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特許7465728印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ
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  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図1A
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図1B
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図2A
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図2B
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図3
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図4
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図5A
  • 特許-印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】印刷機非活動期間中に印刷ヘッドからのインクの乾燥を減衰させるための印刷ヘッドキャップ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020104339
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021014114
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】16/508,563
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・イー・ロスダール・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エス・ボニーノ
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274221(JP,A)
【文献】特開2003-175617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドの非活動の期間中に印刷ヘッドを格納するためのキャッピングステーションであって、
空間を部分的に包囲するように構成されている床部及び少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされているテクスチャ加工された表面を有するプレートであって、前記テクスチャ加工された表面が、弾性材料で作製されており、フラッシング流体を収容するためのセルを有し、前記テクスチャ加工された表面が、長さ及び幅を有し、前記テクスチャ加工された表面の前記長さ及び前記幅が、前記ハウジングの前記空間内に格納されている印刷ヘッドのフェースプレートの領域よりも大きい領域を形成している、プレートと、
前記テクスチャ加工された表面の反対の前記プレートの表面から延在する少なくとも一対の部材であって、前記ハウジングの前記床部内の一対の開口部を通って延在し、前記部材が前記床部の前記開口部内で往復運動する、少なくとも一対の部材と、
前記部材が延在する前記プレートの前記表面と前記ハウジングの前記床部との間に取り付けられた一対の付勢部材と、を備え、
前記テクスチャ加工された表面が、規則的に形成されたセルを有する、キャッピングステーション。
【請求項2】
前記規則的に形成されたセルが、六角形である、請求項1に記載のキャッピングステーション。
【請求項3】
前記付勢部材が、前記プレートから延在している前記部材の周りに取り付けられたばねである、請求項1に記載のキャッピングステーション。
【請求項4】
前記ハウジングが、
前記少なくとも1つの壁部の上面に取り付けられた封止部材を更に備え、前記印刷ヘッドが前記ハウジングの前記空間に挿入されるとき、前記封止部材が、印刷ヘッドフェースプレートの周辺を取り囲む、請求項3に記載のキャッピングステーション。
【請求項5】
前記封止部材が、エラストマー材料から構成されている、請求項4に記載のキャッピングステーション。
【請求項6】
印刷ヘッドの非活動の期間中に印刷ヘッドを格納するためのキャッピングステーションであって、
空間を部分的に包囲するように構成されている床部及び少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされているテクスチャ加工された表面を有するプレートであって、前記テクスチャ加工された表面が、弾性材料で作製されており、フラッシング流体を収容するためのセルを有し、前記テクスチャ加工された表面が、長さ及び幅を有し、前記テクスチャ加工された表面の前記長さ及び前記幅が、前記ハウジングの前記空間内に格納されている印刷ヘッドのフェースプレートの領域よりも大きい領域を形成している、プレートと、
アプリケータと、
前記アプリケータに動作可能に接続され、前記ハウジングの前記空間の外側の第1の位置から、前記ハウジング内の第2の位置まで前記アプリケータを移動させて、前記プレートの前記テクスチャ加工された表面にフラッシング流体を適用するように構成されているアクチュエータと、を備える、キャッピングステーション。
【請求項7】
印刷機であって、
複数の印刷ヘッドと、
前記複数の印刷ヘッド内の各印刷ヘッドのためのキャッピングステーションと、を備え、各キャッピングステーションが、
空間を部分的に包囲するように構成されている床部及び少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされているテクスチャ加工された表面を有するプレートであって、前記テクスチャ加工された表面が、弾性材料で作製されており、フラッシング流体を収容するためのセルを有し、前記テクスチャ加工された表面が、前記ハウジングの前記空間内に格納されている印刷ヘッドのフェースプレートの領域よりも大きい領域を形成する長さ及び幅を有する、プレートと、
前記テクスチャ加工された表面の反対の前記プレートの表面から延在する少なくとも一対の部材であって、前記ハウジングの前記床部内の一対の開口部を通って延在し、前記部材が前記床部の前記開口部内で往復運動する、少なくとも一対の部材と、
前記部材が延在する前記プレートの前記表面と前記ハウジングの前記床部との間に取り付けられた一対の付勢部材と、を含み、
前記テクスチャ加工された表面が、規則的に形成されたセルを有する、印刷機。
【請求項8】
前記規則的に形成されたセルが六角形である、請求項7に記載の印刷機。
【請求項9】
前記付勢部材が、前記プレートから延在している前記部材の周りに取り付けられたばねである、請求項7に記載の印刷機。
【請求項10】
前記ハウジングが、
前記少なくとも1つの壁部の上面に取り付けられた封止部材を更に備え、前記印刷ヘッドが前記ハウジングの前記空間に挿入されるとき、前記封止部材が、印刷ヘッドフェースプレートの周辺を取り囲む、請求項9に記載の印刷機。
【請求項11】
前記封止部材が、エラストマー材料から構成されている、請求項10に記載の印刷機。
【請求項12】
印刷機であって、
複数の印刷ヘッドと、
前記複数の印刷ヘッド内の各印刷ヘッドのためのキャッピングステーションと、を備え、各キャッピングステーションが、
空間を部分的に包囲するように構成されている床部及び少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされているテクスチャ加工された表面を有するプレートであって、前記テクスチャ加工された表面が、弾性材料で作製されており、フラッシング流体を収容するためのセルを有し、前記テクスチャ加工された表面が、前記ハウジングの前記空間内に格納されている印刷ヘッドのフェースプレートの領域よりも大きい領域を形成する長さ及び幅を有する、プレートと、
アプリケータと、
前記アプリケータに動作可能に接続され、前記ハウジングの前記空間の外側の第1の位置から、前記ハウジング内の第2の位置まで前記アプリケータを移動させて、前記プレートの前記テクスチャ加工された表面にフラッシング流体を適用するように構成されているアクチュエータと、を含む、印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、媒体上にインク画像を生成するデバイスに関し、より具体的には、インクジェットから高速乾燥インクを噴射してインク画像を形成するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット撮像デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受信表面上に形成する。印刷ヘッドは、いくつかのタイプのアレイ内に配置された複数のインクジェットを含む。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合される熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、画像に関するデジタルデータに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、インクチャンバに膨張させることによって発射信号に応答して、画像受信部材上にインク滴を噴射し、かつ発射信号を生成するために使用されたデジタル画像に対応するインク画像を形成する。
【0003】
インクジェット撮像デバイス内で使用される先行技術のインク送達システム20が図4に示される。インク送達システム20は、印刷ヘッド608に接続され、印刷ヘッドの下方に位置決めされるインク供給リザーバ604を含み、そのためインクレベルは、印刷ヘッドの下方の既定の距離Dで維持されて、印刷ヘッド内のインク上に適切な背圧を提供することができる。この背圧は、良好なインク滴噴射性能を確実とするのに役立つ。インクリザーバは、距離Dを維持するレベルでインクを保つインク源(図示せず)に動作可能に接続される。印刷ヘッド608は、インクジェットがマニホールドからインクを引くまでインクを格納するマニホールドを有する。印刷ヘッドマニホールドの容量は、典型的には、全てのインクジェットの容量の5倍である。マニホールドの入口は、導管618を通じてインクリザーバ604に接続され、導管634は、マニホールドの出口を廃インクタンク638に接続する。バルブ642は、導管634を選択的に遮断するために導管634内に設置される。バルブ612はまた、空気圧ポンプ616をインクリザーバ604に接続するために導管614内に提供され、このバルブは、パージ操作中を除いて大気圧まで開いたままである。
【0004】
新しい印刷ヘッドが設置されるか、又はそのマニホールドがフラッシュされて導管618内の空気を除去する必要があるとき、マニホールドパージが実行される。マニホールドパージでは、コントローラ80が、バルブ642を操作して、流体がマニホールド出口から廃インクタンク638に流れることを可能にし、かつ空気圧ポンプ616を起動し、及びバルブ612を操作して、インクリザーバを大気圧に対して閉鎖させ、そのためポンプ616が、インクリザーバ604内のインクを加圧することができる。加圧インクは、導管618を通って、印刷ヘッド608のマニホールド入口に流れる。バルブ642もまた開放されるため、マニホールドからインクジェットへの流体流に対する空気インピーダンスは、マニホールドを通る空気インピーダンスよりも大きい。このため、インクは、マニホールド出口から廃タンクに流れる。圧力ポンプ616は、リザーバ内のインクの供給を完全に消耗することなく、導管618、印刷ヘッド608内のマニホールド、ならびに導管634を充填するのに十分である体積のインクを、導管618及び印刷ヘッド608のマニホールドを通って押すように、既定の期間、既定の圧力で操作される。次いで、コントローラは、バルブ642を操作して、導管634を閉鎖し、バルブ612を操作して、インクリザーバを大気圧に通気する。これにより、マニホールドパージは、インクリザーバから印刷ヘッド、マニホールド、及び導管634まで導管618を充填し、そのためマニホールド及びインク送達システムは、導管又は印刷ヘッド内に空気が存在しないため、プライミングされる。次いで、インクリザーバは、前述のように、リザーバ内のレベルと印刷ヘッドインクジェットとの間の距離がDであるレベルに、インクの高さをもたらすために再供給される。
【0005】
マニホールドプライミングの後に印刷ヘッド608内のインクジェットをプライミングするために、コントローラ80は、バルブ612を閉じ、空気圧ポンプ616を起動して、リザーバ604のヘッドスペースを加圧して、インクを印刷ヘッドに送る。バルブ642が閉じられているので、マニホールドを通るプライミングシステムの空気インピーダンスは、インクジェットを通る空気インピーダンスよりも大きく、そのためインクがインクジェットに付勢される。再び、パージ圧力が、既定の期間、既定の圧力で及ぼされて、インクジェットを充填するのに適切な体積のインクを印刷ヘッドに付勢する。これより前のインクジェット内の任意のインクは、印刷ヘッド608のフェースプレート624内のノズルから放出される。このインクパージは、インクジェットをプライミングし、また、詰まり及び動作不能なインクジェットをそれらの動作状態に復元するのに役立ち得る。圧力の作用後、コントローラ80は、バルブ612を操作して開放し、インクリザーバから圧力解放する。圧力センサ620はまた、圧力供給導管622に動作可能に接続され、このセンサは、リザーバ内の圧力を示す信号を生成する。この信号は、空気圧ポンプの動作を調節するためにコントローラ80に提供される。パージ中のリザーバ内の圧力が既定の閾値を超える場合、コントローラ80は、バルブ612を操作して、圧力を解放する。リザーバ内の圧力が、パージ中に既定の閾値を下回る場合、コントローラ80は、圧力源616を操作して、圧力を上昇させる。2つの既定の閾値は異なるため、コントローラは、1つの特定の圧力ではなく、パージ中にリザーバ内の圧力を既定の範囲内に保つことができる。
【0006】
いくつかのインクジェット撮像デバイスは、低粘度状態から高粘度状態に比較的急速に変化するインクを使用する。先行技術の印刷機では、図5A及び図5Bに示されるステーション60などのキャッピングステーションは、印刷機が使用されていないときに印刷ヘッドを覆うために使用される。キャップは、印刷ヘッドのパージ中に、印刷ヘッド708によって生成されたインクを収集するための受容部704として形成される。アクチュエータ(図示せず)は、図5Bに示されるように、印刷ヘッド708を受容部704内の開口部と接触するように移動させるように動作され、その結果、印刷ヘッドは、パージされて、印刷ヘッド内のインクマニホールド及び通路に圧力を加えることによって、印刷ヘッド内のインクジェットを復元することができる。この圧力は、印刷ヘッドのフェースプレート内のノズルからインクを追い出す。このインクパージは、詰まったインクジェット及び動作不能なインクジェットをそれらの動作状態に復元するのに役立つが、損失したインクの量は有意であり得る。印刷ヘッドからパージされたインクは、インクが廃棄物受容部に到達することができるように、出口シュート712に方向付けられる。キャップ受容部704はまた、印刷ヘッドフェースが、周囲空気を循環させるように曝露されるのではなく、キャップ受容部の密閉空間内に保持されるので、ノズル内のインクを乾燥させないようにするのに役立つ。例えば、印刷動作シャットダウンなどの、長期にわたる印刷機の非活動の期間、キャップ受容部内の空気は、いくつかのインクがフェースプレート又はノズル内で蒸発し、乾燥し得るのに十分である。印刷ヘッドの非活動期間中に、インクジェットの動作状態を保存するキャッピングステーションの能力を改善することが有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
キャッピングステーションは、キャッピングステーションの封止部上のインクの乾燥を低減するように構成され、インクジェットの動作状態をより効果的に保存する構造を含む。キャッピングステーションは、少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、部分的に容積を封入するように構成された床部と、ハウジングの少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされたテクスチャ加工された表面を有するプレートと、を含む。テクスチャ加工された表面は、フラッシング流体を収容するためのセルを有する弾性材料で作製される。
【0008】
インクジェット印刷機は、キャッピングステーションの封止部上のインクの乾燥を低減するように構成されたキャッピングステーションを含み、インクジェットの動作状態をより効果的に保存する構造を含む。インクジェット印刷機は、複数の印刷ヘッドと、複数の印刷ヘッド内の各印刷ヘッドのためのキャッピングステーションと、を含み、各キャッピングステーションは、少なくとも1つの壁部を有するハウジングと、部分的に容積を封入するように構成された床部と、ハウジングの少なくとも1つの壁部の上面から所定の距離で位置決めされたテクスチャ加工された表面を有するプレートと、を含む。テクスチャ加工された表面は、フラッシング流体を収容するためのセルを有する弾性材料で作製される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
インクジェットの動作状態をより効果的に保存するキャッピングステーションならびにキャッピングステーションを有する印刷機の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と関連させて、以下の記載で説明される。
【0010】
図1A】インク画像を媒体のウェブに直接印刷し、印刷ヘッドを覆って、印刷機の印刷ヘッドからのインクの蒸発を減衰させるインクジェット印刷機の概略図でる。
図1B】印刷動作中の印刷ヘッドアレイ及びキャッピングステーションの位置を示す側面図である。
図2A】非活動期間中のインクジェットの動作状態を保存するのに役立つ、図1A及び図1Bの印刷機において使用される印刷ヘッドキャッピングシステムの側面図である。
図2B図2Aの印刷ヘッドキャッピングシステムの上部を示す等角図である。
図3】印刷機の印刷ヘッド内のインクジェットの動作状態を保存するために、図1A及び図1Bの印刷機内の印刷ヘッドを覆うためのプロセスのフロー図である。
図4】パージするためのみの従来技術の印刷機で使用される、従来技術のインク送達システムの概略図である。
図5A】先行技術のキャッピングステーションの概略図である。
図5B】先行技術のキャッピングステーションの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示される印刷機及びキャッピングステーションのための環境、ならびに印刷機及びキャッピングステーションの詳細を概して理解するために、図面が参照される。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために至る所で使用されている。本明細書において使用される際、「印刷機」という語は、デジタル複写機、製本機械、ファクシミリ機、多機能機械などの媒体上にインク画像を生成する任意の装置を包含する。本明細書において使用される際、「プロセス方向」という用語は、撮像ドラム又は印刷媒体などの画像受信表面の進行方向を指し、「クロスプロセス方向」という用語は、画像受信表面の表面に沿ったプロセス方向に対して実質的に垂直な方向である。また、以下に提示される説明は、印刷機の非活動期間中にインクジェット印刷機内のインクジェットの動作状態を保存するためのシステムに関する。読者はまた、本説明に記載される原理が、マーキング材料のピクセルを用いて画像を生成する同様の撮像デバイスに適用可能であることも理解されたい。
【0012】
図1Aは、高速水性インク画像生成機又は印刷機10を示し、コントローラ80’が、印刷ヘッドの非活動の期間中に、印刷ヘッド34A、34B、34C、及び34Dのノズルにおけるインクが低粘度状態を維持するように、キャッピングシステム60’(図1B)を動作させるための以下に説明するプロセス300を実行するように構成されている。例解されるように、印刷機10は、シャフト42に動作可能に接続されたアクチュエータ40のうちの1つを操作して、シャフト及びシャフトの周りに取り付けられた巻き取りロール46を回転させるコントローラ80’によって、印刷機10を通して引かれる媒体のウェブWの表面上にインク画像を直接形成する印刷機である。一実施形態では、各印刷ヘッドモジュールは、印刷機によって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有する1つの印刷ヘッドのみを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、印刷機が印刷できるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にする千鳥状の印刷ヘッドのアレイ内に配置される。付加的に、印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に噴射された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。印刷機10はまた、シート上に画像を印刷するために、移動ウェブWを交換して、印刷ヘッドを通過して切断された媒体シートを搬送する媒体移送システムを有する印刷機であってもよい。
【0013】
図4に示されるものなど、水性インク送達サブシステム20は、1色の水性インクを含有する少なくとも1つのインクリザーバを有する。図示されたプリンタ10は多色画像生成機であるため、インク送達システム20は、4つの異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)の水性インクを表す4つのインクリザーバを含む。各インクリザーバは、モジュール内の印刷ヘッドにインクを供給するように、印刷ヘッド又は印刷ヘッドモジュール内の複数の印刷ヘッドに接続されている。パージシステム24の圧力源及び通気孔はまた、上述のように、インクリザーバと印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドとの間で動作可能に接続されて、マニホールド及びインクジェットのパージを実行する。付加的に、図1Aには示されていないが、印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドは、前述したマニホールド及びインクジェットパージ動作中にパージされたインクの収集を可能にするために、図4を参照して前述されたように、バルブで対応する廃インクタンクに接続される。印刷ヘッドモジュール34A~34Dは、コントローラ80’による1つ以上の印刷ヘッドの操作のために関連付けられた電子機器を含むことができるが、これらの接続は図を簡略化するために示されていない。印刷機10は、4つの印刷ヘッドモジュール34A~34Dを含み、各々が2つのアレイの印刷ヘッドを有するが、代替的な構成は、モジュール内に異なる数の印刷ヘッドモジュール又はアレイを含む。コントローラ80’はまた、以下により詳細に記載されるように、印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34D、ならびにフラッシング流体アプリケータ290(図1B)に動作可能に接続されるキャッピングシステム60’及び1つ以上のアクチュエータ40を動作させて、印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドのノズル内のインクの低粘度を保存する。
【0014】
インク画像がウェブW上に印刷された後、画像は、画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、赤外線ヒータ、加熱された送風機、空気戻り、又はこれらの構成要素の組み合わせを含み、インク画像を加熱し、画像をウェブに少なくとも部分的に固定することができる。赤外線ヒータは、ウェブの表面上の印刷された画像に赤外線加熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱された送風機は、インク上に加熱された空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、印刷機内の他の構成要素との空気流の干渉を低減する。
【0015】
更に示されるように、媒体ウェブWは、必要に応じて、シャフト42を回転させるために、1つ以上のアクチュエータ40を操作するコントローラ80’によって媒体38のロールから巻かれず、ここで巻き取りロール46が、媒体ロール38から、シャフト36を伴い回転する際、ウェブを引くように設置される。ウェブが完全に印刷されると、巻き取りロールは、シャフト42から取り外すことができる。代替的に、印刷されたウェブは、媒体を切断すること、照合すること、結合すること、及びステープル留めなどのタスクを実行する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けられ得る。
【0016】
機械又は印刷機10の様々なサブシステム、構成要素及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80’の助けを借りて実施される。ESS又はコントローラ80’は、インク送達システム20の構成要素、パージシステム24、印刷ヘッドモジュール34A~34D(及び、このため印刷ヘッド)、アクチュエータ40、ヒータ30、及びキャッピングステーション60’に動作可能に接続される。ESS又はコントローラ80’は、例えば、電子データ記憶装置を備える中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する内蔵型の専用ミニコンピュータである。ESS又はコントローラ80’は、例えば、センサ入力及び制御回路、ならびに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン又はワークステーション接続などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像データの流れを読み出し、捕捉し、準備し、管理する。このように、ESS又はコントローラ80’は、印刷プロセスを含む他の機械サブシステム及び機能の全てを、操作及び制御するための主マルチタスキングプロセッサである。
【0017】
コントローラ80’は、プログラムされた命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装することができる。プログラムされた機能を実行するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に記載される動作を実行するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよく、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されることもある。各々の回路は、別個のプロセッサで実装することができ、又は複数の回路が、同じプロセッサ上に実装されることもある。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、別個の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0018】
動作中、生成される画像に関する画像データは、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに出力された印刷ヘッド制御信号の処理及び生成のための、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80’に送信される。付加的に、コントローラ80’は、例えば、ユーザインターフェース50を介した操作者入力から関連するサブシステム及び構成要素の制御を決定、承諾し、かかる制御を適宜実行する。結果として、適切な色のための水性インクが、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに送達される。付加的に、画素配置制御は、ウェブの表面に対して働いて、画像データに対応するインク画像を形成し、媒体は、巻き取りロール上で巻き取られる、又は別様に処理され得る。
【0019】
図1Bに示されるように、複数のキャッピングステーション60’が、印刷動作中に、印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34Dの後ろに位置付けられる。1つ以上の印刷ヘッドが長期保管を必要とするとき、対応する印刷ヘッドは、アクチュエータ40のうちの1つを操作するコントローラ80’によって持ち上げられ、対応するキャッピングステーション60’の反対の位置に移動される。次いで、コントローラ80’は、以下により詳細に記載されるようにアクチュエータ、印刷ヘッド、及びフラッシング流体アプリケータを操作して、印刷ヘッドの非活動期間中、印刷ヘッドの動作状態を保存する。印刷ヘッドが動作状態に戻されるとき、コントローラ80’は、アクチュエータ40を動作させて、印刷ヘッドをそのキャッピングステーションから持ち上げ、印刷ヘッドをその印刷位置に戻す。
【0020】
同様の構成要素に対して同様の数字を使用して、印刷ヘッドからの迅速に乾燥するインクの蒸発を減衰させることができるキャッピングステーションが、図2Aに示される。キャッピングステーション60’は、ハウジング204と、封止部材208と、ハウジング204内の2つの開口部及び2つの付勢部材220を通って延在する2つの支持部材216を有する往復プレート212を含む。ハウジング204は、少なくとも1つの壁部224と、ハウジング内の空気の体積を部分的に取り囲む床部228と、を有する。封止部材208は、壁部224の上面においてハウジング204の周囲に沿って取り付けられる。この封止部は、エラストマー材料で作製され、コントローラ80’がアクチュエータ40のうちの1つを動作させて、封止部材208の周囲内の印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドのうちの1つを移動させるとき、ハウジング204内の容積(空間)を封止し、そのため、封止部材は、印刷ヘッドのノズルフェースプレートの外周に接触し、かつ取り囲む。図2Aに示される第1の位置であるこの位置では、印刷ヘッドのインクジェット内のインクの粘度は、動作サービスからの印刷ヘッドの一時的な取り外しのために保存される。一時的な取り外しの持続時間は、例えば、最大約1時間である。
【0021】
プレート212は、テクスチャ加工された表面232を有する平面部材である。プレート212は、テクスチャ加工された表面232の反対のプレートの表面から延在する少なくとも2つの支持部材216を有する。これらの部材は、ハウジング204の床部228内の2つの開口部236を通して受容される。部材216は、過度の摩擦なく、開口部236内の封止部内で摺動するようにサイズ決定される。ドレイン230は、ハウジング204の床部228内に位置決めされるため、ハウジング内に収集された液体は、ドレインに接続された廃棄物受容部に方向付けられ得る。床部228と部材216が延在するプレート212の表面232との間に、2つの付勢部材220が挿入される。付勢部材220は、支持部材の周りに取り付けられたばねなどであってもよく、印刷ヘッドが図2Aに示される第2の位置まで所定の距離を移動して、表面232に接触するとき、印刷ヘッドのフェースプレートに対して表面232を維持するように動作する。付勢部材220は、ハウジングの容積に印刷ヘッドが進入する所定の距離を超えて表面232を押さないような長さを有する。
【0022】
図2Bは、等角図におけるキャッピングステーション60’を示す。ハウジング204の容積を床部228に向かって見下ろすと、表面232は、テクスチャ加工された表面として示される。本明細書で使用される際、「テクスチャ加工された」という用語は、フラッシング流体を含有し得るセルを形成するために、表面にわたって分配された隆起した壁部を有する不均一な表面を意味する。壁部は、約5mm~約10mmの範囲の高さを有する。表面は、印刷ヘッドが付勢部材220に対して押されるときに偏向することができる、成形プラスチックなどの弾性材料で形成され、そのため印刷ヘッドが表面232に係合する際、フラッシング流体が表面のセルから印刷ヘッドのフェースプレート上に出される。表面232のテクスチャは、規則的又は不規則な形状のセルで形成することができる。例えば、一実施形態では、テクスチャ加工された表面は、ハニカムのような六角形のセルで作製されるが、一方で他の実施形態では、セルは、よりスポンジ状である。フェースプレート及び表面232の並置は、フラッシング流体をフェースプレート内のインクジェットのノズルに直接隣接した状態に保ち、インクジェットノズルに圧力を提供し、そのためインクジェットのノズルからインクが漏れ出ることなく、インク供給源から印刷ヘッドを充填することが可能になる。表面232の寸法は、表面232の領域が、印刷ヘッドフェースプレート内のノズルアレイを完全に覆うが、フェースプレートの周囲内に留まるように選択される。
【0023】
再び図1Bを参照すると、フラッシング流体アプリケータ290は、アクチュエータ40のうちの1つに動作可能に接続されて示される。アクチュエータは、アプリケータ290をハウジング204内の容積に移動させ、フラッシング流体を、プレート212上の表面232に適用するように構成される。本明細書で使用される際、「フラッシング流体」とは、印刷機の印刷ヘッドから噴射されたインクを溶解することができる任意の流体を意味する。キャッピングステーションで使用することができるフラッシング流体の一例は、インクジェット印刷機用に配合された市販の洗浄液であり、別に、蒸留水でもよい。コントローラ80’は、アクチュエータに動作可能に接続され、アクチュエータを選択的に動作させて、表面232にフラッシング流体を適用するためにハウジング204にアプリケータを移動させ、及びハウジング204の反対の印刷ヘッドの移動を妨げない位置にアプリケータを戻すように構成される。フラッシング流体は、ノズル及びフェースプレート上でインクが乾燥することを防止する。付加的に、フラッシング流体は、ノズル及びフェースプレート上で乾燥インクを溶解し、これは、詰まった又は動作不能なインクジェットをそれらの動作条件に復元するのに役立つ。アプリケータ290は、ローラの外側表面に滴下するフラッシング流体の内部供給を有するローラ、ローラがフラッシング流体を吸収することができるように、フラッシング流体の受容部内に懸架されたローラ、又は表面232上に落下するフラッシング流体のミストを生成する噴霧器であってもよい。
【0024】
図3は、ノズル内のインクの粘度を、低粘度で保存するためのフィルムで、印刷ヘッドのフェースプレートを覆うようにキャッピングシステム60’を動作させるプロセス300のフロー図を図示する。下記の考察において、機能又は動作を実行するプロセス300への参照は、印刷機内の他の構成要素に関連して機能又は動作を実行するように、記憶されたプログラム命令を実行するための、コントローラ80’などのコントローラの動作を指す。プロセス300は、例示目的のために、図1A及び図1Bの印刷機10において実行されるものとして説明される。
【0025】
印刷機10を操作するプロセス300は、ここで、図3ならびに図1B図2A、及び図2Bの図を参照して考察される。印刷ヘッドが印刷を終了するとき、印刷ヘッドは、封止部と係合するためにキャッピングステーション60’に移動される(ブロック304)。タイマーが開始され、一時的な期間の持続時間が満了したかどうかを決定するために監視される(ブロック308)。図3のプロセスでは、一時的な非活動期間は、1時間であるが、インクがノズルにおいて粘度を変化させ始めるほど長くなければ、他の期間を、一時的な期間として使用することもできる。一時的な期間がアクティブである限り、印刷ヘッドは、図2Aに示される第1の位置において封止部と接触したままである。非活動期間が、1時間を超えるなど、一時的な期間を超えて延在する場合、コントローラ80’は、1つ以上のアクチュエータを動作させて、封止部から印刷ヘッドを持ち上げ(ブロック312)、次いでフラッシング流体アプリケータ290をプレート212の表面232と係合するように移動させて、フラッシング流体を表面に適用する(ブロック316)。適用が完了した後、アプリケータ290は、次いでその元の位置に戻される(ブロック320)。次いで、コントローラ80’は、アクチュエータ40を動作させて、印刷ヘッドをキャッピングステーション60’に戻し、印刷ヘッドのフェースプレートをハウジング204内の容積に所定の距離だけ押し、そのためプレート212の表面232が、印刷ヘッドのフェースプレートと係合する(ブロック324)。コントローラは、印刷ヘッドが動作状態に戻されるときを示す信号をユーザインターフェース50から監視する(ブロック328)。信号が検出されるとき、コントローラ80’は、アクチュエータ40を動作させて、印刷ヘッドを動作サービスのために印刷機内の動作サービスの位置に戻す(ブロック332)。印刷ヘッドが動作状態に戻される前に、このプロセスはまた、印刷ヘッド内のインクジェットノズルが、印刷ヘッドのフェースプレートからフラッシング流体を取り除くためにプライミングを必要とするかどうか決定することができ、決定された場合、既知の様式でノズルのプライミングを実行する。
【0026】
様々な上記に開示したものならびに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされてもよいことが理解されるであろう。様々な現在予見できない又は予期しない代替、修正、変形、又は改良が当業者によって後に行われる可能性があり、これらもまた添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B