(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エアバッグモジュールおよびそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20240404BHJP
【FI】
B60R21/36 354
(21)【出願番号】P 2020127441
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信行
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-273139(JP,A)
【文献】特開平07-277114(JP,A)
【文献】特表2002-542110(JP,A)
【文献】特開2006-137322(JP,A)
【文献】特開2005-199787(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011114298(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方または後方に取り付けられるエアバッグモジュールであって、
前記車両に配置され、エアバッグを収納する収納空間を有する本体部と、
前記収納空間と前記車両の底面の外側とを連通する開口部であって、地面に向かうように配置された開口部と、
前記収納空間に収納された前記エアバッグであって、ガスが供給されることにより前記開口部から該車両の底面と地面の間に展開する前記エアバッグと、
前記開口部を覆い、前記収納空間に収納された前記エアバッグの少なくとも一部が固定されたカバーであって、前記エアバッグが展開する際に該エアバッグと一体になって前記本体部から脱落するように構成されたカバーと、
を備
え、
前記エアバッグモジュールは、前記車両の前方に取り付けられており、
前記エアバッグは、展開した場合において、前記本体部の位置から前記車両の前方に向かって延在する前方展開部と、該本体部から該車両の後方に向かって延在する後方展開部とを有しており、
前記本体部の位置から前記前方展開部の先端までの長さは、該位置から前記後方展開部の先端までの長さより短い、
エアバッグモジュール。
【請求項2】
前記カバーは、展開した前記エアバッグのうち前記地面との距離が最も近い部分の少なくとも一部を覆うように該エアバッグに固定されている、
請求項1記載のエアバッグモジュール。
【請求項3】
前記カバーは、前記本体部と一体的に構成されており、
前記本体部には、前記カバーを区画する脆弱部が形成されている、
請求項1または請求項2に記載のエアバッグモジュール。
【請求項4】
前記エアバッグモジュールは、前記車両が有する原動機に対応する位置に配置されており、
前記エアバッグは、前記原動機に対応する位置を含んで展開される、
請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載のエアバッグモジュール。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載のエアバッグモジュールを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグモジュールおよびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外側で展開するように車両に搭載されたエアバッグが知られている。例えば、特許文献1には、車両の前部のバンパーから車両の外側に展開して歩行者を保護するガスバッグが記載されている。このガスバッグは、路面に向かって展開した場合に、路面からわずかな距離を隔てつつ歩行者の脚部と接触する。また、ガスバッグの展開状態で路面と面する領域には、摩擦による負荷に対して高い耐性を有する外層や別個の着用体が内層に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/0154247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の外側で展開するエアバッグでは、展開後に地面との間に隙間が形成できるように構成されていたとしても、エアバッグが展開する際には展開時の勢いによってその一部が地面と接触する可能性が有る。エアバッグは、地面と接触することで地面との摩擦による負荷がかかり破損してしまう虞がある。
【0005】
また、エアバッグの破損を防ぐために、摩擦による負荷に対して高い耐性を有するカバー等をエアバッグに取り付けることが想定されるが、エアバッグの路面と面する領域のうちいずれの部分が地面と接触するのかの予測が困難である。このため、エアバッグのいずれの部分にカバー等を取り付けるべきであるかの特定をすることは困難である。また、エアバッグの全体にカバー等を取り付ける場合には、エアバッグの製造コストの増大を招いてしまう。
【0006】
本開示は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、製造コストが増大するのを抑制しつつ、エアバッグの破損を防ぐことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のエアバッグモジュールでは、エアバッグが展開する際に該エアバッグと一体になって本体部から脱落するようにカバーを設けた。
【0008】
具体的には、本開示は、車両の前方または後方に取り付けられるエアバッグモジュールであって、前記車両に配置され、エアバッグを収納する収納空間を有する本体部と、前記収納空間と前記車両の底面の外側とを連通する開口部であって、地面に向かうように配置された開口部と、前記収納空間に収納された前記エアバッグであって、ガスが供給されることにより前記開口部から該車両の底面と地面の間に展開する前記エアバッグと、前記開口部を覆い、前記収納空間に収納された前記エアバッグの少なくとも一部が固定されたカバーであって、前記エアバッグが展開する際に該エアバッグと一体になって前記本体部から脱落するように構成されたカバーと、を備える。このような構成のエアバッグモジュールによれば、エアバッグの広範囲にカバーを設ける必要がなく、簡易な構成にすることで安価に製造することができる。このため、上記構成のエアバッグモジュールは、生産コストが増大するのを抑制しつつ、エアバッグの破損を防ぐことができる。また、上記構成の
エアバッグモジュールは、展開時におけるエアバッグの破損を防ぐことができるので、歩行者が車両と地面の間に挟まれにくくすることができる。
【0009】
上記エアバッグモジュールにおいて、前記カバーは、展開した前記エアバッグのうち前記地面との距離が最も近い部分の少なくとも一部を覆うように該エアバッグに固定されていてもよい。このような構成のエアバッグモジュールによれば、エアバッグが展開したときに地面と最も近接するエアバッグの部分のみをカバーで覆うことができるので、全体をコンパクトに構成することができる。
【0010】
上記エアバッグモジュールにおいて、前記カバーは、前記本体部と一体的に構成されており、前記本体部には、前記カバーを区画する脆弱部が形成されていてもよい。なお、脆弱部は、直線状または曲線状に形成されていてもよく、連続的または点線状に形成されていてもよい。
【0011】
上記エアバッグモジュールは、前記車両の前方に取り付けられており、前記エアバッグは、展開した場合において、前記本体部の位置から前記車両の前方に向かって延在する前方展開部と、該本体部から該車両の後方に向かって延在する後方展開部とを有しており、前記本体部の位置から前記前方展開部の先端までの長さは、該位置から前記後方展開部の先端までの長さより短くてもよい。このような構成のエアバッグモジュールによれば、エアバッグの前方への展開量を後方への展開量よりも小さくすることで、車両の下の隙間を埋めつつ、車両が前進しているときにカバーが地面に接触した場合であっても前方展開部が車両の後方に巻き込まれる可能性を低減できる。
【0012】
上記エアバッグモジュールは、前記車両が有する原動機に対応する位置に配置されており、前記エアバッグは、前記原動機に対応する位置を含んで展開されてもよい。このような構成のエアバッグモジュールによれば、水害等の発生時に車両の原動機の水没も防ぐことができる。
【0013】
また、本開示は、車両の側面から捉えることもできる。例えば、本開示は、上記のいずれかに記載のエアバッグモジュールを備える車両であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術によれば、エアバッグの製造コストが増大するのを抑制しつつ、エアバッグの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係るエアバッグモジュールが搭載された車両を示す図である。
【
図2】実施形態1に係るエアバッグモジュールを示す図である。
【
図3】実施形態1に係るエアバッグモジュールのエアバッグが展開された状態を示す図である。
【
図4】実施形態1の変形例に係るエアバッグモジュールのエアバッグが展開された状態を示す図である。
【
図5】実施形態2に係るエアバッグモジュールのエアバッグが展開された状態を示す図である。
【
図6】実施形態3に係るエアバッグモジュールのエアバッグが展開された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るエアバッグモジュールについて説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発
明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、請求項によってのみ限定される。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1に係るエアバッグモジュールについて説明する。本実施形態に係るエアバッグモジュールは、自動車等の車両に搭載され、歩行者を保護するための装置として例示される。
【0018】
図1は、実施形態1に係るエアバッグモジュール1が搭載された車両100を右側から見た場合の図である。図中、矢印Aは、車両100が前進する場合の進行方向を示している。本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、車両100の前方に取り付けられており、車両100の底面101と地面Gの間でエアバッグを展開させる。これにより、エアバッグモジュール1は、車両100と地面Gの間に歩行者が挟まれるのを防ぐことで歩行者を保護する。
【0019】
次に、
図2に基づいて、本実施形態に係るエアバッグモジュール1についてより詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るエアバッグモジュール1の外観斜視図である。エアバッグモジュール1は、
図1に示す車両100の内部に配置された本体部10とエアバッグ11とを備える。本体部10は、箱状に形成されており、内部にエアバッグ11を収納する収納空間10Aを有する。収納空間10Aには、布製のエアバッグ11が折り畳まれて収容されている。本体部10は、樹脂で形成された底面部10Bを除いて金属で形成されており、金属部分で樹脂製の底面部10Bをかしめやねじによる固定等の公知の方法によって全体が一体的に構成されている。なお、本体部10は、全体が金属または樹脂で形成されていてもよい。
【0020】
エアバッグモジュール1は、本体部10の底面部10Bが車両100の底面側を向くように車両100内に配置される。エアバッグモジュール1は、地面Gに向かうように、底面部10Bに配置された開口部12を備える。開口部12は、収納空間10Aと車両100の底面101の外側とを連通する。エアバッグ11は、ガスが供給されることによって開口部12から車両100の底面101と地面Gの間に展開する。
【0021】
また、エアバッグモジュール1は、非作動状態において開口部12を覆うカバー13を備える。カバー13は、布製のエアバッグ11よりも摩擦による負荷に対して高い耐性を有する。本実施形態では、カバー13は、本体部10あるいは底面部10Bと一体的に構成されており、底面部10Bには、カバー13を区画する脆弱部14が形成されている。エアバッグ11が展開する際に、エアバッグ11がカバー13を押し下げることによって脆弱部14に荷重がかかることで脆弱部14が破壊され、カバー13が底面部10Bから脱落する。これにより、開口部12が開口状態となる。このように、脆弱部14は、エアバッグ11の展開時に開口部12を開口状態とするために形成されている。脆弱部14は、所定の荷重を受けたときに他の部位よりも優先的に破壊する部位であり、周囲(例えば、カバー13や底面部10B)よりも肉厚が薄くなっていたり、強度が低くなっている部位である。なお、脆弱部14は、直線上に連続的に形成されていてもよいし、直線状に点線状に形成されていてもよい。脆弱部14は、底面部10Bに容易に形成することができ、エアバッグ11の展開時には再現性よく開口部12を開口状態とすることができる。これにより、エアバッグモジュール1は、エアバッグ11を開口部12から展開させることができる。
【0022】
カバー13には、収納空間10Aに収納されたエアバッグ11の少なくとも一部が固定されている。このエアバッグ11の一部とは、エアバッグ11の展開後にも地面Gを向く
部分のことである。カバー13に対するエアバッグ11の固定は、例えば、接着剤によってカバー13にエアバッグ11が接着されることによって実現される。カバー13は、エアバッグ11が展開する際にエアバッグ11と一体になって本体部10の底面部10Bから脱落するように構成されている。なお、カバー13は、エアバッグ11が展開する際にエアバッグ11と一体になって本体部10から脱落するように本体部10と別体で構成されて底面部10Bに接合されていてもよい。
【0023】
また、エアバッグモジュール1は、エアバッグ11に供給するガスを発生させるガス発生器15を備える。ガス発生器15は、金属で形成された外殻容器内に充填されたガス発生器を点火器によって燃焼させることによって燃焼ガスを発生させる。なお、ガス発生器15は、圧縮ガスとガス発生剤が外殻容器内に封入されており、圧縮ガスおよび燃焼ガスを供給するハイブリッド式や、圧縮ガスのみを供給するストアード式であってもよい。なお、エアバッグモジュール1は、車両100に搭載されている別のガス発生器から供給されるガスによってエアバッグを展開するように構成されていてもよい。
【0024】
図3は、車両100に搭載されたエアバッグモジュール1のエアバッグ11が展開した状態を示す図である。エアバッグモジュール1は、車両100が歩行者や障害物との衝突したこと、または歩行者や障害物と衝突する可能性が高いこと(衝突を回避できないこと)を検知する信号を受信した場合に、ガス発生器15を作動させることによってエアバッグ11を展開する。例えば、車両100が矢印Aの向きに進行している場合に車両100の前方が歩行者に衝突したり、衝突する可能性が高い場合に、当該歩行者が車両100のボンネットに持ち上げられた後に運転手のブレーキ操作によって車両100が急停車されることが想定される。この場合、車両の急減速により生じる慣性力によって歩行者は車両100の前方に転げ落ちる。エアバッグモジュール1は、当該歩行者と車両100の衝突発生時、または衝突直前にエアバッグ11を展開しているため、車両100の前方に転げ落ちた当該歩行者を車両100が底面101と地面Gの間に巻き込むことを防ぐことができる。
【0025】
エアバッグ11の展開時においては、初めにエアバッグ11は、地面Gに向かって膨張し、次いで、車両100の前方に向かって膨張する。このように、エアバッグモジュール1は、歩行者が車両100の下に入り込まないように、車両100と地面Gとの間の隙間を埋めるようにエアバッグ11を展開させる。エアバッグ11が展開した状態では、エアバッグ11と地面Gとの間に例えば、2cm~5cm程度の隙間が形成されるが、エアバッグ11の展開中には、エアバッグ11内に供給されるガスの勢いによってエアバッグの一部が地面Gに接触してしまう虞がある。この問題点に関し、本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、エアバッグ11の一部が固定されたカバー13をエアバッグ11の展開時に本体部10から脱落させることで、地面Gと接触する可能性のある領域をカバー13で覆った状態でエアバッグ11を展開させることができる。エアバッグモジュール1は、カバー13によってエアバッグ11が地面Gに接触するのを防ぎ、車両100が矢印Aの方向に進行している際にエアバッグ11を展開させたとしてもカバー13を地面Gと擦れさせ、エアバッグ11を保護することができる。すなわち、エアバッグ11が展開したときに、当該エアバッグ11のうち地面Gと接触する可能性の高い領域のみがカバー13で覆われている。
【0026】
本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、カバー13によって覆うべきエアバッグ11の領域をある程度定めることができ、上記特許文献1に記載された外層や別個の着用体よりも厚みのあるカバー13によってエアバッグ11を保護することができるため、エアバッグ11を地面Gと接触する可能性をほぼ無くすことができる。そのため、エアバッグモジュール1は、エアバッグ11の広範囲にカバーを設ける必要がなく、簡易な構成にすることで安価に製造することができる。また、エアバッグ11の全体を厚く形成する必
要がなく、エアバッグ11をエアバッグモジュール1内に収容する際もエアバッグ11が嵩張ることがない。このため、本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、生産コストが増大するのを抑制しつつ、エアバッグ11の破損を防ぐことができる。なお、カバー13は、エアバッグ11の展開時の最初の段階で地面Gに接触する虞のあるエアバッグ11の領域を少なくとも覆うことができる面積を有していればよい。
【0027】
また、エアバッグモジュール1において、好ましくは、カバー13は、展開したエアバッグ11のうち地面Gとの距離が最も近い部分の少なくとも一部を覆うようにエアバッグ11に固定されていてもよい。エアバッグ11は、地面Gを向く部分が地面と必ずしも平行にならず、車両100の前方に向かって地面Gとエアバッグ11の底面との距離が増大するように形成されていてもよい。エアバッグ11の展開時と展開後において、地面Gと接触する可能性が高いのは地面Gとの距離が最小になる部分である。カバー13は、この部分を覆うことによってエアバッグ11が地面Gに接触することを防ぎ、エアバッグ11が破損するのを防ぐことができる。
【0028】
また、エアバッグ11が展開したときに地面Gと最も近接するエアバッグ11の部分のみをカバー13で覆うことによって、それ以外のエアバッグ11はカバー13で覆う必要がない。このため、エアバッグモジュール1は、コンパクトに構成することができる。また、地面Gと最も近接するエアバッグ11の部分においも地面Gと隙間が形成されるようにエアバッグ11の大きさを設定することで、エアバッグ11の当該部分以外はさらに地面Gとの隙間を広くすることができる。よってエアバッグモジュール1は、エアバッグ11の展開時に、エアバッグ11の一部が地面Gと擦れて破損することを防ぐことができる。これにより、エアバッグモジュール1は、展開時におけるエアバッグ11の破損を防ぐことができるので、歩行者が車両100と地面Gの間に挟まれるのを防ぐことができる。
【0029】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係るエアバッグモジュール1について
図4に基づいて説明する。
図4は、本変形例に係るエアバッグモジュール1のエアバッグ11が展開した状態を示す図である。本変形例においては、エアバッグ11は、展開した場合において、本体部10の位置から車両100の前方に向かって延在する前方展開部11Aと、本体部10から車両100の後方に向かって延在する後方展開部11Bとを有している。本体部10の位置から前方展開部11Aの先端までの長さをL1とし、本体部10の位置から後方展開部11Bの先端までの長さをL2すると、L1はL2よりも短い。すなわち、本体部10の位置から前方展開部11Aの先端までの長さは、当該位置から後方展開部11Bの先端までの長さより短い。ここで、本体部10の位置は、車両100の前後方向における本体部10の中央である。
【0030】
本変形例に係るエアバッグモジュール1は、車両100の前方に展開する前方展開部11Aを車両100の後方に展開する後方展開部11Bよりも短く構成している。なお、前方展開部11Aにカバー13が固定されている。エアバッグモジュール1は、エアバッグ11の前方への展開量を後方への展開量よりも小さくすることで、車両100の下の隙間を埋めつつ、車両100が前進しているときにカバー13が地面Gに接触した場合であっても前方展開部11Aが車両100の後方に巻き込まれる可能性を低減できる。これにより、エアバッグモジュール1は、歩行者が車両100と地面Gの間に挟まれにくくすることができるので、歩行者を保護できる。
【0031】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るエアバッグモジュールについて説明する。本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、自動車等の車両に搭載され、水害等の発生時に車両の原動機の水没を防ぐための装置として例示される。
【0032】
図5は、実施形態2に係るエアバッグモジュール1が搭載された車両100を右側から見た場合の図である。車両100の前方には、原動機102が搭載されている。原動機は、車両100の駆動源であり、例えば、エンジンやモータを含んで構成されている。本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、車両100が有する原動機102に対応する位置に配置されている。本実施形態において車両100が有する原動機102に対応する位置は、車両100の前方である。また、エアバッグ11は、原動機102に対応する位置を含んで展開される。
【0033】
本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、車両100が水没した場合にエアバッグ11を展開させることで、原動機102が水没するのを防ぐための装置である。
図5に示す状態では、車両100は水面WSの中に後方部分が水没している。しかしながら、エアバッグモジュール1のエアバッグ11が展開することによって、エアバッグ11の浮力により車両100の前方部分を水面WSよりも浮揚させることができる。これにより、エアバッグモジュール1は、原動機102が水没するのを防ぐことで、原動機102自体が水没により故障するのを防ぐことができる。このため、エアバッグモジュール1は、水が引いた後に、車両100のバッテリーなどの補器類を交換する程度で自走可能とすることができ、水害後の車両100の移動を容易にすることができる。またエアバッグモジュール1は、車両100の原動機102の対応する位置を浮揚させ、車両100の後方部分を水没させるため車両100が周辺の障害物に引っかかりやすく、車両100が遠方に流される可能性を低減できる。
【0034】
また、原動機102にエンジンが含まれる場合には、エアバッグモジュール1は、エンジンのエアインテーク部を水面WSから浮揚させることで、マフラー103が水没したとしてもエンジンのシリンダー内に水が入るのを防ぐことができる。また、原動機にモータが含まれる場合でも、エアバッグモジュール1は、モータを水面WSから浮揚させることで、バッテリーのみ交換すれば車両100を自走可能とすることができる。このため、本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、水害等の発生時に車両100の原動機の水没も防ぐことができる。なお、エアバッグモジュール1が水害時等でエアバッグ11を展開させる場合には、衝突や障害物への接近センサー以外にも、水没を感知するセンサーが車両100に設けられてもよい。
【0035】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るエアバッグモジュールについて説明する。本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、自動車等の車両の後方に搭載されている。本実施形態のように、エアバッグモジュール1は、車両100の後方に取り付けられていてもよい。これにより、例えば、車両100が後進中に後方部分が歩行者に衝突した場合や、歩行者と衝突する可能性が高い場合(衝突を回避できない場合)においても、エアバッグモジュール1は、車両100と地面Gの間に歩行者が挟まれるのを防ぐことで歩行者を保護できる。また、車両100の後方に原動機が搭載されている場合においても、車両100が有する原動機に対応する位置にエアバッグモジュール1を配置することで、エアバッグ11を原動機に対応する位置を含んで展開することができる。これにより、本実施形態に係るエアバッグモジュール1は、水害等の発生時に車両100の原動機の水没も防ぐことができる。
【0036】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。上記実施形態では、エアバッグモジュール1について説明したが、本開示の技術はこれに限られず、本開示の技術は、エアバッグモジュール1を備える車両100であってもよい。
【0037】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み
合わせることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 エアバッグモジュール
10 本体部
10A 収納空間
10B 底面部
11 エアバッグ
11A 前方展開部
11B 後方展開部
12 開口部
13 カバー
14 脆弱部
15 ガス発生器
100 車両
101 底面
102 原動機
103 マフラー
A 矢印
G 地面
WS 水面