。ガイド筒42には、筆記リフィル50、電磁誘導リフィル60、及び電磁誘導リフィル60の後端に装着された耐衝撃性を有する変形部材70が挿入されるガイド孔(図示せず)が計3個設けられている。なお、変形部材70の詳細については後述する。
【0036】
このガイド孔のうちの2個には、2本の筆記リフィル50が挿入されている。この筆記リフィル50の後端側の外周にはスプリング36が外挿されている。そして、筆記リフィル50の後端には、筆記リフィル用ノック棒32が接続されている。このスプリング36は、その後端がスプリング支持端30Iに接触され、その先端がガイド筒42の図示しない段差に接触されている。そのため、スプリング36は、筆記リフィル用ノック棒32の先端側への移動に伴い、スプリング支持端30Iとガイド筒42の図示しない段差との間で圧縮することとなっている。
【0037】
また、ガイド孔のうちの残り1個には、1本の電磁誘導リフィル60及び変形部材70が挿入されている。この変形部材70の外周にはスプリング34が外挿されている。そして、変形部材70の後端には、電磁誘導リフィル用ノック棒30が接続されている。このスプリング34は、その後端がスプリング支持端30Iに接触され、その先端がガイド筒42の図示しない段差に接触されている。そのため、スプリング34は、電磁誘導リフィル用ノック棒30の先端側への移動に伴い、スプリング支持端30Iとガイド筒42の図示しない段差との間で圧縮することとなっている。
【0038】
そして、例えば、電磁誘導リフィル用ノック棒30が先端側へ移動されると、先端開口23から接触先端64が露出し、接触先端64が露出した状態で、筆記リフィル用ノック棒32が先端側へ移動されると、接触先端64が先軸22に没入し、ボールペンチップ56が先端開口23から露出する。
【0039】
(3)先軸22
図2(A)は先軸22の斜視図であり、
図2(B)は先軸22の正面図であり、
図2(C)は
図2(B)のII-II断面図であり、
図2(D)は
図2(C)の一部拡大図である。また、
図3(A)及び(B)は、
図2(A)に示す斜視図の一部を断面で示している。
【0040】
図2及び
図3に示すように、先軸22は、その外部構造として、後端側から順に、先軸後部22A、先軸鍔部22B、先軸前部22C、及び先軸テーパ部22Dを備えている。
【0041】
先軸後部22Aは、筒形状を呈している。この先軸後部22Aの外周面には、後軸24に形成された後軸雌ネジ24C(
図1(C)参照)と螺合するための先軸雄ネジ22Eが形成されている。先軸鍔部22Bは、環状であって、先軸22を後軸24内へ挿入した際に後軸24の先端と接触可能な部分である。先軸前部22Cは、筒形状を呈し、軸方向に沿った筒部分である。先軸テーパ部22Dは、先軸前部22Cの先端に連続し、軸方向の先端側に向かうにつれて縮径する部分である。この先軸テーパ部22Dの先端には、先端開口23が形成されている。なお、先軸前部22Cは、胴部の一例であり、先軸テーパ部22Dは、テーパ部の一例である。
【0042】
ここで、
図2(C)、(D)、
図3(A)、及び(B)に示すように、先軸テーパ部22Dの先端側の内部には、電磁誘導リフィル60の最大径よりも大きい内径を有するよう軸方向に沿って拡径した拡径部22Fが設けられている。
【0043】
(4)筆記リフィル50、電磁誘導リフィル60、及び変形部材70
図4(A)は筆記リフィル50の正面図であり、
図4(B)は後端に変形部材70が装着された電磁誘導リフィル60の正面図であり、
図4(C)は
図4(A)のIII-III断面図であり、
図4(D)は
図4(B)のIV-IV断面図であり、
図4(E)は
図4(D)の一部拡大図である。
【0044】
図4(A)及び(C)に示すように、筆記リフィル50は、インク(図示せず)を収容する管状のインク収容管52と、インク収容管52の先端に装着された継手54と、継手54の先端に装着された筆記先端としてのボールペンチップ56と、を備えている。そして、筆記リフィル50の最大径は、電磁誘導リフィル60の最大径よりも小さくなっている。インク収容管52内に収容されたインクは擦過等の加熱によりインク色の変色又は消色が可能な熱変色性インクとすることで、機能部材26を用いての摩擦動作によりインク色の変化を容易にさせることができる効果を奏する。
【0045】
図4(B)及び(D)に示す電磁誘導リフィル60の詳細構造については図示しないが、この電磁誘導リフィル60は、電磁誘導方式による入力に用いられるものであって、たとえば、以下の構成を備えている。
【0046】
電磁誘導リフィル60は、
図4(B)及び(D)に示すように、樹脂製の収容筒62を備えている。この収容筒62の先端側には、棒状のフェライトコア(図示せず)が内蔵され、フェライトコアの先端に、たとえばポリアセタールのような合成樹脂製の接触先端64が装着されている。また、フェライトコアの周囲には電磁誘導コイル(図示せず)が外挿されている。さらに、収容筒62の内部空間におけるフェライトコアよりも後端側には、電磁誘導コイルと電気的に接続された静電容量可変のコンデンサ(図示せず)と静電容量固定のコンデンサ(図示せず)と共振周波数を微調整するための各種受動素子(図示せず)が収容されている。なお、電磁誘導リフィル60は変形部材70に対して着脱可能とされており、接触先端64が摩耗したり、内蔵する電子機器類が故障したりした際には、容易に新品と交換することができる。
【0047】
また、
図4(D)に示すように、電磁誘導リフィル60の後端には、変形部材70の内部に圧入される断面略円形の圧入部66と、圧入部66から軸方向に沿って接触先端側に延びる延出部68と、が設けられている。この延出部68の外径は、延出部68が収容される後述する薄肉部72の内径よりも小さい。これにより、
図4(E)に示すように、延出部68の外周面と薄肉部72の内周面との間には、空隙65が形成されている。圧入部66が変形部材70の内部に圧入された場合には、圧入部66の外周面と変形部材70の内周面とが線接触している。
【0048】
図5(A)は変形部材70の斜視図であり、
図5(B)は変形部材70の正面図であり、
図5(C)は
図5(B)のV-V断面図である。この変形部材70は、耐衝撃性を有しており、例えば、成形性を考慮してプロピレンホモポリマーを含むポリプロピレン(PP)のような合成樹脂で形成されることが好ましい。また、より衝撃吸収性能を高めるためにJIS K6253に記載されたデュロメータ硬度A50~A90、もしくはデュロメータ硬度D10~D65としてもよい。さらに、この変形部材70は、ゴム弾性を有する材料、たとえば、熱可塑性エラストマーで形成されていてもよい。
【0049】
図5(A)、(B)及び(C)に示すように、変形部材70は、筒状であるとともに、変形部材70の先端側に設けられた薄肉部72と、変形部材70の後端側に設けられ、薄肉部72よりも変形部材70の径方向に肉厚な厚肉部74と、を備えている。この厚肉部74には、電磁誘導リフィル用ノック棒30の装着部30Hが圧入される。
【0050】
この厚肉部74は、例えば、以下のような方法で変形部材70の後端に形成される。
第1の厚肉部74の形成例は、インパルスウェルダー(IPW)と呼ばれ、変形部材70の後端を加熱溶融する溶着チップ(図示せず)が用いられる。この溶着チップには、変形部材70の後端を挿入可能な環状の凹部(図示せず)が形成されている。また、溶着チップには、発熱体(図示せず)が装着されて、例えばジュール熱により加熱されるように構成されている。さらに、溶着チップの中央部には、気体導入孔(図示せず)が形成されており、この気体導入孔を利用して、冷却用の気体(空気)が導入可能となっている。
【0051】
第2の厚肉部74の形成例は、変形部材70の後端に別部材で形成された厚肉部74を取り付けるものである。この場合は、接着剤を利用して変形部材70の後端に厚肉部74を取り付ける手段を採用することができる。
第3の厚肉部74の形成例は、変形部材70の後端に厚肉部74を熱溶着により取り付けるものである。この場合は、変形部材70に厚肉部74を実質的に一体に形成することができる。
【0052】
そして、厚肉部74の肉厚aは、0.5~0.7mm、好ましくは0.55~0.65mm、厚肉部74の軸方向長さbは、1~6mm、好ましくは2.5~4.5mmであることが望ましい。なお、変形部材70の曲げ弾性率は、電磁誘導リフィル60の曲げ弾性率より低くすることが望ましい。また、厚肉部74は、薄肉部72の先端側、すなわち、変形部材70の先端側にも形成してもよい。
【0053】
(5)露出状態
図6(A)は露出状態における正面図であり、
図6(B)は露出状態における側面図であり、
図6(C)は
図6(A)のVI-VI断面図であり、
図6(D)及び(E)は
図6(C)の一部拡大図である。
【0054】
図6(A)、(B)及び(C)に示すように、
図6に示す露出状態は、電磁誘導リフィル用ノック棒30が先端側へ移動されたことに基づいて、先端開口23から接触先端64が露出している。
【0055】
具体的には、
図1に示す電磁誘導リフィル60及び筆記リフィル50が軸筒20の内部に没入している没入状態から
図6に示す露出状態へと変化する流れは以下のようになる。
【0056】
まず、電磁誘導リフィル用ノック棒30の先端側への移動に伴い、電磁誘導リフィル用ノック棒30に接続されている変形部材70、及び変形部材70に接続されている電磁誘導リフィル60が先端側への移動を開始する。
【0057】
変形部材70及び電磁誘導リフィル60が先端側へ移動すると、電磁誘導リフィル60の先端部分(接触先端64や収容筒62の外周面)が先軸テーパ部22D(
図2(D)参照)の内周面に接触する。その後、電磁誘導リフィル60は、先軸テーパ部22Dの内周面の傾斜に沿って軸筒20の軸心側、すなわち、先端開口23に向かって移動する。
【0058】
そして、電磁誘導リフィル用ノック棒30の先端側への移動が終了したことに伴い、変形部材70及び電磁誘導リフィル60の先端側への移動が終了する。その結果、先端開口23から接触先端64が露出した露出状態となる。
【0059】
ここで、電磁誘導リフィル60の先端部分が先軸テーパ部22Dの内周面の傾斜に沿って移動する場合には、電磁誘導リフィル60が変形部材70の軸心に対して傾斜した状態となる。具体的には、電磁誘導リフィル60は、
図6(D)に示すように、圧入部66が軸方向の変位を拘束しつつ軸筒20の径方向への変位を可能とする支点となっているため、空隙65の範囲内で径方向への変位が可能となる。これにより、電磁誘導リフィル60は、変形部材70の軸心に対して傾斜した状態で先端側に移動する。
【0060】
また、
図6(E)に示す拡径部22Fは、電磁誘導リフィル60の最大径、すなわち、収容筒62の外径よりも大きい内径を有している。そのため、本実施の形態における多機能ペン10は、電磁誘導リフィル60の先端側への移動時に収容筒62が先軸テーパ部22Dに突っかかることで電磁誘導リフィル60の移動が阻害されることがなく、接触先端64の全体が先端開口23から露出可能となっている。
【0061】
図7(A)は露出状態における正面図であり、
図7(B)は露出状態における側面図であり、
図7(C)は
図7(A)のVII-VII断面図であり、
図7(D)は
図7(C)の一部拡大図である。
【0062】
図7(A)及び(C)に示すように、
図7に示す露出状態は、筆記リフィル用ノック棒32が先端側へ移動されたことに基づいて、先端開口23からボールペンチップ56が露出している。
【0063】
具体的には、
図1に示す没入状態から
図7に示す露出状態へと変化する流れは以下のようになる。
【0064】
まず、筆記リフィル用ノック棒32の先端側への移動に伴い、筆記リフィル用ノック棒32に接続されている筆記リフィル50が先端側への移動を開始する。
【0065】
筆記リフィル50が先端側へ移動すると、筆記リフィル50の先端部分(ボールペンチップ56や継手54の外周面)が先軸テーパ部22D(
図2(D)参照)の内周面に接触する。その後、筆記リフィル50は、先軸テーパ部22Dの内周面の傾斜に沿って軸筒20の軸心側、すなわち、先端開口23に向かって移動する。
【0066】
そして、筆記リフィル用ノック棒32の先端側への移動が終了したことに伴い、筆記リフィル50の先端側への移動が終了する。その結果、
図7(D)に示すように、先端開口23からボールペンチップ56が露出した露出状態となる。
【0067】
(6)作用効果
本実施の形態における多機能ペン10は、電磁誘導リフィル60と、電磁誘導リフィル60を前後に移動させる移動機構としてのノック機構35と、電磁誘導リフィル60の後端に装着された耐衝撃性を有する変形部材70と、を備えている。そして、変形部材70の後端には、ノック機構35を構成するノック棒25(電磁誘導リフィル用ノック棒30)が接続されている。つまり、本実施の形態では、電磁誘導リフィル60がノック棒25に直接接続されていない。
【0068】
ここで、電磁誘導リフィル60等のリフィルを軸筒20の内部に没入させる際、スプリングの復元力を利用するが、この復元の際、ノック棒25が軸筒20に衝突するときの衝撃がリフィルに伝わり、このような衝撃が度重なると故障等の不都合が生じることがある。そして、電磁誘導リフィル60は電子機器類を内蔵しているため、ボールペンリフィル等の筆記リフィル50に比べて、没入時の衝撃を緩和する必要性が高い。
【0069】
上記のように、本実施の形態では、変形部材70にノック棒25が接続され、電磁誘導リフィル60にノック棒25が直接接続されていないため、没入時にノック棒25が軸筒20に衝突するときの衝撃が電磁誘導リフィル60に直接伝わることが防止されている。また、変形部材70は、耐衝撃性を有するため、電磁誘導リフィル60に間接的に伝わる衝撃も緩和されている。
【0070】
そのため、本実施の形態によれば、電磁誘導リフィル60が前後に移動可能な多機能ペン10において、没入時に電磁誘導リフィル60に伝わる衝撃を緩和することができる。
【0071】
また、変形部材70は、筒状であるとともに、変形部材70の先端側に設けられた薄肉部72と、変形部材70の後端側に設けられ、薄肉部72よりも径方向に肉厚な厚肉部74と、を備えている。そして、厚肉部74の肉厚aは、0.5~0.7mm、好ましくは0.55~0.65mm、厚肉部74の軸方向長さbは、1~6mm、好ましくは2.5~4.5mmであることが望ましい。
【0072】
このように、変形部材70に径差を設けることで、全て同径の衝撃吸収部材とした場合に比べて、変形部材70に伝わる衝撃を拡散でき、変形部材70の耐衝撃性を高めることができる。例えば、上記の衝撃吸収部材の径を厚肉部74の肉厚aと同程度で構成した場合には、薄肉部72を備える変形部材70に比べて、柔軟性に欠け、耐衝撃性が低下することとなる。一方、上記の衝撃吸収部材の径を薄肉部72の肉厚と同程度で構成することは、ノック棒25を変形部材70に接続する必要があることから困難とされている。
【0073】
以上より、本実施の形態によれば、変形部材70に径差を設けることで、全て同径の衝撃吸収部材とした場合に比べて、変形部材70の耐衝撃性を高めることができ、電磁誘導リフィル60に間接的に伝わる衝撃を緩和することができる。
【0074】
また、電磁誘導リフィル60の後端には、変形部材70の内部、具体的には、薄肉部72に圧入される断面略円形の圧入部66と、圧入部66から軸方向に沿って先端側に延びる延出部68と、が設けられている。この延出部68の外径は、延出部68が収容される薄肉部72の内径よりも小さい。この構成により、本実施の形態では、電磁誘導リフィル60と変形部材70との接続部分に、延出部68及び薄肉部72間の空隙65が形成されている。これにより、本実施の形態では、空隙65の範囲内で電磁誘導リフィル60が軸筒20の径方向へ変位可能となる。その結果、
図6(C)に示す露出状態では、電磁誘導リフィル60が変形部材70の軸心に対して傾斜している。
【0075】
これに対し、電磁誘導リフィル60の挿入部分の全体を薄肉部72に圧入した場合には、電磁誘導リフィル60が変形部材70の軸心に対して傾斜することが困難となり、露出状態において電磁誘導リフィル60がやや曲がった状態となることが想定される。上記のように、電磁誘導リフィル60は電子機器類を内蔵しているため、やや曲がった状態となることは故障等の不都合が生じる可能性があり、望ましくない。
【0076】
しかし、本実施の形態では、電磁誘導リフィル60が変形部材70の軸心に対して傾斜できるため、
図6(C)に示す露出状態において電磁誘導リフィル60が曲がることが抑制されている。
【0077】
以上より、本実施の形態によれば、電磁誘導リフィル60を変形部材70の軸心に対して傾斜可能とすることで、電磁誘導リフィル60の挿入部分の全体を薄肉部72に圧入した場合に比べて、電磁誘導リフィル60に故障等の不都合が生じることを抑制することができる。
【0078】
また、後軸24の後端には、電子ペン機能を有する入力部としての機能部材26が設けられている。そして、この機能部材26は、静電容量式による入力に用いられるものとされているため、電磁誘導方式による入力に用いられる電磁誘導リフィル60と、前記した機能部材26とで、様々な入力形式の入力装置に対応することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、電磁誘導リフィル60及び筆記リフィル50は、軸筒20に対して着脱可能とされているため、故障時や消耗時に新品のリフィルと交換することができる。そして、本実施の形態では、電磁誘導リフィル用ノック棒30又は筆記リフィル用ノック棒32に接続されている変形部材70及び2本の筆記リフィル50の各々を、任意のノック棒25に接続することができる。具体的には、厚肉部74の内径と筆記リフィル50の後端側の内径とが等しくなっている。そのため、本実施の形態では、変形部材70を筆記リフィル用ノック棒32に接続することや、筆記リフィル50を電磁誘導リフィル用ノック棒30に接続することができる。この構成により、例えば、複数本の電磁誘導リフィル60を備える多機能ペン10とすることや、3本全てを筆記リフィル50とした多機能ペン10とすることが可能となる。
【0080】
ここで、電磁誘導リフィル60と筆記リフィル50とでは、電磁誘導リフィル60の最大径が筆記リフィル50の最大径より大きい。そのため、外径太さが小さい筆記リフィル50に合わせた先軸テーパ部22Dの構造では、電磁誘導リフィル60の先端側への移動時に収容筒62が先軸テーパ部22Dに突っかかり、電磁誘導リフィル60の移動が阻害されることが想定される。
【0081】
しかし、本実施の形態は、先軸テーパ部22Dの先端側の内部に、電磁誘導リフィル60の最大径、すなわち、収容筒62の外径よりも大きい内径を有するよう軸方向に沿って拡径した拡径部22Fを設けている。そのため、本実施の形態によれば、筆記リフィル50よりも最大径の大きいリフィル(例:電磁誘導リフィル60)の円滑な移動が可能となり、筆記リフィル50と、筆記リフィル50よりも最大径の大きいリフィルとを備える多機能ペン10を提供することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、3つのノック棒25のうち、電磁誘導リフィル60を前後に移動させるための電磁誘導リフィル用ノック棒30には、クリップ30Bを設けている。つまり、電磁誘導リフィル用ノック棒30の形状は、クリップ30Bが装着されていることで、筆記リフィル用ノック棒32の形状とは相違している。
【0083】
そのため、本実施の形態によれば、3つのノック棒25の形状が同じ場合に比べて、前後に移動させるリフィルの種類の識別性を高めることができる。
【0084】
(7)その他
変形部材70の形状は、
図5に示すものに限らず、他の形状としてもよい。
【0085】
(7-1)第1変形例
図8(A)は第1変形例における変形部材70の斜視図であり、
図8(B)は第1変形例における変形部材70の正面図であり、
図8(C)は
図8(B)のVIII-VIII断面図である。
【0086】
図8に示すように、第1変形例における変形部材70は、薄肉部72を径方向に貫通する貫通部76が複数形成されている。この貫通部76は、
図8(B)に示すように、正面視にて略楕円形を呈している。
【0087】
以上のように、
図8に示す第1変形例における変形部材70は、貫通部76を形成することで、
図5に示す変形部材70に比べて、薄肉部72の柔軟性を構造的に高めることで耐衝撃性を向上させている。
【0088】
(7-2)第2変形例
図9(A)は第2変形例における変形部材70の斜視図であり、
図9(B)は第2変形例における正面図である。
【0089】
図9に示すように、変形部材70は、長さ方向にわたってピッチが均一でない不等ピッチコイルスプリングで構成されている。すなわち、不等ピッチコイルスプリングにおいて、後端側の領域である狭間隔部78におけるピッチは、それ以外の部分である広間隔部77におけるピッチよりも狭く形成されている。ここで、より広いピッチの広間隔部77の方が、狭間隔部78よりも衝撃に対する緩和作用がより高い。この広間隔部77の先端に、電磁誘導リフィル60の後端が装着される。そして、電磁誘導リフィル60を軸筒20の内部に没入させる際、ノック棒25が軸筒20に衝突するときの衝撃が、電磁誘導リフィル60が直接接続されている広間隔部77がより大きく圧縮することで、変形部材70は変形を被り、これにより電磁誘導リフィル60に直接伝わる衝撃が緩和される。
【0090】
以上のように、
図9に示す第2変形例における変形部材70は、先端側の広間隔部77のピッチが後端側の狭間隔部78のピッチよりも広く形成されている不等ピッチコイルスプリングで構成されていることで、広間隔部77の先端に装着される電磁誘導リフィル60への衝撃の緩和作用を高めている。
【0091】
(7-3)第3変形例
図10(A)は第3変形例における変形部材70の斜視図であり、
図10(B)は第3変形例における正面図であり、
図10(C)は
図10(B)のX-X断面図である。
【0092】
図10に示すように、変形部材70は、長さ、直径及びピッチがいずれも異なる2本のコイルスプリングが連結部材79を介して連結された構造を有する。すなわち、2本のコイルスプリングのうち、より短く、より小径で、かつ、ピッチがより狭い方のコイルスプリングが後端側の狭間隔部78であり、また、より長く、より大径で、かつ、ピッチがより広い方のコイルスプリングが先端側の広間隔部77である。連結部材79は、軸心に沿って貫通孔75が設けられている円筒形状の部材である。
【0093】
貫通孔75は、先端側の大口径部75Aと、この大口径部75Aより口径が小さい後端側の小口径部75Bとが、この小口径部75Bよりもさらに口径が小さい連絡孔75Cで連絡する構造を有する。そして、広間隔部77の後端が大口径部75Aに圧入されるとともに、狭間隔部78の先端が小口径部75Bに圧入されることで、広間隔部77と狭間隔部78とは連結部材79により連結され、変形部材70となる。
【0094】
ここで、より広いピッチの広間隔部77の方が、狭間隔部78よりも衝撃に対する緩和作用がより高い。この広間隔部77の先端に、電磁誘導リフィル60の後端が装着される。そして、電磁誘導リフィル60を軸筒20の内部に没入させる際、ノック棒25が軸筒20に衝突するときの衝撃が、電磁誘導リフィル60が直接接続されている広間隔部77がより大きく圧縮することで、変形部材70は変形を被り、これにより電磁誘導リフィル60に直接伝わる衝撃が緩和される。
【0095】
以上のように、
図10に示す第3変形例における変形部材70においては、先端側の広間隔部77のピッチが後端側の狭間隔部78のピッチよりも広く形成されていることで、広間隔部77の先端に装着される電磁誘導リフィル60への衝撃の緩和作用を高めている。
【0096】
(7-4)第4変形例
図11(A)は、第4変形例における変形部材70の斜視図、
図11(B)は、第4変形例における正面図、
図11(C)は、第4変形例における側面図、
図11(D)は、第4変形例における底面図、及び
図11(E)は、
図11(B)のXI-XI断面図である。
【0097】
第4変形例の変形部材70は、前記(4)で言及した変形部材70と同様の物性を有する合成樹脂製の筒状体であり、耐衝撃性を有している。
図11に示すように、変形部材70は、前後方向に貫通した貫通孔75(
図11(D)及び(E)参照)を有する。さらに、先端の3箇所に等間隔に設けられた切欠部71(
図11(D)参照)によって、3本の爪状の弾性変形部73が形成されている。電磁誘導リフィル60の後端は、これら弾性変形部73に把持されるようにして変形部材70に装着される。弾性変形部73は、電磁誘導リフィル60の後端の外周との圧接により径方向に弾性変形可能となっている。
【0098】
電磁誘導リフィル60を軸筒20の内部に没入させる際には、ノック棒25が軸筒20に衝突するときの衝撃が変形部材70に伝わる。このとき、電磁誘導リフィル60が後方へ移動する力によって弾性変形部73が径方向に拡がるように変形することで、電磁誘導リフィル60への衝撃が緩和される。
【0099】
(8)まとめ
上記の実施形態では、復元力により電磁誘導リフィル60を軸筒20の内部に没入させるスプリング34と、復元力により筆記リフィル50を軸筒20の内部に没入させるスプリング36とのバネ荷重については、スプリング34とスプリング36とのバネ荷重を異ならせ、スプリング34のバネ荷重を小さくすることが望ましい。このように構成することで、筆記リフィル50との違いの認識を容易にさせると共に、電磁誘導リフィル60を軸筒20の内部にゆっくり没入させることができ、電磁誘導リフィル60に伝わる衝撃を緩和することができる。
【0100】
上記の実施形態で説明した筆記具は、1本の電磁誘導リフィル60及び2本の筆記リフィル50が軸筒20の内部に収容された多機能ペン10であった。しかし、本発明の構成を実現する筆記具は、多機能ペン10に限らず、1本の電磁誘導リフィル60が軸筒20の内部に収容された電磁誘導タッチペンとしてもよい。
【0101】
上記の実施形態では、電磁誘導リフィル60を変形部材70の軸心に対して傾斜可能とすることで、露出状態において電磁誘導リフィル60が曲がることを抑制していた。しかし、これに限らず、電磁誘導リフィル60及び変形部材70を軸方向に対して傾斜可能とすることで、露出状態において電磁誘導リフィル60が曲がることを抑制してもよい。
【0102】
例えば、電磁誘導リフィル用ノック棒30の装着部30Hの後端側に厚肉部74に圧入される部分を設け、装着部30Hの先端側に厚肉部74の内径よりも小さい部分を設けることで、電磁誘導リフィル用ノック棒30と変形部材70との接続部分に空間を形成してもよい。これにより、変形部材70は、上記の空間の範囲内で軸筒20の径方向への変位が可能となる。その結果、露出状態において、電磁誘導リフィル60及び変形部材70を軸方向に対して傾斜させることができ、電磁誘導リフィル60が曲がることを抑制することができる。
【0103】
なお、上記の実施形態では、筆記リフィル50との互換性を持たせたリフィル交換を容易にするために、電磁誘導リフィル60と変形部材70との取り付け力は、電磁誘導リフィル用ノック棒30と変形部材70との取り付け力より高くすることが望ましい。
【0104】
さらに、
図6(C)では、電磁誘導リフィル用ノック棒30の先端側への移動が終了した場合に、変形部材70の先端が後軸24の先端よりも後端側に位置している。つまり、変形部材70は、電磁誘導リフィル用ノック棒30の先端側への移動が終了した場合、後軸24の内部に没入している。しかし、これに限らず、変形例として、変形部材70の先端を後軸24の先端から露出させるべく、変形部材70の軸方向長さを長くすることで、変形部材70の先端を後軸24の先端から露出させてもよい。このように構成することで、仮に電磁誘導リフィル60を多機能ペン10から取り外す際に誤って変形部材70を後軸24内に残してしまった場合に、後軸24の内部に収容された変形部材70単体を指で掴むことができ、容易に変形部材70を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0105】
10 多機能ペン 20 軸筒
22 先軸 22A 先軸後部
22B 先軸鍔部 22C 先軸前部
22D 先軸テーパ部 22E 先軸雄ネジ
22F 拡径部 23 先端開口
24 後軸 24A 窓孔
24B クリップ突起 24C 後軸雌ネジ
25 ノック棒 26 機能部材
26A 接続部 26B 半球部
30 電磁誘導リフィル用ノック棒 30A ノック突起
30B クリップ 30C 挟持部
30D ノック棒胴部 30E 解除突起
30F 係止突起 30G 係止段差
30H 装着部 30I スプリング支持端
32 筆記リフィル用ノック棒 34 スプリング
35 ノック機構 36 スプリング
40 内筒 42 ガイド筒
50 筆記リフィル 52 インク収容管
54 継手 56 ボールペンチップ
60 電磁誘導リフィル 62 収容筒
64 接触先端 65 空隙
66 圧入部 68 延出部
70 変形部材 71 切欠部
72 薄肉部 73 弾性変形部
74 厚肉部 75 貫通孔
75A 大口径部 75B 小口径部
75C 連絡孔 76 貫通部
77 広間隔部 78 狭間隔部
79 連結部材