(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】プリンタで水性インクを用いて高品質画像を生成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240404BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240404BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J2/01 127
B05D1/26 Z
B05D3/02 E
B41J2/01 125
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020136075
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-08-09
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・エス・コンデッロ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・マコンヴィル
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-161756(JP,A)
【文献】特開2018-044087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05D 1/26
B05D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第1の印刷ヘッドであって、前記第1の印刷ヘッドは、基材が前記第1の印刷ヘッドをプロセス方向に通過する際に、前記第1の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように構成されている、第1の印刷ヘッドと、
前記プロセス方向において前記第1の印刷ヘッドの後に続く第1の赤外(IR)放射線源であって、前記第1のIR放射線源が、前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱するように調整されている、第1のIR放射線源と、
前記第1の色とは異なる第2の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第2の印刷ヘッドであって、前記第2の印刷ヘッドが、前記プロセス方向において前記第1のIR放射線源の後に続いており、かつ、前記基材が前記第1の印刷ヘッド及び前記第1のIR放射線源を通過した後、前記第2の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように構成されている、第2の印刷ヘッドと、
前記プロセス方向において前記第2の印刷ヘッドの後に続く第2のIR放射線源であって、前記第2のIR放射線源が、前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、第2のIR放射線源と、を含む、プリンタ。
【請求項2】
前記第1の色及び前記第2の色とは異なる第3の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第3の印刷ヘッドであって、前記第3の印刷ヘッドが、前記プロセス方向において前記第2のIR放射線源の後に続いており、かつ、前記基材が前記第2の印刷ヘッド及び前記第2のIR放射線源を通過した後、前記第3の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように構成されている、第3の印刷ヘッドと、
前記プロセス方向において前記第3の印刷ヘッドの後に続く第3のIR放射線源であって、前記第3のIR放射線源が、前記第3の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、第3のIR放射線源と、を更に含む、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の色、前記第2の色、及び前記第3の色とは異なる第4の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第4の印刷ヘッドであって、前記第4の印刷ヘッドが、前記プロセス方向において前記第3のIR放射線源の後に続いており、かつ、前記基材が前記第3の印刷ヘッド及び前記第3のIR放射線源を通過した後、前記第4の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように構成されている、第4の印刷ヘッドと、
前記プロセス方向において前記第4の印刷ヘッドの後に続く第4のIR放射線源であって、前記第4のIR放射線源が、前記第4の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第3の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、第4のIR放射線源と、を更に含む、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
各IR放射線源が、IR放射線を放射する発光ダイオード(LED)である、請求項
3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記プロセス方向において前記基材が前記第4のIR放射線源を通過した後に位置付けられた光学センサであって、前記光学センサが、前記基材上の印刷画像の画像データを生成するように構成されている、光学センサと、
前記光学センサに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラが、前記第1の印刷ヘッド、前記第2の印刷ヘッド、前記第3の印刷ヘッド、又は第4の印刷ヘッドによって吐出され
たインク滴についての
前記インク滴の広がりが所定の範囲内であるかどうかを検出するように構成されている、コントローラと、を更に含む、請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射された前記インク滴についての前記インク滴の広がりが前記所定の範囲を超えているとき、前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射される前記赤外放射線の強度を増大させることと、
前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射された前記インク滴についての前記インク滴の広がりが前記所定の範囲未満であるとき、前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4のIR放射線源のうちの1つによって放射される前記赤外放射線の強度を低下させることと、を行うように更に構成されている、請求項
5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記第4のIR放射線源が白色光を放射する、請求項
3に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記第4のIR放射線源が、
約575nm~約650nmの範囲の赤外放射線を放射する第5のIR放射線源と、
約475nm~約515nmの範囲の赤外放射線を放射する第6のIR放射線源と、
約375nm~約425nmの範囲の赤外放射線を放射する第7のIR放射線源と、を更に含む、請求項
3に記載のプリンタ。
【請求項9】
プリンタを動作させるための方法であって、
第1の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第1の印刷ヘッドを、基材が前記第1の印刷ヘッドをプロセス方向に通過する際に、前記第1の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように動作させることと、
前記プロセス方向において前記第1の印刷ヘッドの後に続く第1の赤外(IR)放射線源を動作させることであって、前記第1のIR放射線源が、前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱するように調整されている、ことと、
前記第1の色とは異なる第2の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第2の印刷ヘッドを、前記基材が前記第1の印刷ヘッド及び前記第1のIR放射線源を通過した後に、前記第2の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように動作させることと、
前記プロセス方向において前記第2の印刷ヘッドの後に続く第2のIR放射線源を動作させることであって、前記第2のIR放射線源が、前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、ことと、を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の色及び前記第2の色とは異なる第3の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第3の印刷ヘッドを、前記基材が前記第2の印刷ヘッド及び前記第2のIR放射線源を通過した後に、前記第3の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように動作させることと、
前記プロセス方向において前記第3の印刷ヘッドの後に続く第3のIR放射線源を動作させることであって、前記第3のIR放射線源が、前記第3の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、ことと、を更に含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の色、前記第2の色、及び前記第3の色とは異なる第4の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第4の印刷ヘッドを、前記基材が前記第3の印刷ヘッド及び前記第3のIR放射線源を通過した後に、前記第4の色を有する前記水性インクを前記基材上に吐出するように動作させることと、
前記プロセス方向において前記第4の印刷ヘッドの後に続く第4のIR放射線源を動作させることであって、前記第4のIR放射線源が、前記第4の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱し、かつ前記第1の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第2の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱せず、かつ前記第3の色を有する前記水性インク中の着色顔料粒子を加熱しないように調整されている、ことと、を更に含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
各IR放射線源の前記動作が、IR放射線を放射する発光ダイオード(LED)の動作である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセス方向において前記基材が前記第4のIR放射線源を通過した後に位置付けられた光学センサを、前記基材上の印刷画像の画像データを生成するように動作させることと、
前記光学センサに動作可能に接続されたコントローラで、前記第1の印刷ヘッド、前記第2の印刷ヘッド、前記第3の印刷ヘッド、又は第4の印刷ヘッドによって吐出され
たインク滴についての
前記インク滴の広がりが所定の範囲内であるかどうかを検出することと、を更に含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射された前記インク滴についての前記インク滴の広がりが前記所定の範囲を超えているとき、前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射される前記赤外放射線の強度を増大させることと、
前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射された前記インク滴についての前記インク滴の広がりが前記所定の範囲未満であるとき、前記第1
のIR放射線源、前記第2
のIR放射線源、前記第3
のIR放射線源、及び前記第4
のIR放射線源のうちの1つによって放射される前記赤外放射線の強度を低下させることと、を更に含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第4のIR放射線源の前記動作が、白色光を放射する、請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
前記第4のIR放射線源の前記動作が、
約575nm~約650nmの範囲の赤外放射線を放射する第5のIR放射線源を動作させることと、
約475nm~約515nmの範囲の赤外放射線を放射する第6のIR放射線源を動作させることと、
約375nm~約425nmの範囲の赤外放射線を放射する第7のIR放射線源を動作させることと、を更に含む、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にインクジェットプリンタに関し、より具体的には、水性インクを使用して基材上にテキスト及び画像を生成するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
室温で液体である水性インクを用いてプリンタ内の基材上に高品質の画像を生成することは、非常に困難であり得る。インク滴が基材上に正確に配置されるように印刷ヘッドを動作させ、維持することは、高い画像品質を提供するために対処されなければならない第1の問題である。インク滴が基材上に適切に配置された後、それらは着弾した場所に留まる必要があるが、他の液滴とのいくらかの混合は有益であり得る。しかしながら、インク滴が基材上に着弾した後のインク滴の制御不能な移動は、インク画像の品質に悪影響を与える可能性がある。したがって、基材上のインク滴は、それらが着弾した場所に留まるのに十分な安定性を有する一方で、小さい程度で広がることが可能である必要がある。しかしながら、液滴における過度の流動性は、液滴が制御不能に広がることになるため、画像にとって有害である。水性インク滴が吐出された後に基材上で水性インク滴を管理可能に制御することは、有益である。
【発明の概要】
【0003】
新たなプリンタは、着弾した水性インク滴の粘度を、着弾した水性インク滴が合理的な範囲に広がる能力に悪影響を及ぼすことなく、着弾した水性インク滴を着弾場所に固定する範囲内に維持するように構成されている。プリンタは、第1の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第1の印刷ヘッドであって、第1の印刷ヘッドは、基材が第1の印刷ヘッドをプロセス方向に通過する際に、第1の色を有する水性インクを基材上に吐出するように構成されている、第1の印刷ヘッドと、プロセス方向において第1の印刷ヘッドの後に続く第1の赤外(IR)放射線源であって、第1のIR放射線源が、第1の色を有する水性インク中の着色顔料粒子を加熱するように調整されている、第1のIR放射線源と、を含む。
【0004】
プリンタ動作の方法は、着弾した水性インク滴の粘度を、着弾した水性インク滴が合理的な範囲に広がる能力に悪影響を及ぼすことなく、着弾した水性インク滴を着弾場所に固定する範囲内に維持する。この方法は、第1の色を有する水性インクの供給源に動作可能に接続された第1の印刷ヘッドを、基材が第1の印刷ヘッドをプロセス方向に通過する際に、第1の色を有する水性インクを基材上に吐出するように動作させることと、プロセス方向において第1の印刷ヘッドの後に続く第1の赤外(IR)放射線源を動作させることであって、第1のIR放射線源が、第1の色を有する水性インク中の着色顔料粒子を加熱するように調整されている、ことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
着弾した水性インク滴の粘度を、着弾した水性インク滴が合理的な範囲に広がる能力に悪影響を及ぼすことなく、着弾した水性インク滴を着弾場所に固定する範囲内に維持するプリンタの前述の態様及び他の特徴は、以下の記載において添付の図面と関連付けて説明される。
【0006】
【
図1】着弾した水性インク滴の粘度を、着弾した水性インク滴が合理的な範囲に広がる能力に悪影響を及ぼすことなく、着弾した水性インク滴を着弾場所に固定する範囲内に維持するために、印刷ヘッドアレイ間に異なる範囲の赤外放射線曝露を提供するプリンタの図である。
【
図2】
図1のプリンタを動作させるためのプロセスを示す。
【
図3】インク色のスペクトルと、スペクトル内の各帯域が吸収する光の色と、吸収された光の波長範囲との関係図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態の一般的な理解のために、図面を参照する。図面において、同様の参照番号は、全体をとおして同様の要素を指定するために使用されている。
【0008】
画像印刷中に印刷ヘッドアレイ間に異なる範囲の赤外(IR)放射線曝露を提供して、着弾した液滴の粘度を所定の範囲内に維持し、それにより、着弾した液滴が着弾場所に留まるが、依然として広がり、他の液滴と混合することができるように構成された印刷システム10が、
図1に示される。システム10は、ウェブWがシステムを通じて供給された後、コントローラ14が、巻取りシャフト22を回転させるようにアクチュエータ18を動作させ、ウェブの一部分がシャフト22の周りに巻き付けられる、ウェブ印刷システムである。シャフト22のこの回転により、ウェブは、供給ロール20から引っ張り出され、次いでプリンタ10の印刷ゾーン26を通過する。ウェブWは、引き続き複数の乾燥機34を通過して、印刷ゾーン26内でウェブ上に吐出されたインクの乾燥を完了させる。一実施形態では、乾燥機34は、加熱された空気をウェブに向ける対流式加熱器である。次いで、完成した印刷画像は、印刷画像の画像データを生成する光学センサ24を通過し、そして、画像データは、画像品質が受け入れ可能であるかどうかを判定するために、コントローラ14によって分析され得る。光学センサ24は、LEDエミッタ及び光検出器からなるシングルラインスキャナ、又は2次元画像を生成するカメラであり得る。ローラー42及び46は、ウェブW内の張力を維持するために提供され、それらは、既知の様式でウェブ内の張力を調節するように移動可能であり得る。供給ロール20は、紙、コーティング紙、プラスチック、可撓性包装、及び箔などであり得る。
【0009】
印刷ゾーン26内の各印刷ヘッド50A、50B、50C、及び50Dは、対応する印刷ヘッドドライバ54A、54B、54C、及び54Dに動作可能に接続されており、コントローラ14は、これらの印刷ヘッドドライバに動作可能に接続されている。印刷ゾーン26内の印刷ヘッド50A、50B、50C、及び50Dのそれぞれの後に、赤外(IR)放射線源66A、66B、66C、及び66Dが続いており、コントローラ14は、放射線源のそれぞれに動作可能に接続されている。これらの赤外放射線源は、異なる波長のIR放射線を放射する。各IR放射線源66A、66B、66C、及び66Dは、プロセス方向においてIR放射線源に先行する印刷ヘッドの後に所定の距離で続き、この距離内で、直前の印刷ヘッドによって吐出された水性インクがIR放射線源を通過する前に、直前の印刷ヘッドによって吐出された水性インクがIR放射線源によって固定される。本明細書で使用するとき、用語「固定された」とは、水性インクの液滴が、着弾場所に留まり、水性インク滴の着弾領域から所定の許容パラメータを超えて広がらないことを意味する。一実施形態では、この許容パラメータは、公称水性インク滴の直径の約2倍である。本明細書で使用するとき、用語「広がる」とは、水性インク滴の着弾場所から所定の許容パラメータを超えずにインクが対称的に広がることを意味する。
【0010】
コントローラ14は、プログラムされた命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装され得る。プログラムされた機能を実行するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に記載される動作を実行するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよく、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されることもある。各々の回路は、別個のプロセッサで実装することができ、又は複数の回路が、同じプロセッサ上に実装されることもある。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、別個の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0011】
コントローラ14は、画像供給源70に動作可能に接続されている。画像供給源70は、スキャナ、データベース、又は他の画像生成、又はデータ供給源であり得る。コントローラ14が画像供給源70から取得する画像が使用されて、プリンタ10を動作させて、得られた画像に対応するインク画像をウェブW上に形成する。コントローラ14は、印刷ヘッドドライバ54A~54Dを制御するために、画像供給源から得られた画像を既知の様式で処理する。具体的には、画像供給源70から合成画像が得られる。本明細書で使用するとき、用語「合成画像」は、画像内に存在する各色及び特徴の画素データを指す。コントローラは、印刷ゾーン内の印刷ヘッドによって吐出されるインクの色に対応する色分解ファイルを生成するように、合成画像を処理する。ハーフトーンなどの既知の様式で、追加の処理も実行され得る。合成画像から得られた各色分解ファイルは、その色分解ファイルに対応する色インクを吐出する印刷ゾーン26内の印刷ヘッドに対応している印刷ヘッドドライバに供給される。例えば、合成画像から得られた黒色の色分解ファイルは、黒色インクを吐出する印刷ヘッド50Aを動作させる、印刷ヘッドドライバ54Aに送達される。本文書で使用するとき、用語「印刷ゾーン」は、色分解ファイルを使用して基材上にインク画像を形成する複数の印刷ヘッドと正対する領域を意味する。用語「プロセス方向」は、インクジェットがシート上にインクを吐出するときに、媒体が印刷ゾーンを通って移動する方向を意味し、用語「プロセス横断方向」は、印刷ゾーン内の媒体の平面内でプロセス方向に垂直な軸を意味する。
【0012】
以前に知られているプリンタでは、水性インク滴が自身の位置を固定するために蒸発を必要とするため、印刷ヘッド間で異なる色の水性インクを部分的に乾燥させて、次の色が印刷される前に1つの色のインク滴の位置を固定することは、有効に達成することができなかった。印刷ヘッド間の対流式乾燥機でインク滴を乾燥させることによってインク滴を固定する努力は、対流式熱風乾燥機が、印刷ゾーンでの印刷を妨害せずに印刷ゾーン内に適合するには大きすぎ、また吐出されたインク滴にごく近接したそのような乾燥機からの高速の気流が、インク滴の配置に悪影響を及ぼすため、有効ではなかった。以前に知られている乾燥機を印刷ゾーン内で使用することのこれらの制限を克服するために、異なる波長のIR放射線源が、異なる色の印刷ヘッド又は印刷ヘッドアレイの間に位置付けられる。異なる色の水性インク中の着色顔料が異なるIR放射線の波長と対になるため、このIR放射線乾燥は有効である。印刷ゾーン26内の各IR放射線源は、そのIR放射線源の直前の印刷ヘッド又は印刷ヘッドアレイによって吐出されるインクの色の着色顔料が、新たに吐出された液滴をそれらが印刷ゾーン内の次の印刷ヘッドの向かい側に移動する前に固定するのに十分なIR放射線エネルギーを吸収するように、選択される。IR放射線源の波長及び強度は、直前の印刷ヘッド又は印刷ヘッドアレイによって吐出されるインク滴を、インクが印刷ゾーンを進む際にインク滴が許容パラメータを超えて広がることができないように、インク滴を過熱することなく固定する。
【0013】
これらの目標は、各インク色に対して調整された高エネルギーLED IR放射線源を使用することによって達成される。本明細書で使用するとき、用語「調整された」は、IR放射線源の直前の印刷ヘッドによって吐出されるインク中の着色顔料粒子を加熱する波長のIR放射線を放射するLED IR放射線源を意味する。したがって、プリンタによって吐出されるインクの各色は、各色に対して最適な乾燥が得られるように制御することができる独自のLED IR放射線源を有する。LED IR放射線源を得ることができるインク色としては、より一般的なシアン、マゼンタ、黄色、及び黒色(CMYK)が挙げられるが、スポット又は特殊色も挙げられ得る。選択されたLED IR放射線源のLED IR波長帯域は、LED IR放射線源の直前の印刷ヘッドによって吐出された基材上の着色顔料にそれらのエネルギーの大部分を送達するほどに狭い。基材上の他の色の任意の顔料粒子は、IR放射線のほとんどを受けることはない。LED IR放射線源に対して狭いIR放射線帯域幅を適切に選択することは、各インクの適切な乾燥を確実にするのに役立ち、高品質の微細な特徴部、エッジ、及び塗りつぶし領域を有する画像がもたらされる。また、モットリング及びエッジボケの除去にも役立つ。加えて、このアプローチは、多くの場合、選択のIR放射線放射が基材を著しく加熱することがないため、基材が印刷ゾーンを通過している間に基材の裏側から廃熱を汲み出す必要性を排除する。これまでは、時には薄く温度感受性である基材への損傷を防止するために、加熱された空気が印刷ゾーン内の基材に向けられる場合は基材の裏側が印刷ゾーン内で冷却された。インク色のスペクトルと、スペクトル内の各帯域が吸収する光の色と、吸収された光の波長範囲との関係図が、
図3に示される。
【0014】
CMYKインクを使用する一実施形態では、第1のLED IR放射線源は、約650nm~約575nmの範囲の波長を有するIR放射線を放射し、これは、シアン顔料粒子に橙赤色光を吸収させ、第2のLED IR放射線源は、約515nm~約475nmの範囲の波長を有するIR放射線を放射し、これは、マゼンタ顔料粒子に黄緑色光を吸収させ、第3のLED IR放射線源は、約425nm~約375nmの範囲の波長を有するIR放射線を放射し、これは、黄色顔料粒子に紫色光を吸収させ、第4のLED IR放射線源は、約650nm~約375nmの範囲の波長を有するIR放射線を放射し、これは、黒色顔料粒子に白色光を吸収させる。第4のLED IR放射線源は、第1のLED IR放射線源の範囲内の光を放射する少なくとも1つのLED IR放射線源と、第2のLED IR放射線源の範囲内の光を放射する少なくとも1つのLED IR放射線源と、第1のLED IR放射線源の範囲内の光を放射する少なくとも1つのLED IR放射線源と、を有するLEDのアレイで実装することができる。あるいは、第4のLED IR放射線源は、白色光を放射する1つ以上のLEDで実装することができる。第4のLED IR放射線源は、スペクトルにわたって波長を有する光を放射するため、黒色インクを吐出する印刷ヘッド又は印刷ヘッドアレイは、この放射線源からのIR放射線が、他の色に対応する任意の顔料粒子を加熱しないように、プロセス方向の最初にあるか、又は他の色が既に適切な波長の光に曝露されているので、プロセス方向の最後にあるかのいずれかである。
【0015】
図1に示されるプリンタを動作させるためのプロセスが、
図2に示される。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実行しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを操作するために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を動作させてタスク若しくは機能を実行するために、コントローラ又はプロセッサに作動的に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラム命令を実行することを指す。上記のコントローラ14は、このようなコントローラ又はプロセッサであり得る。あるいは、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらはそれぞれ、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。加えて、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実行され得る。
【0016】
図2は、微細な画像特徴部の鮮鋭度を改善するために、及び均一な塗りつぶし領域をそれらの領域内の色の正確な形成と共に確立するために、画像印刷中に様々な範囲のIR放射線曝露を異なる時間において提供するように印刷システム10を動作させるプロセス300の流れ図である。プロセス300は、合成画像ファイルを受信することによって開始する(ブロック304)。次いで、コントローラは、合成画像ファイルから色分解ファイルを生成する(ブロック308)。色分解ファイルは、対応するインク色を吐出する印刷ヘッドを動作させる印刷ヘッドドライバに送信される(ブロック312)。印刷ゾーンのLED IR放射線源が起動され(ブロック316)、次いで、印刷ヘッドドライバは、色分解ファイルを使用して印刷ゾーン内の印刷ヘッドを動作させて、ウェブ上にインク画像を形成する(ブロック320)。起動されたLED IR放射線源は、直前の印刷ヘッドによって吐出されたインク滴を、そのインク滴が次の印刷ヘッドに進む前に、固定する。印刷画像が光学センサを通過すると、印刷画像の画像データが生成され、コントローラによって分析される(ブロック324)。コントローラが、1つ以上の色が十分に広がっていないか、又は過度に広がっていると判定すると(ブロック328)、その色のためのLED IR源から放射される光の強度が調整される(ブロック332)。広がり過ぎている色のインク滴に対処するには、その色のための放射光の強度が、LED IR源に供給される電力を増加させることによって増大させられる。広がりが足りない色のインク滴に対処するには、その色のための放射光の強度が、LED IR源に供給される電力を減少させることによって低下させられる。調整が必要であり、印刷のために利用可能な追加の画像がない場合(ブロック336)、プロセスは、別の画像の印刷の準備が整うまで待機する。この時点で、プロセスは、合成画像を取得し(ブロック304)、プロセスは、繰り返される。
【0017】
上に開示された装置並びに他の特徴、及び機能、又はそれらの代替物の変形は、望ましくは多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることが理解されるであろう。その点で様々な現在予期又は予測されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われてもよく、これもまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。