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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20240404BHJP
   H01T 13/46 20060101ALI20240404BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20240404BHJP
   H01T 13/52 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/46
H01T13/20 B
H01T13/52
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020129604
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026238
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-501323(JP,A)
【文献】特開平03-107576(JP,A)
【文献】特開2011-044268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
該プラグカバー及び上記中心電極に対して電気的に絶縁された浮遊電極(7)と、
該浮遊電極を挿通させて保持しつつ上記ハウジングの先端部に配設された絶縁保持体(6)と、を有し、
上記絶縁碍子の先端側には、一部が上記プラグカバーと上記絶縁保持体とによって囲まれた副燃焼室(51)が形成され、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(52)が形成されており、
上記副燃焼室には、上記中心電極と上記浮遊電極との間に形成された第1放電ギャップ(G1)が設けられ、
上記副燃焼室の外部には、上記浮遊電極と上記プラグカバーとの間に形成された第2放電ギャップ(G2)が設けられ、
上記浮遊電極は、少なくとも上記副燃焼室に面した第1電極部材(71)と、少なくとも上記副燃焼室の外部に面した第2電極部材(72)と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
該プラグカバー及び上記中心電極に対して電気的に絶縁された浮遊電極(7)と、
該浮遊電極を挿通させて保持しつつ上記ハウジングの先端部に配設された絶縁保持体(6)と、
該絶縁保持体の外周部(63)を上記プラグカバーと共に挟持固定する固定部材(54)と、を有し、
上記プラグカバーと上記固定部材とは、互いに接合されており、
上記絶縁碍子の先端側には、一部が上記プラグカバーと上記絶縁保持体とによって囲まれた副燃焼室(51)が形成され、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(52)が形成されており、
上記副燃焼室には、上記中心電極と上記浮遊電極との間に形成された第1放電ギャップ(G1)が設けられ、
上記副燃焼室の外部には、上記浮遊電極と上記プラグカバーとの間に形成された第2放電ギャップ(G2)が設けられている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項3】
上記浮遊電極は、少なくとも上記副燃焼室に面した第1電極部材(71)と、少なくとも上記副燃焼室の外部に面した第2電極部材(72)と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている、請求項2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記第1電極部材と上記第2電極部材とは、互いに螺合されている、請求項1又は3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記浮遊電極は、外周面の一部が径方向の外側に突出した外周突出部(711)を有し、
該外周突出部は、少なくとも一部が上記副燃焼室に面している、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
上記絶縁保持体の外周部(63)は上記プラグカバーに固定されており、
上記浮遊電極を挿通させて保持する上記絶縁保持体の保持部(64)は、上記浮遊電極をプラグ軸方向(Z)に沿って挿通させていると共に、上記外周部よりも基端側へ突出している、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項7】
上記浮遊電極は、上記絶縁保持体に対し、プラグ軸方向(Z)に沿って挿通されており、
上記絶縁保持体は、上記噴孔の先端部よりも基端側へ突出していると共に、基端側へ向かうに従い縮径した縮径部(62)を有する、請求項6に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項8】
上記縮径部は、プラグ中心軸(C)に対して傾斜していると共に、上記副燃焼室に面した傾斜面(621)を備え、
プラグ中心軸を含む断面において、少なくとも一部の上記傾斜面の延長線(L1)とプラグ中心軸とのなす角度のうち小さい方の角度(α)は、45°よりも小さい、請求項7に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項9】
上記縮径部は、プラグ中心軸(C)に対して傾斜していると共に、上記副燃焼室に面した傾斜面(621)を備え、
プラグ中心軸を含む断面において、少なくとも一部の上記傾斜面の延長線(L1)は、上記第1放電ギャップを通過する、請求項7又は8に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項10】
上記縮径部は、プラグ中心軸(C)に対して傾斜していると共に、上記副燃焼室に面した傾斜面(621)を備え、
上記噴孔の中心軸の延長線(L2)は、上記傾斜面を通過する、請求項7~9のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、内燃機関の主燃焼室と、スパークプラグの先端に形成された副燃焼室と、の双方に放電ギャップを形成できるように構成されたスパークプラグが知られている。特許文献1に開示されたスパークプラグにおいて、主燃焼室と副燃焼室との双方に放電ギャップを形成する浮遊電極は、絶縁性を有するセラミックの板に対し、かしめられることによって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願0417938A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックは一般的に靭性が低いため、浮遊電極を、かしめることによってセラミックの板に固定する際、セラミックの板の局所に応力が集中することにより、亀裂、欠損等の損傷が発生することが懸念される。セラミックの板に損傷が発生すると、製造時の歩留まりが低下し、生産効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、生産効率を向上することができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
該プラグカバー及び上記中心電極に対して電気的に絶縁された浮遊電極(7)と、
該浮遊電極を挿通させて保持しつつ上記ハウジングの先端部に配設された絶縁保持体(6)と、を有し、
上記絶縁碍子の先端側には、一部が上記プラグカバーと上記絶縁保持体とによって囲まれた副燃焼室(51)が形成され、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(52)が形成されており、
上記副燃焼室には、上記中心電極と上記浮遊電極との間に形成された第1放電ギャップ(G1)が設けられ、
上記副燃焼室の外部には、上記浮遊電極と上記プラグカバーとの間に形成された第2放電ギャップ(G2)が設けられ、
上記浮遊電極は、少なくとも上記副燃焼室に面した第1電極部材(71)と、少なくとも上記副燃焼室の外部に面した第2電極部材(72)と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
該プラグカバー及び上記中心電極に対して電気的に絶縁された浮遊電極(7)と、
該浮遊電極を挿通させて保持しつつ上記ハウジングの先端部に配設された絶縁保持体(6)と、
該絶縁保持体の外周部(63)を上記プラグカバーと共に挟持固定する固定部材(54)と、を有し、
上記プラグカバーと上記固定部材とは、互いに接合されており、
上記絶縁碍子の先端側には、一部が上記プラグカバーと上記絶縁保持体とによって囲まれた副燃焼室(51)が形成され、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(52)が形成されており、
上記副燃焼室には、上記中心電極と上記浮遊電極との間に形成された第1放電ギャップ(G1)が設けられ、
上記副燃焼室の外部には、上記浮遊電極と上記プラグカバーとの間に形成された第2放電ギャップ(G2)が設けられている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0008】
第1の態様の内燃機関用のスパークプラグにおいて、浮遊電極は、少なくとも副燃焼室に面した第1電極部材と、少なくとも副燃焼室の外部に面した第2電極部材と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている。それゆえ、第1電極部材と第2電極部材とを互いに接合することにより、絶縁保持体における局所に応力を集中させることなく、浮遊電極を絶縁保持体に組み付けることができる。それゆえ、組み付けの際、絶縁保持体における損傷の発生を抑制できる。その結果、生産効率を向上することができる。
また、第1の態様の内燃機関用のスパークプラグは、浮遊電極をかしめることなく絶縁保持体に組み付けることができるため、浮遊電極における放電ギャップを形成する部分を任意の形状としやすい。それゆえ、放電ギャップにおいて、火花放電を安定的に形成することができる。
【0009】
第2の態様の内燃機関用のスパークプラグは、絶縁保持体の外周部をプラグカバーと共に挟持固定する固定部材を有する。それゆえ、プラグカバーと固定部材とを互いに接合することにより、絶縁保持体における局所に応力を集中させることなく、絶縁保持体をプラグカバーに組み付けることができる。それゆえ、組み付けの際、絶縁保持体における損傷の発生を抑制できる。その結果、生産効率を向上することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、生産効率を向上することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部の断面図であって、図2のI-I線矢視断面相当の図。
図2図1のII矢視平面図。
図3】実施形態1における、第1電極部材の挿通部を第2電極部材の挿通孔に挿通させる様子を示す断面図。
図4】実施形態1における、第1電極部材と第2電極部材とを、抵抗溶接により接合している様子を示す断面図。
図5】実施形態1における、第1電極部材と第2電極部材とを、レーザー溶接により接合している様子を示す断面図。
図6】実施形態1における、浮遊電極を組み付けた絶縁保持体をプラグカバーに設置する様子を示す断面図。
図7】実施形態1における、固定部材をプラグカバーに設置する様子を示す断面図。
図8】参考形態1における、スパークプラグの先端部の断面図。
図9】実施形態2における、スパークプラグの先端部の断面図。
図10】実施形態2における、第1電極部材の挿通部周辺の拡大断面図。
図11】実施形態3における、スパークプラグの先端部の断面図であって、図12のXI-XI線矢視断面相当の図。
図12図11のXII矢視平面図。
図13】実施形態3における、第1放電ギャップに火花放電を発生させた直後の様子を示す断面図。
図14】実施形態3における、第1放電ギャップに発生させた火花放電が、気流により伸長した様子を示す断面図。
図15】実施形態4における、スパークプラグの先端部の断面図。
図16】実施形態5における、スパークプラグの先端部の断面図。
図17】実施形態6における、スパークプラグの先端部の断面図。
図18】実施形態6における、縮径部の傾斜面の傾きを説明する断面図。
図19】実施形態6における、噴孔の開口方向を説明する断面図。
図20】実施形態6における、CFD解析による、噴孔から火炎が噴出している様子を示す、内燃機関の断面図。
図21】実施形態3における、CFD解析による、噴孔から火炎が噴出している様子を示す、内燃機関の断面図。
図22】実施形態7における、スパークプラグの先端部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1図7を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、プラグカバー5と、浮遊電極7と、絶縁保持体6と、を有する。中心電極4は、図1に示すごとく、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に設けられている。浮遊電極7は、プラグカバー5及び中心電極4に対して電気的に絶縁されている。絶縁保持体6は、浮遊電極7を挿通させて保持しつつハウジング2の先端部に配設されている。
【0013】
絶縁碍子3の先端側には、一部がプラグカバー5と絶縁保持体6とによって囲まれた副燃焼室51が形成されている。プラグカバー5には、副燃焼室51と外部とを連通させる複数の噴孔52が形成されている。副燃焼室51には、中心電極4と浮遊電極7との間に形成された第1放電ギャップG1が設けられている。副燃焼室51の外部には、浮遊電極7とプラグカバー5との間に形成された第2放電ギャップG2が設けられている。浮遊電極7は、少なくとも副燃焼室51に面した第1電極部材71と、少なくとも副燃焼室51の外部に面した第2電極部材72と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている。
【0014】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の車両用の内燃機関における着火手段として用いることができる。なお、本明細書において、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ中心軸Cに平行な方向を、適宜、プラグ軸方向、又はZ方向という。また、Z方向における点火コイル(図示略)と接続される側を基端側といい、内燃機関の主燃焼室(図示略)に配される側を先端側という。
【0015】
中心電極4は、全体として略円柱状をなしている。本形態において、中心電極4の先端部は、先端側へ向かうに従い、縮径している。
【0016】
中心電極4を保持する絶縁碍子3は、略円筒形状のハウジング2によって保持されている。つまり、絶縁碍子3は、その外周面の一部においてハウジング2の内周面の一部に係止されている(図示略)。具体的には、絶縁碍子3の外周面の一部は、環状のガスケット(図示略)を介して、ハウジング2の内周面の一部に係止されている。絶縁碍子3は、例えば、アルミナ等のセラミックからなる。また、ガスケットは、例えば、金属材料を環状に形成してなる。なお、ガスケットは、絶縁保持体6と、後述するプラグカバー5のカバー本体部53との間に介在させることができる。また、ガスケットは、絶縁保持体6と、後述するプラグカバー5の固定部材54との間に介在させることができる。
【0017】
ハウジング2の先端部には、プラグカバー5が設けられている。プラグカバー5は、絶縁保持体6等と共にスパークプラグ1の先端部を囲うことにより、副燃焼室51を形成している。プラグカバー5は、絶縁保持体6を保持している。
【0018】
本形態のスパークプラグ1は、絶縁保持体6の外周部63をプラグカバー5と共に挟持固定する固定部材54を有する。プラグカバー5と固定部材54とは、互いに接合されている。
【0019】
本形態において、プラグカバー5は、図1図2に示すごとく、カバー本体部53と、固定部材54と、気中電極部材55とを有する。
【0020】
カバー本体部53は、全体として略円筒形状をなしている。本形態において、カバー本体部53は、図1に示すごとく、ハウジング2の先端部に接合されている。カバー本体部53は、例えば、溶接によってハウジング2に接合することができる。また、カバー本体部53は、例えば、ハウジング2と一体に形成されているものとすることができる。
【0021】
カバー本体部53には、複数の噴孔52が形成されている。本形態において、カバー本体部53には、図2に示すごとく、4つの噴孔52が形成されている。複数の噴孔52は、Z方向から見たとき、プラグ周方向に等間隔に配されている。それぞれの噴孔52は、図1に示すごとく、先端側へ向かうに従い、プラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。なお、本明細書において、プラグ周方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円周方向を意味する。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0022】
プラグカバー5の固定部材54は、カバー本体部53と共に、絶縁保持体6を保持している。固定部材54は、図1図2に示すごとく、略円環状をなしている。
【0023】
本形態において、固定部材54の先端面には、気中電極部材55が接合されている。気中電極部材55は、全体として、略L字状をなしている。図1に示すごとく、気中電極部材55と浮遊電極7との間には、第2放電ギャップG2が形成されている。本形態において、第2放電ギャップG2は、気中に火花放電を発生させる気中放電ギャップである。
【0024】
また、カバー本体部53の先端部には、絶縁保持体6の外周部63及び固定部材54に対応した凹部531が形成されている。凹部531は、カバー本体部53の内側から、プラグ径方向の外側に向かって後退することにより形成されている。カバー本体部53は、凹部531の内側に、外周部63及び固定部材54の外周側の部分を配置した状態にて、固定部材54と共に、外周部63をZ方向に挟持固定している。カバー本体部53と固定部材54とは、外周部63を挟持した状態にて、互いに接合されている。カバー本体部53と固定部材54とは、例えば、溶接により互いに接合することができる。
【0025】
絶縁保持体6は、板状をなしている。絶縁保持体6は、Z方向から見たとき、全体として略円形状をなしている。絶縁保持体6は、浮遊電極7をプラグカバー5及び中心電極4に対して電気的に絶縁させた状態のまま、浮遊電極7をスパークプラグ1の先端部に配置させている。絶縁保持体6は、例えば、アルミナ等のセラミックからなる。
【0026】
外周部63は、周方向の全体において、カバー本体部53と固定部材54とにより挟持されている。外周部63の基端面は、カバー本体部53と当接している。また、外周部63の先端面は、固定部材54の基端面と当接している。
【0027】
また、絶縁保持体6には、図1に示すごとく、浮遊電極7を挿通させる挿通孔641が形成されている。挿通孔641は、浮遊電極7を保持する保持部64に形成されている。本形態において、挿通孔641は、プラグ中心軸Cに沿って形成されている。
【0028】
挿通孔641には、浮遊電極7を構成する第1電極部材71が挿通されている。より詳細には、第1電極部材71の挿通部713が、挿通孔641に挿通されている。
【0029】
また、浮遊電極7は、外周面の一部が径方向の外側に突出した外周突出部711を有する。外周突出部711は、少なくとも一部が副燃焼室51に面している。
【0030】
外周突出部711は、第1電極部材71に形成されている。外周突出部711は、第1電極部材71の周方向に、環状に形成されている。外周突出部711の先端面712と、絶縁保持体6の保持部64とは、Z方向に当接している。
【0031】
また、第1電極部材71は、外周突出部711から基端側に突出した基端突出部714を有する。基端突出部714は、プラグ中心軸Cに沿って突出している。基端突出部714の基端面と中心電極4の先端面との間に、第1放電ギャップG1が形成されている。基端突出部714の基端面と中心電極4の先端面とは、プラグ中心軸Cに直交する平坦な面であると共に、互いに対向している。
【0032】
第1電極部材71の挿通部713は、外周突出部711から先端側に突出している。挿通部713は、略円柱状をなしている。挿通部713は、第2電極部材72の挿通孔721に挿通されている。挿通部713と第2電極部材72とは、互いに接合されている。
【0033】
第2電極部材72は環状をなしている。本形態において、第2電極部材72の直径は、外周突出部711の直径と略同じ大きさとなっている。また、第2電極部材72の基端面は、絶縁保持体6の保持部64の先端面と当接している。
【0034】
第1電極部材71と第2電極部材72とは、絶縁保持体6を挟持した状態にて、互いに接合されている。より詳細には、第1電極部材71と第2電極部材72とは、第1電極部材71における外周突出部711の先端面712と、第2電極部材72の基端面とにより、絶縁保持体6の保持部64をZ方向に挟持した状態にて、互いに接合されている。
【0035】
本形態において、第1電極部材71は、副燃焼室51と、副燃焼室51の外部との双方に面している。詳細には、第1電極部材71における外周突出部711から基端側の部分は、副燃焼室51に面している。第1電極部材71における挿通部713の先端面は、副燃焼室51の外部に面している。また、第2電極部材72は、副燃焼室51の外部に面している。
【0036】
また、本形態において、副燃焼室51は、絶縁碍子3の先端側において、浮遊電極7と、プラグカバー5と、絶縁保持体6と、ハウジング2と、中心電極4とによって囲われることにより形成されている。副燃焼室51と、副燃焼室51の基端側に形成された、絶縁碍子3及びハウジング2によって囲われた環状の空間とは、互いにつながっている。
【0037】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。まず、図3図4に示すごとく、プラグカバー5に組み付ける前の絶縁保持体6に対し、浮遊電極7を組み付ける。以下、詳細に説明する。
【0038】
図3に示すごとく、第1電極部材71の挿通部713を絶縁保持体6の挿通孔641に挿通させた状態にて、第1接合電極701により第1電極部材71を支持する。次に、第2接合電極702に設置された第2電極部材72を、図3の矢印Mの方向に移動させることにより、図4に示すごとく、第2電極部材72の挿通孔721に、第1電極部材71の挿通部713を挿通させる。本形態において、挿通孔721の内周面と挿通部713の外周面とは当接している。そして、第1電極部材71における外周突出部711の先端面712と、第2電極部材72の基端面とを、それぞれ絶縁保持体6に当接させる。
【0039】
そして、第1接合電極701によって第1電極部材71をZ方向の先端側に押圧すると共に、第2接合電極702によって、第2電極部材72をZ方向の基端側に押圧する。これにより、第1電極部材71と第2電極部材72とによって、絶縁保持体6をZ方向に挟持させる。そして、第1電極部材71に接触した第1接合電極701と、第2電極部材72に接触した第2接合電極702との間で通電することにより、第1電極部材71と第2電極部材72とを、抵抗溶接により、互いに接合する。これにより、浮遊電極7が取り付けられた絶縁保持体6が得られる。なお、接合電極701、702によって電極部材71、72を押圧する際、押圧力を大きくしすぎないようにする。すなわち、第1電極部材71と第2電極部材72との間に挟持された絶縁保持体6に大きな応力が作用しないようにする。絶縁保持体6に対して浮遊電極7が固定されるように、第1電極部材71と第2電極部材72とが接合されれば、接合の際、電極部材71、72から絶縁保持体6に対して実質的に押圧力が作用していなくてもよい。
【0040】
なお、浮遊電極7は、上述のように抵抗溶接により絶縁保持体6に取り付ける他、図5に示すごとく、レーザー溶接により取り付けることもできる。この場合には、絶縁保持体6を挟持する第1電極部材71と第2電極部材72とを、それぞれ第1固定治具703又は第2固定治具704によって支持したまま、レーザー溶接を行う。具体的には、挿通孔721の内周面と挿通部713の外周面とが互いに当接している部分に、レーザー装置705からのレーザー光Lを照射することにより、第1電極部材71と第2電極部材72とを互いに接合する。
【0041】
次に、浮遊電極7を組み付けた絶縁保持体6を、図6に示すごとく、中心電極4とカバー本体部53が組み付けられたスパークプラグ1に設置する。具体的には、スパークプラグ1に対し、浮遊電極7を組み付けた絶縁保持体6を、図6の矢印Mの方向に移動させ、組み付ける。このとき、図7に示すごとく、絶縁保持体6の外周部63が、カバー本体部53の凹部531に配置されるように、絶縁保持体6をカバー本体部53に組み付ける。
【0042】
次に、気中電極部材55が接合された固定部材54を、図7の矢印Mの方向に移動させ、カバー本体部53に組み付ける。このとき、固定部材54の外周側の部分が、カバー本体部53の凹部531に配置されるように、固定部材54をカバー本体部53に組み付ける。その後、カバー本体部53と固定部材54とを接合することにより、図1図2に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
【0043】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1において、浮遊電極7は、少なくとも副燃焼室51に面した第1電極部材71と、少なくとも副燃焼室51の外部に面した第2電極部材72と、を含む、2以上の電極部材によって構成されている。それゆえ、第1電極部材71と第2電極部材72とを互いに接合することにより、絶縁保持体6における局所に応力を集中させることなく、浮遊電極7を絶縁保持体6に組み付けることができる。それゆえ、組み付けの際、絶縁保持体6における損傷の発生を抑制できる。その結果、生産効率を向上することができる。
【0044】
ここで、図8に示すごとく、浮遊電極7をZ方向にかしめることによって絶縁保持体6に組み付けた比較形態1のスパークプラグ9を想定する。比較形態1のスパークプラグ9は、浮遊電極7の一部を変形し、当該変形部分を絶縁保持体6にかしめている。この場合、かしめる際に、絶縁保持体6の保持部64に応力が集中しやすい。そのため、絶縁保持体6に浮遊電極7を組み付ける際、保持部64に亀裂、欠損等の損傷が発生するおそれがある。その結果、歩留まりが低くなりやすい。一方、本形態においては、上記のごとく、浮遊電極7をかしめることなく、第1電極部材71と第2電極部材72とを互いに接合することにより、絶縁保持体6に浮遊電極7を組み付けることができる。つまり、第1電極部材71と第2電極部材72とによって絶縁保持体6の保持部64を挟み込む際、特に大きな力が保持部64にかからないようにすることができる。それゆえ、組み付けの際、絶縁保持体6に損傷が発生しにくい。その結果、歩留まりを高くすることができる。
【0045】
また、図8に示す比較形態1のスパークプラグ9の場合、浮遊電極7をかしめることにより、浮遊電極7の一部が変形した、かしめ部73が形成される。かしめ部73は、形状の制御が容易ではないため、かしめ部73と、中心電極4又は気中電極部材55との間に放電ギャップを形成する場合、放電ギャップに形成される火花放電を安定的に形成しにくい。一方、本形態のスパークプラグ1は、浮遊電極7をかしめることなく絶縁保持体6に組み付けることができるため、浮遊電極7における放電ギャップを形成する部分を任意の形状としやすい。それゆえ、放電ギャップにおいて、火花放電を安定的に形成することができる。
【0046】
内燃機関用のスパークプラグ1は、絶縁保持体6の外周部63をプラグカバー5と共に挟持固定する固定部材54を有する。それゆえ、プラグカバー5と固定部材54とを互いに接合することにより、絶縁保持体6における局所に応力を集中させることなく、絶縁保持体6をプラグカバー5に組み付けることができる。それゆえ、組み付けの際、絶縁保持体6における損傷の発生を抑制できる。その結果、生産効率を向上することができる。
【0047】
浮遊電極7は、外周突出部711を有する。外周突出部711は、少なくとも一部が副燃焼室51に面している。それゆえ、浮遊電極7は、絶縁保持体6から副燃焼室51の外部に向かって外れにくい。その結果、スパークプラグ1を内燃機関に設置した際、浮遊電極7が、主燃焼室に落下することを確実に防ぐことができる。
【0048】
以上のごとく、本形態によれば、生産効率を向上することができる内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
【0049】
(実施形態2)
本形態は、図9図10に示すごとく、浮遊電極7を構成する電極部材同士が互いに螺合によって固定された形態である。つまり、第1電極部材71と第2電極部材72とは、互いに螺合されている。
【0050】
図9図10に示すごとく、第1電極部材71の挿通部713の外周には、絶縁保持体6よりも先端側において、雄ネジ部が形成されている。また、第2電極部材72の挿通孔721の内周には、雌ネジ部が形成されている。そして、挿通部713と挿通孔721とを互いに螺合させると共に、挿通部713と第2電極部材72とを互いに溶接することにより、第1電極部材71と第2電極部材72とが互いに接合されている。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0051】
本形態において、第1電極部材71と第2電極部材72とは、互いに螺合されている。それゆえ、第1電極部材71と第2電極部材72とを接合する溶接部にクラック等が発生したとしても、第1電極部材71から第2電極部材72がはずれにくい。その結果、スパークプラグ1を内燃機関に設置した際、第2電極部材72が主燃焼室に落下することを確実に防ぐことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態3)
本形態は、図11図12に示すごとく、第2放電ギャップG2が沿面放電ギャップとなった形態である。
【0053】
絶縁保持体6は、図11図12に示すごとく、外周部63よりも先端側に突出した、略円柱状の円柱部61を有する。円柱部61の直径は、外周部63の直径よりも小さい。円柱部61は、副燃焼室51の外部に面する外表面611を有する。つまり、スパークプラグ1を内燃機関に設置した際、外表面611は、主燃焼室に面する。
【0054】
円柱部61は、図11に示すごとく、先端側を向く先端面65と、外周面612とを有する。円柱部61の一部は、プラグカバー5の固定部材54よりも先端側に突出している。本形態において、円柱部61の外周面612は、固定部材54よりも先端側が、外表面611となっている。また、外周面612の一部は、固定部材54とプラグ径方向に当接している。
【0055】
円柱部61の先端面65は、プラグ中心軸Cと直交する平坦面となっている。先端面65は、第2電極部材72の基端面と当接している。第2電極部材72の直径と、円柱部61の直径とは、略同じ大きさとなっている。つまり、円柱部61の外周面612と、第2電極部材72の外周面とは、略面一となっている。
【0056】
本形態において、第2放電ギャップG2は、第2電極部材72と固定部材54との間に形成されている。第2放電ギャップG2は、絶縁保持体6の外表面611に沿って設けられている。つまり、第2放電ギャップG2は、沿面放電を発生させる沿面放電ギャップとなっている。
【0057】
また、本形態における第1電極部材71の基端突出部714は、実施形態1の基端突出部714に対し、Z方向における長さが長い。つまり、本形態は、実施形態1に対し、Z方向における、基端突出部714の基端部と絶縁保持体6との間の距離が長い。
【0058】
本形態は、実施形態1と比較し、基端突出部714における基端部以外の部分の直径が大きくなっている。そして、基端突出部714における基端部よりも先端側であって、基端部に近い側の一部は、基端部に近づくに従って縮径している。本形態における基端突出部714のZ方向における長さは、例えば、実施形態1の基端突出部714のZ方向における長さの3倍以上とすることができる。また、基端突出部714のZ方向における長さは、例えば、カバー本体部53のZ方向における長さの1/3以上とすることができる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0059】
第2放電ギャップG2は、絶縁保持体6の外表面611に沿った沿面放電ギャップとなっている。それゆえ、第2放電ギャップG2に形成される火花放電の要求電圧を低くすることができる。その結果、第2放電ギャップG2に放電を確実に発生させることができる。
【0060】
絶縁保持体6は、外周部63よりも先端側に突出した円柱部61を有する。それゆえ、第1電極部材71と第2電極部材72とにより絶縁保持体6を挟持した状態にて、第1電極部材71と第2電極部材72とを互いに接合する際、絶縁保持体6は、応力に対する耐性を確保しやすい。その結果、組み付けの際、絶縁保持体6における損傷の発生を確実に抑制できる。
【0061】
また、本形態の基端突出部714は、実施形態1の基端突出部714に対し、Z方向における長さが長い。それゆえ、図13に示すごとく、第1放電ギャップG1に形成された火花放電Sは、図14に示すごとく、副燃焼室51内の気流によって、火花放電Sの基端突出部714側の起点が、基端突出部714の表面に沿って先端側に移動しやすい。それゆえ、火花放電Sの両起点間の距離が長くなりやすい。それゆえ、火花放電Sが引き伸ばされやすい。その結果、副燃焼室51内における着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0062】
(実施形態4)
本形態は、図15に示すごとく、絶縁保持体6の保持部64が、外周部63よりも基端側に突出した形態である。
【0063】
図15に示すごとく、絶縁保持体6の外周部63はプラグカバー5に固定されている。浮遊電極7を挿通させて保持する絶縁保持体6の保持部64は、浮遊電極7をプラグ軸方向Zに沿って挿通させている。また、保持部64は、外周部63よりも基端側へ突出している。
【0064】
本形態において、絶縁保持体6は、保持部64が、外周部63よりも基端側へ突出した絶縁突出部642を有する。絶縁突出部642は、全体として、略円柱形状をなしている。絶縁突出部642の直径は、外周部63の直径よりも小さい。絶縁突出部642のZ方向の長さは、例えば、外周部63のZ方向の長さの3倍以上とすることができる。
【0065】
絶縁保持体6の挿通孔641の基端部は、第1電極部材71の外周突出部711に対応するように拡径している。そして、挿通孔641の拡径した基端部の内側に、外周突出部711が配置されている。
【0066】
また、第2電極部材72の外周には、チップ722が接合されている。チップ722は、環状をなしている。チップ722は、第2電極部材72の外周全体を覆っている。チップ722の外周面と、円柱部61の外周面612とは、略面一となっている。チップ722は、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金からなる。
【0067】
沿面放電ギャップである第2放電ギャップG2は、チップ722と固定部材54との間に形成されている。
その他は、実施形態3と同様である。
【0068】
保持部64は、外周部63よりも基端側へ突出している。それゆえ、第1電極部材71と第2電極部材72とにより絶縁保持体6を挟持した状態にて、第1電極部材71と第2電極部材72とを互いに接合する際、絶縁保持体6は、応力に対する耐性を確保しやすい。その結果、組み付けの際、絶縁保持体6における損傷の発生を確実に抑制できる。
【0069】
また、保持部64が基端側へ突出していることにより、副燃焼室51における第1電極部材71とプラグカバー5との間の絶縁保持体6の沿面距離を確保しやすい。それゆえ、第1電極部材71とプラグカバー5との間の絶縁を確保しやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施形態5)
本形態は、図16に示すごとく、実施形態4に対し、第2放電ギャップG2が気中放電ギャップとなった形態である。
【0071】
図16に示すごとく、固定部材54の先端面には、気中電極部材55が接合されている。また、第2電極部材72の直径は、円柱部61の直径よりも小さい。また、第1電極部材71の先端部は、第2電極部材72から先端側へ突出している。そして、気中電極部材55と第1電極部材71の先端部との間に第2放電ギャップG2が形成されている。本形態において、第2放電ギャップG2は、気中放電ギャップである。
その他は、実施形態4と同様である。
【0072】
本形態において、第2放電ギャップG2は、気中放電ギャップとなっている。それゆえ、第2放電ギャップG2に形成される火花放電と混合気との接触面積を確実に確保することができる。その結果、内燃機関の主燃焼室において、確実に着火させることができる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施形態6)
本形態は、図17図19に示すごとく、絶縁保持体6が縮径部62を有する形態である。
【0074】
浮遊電極7は、図17に示すごとく、絶縁保持体6に対し、プラグ軸方向Zに沿って挿通されている。絶縁保持体6は、噴孔52の先端部よりも基端側へ突出していると共に、基端側へ向かうに従い縮径した縮径部62を有する。
【0075】
縮径部62は、Z方向における全体にわたって、基端側に向かうに従い、縮径している。
【0076】
縮径部62は、プラグ中心軸Cに対して傾斜していると共に、副燃焼室51に面した傾斜面621を備える。図18に示すごとく、プラグ中心軸Cを含む断面において、少なくとも一部の傾斜面621の延長線L1とプラグ中心軸Cとのなす角度のうち小さい方の角度αは、45°よりも小さい。本形態においては、図19に示すごとく、傾斜面621のうち、後述する噴孔52の中心軸の延長線L2と交差する部位付近から、縮径部62の基端部付近までの領域において、α<45°となっている。
【0077】
縮径部62は、外周部63よりも基端側に形成されている。本形態において、縮径部62の基端部には、副燃焼室51に面すると共に、基端側を向く環状の基端面が形成されている。縮径部62の基端面と、第1電極部材71の外周突出部711の基端面とは、略面一となっている。そして、縮径部62における副燃焼室51に面する表面のうち、縮径部62の基端面よりもプラグ径方向における外側の表面が、傾斜面621となっている。
【0078】
傾斜面621は、プラグ中心軸Cに近い側よりも、カバー本体部53の内周面532に近い側の方が、角度αが大きくなっている。言い換えると、傾斜面621は、プラグ中心軸Cに近づくに従って、角度αが小さくなるように形成されている。ここで、傾斜面621の「内周面532に近い側」とは、例えば、傾斜面621の、プラグ径方向における、内周面532のある位置と、内周面532から、噴孔52のプラグ径方向の長さ分、内側に向かった位置との間の範囲とすることができる。
【0079】
傾斜面621は、内周面532に近い側において、噴孔52の開口方向に沿うように形成されている。
【0080】
また、図18に示すごとく、プラグ中心軸Cを含む断面において、少なくとも一部の傾斜面621の延長線L1は、第1放電ギャップG1を通過する。
【0081】
また、図19に示すごとく、噴孔52の中心軸の延長線L2は、傾斜面621を通過する。
その他は、実施形態4と同様である。
【0082】
絶縁保持体6は、基端側へ向かうに従い縮径した縮径部62を有する。それゆえ、噴孔52を介して主燃焼室から副燃焼室51に導入されたガスが、縮径部62の傾斜面621に沿って、副燃焼室51の基端側に流入しやすい。その結果、副燃焼室51の掃気性を向上させることができると共に、副燃焼室51の基端側における気流の乱れが増加することにより、副燃焼室51における着火性を向上させることができる。
【0083】
また、絶縁保持体6は、縮径部62を有することにより、縮径していない場合と比較して、全体の体積を小さくすることができる。それゆえ、絶縁保持体6の熱容量を低減させることができる。それゆえ、絶縁保持体6の熱引きを向上させることができる。その結果、プレイグニッションの発生を抑制することができる。
【0084】
プラグ中心軸Cを含む断面において、角度αは、45°よりも小さい。それゆえ、噴孔52を介して主燃焼室から副燃焼室51に導入されたガスが、縮径部62の傾斜面621に沿って、副燃焼室51の基端側に一層流入しやすい。その結果、副燃焼室51の掃気性を一層向上させることができると共に、副燃焼室51における着火性を一層向上させることができる。
【0085】
傾斜面621は、プラグ中心軸Cを含む断面において、延長線L1が、第1放電ギャップG1を通過するように形成されている。それゆえ、噴孔52を介して主燃焼室から副燃焼室51に導入されたガスが、傾斜面621に沿って、第1放電ギャップG1に向かいやすい。それゆえ、第1放電ギャップG1に生じた放電が伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0086】
延長線L2は、傾斜面621を通過する。それゆえ、噴孔52を介して主燃焼室から副燃焼室51に導入されたガスが、傾斜面621に沿って、副燃焼室51の基端側に確実に流入しやすい。
【0087】
傾斜面621は、プラグ中心軸Cに近づくに従って、角度αが小さくなるように形成されている。それゆえ、噴孔52を介して主燃焼室から副燃焼室51に流入したガスは、気流方向がそろった状態にて、基端側に向かいやすい。その結果、副燃焼室51の掃気性を向上させることができると共に、副燃焼室51における着火性を向上させることができる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0088】
(実験例1)
本例では、図20図21に示すように、内燃機関10に設置した実施形態6のスパークプラグ1及び実施形態3のスパークプラグ1に対し、噴孔52から噴出する火炎Fの広がり方について、CFD解析(「Computational Fluid Dynamics解析」の略)を行った。なお、同図に示す火炎Fは、2000℃以上の火炎である。
【0089】
解析条件は、直列4気筒の内燃機関10を用い、排気量を2000cc、圧縮比を10、点火時期をBTDC(圧縮上死点前)10°CA(クランク角)とした。図20及び図21は、BTDC8°CAのときの解析結果を示す。図20が実施形態6のスパークプラグ1の解析結果を表し、図21が実施形態3のスパークプラグ1の解析結果を表す。
【0090】
図21に示す実施形態3のスパークプラグ1よりも、図20に示す実施形態6のスパークプラグ1のほうが、火炎Fが、より広範囲に主燃焼室101に噴出したことが確認された。つまり、実施形態3の火炎Fよりも実施形態6の火炎Fの方が、主燃焼室101に向かって勢いよく噴出したと考えられる。
【0091】
実施形態3のスパークプラグ1に対し、実施形態6のスパークプラグ1は、絶縁保持体6が縮径部62を備えている。そのため、実施形態6のスパークプラグ1は、噴孔52を介して主燃焼室101から副燃焼室51に導入されたガスが、縮径部62の傾斜面621に沿って、副燃焼室51の基端側に流入しやすいと考えられる。その結果、実施形態6のスパークプラグ1は、実施形態3のスパークプラグ1に対し、副燃焼室51の着火性が向上することにより、図20に示すごとく、噴孔52を介して、火炎Fが勢いよく主燃焼室101に噴出したと考えられる。
【0092】
(実施形態7)
本形態は、図22に示すごとく、実施形態6に対し、第2放電ギャップG2が気中放電ギャップとなった形態である。
【0093】
図22に示すごとく、固定部材54の先端面には、気中電極部材55が接合されている。また、第2電極部材72の直径は、円柱部61の直径よりも小さい。また、第1電極部材71の先端部は、第2電極部材72から先端側へ突出している。そして、気中電極部材55と第1電極部材71の先端部との間に第2放電ギャップG2が形成されている。本形態において、第2放電ギャップG2は、気中放電ギャップである。
その他は、実施形態6と同様である。
【0094】
第2放電ギャップG2は、気中放電ギャップとなっている。それゆえ、放電ギャップに形成される火花放電と混合気との接触面積を確実に確保することができる。その結果、内燃機関の主燃焼室において、確実に着火させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0095】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、51…副燃焼室、52…噴孔、6…絶縁保持体、7…浮遊電極、71…第1電極部材、72…第2電極部材、G1…第1放電ギャップ、G2…第2放電ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22