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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240404BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B25J13/08 A
H01L21/68 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020071210
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167044
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】濱沖 孟
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203402(JP,A)
【文献】特開2006-318975(JP,A)
【文献】特開2012-020360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状または正方形状に形成される複数枚の搬送対象物が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部から前記搬送対象物を搬出する産業用ロボットであって、
前記搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記ハンドおよび前記アームを昇降させる昇降機構とを備え、
前記ハンドは、前記搬送対象物が載置される複数本のフォークと、前記収容部に収容される前記搬送対象物の端面を検知するための反射型の光学式センサとを備え、
前記光学式センサは、複数本の前記フォークのうちの少なくとも2本の前記フォークの先端に取り付けられ、
前記収容部から前記搬送対象物を搬出する前に、前記フォークの先端が前記収容部側を向いている状態の前記ハンドを前記昇降機構によって昇降させて、前記収容部に収容される前記搬送対象物の端面を前記光学式センサで検知することを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記光学式センサは、複数本の前記フォークの全ての前記フォークの先端に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ハンドは、2本の前記フォークを備えることを特徴とする請求項2記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長方形状または正方形状に形成される搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ用のガラス基板等の長方形状のワークを搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、たとえば、収容カセットからワークを搬出して、所定の処理装置までワークを搬送する。収容カセットには、複数枚のワークが上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。収容カセットの内部には、ワークが載置される複数の棚が形成されている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットは、ワークが搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結される多関節アームと、多関節アームの基端側が回動可能に連結される基台とを備えている。また、この産業用ロボットは、多関節アームを伸縮させるアーム駆動機構と、ハンドおよびアームを昇降させる昇降機構と、基台を回動させる回動機構と、基台を水平方向に移動させる移動機構とを備えている。ハンドは、ワークが載置される2本のフォーク(載置部)を備えている。2本のフォークのうちの1本のフォークの先端には、収容カセットに収容されるワークの有無を検知するためのマッピングセンサが取り付けられている。マッピングセンサは、反射型の光学式センサである。
【0004】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、収容カセットに収容されるワークを搬出する前に、ハンドを収容カセットの前面で昇降させてマッピングセンサを収容カセットの前面に沿って走査させることで、収容カセットの内部に形成される複数の棚のうちのどの棚にワークが載置されているのかを特定している。また、この産業用ロボットでは、特定された棚に載置されたワークの下側に2本のフォークを差し込んで、フォークの上面側にワークを載置する。すなわち、この産業用ロボットでは、マッピングセンサの検知結果に基づいて昇降機構によってハンドを昇降させるとともに、収容カセットに向かってアームを伸ばして、収容カセットに収容されるワークの下側にフォークを差し込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-272526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、長方形状または正方形状の大型のパネルの上に多数のチップを並べて複数の半導体パッケージを一括で製造する工法(パネルレベルパッケージング(PLP))が普及し始めており、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで産業用ロボットが使用され始めている。PLPには、多数のチップが載置されたパネルの上面を樹脂でコーティング(封止)する工程等が含まれており、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われるパネルには、大きな反りが生じやすい。
【0007】
本願発明者は、特許文献1に記載の産業用ロボットにおいて、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われるパネルのように大きな反りが生じている搬送対象物を、たとえば、収容カセットから搬出して処理装置に搬入することを検討している。しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットによって収容カセットから搬送対象物を搬出する場合、収容カセットに収容される搬送対象物に大きな反りが生じていると、マッピングセンサの検知結果に基づいて昇降機構によってハンドを昇降させるとともに、収容カセットに向かってアームを伸ばしたときに、収容カセットに収容された搬送対象物と差し込まれるフォークとが干渉するおそれが高くなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0008】
具体的には、特許文献1に記載の産業用ロボットによって収容カセットから搬送対象物を搬出する場合、収容カセットに収容される搬送対象物に大きな反りが生じていると、マッピングセンサの検知結果に基づいて昇降機構によってハンドを昇降させるとともに、収容カセットに向かってアームを伸ばしたときに、搬出しようとしている搬送対象物と差し込まれるフォークとが干渉したり、搬出しようとしている搬送対象物の下側に配置される搬送対象物と差し込まれるフォークとが干渉したりするおそれが高くなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、長方形状または正方形状に形成される複数枚の搬送対象物が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部から搬送対象物を搬出する産業用ロボットにおいて、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、収容部に収容される搬送対象物と収容部に差し込まれるハンドのフォークとが干渉するおそれを低減することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、長方形状または正方形状に形成される複数枚の搬送対象物が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部から搬送対象物を搬出する産業用ロボットであって、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが連結されるアームと、ハンドおよびアームを昇降させる昇降機構とを備え、ハンドは、搬送対象物が載置される複数本のフォークと、収容部に収容される搬送対象物の端面を検知するための反射型の光学式センサとを備え、光学式センサは、複数本のフォークのうちの少なくとも2本のフォークの先端に取り付けられ、収容部から搬送対象物を搬出する前に、フォークの先端が収容部側を向いている状態のハンドを昇降機構によって昇降させて、収容部に収容される搬送対象物の端面を光学式センサで検知することを特徴とする。
【0011】
本発明の産業用ロボットでは、複数本のフォークのうちの少なくとも2本のフォークの先端に、収容部に収容される搬送対象物の端面を検知するための反射型の光学式センサが取り付けられている。また、本発明では、収容部から搬送対象物を搬出する前に、フォークの先端が収容部側を向いている状態のハンドを昇降機構によって昇降させて、収容部に収容される搬送対象物の端面を光学式センサで検知している。そのため、たとえば、水平方向のうちのフォークが差し込まれる方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、本発明では、搬送対象物の端面の、左右方向においてフォークが差し込まれる位置に配置される少なくとも2箇所の部分の高さを光学式センサによって検知することが可能になる。
【0012】
したがって、本発明では、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、光学式センサの検知結果に基づいてハンドの高さを補正してから収容部にフォークを差し込むことで、収容部に収容される搬送対象物と収容部に差し込まれるハンドのフォークとが干渉するおそれを低減することが可能になる。また、本発明では、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、光学式センサの検知結果に基づいてハンドの高さを補正してから収容部にフォークを差し込むことで、収容部から搬出される搬送対象物に対する適切な高さで収容部にフォークを差し込むことが可能になる。
【0013】
また、本発明では、搬送対象物の端面の、左右方向においてフォークが差し込まれる位置に配置される少なくとも2箇所の部分の高さを光学式センサによって検知することが可能になるため、光学式センサの検知結果に基づいて、収容部において上下方向で重なる2枚の搬送対象物の間に、フォークを差し込むことができる隙間が形成されているのか否かを判別しやすくなる。したがって、本発明では、収容部において上下方向に重なる2枚の搬送対象物の間に、フォークを差し込むことができる隙間が形成されていないときに、収容部にフォークが差し込まれるおそれを低減することが可能になる。
【0014】
本発明において、光学式センサは、複数本のフォークの全てのフォークの先端に取り付けられていることが好ましい。この場合には、ハンドは、たとえば、2本のフォークを備えている。すなわち、この場合には、たとえば、ハンドが有する2本のフォークの先端に光学式センサが取り付けられている。
【0015】
このように構成すると、搬送対象物の端面の、左右方向においてフォークが差し込まれる位置に配置される全ての部分の高さを光学式センサによって検知することが可能になる。したがって、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、光学式センサの検知結果に基づいてハンドの高さを補正してから収容部にフォークを差し込むことで、収容部に収容される搬送対象物と収容部に差し込まれるハンドのフォークとの干渉を防止することが可能になる。また、このように構成すると、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、光学式センサの検知結果に基づいてハンドの高さを補正してから収容部にフォークを差し込むことで、収容部から搬送される搬送対象物に対するより適切な高さで収容部にフォークを差し込むことが可能になる。
【0016】
さらに、このように構成すると、搬送対象物の端面の、左右方向においてフォークが差し込まれる位置に配置される全ての部分の高さを光学式センサによって検知することが可能になるため、光学式センサの検知結果に基づいて、収容部において上下方向で重なる2枚の搬送対象物の間に、フォークを差し込むことができる隙間が形成されているのか否かを判別することが可能になる。したがって、収容部において上下方向で重なる2枚の搬送対象物の間に、フォークを差し込むことができる隙間が形成されていないときに、収容部にフォークが差し込まれるのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、長方形状または正方形状に形成される複数枚の搬送対象物が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部から搬送対象物を搬出する産業用ロボットにおいて、搬送対象物に大きな反りが生じていても、収容部から搬送対象物を搬出する際に、収容部に収容される搬送対象物と収容部に差し込まれるハンドのフォークとが干渉するおそれを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの背面図である。
図3図1に示す収容カセットの構成を説明するための正面図である。
図4図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
図5図1に示す産業用ロボットの効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の背面図である。図3は、図1に示す収容カセット3の構成を説明するための正面図である。図4は、図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0021】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2を搬送するための水平多関節型のロボットである。本形態の搬送対象物2は、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われる大型のパネルである。搬送対象物2は、長方形または正方形の平板状に形成されている。ロボット1は、複数枚の搬送対象物2が収容される収容部としての収容カセット3から、搬送対象物2に対して所定の処理を行う処理装置4まで搬送対象物2を搬送する。すなわち、ロボット1は、収容カセット3から搬送対象物2を1枚ずつ搬出するとともに、収容カセット3から搬出した搬送対象物2を処理装置4に搬入する。収容カセット3には、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。
【0022】
ロボット1は、搬送対象物2が搭載される2個のハンド5、6と、ハンド5が先端側に回動可能に連結されるアーム7と、ハンド6が先端側に連結されるアーム8と、アーム7、8の基端側が回動可能に連結される本体部9と、本体部9の下側部分が収容されるケース体10と、本体部9およびケース体10を水平方向に移動可能に支持するベース11とを備えている。
【0023】
ハンド5、6は、アーム7、8の先端側に回動可能に連結されるハンド基部12と、上面側に搬送対象物2が載置される直線状の複数のフォーク13とを備えている。本形態のハンド5、6は、2本のフォーク13を備えている。2本のフォーク13は、ハンド基部12から水平方向の同方向へ突出している。また、2本のフォーク13は、互いに間隔をあけた状態で平行に配置されている。ハンド5のフォーク13とハンド6のフォーク13とは、同じ方向に突出している。また、ハンド5のフォーク13とハンド6のフォーク13とは、上下方向でずれている。2本のフォーク13は、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、収容カセット3の中に差し込まれる。
【0024】
また、ハンド5、6は、収容カセット3に収容される搬送対象物2の端面を検知するための反射型の光学式センサ14、15(以下、「センサ14、15」とする。)を備えている。センサ14、15は、発光部18と受光部19とを備えている。センサ14、15は、2本のフォーク13の先端に取り付けられている。発光部18は、フォーク13の先端から水平方向に光を射出する。本形態では、センサ14は、2本のフォーク13のうちの一方のフォーク13の先端に取り付けられ、センサ15は、2本のフォーク13のうちの他方のフォーク13の先端に取り付けられている。すなわち、2本のフォーク13の全てのフォーク13の先端にセンサ14またはセンサ15が取り付けられている。
【0025】
アーム7、8は、水平方向に伸縮する多関節アームである。アーム7、8は、第1アーム部16と第2アーム部17との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部16の基端側は、本体部9に回動可能に連結されている。第1アーム部16の先端側には、第2アーム部17の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部17の先端側には、ハンド5、6が回動可能に連結されている。
【0026】
第1アーム部16は、本体部9よりも上側に配置されている。第2アーム部17は、第1アーム部16よりも上側に配置されている。ハンド5、6は、第2アーム部17よりも上側に配置されている。アーム7の第1アーム部16の基端側とアーム8の第1アーム部16の基端側とは、水平方向において互いに隣接した状態で本体部9に連結されている。また、アーム7とアーム8とは、互いに隣接した状態で配置されており、上下方向において同じ位置に配置されている。
【0027】
水平方向において、本体部9に対する第1アーム部16の回動中心と第1アーム部16に対する第2アーム部17の回動中心との距離と、第1アーム部16に対する第2アーム部17の回動中心と第2アーム部17に対するハンド5、6の回動中心との距離とは等しくなっている。アーム7、8は、ハンド5、6の先端(フォーク13の先端)が本体部9から離れるようにアーム7、8が伸びる位置と、ハンド5、6の先端が本体部9に近づくようにアーム7、8が縮む位置との間で水平方向に伸縮可能となっている。アーム7、8の伸縮量が等しいときに、ハンド5のフォーク13とハンド6のフォーク13とは上下方向で重なっている。また、このときには、上下方向から見ると、アーム7とアーム8とは線対称に配置されている。
【0028】
本体部9は、ケース体10に対して上下方向を回動の軸方向として回動可能になっている。また、本体部9は、ケース体10に対して昇降可能になっている。ケース体10は、ベース11に対して水平方向に直線的に移動可能となっている。以下の説明では、ベース11に対するケース体10の移動方向(図1等のY方向)を「左右方向」とし、左右方向と上下方向とに直交する図1等のX方向を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である図1等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。
【0029】
本形態では、たとえば、収容カセット3は、前後方向においてロボット1の一方側に配置され、処理装置4は、前後方向においてロボット1の他方側に配置されている。たとえば、収容カセット3は、ロボット1の前側に配置され、処理装置4は、ロボット1の後ろ側に配置されている。上述のように、収容カセット3には、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。収容カセット3の内部には、図3に示すように、搬送対象物2の左右方向の両端部が載置される複数の載置部3aが形成されている。
【0030】
収容カセット3に収容される搬送対象物2の端面は、前後方向または左右方向と略平行になっている。また、ハンド5、6に搭載される搬送対象物2の端面は、前後方向または左右方向と略平行になっている。ハンド5、6が収容カセット3から搬送対象物2を受け取るときには、2本のフォーク13は、前後方向と略平行になっている。このときの2本のフォーク13の左右方向の間隔は、収容カセット3に収容される搬送対象物2の左右方向の幅よりも狭くなっている。
【0031】
すなわち、このときのセンサ14とセンサ15との左右方向の間隔は、収容カセット3に収容される搬送対象物2の左右方向の幅よりも狭くなっている。また、このときの2本のフォーク13の左右方向の間隔は、1枚の搬送対象物2が載置される2個の載置部3aの左右方向の間隔よりも狭くなっている。すなわち、このときのセンサ14とセンサ15との左右方向の間隔は、1枚の搬送対象物2が載置される2個の載置部3aの左右方向の間隔よりも狭くなっている。
【0032】
また、ロボット1は、アーム7を伸縮させるアーム駆動機構20と、アーム8を伸縮させるアーム駆動機構21と、本体部9を回動させる回動機構22と、本体部9を昇降させる昇降機構23と、ケース体10と一緒に本体部9を水平方向に移動させる水平移動機構24と、ロボット1を制御する制御部25とを備えている。制御部25には、センサ14、15が電気的に接続されている。
【0033】
アーム駆動機構20は、駆動源となるモータと、モータの動力をアーム7およびハンド5に伝達する動力伝達機構とを備えている。アーム駆動機構20は、本体部9に対してハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するようにアーム7を伸縮させる。アーム駆動機構21は、アーム駆動機構20と同様に、駆動源となるモータと、モータの動力をアーム8およびハンド6に伝達する動力伝達機構とを備えている。アーム駆動機構21は、本体部9に対してハンド6が一定方向を向いた状態で直線的に移動するようにアーム8を伸縮させる。アーム駆動機構20、21は、制御部25に電気的に接続されている。具体的には、アーム駆動機構20、21のモータ等が制御部25に電気的に接続されている。
【0034】
上述のように、アーム7、8は、ハンド5、6の先端が本体部9から離れるようにアーム7、8が伸びる位置と、ハンド5、6の先端が本体部9に近づくようにアーム7、8が縮む位置との間で水平方向に伸縮可能となっている。本形態では、ロボット1が収容カセット3から搬送対象物2を受け取るとき、および、ロボット1が処理装置4に搬送対象物2を引き渡すときに、アーム7、8は伸びている状態となっている。
【0035】
回動機構22は、上下方向を回動の軸方向としてケース体10に対して本体部9を回動させる。すなわち、回動機構22は、上下方向を回動の軸方向として本体部9と一緒にハンド5、6およびアーム7、8を回動させる。回動機構22は、駆動源となるモータと、モータの動力を本体部9に伝達する動力伝達機構とを備えている。回動機構22は、ケース体10に収容されている。回動機構22は、制御部25に電気的に接続されている。具体的には、回動機構22のモータ等が制御部25に電気的に接続されている。
【0036】
昇降機構23は、ケース体10に対して本体部9を昇降させる。すなわち、昇降機構23は、本体部9と一緒にハンド5、6およびアーム7、8を昇降させる。また、昇降機構23は、本体部9と一緒に回動機構22を昇降させる。昇降機構23は、ケース体10に収容されている。昇降機構23は、駆動源となるモータと、モータの動力を本体部9に伝達する動力伝達機構とを備えている。昇降機構23は、制御部25に電気的に接続されている。具体的には、回動機構23のモータ等が制御部25に電気的に接続されている。
【0037】
水平移動機構24は、ベース11に対してケース体10を左右方向に直線的に移動させる。すなわち、水平移動機構24は、ケース体10と一緒にハンド5、6、アーム7、8および本体部9を左右方向に直線的に移動させる。水平移動機構24は、駆動源となるモータと、モータの動力をケース体10に伝達する動力伝達機構とを備えている。水平移動機構24は、制御部25に電気的に接続されている。具体的には、水平移動機構24のモータ等が制御部25に電気的に接続されている。
【0038】
本形態では、収容カセット3からの搬送対象物2の搬出を開始する前に、アーム駆動機構20によってアーム7を前後方向に伸縮させて、フォーク13の先端が前側を向いている状態のハンド5を収容カセット3の前まで移動させる。あるいは、収容カセット3からの搬送対象物2の搬出を開始する前に、アーム駆動機構21によってアーム8を前後方向に伸縮させて、フォーク13の先端が前側を向いている状態のハンド6を収容カセット3の前まで移動させる。
【0039】
また、その状態で、ハンド5またはハンド6を昇降させて、収容カセット3に収容される搬送対象物2の端面(後端面)をセンサ14、15で検知する。すなわち、本形態では、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する前(より具体的には、収容カセット3に収容される搬送対象物2をハンド5、6に搭載するためにフォーク13が収容カセット3に差し込まれる前)に、フォーク13の先端が収容カセット3側を向いている状態のハンド5またはハンド6を昇降機構23によって昇降させて、搬送対象物2の端面をセンサ14、15で検知する。
【0040】
フォーク13の先端が前側を向いている状態のハンド5またはハンド6が昇降すると、前後方向から見たときに、センサ14は、載置部3aよりも左右方向の内側の仮想通過線PL1(図3参照)に沿って上下方向に直線的に移動し、センサ15は、載置部3aよりも左右方向の内側の仮想通過線PL2(図3参照)に沿って上下方向に直線的に移動する。また、センサ14によって、収容カセット3に収容される複数枚の搬送対象物2のそれぞれの、左右方向の一端部の後端面の上下方向の位置が検知され、センサ15によって、収容カセット3に収容される複数枚の搬送対象物2のそれぞれの、左右方向の他端部の後端面の上下方向の位置が検知される。
【0041】
制御部25には、センサ14、15の出力信号(具体的には、受光部19の出力信号)が入力される。制御部25は、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、センサ14、15の検知結果に基づいてハンド5、6の高さを補正してから収容カセット3に2本のフォーク13を差し込む。すなわち、制御部25は、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、センサ14、15の検知結果に基づいて昇降機構23を制御してハンド5、6の高さを補正してから、アーム7、8を伸縮させて収容カセット3に2本のフォーク13を差し込む。
【0042】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド5、6の2本のフォーク13の先端に、収容カセット3に収容される複数枚の搬送対象物2の後端面を検知するためのセンサ14、15が取り付けられている。また、本形態では、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する前に、フォーク13の先端が収容カセット3側を向いている状態のハンド5またはハンド6を昇降させて、収容カセット3に収容される複数枚の搬送対象物2のそれぞれの後端面の上下方向の位置をセンサ14、15で検知している。
【0043】
すなわち、本形態では、搬送対象物2の後端面の、左右方向においてフォーク13が差し込まれる位置に配置される全ての部分の高さをセンサ14、15によって検知している。また、本形態では、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、センサ14、15の検知結果に基づいてハンド5、6の高さを補正してから収容カセット3に2本のフォーク13を差し込んでいる。
【0044】
そのため、本形態では、収容カセット3に収容される搬送対象物2に大きな反りが生じていても、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、収容カセット3に収容される搬送対象物2と収容カセット3に差し込まれるフォーク13との干渉を防止することが可能になる。
【0045】
たとえば、図5(A)に示すように、搬送対象物2に大きな反りが生じていて、搬送対象物2の後端面の、左右方向においてハンド5、6の2本のフォーク13のうちの一方のフォーク13が差し込まれる位置に配置される部分の高さと、搬送対象物2の後端面の、左右方向において他方のフォーク13が差し込まれる位置に配置される部分の高さとに差Δhが生じていても、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、収容カセット3に収容される搬送対象物2と収容カセット3に差し込まれるフォーク13との干渉を防止することが可能になる。
【0046】
なお、たとえば、ハンド5、6がセンサ14のみを備えていてセンサ15を備えていない場合には、センサ14の検知結果に基づいてハンド5、6の高さを補正してから収容カセット3に2本のフォーク13を差し込むと、図5(A)の二点鎖線で示す位置に2本のフォーク13が差し込まれて、一方のフォーク13と搬送対象物2とが干渉する場合が生じうる。
【0047】
これに対して、本形態では、センサ14、15の検知結果に基づいて、図5(A)の実線で示す位置に2本のフォーク13が差し込まれるようにハンド5、6の高さを補正することが可能になるため、搬送対象物2に大きな反りが生じていても、2本のフォーク13と搬送対象物2との干渉を防止することが可能になる。また、本形態では、収容カセット3に収容される搬送対象物2に大きな反りが生じていても、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、収容カセット3から搬出される搬送対象物2に対するより適切な高さで収容カセット3にフォーク13を差し込むことが可能になる。
【0048】
また、本形態では、搬送対象物2の後端面の、左右方向においてフォーク13が差し込まれる位置に配置される全ての部分の高さをセンサ14、15によって検知しているため、センサ14、15の検知結果に基づいて、収容カセット3において上下方向で重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されているのか否かを判別することが可能になる。
【0049】
たとえば、図5(B)に示すように、収容カセット3に収容される搬送対象物2の上下の間隔が比較的狭くなっている場合に搬送対象物2に大きな反りが生じていると、二点鎖線で示す位置にフォーク13が差し込まれるようにハンド5、6の高さを補正しても、また、実線で示す位置にフォーク13が差し込まれるようにハンド5、6の高さを補正しても、収容カセット3に収容される搬送対象物2とフォーク13とが干渉する場合があり、収容カセット3において上下方向で重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されていない場合があるが、本形態では、このような場合に、センサ14、15の検知結果に基づいて、収容カセット3において上下方向で重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されていないと判別することが可能になる。したがって、本形態では、収容カセット3において上下方向で重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されていないときに、収容カセット3にフォーク13が差し込まれるのを防止することが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態において、ハンド5、6が備えるフォーク13の数は、3本以上であっても良い。この場合には、3本以上のフォーク13の全てのフォーク13の先端にセンサ14またはセンサ15が取り付けられていることが好ましいが、3本以上のフォーク13のうちの少なくとも2本のフォーク13の先端にセンサ14またはセンサ15が取り付けられていれば良い。3本以上のフォーク13のうちの少なくとも2本のフォーク13の先端にセンサ14またはセンサ15が取り付けられていれば、搬送対象物2の後端面の、左右方向においてフォーク13が差し込まれる位置に配置される少なくとも2箇所の部分の高さをセンサ14、15によって検知することが可能になる。
【0052】
したがって、収容カセット3に収容される搬送対象物2に大きな反りが生じていても、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、センサ14、15の検知結果に基づいてハンド5、6の高さを補正してから収容カセット3にフォーク13を差し込むことで、収容カセット3に収容される搬送対象物2と収容カセット3に差し込まれるフォーク13とが干渉するおそれを低減することが可能になる。また、収容カセット3に収容される搬送対象物2に大きな反りが生じていても、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、センサ14、15の検知結果に基づいてハンド5、6の高さを補正してから収容カセット3にフォーク13を差し込むことで、収容カセット3から搬出される搬送対象物2に対する適切な高さでフォーク13を差し込むことが可能になる。
【0053】
また、3本以上のフォーク13のうちの少なくとも2本のフォーク13の先端にセンサ14またはセンサ15が取り付けられていれば、センサ14、15の検知結果に基づいて、収容カセット3において上下方向で重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されているのか否かを判別しやすくなる。したがって、収容カセット3において上下方向に重なる2枚の搬送対象物2の間に、フォーク13を差し込むことができる隙間が形成されていないときに、収容カセット3にフォーク13が差し込まれるおそれを低減することが可能になる。
【0054】
上述した形態において、収容カセット3から搬送対象物2を搬出する前に、フォーク13の先端が収容カセット3側を向いている状態のハンド5を昇降機構23によって昇降させて、搬送対象物2の後端面をセンサ14、15で検知するとともに、フォーク13の先端が収容カセット3側を向いている状態のハンド6を昇降機構23によって昇降させて、搬送対象物2の後端面をセンサ14、15で検知しても良い。
【0055】
この場合には、たとえば、ハンド5によって収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、ハンド5のフォーク13の先端に取り付けられたセンサ14、15での検知結果に基づいてハンド5の高さを補正し、ハンド6によって収容カセット3から搬送対象物2を搬出する際に、ハンド6のフォーク13の先端に取り付けられたセンサ14、15での検知結果に基づいてハンド6の高さを補正する。
【0056】
上述した形態では、アーム7とアーム8とは、上下方向において同じ位置に配置されており、水平方向において互いに隣接しているが、たとえば、特開2019-10692号公報に記載されているように、アーム7とアーム8とが上下方向において互いにずれた位置に配置されていても良い。また、上述した形態において、アーム7、8は、3個以上のアーム部によって構成されていても良い。さらに、上述した形態において、ロボット1が備えるハンドおよびアームの数は1個であっても良い。また、上述した形態において、搬送対象物2は、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われる大型のパネル以外のものであっても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 搬送対象物
3 収容カセット(収容部)
5、6 ハンド
7、8 アーム
13 フォーク
14、15 センサ(光学式センサ)
23 昇降機構
図1
図2
図3
図4
図5