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  • 特許-化粧料添加剤およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】化粧料添加剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20240404BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240404BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240404BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240404BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61K8/26
A61K8/58
A61K8/891
A61Q1/00
A61Q1/12
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020052813
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151961
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひとみ
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172648(JP,A)
【文献】国際公開第2009/087961(WO,A1)
【文献】特開2007-016111(JP,A)
【文献】特開2008-266283(JP,A)
【文献】特開2011-132155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0253987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/26
A61K 8/58
A61K 8/891
A61Q 1/00
A61Q 1/12
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケート粒子と、
前記アルミノシリケート粒子の表面を被覆する撥水被膜とを含み、
前記撥水被膜は、
シリカ系マトリクスと、
前記シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置し、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示されるシロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオイルと
を含み、
前記シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルであり、
前記シリカ系マトリクスは、シリカ系化合物の硬化物からなり、
前記シリカ系化合物が、4官能オルガノシランのオリゴマーであり、
前記4官能オルガノシランが、テトラメトキシシランである
ことを特徴とする、化粧料添加剤。
【請求項2】
前記シリカ系マトリクスは、
シリカ系化合物の硬化物と、
シロキサンユニット、および、RO基(Rは、1価の飽和炭化水素基を示す。)を含有するRO基含有シロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオリゴマーと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧料添加剤。
【請求項3】
アルミノシリケート粒子と、加水分解性のシリカ系化合物と、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示されるシロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオイルとを混合する工程と、
前記シリカ系化合物を加水分解することにより、シリカ系マトリクスと、前記シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置する前記シリコーンオイルとを含む撥水被膜を、前記アルミノシリケート粒子の表面に形成する工程と
を備え、
前記シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルであり、
前記シリカ系マトリクスは、シリカ系化合物の硬化物からなり、
前記シリカ系化合物が、4官能オルガノシランのオリゴマーであり、
前記4官能オルガノシランが、テトラメトキシシランであることを特徴とする、化粧料添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料添加剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料添加剤を化粧料基剤に添加して、化粧料組成物を調製することが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、アルミナ-シリカ系粒子と、これを被覆するシリコーン硬化物とを含む化粧料添加剤が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-172648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、化粧料添加剤には、環境への負荷を軽減することが求められる。しかし、特許文献1に記載の化粧料添加剤は、シリコーン硬化物を含んでおり、かかるシリコーン硬化物は、化粧料添加剤中に安定的に長期間残存する。そのため、上記した要求を満足できない場合がある。
【0006】
また、化粧料添加剤には、皮膚に塗られた後、皮膚の表面に沿って伸び広がる優れた伸展性が求められる。
【0007】
本発明は、環境への負荷を軽減できながら、伸展性に優れる化粧料添加剤およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、アルミノシリケート粒子と、前記アルミノシリケート粒子の表面を被覆する撥水被膜とを含み、前記撥水被膜は、シリカ系マトリクスと、前記シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置し、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示されるシロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオイルとを含む、化粧料添加剤を含む。
【0009】
本発明(2)は、前記シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルである、(1)に記載の化粧料添加剤を含む。
【0010】
本発明(3)は、前記シリカ系マトリクスは、シリカ系化合物の硬化物からなる、(1)または(2)に記載の化粧料添加剤を含む。
【0011】
本発明(4)は、前記シリカ系マトリクスは、シリカ系化合物の硬化物と、シロキサンユニット、および、RO基(Rは、1価の飽和炭化水素基を示す。)を含有するRO基含有シロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオリゴマーとを含む、(1)または(2)に記載の化粧料添加剤を含む。
【0012】
本発明(5)は、前記シリカ系化合物が、4官能オルガノシランのオリゴマーである、請求項(3)または(4)に記載の化粧料添加剤を含む。
【0013】
本発明(6)は、前記4官能オルガノシランが、テトラメトキシシランである、請求項(5)に記載の化粧料添加剤を含む。
【0014】
本発明(7)は、アルミノシリケート粒子と、加水分解性のシリカ系化合物と、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示されるシロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオイルとを混合し、前記シリカ系化合物を加水分解することにより、シリカ系マトリクスと、前記シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置する前記シリコーンオイルとを含む撥水被膜を、前記アルミノシリケート粒子の表面に形成することにより得られる、化粧料添加剤を含む。
【0015】
本発明(8)は、アルミノシリケート粒子と、加水分解性のシリカ系化合物と、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示されるシロキサンユニットを含有し、25℃で液状のシリコーンオイルとを混合する工程と、前記シリカ系化合物を加水分解することにより、シリカ系マトリクスと、前記シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置する前記シリコーンオイルとを含む撥水被膜を、前記アルミノシリケート粒子の表面に形成する工程とを備える、化粧料添加剤の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により得られる本発明の化粧料添加剤を化粧料基剤に添加すれば、環境への負荷を軽減できながら、伸展性に優れる化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例3の化粧料添加剤のSEM写真の画像処理図である。
図2図2は、実施例10の化粧料添加剤のSEM写真の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の化粧料添加剤>
本発明の化粧料添加剤の一例としての第1の化粧料添加剤を説明する。
【0019】
第1の化粧料添加剤は、アルミノシリケート粒子と、撥水被膜とを含む。
【0020】
アルミノシリケート粒子は、中実である。詳しくは、アルミノシリケート粒子は、多孔質ではなく、つまり、表面に連通する孔を有さず、さらには、内部においても独立する気泡(中空)などを有さない。すなわち、アルミノシリケート粒子は、中身がアルミノシリケートで詰まった粒子である。
【0021】
アルミノシリケートは、アルミノケイ酸塩であって、ケイ酸塩(または二酸化ケイ素)においてケイ素の一部がアルミニウムにより置換されて(他の陽イオン成分の置換または陽イオン成分の導入を伴う)生ずる塩である。
【0022】
アルミノシリケートにおいて、Alのモル数に対するSiOのモル数の比は、例えば、0.5以上、好ましくは、1超過であり、また、例えば、3以下、好ましくは、2以下である。Alのモル数に対するSiOのモル数の比は、蛍光X線分析法により測定される。
【0023】
アルミノシリケート粒子の形状は、例えば、略立方体形状(図1参照)、略板状、略球状、略針状などが挙げられる。好ましくは、略立方体形状、略球形状が挙げられ、より好ましくは、略立方体形状が挙げられる。アルミノシリケート粒子が略立方体形状であれば、第1の化粧料添加剤の形状を略立方体形状に容易にできる。
【0024】
撥水被膜は、アルミノシリケート粒子の表面を被覆する。
【0025】
撥水被膜は、例えば、多孔質であってもよく、また、中実であってもよく、具体的には、多孔質である。
【0026】
撥水被膜は、シリカ系マトリクスと、シリコーンオイルとを含む。
【0027】
シリカ系マトリクスは、25℃で固体であって、撥水被膜の形状(具体的には、シェル形状)を担保する。つまり、シリカ系マトリクスは、撥水被膜を保形する。
【0028】
第1の化粧料添加剤において、シリカ系マトリクスは、シリカからなる。つまり、第1の化粧料添加剤におけるシリカ系マトリクスは、シリカマトリクスである。具体的には、シリカ系マトリクスは、シリカのみを含む。但し、シリカ系マトリクスは、製造上、不可避的に含まれる不純物(後述する触媒など)を含むことが許容される。
【0029】
シリカは、平均組成式SiOで示される。このようなシリカは、例えば、シリカ系化合物の硬化物からなる。シリカ系化合物は、加水分解して、縮合反応して、シリカ系硬化物(シリカ化合物の硬化物)を生成する。
【0030】
シリカ系化合物は、加水分解性である。シリカ系化合物としては、例えば、ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムなど)、オルガノシラン系化合物などが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。好ましくは、製造方法を簡便の観点から、オルガノシラン系化合物が挙げられる。
【0031】
オルガノシラン系化合物としては、例えば、触媒存在下で、加水分解できる加水分解基を有する。加水分解基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどの、炭素数1以上、4以下のアルコキシ基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1以上、2以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシが挙げられ、より好ましくは、メトキシが挙げられる。
【0032】
オルガノシラン系化合物としては、例えば、アルコキシシラン、アルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。好ましくは、アルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
【0033】
アルコキシシランとしては、例えば、4官能オルガノシランが挙げられる。4官能オルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシランなどの、炭素数が1以上、4以下のアルコキシ部分を有するテトラアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、炭素数が1以上、2以下のアルコキシ部分を有するテトラアルコキシシランが挙げられ、より好ましくは、テトラメトキシシランが挙げられる。
【0034】
アルコキシシランのオリゴマーとしては、例えば、4官能オルガノシランのオリゴマーが挙げられる。4官能オルガノシランのオリゴマーにおける4官能オルガノシランとしては、上記した4官能オルガノシランが挙げられる。具体的には、4官能オルガノシランのオリゴマーとしては、例えば、上記したテトラアルコキシシランのホモ縮合オリゴマーおよび共縮合オリゴマーが挙げられ、好ましくは、加水分解して縮合する時の質量減少を小さくし、反応速度を高くする観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのホモ縮合オリゴマーおよび共縮合オリゴマーが挙げられ、より好ましくは、脱離アルコール量が少なく、反応速度が速いという観点から、テトラメトキシシランのホモ縮合オリゴマーが挙げられる。オリゴマーの平均重合度は、例えば、3以上、好ましくは、4以上であり、また、例えば、15以下、好ましくは、10以下である。
【0035】
アルコキシシランのオリゴマーは、市販品が用いられ、例えば、シリケートオリゴマーシリーズで市販される製品名「メチルシリケート」(コルコート社製または三菱ケミカル社製)などが例示される。
【0036】
撥水被膜におけるシリカ系マトリクスの割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、85質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下、より好ましくは、95質量%以下である。シリカ系マトリクスの割合が上記した下限以上であれば、撥水被膜を確実に保形できる。シリカ系マトリクスの割合が上記した上限以下であれば、シリコーンオイルの割合が過度に低くなることを抑制し、伸展性に優れる。
【0037】
シリコーンオイルは、シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置する。具体的には、シリコーンオイルは、シリカ系マトリクスを被覆している。また、シリカ系マトリクスが多孔質である場合であっても、シリコーンオイルは、シリカ系マトリクスの多孔内ではなく、外部に露出する表面に浮き出ている。
【0038】
また、シリコーンオイルは、25℃で液状である。25℃で液状であるとは、25℃での動粘度が100,000mm/s以下、さらには、10,000mm/s以下である物性を言う。なお、シリコーンオイルの動粘度は、JIS Z 8803に準じるウベローデ粘度計で測定される。
【0039】
換言すれば、シリコーンオイルの25℃での動粘度は、例えば、100,000mm/s以下、好ましくは、10,000mm/s以下である。シリコーンオイルの25℃での動粘度が上記した上限以下であれば、第1の化粧料添加剤が化粧料に添加され、皮膚に塗られ、その後、皮膚が洗われ、外部環境(河川、海洋など)に長期間置かれた際に、化粧料から脱漏(逃がすこと)できる。そのため、環境への負荷を低減できる。
【0040】
一方、シリコーンオイルの25℃での動粘度は、例えば、1mm/s以上、好ましくは、10mm/s以上、より好ましくは、100mm/s以上、さらに好ましくは、1,000mm/s以上である。シリコーンオイルの25℃での動粘度が上記した下限以上であれば、シリコーンオイルがシリカ系マトリクスから早期に離脱すること(具体的には、化粧料を調製直後、または、化粧料が皮膚に塗られた直後に離脱すること)に起因する伸展性の低下を抑制できる。
【0041】
シリコーンオイルは、-SiRO-(2つのRは、互いに同一または相異なってもよく、それぞれ、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。)で示される。
【0042】
1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチルが挙げられる。
【0043】
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどの炭素数6~10のアリール基が挙げられ、好ましくは、フェニルが挙げられる。
【0044】
つまり、Rとして、好ましくは、メチルおよび/またはフェニルが挙げられ、より好ましくは、メチルが挙げられる。
【0045】
1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基のうち、好ましくは、1価の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0046】
具体的には、シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどの未変性シリコーンオイルが挙げられる。好ましくは、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0047】
シリカ系マトリクス100質量部に対するシリコーンオイルの部数は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、5質量部以上である。また、シリカ系マトリクス100質量部に対するシリコーンオイルの部数は、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、25質量部以下、さらに好ましくは、15質量部以下である。また、撥水被膜におけるシリコーンオイルの割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0048】
シリカ系マトリクス100質量部に対するシリコーンオイルの部数、および/または、撥水被膜におけるシリコーンオイルの割合が上記した下限以上であれば、伸展性を向上できる。シリカ系マトリクス100質量部に対するシリコーンオイルの部数、および/または、撥水被膜におけるシリコーンオイルの割合が上記した上限以下であれば、撥水被膜を確実に保形できる。
【0049】
撥水被膜の質量部数は、アルミノシリケート粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下である。
【0050】
第1の化粧料添加剤における撥水被膜の割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0051】
撥水被膜の質量部数および/または割合が上記した下限以上であれば、第1の化粧料添加剤の撥水性を高め、伸展性を向上できる。撥水被膜の質量部数および/または割合が上記した上限以下であれば、実質的に被膜の状態で、効率よくアルミノシリケート粒子を被覆することができる。
【0052】
この第1の化粧料添加剤は、例えば、粒子形状を有する。具体的には、第1の化粧料添加剤の形状としては、例えば、略立方体形状、略板状、略球状、略針状などが挙げられる。好ましくは、略立方体形状、略球形状が挙げられ、より好ましくは、伸展性を向上させる観点から、略立方体形状が挙げられる。
【0053】
第1の化粧料添加剤の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、0.3μm以上、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは、0.8μm以上であり、また、例えば、30μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下である。第1の化粧料添加剤の体積基準のメジアン径(D50)が上記した下限以上であれば、光散乱効果によるソフトフォーカス性を付与できる。第1の化粧料添加剤の体積基準のメジアン径(D50)が上記した上限以下であれば、化粧料が塗布される厚み以下にできることによって、化粧料の平滑性を担保できる。
【0054】
次に、第1の化粧料添加剤の製造方法を説明する。この製造方法は、中実のアルミノシリケート粒子と、加水分解性のシリカ系化合物と、シリコーンオイルとを混合する第1工程と、シリカ系化合物を加水分解して、撥水被膜を、アルミノシリケート粒子の表面に形成する第2工程とを備える。
【0055】
第1工程では、まず、アルミノシリケート粒子、シリカ系化合物、および、シリコーンオイルを準備する。
【0056】
アルミノシリケート粒子として、市販品を用いることができる。例えば、略立方体形状のアルミノシリケート粒子として、オベールARシリーズが挙げられ、例えば、略球形状のアルミノシリケート粒子として、オベールCRシリーズが挙げられる。
【0057】
また、アルミノシリケート粒子を公知の方法に従って得ることができ、例えば、特開2019-172648号公報に記載される製造方法に準拠して得られる。
【0058】
別途、シリカ系化合物、および、シリコーンオイルから、それらを含有する撥水原料組成物を調製する。加水分解性のシリカ系化合物がオルガノシラン系化合物であれば、オルガノシラン系化合物、触媒およびシリコーンオイルを含む撥水原料組成物を調製する。
【0059】
撥水原料組成物を調製するには、オルガノシラン系化合物、触媒およびシリコーンオイルを均一に混合する。
【0060】
撥水原料組成物における触媒としては、例えば、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、錫アルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどの金属アルコキシド、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンアルキルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどのキレート化金属などが挙げられる。
【0061】
金属アルコキシドとしては、例えば、チタンアルコキシドなどが挙げられ、好ましくは、チタンテトラn-ブトキシドが挙げられる。触媒は、市販品が用いられ、例えば、D-25(信越化学工業社製)などが用いられる。触媒の配合部数は、オルガノシラン系化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、25質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0062】
撥水原料組成物は、さらに、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、例えば、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、パラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられる。好ましくは、エステル系溶剤が挙げられる。撥水原料組成物の硬化時の固形分量が、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、40質量%以下となり、また、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上となるように、有機溶剤が撥水原料組成物に含有される。
【0063】
次いで、第1工程では、アルミノシリケート粒子と、撥水原料組成物とを配合する。具体的には、アルミノシリケート粒子に撥水原料組成物を配合する。より具体的には、撥水原料組成物を、例えば、常温(25℃)で、混合する。具体的には、アルミノシリケート粒子と撥水原料組成物とを、例えば、1分以上、好ましくは、3分以上、また、例えば、60分以下、好ましくは、20分以下、攪拌する。
【0064】
アルミノシリケート粒子と、撥水原料組成物との配合量は、アルミノシリケート粒子100質量部に対する上記した撥水被膜の質量部数となるように、適宜配合される。
【0065】
第2工程では、まず、アルミノシリケート粒子と撥水原料組成物との混合物を静置することができる。混合物を静置することにより、ケイ酸原料が常温硬化して、アルミノシリケート粒子の表面を撥水被膜で被覆することができる。静置時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上であり、また、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。静置温度は、例えば、室温(25℃)である。
【0066】
その後、第2工程では、撥水原料組成物を加熱する。
【0067】
加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、90℃以下である。
【0068】
加熱時間は、例えば、15分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、2時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0069】
第2工程では、上記した加熱によって、有機溶剤が除去されるとともに、シリカ系化合物(オルガノシラン系化合物)が加水分解して、アルミノシリケート粒子の表面に位置するシリカ系マトリクスを形成しながら、シリコーンオイルが、シリカ系マトリクスの表面に浮き出る。つまり、シリコーンオイルが、シリカ系マトリクスの表面に位置(移動、移行)する。これによって、シリカ系マトリクス、および、シリカ系マトリクスの表面に位置するシリコーンオイルを含む撥水被膜が、アルミノシリケート粒子を被覆した状態で、形成される。
【0070】
これによって、アルミノシリケート粒子と、撥水被膜とを含む第1の化粧料添加剤が得られる。
【0071】
なお、撥水被膜は、アルミノシリケート粒子の表面の全部を被覆しても、または、アルミノシリケート粒子の表面を部分的に被覆してもよい。
【0072】
その後、第1の化粧料添加剤は、撥水被膜がバインダとして作用することにより、第1の化粧料添加剤が凝集して、二次粒子を形成している場合には、上記した凝集を解消するために、解砕により、凝集状態を解消させる。具体的には、ジェットミルなどによって、第1の化粧料添加剤を解砕する。これにより、第1の化粧料添加剤が得られる。
【0073】
このようにして得られた第1の化粧料添加剤は、環境負荷の抑制、および、伸展性が要求される化粧料基剤に添加されて、化粧料として使用される。
【0074】
第1の化粧料添加剤の割合は、化粧料(化粧料組成物)において、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
【0075】
化粧料基剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、セリサイト、タルク、マイカ、窒化ホウ素、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの無機粉体などが挙げられる。化粧料基剤の割合は、化粧料の用途および目的によって、適宜設定される。
【0076】
また、化粧料(化粧料組成物)は、他の添加剤をさらに含有することができる。他の添加剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸オクチルなどの紫外線吸収剤、例えば、酢酸トコフェロールなどの酸化防止剤、例えば、植物性スクワラン、メチルポリシロキサンなどの油剤などが挙げられる。他の添加剤の割合は、化粧料の用途および目的によって、適宜設定される。
【0077】
なお、化粧料基剤およびその他の添加剤は、例えば、特開2019-131482号公報、特開平11-49637号公報、特開2017-1997号公報、特開2018-199660号公報などに記載されるものを例示することもできる。
【0078】
化粧料は、環境への負荷が軽く、優れた伸展性を有する化粧料であって、かかる化粧料としては、例えば、例えば、ファンデーション(ルースファンデーション、プレストファンデーション)、コンシーラー、頬紅、白粉(おしろい、ルースパウダー、プレストパウダー)、コントロールカラー、下地料、BBクリーム、アイカラー、口紅などのメイクアップ化粧料、例えば、乳液、クリーム、美容液、デイクリームなどのスキンケア化粧料などが挙げられることができる。第1の化粧料添加剤が添加された化粧料は、化粧料組成物として調製される。
【0079】
そして、この第1の化粧料添加剤を化粧料基剤に添加すれば、環境への負荷を軽減できながら、伸展性に優れる化粧料を得ることができる。
【0080】
詳しくは、第1の化粧料添加剤において、コアとなるアルミノシリケート粒子、および、シェルとなる撥水被膜におけるシリカ系マトリクスは、いずれも、無機材料である。対して、特許文献1の記載の化粧料添加剤では、シェルがシリコーン硬化物(いわゆる、シリコーン樹脂に相当)からなるため、環境への負荷が比較的高い。そうすると、特許文献1の記載の化粧料添加剤に比べると、第1の化粧料添加剤は、環境への負荷が軽減されている。
【0081】
また、第1の化粧料添加剤におけるシリコーンオイルは、液状であるので、外部環境(河川、海洋など)に長期間置かれた際には、化粧料から容易に脱漏できる(除去される)ため、やはり、環境への負荷を低減できる。
【0082】
また、第1の化粧料添加剤は、その平均摩擦係数(後述)が高いことから、伸展性に優れる。
【0083】
さらに、第1の化粧料添加剤は、撥水被膜を含むので、撥水被膜の撥水性に基づき、触感に優れる。
【0084】
また、この第1の化粧料添加剤は、アルミノシリケート粒子の表面を被覆する撥水被膜を含むため、撥水被膜を含まないアルミノシリケート粒子に比べて、ヘイズが高い。そのため、この第1の化粧料添加剤のソフトフォーカス性に優れる。
【0085】
<第2の化粧料添加剤>
次に、本発明の化粧料添加剤の別の例としての第2の化粧料添加剤を説明する。
【0086】
第2の化粧料添加剤において、上記した第1の化粧料添加剤と同様の成分、化合物、基、および工程等については、その詳細な説明を省略する。また、第2の化粧料添加剤は、特記する以外、第1の化粧料添加剤と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
第2の化粧料添加剤におけるシリカ系マトリクスは、シリカと、シリコーンオリゴマーとを含む。
【0088】
シリコーンオリゴマーは、液状である。
【0089】
シリコーンオリゴマーは、シリカと、シリコーンオイルとの両方に親和しているので、シリコーンオイルがシリカ系マトリクスの表面に確実に位置することができる。
【0090】
シリコーンオリゴマーは、上記したシロキサンユニット、および、RO基(Rは、1価の炭化水素基を示す。)を含有するRO基含有シロキサンユニットを含有する。
【0091】
RO基において、Rで示される1価の炭化水素基としては、第1の化粧料添加剤で例示した1価の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0092】
RO基として、例えば、メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基、例えば、フェノキシ、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシなどのアリールオキシ基が挙げられ、好ましくは、アルコキシ基が挙げられ、高い加水分解性を得る観点から、より好ましくは、メトキシが挙げられる。
【0093】
また、シリコーンオリゴマーは、例えば、主鎖の末端および/または側鎖がRO基(好ましくは、メトキシ基)で変性された変性シリコーンオイル、好ましくは、アルコキシ変性シリコーンオイル、より好ましくは、メトキシ変性シリコーンオイルである。
【0094】
シリコーンオリゴマーは、上記したRO基の一部が、加水分解して、シリカ系マトリクスの表面に存在するOH基(具体的には、シラノール基(Si-OH)と水素結合または脱水縮合することにより、シリカマトリクスとの相互作用が発現する。一方、シリコーンオリゴマーは、シリコーンオイルの側鎖にあるアルキルシラン(Si-R)と疎水性相互作用が発現する。他方、シリカマトリクス、シリコーンオリゴマー、シリコーンオイルの中で最も表面自由エネルギーが低いシリコーンオイルは、さらに表面自由エネルギーが低い空気界面に浮き上がる性質がある。これらの相互作用の結果、シリカマトリクスとシリコーンオイルの二相に両親媒性を発現するシリコーンオリゴマーの中間相を介して、同時に生成されるシリカ(シリカ系化合物の硬化物)の表面に、シリコーンオイルを配置すること(浮き上がらせること)ができる。
【0095】
一方、シリコーンオリゴマーのRO基の残部は、反応せず、残存してもよい。
【0096】
シリコーンオイル100質量部に対するシリコーンオリゴマーの部数は、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、25質量部以上であり、また、例えば、1,000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。撥水被膜におけるシリコーンオリゴマーの割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。シリコーンオリゴマーの部数および/または割合が上記した下限以上であれば、シリコーンオイルがシリカ系マトリクスの表面に確実に位置することができ、そのため、第2の化粧料添加剤の撥水性を十分に向上できる。シリコーンオリゴマーの部数および/または割合が上記した上限以下であれば、第2の化粧料添加剤の環境負荷を十分に軽減できる。
【0097】
第2の化粧料添加剤の製造方法では、第1工程において、アルミノシリケート粒子と、加水分解性のシリカ系化合物と、液状のシリコーンオイルと、液状のシリコーンオリゴマーとを混合する
好ましくは、アルミノシリケート粒子とは別に、シリカ系化合物、シリコーンオイル、および、シリコーンオリゴマーを含有する撥水原料組成物を調製する。つまり、シリコーンオリゴマーを撥水原料組成物にさらに配合する。
【0098】
第1工程で用いられるシリコーンオリゴマーの25℃における動粘度は、例えば、1,000mm/s以下、好ましくは、100mm/s以下であり、また、例えば、1mm/s以上、好ましくは、10mm/s以上、より好ましくは、25mm/s以上、さらに好ましくは、50mm/s以上である。シリコーンオリゴマーの動粘度が上記した上限以下であれば、シリコーンオリゴマーの独自の微小液滴の形成を抑えることができる。シリコーンオリゴマーの動粘度が上記した下限以上であれば、シリコーンオイルの微小安定液滴の形成を抑えることができる。
【0099】
第2の化粧料添加剤は、第1の化粧料添加剤と同様の作用効果を奏する。
【0100】
第1の化粧料添加剤および第2の化粧料添加剤を比較する。
【0101】
第1の化粧料添加剤は、シリコーンオリゴマーとシリカとの縮合反応物を含む可能性がないため、環境への負荷をより一層軽減できる。
【0102】
一方、第2の化粧料添加剤は、シリコーンオイルとシリカ系マトリクスとの両親媒性であるシリコーンオリゴマーを含むため、シリコーンオイルがシリカ系マトリクスの表面に確実に位置できる。その結果、撥水被膜の撥水性を向上できる。そうすると、第2の化粧料添加剤は、触感をより一層向上できる。一方、シリコーンオイルとシリカ系マトリクスとがシリコーンオリゴマーに対して両親媒性であることを踏まえ、第2の化粧料添加剤は、以下の3つの作用を奏するので、第1の化粧料添加剤に対して、環境への負荷がやや高いと推測される。
【0103】
・シリカおよびシリコーンオリゴマー間のSi-OH同士の水素結合による相互作用
・シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオイル間のSi-R同士の疎水性相互作用
・表面自由エネルギーが、シリカ、シリコーンオイルおよびシリコーンオリゴマーの中で最も低いシリコーンオイルと、これらよりさらに表面自由エネルギーの低い空気との親和性(親和作用)
【0104】
<変形例>
シリコーンオイルは、シリカ系マトリクスの少なくとも表面に位置すればよく、その一部が、多孔質のシリカ系マトリクスの多孔内に存在することが許容される。
【実施例
【0105】
以下、製造例、実施例および比較例に基づいて本発明を説明する。但し、これらの例は、本発明の理解を容易にするための例示であり、本発明はこれらに何ら限定されるものはない。また以下において、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味するものとする。
【0106】
また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0107】
<アルミノシリケート粒子の製造>
製造例1
特開2019-172648号公報の製造例1に従って、体積基準のメジアン径が1.8μmであるアルミノシリケート粒子Aを製造した。
【0108】
製造例2
特開2019-172648号公報の製造例2に従って体積基準のメジアン径が2.5μmであるアルミノシリケート粒子Bを製造した。
【0109】
製造例3
特開2019-172648号公報の製造例3に従って体積基準のメジアン径が10.3μmであるアルミノシリケート粒子Cを製造した。
【0110】
なお、アルミノシリケート粒子A~アルミノシリケート粒子Cは、いずれも、立方体形状を有しており、Alのモル数に対するSiOのモル数の比が2であった。
【0111】
<化粧料添加剤の製造>
まず、各実施例および各比較例で用いた原料を記載する。
・メチルシリケート51:テトラメトキシシランのオリゴマー(オルガノシラン系化合物)、平均重合度:4、SiO量51±0.3%、コルコート社製
・メチルシリケート53A:テトラメトキシシランのオリゴマー(オルガノシラン系化合物)、平均重合度:7、SiO量53±1.0%、コルコート社製
・MKCシリケートMS56:テトラメトキシシランのオリゴマー(オルガノシラン系化合物)、SiO量56±1.0%、三菱ケミカル社製
・D-25:チタンテトラn-ブトキシド(触媒)、信越化学工業社製
・酢酸エチル:エステル系溶剤(有機溶剤)、富士フィルム和光純薬社製
・イソプロパノール:アルコール系溶剤(有機溶剤)、富士フィルム和光純薬社製
・シリコーンオイル:KF-96-1000cs:25℃で液状、ポリジメチルシロキサン、25℃での動粘度1,000mm/s、信越化学工業社製
・シリコーンオイル:KF-96-10000cs:25℃で液状、ポリジメチルシロキサン、25℃での動粘度10,000mm/s、信越化学工業社製
・メトキシ変性シリコーンオイル:X-40-9250、25℃で液状、シリコーンオリゴマー、25℃での動粘度80mm/s、信越化学工業社製
・アルミノシリケート粒子A:製造例1により製造
・アルミノシリケート粒子B:製造例2により製造
・アルミノシリケート粒子C:製造例3により製造
【0112】
実施例1
500mlガラス容器に、オルガノシラン系化合物と、シリコーンオイルと、触媒と、有機溶剤とを、表1に記載の処方に従って配合し、マグネチックスターラーを用いて、常温で20分間撹拌して、撥水原料組成物を調製した。
【0113】
続いて、アルミノシリケート粒子A 100部と、撥水原料組成物5.73部とを混合した。具体的には、アルミノシリケート粒子Aを撹拌機(カワタ社製スーパーミキサー・ピッコロ)に仕込み、1000rpmで撹拌しながら、撥水原料組成物を5分かけて滴下し、さらに、5分間撹拌を継続して均一になるまで混合した。常温で12時間静置後、80℃で3時間加熱して、撥水原料組成物中のオルガノシラン系化合物を硬化させた。さらにジェットミル(セイシン企業社製A-Oジェットミル)解砕し、化粧料添加剤を得た。この実施例1の化粧料添加剤は、シリコーンオリゴマーを含まないため、第1の化粧料添加剤である。
【0114】
なお、化粧料添加剤では、アルミノシリケート粒子A100部に対して、2部の撥水被膜が形成された。また、硬化質量率は、仕込みの撥水原料組成物の質量部数(dry)に対する硬化後の撥水被膜の質量部数(wet)の割合である。
【0115】
実施例2~11
表1~表2に記載の処方に従って、処方を変更した以外は、実施例1にと同様に処理して、化粧料添加剤を得た。なお、実施例2、3、7、8および10の化粧料添加剤は、シリコーンオリゴマーを含まないため、第1の化粧料添加剤である。一方、実施例4~6、9および11は、シリコーンオリゴマーを含むため、第2の化粧料添加剤である。
【0116】
比較例1~3
表3の通り、アルミノシリケート粒子A~Cのそれぞれをそのまま比較例1~3のそれぞれの化粧料添加剤とした。
【0117】
評価
各実施例および比較例の化粧料添加剤について、下記の物性を測定し、また、評価を実施した。それらの結果を表1に示す。
【0118】
(1)走査型電子顕微鏡による形状の観察
走査型電子顕微鏡(JEOL日本電子株式会社製 JSM-6510LA)で化粧料添加剤の写真を撮影し、得られた二次元の写真画像から、化粧料添加剤の形状を観察した。全ての実施例および比較例の化粧料添加剤の形状は、いずれも、立方体であった。代表として、実施例3の化粧料添加剤のSEM写真、および、実施例10の化粧料添加剤のSEM写真のそれぞれを、図1および図2のそれぞれに示す。なお、図2において、長さが2μm程度の小さい粒が混入しているが、これは、原料としてのアルミノシリケート粒子中に混入しているアルミノシリケートの微粒子であって、容積分率は顕著に低く、そのため、以降の評価において影響を実質的に及ぼさない。
【0119】
(2)体積基準のメジアン径(コールターカウンター法)
200ml容量のビーカーに化粧料添加剤0.5gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下3分間分散させた。この分散液をコールターカウンター(ベックマンコールター社製 精密粒度分布測定装置Multiizer3)に供して、体積基準粒度分布を測定し、化粧料添加剤の体積基準のメジアン径(D50)を求めた。なお、比較例1~3については、アルミノシリケート粒子の体積基準のメジアン径(D50)を求めた。
【0120】
(3)ソフトフォーカス性(ヘイズ)
化粧料添加剤と、シリコーンオイル(信越化学製KF-96-1000CS、屈折率1.40)とを、質量比1:9の割合で混合し、PETシート上に,バーコーター(No.9)を用いて厚さ約20μmの塗膜を作製した。
【0121】
ソフトフォーカス性は、ASTM D1003に準拠し、Hazeメーター(BYKガードナー社製 Haze-gard plus(東洋精機製作所))で塗膜のヘイズ(曇度)を測定した。
【0122】
表1~表3から分かるように、実施例の化粧料添加剤は、それぞれ対応する比較例に比べて、ソフトフォーカス性(ヘイズ)が改善されている。
【0123】
(4)伸展性(平均摩擦係数)
表2に記載に従って、実施例1~3および比較例1~3のそれぞれの化粧料添加剤の伸展性を、摩擦感テスター(摩擦感テスターKSE-SE:カトーテック社製)を用いて得た平均摩擦係数(MIU)により評価した。
1)化粧料添加剤5mgを秤りとる。
2)摩擦感テスター上に、幅3cmの人工皮膚(出光テクノファイン社製のサプラーレ(登録商標):トップ:ポリウレタン(プロテインパウダー配合)100%、ベース基布:レーヨン80%、ナイロン20%)を置く。
3)秤り取った化粧料添加剤を上記人工皮膚の上に分散して置き、ゴム手袋で3×8cmの範囲に均一に塗布する。
4)荷重25g、速度1mm/秒の条件で、摩擦感テスターによる自動測定を実施し、摩擦係数を得る。
5)この操作を3回実施し、平均値を平均摩擦係数(MIU)とする。
【0124】
表1~表3から分かるように、実施例の化粧料添加剤は、それぞれ対応する比較例に比べて、伸展性(平均摩擦係数)が改善されている。
【0125】
(5)被膜の撥水性試験(触感)
化粧料添加剤の被膜の撥水性を、下記の方法で評価した。
1)密封ビン(No.2K、容量: 24mL)に脱イオン水10mLを入れ、化粧料添加剤50mgを添加する。
2)18時間静置して、観察する。
3)18時間後に沈殿していない場合は、6回上下に振盪して観察する。
4)結果を次の3段階で評価する。
【0126】
◎・・・18時間を超過して振盪しても沈降しない
〇・・・18時間でも沈降しない、
×・・・すぐに全量沈降する(被膜が非撥水性)
×、○、◎の順に、撥水性が良好となり、つまり、触感に優れる。
【0127】
(6)環境への負荷
化粧料添加剤の環境への負荷を、仕込み原料に基づいて、下記の基準で評価した。
【0128】
◎:アルミノシリケート粒子と、シリカ系マトリクスおよび25℃で液状のシリコーンオイルを含む撥水被膜を含む第1の化粧料添加剤は、撥水被膜がシリコーンオリゴマーを含まないことから、環境への負荷を大幅に低減できる。第1の化粧料添加剤は、実施例1~実施例3、実施例7、実施例8、および、実施例10である。
【0129】
○:アルミノシリケート粒子と、シリカ系マトリクスおよび25℃で液状のシリコーンオイルを含み、シリカ系マトリクスが、シリカと、シリコーンオリゴマーとを含む撥水被膜を含む第2の化粧料添加剤は、上記した3つの作用を奏することから、上記「◎」評価に比べて、環境への負荷が高いが、依然、相対的に低いレベルにある。第2の化粧料添加剤は、実施例4~実施例6、実施例9および実施例11である。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
図1
図2