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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240404BHJP
   H02K 7/04 20060101ALI20240404BHJP
   H02K 15/16 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
H02K7/04
H02K15/16 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020084522
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021180558
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】稲村 直樹
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-297882(JP,A)
【文献】実開昭60-066277(JP,U)
【文献】登録実用新案第3068616(JP,U)
【文献】実開昭53-067001(JP,U)
【文献】特開2007-151317(JP,A)
【文献】特開2010-234502(JP,A)
【文献】特開2005-218293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 7/04
H02K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石が配置される鉄心と、
この鉄心の軸方向負荷側端面及び反負荷側端面にそれぞれ取り付けられる負荷側及び反負荷側端板とを備え、
前記負荷側及び反負荷側端板の少なくとも一方には、バランス調整用の重りを取付ける複数のバーが放射状に形成されており、前記バーにおいて前記重りを取付ける位置が、回転中心側と外周側との間において変更可能であり、
前記端板は、前記バーの一部が、前記鉄心に隣り合って配置されている永久磁石の端部の間に係るように、前記鉄心に取り付けられている回転電機の回転子。
【請求項2】
複数の永久磁石が配置される鉄心と、
この鉄心の軸方向負荷側端面及び反負荷側端面にそれぞれ取り付けられる負荷側及び反負荷側端板とを備え、
前記負荷側及び反負荷側端板の少なくとも一方には、バランス調整用の重りを取付ける複数のバーが放射状に形成されており、前記バーにおいて前記重りを取付ける位置が、回転中心側と外周側との間において変更可能であり、
前記バーは、前記負荷側及び反負荷側端板の双方に形成されており、
前記負荷側端板と、前記反負荷側端板とは、それぞれに形成されているバーの周方向位置にずれが生じるように、前記鉄心の各端面にそれぞれ取り付けられている回転電機の回転子。
【請求項3】
前記バーは、径方向の幅が回転中心側から外周側にかけて増長するように形成されている請求項1又は2記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記複数のバーは、何れも同一の方向に湾曲するように形成されている請求項1からの何れか一項に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石型回転電機の回転子には複数の永久磁石が配置されるため、径方向に重量のアンバランスが発生していることが多く、製品として出荷する前にアンバランスを解消するための調整作業を行っている。その調整は、一般には工作機械等を用いて回転子の一部を削って行うことが多いが、例えば特許文献1に開示されているように、より簡易にバランス調整を行うことができる回転子の構造も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-218293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている回転子の構造では、バランス調整を行う際の自由度が高いとは言えず、必ずしも調整作業を短時間内に完了できる保証はない。
そこで、バランス調整の自由度をより向上させることができる構造を有した回転電機の回転子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転電機の回転子は、複数の永久磁石が配置される鉄心と、この鉄心の軸方向前端面及び後端面にそれぞれ取り付けられる負荷側及び反負荷側端板とを備え、前記負荷側及び反負荷側端板の少なくとも一方には、バランス調整用の重りを取付ける複数のバーが放射状に形成されており、前記バーにおいて前記重りを取付ける位置が、回転中心側と外周側との間において変更可能となっている。
そして、前記端板は、前記バーの一部が、前記鉄心に隣り合って配置されている永久磁石の端部の間に係るように、前記鉄心に取り付けられている。または、前記バーは、前記負荷側及び反負荷側端板の双方に形成されており、前記負荷側端板と、前記反負荷側端板とは、それぞれに形成されているバーの周方向位置にずれが生じるように、前記鉄心の各端面にそれぞれ取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態であり、端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す正面図
図2】端板のバーに重りが取り付けられた状態を背面側から示す斜視図
図3】回転子の側面図
図4】第2実施形態であり、端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す正面図
図5】第3実施形態であり、端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す正面図
図6】第4実施形態であり、バーに形成したねじ穴を示す図
図7】ねじ穴にねじを螺合した状態を示す図
図8】第5実施形態であり、バーに形成した樹脂注入孔を示す図
図9】樹脂注入孔に圧入される成形した樹脂の形状を示す図
図10】第6実施形態であり、負荷側の端板と、反負荷側の端板とをそれぞれ回転子鉄心に取り付けた状態を示す図
図11】第7実施形態であり、負荷側の端板と、反負荷側の端板とをそれぞれ回転子鉄心に取り付けた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態の回転子1は、回転軸2と、回転子鉄心3と、端板4L及び4Oとを備えている。回転子1は、図示しない固定子と共にインナーロータ形の永久磁石モータを構成するもので、固定子の内周部に収納される。回転子鉄心3は、複数枚の打抜鋼板を軸方向に積層して構成されており、外周部には、永久磁石5を収納するためのスロットが複数形成されている。
【0008】
端板4L及び4Oは、回転子鉄心3に収容された、図1に破線で示す永久磁石5の脱落を防止するため、回転子鉄心3の図3中左側である負荷側端面と、同右側である反負荷側端面とにそれぞれ取り付けられる。図1に示すように、本実施形態の端板4は、回転軸2の挿入穴6から、外周側に延びる複数,例えば24本のバー7を有しており、例えば複数のスポークを備えた車輪のような外観となっている。そして、これらのバー7には、回転子1のバランスを調整するための重り8が、図2に示すように、バー7に巻き付けるようにして取り付けられる。
【0009】
重り8は、例えば金属製や樹脂製であり、一辺に切欠きを有した矩形枠状に形成されている。そして、重り8を、その切欠き部分を開くように弾性変形させてバー7を正面側から挟み込むと、重り8の弾性力により開いた切欠き部分が閉じることで、重り8がバー7に巻付いた状態で取り付けられる。
【0010】
また、回転子鉄心3には、6極の永久磁石5が収容されているが、24本のバー7のうち60度の間隔毎の6本は、隣り合う2つの永久磁石5の端部の間に係るように、端板4が取り付けられている。
【0011】
以上のように本実施形態によれば、回転子鉄心3の軸方向で負荷側の端面及び反負荷側の端面にそれぞれ取り付けられる端板4L,4Oに、バランス調整用の重り8を取付ける複数のバー7を放射状に形成し、バー7に重り8を取付ける位置を、回転中心側と外周側との間で変更可能とした。このように構成すれば、重り8を径方向に取付ける位置の自由度を従来よりも高めることができ、回転子1のバランス調整作業をより容易に行うことが可能になる。
【0012】
また、端板4を、バー7の一部が、回転子鉄心3に隣り合って配置されている永久磁石5の端部の間に係るように鉄心3に取り付ける。すなわち、回転子1の径方向にアンバランスが生じる主な要因の1つは、個別の永久磁石5の重量がばらつくことである。したがって、2つの永久磁石5の端部の間に位置するバー7に重り8を取り付けてバランス調整を行うことで、調整を効率的に行うことができる。
(第2実施形態)
【0013】
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図4に示すように、第2実施形態の回転子11は、永久磁石の配置が異なる回転子鉄心12に端板4を取り付けた構成である。回転子鉄心12には、12極の永久磁石13が、それらの隣接する2つの組が浅いV字状をなすようにして外周部に収容されている。この回転子鉄心12に対して、端板4は、複数のうち30度の間隔毎の12本のバー7は、隣り合う2つの永久磁石13の端部の間に係るように取り付けられている。このような第2実施形態による場合も、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0014】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態の回転子21は、第2実施形態の回転子鉄心12に端板22を取り付けた構成である。端板22が有するバー23の本数は端板4と同様であるが、バー23は、その途中部位が図中右方向に若干湾曲していると共に、径方向の幅寸法が、中心側から外周側にかけて漸次増長するように形成されている。そして、端板22は、第2実施形態と同様に、30度の間隔毎の12本のバー23が、隣り合う2つの永久磁石13の端部の間に係るように取り付けられている。
【0015】
以上のように第3実施形態によれば、バー23の径方向の幅寸法が外周に向けて漸次増長する形状であることにより、回転子21が回転することに伴い発生した遠心力が重り8に作用した際に、重り8の取り付け位置が当初の位置よりも外周方向にずれてしまうことを抑止できる。
【0016】
(第4実施形態)
第4実施形態は、図6に示すように、端板4の各バー7に、重り取付け用のねじ穴24を、径方向に複数形成したものを端板4Aとして用いる。そして、図7に示すように、重りとしてのねじ25を、ねじ穴24に螺合させることでバランス調整を行う。
【0017】
(第5実施形態)
第5実施形態は、図8に示すように、端板4の各バー7に、ねじ穴24に替えて樹脂中入用の注入孔26,27などを形成したものを、端板4B,4Cとして用いる。注入孔26は縦断面形状がT字状である。注入孔27は、縦断面形状が概ね矢印状であり、注入孔26の矢印の頭部分が矩形状である。そして、注入孔26,27に樹脂28を充填することでバランス調整用の重りとする。
【0018】
また、樹脂28を充填することに替えて、図9に示すように、予め成形された重りとしての樹脂29,30を、それぞれ注入孔26,27に圧入しても良い。樹脂29の形状は、注入孔26は縦断面形状に応じた概ねT字状であり、樹脂30の形状は、注入孔27の形状に応じた矢印状である。これらのように樹脂29,30を成形することで、注入孔26,27に圧入した後の脱落を防止する。尚、圧入が可能であれば、樹脂29,30と同じ形状の重りを金属製としても良い。
【0019】
(第6実施形態)
第6実施形態は、回転子鉄心3に端板31を取り付ける際に、負荷側と反負荷側との組付け状態を示す。端板31は、第1実施形態の端板4におけるバー7の本数を「18」としたものである。例えば図10に示すように、負荷側の端板31Lを、1つのバー7と、そこから180度の位置にあるバー7とが垂直線に沿うように回転子鉄心3に取り付ける。これに対して、反負荷側の端板31Oは、端板31Lにおける上記の基準とするバー7に対応するバー7が、10度回転させた位置となるように取り付ける。これにより、端板31L,31Oのそれぞれにおいて、バー7に取り付ける重り8の径方向位置に変化を持たせて、回転子のバランス調整をより多様に行うことができる。
【0020】
(第7実施形態)
第7実施形態は、第3実施形態のバー23を18本有する端板32について、負荷側と反負荷側との組付け状態を示す。図11に示すように、負荷側の端板32Lを、1つのバー23と、そこから180度の位置にあるバー23とが垂直線に係るように回転子鉄心12に取り付ける。これに対して、反負荷側の端板32Oは、端板22を裏返した状態で、端板22Lにおける上記の基準とするバー23に対応するものが、垂直線に係るように回転子鉄心12に取り付ける。この場合も、端板32L,32Oのそれぞれにおいて、バー23に取り付ける重り8の径方向位置に変化を持たせることができる。
【0021】
(その他の実施形態)
端板は、負荷側,反負荷側の何れか一方のみに配置しても良い。
第6実施形態において反負荷側をずらす回転角は、10度に限らない。
第7実施形態を第3実施形態の構成に適用して、何れも同じ面の端板22を、一方の基準とするバー23に対応する他方のバー23を、回転させた状態で取り付けても良い。
第4,第5実施形態に、第6,第7実施形態を適用しても良い。
端板のバーと永久磁石との配置関係は、例示したものに限らず、必ずしもバーの一部が2つの永久磁石の間に係るようにする必要はない。
バーの本数や永久磁石の極数は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
図面中、1は回転子、2は回転軸、3は回転子鉄心、4は端板、5は永久磁石、7はバー、8は重り、11は回転子、13は永久磁石、21は回転子、22は端板、23はバー、25はねじ、28~30は樹脂、31,32は端板を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11