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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水処理剤組成物および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/76 20230101AFI20240404BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 59/12 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20240404BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20240404BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240404BHJP
   C02F 5/10 20230101ALI20240404BHJP
   C02F 5/14 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
C02F1/76 A
A01P3/00
A01N59/12
A01N59/00 C
C02F1/72 Z
C02F1/50 510C
C02F1/50 520B
C02F1/50 520K
C02F1/50 531L
C02F1/50 540B
C02F5/10 620A
C02F5/10 620B
C02F5/10 620C
C02F5/10 620D
C02F5/10 620E
C02F5/10 620F
C02F5/14 B
C02F5/14 A
C02F5/14 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020057325
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154220
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都司 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌平
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-257206(JP,A)
【文献】特開2014-079719(JP,A)
【文献】特開2018-030132(JP,A)
【文献】特開2002-193711(JP,A)
【文献】特開2013-213234(JP,A)
【文献】特開2001-129554(JP,A)
【文献】特開2013-128927(JP,A)
【文献】米国特許第04386005(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70- 1/78
A01P 1/00-23/00
A01N 1/00-65/48
C02F 1/50
C02F 5/10
C02F 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素系酸化剤と、
ヨウ化物と、
アルカリ剤と
スケール抑制剤と、
を含み、
前記ヨウ素系酸化剤は、ヨウ素、ヨウ素酸塩、および過ヨウ素酸塩のうちの少なくとも1つであり、
前記ヨウ化物は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウムおよびヨウ化水素酸のうちの少なくとも1つであり、
前記アルカリ剤は、水酸化アルカリおよび炭酸アルカリのうちの少なくとも1つであることを特徴とする水処理剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理剤組成物であって、
前記スケール抑制剤は、式(1)の単量体単位を含む重合体、式(2)の単量体単位を含む重合体、式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位とを含む共重合体、式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位とを含む共重合体、式(2)の単量体単位と式(5)の単量体単位と式(6)の単量体単位とを含む共重合体、式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体、式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、式(9)の2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびその塩、式(10)の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸およびその塩のうちの少なくとも1つであることを特徴とする水処理剤組成物。
【化1】
(1)
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化2】
(2)
(式(2)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化3】
(3)
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキルスルホン酸基もしくはその塩、または、炭素数6~10のアリールスルホン酸基もしくはその塩を表し、塩の場合は1価もしくは2価の金属塩、アンモニウム塩または有機アンモニウム塩である。)
【化4】
(4)
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表すが、少なくとも一方が炭素数1~10のアルキル基である。)
【化5】
(5)
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【化6】
(6)
(式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【化7】
(7)
(式(7)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Zは、-CONHC(CHCHSONaを表し、h,l,m,nはそれぞれ0または正の整数であり、h+l+m+nは、1~100の整数である。)
【化8】
(8)
(式(8)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、m,nはそれぞれ0または正の整数であり、m+nは、1~100の整数である。)
【化9】
(9)
(式(9)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【化10】
(10)
(式(10)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理剤組成物であって、
前記水処理剤組成物のpHが12未満であることを特徴とする水処理剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理剤組成物であって、
前記水処理剤組成物が前記ヨウ素系酸化剤および前記ヨウ化物の両方を含む場合、前記ヨウ素系酸化剤に対する、前記ヨウ化物の質量の比率が、1.2以上であることを特徴とする水処理剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理剤組成物を用いて水を処理することを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系の生物付着等を抑制するための水処理剤組成物、および、その水処理剤組成物を用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、冷温水系、純水製造工程水系、排水回収工程水系、紙パルプ工程水系、集塵水系等の様々な水系において、菌類や藻類等に起因する様々な障害が発生することがある。例えば、冷却水系等においては、熱交換器内等でのスライム発生による熱交換率の低下や、配管等のスライム堆積下部で発生する微生物腐食等の障害が知られている。
【0003】
このような菌類や藻類等に起因する障害を抑制する方法としては、殺菌剤組成物を水系に添加する方法が一般に用いられている。殺菌剤としては、イソチアゾロン化合物等の有機系の殺菌剤や、次亜塩素酸等の酸化剤系の殺菌剤等が用いられている。このうち、殺菌効果、コスト等の点から、酸化剤系の殺菌剤組成物が有利となる場合が多く、そのため、これら酸化剤系の殺菌剤組成物は様々な水系において広く使用されている。酸化剤系の殺菌剤組成物の例としては、特許文献1,2のようなクロロスルファミン酸が知られている。
【0004】
これらの酸化剤系の殺菌剤組成物とスケール抑制剤とを併せて使用する場合、複数の薬液タンクと送液ポンプが必要となり、管理に手間が掛かる問題があった。また、酸化剤系の殺菌剤組成物とスケール抑制剤とを適切な比率で水系に供給する必要があり、例えば酸化剤系の殺菌剤組成物がスケール抑制剤と比べて過剰に添加された場合、その酸化力によりスケール抑制剤が分解し、スケールが発生してしまうおそれがあった。
【0005】
このため、酸化力の高い酸化剤系の殺菌剤組成物と、スケール抑制剤とができるだけ一定の割合で水系に供給されることが望ましく、酸化剤系の殺菌剤組成物とスケール抑制剤とを一剤化することが最も望ましい。
【0006】
例えば、特許文献3では、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、スケール抑制剤であるアニオン性ポリマとを含有してなり、pH12以上である一剤化のスライム防止用組成物を提示している。しかしながら、特許文献3のスライム防止用組成物では、塩素系酸化剤とスルファミン酸とを反応させ、クロロスルファミン酸として安定化させているため、組成物の安定性は増すものの、スライム抑制剤の酸化力、すなわちスライム抑制性能が著しく低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-206608号公報
【文献】特許第3832399号公報
【文献】国際公開第2003/096810号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、酸化剤系殺菌組成物のスライム抑制性能の著しい低下を抑制しつつ、スケール抑制剤を配合した一剤化された水処理剤組成物、およびその水処理剤組成物を用いた水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちの少なくとも1つと、スケール抑制剤と、を含み、前記ヨウ素系酸化剤は、ヨウ素、ヨウ素酸塩、および過ヨウ素酸塩のうちの少なくとも1つであり、前記ヨウ化物は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウムおよびヨウ化水素酸のうちの少なくとも1つであり、前記アルカリ剤は、水酸化アルカリおよび炭酸アルカリのうちの少なくとも1つである、水処理剤組成物である。
【0010】
前記水処理剤組成物において、前記スケール抑制剤は、式(1)の単量体単位を含む重合体、式(2)の単量体単位を含む重合体、式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位とを含む共重合体、式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位とを含む共重合体、式(2)の単量体単位と式(5)の単量体単位と式(6)の単量体単位とを含む共重合体、式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体、式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、式(9)の2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびその塩、式(10)の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸およびその塩のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【化1】
(1)
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化2】
(2)
(式(2)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化3】
(3)
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキルスルホン酸基もしくはその塩、または、炭素数6~10のアリールスルホン酸基もしくはその塩を表し、塩の場合は1価もしくは2価の金属塩、アンモニウム塩または有機アンモニウム塩である。)
【化4】
(4)
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表すが、少なくとも一方が炭素数1~10のアルキル基である。)
【化5】
(5)
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【化6】
(6)
(式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【化7】
(7)
(式(7)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Zは、-CONHC(CHCHSONaを表し、h,l,m,nはそれぞれ0または正の整数であり、h+l+m+nは、1~100の整数である。)
【化8】
(8)
(式(8)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、m,nはそれぞれ0または正の整数であり、m+nは、1~100の整数である。)
【化9】
(9)
(式(9)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【化10】
(10)
(式(10)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【0011】
前記水処理剤組成物において、前記水処理剤組成物のpHが12未満であることが好ましい。
【0012】
前記水処理剤組成物において、前記ヨウ素系酸化剤および前記ヨウ化物の両方を含む場合、前記ヨウ素系酸化剤に対する、前記ヨウ化物の質量の比率が、1.2以上であることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記水処理剤組成物を用いて水を処理する水処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、酸化剤系殺菌組成物のスライム抑制性能の著しい低下を抑制しつつ、スケール抑制剤を配合した一剤化された水処理剤組成物、およびその水処理剤組成物を用いた水処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係る水処理剤組成物は、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちの少なくとも1つと、スケール抑制剤と、を含む組成物である。本実施形態に係る水処理剤組成物は、ヨウ素系酸化剤の溶解性、製剤のpHを大幅に上昇させない等の点から、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物と、アルカリ剤と、スケール抑制剤と、を含むことが好ましい。本実施形態に係る水処理剤組成物は、さらに水を含んでもよい。
【0017】
本発明者らは、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちの少なくとも1つとを、スケール抑制剤と配合することによって、酸化剤系殺菌組成物のスライム抑制性能の著しい低下(すなわち、酸化力の著しい低下)を抑制しつつ、スケール抑制剤を配合した一剤化された水処理剤組成物が得られることを見出した。また、本実施形態に係る水処理剤組成物を用いると、被処理水に添加しても被処理水のpHを大幅に上昇させない。
【0018】
ヨウ素系酸化剤としては、ヨウ素(I)、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩等が挙げられる。これらのうち、ヨウ素が、殺菌性能、コスト等の観点から好ましい。
【0019】
ヨウ化物としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウムおよびヨウ化水素酸等が挙げられる。これらのうち、溶解性等の点から、ヨウ化カリウムが好ましい。
【0020】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ等が挙げられる。これらのうち、水酸化アルカリが好ましく、ヨウ素系酸化剤の溶解性等の点から、水酸化カリウムが好ましい。また、アルカリ剤は、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0021】
ヨウ化物およびアルカリ剤のうち、ヨウ素系酸化剤の溶解性等の点から、ヨウ化カリウム等のヨウ化物が好ましく、ヨウ化物およびアルカリ剤の両者を含むことがより好ましい。
【0022】
スケール抑制剤としては、例えば、下記式(1)の単量体単位を含む重合体、下記式(2)の単量体単位を含む重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位と下記式(4)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(2)の単量体単位と下記式(5)の単量体単位と下記式(6)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体、下記式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、下記式(9)の2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびその塩、下記式(10)の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸およびその塩、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等が挙げられる。
【0023】
スケール抑制剤としては、下記式(1)の単量体単位からなる重合体、下記式(2)の単量体単位からなる重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位とからなる二元共重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位と下記式(4)の単量体単位とからなる三元共重合体、下記式(2)の単量体単位と下記式(5)の単量体単位と下記式(6)の単量体単位とを含む三元共重合体、下記式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体、下記式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、下記式(9)の2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびその塩、下記式(10)の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸およびその塩が好ましい。
【0024】
これらのうち、下記式(1)の単量体単位を含む重合体、下記式(2)の単量体単位を含む重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(1)の単量体単位と下記式(3)の単量体単位と下記式(4)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(2)の単量体単位と下記式(5)の単量体単位と下記式(6)の単量体単位とを含む共重合体、下記式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体、下記式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、下記式(9)の2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびその塩、下記式(10)の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸およびその塩は、通常、スケール抑制剤としての機能の他に、鉄系金属用の金属防食剤としても機能する。
【0025】
【化11】
(1)
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【0026】
【化12】
(2)
(式(2)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【0027】
【化13】
(3)
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキルスルホン酸基もしくはその塩、または、炭素数6~10のアリールスルホン酸基もしくはその塩を表し、塩の場合は1価もしくは2価の金属塩、アンモニウム塩または有機アンモニウム塩である。)
【0028】
【化14】
(4)
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表すが、少なくとも一方が炭素数1~10のアルキル基である。)
【0029】
【化15】
(5)
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【0030】
【化16】
(6)
(式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキル基である。)
【0031】
【化17】
(7)
(式(7)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Zは、-CONHC(CHCHSONaを表し、h,l,m,nはそれぞれ0または正の整数であり、h+l+m+nは、1~100の整数である。)
【0032】
【化18】
(8)
(式(8)中、Yは、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、m,nはそれぞれ0または正の整数であり、m+nは、1~100の整数である。)
【0033】
【化19】
(9)
(式(9)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【0034】
【化20】
(10)
(式(10)中、YおよびYは、それぞれ独立に水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)
【0035】
なお、式(1)~(3)における有機アンモニウム塩としては、例えば、炭素原子数が1~4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を有するアルキルアンモニウム基または(ヒドロキシ)アルキルアンモニウム基が好ましい。
【0036】
式(1)~(3)における1価もしくは2価の金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
【0037】
式(3)におけるXがアルキルスルホン酸基もしくはその塩である場合のアルキル基としては、炭素原子数が1~8のアルキル基が好ましい。Xがアリールスルホン酸基もしくはその塩である場合のアリール基としては、炭素原子数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基が好ましい。
【0038】
式(4)~(6)におけるアルキル基としては、炭素原子数が1~8のアルキル基が好ましい。
【0039】
式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位とからなる二元共重合体における単量体単位の重量比率としては、1~99:99~1であることが好ましい。
【0040】
式(1)の単量体単位と式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位とからなる三元共重合体における単量体単位の重量比率としては、1~98:1~98:1~98であることが好ましい。
【0041】
式(2)の単量体単位と式(5)の単量体単位と式(6)の単量体単位とからなる三元共重合体における単量体単位の重量比率としては、1~98:1~98:1~98であることが好ましい。
【0042】
式(1)~(6)の単量体単位を含む重合体の重量平均分子量は、500~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が500未満あるいは100,000を超えると、スケール抑制性能が低下する場合がある。
【0043】
式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体の重量平均分子量は、500~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が500未満あるいは100,000を超えると、スケール抑制性能が低下する場合がある。式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸の重量平均分子量は、500~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が500未満あるいは100,000を超えると、スケール抑制性能が低下する場合がある。
【0044】
式(7),(8),(9),(10)におけるアルカリ金属原子としては、ナトリウム原子、カリウム原子が好ましく、ナトリウム原子がより好ましい。式(9)のYおよびYが水素原子である2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸は、以下の化合物である。
【化21】
【0045】
式(10)のYおよびYが水素原子である1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸は、以下の化合物である。
【化22】
【0046】
本実施形態に係る水処理剤組成物に含まれる全ヨウ素濃度は、組成物全体の量に対して0.7重量%~5.0重量%の範囲であることが好ましい。全ヨウ素濃度が組成物全体の量に対して0.7重量%未満であると、生物付着の制御に劣る場合があり、5.0重量%を超えると、保存性等の製剤安定性が損なわれる場合がある。
【0047】
本実施形態に係る水処理剤組成物の製剤pHは、12未満であることが好ましく、3以上12未満の範囲であることがより好ましく、5以上10以下の範囲がさらに好ましい。製剤pHが12以上であると、被処理水のpHが上昇しスケール成分が析出しやすくなる。また、製剤pHが3未満であると、被処理水のpHが低下し鉄系や銅系金属が腐食しやすくなる。
【0048】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、ヨウ素系酸化剤およびヨウ化物の両方を含む場合、ヨウ素系酸化剤に対する、ヨウ化物の質量の比率(ヨウ化物/ヨウ素系酸化剤)は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.7以上5.0以下であることがさらに好ましい。上記比率が1.0未満であると、不溶化物の量が増える場合があり、5.0を超えると、配合量に見合うほどの製剤安定化効果が得られず不経済になる場合がある。
【0049】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、ヨウ素系酸化剤およびヨウ化物の両方を含む場合、ヨウ素系酸化剤とヨウ化物との和に対するアルカリ剤の質量の比率[アルカリ剤/(ヨウ素系酸化剤+ヨウ化物)]は、製剤中のヨウ素保存安定性を向上させるため、0.4未満であることが好ましく、0.3未満であることがより好ましい。上記比率が0.4を超えると、ヨウ素系酸化剤成分の無効消費量が増え、また、製剤の保存中にヨウ素濃度が低下してしまう場合がある。
【0050】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちアルカリ剤のみを含む場合、水処理剤組成物の製剤直後のpHが8.4以上10.0以下であることが好ましく、9.0以上9.7以下であることがより好ましい。上記pHが8.4未満であると、不溶化物の量が増える場合があり、10.0を超えると、製剤中のヨウ素濃度が低下する場合がある。
【0051】
<水処理剤組成物の製造方法>
本実施形態に係る水処理剤組成物は、例えば、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちの少なくとも1つと、スケール抑制剤とを混合することにより得られ、例えば、ヨウ素系酸化剤と、ヨウ化物およびアルカリ剤のうちの少なくとも1つと、スケール抑制剤と、水とを混合することにより得られる。
【0052】
<水処理剤組成物を用いた水処理方法>
本実施形態に係る水処理剤組成物は、冷却水系、冷温水系、純水製造工程水系、排水回収工程水系、紙パルプ工程水系、集塵水系等の様々な水系において、用いることができる。本実施形態に係る水処理剤組成物は、例えば、冷却水等の工業用水システムの水処理や、生物付着汚染の進んだ配管洗浄等の水処理方法等に用いることができる。
【0053】
本実施形態に係る水処理剤組成物を添加した水系における全ヨウ素濃度は、0.1~150mg/Lであることが好ましい。水処理剤組成物を添加した水系における全ヨウ素濃度が0.1mg/L未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、150mg/Lより多いと、系内の金属材質を腐食させる場合がある。
【実施例
【0054】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1~18>
実施例については、表1~表4に示す配合組成(重量%)および順番で添加(表の上から順番に添加)して製剤化を行った。製剤化は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の容器内で、室温(25℃)以下に冷却し、スターラで撹拌しながら各薬剤を添加して行った。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
表1~表4において、「PAA」は、アクリル酸単独重合体(重量平均分子量約4,500)、「AABI」は、アクリル酸と、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアクリル酸系二元共重合体(重量平均分子量約4,500)、「AATER」は、アクリル酸と、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と、アルキルアクリルアミドのアクリル酸系三元共重合体(重量平均分子量約4,500)、「PMAA」は、マレイン酸単独重合体(重量平均分子量約1,000)、「PMAVA」は、マレイン酸と、アクリル酸エチルと、ビニルアセテートのマレイン酸系三元重合体(重量平均分子量約1,000)である。「PCABI」は、式(7)のホスフィノカルボン酸共重合体(h+l+m+nの平均値が約16)、「BCAP」は、式(8)のビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸(m+nの平均値が約16)、「PBTC」は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、「HEDP」は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸である。水酸化カリウムは、関東化学社製の特級試薬、ヨウ化カリウムとヨウ素は、富士フィルム和光純薬社製の特級試薬を用いた。
【0061】
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製フタル酸塩pH(4.01)、標準液(第2種)、同社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0062】
実施例において、遊離ハロゲン濃度および全ハロゲン濃度は、試料を1万倍希釈し、HACH社の多項目水質分析計DR/3900を用いて、有効塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した。なお、遊離ヨウ素濃度および全ヨウ素濃度は、遊離塩素濃度、全塩素濃度として値を求めた後、塩素とヨウ素の分子量から算出した値を用いた。また、各水処理剤組成物について、25℃、遮光下で10日間保存したあとの全ヨウ素濃度を測定し、製剤化直後の全ヨウ素濃度に対する残存率を算出した。また、表1,2,3,4の組成物については、不溶化物の有無を目視で確認した。
【0063】
実施例の組成物では、酸化剤系スライム抑制剤であるヨウ素系酸化剤と、特定のポリマとをpH10未満で配合することにより、無機系スライム抑制剤のスライム抑制性能の著しい低下(酸化力の著しい低下)を抑制しつつ、一剤化することができた。また、表1,2のヨウ素系酸化剤およびヨウ化物の両方を含む組成物については、ヨウ素系酸化剤に対するヨウ化物の質量比が1.2以上である場合に、不溶化物を生成させずにヨウ素系酸化剤とポリマとを一剤化することができ、製剤化直後の全ヨウ素濃度は2.8重量%以上と、高濃度のヨウ素を含有する組成物が得られた。表3,4のヨウ化物およびアルカリ剤のうちアルカリ剤のみを含む組成物については、製剤化直後のpHが9.0以上9.7以下の場合に、製剤化直後の全ヨウ素濃度は0.6重量%以上と、高濃度のヨウ素を含有する組成物が得られた。なお、いずれの実施例についても、全ヨウ素における遊離ヨウ素の割合は90%以上と、酸化力が高い状態のまま一剤化できていることもわかった。
【0064】
このように、酸化剤系殺菌組成物のスライム抑制性能の著しい低下を抑制しつつ、スケール抑制剤を配合した一剤化された水処理剤組成物が得られ、その水処理剤組成物を用いた水処理方法を提供することができた。