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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 11/04 20060101AFI20240404BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F26B11/04
F26B5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020152817
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047089
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】岸 勇佑
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-292102(JP,A)
【文献】特開2017-015337(JP,A)
【文献】特開平03-088331(JP,A)
【文献】特開2002-195750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 11/04
F26B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を収容する容器と、
前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、
前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器の内部から排出するための排気口が前記容器に設けられている乾燥装置であって、
前記被乾燥物が排出されないように前記排気口に設けられたフィルターと、前記気体を通過可能に前記容器の内側から前記フィルターを覆うフィルターカバーとをさらに有し、
前記回転において前記フィルター及び前記フィルターカバーが前記回転軸周りに回転するように前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配され
前記フィルターカバーが、前記容器の内壁面よりも前記容器の内側部に突出する形状を有し、
前記フィルターカバーが、前記回転軸に向けて突出し、且つ、先端部が前記回転軸に位置するか又は前記回転軸を超えるように突出している乾燥装置。
【請求項2】
前記フィルターカバーには、該フィルターカバーで覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔が設けられ、
前記回転軸の位置、又は、前記回転軸を超えた位置で前記貫通孔が開口している請求項記載の乾燥装置。
【請求項3】
被乾燥物を収容する容器と、
前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、
前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器の内部から排出するための排気口が前記容器に設けられている乾燥装置であって、
前記被乾燥物が排出されないように前記排気口に設けられたフィルターと、前記気体を通過可能に前記容器の内側から前記フィルターを覆うフィルターカバーとをさらに有し、
前記回転において前記フィルター及び前記フィルターカバーが前記回転軸周りに回転するように前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配され、
前記フィルターカバーが、前記容器の内壁面よりも前記容器の内側部に突出する形状を有し、
前記フィルターカバーには、該フィルターカバーで覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔が設けられ、
該貫通孔が開口している方向は、前記回転における進行方向とは別方向である乾燥装置。
【請求項4】
前記フィルターカバーが、突出する方向に筒状に延びる縦壁部と、該縦壁部の先端部を塞ぐように設けられた横壁部とを備え、
前記貫通孔が前記縦壁部に設けられており、該貫通孔が開口している方向は、前記進行方向とは反対方向である請求項記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記貫通孔が前記横壁部との境界部に開口している請求項記載の乾燥装置。
【請求項6】
被乾燥物を収容する容器と、
前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、
前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器の内部から排出するための排気口が前記容器に設けられている乾燥装置であって、
前記被乾燥物が排出されないように前記排気口に設けられたフィルターと、前記気体を通過可能に前記容器の内側から前記フィルターを覆うフィルターカバーとをさらに有し、
前記回転において前記フィルター及び前記フィルターカバーが前記回転軸周りに回転するように前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配され、
前記フィルターカバーが、前記容器の内壁面よりも前記容器の内側部に突出する形状を有し、
前記フィルターカバーには、該フィルターカバーで覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔が設けられ、
前記フィルターカバーが、突出する方向に筒状に延びる縦壁部と、該縦壁部の先端部を塞ぐように設けられた横壁部とを備え、
前記貫通孔が前記横壁部に形成されている乾燥装置。
【請求項7】
前記回転での進行方向を第1方向としたときに、
前記横壁部には、前記第1方向での先端側に第1傾斜部が設けられ、前記第1方向での後端側に第2傾斜部が設けられ、該第2傾斜部と前記第1傾斜部との間に前記貫通孔が設けられており、
前記第1傾斜部が前記第1方向に向けて先下がりとなっているとともに前記第2傾斜部が前記第1方向とは逆方向に向けて先下がりとなっている請求項記載の乾燥装置。
【請求項8】
被乾燥物を収容する容器と、
前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、
前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器の内部から排出するための排気口が前記容器に設けられている乾燥装置であって、
前記被乾燥物が排出されないように前記排気口に設けられたフィルターと、前記気体を通過可能に前記容器の内側から前記フィルターを覆うフィルターカバーとをさらに有し、
前記回転において前記フィルター及び前記フィルターカバーが前記回転軸周りに回転するように前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配され、
前記フィルターカバーが、前記容器の内壁面よりも前記容器の内側部に突出する形状を有し、
前記フィルターカバーが、前記回転軸に向けて突出し、先端部が前記回転軸を超えるように突出し、
該フィルターカバーには、該フィルターカバーで覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔が設けられており、
前記容器の内部の空間を、前記回転軸を通る平面で2分し、前記排気口側の空間を第1空間、該第1空間とは逆側の空間を第2空間とし、
前記第1空間の容積をフィルターカバーが占有している部分を含めて第1の容積(Vu:m)とし、前記第2空間の容積をフィルターカバーが占有している部分を含めて第2の容積(Vd:m)とした場合に該第2の容積(Vd)が前記第1の容積(Vu)以上となっており、
前記第1空間においてフィルターカバーが占有している容積をVc1(m)とし、
前記フィルターカバーの突出している起点となる箇所から前記回転軸Xまでの距離をH(mm)、前記容器の内部の空間を前記平面で切断した際の断面積をA(m)とした場合に前記起点から「H(mm)」以上「H+1000・Vc1/A(mm)」以下の範囲内において前記貫通孔が開口している乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥物を収容する容器と、前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備えた乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥装置としては、下記特許文献1に示すように容器を上下が入れ替わるように回転させて内部の被乾燥物を攪拌しつつ乾燥するタイプのものが知られている。
この種の乾燥機では、被乾燥物の乾燥に際して容器内の気体の入れ替えが行われ、新たな気体を容器内に導入することで被乾燥物が発した水分を含む気体を容器外へ排出することが行われている。
【0003】
容器を回転させて被乾燥物を攪拌しつつ乾燥するタイプの乾燥機としては、減圧乾燥装置などと称されるものが知られており、被乾燥物の乾燥に際して新たな気体を容器内に全く供給しないか供給量を排気量に対して少量にして容器内を減圧状態にするタイプのものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-15337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器を回転させて攪拌を行うタイプの乾燥装置では、排気口に設けたフィルターが被乾燥物で目詰まりして被乾燥物の乾燥時間が長期化してしまうことがある。
このようなことからこの種の乾燥装置においては作業効率の向上が難しいという問題を有している。
【0006】
ところで上記特許文献1に開示されている乾燥装置では、排気経路が回転軸に沿って設けられており、排気口が回転軸上に位置している。
特許文献1に開示された乾燥装置では、排気口が回転軸に位置することで容器の回転に際して常に排気口が容器の底から一定以上の高さに位置することになるため、排気口が被乾燥物に埋もれ難く、フィルターの目詰まりが抑制され得る。
しかしながら、排気口が回転軸に位置していると排気口やフィルターの点検・清掃作業が容器外から行い難くなり、作業効率の向上という観点からは特許文献1に開示されている乾燥装置においても改善する余地が残されている。
【0007】
そこで、本発明は、従来の乾燥装置に比べて作業効率の向上が図られ得る乾燥装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明は、
被乾燥物を収容する容器と、
前記容器の上下が入れ替わるように前記容器を回転軸周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、
前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器の内部から排出するための排気口が前記容器に設けられている乾燥装置であって、
前記被乾燥物が排出されないように前記排気口に設けられたフィルターと、前記気体を通過可能に前記容器の内側から前記フィルターを覆うフィルターカバーとをさらに有し、
前記回転において前記フィルター及び前記フィルターカバーが前記回転軸周りに回転するように前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配されている乾燥装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記排気口が前記回転軸から離れた位置に配されているため、排気口やフィルターの点検・清掃作業が容器外から行い易くなる。
また、本発明ではフィルターを覆うフィルターカバーが設けられ、容器の回転に際してフィルターとともにフィルターカバーも回転するため、フィルターが被乾燥物に埋もれるような位置を通過する際にもフィルターカバーによってフィルターと被乾燥物との接触が防止されて当該フィルターの目詰まりが防がれ得る。
このことにより本発明によれば、従来の乾燥装置に比べて作業効率の向上が図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る乾燥装置の側面図である。
図2】同乾燥装置の平面図である。
図3】同乾燥装置の容器上端部(フィルター部)の拡大図である(図2のIII-III線矢視断面図)。
図4】同乾燥装置の容器を180度回転させた状態を示す側面図である。
図5】本発明に係る別の態様の乾燥装置の容器上端部(フィルター部)の拡大図である。
図6】フィルターカバーの一例を示した概略斜視図。
図7】フィルターカバーの他の例を示した概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る乾燥装置について、該乾燥装置が減圧乾燥装置である態様を主たる例にして説明する。
また、本実施形態では、前記減圧乾燥装置が、凍結した被乾燥物を減圧状態(真空状態ともいう)で乾燥させるための凍結乾燥装置である場合について図を参照しつつ説明する。
【0012】
図1図4に示すように、凍結乾燥装置1は、乾燥処理する被乾燥物Dを収容した状態で回転可能に軸支された容器2と、容器2の内部の気体を吸引して内部を減圧状態にするための真空配管3と、容器2の内部に供給された被乾燥物Dが真空配管3内に吸引されることを防止するためのフィルター部4と、を備えている。
【0013】
本実施形態において乾燥処理が施される被乾燥物Dは、水分を含んだ小型の固形物であり、特にその大きさが限定されるものではなく、例えば、マイクロメーターサイズのものであっても、ミリメートルサイズのものであっても、センチメートルサイズのものであってもよい。
被乾燥物Dは、その形状についても特に限定されるものではない。
被乾燥物Dは、例えば、粒状、フレーク状、棒状などの各種の形状であってよい。
被乾燥物Dが粒状である場合、より具体的な形状としては、例えば、球状、長球状、円錐状、多角錐状、円柱状、多角柱状(直方体、六角柱等)、不定形状などが挙げられる。
被乾燥物Dがフレーク状である場合、より具体的な形状としては、例えば、比較的厚さが均一な板状(直板状や曲板状)や、外周縁に向かって厚さが減少する碁石状などが挙げられる。
被乾燥物Dが棒状である場合、より具体的な形状としては、例えば、比較的真っすぐな直線状や、全体形状が湾曲した曲線状や、波線状などが挙げられる。
【0014】
前記被乾燥物Dは、特にその素材が限定されるものではなく、各種のものが採用可能である。
前記被乾燥物Dは、例えば、野菜、果実、及び、これらの加工品;海藻類、魚介類、食肉、及び、これらの加工品;米、麦などの穀物、及び、これらの加工品;乳製品;砂糖;食塩;調味料;各種飲料;ゼリーなどといった飲食品であってもよい。
該飲食品は、総じてタック性が高く、特に糖分を含むようなものはタック性が高く凝集塊を形成し易いことから本実施形態で凍結乾燥される被乾燥物として好適である。
前記被乾燥物Dは、例えば、各種医薬品などのようなものであってもよい。
【0015】
前記凍結乾燥装置1は、凍結した被乾燥物が供給された容器2を減圧状態にしつつ、容器2を回転させることによって、被乾燥物Dに含まれる固体(氷)を気体(水蒸気)へ状態変化(昇華)させることで被乾燥物Dを乾燥させるようにしている。
容器2の回転は、被乾燥物Dの状態に応じて間欠的に回転させる又は連続して回転させることになるが、場合によっては、正回転と逆回転とを繰り返すように回転させてもよい。
【0016】
容器2は、一つの静止状態(図1の状態。以下「正立状態」ともいう。)において上端部及び下端部にそれぞれ開口を有する容器本体20と、前記容器本体20のそれぞれの前記開口を閉じる蓋体とが備えられている。
前記容器本体20は、被乾燥物を収容する収容空間(容器2の内部空間)を画定する本体壁21を有し、該本体壁21内の収容空間に乾燥前の被乾燥物Dを導入するための上部開口と、乾燥後の被乾燥物Dを収容空間から外部に排出するための下部開口とを備えている。
容器2は、容器本体20の上部開口を開閉する蓋体(以下「上蓋」ともいう)と、下部開口を開閉する蓋体(以下「下蓋」ともいう)と、を備えている。
該容器2は、正立状態から180度回転した倒立状態(図4の状態)において前記上蓋が下端部に位置し、前記下蓋が上端部に位置するように構成されている。
【0017】
前記容器2では、本体壁21の内壁面と、2つの蓋体の内壁面とで構成されている容器2の内壁面2Aの内、前記本体壁21の内壁面が、被乾燥物Dを加熱して乾燥させるための加熱面として用いられる。
本体壁21は、被乾燥物Dを収容できるように略ダブルコーン型(外形が略8角形)に構成されている。
即ち、本実施形態の容器2は、前記回転軸Xから上下両方に向けて一定区間においては内径を一定させているが、上下両方向において端部に向かうに従って縮径する擦り鉢状の縮径部を備えており、上部開口に向けて縮径している上部縮径部2Bと、下部開口に向けて縮径している下部縮径部2Cとの2つの縮径部が備えられている。
また、本体壁21の内壁面は、上端側が上部開口に向けて傾斜したテーパー面21A(以下「上部テーパー面」ともいう)となっているとともに下端側も下部開口に向けて傾斜したテーパー面21B(以下「下部テーパー面」ともいう)となっている。
【0018】
本実施形態の前記容器2には、この本体壁21の外側を覆うように本体壁21の外側に隙間を空けてジャケット23が配置されている。
【0019】
本体壁21の上端部には、本体壁21の上端とジャケット23の上端との隙間を閉じるとともに供給される被乾燥物Dを受け取るための開口(上部開口)が形成された円筒状の接続端部24を備えている。
該接続端部24では、図3に示すように、上下方向での中間部で径が縮小して段部24Dが形成されており、該段部24Dよりも上側は、前記開口と同じ内径を有する大径部24Eとなっており、段部24Dよりも下側は、前記開口よりも内径が小さい小径部24Fとなっている。
また、接続端部24の下端面は、下方側ほど外拡がりとなるテーパー面24Aに構成され、そのテーパー面24Aの角度を本体壁21の内面の上部テーパー面21Aと面一になるように同一角度にしている。
【0020】
上蓋22は、真空配管3を接続して容器2内の気体を排出するための円形の排気口22Aを中央部に備えており、真空配管3を容器本体20に接続するための接続部を構成している。
この接続部(上蓋22)を接続端部24に上方から押し付けて該接続端部24を閉じることで容器2内が密閉された状態になる。
なお、上蓋22は、手動操作力により開閉できるように構成されていてもよいし、電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)の動力を用いて開閉可能に構成されていてもよい。
【0021】
容器2は、下端部に乾燥処理された被乾燥物Dを排出するための開閉可能な排出部25を備えている。
該排出部25には、本体壁21の下端とジャケット23の下端との隙間を閉じるとともに凍結乾燥後の被乾燥物Dを排出するための開口(下部開口)が形成された円筒状の排出端部26と、該排出端部26の開口を開閉する下蓋27とを備えている。
該排出端部26の上端面は、上方側ほど外拡がりとなるテーパー面26Aに構成され、そのテーパー面26Aの角度を本体壁21の内面の下部テーパー面21Bと面一になるように同一角度にしている。
【0022】
容器2は、上記のように接続端部24と排出部25、及び、これらを開閉するための上蓋22と下蓋27とが上下方向で対向する位置に配置されている。
【0023】
容器2は、本体壁21とジャケット23との隙間に加熱手段(図示せず)により加熱された熱媒が熱媒供給用ホース5から供給されて容器本体20が加熱されるように構成されており、被乾燥物Dの乾燥を促進することができるようになっている。
なお、供給された熱媒は、熱媒回収用ホース6で回収されて前記加熱手段により設定温度まで加熱された後に熱媒供給用ホース5を通して容器2に供給されるように構成されている。
熱媒としては温水、熱媒油、ブライン(冷媒)等の液体を用いているが、加熱された気体であってもよいし、加熱手段であるヒータにより容器2を直接加熱する構成であってもよい。
【0024】
容器2のジャケット23の相対向する両横側面に、中空の回転軸部7,8が取り付けられている。
これら回転軸部7,8は、一対の軸受台9,10の上端に取り付けられた軸受装置11,12に回転自在に支持されている。なお、図1において左側の回転軸部7の基端側(容器2側)には、ボックス13が取り付けられている。また、一対の軸受台9,10の下端は、床等に配置される架台14に支持されている。
そして、図1の右側の軸受台10に取り付けられているモータ15により容器2が真空配管3及び一対の回転軸部7,8と一緒に回転する。
該容器2の回転における回転軸Xは一対の回転軸部7,8の中心部を結ぶ仮想線に沿って延在する。
本実施形態においては該回転軸Xが容器2の収容空間を貫通する方向に水平方向に延びているため、本実施形態での容器2は、収容した被乾燥物を攪拌する際に上下が入れ替わるように回転軸X周りに回転する。
即ち、本実施形態の凍結乾燥装置1では、前記容器2を回転軸X周りに回転させて前記容器に収容された前記被乾燥物を攪拌するための回転装置として前記モータ15が備えられている。
尚、図4は、該回転装置によって容器2を図1の状態(正立状態)から180度回転させた状態(倒立状態)を示している。
【0025】
真空配管3は、アーチ形状に構成され、前記上蓋22に一端部(下端部)が貫通して取り付けられる直線状の第1管31と、第1管31の他端部(上端部)に突き合わした状態で一端部(下端部)が連結される円弧状の第2管32と、第2管32の他端部(左端部)に突き合わした状態で一端部が連結されるフレキシブルホース33と、フレキシブルホース33の他端部(左端部)に突き合わした状態で一端部が連結される略L字状の第3管34と、第3管34の他端部(下端部)に突き合わした状態で連結される直線状の第4管35と、を備えている。フレキシブルホース33を設けることによって、上蓋22の開閉時に発生する真空配管3の長さ変化を吸収することができるようにしている。
【0026】
第4管35の他端部(下端部)は、前記左側の回転軸部7に貫通して取り付けられる。前記左側の回転軸部7の左端部は、減圧真空配管16Fを備えた直線状の第5管16の一端部に連通した状態で連結されている。なお、第5管16は、左側の軸受台9に固定されている。したがって、減圧真空配管16Fに接続されている減圧装置(図示せず)を作動させることによって、減圧真空配管16F、第5管16、真空配管3を通して容器2内の気体を吸引して、容器2内を減圧状態にする。
【0027】
本実施形態の凍結乾燥装置1は、例えば、容器2内の最高到達真空度が500Pa(絶対圧)以下となるような減圧能力を有していることが好ましい。
最高到達真空度は、400Pa以下であることが好ましく、300Pa以下であることがより好ましく、200Pa以下であることがさらに好ましい。
最高到達真空度は、100Pa以下であってもよく、50Pa以下であってもよく、10Pa以下であってもよい。
【0028】
前記フィルター部4は、前記上蓋22に設けられた排気口22Aから前記被乾燥物Dが排出されないように前記排気口22Aを容器2の内側(図1図3における下側)から覆うように設けられている。
前記フィルター部4は、図3に示すように、フィルター41と、フィルター41を支持する支持枠42と、フィルター41を覆うフィルターカバー43とを備えている。
本実施形態のフィルター41、支持枠42、及び、フィルターカバー43は、それぞれトップハット形(鍔付きハット形状)となっており、鍔部を有している。
前記支持枠42は、フィルター41よりも一回り小さく、フィルター41の内周面に内側から当接する形状を有している。
前記フィルターカバー43は、フィルター41よりも一回り大きく、前記フィルター41との間に空間Sを設けてフィルター41を覆うような形状を有している。
【0029】
前記フィルター部4では、フィルター41、支持枠42、及び、フィルターカバー43のそれぞれが鍔部を上方に位置させて下方に向けて突出するように配されており、支持枠42に被せられたフィルター41を更にフィルターカバー43が覆うように配置され、全体形状もトップハット形(鍔付きハット形状)となっている。
即ち、前記フィルター部4は、フィルターカバー43の鍔部43Cの上にフィルター41の鍔部41Fが重なり、該フィルター41の鍔部41Fの上に支持枠42の鍔部42bが重なるようにそれぞれが配されている。
【0030】
前記フィルターカバー43の鍔部43C以外の部分は、前記接続端部24の小径部24Fの内径よりも小径で、前記鍔部43Cは、前記接続端部24の小径部24Fよりも径大で且つ大径部24Eよりも小径となっている。
即ち、前記フィルター部4は、前記接続端部24を通じて容器2内に前記フィルターカバー43を挿入した際に前記鍔部43Cが前記段部24Dに係止することで規定の長さしか容器2内に突出しないように構成されている。
【0031】
前記フィルターカバー43の突出高さは、前記排気口22Aから回転軸Xまでの距離の1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。
前記フィルターカバー43の突出高さは、前記排気口22Aから回転軸Xまでの距離の1.5倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましい。
【0032】
前記フィルター部4は、前記支持枠42の鍔部42bを構成する上側リング部材42Bがリング状且つ板状であり、該上側リング部材42Bの内径が前記上蓋22に設けられた排気口22Aよりも大きくなっている。
そして、前記段部24Dに係止した状態での前記フィルター部4は、前記上蓋22を容器本体20に装着した際に、フィルター41、支持枠42、フィルターカバー43の鍔部が前記上蓋22と前記段部24Dとの間に挟まれた状態となって固定される。
また、前記フィルター部4は、該固定がされた状態において前記上蓋22の下面に前記支持枠42の鍔部を当接させ、且つ、該鍔部の内側に前記排気口22Aを位置させて下方に向けて突出する状態となる。
このようにして本実施形態での前記フィルター部4は、容器2内の気体を排気口22Aから排出する際に前記支持枠42によって支持されたフィルター41を通過するように構成されている。
【0033】
前記排気口22Aが回転軸部7,8に設けられた場合には排気口22Aに設けられる前記フィルター部4に容器2の外からアクセスすることが難しくなる一方で本実施形態では、前記排気口22Aが回転軸Xからは離れた位置に設けられているためにフィルター部4へのアクセスが容易となる。
【0034】
本実施形態の凍結乾燥装置1は、上記のように被乾燥物を収容する容器2と、前記容器2の上下が入れ替わるように前記容器2を回転軸周りに回転させて前記容器2に収容された前記被乾燥物を攪拌する回転装置とを備え、前記被乾燥物から放出された水分を含んだ気体を前記容器2の内部から排出するための排気口22Aが前記容器2に設けられている乾燥装置であって、前記被乾燥物Dが排出されないように前記排気口22Aに設けられたフィルター41と、前記気体を通過可能に前記容器2の内側から前記フィルター41を覆うフィルターカバー43とをさらに有し、前記回転において前記フィルター41及び前記フィルターカバー43が前記回転軸X周りに回転するように前記排気口22Aが前記回転軸Xから離れた位置に配されている被乾燥物の凍結乾燥に際して優れた作業性が発揮され得る。
【0035】
本実施形態でのフィルター部4(フィルター41、支持枠42、フィルターカバー43)は、容器本体20に対して着脱可能、且つ、容器2内から取出可能となって乾燥装置に設けられているためにメンテナンスがより一層容易となっている。
さらに、本実施形態のフィルター部4は、フィルター41とフィルターカバー43とが分離可能となっているため、フィルターカバー43を取り除いてフィルター41を清掃するなどの作業が簡単に行えるようになっている。
そして、本実施形態のフィルター部4は、フィルター41と支持枠42とが分離可能となっているため、フィルター41が性能低下し、被乾燥物Dが排気口22Aから排出されてしまうおそれが生じたり、被乾燥物Dの乾燥時間が長期化したりする場合にフィルター41のみを交換して機能を復活させることができる。
本実施形態の凍結乾燥装置1は、フィルター部4が上記のように構成されているためにより優れた作業効率を発揮し得る。
以下、フィルター部4のそれぞれの構成部材について詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の前記フィルター41は、縫製された複数枚(ここでは2枚)の網状体41A,41Bと、前記蓋22を閉塞した時にシールするためのシール材としての2枚のリング状で板状のシールガスケット41C,41Dと、これらシールガスケット41C,41D間に挟まれる合成樹脂製(例えばポリプロピレン)のリング状で板状の円形基板41Eと、を備えている。
なお、前記網状体41A,41Bは、全域に亘って通気性を有している。
この網状体41A,41Bは、不織布から構成されてもよい。
【0037】
網状体41A,41Bは、下端が開放された円筒状の縦壁部と、該縦壁部の上端部より外向きに延びる鍔部41Fとを構成する第1の網状体41Aと、開放された下端を覆うカバー部としての横壁部を構成する第2の網状体41Bと、を備えている。
この第2の網状体41Bは、本実施形態においては円形状であり、第1の網状体41Aの開放された下端よりも一回り大きな面積を有し、その外周縁が上方側へ折り曲げられて第1の網状体41Aの下端部に縫い付けられており、そのことによって両網状体41A,41Bが連結している。
前記第1の網状体41Aは、上端縁から一定の長さ分が一旦外折りにされ、その外折した部分の先端側の約半分が再び内折にされて基端側に重ね合わせられることにより2重構造となった前記鍔部41Fを形成している。
前記フィルター41は、鍔部41Fで2重構造となっている第1の網状体41Aの間にシールガスケット41C,41D及び円形基板41Eが挟み込まれている。
シールガスケット41C,41D及び円形基板41Eは、内径がフィルター41の縦壁部の外径よりも大きく円形基板41Eを上下からシールガスケット41C,41Dが挟み込むように3枚重ねとなって前記第1の網状体41Aとともに前記鍔部41Fを構成している。
【0038】
支持枠42は、下端に位置して底部を形成する多数の開口42aが形成された円形で合成樹脂製(金属製でもよい)の多孔板42Aと、上端に位置して円形の鍔部42bを形成するリング状で合成樹脂製(金属製でもよい)の上側リング部材42Bと、上側リング部材42Bと多孔板42Aとを上下方向で連結するための複数本(16本)の丸棒42Cと、丸棒42Cの上下方向略中央部に取り付けられる中心部が開口42dされた中間リング部材42Dと、中間リング部材42Dと多孔板42Aとの間でかつ周方向において一つ置きの丸棒42Cの内側から中心に向かうように取り付けられる縦長状の複数枚(8枚)の補強板42Eと、丸棒42Cの上端部の外周面に装着されて厚み分だけ外側に少し張り出す合成樹脂製(金属製でもよい)で板状のリング状の張り板42Fと、を備えている。
支持枠42は、フィルター41よりも僅かに小さな径寸法を有する有底筒状(鍔付きハット形状)に構成されている。
【0039】
前記フィルターカバー43は、フィルター41よりも径大であり、上端から下端までの長さもフィルター41よりも長い有底筒状(鍔付きハット形状)に構成されている。
前記フィルターカバー43は、前記フィルター41を内側に収容可能な大きさを有し、該フィルター41との間に空間を設けて前記フィルター41を覆うことが可能な形状を有している。
したがって、支持枠42にフィルター41を下方から被せ、さらに、当該フィルターカバー43を下方から被せることによって、これらを一体化することができる(図3参照)。
【0040】
前記フィルターカバー43は、被乾燥物Dが発した水分(水蒸気)を含む気体を容器2の内部空間から前記フィルター41と前記排気口22Aとを通じて系外に排出させるべく、前記気体を通過可能に前記容器2の内側から前記フィルター41を覆っている。
本実施形態の前記フィルターカバー43は、円筒状となって上下に延びる縦壁部43Aと、該縦壁部43Aの下端部を塞ぐように設けられた横壁部43Bと、前記縦壁部43Aの上端より外向きに延びる鍔部43Cとを備えている。
本実施形態の前記フィルターカバー43は、素材自体が通気性を有するものであってもよいが、金属やプラスチックのような気体非透過性の素材で形成された成形体に貫通孔43Hを設けたようなものであることが好ましく、本実施形態においては金属製(例えば、ステンレススチール製)の一体成形物となっている。
【0041】
前記フィルターカバー43は、例えば、図3図6に示すような形状のものや、図5図7に示す形状のものとされ得る。
前記フィルターカバー43における前記貫通孔43Hは、被乾燥物Dが通過可能な大きさを有するものであっても被乾燥物Dが通過できない大きさのものであってもよいが、気体の流通を良好にする上においては被乾燥物Dが通過可能な大きさを有することが好ましい。
被乾燥物Dが通過可能な大きさを有する貫通孔43Hは、フィルターカバー43の突出方向先端側(突出長さの半分以上の部分)に設けられることが好ましく、先端側のみに設けられることがより好ましい。
貫通孔43Hは、例えば、1以上10以下の数で設けられ得る。
【0042】
本実施形態では前記排気口22Aが前述のように上蓋22に設けられており、該上蓋22は、容器2が正立状態にある場合に容器2の上端部に位置し、倒立状態において容器2の下端部に位置する。
即ち、前記排気口22Aは、容器2の回転に際して回転軸Xの周りを回転するように移動し、前記フィルター部4が設けられていないと倒立状態において被乾燥物Dに埋もれた状態になり得る。
しかしながら本実施形態では、該排気口22Aを覆うようにフィルター41が配されているため、該排気口22Aから被乾燥物Dが排出されることが抑制され、しかも、該フィルター41がフィルターカバー43によって覆われているためにフィルター41と被乾燥物Dとの直接的な接触も抑制され当該フィルター41の目詰まりが抑制され得る。
【0043】
本実施形態においては、前記フィルターカバー43が、前記容器2の内壁面よりも前記容器の内部側に突出する形状を有している。
そのため、本実施形態においては、前記容器2の回転に際して前記フィルターカバー43で被乾燥物Dが攪拌され、凝集物の解砕なども行われ得ることから被乾燥物の乾燥が進行され易い。
【0044】
前記フィルターカバー43は、前記回転軸Xに向けて突出し、且つ、先端部が前記回転軸Xに位置するか又は前記回転軸Xを超えるように突出していることが好ましい。
このことにより上記のような効果がより顕著に発揮され得る。
【0045】
本実施形態における一態様の凍結乾燥装置1では、前記フィルターカバー43に、該フィルターカバー43で覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔43Hが設けられ、前記回転軸Xの位置、又は、前記回転軸を超える位置で前記貫通孔43Hが開口していることが好ましい(図3図4参照)。
このことによって被乾燥物Dが貫通孔43Hを通じてフィルターカバー43内に入り込むことを抑制することができる。
【0046】
前記フィルターカバー43が容器内部で突出し始めている箇所(以下「突出起点」ともいう)から前記回転軸Xまでの距離をH(mm)としたときに、前記突出起点から0.8H未満の区間には前記貫通孔43Hが設けられていないことが好ましい。
言い換えると、前記貫通孔43Hは、突出起点から0.8H以上の地点で開口していることが好ましい。
前記貫通孔43Hは、突出起点から1.25Hを超える区間には設けられていないことが好ましい。
即ち、前記貫通孔43Hは前記突出起点から1.25H以下の地点で開口していることが好ましい。
前記貫通孔43Hの位置は、0.9H以上であることが好ましく、1.0H以上であることがより好ましく、1.0Hを超えることがさらに好ましく、1.1H以上であることが特に好ましい。
【0047】
容器2の内部の空間を正立状態において回転軸Xよりも上方と下方とに二分したときにそれらの容積が仮に同じであったとしても、上方部分ではフィルターカバー43が占有している部分が前記被乾燥物Dの収容には利用できないため、正立状態において前記被乾燥物Dを回転軸Xのレベルに達するまで収容すると倒立状態では前記被乾燥物Dが回転軸Xを超える高さとなってしまうことになる。
そうすると、容器2を180°回転させる途中のどこかで貫通孔43Hが被乾燥物Dに埋もれる事態を生じさせるおそれを有する。
【0048】
容器2の内部の空間の内、正立状態において回転軸Xよりも上方となる空間をフィルターカバー43が占有している部分を含めて上部容積(Vu:m)とし、回転軸Xよりも下方となる空間をフィルターカバー43が占有している部分を含めて下部容積(Vd:m)とした場合、該下部容積(Vd)は、上部容積(Vu)以上であることが好ましい。
容器2の内部でフィルターカバー43が占有している容積(Vc:m)の内、上部容積(Vu)中でフィルターカバー43が占有している容積をVc1(m)とし、下部容積(Vd)中でフィルターカバー43が占有している容積をVc2(m)(Vc1+Vc2=Vc)とした場合、下記関係式(1)が成立すれば、倒立状態において回転軸Xのレベルまで被乾燥物Dを収容させても、正立状態では被乾燥物Dの上面が、回転軸Xよりも下方に位置することになる。

「Vd-Vc2」 > 「Vu-Vc1」 ・・・(1)
【0049】
即ち、容器2とフィルターカバー43とが上記の関係式(1)を満たす形状を有していれば、回転時に被乾燥物Dが存在しない空間を確保し得ることとなり、該空間に前記貫通孔43Hを位置させてフィルター41の目詰まり防止を図り得る。
【0050】
この空間をより確実に確保する上において、前述の通り前記下部容積(Vd)が上部容積(Vu)以上であることが好ましい。
このことにより、倒立状態において回転軸Xのレベルまで被乾燥物Dを収容させた状況における被乾燥物Dの容積(VD:m)は、「Vu-Vc1(m)」となるので、下部容積(Vd)が上部容積(Vu)以上であれば、正立状態において被乾燥物Dの上面と回転軸Xとの間には、少なくともフィルターカバー43の占有容積(Vc1)に対応する空間が生じることになり、フィルターカバー43の先端から被乾燥物Dの上面までに十分な距離を確保させ得る。
【0051】
回転軸Xの地点での容器断面積(回転軸Xを含む水平面で容器2の内部空間を切断した断面の面積)をA(m)とした場合、下部容積(Vd)が上部容積(Vu)以上であれば、正立状態において被乾燥物Dの上面と回転軸Xとの間の距離は、少なくとも「1000・Vc1/A」(mm)以上確保されることになる。
そのため、前記貫通孔43Hは、突出起点から回転軸Xまでの距離を上記のようにH(mm)とした場合、H(mm)以上「H+1000・Vc1/A」(mm)以下の範囲内において開口していることが好ましい。
【0052】
即ち、本実施形態の凍結乾燥機1は、前記フィルターカバーが、前記回転軸に向けて突出し、先端部が前記回転軸を超えるように突出し、
該フィルターカバーには、該フィルターカバーで覆われた空間と前記被乾燥物が収容される空間とを連通させる貫通孔が設けられており、
前記容器の内部の空間を、前記回転軸を通る平面で2分し、前記排気口側の空間を第1空間、該第1空間とは逆側の空間を第2空間とし、
前記第1空間の容積をフィルターカバーが占有している部分を含めて第1の容積(前記上部容積(Vu:m))とし、前記第2空間の容積をフィルターカバーが占有している部分を含めて第2の容積(前記下部容積(Vd:m))とした場合に該第2の容積(Vd)が前記第1の容積(Vu)以上となっており、
前記第1空間においてフィルターカバーが占有している容積をVc1(m)とし、
前記フィルターカバーの突出している起点となる箇所から前記回転軸Xまでの距離をH(mm)、前記容器の内部の空間を前記平面で切断した際の断面積をA(m)とした場合に前記起点から「H(mm)」以上「H+1000・Vc1/A(mm)」以下の範囲内において前記貫通孔が開口していることが好ましい。
【0053】
正立状態における貫通孔43Hの下端縁よりも下方の収容空間の容積(容器2の内部空間の内、貫通孔43Hの下端縁よりも下方の空間からフィルターカバー43の占有容積を減じた容積)を正立状態において貫通孔43Hが被乾燥物Dに埋もれることを防ぐことができる最大容積(以下「正立時最大容積」ともいう)とし、貫通孔43Hの上端縁よりも上方の収容空間の容積(容器2の内部空間の内、貫通孔43Hの上端縁よりも上方の空間からフィルターカバー43の占有容積を減じた容積)を倒立状態において貫通孔43Hが被乾燥物Dに埋もれることを防ぐことができる最大容積(以下「倒立時最大容積」ともいう)とした場合、前記被乾燥物Dの収容量は、正立時最大容積以下で且つ倒立時最大容積以下であることが好ましい。
【0054】
貫通孔43Hが埋もれることを防ぐことができる前記被乾燥物Dの収容量は、正立時最大容積と倒立時最大容積との内、少ない方の値によって規定されることになるため、正立時最大容積をV1(m)とし、倒立時最大容積をV2(m)とした場合、これらの値が近い値となっている方が容器2内のスペースをより有効に活用することができる。
従って、正立時最大容積と倒立時最大容積との内、少ない方の容積に対する多い方の容積の比率は、1.3倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1.1倍以下であることがさらに好ましい。
【0055】
容器2の内容積からフィルターカバー43が占有している容積を減じた容積を被乾燥物Dの最大収容容積(V0:m)とした場合、正立時最大容積(V1)及び倒立時最大容積(V2)は、それぞれ0.3・V0(m)以上であることが好ましく、0.4・V0以上(m)であることがより好ましい。
正立時最大容積(V1)及び倒立時最大容積(V2)は、それぞれ0.5・V0(m)未満であることが好ましい。
【0056】
本実施形態のフィルターカバー43では、その形状や形成される貫通孔43Hの配置などにもよるが、倒立状態において貫通孔43Hが前記被乾燥物Dに埋もれてフィルターカバー43内に被乾燥物Dが入り込むことが生じたとしても、貫通孔43Hが下向きになる時点(例えば、正立状態近傍)でフィルターカバー43内に入り込んだ被乾燥物Dを貫通孔43Hより排出することができるため前記被乾燥物Dの収容量は、倒立時最大容積を少し超える量であってもよい。
一方で、正立状態でフィルターカバー43内に入り込んだ被乾燥物Dは排出させ難い場合がある。
そのため、正立時最大容積(V1)と倒立時最大容積(V2)とであれば、正立時最大容積(V1)の値を大きくする方が有利であるといえる。
【0057】
前記被乾燥物Dの収容量(乾燥開始時点での収容量)は、安全率を確保するという意味で、正立時最大容積(V1)の1.0倍以下とすることが好ましく、0.9倍以下とすることがより好ましく、0.8倍以下とすることがさらに好ましい。
前記被乾燥物Dの収容量は、正立時最大容積(V1)の0.1倍以上とすることが好ましく、0.3倍以上とすることがより好ましく、0.5倍以上とすることがさらに好ましい。
【0058】
正立時最大容積と倒立時最大容積とを上記のような好ましい態様とした場合、前記貫通孔43Hは、例えば、正立状態での容器2内の空間の下端より0.4・V0(m)以上0.6・V0(m)以下となる空間に位置させることが好ましい。
【0059】
本実施形態における他態様の凍結乾燥装置1では、前記フィルターカバー43に、該フィルターカバー43で覆われた空間と前記被乾燥物Dが収容される空間とを連通させる貫通孔43Hが設けられ、該貫通孔43Hが開口している方向が、前記回転における進行方向とは別方向であることが好ましい。
例えば、図3図6に示すような事例では、前記回転での進行方向を第1方向D1とし、該第1方向D1とは逆方向を第2方向D2としたときに、前記貫通孔43Hが開口している方向は、第1方向D1以外の例えば第2方向D2とされることが好ましい。
このことによって被乾燥物Dが貫通孔43Hを通じてフィルターカバー43内に入り込むことを抑制することができる。
【0060】
上記のような態様においては、前記フィルターカバー43が、突出する方向に筒状に延びる縦壁部43Aと、該縦壁部43Aの先端部を塞ぐように設けられた横壁部43Bとを備え、前記貫通孔43Hが前記縦壁部43Aに設けられており、該貫通孔43Hが開口している方向が、前記進行方向とは反対方向であることで被乾燥物Dが入り込むことをより一層抑制することができる。
【0061】
上記のような態様においては、前記貫通孔43Hが前記横壁部43Bとの境界部に開口していることが好ましい。
このような態様によれば、仮に、前記被乾燥物Dがフィルターカバー43内に入り込んだとしても入り込んだ前記被乾燥物Dが前記容器2の回転過程において(特に、倒立状態などにおいて)貫通孔43Hから排出され易くなり、フィルター41の目詰まりがより一層抑制され得る。
【0062】
本実施形態の凍結乾燥装置1は、前記フィルターカバー43に、該フィルターカバー43で覆われた空間G2と前記被乾燥物Dが収容される空間G1とを連通させる貫通孔43Hが設けられ、前記フィルターカバー43が、突出する方向に筒状に延びる縦壁部43Aと、該縦壁部43Aの先端部を塞ぐように設けられた横壁部43Bとを備え、前記貫通孔43Hが前記横壁部43Bに形成されていてもよい。
このような態様によれば、仮に、前記被乾燥物Dがフィルターカバー43内に入り込んだとしても入り込んだ前記被乾燥物Dが前記容器2の回転過程において(特に、正立状態などにおいて)貫通孔43Hから排出され易くなり、フィルター41の目詰まりがより一層抑制され得る。
【0063】
上記のような態様においては、前記回転での進行方向を第1方向D1としたときに、前記横壁部43Bには、前記第1方向D1での先端側に第1傾斜部43B1が設けられ、前記第1方向D1での後端側に第2傾斜部43B2が設けられ、該第2傾斜部43B2と前記第1傾斜部43B1との間に前記貫通孔43Hが設けられており、前記第1傾斜部43B1が前記第1方向D1に向けて先下がりとなっているとともに前記第2傾斜部43B2が前記第1方向D1とは逆方向(第2方向D2)に向けて先下がりとなっていることが好ましい(図5図7参照)。
このことによればフィルターカバー43内に入り込んだ前記被乾燥物Dが前記容器2の回転過程において(特に、正立状態などにおいて)貫通孔43Hからより一層排出され易くなり、フィルター42の目詰まりが特に抑制され得る。
【0064】
本実施形態においては、本発明の効果をより顕著に発揮する上で、乾燥装置として凍結乾燥装置を例示しているが、前記容器の内部が減圧状態となって前記被乾燥物Dが乾燥される減圧乾燥装置においては上記の凍結乾燥装置に関して説明したのと同様の有利な効果が発揮され得る。
また、この有利な効果は、減圧乾燥装置に限らず一般的な乾燥装置に共通して発揮され得る。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではなく、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において上記例示に対して各種変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0065】
1:凍結乾燥装置、2:容器、4:フィルター部、15:モータ、16F:減圧真空配管、20:容器本体、22 :上蓋、22A:排気口、23:ジャケット、27:下蓋、41:フィルター、41F:鍔部、42:支持枠、43:フィルターカバー、43A:縦壁部、43B:横壁部、43C:鍔部、43H:貫通孔、D:被乾燥物、X:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7