(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】グレモン錠の受け金具
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20240404BHJP
E05B 63/14 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
E05B15/02 B
E05B63/14 E
(21)【出願番号】P 2020111365
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】永山 修
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/015705(WO,A1)
【文献】特開2015-105504(JP,A)
【文献】特開2010-275737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 15/02, 63/14
E05C 1/02, 9/02, 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の受け金具本体と、
前記受け金具本体の上下両端部にそれぞれ開口する固定用のねじ穴と、
前記受け金具本体に一体に設けられ、グレモン錠のロックピンを、前記ねじ穴の間において前記受け金具本体の室外側から受け入れるとともに前記受け金具本体の上下方向に沿って挿入させて係合するロック溝と、を備え、
前記ロック溝は、前記受け金具本体の室外側縁部の一部から見付方向に立ち上げられるとともに、室内側に向けて折り曲げられることによって、前記受け金具本体の上下方向及び室内側に開放されて
おり、
前記受け金具本体は、前記ロック溝に隣接する前記室外側縁部に、前記室外側縁部から前記受け金具本体の幅方向の中央部にかけて前記受け金具本体が切り欠かれていることによって、前記ロックピンと前記受け金具本体とが干渉することを避ける切り欠き部を有する、グレモン錠の受け金具。
【請求項2】
前記ロック溝を挟んで上下方向に対称構造を有する、請求項1
に記載のグレモン錠の受け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グレモン錠の受け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に取り付けられる窓として、グレモン錠によって施錠される辷り出し窓等の開き窓が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
グレモン錠は、障子の縦框に外周に向けて突出して設けられるロックピンと、枠体の内周面に取り付けられる受け金具と、を有する。ロックピンは、障子に設けられるハンドルの操作に連動して上下方向に移動する。受け金具は、上下両端部に、枠体に対してねじ止めするためのねじ穴が設けられた取り付け面を有する。両端部の取り付け面の間には、ロックピンを係合及び離脱させるL型に切り欠かれたロック溝が設けられる。ロック溝は、閉方向に移動する障子のロックピンを室外側から溝内に受け入れる。その後、ハンドルの施錠操作によってロックピンが上方向に移動すると、ロックピンはロック溝に完全に係合する。これによって、窓が施錠される。
【0004】
従来のグレモン錠の受け金具の取り付け面は、金属板の両端部を同一方向にL型に折り曲げることによって形成される。これによって、受け金具におけるロック溝は、枠体の内周面から障子側に張り出すように配置される。ロック溝と枠体の内周面との間には、ロックピンの先端をロック溝の裏側に収容して保持する空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受け金具は、生産ライン上で、取り付け面のねじ穴を利用して、障子の戸先側に対向する縦枠の内周面にねじ止めされる。取り付け面は、金属板をL型に折り曲げることによって形成されているため、ねじ穴の直ぐ近くに取り付け面の立ち上がり部が配置される。そのため、ねじ止めの際に、ねじ止め用の治具が取り付け面の立ち上がり部と干渉し易い。これによって、従来では、生産ライン上でグレモン錠の受け金具を枠体に対してねじ止めすることが困難になる場合がある。取り付け面を上下方向に大きく形成すれば、ねじ穴を取り付け面の立ち上がり部から離すことができる。しかし、この場合、受け金具が無駄に大型化するため、コストが増加する。
【0007】
したがって、発明者は、ねじ止めが容易であり、安価に形成可能なグレモン錠の受け金具を提供するという課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のグレモン錠の受け金具は、平板状の受け金具本体と、前記受け金具本体の上下両端部にそれぞれ開口する固定用のねじ穴と、前記受け金具本体に一体に設けられ、グレモン錠のロックピンを、前記ねじ穴の間において前記受け金具本体の室外側から受け入れるとともに前記受け金具本体の上下方向に沿って挿入させて係合するロック溝と、を備え、前記ロック溝は、前記受け金具本体の室外側縁部の一部から見付方向に立ち上げられるとともに、室内側に向けて折り曲げられることによって、前記受け金具本体の上下方向及び室内側に開放されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】グレモン錠の受け金具を備える建具を示す正面図である。
【
図4】建具が備える障子の戸先面を示す側面図である。
【
図5】建具の枠体に取り付けられたグレモン錠の受け金具を示す斜視図である。
【
図8】グレモン錠の受け金具の変形例の使用形態を示す正面図である。
【
図9】グレモン錠の受け金具の変形例を左右反転させた使用形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具の枠体に納められるガラスや障子の面内方向に沿う方向を意味する。「見込方向」とは、建具の室内外方向、すなわち、建具の奥行き方向に沿う方向を意味する。図中に示すX1は室外を示し、X2は室内を示す。
【0011】
図1は、室内側から見た縦辷り窓である建具1を示している。建具1は、建物開口部に固定される枠体10と、枠体10の内側に開閉可能に取り付けられる障子20と、を備える。
【0012】
枠体10は、上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14を矩形に枠組みすることによって構成される。上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
【0013】
図2に示すように、上枠11の内部は、見込方向で複数の空間に区画されている。上枠11の内部には、室外側から室内側の順に、中空部11a,11b,11cが形成される。中空部11cには金属製の上枠芯材11dが配置される。上枠11の室内側下部には、下方に延びる延出部11eが形成される。延出部11eの室外側の見付面には、クッション材11fが配置される。
【0014】
下枠12の内部には、見込方向に複数の中空部12a,12b,12cが形成される。中空部12bには、金属製の下枠芯材12dが配置される。下枠12の室内側上部には、上方に延びる延出部12eが形成される。延出部12eの室外側の見付面には、クッション材12fが配置される。
【0015】
図3に示すように、吊元側縦枠13の内部には、見込方向で区画された複数の中空部13a,13b,13cが形成される。中空部13bには、金属製の縦枠芯材13dが配置される。吊元側縦枠13の室内側には、見付方向の戸先側に延びる延出部13eが形成される。延出部13eの室外側の見付面には、クッション材13fが配置される。
【0016】
戸先側縦枠14の内部には、見込方向で区画された複数の中空部14a,14b,14cが形成される。中空部14bには金属製の縦枠芯材14dが配置される。戸先側縦枠14の室外側には、見付方向の吊元側に延びる延出部14eが形成される。延出部14eの室外側の見付面には、クッション材14fが配置される。
【0017】
図3に示すように、枠体10の内側の内隅には、枠側コーナー金具46がそれぞれ配置される。
図2では、枠側コーナー金具46は図示省略している。枠側コーナー金具46は、枠体10の4隅のそれぞれに配置される。枠側コーナー金具46自体は、枠体10の見込面に配置される。枠側コーナー金具46は、ねじ等の締結部材を介して、枠体10の内側の上枠芯材11d、下枠芯材12d、縦枠芯材13d及び縦枠芯材14dに締結固定される。より具体的には、枠体10の戸先側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材14dとが、枠側コーナー金具46によって連結される。枠体10の吊元側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材13dとが、枠側コーナー金具46によって連結される。同様に、戸先側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材14dとが、枠側コーナー金具46によって連結される。吊元側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材13dとが、枠側コーナー金具46によって連結される。
【0018】
障子20は、ガラス25と、ガラス25を囲うように構成される框体30と、を含んで構成される。
【0019】
ガラス25は、室外側に配置される室外側ガラス25aと、室外側ガラス25aに対して隙間をあけて室内側に配置される室内側ガラス25bと、を備える複層ガラスである。室外側ガラス25aと室内側ガラス25bとの間には、スペーサ26等が配置される。
【0020】
框体30は、上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34を矩形に枠組みすることによって構成される。上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
【0021】
上框31の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部31a,31b,31cが形成される。最も室内側に位置する中空部31cには、金属で形成される室内側上框芯材31dが配置される。中空部31bには、金属製の室外側上框芯材31eが配置される。室内側上框芯材31d及び室外側上框芯材31eは、何れも上框31の長手方向に沿って延びている。上框31の室外側上部には、上枠11の一部と見込方向で対向する延出部31fが形成される。延出部31fの室内側には、クッション材31gが設けられる。延出部31fの下方には、嵌合固定部31hが形成される。嵌合固定部31hには、樹脂製の押し縁部材27が嵌合固定される。
【0022】
下框32の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部32a,32b,32cが形成される。最も室内側に位置する中空部32cには、金属で形成される室内側下框芯材32dが配置される。中空部32bには、金属製の室外側下框芯材32eが配置される。室内側下框芯材32d及び室外側下框芯材32eは、何れも下框32の長手方向に沿って延びている。下框32の室外側下部には、下枠12の一部と見込方向で対向する延出部32fが形成される。延出部32fの室内側にはクッション材32gが設けられる。延出部32fの下方には、嵌合固定部32hが形成される。嵌合固定部32hには、樹脂製の押し縁部材27が嵌合固定される。
【0023】
吊元側縦框33の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部33a,33b,33cが形成される。最も室内側に位置する中空部33cには、金属で形成される室内側縦框芯材33dが配置される。中空部33bには、金属製の室外側縦框芯材33eが配置される。室内側縦框芯材33d及び室外側縦框芯材33eは、何れも吊元側縦框33の長手方向に沿って延びている。吊元側縦框33の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部33fが形成される。延出部33fの室内側には、クッション材33gが設けられる。また、延出部33fの戸先側には、嵌合固定部33hが形成される。嵌合固定部33hには、樹脂製の押し縁部材27が嵌合固定される。
【0024】
戸先側縦框34の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部34a,34b,34cが形成される。最も室内側に位置する中空部34cには、金属で形成される室内側縦框芯材34dが配置される。中空部34bには、金属製の室外側縦框芯材34eが配置される。室内側縦框芯材34d及び室外側縦框芯材34eは、何れも戸先側縦框34の長手方向に沿って延びている。戸先側縦框34の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部34fが形成される。延出部34fの室内側には、クッション材34gが設けられる。延出部34fの吊元側には、嵌合固定部34hが形成される。嵌合固定部34hには、樹脂製の押し縁部材27が嵌合固定される。
【0025】
本実施形態では、框体30の内部の室外側に位置する室外側上框芯材31e、室外側下框芯材32e、室外側縦框芯材33e及び室外側縦框芯材34eと、室内側に位置する室内側上框芯材31d、室内側下框芯材32d、室内側縦框芯材33d及び室内側縦框芯材34dと、が框芯材連結金具67によって連結されている。框芯材連結金具67は、框体30の外側面の形状に応じて段差状に形成されるプレート部材である。框芯材連結金具67は、框体30の外部に配置される。框芯材連結金具67は、框体30の内部で異なる中空部に配置される室外側の芯材と室内側の芯材に、ねじ等の締結部材によってそれぞれ締結される。これによって、見込方向に複数の中空部が形成される樹脂製の框体30が、火災発生時の高温環境下で室外側と室内側に分離する事態が確実に防止されている。
【0026】
図2に示すように、障子20は、上アーム部材61及び下アーム部材62によって開閉可能に枠体10の内側に支持される。上アーム部材61は、上枠11に連結されるとともに上框31に連結される。下アーム部材62は、下枠12に連結されるとともに下框32に連結される。本実施形態では、上アーム部材61及び下アーム部材62は、何れも框体30に対して、金属によって板状に成形される補強材65を介して連結される。
【0027】
図3及び
図4に示すように、障子20の戸先側には、ハンドル55に連動するスライドロック機構50が配置される。スライドロック機構50は、ハンドル55の操作に連動して上下方向に移動するスライドプレート51と、スライドプレート51の戸先側の見込面に形成されるロックピン52と、を備える。
【0028】
スライドプレート51は、戸先側縦框34の中空部34cを形成する外周側面のうち、戸先側縦枠14と対向する面に設けられる。スライドプレート51は、戸先側縦框34の戸先側にスライド嵌合された状態で、ハンドル55に連結されている。スライドプレート51には、スライドプレート51の移動方向と同じ方向に沿って、細長いスリット53が形成される。スリット53の長手方向の長さは、スライドプレート51の移動ストロークに応じて設定されている。スリット53には、スライドプレート51に隣接して戸先側縦框34に固定される分離防止金具57の先端が挿入されている。分離防止金具57は、火災時の障子20の室外側と室内側の分離を防止する金具である。この分離防止金具57の先端がスリット53に挿入されることによって、スライドプレート51の上下方向の移動がガイドされる。
【0029】
ロックピン52は、スライドプレート51の戸先側の見込面から、戸先側縦枠14の内周側の見込面14gに向けて、横方向に突出して設けられる。本実施形態では、ロックピン52は、スライドプレート51の上下方向の複数個所に形成されている。ロックピン52は、
図5に示すように、円柱状のロックピン本体521と、ロックピン本体521の先端に配置される円板部522と、を有する。円板部522の外径は、ロックピン本体521の外径よりも大きい。
【0030】
戸先側縦枠14の内周側の見込面14gには、ロックピン52が係合する受け金具15が固定される。ロックピン52と受け金具15とによって、建具1のグレモン錠が構成される。受け金具15は、ロックピン52の数に応じて、戸先側縦枠14の内周側の見込面14gに、上下方向に間隔をあけて複数固定される。
【0031】
図5,
図6及び
図7に示すように、受け金具15は、金属板によって形成される平板状の受け金具本体151を有する。受け金具本体151は、室内外方向に沿う幅方向よりも上下方向に長尺な矩形状に形成される。受け金具本体151は、上下方向に沿って平坦に形成され、上下方向に折り曲げられた部位を持たない。
【0032】
受け金具本体151の上下両端部には、横長に開口する長孔からなる固定用のねじ穴152,152がそれぞれ設けられる。受け金具15は、受け金具本体151の両端部の各ねじ穴152,152に挿入される締結部材であるねじ150,150によって、戸先側縦枠14の内周側の見込面14gに固定される。受け金具本体151は平板状であるため、受け金具本体151の背面全体が、戸先側縦枠14の見込面14gに対する取り付け面を構成する。
【0033】
受け金具本体151における上下のねじ穴152,152の間の室外側縁部151aには、ロック溝形成板153が、受け金具本体151と一体に設けられる。ロック溝形成板153は、受け金具本体151の上下方向の中央部よりも上側に配置される。ロック溝形成板153は、受け金具本体151の室外側縁部151aから見付方向に略直角に折り曲げられることによって、戸先側縦枠14の内周側に向けて立ち上げられている。さらに、そのロック溝形成板153の先端部153aは、室内側に向けて略直角に折り曲げられている。先端部153aは、受け金具本体151の幅方向の中央部よりも僅かに室外側に配置されている。
【0034】
折り曲げられたロック溝形成板153の先端部153aは、受け金具本体151の表面との間に所定の間隔をおいて配置される。この間隔は、ロックピン52の円板部522の軸方向の厚みよりも大きい。ロック溝形成板153の内側は、ロックピン52を係合及び離脱させるロック溝154を構成する。ロック溝154は、受け金具本体151の上下方向及び室内側に開放している。
【0035】
ロック溝形成板153の上端部153bの位置は、上側のねじ穴152よりも下方に離れて配置される。
図6に示すように、ロック溝形成板153の上端部153bと上側のねじ穴152との離隔距離L1は、上側のねじ穴152にねじ止め用治具を用いてねじ150を締結する際に、上端部153bとねじ止め用治具とが干渉することのない距離に設定されている。
【0036】
次に、受け金具15のロック溝154に対するロックピン52の係合及び離脱の様子について説明する。開放状態の障子20が室内側に向けて閉方向に移動すると、障子20の戸先側縦框34に設けられるスライドプレート51から突出するロックピン52が、室外側から受け金具15に向けて接近する。障子20が枠体10内に納められて閉鎖状態になると、ロックピン52は、ロック溝形成板153の下方に配置される。
【0037】
詳しくは、
図5中の2点鎖線で示されるように、障子20の閉方向の移動に伴って室外側から室内側に向けて移動するロックピン52は、ロック溝形成板153と下側のねじ穴152との間から受け金具15に受け入れられる。障子20が閉鎖状態になったとき、ロックピン52は、ロック溝形成板153と下側のねじ穴152との間において、受け金具本体151の幅方向の中央部付近で停止する。
【0038】
その後、オペレータによってハンドル55が施錠方向に操作されると、ハンドル55の操作に連動して、スライドロック機構50のスライドプレート51が上方向に移動する。これによって、ロックピン52が、ロック溝形成板153と同じ高さまで上方向に移動する。このとき、ロックピン本体521は、ロック溝形成板153の先端部153aよりも僅かに室内側を上方向に移動する。ロックピン52の先端の円板部522の外周は、ロック溝形成板153の先端部153aよりも僅かに室外側を上方向に移動する。そのため、ロックピン52が上方向に移動することによって、ロックピン52の円板部522がロック溝154内に挿入される。
【0039】
図5及び
図6に示すように、ロック溝形成板153の先端部153aの下端は、斜めに切り欠かれた傾斜面153cを有する。これによって、ロックピン52がロック溝154に向けて上方向に移動する過程で、ロックピン本体521がロック溝形成板153の先端部153aに当接しても、傾斜面153cに沿って先端部153aの室内側に円滑に案内される。
【0040】
スライドプレート51の移動が移動ストロークの終端部で停止すると、
図5中の実線で示される位置で、ロックピン52は停止する。このとき、ロックピン52の円板部522は、ロック溝154内に配置される。これによって、ロックピン52は、ロック溝154内に係合する。この状態で、障子20を室外側に向けて無理に移動させると、ロックピン52のロックピン本体521がロック溝形成板153の先端部153aに当接する。そのため、障子20は開方向に移動し得ず、施錠される。
【0041】
図6に示すように、ロック溝形成板153の上下方向の長さ、すなわち、ロック溝154の上下方向の長さL2は、施錠状態で停止したロックピン52が、ロック溝154から上方に抜け出ることのない程度に設定される。具体的には、ロック溝形成板153の上端部153bの位置は、施錠状態で停止したロックピン52の上端の位置よりも上方に配置される。これによって、閉鎖状態の障子20に対して戸先側を無理に上方に変形させる外力が作用しても、ロックピン52とロック溝154との係合状態が解除されてしまうことはない。
【0042】
ロック溝形成板153は、室外側から室内側に向けて折り曲げられて形成されている。そのため、閉鎖状態の障子20を無理に開放させることによって、ロックピン52を介してロック溝形成板153に対して室外側に向けて大きな外力が作用しても、ロック溝形成板153が捩れることはない。ロック溝形成板153は、ロックピン52をロック溝154から室外側に向けて離脱させる方向に変形しにくいため、防犯性に優れる。
【0043】
オペレータによってハンドル55が解錠方向に操作されると、ハンドル55の操作に連動して、スライドロック機構50のスライドプレート51が下方向に移動する。これに伴って、ロックピン52は、ロック溝形成板153よりも下方に移動し、ロック溝154から離脱する。これによって、ロックピン52とロック溝154との係合が解除され、障子20は解錠される。
【0044】
このように、本実施形態の受け金具15は、平板状の受け金具本体151と、受け金具本体151の上下両端部にそれぞれ開口する固定用のねじ穴152,152と、受け金具本体151に一体に設けられ、グレモン錠のロックピン52を、ねじ穴152,152の間において受け金具本体151の室外側から受け入れるとともに受け金具本体151の上下方向に沿って挿入させて係合するロック溝154と、を備える。ロック溝154は、受け金具本体151の室外側縁部151aの一部から見付方向に立ち上げられるとともに、室内側に向けて折り曲げられることによって、受け金具本体151の上下方向及び室内側に開放されている。この受け金具本体151は、ねじ穴152,152の近傍から見付方向に立ち上がる部分を持たないため、生産ライン上で受け金具15を枠体10に対してねじ止めする際に、ねじ止め用治具が受け金具本体151と干渉するおそれはない。そのため、枠体10に対して容易にねじ止め可能である。しかも、受け金具15の折り曲げ部位は、ロック溝形成板153の部位だけであるため、使用される金属材料は必要最小限の大きさで済む。したがって、この受け金具15は、従来に比べて金属材料を大幅に削減でき、安価に形成可能である。
【0045】
図6に示すように、受け金具本体151は、ロック溝形成板153及びロック溝154に隣接する室外側縁部151aに、切り欠き部155を有する。切り欠き部155は、ロック溝形成板153及びロック溝154の下方、且つ、下側のねじ穴152の上方に配置される。切り欠き部155は、受け金具本体151の室外側縁部151aから、受け金具本体151の幅方向の中央部にかけて、受け金具本体151を矩形状に大きく切り欠くように形成されている。
【0046】
この切り欠き部155によっては、ロックピン52と受け金具本体151との干渉が避けられる。詳しくは、閉方向の移動時の障子20の戸先側は、円弧状の軌跡を描く。そのため、障子20の変形等によってロックピン52の位置が外側に向けて僅かに変位すると、ロックピン52が受け金具本体151と干渉するおそれがある。しかし、切り欠き部155は、室外側から受け金具本体151に向かうロックピン52の移動軌跡上に配置されるため、ロックピン52の位置が外側に向けて僅かに変位しても、ロックピン52は切り欠き部155を通過し、受け金具本体151と干渉することはない。
【0047】
本実施形態の受け金具15は、
図1に示すように、室内側から見た建具1の左側の戸先側縦枠14に取り付けられる。障子20の戸先側が、
図1に示す建具1の右側に配置される場合には、
図6に示す受け金具15を左右反転させた構造を有する受け金具15が使用される。しかし、受け金具は、
図8及び
図9に示すように、左右兼用の構造を有する受け金具15Aを使用してもよい。
図8及び
図9に示す受け金具15Aにおいて、
図5,
図6及び
図7に示す受け金具15と同一符号の部位は同一構成の部位を示す。そのため、それらの重複する説明は上記説明を援用し、以下の説明では省略する。
【0048】
受け金具15Aの受け金具本体151は、上述した受け金具15の受け金具本体151に比べて、上下方向にさらに長尺に形成される。ロック溝形成板153は、受け金具本体151の上下方向の中央部に配置される。ロック溝形成板153の上下方向の長さL3は、受け金具15のロック溝形成板153の上下方向の長さL2に比べて、約2倍の長さを有する。ロック溝形成板153の先端部153aの上下両端部に、それぞれ傾斜面153cが形成される。切り欠き部155は、ロック溝形成板153の上側及び下側の同一側縁部にそれぞれ設けられる。したがって、この受け金具15Aは、ロック溝154を挟んで上下方向に対称構造を有する。
【0049】
図8に示す受け金具15Aは、上述した受け金具15と同様に、
図1に示す建具1の左側の戸先側縦枠14に取り付けられる。これによって、受け金具15Aは、障子20のロックピン52を、
図8中の1点鎖線で示すように、下側の切り欠き部155から受け金具本体151に受け入れる。その後、ハンドル55の施錠操作に連動してロックピン52が上方向に移動すると、受け金具15Aは、ロックピン52をロック溝154に挿入させて係合する。
【0050】
障子20の戸先側が、
図1に示す建具1の右側に配置される場合には、受け金具15Aは、
図9に示すように上下逆転させて、建具1の右側の戸先側縦枠に取り付けられる。これによって、受け金具15Aは、障子20のロックピン52を、
図9中の1点鎖線で示すように、
図8の場合とは反対側の切り欠き部155から受け金具本体151に受け入れる。その後、ハンドル55の施錠操作に連動してロックピン52が上方向に移動すると、受け金具15Aは、ロックピン52をロック溝154に挿入させて係合する。
【0051】
このように、この受け金具15Aは、ロック溝154を挟んで上下方向に対称構造を有する。そのため、障子20の戸先側が左右何れの側に配置されても、上下逆転して取り付けて使用することができる。したがって、この受け金具15Aは汎用性に優れる。
【0052】
上記実施形態では、建具1が縦辷り窓である場合を例に挙げて説明したが、建具は横辷り窓であってもよい。本実施形態のグレモン錠の受け金具15,15Aは、開閉可能な障子を備える種々の建具に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
15,15A 受け金具、 151 受け金具本体、 151a 室外側縁部、 152 ねじ穴、 154 ロック溝、 155 切り欠き部、 52 ロックピン