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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】路面切断方法および路面切断装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E02D29/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020087044
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181691
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】597008290
【氏名又は名称】志賀産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】児玉 利治
(72)【発明者】
【氏名】小島 敏
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-300843(JP,A)
【文献】特開2008-150788(JP,A)
【文献】特開2005-290770(JP,A)
【文献】特許第3371254(JP,B2)
【文献】特開昭63-055204(JP,A)
【文献】特開2001-295216(JP,A)
【文献】特開2004-324232(JP,A)
【文献】米国特許第06390086(US,B1)
【文献】国際公開第2009/040899(WO,A1)
【文献】特開2014-005601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12-29/14
E03F 1/00-11/00
E01C 21/00-23/24
B28D 1/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)路面切断装置をマンホールの中心上に旋回可能にとりつける準備工程であって、前記路面切断装置は、
前記マンホールの中心に対して旋回可能な本体と、
前記本体に接続され、路面に対して上下に傾動可能な軸体と、
前記軸体に軸支された円形状の第1のブレードと、
前記軸体に前記第1のブレードよりも外側で軸支され、前記軸体に垂直な断面における径が前記第1のブレードの前記軸体に垂直な断面におけるよりも大きい円形状の第2のブレードと、
前記第1のブレードと前記第2のブレードとを回転させるためのモータと、
を備える、準備工程と、
(b)前記モータを駆動して前記第1のブレード及び前記第2のブレードを回転させるとともに、前記軸体を路面に向けて傾動させて、前記第1のブレード及び前記第2のブレードを前記路面に鋭角に切り込ませる工程と、
(c)前記本体を前記路面上で1周又は複数周旋回させることで、回転する前記第1のブレードをマンホールの中心から第1の距離で旋回させて路面を切断するとともに、回転する前記第2のブレードを前記中心から前記第1の距離よりも大きい第2の距離で旋回させて路面を切断し、平面視で大小2つの同心円状の切断面を同時に形成する切断工程と、
(d)前記2つの切断面間の路面から切断塊を撤去して、前記マンホールの受枠のボルトを露出させる工程と、
を備える路面切断方法。
【請求項2】
前記(c)の工程において、前記第1の距離は、前記マンホールの中心から前記マンホールの受枠のボルトまでの距離よりも大きい、請求項1に記載の路面切断方法。
【請求項3】
(e)前記(d)の工程の後に、露出した前記マンホールの受枠のボルトを撤去する工程をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の路面切断方法。
【請求項4】
(f)前記(e)の工程の後に、前記マンホールの受枠を取り外す工程をさらに備える、請求項3に記載の路面切断方法。
【請求項5】
マンホールの中心に対して旋回可能な本体と、
前記本体に接続され、路面に対して上下に傾動可能な軸体と、
前記軸体に軸支された円形状の第1のブレードと、
前記軸体に前記第1のブレードよりも外側で軸支され、前記軸体に垂直な断面における径が前記第1のブレードの前記軸体に垂直な断面におけるよりも大きい円形状の第2のブレードと、
前記第1のブレードと前記第2のブレードとを回転させるためのモータと、
を備えた路面切断装置。
【請求項6】
前記軸体における前記第1のブレードの軸支位置は、前記第1のブレードによる路面の切断径が前記マンホールの受枠のボルトより外側になるように設定される、請求項5に記載の路面切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面切断方法および路面切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したマンホールの蓋及び受枠を取り替えるために、マンホール周囲の路面を切断して取り除き、マンホールの蓋及び受枠を交換した後に、マンホール周囲の路面を充填剤で充填することが行われている。
【0003】
路面を切断する方法としては、球面上カッターを備えた路面用カッター装置を360°旋回させることにより路面を切断する方法(パラボラ工法)が知られている(例えば、特許文献1)。パラボラ工法によれば、路面の切断面が側面視円弧状となるため、補修後の路面上に鉛直方向の力がかかったとしても、当該力を切断面において効率的に分散させることができ、補修後の路面の陥没や破壊を防止できる。
【0004】
ここで、近年のマンホールは、マンホールの受枠とマンホールの下部躯体(マンホールの立坑を構成するコンクリート管)とをボルトで締結することが義務付けられている。これは、マンホール上の車の移動等による蓋のずれや、ゲリラ豪雨等でマンホール内の水圧が上昇して蓋が飛散する事故等を未然に防ぐためであるが、マンホールの受枠を撤去する際には、このボルトを外す又は切断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-332522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボルトで締結されたマンホールの受枠を撤去する際には、例えば、ボルト上の路面を破砕してボルトを取り外す方法や、内径切断機を用いてマンホールの内側からボルトを切断する方法はあるものの、破砕による撤去は騒音の問題があり特に都市部では難しく、また、内径切断機による撤去には、かなりの時間を要してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、マンホールの蓋及び受枠の交換工事をより迅速かつ容易にすることのできる路面切断方法及び路面切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる路面切断方法は、円形状の第1のブレードと、前記第1のブレードよりも径の大きい円形状の第2のブレードとを準備する準備工程と、回転する前記第1のブレードをマンホールの中心から第1の距離で旋回させて路面を切断し、回転する前記第2のブレードを前記中心から前記第1の距離よりも大きい第2の距離で旋回させて路面を切断する切断工程と、を備える。
【0009】
この構成によれば、第1のブレードと第2のブレードのマンホールの中心からの旋回位置が異なるので、第1のブレードと第2のブレードを360度旋回させた場合、路面の切断面は、大小2つの同心円(中心をマンホールの中心とし第1の距離を半径とする小円と、中心をマンホールの中心として半径を第1の距離より大きい第2の距離とする大円)になる。また第1のブレードと第2のブレードの径が異なるのでこの大小2つの同心円状の切断面は側面視においても相違する。すなわち、第1のブレードによる切断面(内側の小円)は、切断深さが浅くなり、より径の大きい第2のブレードによる切断面(外側の小円)は、切断深さが深くなる。
【0010】
路面に深さの異なる大小2つの同心円状の切断面を設けると、2つの切断面の間の路面(切断塊)が脆く崩れやすくなりその撤去が容易になる。
【0011】
これにより、たとえマンホールの近傍の路面下に撤去すべき物体(例えば受枠固定用のボルト)がある場合でも、その近傍の路面を破砕したり、またはマンホールの内側から取り除いたりする作業が不要になる(上述のとおりマンホールの内側からボルトを切断して撤去する内径切断機はあるものの、内径切断機は狭い箇所の切断で機械の出力をあげられない/ボルト(例えばステンレス製の16mmのボルト)の切断時間が非常に長い/点検工程によっては内径切断機の設置ができない場合がある等の問題がある)。よって、マンホールの蓋及び受枠の交換工事をより迅速かつ容易にすることができる。
【0012】
前記第1の距離は、前記マンホールの受枠のボルトの位置に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、第1のブレードによる切断面は、マンホールの受枠のボルトの位置に対応するものになるので、ボルトを切断又はボルトを受枠に固定するナットを取り外すことで、マンホールの受枠を迅速かつ容易に撤去することができる。
【0014】
前記切断工程において、前記第1のブレードと前記第2のブレードを同時に旋回させて路面を切断するようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、大小2つの同心円状の切断面を路面に同時に設けることができるので、マンホールの蓋及び受枠の交換工事をより迅速に行うことができる。
【0016】
前記切断工程において、前記第1のブレードを旋回させて路面を切断した後で、前記第2のブレードを旋回させて路面を切断するようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、大小2つの同心円状の切断面を路面に別々のタイミングで設けるので、工程としては多くなるものの、第1のブレードと第2のブレードとを交換可能に取り付けることができる路面切断装置や、第1のブレードを有する路面切断装置と第2のブレードを有する路面切断装置とで上記工程を実現できるので、路面切断装置の選択肢を広げることができる。
【0018】
本発明の一態様にかかる路面切断装置は、マンホールの中心に対して旋回可能な本体と、前記本体に接続され、路面に対して上下に傾動可能な1又は複数の軸体と、前記軸体に軸支された円形状の第1のブレードと、前記軸体に前記第1のブレードよりも外側で軸支され、前記第1のブレードよりも径の大きい円形状の第2のブレードと、前記第1のブレードと前記第2のブレードとを回転させるためのモータと、を備える。
【0019】
この構成によれば、モータを駆動すると第1のブレードと第2のブレードが回転し、この状態で軸体を路面に向けて傾動させ、かつ、本体をマンホールの中心に対して旋回させることで、第1のブレードと第2ブレードもマンホールの中心に対して旋回して路面を切断する。
【0020】
第1のブレードと第2のブレードのマンホールの中心からの旋回位置が異なるので、第1のブレードと第2のブレードを360度旋回させた場合、路面の切断面は、大小2つの同心円(中心をマンホールの中心とし第1の距離を半径とする小円と、中心をマンホールの中心として半径を第1の距離より大きい第2の距離とする大円)になる。また第1のブレードと第2のブレードの径が異なるのでこの大小2つの同心円状の切断面は側面視においても相違する。すなわち、第1のブレードによる切断面(内側の小円)は、切断深さが浅くなり、より径の大きい第2のブレードによる切断面(外側の小円)は、切断深さが深くなる。
【0021】
路面に深さの異なる大小2つの同心円状の切断面を設けると、2つの切断面の間の路面(切断塊)が脆く崩れやすくなりその撤去が容易になる。
【0022】
これにより、マンホールの近傍の路面下に撤去すべき物体(例えば受枠固定用のボルト)がある場合でも、物体近傍の路面を破砕したり、またはマンホールの内側から取り除いたりする作業が不要になる。また第1のブレードと第2ブレードとを同時に旋回させるので、大小2つの同心円状の切断面を路面に同時に設けることができる。よって、マンホールの蓋及び受枠の交換工事をより迅速かつ容易にすることができる。
【0023】
前記軸体における前記第1のブレードの軸支位置は、前記マンホールの受枠のボルトの位置に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0024】
この構成によれば、第1のブレードによる切断面は、マンホールの受枠のボルトの位置に対応するものになるので、ボルトを切断又はボルトを受枠に固定するナットを取り外すことで、マンホールの受枠を迅速かつ容易に撤去することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マンホールの蓋及び受枠の交換工事をより迅速かつ容易にすることのできる路面切断方法及び路面切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態に係る路面切断装置を説明するための斜視図である。
図2】待機位置の第1及び第2のブレードを説明するための斜視図である。
図3】待機位置の第1及び第2のブレードを説明するための平面図である。
図4】切断位置の第1及び第2のブレードを説明するための斜視図である。
図5】切断位置の第1及び第2のブレードを説明するための平面図である。
図6】実施の形態に係る路面切断工程を示すフローチャートである。
図7】同路面切断工程を説明するための模式図である。
図8】変形例に係る路面切断工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
<路面切断装置>
はじめに、図1ないし図5を用いて本実施形態にかかる路面切断装置1について説明する。ここで、図1は、本実施形態にかかる路面切断装置1を示す斜視図である。図2及び図3は、それぞれ、路面を切断する前の待機位置における第1及び第2のブレードを説明するための斜視図及び平面図である。図4及び図5は、それぞれ、路面を切断する際の切断位置における第1及び第2のブレードを説明するための斜視図及び平面図である。なお、図2ないし図4は、説明の便宜のため、軸体12、第1のブレード14及び第2のブレード16、及び、マンホール100のみを示し、路面切断装置1のその他の構成は省略している。
【0029】
路面切断装置1は、マンホール100の蓋・受枠の取替工事に際してマンホール100の外周外側の路面を切断するために用いられる路面カッターである。
【0030】
図1ないし図5に示すように、路面切断装置1は、本体10、軸体12、第1のブレード14,第2のブレード16等を備えている。
【0031】
図1に示すように、本体10は車輪を備え、マンホール100の中心P(図2参照)に対して旋回可能になっている。ここで、マンホール100は、図2ないし5に示すように、鉄蓋102と、受枠104とを有し、受枠104は、下部躯体(マンホールの立坑を構成するコンクリート管。図7の下部躯体108参照)に緊結ボルト106(下部躯体108に螺合するボルトとこのボルトを受枠104に固定するナット等から構成されている)で締結されている。鉄蓋102は、様々な大きさがあるが、例えば、直径600mm又は直径900mmである。緊結ボルト106は、鉄蓋102の径に応じて必要数量が異なり、例えば、直径600mmの鉄蓋102の場合3本、直径900mmの鉄蓋102の場合6本とすることができる。鉄蓋102は路面(図示省略)に対して略一致するように設置されるので、受枠104や緊結ボルト106は、路面より下に埋没している。そのため、後述するように、マンホール100の鉄枠102と受枠104の交換工事に際しては、この緊結ボルト106を撤去する工程が必要である。
【0032】
軸体12は、本体10に接続され、本体10のレバー操作に基づいて、路面に対して上下に傾動可能である。具体的には、軸体12は、第1のブレード14及び第2のブレード16が路面(鉄蓋102の高さ位置と略一致する)より上方に位置する待機位置(図2及び図3参照)から、第1のブレード14及び第2のブレード16が路面下に食い込む切断位置(図4及び図5参照)との間で、上下に傾動する。軸体12には、第1のブレード14と第2のブレード16とが装着可能である。
【0033】
第1のブレード14は、円形状に形成されており、モータ(図示せず)から回転力を得て軸体12を中心に回転することで路面を円形に切断するためのものである。第1のブレード14は、第2のブレード16よりも軸体12の内側(本体側)に軸支されている。第1のブレード14の軸体12への装着位置は、軸体12の軸方向に調節可能に構成されており、例えば、緊結ボルト106の位置に基づいて設定することができる。
【0034】
第1のブレード14は、球面をなす表面及び裏面と、複数の外周刃が形成された側面を備えている(すなわち、第1のブレード14は、回転軸を含む断面が円弧状になる)。第1のブレード14は、ダイヤモンドチップが埋め込まれた銅を主成分としている。第1のブレード14は、第2のブレード16よりも小さく、例えば、410mmの半径(軸体12から側面までの距離をいい、図2における距離r1を示す)を有する。
【0035】
第2のブレード16は、第1のブレード14と同様に円形状に形成されており、モータ(図示せず)から回転力を得て軸体12を中心に回転することで路面を円形に切断するためのものである。第2のブレード16は、第1のブレード14よりも軸体12の外側に軸支されている。第2のブレード16の軸体12への装着位置は、軸体12の軸方向に調節可能に構成されており、所望の路面切断径(マンホール100の径や路面の状態等に応じて設定される)に応じて適宜調節できる。
【0036】
第1のブレード14と同様に、第2のブレード16は、球面をなす表面及び裏面と、複数の外周刃が形成された側面を備え(回転軸を含む断面が円弧状であり)、またダイヤモンドチップが埋め込まれた銅を主成分としている。第2のブレード16は、第1のブレード14よりも大きく、例えば、530mmの半径(軸体12から側面までの距離をいい、図2における距離r2を示す)を有する。
【0037】
路面切断装置1は、本体10を操作してモータを駆動すると、第1のブレード14と第2のブレード16とが回転し、この状態で軸体12を路面に向けて傾動させると(図1のA方向)、第1のブレード14及び第2のブレード16を路面に切り込ませることができる(図4参照)。そして、本体10をマンホール100の中心Pを中心に回転させると、路面に切り込ませた第1のブレード14と第2のブレード16を、弧を描くように(図1のB方向)1周又は複数周旋回させることができ、これにより路面を切断することができる。第1のブレード14と第2ブレード16とを同時に旋回させるので、大小2つの同心円状の切断面を路面に同時に設けることができる。
【0038】
<路面切断方法>
次に、図6及び図7を用いて、路面切断装置1でマンホール100の外周外側の路面を切断する方法について説明する。ここでは、例えば、直径600mmの鉄枠を有するマンホールの交換工事を例に説明する。
【0039】
図6は、本実施形態の路面切断方法を説明するためのフローチャートである。図7は、この路面切断工程を説明するための図であり、(A)は切断前の路面の状態を模式的に示す側面図であり、(B)は路面切断装置1で路面を切断した後の状態を模式的に示す側面図であり、(C)は、切断した路面を撤去した後の状態を模式的に示す側面図である。
【0040】
(ブレード準備工程)
はじめに、路面切断装置1の軸体12に第1のブレード14及び第2のブレード16を装着する(図6:ステップS1)。第1のブレード14の軸体12への装着位置は、軸体12の軸方向に調節可能に構成されており、この装着位置は、マンホール100の受枠104を下部筐体108に緊結する緊結ボルト106の位置に基づいて設定される(なお、緊結ボルト106の締結位置はJISにより規格化されている)。例えば、第1ブレード14による下部切断径D1(図8(B)参照)が緊結ボルト106よりもわずかに外側(例えば、750mm)になるように設定される。
【0041】
第2のブレード16の軸体12への装着位置は、軸体12の軸方向に調節可能に構成され、所望の路面切断径(マンホール100の径や路面の状態等に応じて設定される)に応じて設定される。ここでは、例えば、第2ブレード16による下部切断径D2(図8(B)参照)が950mmになるように設定される。
【0042】
(路面切断工程)
次に、この路面切断装置1を用いて、マンホール100の外周外側の路面をダブルカットする(図6:S2)。すなわち、路面切断装置1をマンホール100の中心P上に固定したピン(またはこのようなピンを有する支持治具)上に取り付ける。そして、路面切断装置1の本体10を操作してモータを駆動し、第1のブレード14と第2のブレード16とを回転させる。し、この状態で軸体12を路面に向けて傾動させ、第1のブレード14及び第2のブレード16を路面に鋭角(例えば10°~20°)で切り込ませる。
【0043】
次に、本体10をマンホール100の中心Pを中心に回転させることで、路面に切り込ませた第1のブレード14と第2のブレード16を、弧を描くように1周又は複数周旋回させる。第1のブレード14は、中心Pから第1の距離(例えば400mm)で旋回し、第2のブレード16は中心Pから第2の距離(例えば525mm)で旋回するので、大小2つの同心円状の切断面を路面に同時に設けることができる。これにより、路面は、図7(A)の状態から図7(B)の状態になる。
【0044】
第1のブレード14と第2のブレード16とは球面状の表面及び裏面を有しているので、その切断面は、図7(B)に示すように、側面視においていずれも円弧状になる。ここで、第1のブレード14と第2のブレード16とは径が異なるので、第1のブレード14による切断面の深さは、第2のブレード16による切断面の深さよりも浅くなる。例えば、第1のブレード14による切断面の深さは、100mmであり、第2のブレードによる切断面の深さは、150mmである。
【0045】
(切断塊撤去工程)
次に、路面から切断塊を撤去する(図6:S3)。路面には大小2つの同心円状の切断面が設けられているので、2つの切断面間の路面は脆く崩れやすくなり、路面から撤去することは容易である(破砕が必要になるとしても最小限の破砕ですむため騒音の問題を抑制することができる)。第1のブレード14による切断面とマンホール100との間の路面も崩れやすくなるので同様に容易に撤去できる。
【0046】
ここで、第1のブレード14による下部切断径D1が、マンホール100の緊結ボルト106の外側になるようにしているので、切断塊の撤去により、緊結ボルト106が露出される。これにより、路面は、図7(C)の状態になる。
【0047】
(ボルト撤去工程)
次に緊結ボルト106を撤去する。図7(C)に示すように、切断塊を撤去すると緊結ボルト106が空間Mに露出するので、緊結ボルト106を容易に撤去ことができる。なお、緊結ボルト106の「撤去」は、緊結ボルト106のボルトとナットの双方を取り外すことのほか、例えば、小型切断機(ジスクグラインダー等)で緊結ボルト106のボルトとナットの間を切断することや、ナットのみを緩めて抜き取る(ボルトは残す)ことも含む。これにより、受枠104を容易に(例えば、簡単な破砕作業等で)取り外すことができる。すなわち、緊結ボルト106を露出すべく路面を大きく破砕したり、またはマンホール100の内側から緊結ボルト106を切断して取り除いたりする作業が不要になる。よって、マンホール100の蓋102及び受枠104の交換工事をより迅速かつ容易にすることができる(なお、大小2つの同心円状の切断面を路面に同時に設けるので、切断工程自体も従来のシングルカットの場合と比べて遜色ないスピードで行うことができる)。
【0048】
なお、路面切断後は、鉄蓋102及び受枠104を交換後、空間Mに充填剤(例えば超速硬性無収縮モルタル及びその上面に配置される樹脂系の表層剤)を充填し路面を補修するが、第2のブレード16による切断面は、側面視円弧状になるので、充填剤との接着面積が広くなり、路面からの力を分散させることができ、また密着性も優れたものになる。
【0049】
<変形例>
以上本発明の実施形態を示したが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な態様での実施が可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態で示した第1のブレード14や第2のブレード16にかかる数値は、あくまで例示であり、交換対象とするマンホール100の大きさや路面の状況等によって適宜設定できる(例えば、ブレードによる切断深さを例えば100mm~300mmの範囲で適宜調整したり、ブレードの半径を例えば400mm~800mmの範囲で適宜選択したりしてもよい)。
【0050】
上記実施の形態では、第1のブレード14及び第2のブレード16は、中心軸を通る断面が円弧状であったが、例えば、第1のブレード、第2のブレードのいずれか又は双方について、断面が直線のブレードを用いてもよいし(側面視の切断面を直線にすることができる)、断面がその他の曲面(例えば放物線)のブレードを用いてもよい(側面視の切断面をこの曲面に対応する形状にすることができる)。
【0051】
上記実施の形態は、軸体12に2つのブレードを設けるものであるが、例えば、軸体12に3つ以上のブレードを設けるようにしてもよい。例えば、軸体12の第1のブレード14及び第2ブレード16との間に第3のブレードを設けてもよい。第3のブレードは、第1のブレード14の径よりも大きく、第2のブレード径よりも小さくしてもよい。この場合、路面に3つの切断面を同時に設けることができるので、切断塊の撤去がより容易になる。また例えば、軸体を複数(例えば2つ)設けて、第1のブレード、第2のブレード(及び必要に応じて第3のブレード等追加のブレード)をそれぞれ別々の軸体に取り付けるようにしてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、第1のブレード14の軸体12への装着位置は、第1ブレード14による下部切断径D1が緊結ボルト106よりもわずかに外側になるように設定しているが、例えば、下部切断径D1が緊結ボルト106の真上や内側になるように設定してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、2つのブレードを有する路面切断装置1を用いて、同心円状の2つの切断面を同時に設ける例を示したが、2つの切断面を設ける方法はこれに限られるものではない。例えば、図8に示すように、路面に2段階で大小の切断面を設けてもよい。すなわち、小径の第1のブレードを装着した路面切断装置を用いて下部切断径D1で路面を切断し(図8(B))、つづいて大径の第2のブレードを装着した路面切断装置を用いて下部切断径D2で路面を切断してもよい(図8(C))。なお、この順番は逆でもよい。すなわち、大径の第2のブレードを装着した路面切断装置を用いて下部切断径D2で路面を切断し、つづいて小径の第1のブレードを装着した路面切断装置を用いて下部切断径D1で路面を切断するようにしてもよい。
【0054】
この方法によれば、大小2つの同心円状の切断面を路面に別々のタイミングで設けるので、工程としては多くなるものの、第1のブレードと第2のブレードとを交換可能に取り付けることができる路面切断装置や、第1のブレードを有する路面切断装置と第2のブレードを有する路面切断装置とで上記工程を実現できるので、路面切断装置の選択肢を広げることができる。
【0055】
また例えば、上記実施の形態では、第1のブレード14及び第2のブレード16を360度旋回させて同心円状の大小2つの切断面を設ける例を示したが、例えば、第1のブレード14は緊結ボルト106に対応する箇所(例えば3箇所や6箇所)のみを旋回させて部分的に切断する(すなわち小円の切断面は設ない)ようにしてもよい。この場合第1のブレード14は、断面が直線のブレードを用いてもよいし、断面がその他の曲面(例えば放物線)のブレードを用いてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、切断塊を完全に撤去して(空間Mを設け)、緊結ボルト106を取り外すようにしているが、路面切断後の工程はこれに限られるものではない。例えば、第1のブレード14による切断面を用いてまずは緊結ボルト106の近傍の路面のみを撤去することで緊結ボルト106のナットを取り外し、その後、マンホール受枠104に油圧式スプリッター及びリフターを取り付け、残る切断塊をマンホール受枠104と同時に吊り上げて分離撤去するようにしてよい。
【符号の説明】
【0057】
1……路面切断装置、10……本体、12……軸体、14……第1のブレード、16……第2のブレード、100……マンホール、104……受枠、106……緊結ボルト、108……下部躯体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8