(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】バックグラインドテープ用の基体フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240404BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240404BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B7/022
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2020050841
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末藤 壮一
(72)【発明者】
【氏名】田中 唯純
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-225675(JP,A)
【文献】特開平06-190996(JP,A)
【文献】特開2006-007423(JP,A)
【文献】特開2005-336428(JP,A)
【文献】特開2015-119106(JP,A)
【文献】特開2009-224375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 21/304;21/463
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラインドテープ用の基体フィルムであって、
A層及びB層を少なくとも有し、
前記A層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
前記B層は、軟質ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からな
り、
前記基体フィルムの23℃におけるヤング率は、150MPa以上、1500MPa以下であり、
前記軟質ポリエステル系樹脂は、ポリエステル単位とポリエステルポリオール単位を有する、バックグラインドテープ用の基体フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が、50℃以上、100℃以下であり、
前記軟質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が、10℃以上、40℃以下である、請求項1に記載のバックグラインドテープ用の基体フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの裏面研削(以下、「バックグラインド」という)する際に、その半導体ウェハを固定する際に用いるバックグラインドテープ用の基体フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを生産する際、半導体ウェハを固定する為に固定用フィルム(粘着テープ)が用いられる。この固定用フィルムは使用後に、半導体ウェハから剥離される。
【0003】
固定用フィルムを用いて半導体ウェハを固定する工程として、半導体ウェハの裏面を研削するバックグラインド工程、半導体ウェハをチップ状に切断分離するダイシング工程等が有る。バックグラインド工程では、半導体ウェハを所望の厚さに調整(薄化)する。この際、半導体ウェハにパターニングされた面を保護する目的で、半導体ウェハのパターン形成面に、バックグラインドフィルムが貼り付けられる。バックグラインドフィルムは、基体フィルム層及び粘着剤層から構成され、半導体ウェハは、その粘着剤層を介して接着される。
【0004】
特許文献1は、出願人の技術であり、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じ難く、寸法安定性に優れており、また、基体フィルム巻き取り時におけるブロッキングを効果的に抑制することができるバックグラインド用基体フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新たなバックグラインドテープ用の基体フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半導体ウェハのバックグラインド工程で使用されるバックグラインドテープ用の基体フィルムを包含する。
【0008】
項1.
バックグラインドテープ用の基体フィルムであって、
A層及びB層を少なくとも有し、
A層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
B層は、軟質ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなる、
バックグラインドテープ用の基体フィルム。
【0009】
項2.
前記軟質ポリエステル系樹脂が、ポリエステル単位とポリエステルポリオール単位を有する、前記項1に記載のバックグラインドテープ用の基体フィルム。
【0010】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0011】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じないという効果を発揮する。
【0012】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、表面保護テープ(バックグラインド用粘着テープ)を剥離する際に剥離性が優れるという効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、適度な硬さを有する新たなバックグラインドテープ用の基体フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、半導体ウェハのバックグラインド工程で使用されるバックグラインドテープ用の基体フィルムを包含する。
【0015】
(1)バックグラインドテープ用の基体フィルム
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、
A層及びB層を少なくとも有し、
A層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
B層は、軟質ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
【0016】
(1-1)基体フィルムのA層
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムのA層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
【0017】
ポリエステル系樹脂
前記ポリエステル系樹脂として、好ましくは、例えば、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られるものを用いる。
【0018】
前記ジカルボン酸として、特に限定されず、好ましくは、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等を用いる。
【0019】
前記ジオールとして、特に限定されず、好ましくは、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;
2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等を用いる。
【0020】
前記ポリエステル系樹脂として、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、且つ、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するものが好ましい。この様なポリエステル系樹脂を用いることにより、耐熱性を付与することができる。
【0021】
軟質ポリエステル系樹脂と積層構成にする場合に、生産性及び成形性をより高めたい場合に用いる前記ポリエステル系樹脂のジカルボン酸としては、ジカルボン酸成分の含有量を100モル%として、テレフタル酸に由来する成分の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は65モル%であり、好ましい上限は100モル%、より好ましい上限は95モル%である。また、テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分の好ましい下限は0モル%、より好ましい下限は5モル%、好ましい上限は40モル%であり、より好ましい上限は35モル%である。
【0022】
軟質ポリエステル系樹脂と積層構成にする場合に、生産性及び成形性をより高めたい場合に用いる上記ポリエステル系樹脂のジオール成分としては、ジオール成分の含有量を100モル%として、エチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が50モル%、より好ましい下限が60モル%、好ましい上限が100モル%、より好ましい上限が80モル%である。また、エチレングリコールに由来する成分以外のジオール成分の含有量の好ましい下限が0モル%、より好ましい下限が20モル%、好ましい上限が50モル%、より好ましい上限が40モル%である。
【0023】
ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸に由来する成分以外の成分は、1種又は複数の成分を用いることができる。また、ジオール成分におけるエチレングリコールに由来する成分以外の成分についても、1種又は複数の成分を用いることができる。
【0024】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)
本発明のポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、50℃~100℃であり、より好ましくは、60℃~90℃である。異なるガラス転移温度を有するポリエステルをブレンドして、ガラス転移温度を調整することもできる。
【0025】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により、ISO3146:2000に準拠した方法で測定することができる。
【0026】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、A層が上記ガラス転移温度(Tg)を有することで、適度な硬さを有し、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0027】
本発明の基体フィルムでは、A層に含まれるポリエステル系樹脂として、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いても良く、前述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用しても良い。
【0028】
本発明の基体フィルムは、後述する通り、A層とB層が隣接する構成を有し、好ましくは、具体例として、A層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成、B層/A層/B層の3層構成等である。
【0029】
前記ポリエステル系樹脂は、A層が表面層と裏面層とを形成する時、表面層と裏面層とで、同一の組成としても良く、異なる組成のものとしても良い。前記ポリエステル系樹脂は、A層が表面層と裏面層とを形成する時、フィルムのカール等によるトラブルを良好に抑制する点で、表面層と裏面層とで、より好ましくは、同一の組成とする。
【0030】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、A層が上記構成を採ることで、適度な硬さを有し、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0031】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、適度な硬さを有することで、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じないという効果や、表面保護テープ(バックグラインド用粘着テープ)を剥離する際に剥離性が優れるという効果を発揮する。
【0032】
(1-2)基体フィルムのB層
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムのB層は、軟質ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
【0033】
軟質ポリエステル系樹脂
前記軟質ポリエステル系樹脂は、好ましくは、テレフタル酸に由来する成分を70モル%以上含有するジカルボン酸単位(a1)とエチレングリコールに由来する成分を70モル%以上含有するジオール単位(a2)とからなるポリエステル単位(A)50質量%~93質量%と、水添ダイマー酸に由来する成分(b1)と、1,4-ブタンジオールに由来する成分(b2)とからなるポリエステルポリオール単位(B)7質量%~50質量%とを構成単位として含むことを特徴とするものである。
【0034】
前記ポリエステルポリオール単位(B)の、全ポリマー中に占める含有量は、好ましくは7質量%~50質量%であり、より好ましくは15質量%~35質量%である。更に、ポリエステルポリオール単位(B)が高分子鎖中にランダムに結合された軟質ポリエステル系樹脂が得られるため、外観が無色透明あるいは淡黄色透明となる。
【0035】
軟質ポリエステル系樹脂のポリエステル単位(A)
本発明で好ましく使用するポリエステル単位(A)において、ジカルボン酸単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分を70モル%以上含有するものである。ジカルボン酸単位の全量がテレフタル酸に由来する成分であっても良い。
【0036】
テレフタル酸に由来する成分以外のジカルボン酸成分は、30モル%未満の範囲で含有していても良い。好ましくは、例えば、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,12-ドデカン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を使用し、これら成分を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0037】
本発明で好ましく使用するポリエステル単位(A)において、ジオール単位(a2)は、エチレングリコールに由来する成分を70モル%以上含有するものである。ジオール単位の全量がエチレングリコールに由来する成分であっても良い。エチレングリコールに由来する成分が70モル%未満であると、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とブレンドしてフィルムに用いる場合に、相溶性が乏しくなる場合がある。
【0038】
エチレングリコールに由来する成分以外のジオール成分は30モル%未満の範囲で含有していても良い。好ましくは、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロへキサンジメタノール等を使用し、これらを単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0039】
軟質ポリエステル系樹脂のポリエステルポリオール単位(B)
本発明で好ましく使用するポリエステルポリオール単位(B)は、ジカルボン酸単位が水添ダイマー酸に由来する成分(b1)からなるものである。ダイマー酸とは、オレイン酸やリノール酸といった炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られた炭素数36のジカルボン酸化合物である。二量化後に残存する不飽和二重結合が水素添加によって飽和化されたダイマー酸が水添ダイマー酸であり、ポリエステルポリオール単位(B)のジカルボン酸単位は、この水添ダイマー酸に由来する成分(b1)からなる。
【0040】
通常、水添ダイマー酸は、直鎖分岐構造化合物、脂環構造等を持つ化合物の混合物として得られ、その製造工程によりこれらの含有率は異なるものの、本発明においてこれらの含有率は特に限定されない。
【0041】
本発明で好ましく使用するポリエステルポリオール単位(B)のジオール単位は、1,4-ブタンジオールに由来する成分(b2)からなる。ポリエステルポリオール単位(B)の末端は、いずれも1,4-ブタンジオールに由来する成分(b2)に由来する水酸基である。
【0042】
ポリエステルポリオール単位(B)は、水添ダイマー酸に由来する成分(b1)と、1,4-ブタンジオールに由来する成分(b2)とを、公知の方法でエステル化反応させることによって得ることができるものの、末端が水酸基となるように反応時のモル比を夫々調整されている。
【0043】
軟質ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)
固有粘度(IV)(極限粘度)は、ポリエステルの粘度として使用される特性の一つであり、ポリエステルの分子量に比例する。
【0044】
本発明の軟質ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は、好ましくは、0.6 dl/g~1.2 dl/gであり、より好ましくは、0.65 dl/g~0.9 dl/gであり、更に好ましくは、0.7 dl/g~0.8 dl/gである。異なる固有粘度を有するポリエステルをブレンドして、固有粘度を調整することもできる。本発明では、例えば、固有粘度(IV)が0.75 dl/gである軟質ポリエステル系樹脂を好ましく用いる。
【0045】
軟質ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は、例えば、o-クロロフェノール中で、温度35℃の条件で測定することができる。
【0046】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、B層が上記固有粘度(IV)を有することで、適度な硬さを有し、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0047】
軟質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)
本発明の軟質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、10℃~40℃であり、より好ましくは、15℃~30℃である。異なるガラス転移温度を有するポリエステルをブレンドして、ガラス転移温度を調整することもできる。
【0048】
軟質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により、ISO3146:2000に準拠した方法で測定することができる。
【0049】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、B層が上記ガラス転移温度(Tg)を有することで、適度な硬さを有し、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0050】
本発明の軟質ポリエステル系樹脂は、必要に応じて熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していても良い。
【0051】
本発明の基体フィルムでは、B層に含まれる軟質ポリエステル系樹脂として、上述した組成を有する軟質ポリエステル系樹脂を単独で用いても良く、前述した組成を有する2種以上の軟質ポリエステル系樹脂を併用しても良い。
【0052】
本発明の基体フィルムは、後述する通り、A層とB層が隣接する構成を有し、好ましくは、具体例として、A層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成、B層/A層/B層の3層構成等である。
【0053】
前記軟質ポリエステル系樹脂は、B層が表面層と裏面層とを形成する時、表面層と裏面層とで、同一の組成としても良く、異なる組成のものとしても良い。前記軟質ポリエステル系樹脂は、B層が表面層と裏面層とを形成する時、フィルムのカール等によるトラブルを良好に抑制する点で、表面層と裏面層とで、より好ましくは、同一の組成とする。
【0054】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、B層が上記構成を採ることで、適度な硬さを有し、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0055】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、適度な硬さを有することで、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じないという効果や、表面保護テープ(バックグラインド用粘着テープ)を剥離する際に剥離性が優れるという効果を発揮する。
【0056】
(1-3)基体フィルムのヤング率
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、バックグラインド工程において、半導体ウェハを固定する時に用いる基体フィルムであり、この用途で好ましい物性を示す。
【0057】
本発明の基体フィルムは、23℃におけるヤング率は、150MPa~1,500MPaである。
【0058】
本発明の基体フィルムは、前記特定の範囲のヤング率を有することから、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)においても、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして、バックグラインド工程後の半導体ウェハの反りを良好に抑制することができる。
【0059】
ヤング率は、ISO527-1:2012に準拠し、例えば東洋精機製作所製引張試験機「ストログラフVE10」を用いて、サンプル幅25mm、標線間距離250mm(短冊試験片)、引張速度10mm/分の条件で測定する。
【0060】
(1-4)基体フィルムの層構成
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、A層及びB層を少なくとも有する。
【0061】
本発明の基体フィルムは、A層とB層が隣接する構成を有する。具体的には、A層/B層の2層構成、A層/B層/A層、又はB層/A層/B層の3層構成等を例示することができる。
【0062】
本発明の基体フィルムは、少なくとも、A層又はB層のいずれの側でも、研削(バックグラインド)時のチャックテーブル側又はウェハ側としても良い。
【0063】
本発明の基体フィルムの厚みは、好ましくは60μm~250μm程度であり、より好ましくは80μm~200μm程度であり、更に好ましくは90μm~150μm程度である。バックグラインドテープ用の基体フィルムの厚さを調整することにより、半導体ウェハを衝撃から保護することが可能となる。
【0064】
ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなるA層の厚さは、好ましくは、5μm~100μm程度であり、より好ましくは、10μm~50μm程度である。
【0065】
軟質ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物からなるB層の厚さは、好ましくは、10μm~100μm程度であり、より好ましくは、20μm~80μm程度である。
【0066】
(2)バックグラインドテープ用の基体フィルムの製造方法
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、多層構造であり、Tダイス又は環状ダイスを使用した押出法やカレンダー法等により、成形することができる。基体フィルムの厚み精度を考慮すると、Tダイスを使用した押出法が好ましい。
【0067】
Tダイスを使用した押出法について説明する。
【0068】
樹脂組成物を、ドライブレンドするか、又は溶融混練し調製することが好ましい。層を構成する樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を加えることができる。
【0069】
樹脂組成物を、温度調整したスクリュー式押出機に供給し、180~350℃のTダイスからフィルム状に押出し、これを20~150℃程度(好ましくは30~70℃程度)の冷却ロールに通しながら冷却して、実質的に無延伸で引き取ることが好ましい(押出成形)。
【0070】
基体フィルムは、バックグラインドテープ用の基体フィルムとして用いる時、引き取りの際に、実質的に無延伸とすることで、バックグラインド工程において、延伸したことによるフィルムの収縮を抑制することができる。この実質的に無延伸は、無延伸、或いは、バックグラインド時のウェハの反りに影響を与えない程度の僅少の延伸を含む。通常、フィルム引き取りの際に、たるみの生じない程度の引っ張りであればよい。
【0071】
(3)バックグラインドテープ
本発明の基体フィルムは、半導体ウェハを固定する時に用いる基体フィルムであり、バックグラインドテープ用の基体フィルムとして用いることが好ましい。このバックグラインドテープ用の基体フィルムの表面に、粘着剤層及び離型フィルムを形成することで、バックグラインドテープを作製することができる。
【0072】
本発明のバックグラインドテープ(フィルム)は、前記バックグラインドテープ用の基体フィルムのウェハ側の面に粘着剤層及び離型フィルムを有する、ことが好ましい。
【0073】
バックグラインドテープ用の基体フィルムの片方の表面上に、公知の粘着剤をコートして粘着剤層が形成される。粘着剤層の厚さは、好ましくは10μm~200μm程度である。
【0074】
粘着剤として、感圧性粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることが好ましい。半導体ウェハヘの接着性、剥離後の半導体ウェハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等を考慮すると、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0075】
バックグラインドテープ用の基体フィルムの表面上に粘着剤層が形成され、更にその上に離型フィルムが設けられて、バックグラインドテープが製造される。離型フィルムの厚さは、好ましくは10μm~200μm程度である。
【0076】
バックグラインドテープは、本発明の基体フィルムを含むことで、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドフィルムとして好ましく使用することができる。バックグラインドテープは、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じないという効果を発揮する。バックグラインドテープは、表面保護テープ(バックグラインド用粘着テープ)を剥離する際に剥離性が優れるという効果を発揮する。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0078】
本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
(1)バックグラインドテープ用の基体フィルムの原料
Pes-1 ポリエステル系樹脂
テレフタル酸100モル%、
エチレングリコール70モル%+1,4-シクロヘキサンジメタノール30モル%
ガラス転移温度(Tg) 80℃
Pes-S 軟質ポリエステル系樹脂
固有粘度(IV) 0.75dl/g
ガラス転移温度(Tg) 20℃
(2)バックグラインドテープ用の基体フィルムの製造
表1に記載の層構成(3層)となるように、各成分及び組成で樹脂組成物を配合し、バックグラインドテープ用の基体フィルムを作製した。各層を構成する樹脂組成物を、220℃に調整された夫々の押出機に投入し3層の順序になるように、220℃のTダイスにより押出し、積層し、30℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の5層フィルムを得た。
【0080】
(3)バックグラインドテープ用の基体フィルムの評価
基体フィルムのヤング率は、ISO527-1:2012に準拠し、長さ400mm×幅25mm、標線間距離250mm(短冊試験片)の大きさのサンプルにカットし、試験片を準備し、東洋精機製作所社製ストログラフVE-10を用いて、引張速度10mm/分で測定した。尚、ヤング率は、各実施例及び比較例につき、MD方向及びTD方向共に7つの試験片(n=7)を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0081】
【0082】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、適度な硬さを有することで、半導体ウェハの超薄型化(25μm程度)に関して、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で使用するバックグラインドテープとして好ましく使用することができる。
【0083】
本発明のバックグラインドテープ用の基体フィルムは、適度な硬さを有することで、バックグラインドテープとして、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、半導体ウェハに反りが生じないという効果や、表面保護テープ(バックグラインド用粘着テープ)を剥離する際に剥離性が優れるという効果を発揮する。