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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20240404BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240404BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240404BHJP
   F25D 11/02 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
F25D17/06 313
A23L3/36 Z
F25D11/00 101B
F25D11/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047878
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148352
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由紀
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-088432(JP,A)
【文献】特開2004-191042(JP,A)
【文献】特開2001-330361(JP,A)
【文献】特開平03-110366(JP,A)
【文献】特開2006-242518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 ~ 16/00
F25D 17/04 ~ 17/08
F25D 27/00 ~ 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた冷蔵温度帯に維持可能な貯蔵室と、
前記貯蔵室に対する冷気の供給を制御する制御装置と、を備え、
前記貯蔵室は、当該貯蔵室内の一部に設けられて前記冷蔵温度帯と前記冷蔵温度帯よりも高い高温度帯とに切り替え可能な高温切替区画と、
前記貯蔵室内において前記高温切替区画とは異なる区画に設けられ前記冷蔵温度帯に維持される通常冷蔵区画と、
前記貯蔵室内において前記高温切替区画及び前記通常冷蔵区画とは異なる区画に設けられ前記冷蔵温度帯よりも低いチルド温度帯に維持されるチルド区画と、
を備え、
前記制御装置は、
前記高温切替区画に冷気を供給して前記高温切替区画を前記冷蔵温度帯に維持するとともに、前記チルド区画に冷気を供給することで前記チルド区画を通常チルド温度帯に維持する通常制御と、
前記高温切替区画に対して前記通常制御の実行時に比べて冷気の供給を低減又は停止する若しくは前記通常制御で供給される冷気よりも高温の空気を供給して前記高温切替区画を前記高温度帯に維持する高温制御と、
前記チルド区画に対して前記通常制御の実行時に比べて冷気の供給を増大させ又は前記通常制御で供給される冷気よりも低温の冷気を供給して前記チルド区画を前記通常チルド温度帯よりも更に低い低温チルド温度帯に維持する低温制御と、
前記通常制御の実行により前記高温切替区画及び前記通常冷蔵区画を前記冷蔵温度帯に維持する通常冷蔵モードと、
前記高温制御の実行により前記高温切替区画を前記高温度帯に維持するとともに前記通常冷蔵区画を前記冷蔵温度帯に維持する高温切替モードと、
前記低温制御の実行により前記チルド区画を前記低温チルド温度帯に維持するとともに前記通常冷蔵区画を前記冷蔵温度帯に維持する低温チルドモードと、
を実行可能であり、
前記高温切替モードと前記低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、前記高温制御と前記低温制御とをそれぞれ所定の周期で交互に実行する、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御装置は、前記低温チルドモードが実行されずに前記高温切替モードが実行さている場合には、前記低温制御を実行せずに前記高温制御を実行する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御装置は、前記高温切替モードが実行されずに前記低温チルドモードが実行さている場合には、前記高温制御を実行せずに前記低温制御を実行する、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御装置は、前記高温切替モードと前記低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、前記高温制御と前記低温制御とをそれぞれ異なる所定の周期で交互に実行するとともに、1周期における前記高温制御の実行期間を前記低温制御よりも長くする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御装置は、前記高温切替モードと前記低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、前記高温制御と前記低温制御とをそれぞれ異なる所定の周期で交互に実行するとともに、前記高温切替モードが実行されずに前記低温チルドモードが実行されている場合に比べて、前記低温制御を前記チルド区画の温度を更に下げる方向に制御しかつ1周期における前記低温制御の実行期間を前記高温制御よりも短くする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御装置は、前記高温切替モードと前記低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、前記高温制御と前記低温制御とをそれぞれ異なる周期で実行するとともに、前記低温チルドモードが実行されずに前記高温切替モードが実行されている場合に比べて、前記高温制御を前記高温切替区画の温度を更に上げる方向に制御しかつ1周期における前記高温制御の実行期間を短くする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、共働き世帯の増加により、家庭外で調理された出来合いの食品を購入して持ち帰る或いは配達等によって家庭内で食べる食事形態、いわゆる中食が増えている。このような中食用の食品は、購入後比較的短期間のうちに消費されるものの、場合によっては半日から数日程度保存されることがある。そのため、このような調理済みの食品をおいしく保存したいというニーズが高まっている。
【0003】
ここで、調理済みの例えばごはんやパンが時間の経過とともにその食味が劣化する理由は、ごはんやパンに含まれるデンプンが、調理直後はα化されているが時間の経過とともにβ化するからである。デンプンのβ化は、デンプンの表面が液相の状態つまり2℃~4℃程度で最も進行し易い。
【0004】
従来の冷蔵庫は、生鮮食品等をより長期間保存できるように、冷蔵室内を3℃~5℃の冷蔵温度帯や0℃~3℃のいわゆるチルド温度帯に維持する。そのため、調理済みの食品を従来の冷蔵庫に収納すると、デンプンのβ化が促進されてしまい、かえって食味が損なわれることとなる。そのため、従来構成の冷蔵庫は、調理済みの食品の保存には適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-125178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、例えばごはんやパン等の調理済みの食品であってもおいしく保存することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の冷蔵庫は、予め定められた冷蔵温度帯に維持可能な貯蔵室と、前記貯蔵室に対する冷気の供給を制御する制御装置と、を備える。前記貯蔵室は、当該貯蔵室内の一部又は全部に設けられて前記冷蔵温度帯と前記冷蔵温度帯よりも高い高温度帯とに切り替え可能な高温切替区画を有する。前記制御装置は、前記高温切替区画に冷気を供給して前記高温切替区画を前記冷蔵温度帯に維持する通常制御と、前記高温切替区画に対して前記通常制御の実行時に比べて冷気の供給を低減又は停止する若しくは前記通常制御で供給される冷気よりも高温の空気を供給して前記高温切替区画を前記高温度帯に維持する高温制御と、を実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による冷蔵庫の構成の一例を示す斜視図
図2】一実施形態による冷蔵庫について冷蔵室周辺の構成の一例を示す断面図
図3】一実施形態による冷蔵庫の電気的構成の一例を示すブロック図
図4】一実施形態による冷蔵庫について、各区画に対する運転モードとその運転モードにおける温度帯の一例を示す図
図5】一実施形態による冷蔵庫について、各運転モードが実行された場合における制御内容の一例を示す図
図6】一実施形態による冷蔵庫について、高温切替区画について通常冷蔵モードが選択され、かつチルド区画について通常チルドモードが選択された場合におけける通常制御の実行態様の一例を示す図
図7】一実施形態による冷蔵庫について、高温切替区画について高温切替モードが選択され、かつチルド区画について通常チルドモードが選択された場合における通常制御及び高温制御の実行態様の一例を示す図
図8】一実施形態による冷蔵庫について、高温切替区画について通常冷蔵モードが選択され、かつチルド区画について低温チルドモードが選択された場合における通常制御及び低温制御の実行態様の一例を示す図
図9】一実施形態による冷蔵庫について、高温切替区画について高温切替モードが選択され、かつチルド区画について低温チルドモードが選択された場合における高温制御及び低温制御の実行態様の一例を示す図
図10】一実施形態による冷蔵庫について、制御装置で実行される制御内容の一例を示すフローチャート
図11】一実施形態による冷蔵庫について、収納検知部としてカメラを採用した例における高温切替区画周辺を示す部分断面図
図12】一実施形態による冷蔵庫について、収納検知部として光電センサ又はレーザセンサを採用した例における高温切替区画周辺を示す部分断面図
図13】一実施形態による冷蔵庫について、収納検知部として重量計を採用した例における高温切替区画周辺を示す部分断面図
図14】変形例による冷蔵庫について冷蔵室周辺の構成の一例を示す断面図
図15】変形例による冷蔵庫について、冷蔵室に対する運転モードとその運転モードにおける温度帯の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態による冷蔵庫について、図1図13を参照して説明する。
図1に示す冷蔵庫10は、前面が開口した縦長矩形箱状の冷蔵庫本体としての断熱箱体20内に、複数の貯蔵室を有して構成されている。以下の説明では、断熱箱体20の開口側を、冷蔵庫10の前面側とし、開口とは反対側を、冷蔵庫10の背面側とする。また、冷蔵庫10を図1の姿勢で床面に設置した場合における重力方向に対する上下方向を、冷蔵庫10の上下方向とする。また、図1の冷蔵庫10を前側から見た場合における左右方向を、冷蔵庫10の左右方向とする。
【0010】
図1に示すように、冷蔵庫10は、断熱箱体20を主体として構成されている。断熱箱体20は、前面が開口した箱体で構成されており、内部に複数の貯蔵室を有している。断熱箱体20は、箱体を構成する各壁部内に発泡ウレタンや真空断熱パネル等の高い断熱性を有する部材が設けられて構成されている。断熱箱体20は、貯蔵物を貯蔵するための複数の貯蔵室として、例えば冷蔵室11、野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15を備えている。冷蔵室11、野菜室12は、冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15は、冷凍温度帯の貯蔵室である。
【0011】
この場合、冷蔵温度帯及び冷凍温度帯とは、食品等を冷蔵や冷凍して収納するために適した温度帯であり、冷蔵庫10の出荷時に既に設定されていたり冷蔵庫10の運転に際してユーザが任意に設定したりすることで、冷蔵庫10の運転時に予め設定されている温度帯である。本実施形態の場合、冷蔵温度帯は、例えば一般的な冷蔵温度帯である3℃~5℃に設定されている。また、冷凍度帯は、例えば一般的な冷凍温度帯である-18℃以下に設定されている。
【0012】
冷蔵室11は、断熱箱体20の最上部に設けられている。野菜室12は、冷蔵室11の下方に設けられている。製氷室13及び小冷凍室14は、野菜室12の下方にあって、左右に並べて設けられている。冷凍室15は、製氷室13及び小冷凍室14の下方、つまり断熱箱体20の最下部に設けられている。
【0013】
冷蔵庫10は、冷蔵室扉111、112、野菜室扉121、製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151を備えている。冷蔵室扉111、112は、例えば観音開きのヒンジ開閉式の扉であって、冷蔵室11の前側の開口を開閉する。野菜室扉121、製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151は、いずれも引き出し式であって、それぞれ野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15の前側の開口を開閉する。
【0014】
この場合、図2に示すように、野菜室12は、引出し式のケース122を有している。そして、このケース122は、野菜室扉121に取り付けられて野菜室扉121と一体的に出し入れ可能に構成されている。同様に、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15も、それぞれ製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151と一体的に出し入れ可能な図示しないケースを有している。
【0015】
断熱箱体20は、図2に示すように、内部に断熱仕切り壁21と非断熱仕切り壁22とを有している。断熱仕切り壁21は、冷蔵温度帯の貯蔵室11、12と、冷凍温度帯の貯蔵室13、14、15とを断熱した状態で上下方向に仕切っている。非断熱仕切り壁22は、冷蔵温度帯の貯蔵室11、12内において、冷蔵室11と野菜室12とを断熱せずに上下方向に仕切っている。
【0016】
冷蔵庫10は、図2に示すように、冷蔵室11の内部に通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25とを有している。通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25とは、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室11内を例えば棚板31、32、33、34や収納ケース35等の断熱性を有さない部材によって仕切って構成された区画である。この場合、棚板31、32、33、34や収納ケース35は、例えば樹脂やガラス等で構成されており、発泡ウレタンや真空断熱パネルなどのような高い断熱性は有していない。すなわち、通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25とは、相互に断熱性を有した部材によっては仕切られていない。
【0017】
通常冷蔵区画23は、高温切替区画24及びチルド区画25とは異なる区画に設けられており、通常冷蔵区画23内は図4に示す冷蔵温度帯に維持される。通常冷蔵区画23は、高温切替区画24の下方でかつチルド区画25の上方に配置されている。本実施形態の場合、通常冷蔵区画23は、高温切替区画24及びチルド区画25に比べて容積が大きい。すなわち、本実施形態の場合、通常冷蔵区画23、高温切替区画24、及びチルド区画25のうち、通常冷蔵区画23の容積が最も大きく設定されている。
【0018】
高温切替区画24は、冷蔵室11内の一部の区画又は全部の区画に設けられている。本実施形態の場合、高温切替区画24は、冷蔵室11内の一部に設けられている。なお、冷蔵室11は、通常冷蔵区画23及びチルド区画25を設けずに、冷蔵室11内の全部を高温切替区画24とすることもできる。本実施形態の場合、高温切替区画24は、冷蔵室11の最上部に設けられている。すなわち、高温切替区画24は、通常冷蔵区画23及びチルド区画25の上方に設けられている。また、この場合、高温切替区画24は、最上段の棚板31と冷蔵室11内の天井部113とで挟まれた空間である。
【0019】
冷蔵庫10は、図2に示すようにシャッター36を備えている。シャッター36は、高温切替区画24の内部と外部とを開閉可能に仕切っている。本実施形態の場合、シャッター36は、高温切替区画24の前端部分つまり最上端の棚板31の前端部付近に設けられている。シャッター36を閉めた状態では、高温切替区画24内の暖気が通常冷蔵区画23側に流出することを抑制されるとともに、通常冷蔵区画23の冷気が高温切替区画24内に流入することを抑制される。このため、高温切替区画24を冷蔵温度帯の区画として使用する場合には、シャッター36を開ける。一方、高温切替区画24を高温度帯の区画として使用する場合には、シャッター36を閉める。
【0020】
チルド区画25は、冷蔵室11内の一部の区画に設けられている。本実施形態の場合、チルド区画25は、冷蔵室11の最下部に設けられている。すなわち、チルド区画25は、通常冷蔵区画23及び高温切替区画24の下方に設けられている。また、この場合、チルド区画25は、最下段の棚板34と冷蔵室11の底部この場合非断熱仕切り壁22とで挟まれた空間、又はこの空間内に出し入れされる収納ケース35内の空間である。
【0021】
冷蔵庫10は、図2に示す冷蔵用冷却器16及び図3に示す圧縮機17を備えている。本実施形態の場合、冷蔵用冷却器16及び圧縮機17は、図示しない冷凍冷却器、凝縮器、蒸発器、及び切替弁等とともに、冷凍サイクルを構成する。この場合、冷凍サイクルは、切替弁を冷蔵用冷却器16側に切り替えて冷蔵用冷却器16側へ冷媒を供給することで、冷蔵用冷却器16に冷蔵温度帯の貯蔵室11、12を冷却するための冷気を生成させる。また、冷凍サイクルは、切替弁を冷凍用冷却器側に切り替えて冷凍用冷却器側へ冷媒を供給することで、図示しない冷凍冷却器に冷凍温度帯の貯蔵室13、14、15を冷却するための冷気を生成させる。なお、1つの冷却器で冷蔵温度帯の貯蔵室11、12と冷凍温度帯の貯蔵室13、14,15とを冷却するための冷気を生成する構成としても良い。
【0022】
また、冷蔵庫10は、図2に示すように、ダクト18及び送風機19を備えている。ダクト18は、冷蔵室11及び野菜室12の背面側に設けられており、内部に冷蔵用冷却器16を収容している。ダクト18は、冷蔵用冷却器16によって生成された冷気を冷蔵室11及び野菜室12に供給するための送風経路を形成する。送風機19は、ダクト18内に設けられている。送風機19は、野菜室12の空気をダクト18内に吸い込み、その吸い込んだ空気を冷蔵用冷却器16を通過させて、通常冷蔵区画23、高温切替区画24、及びチルド区画25に送る機能を有する。
【0023】
冷気ダクト18は、戻り口181と、複数の吹き出し口182、183、184と、を有している。戻り口181は、ダクト18の下方の一部を野菜室12に向けて開口して形成されている。複数の吹き出し口182、183、184は、ダクト18内と、高温切替区画24又は通常冷蔵区画23若しくはチルド区画25のいずれかと、を連通している。
【0024】
本実施形態の場合、ダクト18の最上部に設けられた上段吹き出し口182は、高温切替区画24に連通している。また、ダクト18の最下部に設けられた下段吹き出し口184は、チルド区画25に連通している。そして、上段吹き出し口182と下段吹き出し口184との間に設けられた中段吹き出し口183は、通常冷蔵区画23に連通している。
【0025】
送風機19の送風作用によって野菜室12から戻り口181を通ってダクト18内に流入した空気は、ダクト18内を流れて冷蔵用冷却器16を通過する。そして、冷蔵用冷却器16を通過した空気は、下段吹き出し口184からチルド区画25に吹き出される。その後、ダクト18を流れる空気のうち下段吹き出し口184からチルド区画25に流出しなかった残りの空気の一部は、中段吹き出し口183から通常冷蔵区画23に吹き出される。そして、ダクト18を流れる空気のうち中段吹き出し口183から通常冷蔵区画23に吹き出されなかった残りの空気は、上段吹き出し口182から高温切替区画24に吹き出される。
【0026】
また、冷蔵庫10は、図3に示すように、制御装置40、操作パネル41、及び通信部42を有している。制御装置40は、CPU401や、ROM、RAM、不揮発性メモリなどの記録領域402を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置40は、冷蔵庫10全体の動作を管理する。圧縮機17や送風機19は制御装置40に電気的に接続されており、制御装置40によって駆動制御される。
【0027】
操作パネル41は、制御装置40に電気的に接続されている。操作パネル41は、ユーザからの操作を受け付けるとともに、制御装置40からの制御を受けて、冷蔵庫10の運転内容等の各種の設定の変更や表示等を行う機能を有する。本実施形態の場合、操作パネル41は、例えば静電タッチ式の入力部を有している。そして、操作パネル41は、例えば冷蔵室扉111、112のいずれか一方又は両方に内蔵されている。また、操作パネル41は、例えばLEDライトや液晶等で構成された表示部や、音を鳴らしたり音声等を発生させたりできるブザーやスピーカー等を有している。
【0028】
通信部42は、外部のルータ91を介して例えばインターネットや携帯電話回線網等の電気通信回線92に接続可能に構成されている。これにより、通信部42は、ルータ91及び電気通信回線92を介して、外部機器である例えばスマートフォンやタブレット、パソコン等の情報端末93や、企業等に設置されたサーバ94等に通信可能に接続される。この場合、通信部42は、情報端末93等と有線又は無線によって直接接続されても良い。通信部42は、制御装置40からの指示を受けて、外部機器である情報端末93やサーバ94に例えば冷蔵庫10の運転状況等の各種情報を送信することができる。また、通信部42は、情報端末93やサーバ94等から各種指示を受信することができる。
【0029】
冷蔵庫10は、図3に示すように、通常冷蔵区画温度センサ43、高温切替区画温度センサ44、チルド区画温度センサ45、及び収納検知部46を備えている。通常冷蔵区画温度センサ43は、通常冷蔵区画23内の温度を計測する機能を有する。高温切替区画温度センサ44は、高温切替区画24内の温度を計測する機能を有する。チルド区画温度センサ45は、チルド区画25内の温度を計測する機能を有する。
【0030】
収納検知部46は、高温切替区画24内に収納物が収納されたことを検知する機能を有する。この場合、収納検知部46は、シャッター36の開閉を検知する機能や、高温切替区画24内の物体の存在や通過を検知する機能、又は高温切替区画24内に収納された物体の重量を計測する機能等を有した、機械的又は光学的若しくは電気的なセンサで構成することができる。また、収納検知部46は、例えば操作パネル41に設けられたボタンや特定の操作で構成することもできる。更に、収納検知部46は、例えばカメラや音波等を用いて高温切替区画24内の物体の存在を検知する構成とすることができる。通常冷蔵区画温度センサ43、高温切替区画温度センサ44、チルド区画温度センサ45、及び収納検知部46は、それぞれ制御装置40に電気的に接続されており、各センサの検知結果を制御装置40に送信する。
【0031】
制御装置40は、図示しない冷凍サイクルの切替弁を制御するとともに、圧縮機17や送風機19を制御することで、各貯蔵室11、12、13、14、15に対する冷気の供給を制御する。本実施形態の場合、制御装置40は、冷蔵温度帯の貯蔵室11、12の冷却と、冷凍温度帯の貯蔵室13、14、15の冷却と、を交互に実行する。例えば制御装置40は、60分間の冷蔵温度帯の貯蔵室11、12の冷却と、40分間の冷凍温度帯の貯蔵室13、14、15と、を交互に実行する。
【0032】
冷蔵庫10は、冷蔵室11内の温度を調整するための運転モードとして、高温切替区画24に対しては通常運転モードと高温切替モードを備えており、チルド区画25に対して通常チルドモードと低温チルドモードとを備えている。すなわち、制御装置40は、図4に示すように、高温切替区画24に対して通常冷蔵モードと高温切替モードとを切り替えて実行可能である。また、制御装置40は、チルド区画25に対して通常チルドモードと低温チルドモードとを切り替えて実行可能である。各モードは、例えばユーザが操作パネル41を操作することで切り替えられる。なお、制御装置40は、通常冷蔵区画23については、高温切替区画24及びチルド区画25に設定されたモードに関わらず例えば3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持する。
【0033】
通常冷蔵モードは、高温切替区画24内の温度を通常の冷蔵温度帯、例えば3℃~5℃の温度帯に維持するモードである。高温切替モードは、高温切替区画24内の温度を冷蔵温度帯よりも高い高温度帯に維持するモードである。この場合、高温度帯は、例えばデンプンのβ化を抑制して調理済み食品の食味の劣化を抑制することができる温度帯、具体的には例えば5℃~15℃の範囲内でユーザの任意の温度帯に設定することができる。このため、高温切替区画24は、いわゆる中食を保管するための中食ルーム又は中食区画と称することができる。
【0034】
また、通常チルドモードは、チルド区画25内の温度を通常のチルド温度帯、例えば1℃~3℃の温度帯に維持するモードである。そして、低温チルドモードは、チルド区画25内の温度を通常のチルド温度帯よりも低い低温チルド温度帯に維持するモードである。この場合、低温チルド温度帯は、収容物が凍る直前の温度、例えば0℃~1℃程度に設定されている。
【0035】
制御装置40は、各区画23、24、25に対する冷気の温度や供給量を調整することで、各区画23、24、25の温度帯を調整することができる。本実施形態の場合、制御装置40は、例えば圧縮機17の回転数や送風機19の送風量を調整することによって、区画23、24、25に対する冷気の温度や供給量を調整し、これにより上述した各モードを実行する。
【0036】
具体的には、制御装置40は、通常制御、高温制御、及び低温制御を実行可能である。通常制御は、通常冷蔵区画23、高温切替区画24、及びチルド区画25に冷気を供給することで、通常冷蔵区画23及び高温切替区画24を3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持するとともに、チルド区画25を1℃~3℃の通常チルド温度帯に維持する制御である。本実施形態において、圧縮機17の回転数及び送風機19の送風量は、この通常制御を基準としている。この場合、図5では、この通常制御における圧縮機17の回転数及び送風機19の送風量をいずれも「中」として表している。この通常制御において、制御装置40は、冷蔵用冷却器16の温度が例えば約1℃前後になるように圧縮機17の回転数を制御する。
【0037】
高温制御は、高温切替区画24に対して通常制御の実行時に比べて冷気の供給を低減又は停止する若しくは通常制御で供給される冷気よりも高温の空気を供給して、高温切替区画24を5℃~15℃の高温度帯に維持する制御である。本実施形態の場合、制御装置40は、高温制御の実行により、圧縮機17の回転数を停止させるとともに、送風機19の送風量を通常制御の場合よりも増大させる。
【0038】
高温制御の実行により、圧縮機17が停止して冷蔵用冷却器16に対する冷媒の供給が無くなると、冷蔵用冷却器16の温度は外気の温度に近づき、例えば10℃~20℃前後まで上昇する。そして、送風機19の送風量の増大によって冷蔵用冷却器16周辺の暖かい空気の大部分がダクト18の上方まで運ばれて、上段吹き出し口182から高温切替区画24内に吹き出される。これにより、高温切替区画24内の温度が高温度帯に維持される。
【0039】
一方、高温制御を実行する以前に高温切替区画24に存在した冷気は、高温制御により増大された送風機19の送風によって、例えばシャッター36と棚板31との隙間等から通常冷蔵区画23へ押し出される。そして、高温切替区画24から流出した冷気は、その後、冷気の重さによって下降する。これにより、高温切替区画24の下方に設けられた通常冷蔵区画23及びチルド区画25は、高温制御を実行して圧縮機17を停止した後でもある程度の期間は冷却される。
【0040】
低温制御は、チルド区画25に対して、通常制御の実行時に比べて冷気の供給を増大させ又は通常制御で供給される冷気よりも低温の冷気を供給することで、チルド区画25を通常チルド温度帯よりも更に低い例えば0℃~1℃の低温チルド温度帯に維持する制御である。本実施形態の場合、制御装置40は、低温制御の実行により、通常制御の場合に比べて、圧縮機17の回転数を増大させるとともに送風機19の送風量を減少又は停止させる。
【0041】
低温制御において、制御装置40は、冷蔵用冷却器16の温度が例えば約-1℃前後になるように圧縮機17の回転数を増大させる。そして、送風機19による送風量が減少又は送風が停止されると、冷蔵用冷却器16で生成された冷気は、冷気の重みによってダクト18を上昇せずに下方に留まる。その結果、チルド区画25の上方に設けられた通常冷蔵区画23や高温切替区画24に過度な冷気の供給を抑制しつつ、冷蔵室11内の最下部に設けられたチルド区画25に供給され易くなる。このように低温制御の実行によって、通常冷蔵区画23及び高温切替区画24の過度な冷却を抑制しつつ、チルド区画25を通常チルドモードよりも更に低い低温チルド温度帯に維持することができる。
【0042】
図5に示すように、制御装置40は、高温切替区画24に対する通常冷蔵モード又は高温切替モードの選択状態、及びチルド区画25に対する通常チルドモード又は低温チルドモードの選択状態、に応じて上述した通常制御、高温制御、及び低温制御を組み合わせて実行する。
【0043】
各モードにおける具体的な制御内容について、図6図9も参照して説明する。なお、図6図9において横軸は時間を示している。また、図6図9において縦軸は、各制御において各区画23、24、25内の温度を、目標とする温度帯に変化させための能力を示しており、横軸から離れるほど能力が高くなることを意味する。
【0044】
図5に示すように、高温切替モード及び低温チルドモードのいずれも実行されていない場合、つまり高温切替区画24に対して通常冷蔵モードが選択され、かつ、チルド区画25に対して通常チルドモードが選択されている場合、制御装置40は、図6に示すように、通常制御のみを一定期間継続して実行する。これにより、通常冷蔵区画23及び高温切替区画24は3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持され、チルド区画25は1℃~3℃の通常チルド温度帯に維持される。
【0045】
また、高温切替モードが実行されかつ低温チルドモードが実行されていない場合、つまり高温切替区画24に対して高温切替モードが選択されかつチルド区画25に対して通常チルドモードが選択されている場合、制御装置40は、図7にも示すように、通常制御と高温制御とをそれぞれ一定周期で交互に繰り返して実行する。これにより、通常冷蔵区画23は3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持され、高温切替区画24は5℃~15℃の範囲内で設定された高温度帯に維持され、チルド区画25は1℃~3℃の通常チルド温度帯に維持される。
【0046】
また、高温切替モードが実行されておらずかつ低温チルドモードが実行されている場合、つまり高温切替区画24に対して通常冷蔵モードが選択されかつチルド区画25に対して低温チルドモードが選択されている場合、制御装置40は、図8にも示すように、通常制御と低温制御とを一定周期で交互に繰り返して実行する。これにより、通常冷蔵区画23及び高温切替区画24は3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持され、チルド区画25は0℃~1℃の低温チルド温度帯に維持される。
【0047】
そして、高温切替モード及び低温チルドモードの両方が実行されている場合、つまり高温切替区画24に対して高温切替モードが選択されかつチルド区画25に対して低温チルドモードが選択されている場合、制御装置40は、図9にも示すように、高温制御と低温制御とを一定周期で交互に繰り返して実行する。これにより、通常冷蔵区画23は3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持され、高温切替区画24は5℃~15℃の範囲内で設定された高温度帯に維持され、チルド区画25は0℃~1℃の低温チルド温度帯に維持される。
【0048】
ここで、各区画23、24、25の温度を下げる方向へ制御する場合、制御装置40は、圧縮機17の回転数を上げることで冷蔵用冷却器16の温度を下げ、これにより各区画23、24、25に供給する冷気の温度を下げる。これに対し、各区画23、24、25の温度を上げる方向へ制御する場合、制御装置40は、圧縮機17の回転数を下げたり停止させたりすることで冷蔵用冷却器16の温度を下げるが、この場合、冷蔵用冷却器16の温度上昇は外気等に依存する。そのため、冷蔵庫10は、各区画23、24、25の温度を下げる方向の制御について能動的な制御を行うことができるが、各区画23、24、25の温度を下げる方向の制御については比較的受動的な制御になりがちである。すなわち、一般的に冷蔵庫10は、貯蔵室11、12、13、14、15に対し、冷却する制御は比較的得意であるが、積極的に温めるような制御は比較的苦手である。
【0049】
そこで、各区画23、24、25を異なる温度帯に維持するための2つの制御を繰り返して実行する場合、制御装置40は、温度が高い方の制御の1周期における実行期間を長くし、温度が低い方の制御の1周期における実行期間を短くする。すなわち、冷蔵庫10が得意とする冷却方向の制御期間を短くし、冷蔵庫10が苦手とする冷却を抑制する又は温度を上昇させる方向への制御期間を長く確保する。これにより、各区画23、24、25を異なる温度帯に維持する場合であっても、各区画23、24、25内の温度を設定された温度帯に精度良く維持することができる。
【0050】
具体的には、高温切替区画24に対して高温切替モードが選択されかつチルド区画25に対して通常チルドモードが選択されて、図7に示すように高温制御と通常制御とが交互に実行される場合、制御装置40は、高温制御と通常制御との1周期において、温度が高い方の制御である高温制御の実行期間T2を、温度が低い方の制御である通常制御の実行期間T1よりも長く設定する。
【0051】
また、高温切替区画24に対して通常冷蔵モードが選択されかつチルド区画25に対して低温チルドモードが選択されて、図8に示すように通常制御と低温制御とが交互に実行される場合、制御装置40は、通常制御と低温制御との1周期において、温度が高い方の制御である通常制御の実行期間T4を、温度が低い方の制御である低温制御の実行期間T3よりも長く設定する。
【0052】
そして、高温切替区画24に対して高温切替モードが選択されかつチルド区画25に対して低温チルドモードが選択されて、図9に示すように高温制御と低温制御とが交互に実行される場合、制御装置40は、高温制御と低温制御との1周期において、温度が高い方の制御である高温制御の実行期間T6を、温度が低い方の制御である低温制御の実行期間T5よりも長く設定する。これらにより、各区画23、24、25の温度を精密に制御することができる。
【0053】
また、この場合、制御装置40は、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行されている場合に比べて、高温制御を高温切替区画24の温度を更に上げる方向に制御するとともに1周期における高温制御の実行期間T6を短く設定する。この場合、制御装置40は、例えば圧縮機17を停止させた状態で、高温切替モードが実行されかつ通常チルドモードが実行されている場合に比べて送風機19の風量を更に増大させる。これにより、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行されている場合に比べて、高温切替モードと低温チルドモードの両方が実行されている場合の方が高温切替区画24の温度が上昇し易くなる。
【0054】
また、この場合、図9及び図7に示すように、高温切替モードと低温チルドモードとが同時に実行された場合における高温制御の1周期当たりの実行期間T6は、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行された場合における高温制御の1周期当たりの実行期間T2よりも短く設定されている。そして、図9及び図8に示すように、高温切替モードと低温チルドモードとが同時に実行された場合における低温制御の1周期当たりの実行期間T5は、高温切替モードが実行されずに低温チルドモードが実行された場合における高温制御の1周期当たりの実行期間T3よりも短く設定されている。
【0055】
すなわち、本実施形態の場合、高温切替モードと低温チルドモードとが同時に実行された場合における高温制御と低温制御の1周期の期間T5+T6は、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行されている場合、つまり図7に示すように高温制御と通常制御とが交互に実行される場合における1周期の期間T1+T2よりも短い。また、高温切替モードと低温チルドモードとが同時に実行された場合における高温制御と低温制御の1周期の期間T5+T6は、高温切替モードが実行されずに低温チルドモードが実行されている場合、つまり図8に示すように通常制御と低温制御とが交互に実行される場合における1周期の期間T3+T4よりも短い。これにより、高温切替区画24とチルド区画25との内部の温度制御を短い間隔で交互に行うことができるため、高温切替区画24とチルド区画25との内部温度を精度良く維持することができる。
【0056】
また、本実施形態において、制御装置40は、高温切替区画24に収納された食品の保存期間を管理するための管理制御を実行可能である。この場合、例えば記録領域402は、管理制御プログラムを記録している。そして、CPU401において管理制御プログラムを実行することにより、制御装置40は、管理制御を実行する。
【0057】
制御装置40は、管理制御を実行すると、図10に示すステップS11において、収納検知部46の検知結果に基づいて、高温切替区画24に食品が収納されたか否かを判断する。例えば収納検知部46が、例えば開閉センサ等のようにシャッター36の開閉を検知するものであれば、制御装置40は、収納検知部46がシャッター36の開閉を検知した場合に、高温切替区画24に食品が収納されたと判断する。
【0058】
また、収納検知部46は、例えば図11に示すように、カメラ等の2次元情報を取得する装置やToF(Time of Flight)センサ等の3次元情報を取得する装置等で構成することができる。収納検知部46をカメラやToFセンサで構成した場合、収納検知部46は、高温切替区画24の極力全体を撮像範囲とすることが望ましい。この場合、制御装置40は、収納検知部46で撮影した画像又は映像を画像処理し、その画像処理の結果に基づいて高温切替区画24に食品が収納されたこと及び高温切替区画24から食品が取り出されたことを判断する。
【0059】
また、収納検知部46は、例えば光電センサやレーザセンサ等のように光又はレーザの反射又は遮断によって物体の存在を検出するもので構成することができる。この場合、収納検知部46は、例えば天井部113に設けて光軸が垂直方向へ向くように配置したり、例えば左右の壁面に設けて光軸が左右水平方向へ向くように配置したりできる。この場合、制御装置40は、収納検知部46から出力される光やレーザが反射していない又は遮られていない状態から反射した又は遮られた状態に変化した場合に、高温切替区画24に食品が収納されたと判断する。また、制御装置40は、収納検知部46から出力される光やレーザが反射している又は遮られている状態から反射していない又は遮られていない状態に変化した場合に、高温切替区画24から食品等が取り出されたと判断する。
【0060】
この場合、収納検知部46は少なくとも1つ設けられていれば良いが、例えば図12に示すように高温切替区画24の奥行方向に沿って複数個配置しても良い。これによれば、収納検知部46の死角を減らすことができ、制御装置40は、高温切替区画24の広い範囲について食品等の出し入れを検出することができる。
【0061】
更に、収納検知部46は、例えば図13に示すように重量計であっても良い。この場合、制御装置40は、収納検知部46で計測される重量が増加した場合に高温切替区画24に食品が収納されていると判断する。また、制御装置40は、収納検知部46で計測される重量が減少した場合に高温切替区画24から食品が取り出されたと判断する。
【0062】
制御装置40は、高温切替区画24に対する食品の収納が検知されない場合(ステップS11)、ステップS11を繰り返す。そして、高温切替区画24に対する食品の収納が検知されると(ステップS11でYES)、制御装置40は、ステップS12へ処理を移行する。制御装置40は、ステップS12において、収納報知処理を実行する。収納報知処理は、ユーザに対して、高温切替区画24に食品が収納された旨を報知する処理である。制御装置40は、収納報知処理の実行により、例えば操作パネル41から音声を発したり表示したりして、ユーザに対して高温切替区画24に食品が収納された旨を報知する。
【0063】
次に、制御装置40は、ステップS13に処理を移行させ、高温切替区画24に対する食品の収納を検知してから所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間は、例えば食品に合わせてユーザが任意に設定することができ、例えば数時間から数日間程度の期間である。
【0064】
高温切替区画24に対する食品の収納が検知されてから所定時間が経過していない場合(ステップS13でNO)、制御装置40は、所定期間が経過するまでステップS13を繰り返す。そして、高温切替区画24に対する食品の収納が検知されてから所定時間が経過すると(ステップS13でYES)、制御装置40は、ステップS14へ処理を移行させ、注意報知処理を実行する。
【0065】
注意報知処理は、ユーザに対して、高温切替区画24に食品が収納されてから、その食品が高温切替区画24から取り出されずに所定時間経過した旨を報知する処理である。制御装置40は、注意報知処理の実行により、例えば操作パネル41から音声を発したり表示したりして、ユーザに対して高温切替区画24に食品が収納されてから所定期間が経過した旨を報知する。
【0066】
この場合、ステップS12の収納報知処理及びステップS14の注意報知処理は、例えば通信部42を介してユーザの情報端末93に高温切替区画24に食品が収納された旨、及び食品が収納されてから所定期間が経過した旨を表示等させても良い。この場合、報知態様としては、次のようにしても良い。すなわち、例えばユーザの情報端末93にカレンダーを表示させるとともに、そのカレンダーに食品を入れた日にちと、その食品を取り出すべき日にちとを表示させても良い。また、食品を入れた日にちと、その食品を取り出すべき日にち例えばユーザの情報端末93に時系列に並べて表示しても良い。
【0067】
以上説明した実施形態によれば、冷蔵庫は、冷蔵温度帯に維持可能な貯蔵室である冷蔵室11と、冷蔵室11に対する冷気の供給を制御する制御装置40と、を備えている。冷蔵室11は、高温切替区画24を有している。高温切替区画24は、当該冷蔵室11内の一部又は全部に設けられており、冷蔵温度帯と、冷蔵温度帯よりも高い高温度帯とに切り替え可能に構成されている。そして、制御装置40は、高温切替区画24に対して、通常制御と高温制御とを切り替えて実行可能である。通常制御は、高温切替区画24に冷気を供給して高温切替区画24を冷蔵温度帯に維持する制御である。高温制御は、高温切替区画24に対して通常制御の実行時に比べて冷気の供給を低減又は停止する若しくは通常制御で供給される冷気よりも高温の空気を供給して高温切替区画24を前記高温度帯に維持する制御である。
【0068】
これによれば、冷蔵庫10は、高温切替区画24を冷蔵温度帯の区画と高温度帯の区画とに切り替えることができる。これにより、普段は高温切替区画24を冷蔵温度帯の区画として使用しつつ、必要に応じて高温切替区画24を高温度帯の区画に切り替えることができる。そして、ユーザは、高温度帯に切り替えられた高温切替区画24に例えばごはんやパン等の調理済みの食品を保管することで、食品の食味の劣化を抑制して美味しい状態で保存することができる。
【0069】
また、高温切替区画24は冷蔵室11内の一部に設けられている。冷蔵室11は、通常冷蔵区画23を更に有している。この通常冷蔵区画23は、冷蔵室11内において高温切替区画とは異なる区画に設けられ冷蔵温度帯に維持される区画である。そして、制御装置40は、通常冷蔵モードと高温切替モードとを切り替えて実行可能である。通常冷蔵モードは、通常制御の実行により高温切替区画24及び通常冷蔵区画23を冷蔵温度帯に維持するモードである。高温切替モードは、高温制御の実行により高温切替区画24を高温度帯に維持するとともに通常冷蔵区画23を冷蔵温度帯に維持するモードである。
【0070】
これによれば、通常冷蔵モードが実行されている場合には、通常冷蔵区画23と高温切替区画24とを冷蔵温度帯の貯蔵区画として利用することができる。また、高温切替モードが実行されているばあいには、通常冷蔵区画23を冷蔵温度帯の貯蔵区画として使用しつつ、高温切替区画24を高温度帯の貯蔵区画として利用することができる。そのため、高温切替モードが実行された場合には、冷蔵温度帯での保存に適した冷蔵品と、高温度帯での保存に適した例えば調理済みの食品とを、冷蔵室11内に同時に保存することができる。その結果、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0071】
また、冷蔵室11は、チルド区画25を更に有している。チルド区画25は、冷蔵室11内において高温切替区画24及び通常冷蔵区画23とは異なる区画に設けられており、冷蔵温度帯よりも低いチルド温度帯に維持される区画である。また、通常制御は、チルド区画25に冷気を供給することでチルド区画25を通常チルド温度に維持する制御を含んでいる。そして、制御装置40は、低温制御を更に実行可能であるとともに、低温チルドモードを更に実行可能である。
【0072】
低温制御は、チルド区画25に対して通常制御の実行時に比べて冷気の供給を増大させ又は通常制御で供給される冷気よりも低温の冷気を供給してチルド区画25を通常チルド温度帯よりも更に低い低温チルド温度帯に維持する制御である。そして、低温チルドモードは、低温制御の実行によりチルド区画25を低温チルド温度帯に維持するとともに通常冷蔵区画23を冷蔵温度帯に維持するモードである。
【0073】
これによれば、冷蔵庫10は、冷蔵室11内に、冷蔵温度帯よりも低いチルド温度帯に維持されるチルド区画25を有している。そして、冷蔵庫10は、低温チルドモードを実行することで、チルド区画25を、通常チルド温度帯よりも更に低い低温チルド温度帯に維持することができる。このため、本実施形態によれば、冷蔵室11内に多数の温度帯の区画が設けられているため、貯蔵物に適した温度帯で保存することができる。
【0074】
制御装置40は、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行さている場合には、低温制御を実行せずに高温制御を実行する。これによれば、高温切替モードのみが実行されている場合には、制御装置40は、低温制御を実行することなく高温制御を実行することにより、低温制御により高温切替区画24が冷却されてしまうことを防ぐことができる。その結果、高温切替区画24を高い精度で高温度帯に維持することができる。
【0075】
制御装置40は、高温切替モードが実行されずに低温チルドモードが実行さている場合には、高温制御を実行せずに低温制御を実行する。これによれば、低温チルドモードのみが実行されている場合には、制御装置40は、高温制御を実行することなく低温制御を実行することにより、高温制御によりチルド区画25が温められてしまうことを防ぐことができる。その結果、チルド区画25内を高い精度で低温チルド温度帯に維持することができる。
【0076】
また、制御装置40は、高温切替モードと低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、高温制御と低温制御とを所定の周期で交互に実行する。これによれば、通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25との間を断熱性を有する部材で仕切ることなく、通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25とをそれぞれ異なった温度帯に維持することができる。これにより、簡易な構成でかつ低コストで通常冷蔵区画23と高温切替区画24とチルド区画25とを実現することができる。
【0077】
ここで、上述したように、冷蔵庫10は、冷凍サイクルの性質上、高温制御と低温制御とでは低温制御の方が得意である。つまり、高温制御と低温制御とを比較した場合、高温制御よりも低温制御の方が、より短期間で目標とする温度に収束する。そこで、制御装置40は、高温切替モードと低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、高温制御と低温制御とをそれぞれ異なる所定の周期で交互に実行するとともに、1周期における高温制御の実行期間を低温制御よりも長くする。
【0078】
これによれば、高温切替モードと低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、冷蔵庫10がより苦手とする高温制御の1サイクル当たりの実行期間を、低温制御の実行期間よりも長くすることで、高温制御による高温切替区画24の温度制御をより精密に行うことができる。
【0079】
また、制御装置40は、高温切替モードと低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、高温制御と低温制御とをそれぞれ異なる所定の周期で交互に実行するとともに、高温切替モードが実行されずに低温チルドモードが実行されている場合に比べて、低温制御をチルド区画25の温度を更に下げる方向に制御しかつ1周期における低温制御の実行期間を高温制御よりも短くする。これによれば、低温制御と高温制御とを短期間のうちに交互に繰り返して実行することができる。このため、高温切替区画24を高温度帯に維持しつつチルド区画25を低温チルド温度に維持する場合に、両者ともに高い精度で温度制御を行うことができる。
【0080】
また、制御装置40は、高温切替モードと低温チルドモードとの両方が実行されている場合には、高温制御と低温制御とをそれぞれ異なる所定の周期で交互に実行するとともに、低温チルドモードが実行されずに高温切替モードが実行されている場合に比べて、高温制御を高温切替区画24の温度を更に上げる方向に制御しかつ1周期における高温制御の実行期間を低温制御よりも短くする。これによっても、低温制御と高温制御とを短期間のうちに交互に繰り返して実行することができる。このため、高温切替区画24を高温度帯に維持しつつチルド区画25を低温チルド温度に維持する場合に、両者ともに高い精度で温度制御を行うことができる。
【0081】
また、冷蔵庫10は、冷蔵室11内へ冷気を供給するための送風機19を更に備えている。そして、制御装置40は、送風機19の駆動を制御可能であって、高温切替モードが実行されている場合には高温切替モードが実行されていない場合に比べて送風機19の送風量を増大させる制御を実行する。この場合、圧縮機17は、通常冷蔵モード時に比べて回転数が低減されているか又は停止していることが好ましい。これによれば、例えば高温切替区画24を温めるためのヒータ等を用いることなく、通常冷蔵モード時に供給される冷気よりも暖かい空気を高温切替区画24に供給することができるため、高温切替区画24内を容易に高温度帯に維持することができる。
【0082】
また、制御装置40は、低温チルドモードが実行されている場合には低温チルドモードが実行されていない場合に比べて送風機19の送風量を減少させる制御を実行する。この場合、圧縮機17は、通常冷蔵モード時に比べて回転数が増大していることが好ましい。これによれば、通常チルドモード時に供給される冷気よりも更に冷たい冷気をチルド区画25に供給することができるため、チルド区画25内を容易に低温チルド温度帯に維持することができる。
【0083】
なお、高温切替区画24の位置は、上述した実施形態の構成に限らない。例えば、高温切替区画24は、冷蔵室11の中段位置、つまり上記実施形態の通常冷蔵区画23の位置に設けられていても良い。また、高温切替区画24は、冷蔵室11の下段位置、つまり上記実施形態のチルド区画25の位置に設けられていても良い。
【0084】
(変形例)
上記実施形態の変形例について、図14及び図15を参照して説明する。この変形例は、冷蔵室の全部の区画を高温切替区画に設定した例である。図14に示す冷蔵庫50は、いわゆる1ドアの冷蔵庫であり、上記実施形態の断熱箱体20に換えて、断熱箱体60を備えている。断熱箱体60は、前面が開口した箱体で構成されており、箱体を構成する各壁部内に発泡ウレタンや真空断熱パネル等の高い断熱性を有する部材が設けられて構成されている。断熱箱体60は、貯蔵物を貯蔵するための貯蔵室として冷蔵室51を有している。そして、冷蔵庫50は、複数の棚板37を備えている。各棚板37は、上記実施形態の棚板31、32、33、34と同様に、冷蔵室51内を上下方向に仕切っている。
【0085】
本実施形態の場合、冷蔵室51全体が高温切替区画に設定されている。そのため、本実施形態の冷蔵庫50は、図15に示すように、冷蔵室51内の温度を冷蔵温度帯と高温度帯とに切り替えることができる。この場合、通常冷蔵モードが実行されると、制御装置40は、図6に示すように通常制御のみを一定期間継続して実行する。これにより、冷蔵室51内全体は、3℃~5℃の冷蔵温度帯に維持される。また、高温切替モードが実行されると、図6に示すように高温制御と通常制御とを一定周期で交互に実行する。これにより、冷蔵室51内全体は、5℃~15℃の範囲内で設定された高温度帯に維持される。この変形例によっても、上記した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0086】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
10…冷蔵庫、11…冷蔵室(貯蔵室)、19…送風機、23…通常冷蔵区画、24…高温切替区画、24…チルド区画、40…制御装置、50…冷蔵庫、51…冷蔵室(貯蔵室、高温切替区画)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15