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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】プリンタ装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/70 20060101AFI20240404BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20240404BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20240404BHJP
   B41J 25/304 20060101ALI20240404BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J11/70
B41J3/60
B41J2/325 A
B41J25/304 L
B41J2/32 Z
B41J25/304 W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160072
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053306
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 元人
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-264322(JP,A)
【文献】特開2005-001151(JP,A)
【文献】特開平11-286147(JP,A)
【文献】特開平08-169127(JP,A)
【文献】特開2014-051011(JP,A)
【文献】特開2013-052605(JP,A)
【文献】特開2008-152172(JP,A)
【文献】特開平11-311945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B41J 3/60
B41J 2/325
B41J 25/304
B41J 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側の少なくとも一部の領域に粘着剤が付された長尺状の用紙を搬送する搬送機構と、
正方向に搬送される前記用紙の表面に印字を行う第1印字ヘッドと、
前記第1印字ヘッドとの間で前記用紙を挟持可能な第1プラテンローラと、
前記第1印字ヘッドよりも前記正方向の上流側に配置され、前記正方向に搬送される前記用紙の裏面に印字を行う第2印字ヘッドと、
前記第2印字ヘッドとの間で前記用紙を挟持可能な第2プラテンローラと、
前記第1印字ヘッドよりも前記正方向の下流側に配置され、印字された前記用紙の先端部分を切断する切断部と、
前記印字を停止する場合、前記搬送機構を制御し、前記先端部分が切断された前記用紙の端面を、前記第1印字ヘッドと前記第1プラテンローラとの当接位置まで前記用紙を逆方向に搬送させる制御部と、
を備えるプリンタ装置。
【請求項2】
前記第1印字ヘッドは、熱によって発色する薬剤が塗布された前記用紙の表面に、熱を印加して印字を行うダイレクトサーマル型の印字ヘッドであり、
前記第2印字ヘッドは、前記用紙の裏面にインクリボンが保持するインクを転写して印字を行う熱転写型の印字ヘッドである、請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記第2印字ヘッドを前記第2プラテンローラから離間させるヘッドアップ機構を更に備え、
前記制御部は、前記ヘッドアップ機構を制御し、前記粘着剤が付された領域で前記第2印字ヘッドを前記第2プラテンローラから離間させる、請求項2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ヘッドアップ機構を制御し、前記用紙を逆方向に搬送させる間、前記第2印字ヘッドを前記第2プラテンローラから離間させる、請求項3に記載のプリンタ装置。
【請求項5】
前記第1プラテンローラ及び前記第2プラテンローラは、前記用紙の搬送経路を略S字状に屈曲させる位置に配置される、請求項1~4の何れか一項に記載のプリンタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライナレス用紙と呼ばれる台紙なしのラベル用紙に印字を行うプリンタ装置が知られている。このようなラベル用紙は、一方の面(表面)に糊等の粘着剤が付されており、ロール状に巻回された状態でプリンタ装置に格納される。プリンタ装置は、巻回されたラベル用紙をサーマルヘッド等の印字ヘッドに繰り出すことで、そのラベル用紙の表面に印字を行う。プリンタ装置は、印字後のラベル用紙をカッター装置によって切断することで、商品等の対象物に貼付可能なラベルを発行する。また、プリンタ装置は、印刷が停止された場合、ラベル用紙を印刷時とは逆方向にバックフィードさせて待機することで、次の印刷に備えている。
【0003】
ところで、上述のラベル用紙では、表面に印字を行うことが一般的であるが、裏面側にも印字を行うような構成も想定される。例えば、ラベル用紙の裏面の縁部等の一部の領域に粘着剤を付した場合、粘着剤が付されていない非粘着領域に印字を行うような構成も想定される。この場合、プリンタ装置は、ラベル用紙の表裏面に印字を行うため、表面側から印字を行う印字ヘッド(第1印字ヘッドともいう)と、裏面側から印字を行う印字ヘッド(第2印字ヘッドともいう)とを、ラベル用紙の搬送経路に備えることになる。
【0004】
しかしながら、上述した両面印刷の構成では、バックフィードの制御を不用意に設計すると、バックフィード後にラベル用紙の裏面に付された粘着剤が搬送経路等に張り付いてしまうため、印字の再開時に用紙ジャムが発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、一方の面に粘着剤が付された用紙の両面に印字を行うプリンタ装置において、バックフィードに伴うジャムの発生を抑えることが可能なプリンタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のプリンタ装置は、搬送機構と、第1印字ヘッドと、第1プラテンローラと、第2印字ヘッドと、第2プラテンローラと、切断部と、制御部とを備える。搬送機構は、裏面側の少なくとも一部の領域に粘着剤が付された長尺状の用紙を搬送する。第1印字ヘッドは、正方向に搬送される前記用紙の表面に印字を行う。第1プラテンローラは、前記第1印字ヘッドとの間で前記用紙を挟持可能である。第2印字ヘッドは、前記第1印字ヘッドよりも前記正方向の上流側に配置され、前記正方向に搬送される前記用紙の裏面に印字を行う。第2プラテンローラは、前記第2印字ヘッドとの間で前記用紙を挟持可能である。切断部は、前記第1印字ヘッドよりも前記正方向の下流側に配置され、印字された前記用紙の先端部分を切断する。制御部は、前記印字を停止する場合に、前記搬送機構を制御し、前記先端部分が切断された前記用紙の端面を、前記第1印字ヘッドと前記第1プラテンローラとの当接位置まで前記用紙を逆方向に搬送させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るプリンタ装置の外観斜視図である。
図2図2は、図1のプリンタ装置の筐体を開放した状態を示す図である。
図3図3は、図1のプリンタ装置からカッターユニットを取り外した状態を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るプリンタ装置の内部の構成を示す概略側断面図である。
図5図5は、実施形態に係るラベル用紙の一例を模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態に係るプリンタ装置のハードウェア構成を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るラベル用紙のバックフィード後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るプリンタ装置を詳細に説明する。以下に説明する実施形態では、サーマルプリンタをプリンタ装置の一例として説明する。なお、以下に説明する実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0009】
図1は、本実施形態に係るプリンタ装置1の外観斜視図である。図1に示すように、プリンタ装置1は、右側のケース2と、ケース2の左側に連結されたケース8とを備えている。ケース8の上面には操作表示部3が設けられている。操作表示部3は、表示部4と、操作部5とを備えている。表示部4は、バックライト付きの液晶ディスプレイで構成されるが、その他のタイプの表示デバイスを用いてもよい。操作部5は、電源ボタン等を含む複数の操作ボタン6を備えている。
【0010】
ケース8は、ヒンジ7を中心に回動することで、図2に示すように、筐体(即ち、ケース8)の内部を側面側から大きく開放できる構造となっている。ここで、図2は、図2は、プリンタ装置1の筐体を開放した状態を示す図である。プリンタ装置1は筐体内部に、ラベル用紙20の表裏面に印字を行う第1印字部34、第2印字部35等を備えている。従って、ヒンジ7を中心にしてケース8を回動して上部に上げることで、筐体内部のメンテナンスを容易にできる構造となっている。
【0011】
ケース8の前面には、カッターユニット9が設けられている。カッターユニット9は、後述する切断部37を有し、印字後のラベルを切断する。また、カッターユニット9との間には印字後のラベルを発行するための開口となるラベル発行口10が設けられている。カッターユニット9で切断されたラベルは、ラベル発行口10から発行(排出)される。
【0012】
なお、カッターユニット9は、図3に示すように、ケース8から着脱可能な構成としてもよい。ここで、図3は、図1のプリンタ装置1からカッターユニット9を取り外した状態を示す図である。
【0013】
一方、ケース2には、ケース8に収納される各種ロータ等を駆動するための駆動源(モータ等)や後述する制御部100(図7参照)等が格納される。
【0014】
図4は、プリンタ装置1(ケース8)の内部の構成を示す概略側断面図である。図4に示すように、プリンタ装置1はその筐体内部に、用紙保持部31、引出ローラ32、検出部33、第1印字部34、第2印字部35、インクリボン供給装置36、及び切断部37を備えている。なお、用紙保持部31は、プリンタ装置1(ケース8)の外部に設ける構成としてもよい。
【0015】
用紙保持部31は、ロール状に巻回されたラベル用紙20を保持する軸である。ラベル用紙20は、ライナレス用紙とも呼ばれる台紙なしのラベル用紙であり、一方の面(以下、裏面ともいう)の少なくとも一部の領域に糊等の粘着剤が付されている。
【0016】
図5は、ラベル用紙20の一例を模式的に示す図である。図5(a)はラベル用紙20の表面側を示しており、図5(b)はラベル用紙20の裏面側を示している。
【0017】
ラベル用紙20の表面21側には、熱によって発色する薬剤が塗布されている。つまり、ラベル用紙20の表面は感熱紙として機能するように形成されている。
【0018】
ラベル用紙20の裏面22側には、ブラックマーク221と呼ばれるマークが付されている。ブラックマーク221は、ラベル用紙20の切断位置を示すマークである。つまり、隣接するブラックマーク221で挟まれたラベル用紙20の区画が一枚のラベルに対応する。
【0019】
また、ラベル用紙20の裏面22の一部の領域には粘着剤が付されている。具体的には、粘着剤は、ブラックマーク221によって区画されるラベルの縁部222に付されており、縁部222を除いた中央の領域は粘着剤が付されていない非粘着領域223となっている。縁部222の幅は、特に問わないものとする。例えば、ブラックマーク221に隣接する当該ブラックマーク221と平行な縁部222の幅Lは、後述する第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351との離間距離等に応じて設計してもよい。
【0020】
なお、ラベル用紙20は、図5の構成に限定されるものではない。例えば、ラベル用紙20は、表面21の用紙(感熱紙)と、裏面22の用紙とを縁部222で張り合わせた二層構造や多層構造の用紙としてもよい。また、この場合、例えば、図5(b)中に示す非粘着領域223や非粘着領域223内の領域224をミシン目やシール構造とすることで、ラベル用紙20から剥離可能な構成としてもよい。
【0021】
図4に戻り、用紙保持部31によって保持されたラベル用紙20は、引出ローラ32によって用紙保持部31から引き出される。引出ローラ32は、駆動ローラ321と、受動ローラ322とを有する。駆動ローラ321と受動ローラ322とは対向して配置される。駆動ローラ321は、受動ローラ322とともにラベル用紙20を挟持した状態で回転することでラベル用紙20を搬送する。なお、ラベル用紙20の裏面22に接するローラ(図4では駆動ローラ321)の表面には、粘着剤の粘着量を低減させる粘着量低減処理が施されているものとする。
【0022】
引出ローラ32によって引き出されたラベル用紙20は、搬送経路Aに搬送される。搬送経路Aは、引出ローラ32とラベル発行口10との間の経路を意味する。引出ローラ32によって引き出されたラベル用紙20は、搬送経路Aを経由してラベル発行口10まで搬送される。
【0023】
以下では、搬送経路Aのうち、ラベル用紙20が供給される引出ローラ32側を「上流」、ラベル用紙20が排出されるラベル発行口10側を「下流」ともいう。また、ラベル用紙20をラベル発行口10へ向かう正方向に搬送することを「フィード」、逆方向に搬送することを「バックフィード」と呼ぶ場合がある。
【0024】
搬送経路Aの上流側には、ラベル用紙20の裏面22に付されたブラックマーク221を検出する検出部33が設けられている。検出部33は、例えば、透過型又は反射型の光電センサである。検出部33は、ラベル用紙20に対して光を照射し、ラベル用紙20で反射した光、又はラベル用紙20を透過した光を検出することで、ブラックマーク221を検出する。
【0025】
また、搬送経路Aには、ラベル用紙20の表面21に印字を行うための第1印字部34が設けられている。具体的には、第1印字部34は、搬送経路Aにおいて、検出部33よりも下流に設けられる。第1印字部34は、第1印字ヘッド341と、第1プラテンローラ342とを主に有している。
【0026】
第1印字ヘッド341は、ラベル用紙20の搬送方向と略直交する方向に複数の発熱素子がライン状に配置されたライン型のサーマルヘッドである。第1印字ヘッド341は、発熱素子の発熱によりラベル用紙20の表面21に熱を印加して印字を行うダイレクトサーマル型の印字ヘッドである。
【0027】
第1印字ヘッド341は、図示しないフレームに取り付けられた第1ヘッド保持部343に固定されている。第1印字ヘッド341は、第1ヘッド保持部343により第1プラテンローラ342に対して加圧する方向に付勢される。
【0028】
第1プラテンローラ342は、第1印字ヘッド341と対向する位置に設けられた回転ローラである。第1プラテンローラ342は、第1印字ヘッド341とともにラベル用紙20を挟持した状態で回転することでラベル用紙20を搬送する。なお、ラベル用紙20の裏面22に接する第1プラテンローラ342の表面には、粘着剤の粘着量を低減させる粘着量低減処理が施されているものとする。
【0029】
上記の構成において、第1印字ヘッド341は、後述する制御部100(図6参照)の制御の下、上記した発熱素子を発熱させることで、フィード方向に搬送されるラベル用紙20の表面21に印字を行う。より詳細には、制御部100は、検出部33で検出されたブラックマーク221の検出タイミングや搬送速度等に基づき、第1印字ヘッド341を発熱させることで、ブラックマーク221で区分されるラベル用紙20(ラベル)の表面21に印字を行う。
【0030】
また、搬送経路Aには、ラベル用紙20の裏面22に印字を行うための第2印字部35が設けられている。第2印字部35は、搬送経路Aにおいて、第1印字部34の上流側に設けられる。より具体的には、第2印字部35は、検出部33と第1印字部34との間に設けられる。第2印字部35は、第2印字ヘッド351と、第2プラテンローラ352とを主に有している。
【0031】
第2印字ヘッド351は、ラベル用紙20の搬送方向と略直交する方向に複数の発熱素子がライン状に配置されたライン型のサーマルヘッドである。第2印字ヘッド351は、ラベル用紙20の裏面22に後述するインクリボン40が保持するインクを転写して印字を行う熱転写型の印字ヘッドである。
【0032】
第2印字ヘッド351は、図示しないフレームに回動可能に取り付けられた第2ヘッド保持部353に固定されている。具体的には、第2ヘッド保持部353は、回動軸3531を支点に図中矢印B方向に回動可能に支持されている。
【0033】
また、第2ヘッド保持部353は、滑らかな曲面形状を有する当接部(図中破線部)を有し、当該当接部が図示しないフレームに回転可能に取り付けられたカム3532に当接されている。第2ヘッド保持部353は、カム3532の回転動作に従い、回動軸3531を支点に矢印B方向に回動することで、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352に対して当接及び離反させる。かかる構成により、第2ヘッド保持部353は、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352から離反させるためのヘッドアップ機構を実現するとともに、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352に当接させるためのヘッド当接機構とを実現する。つまり、ヘッドアップ機構が動作すれば第2印字ヘッド351は第2プラテンローラ352から離間し、ヘッド当接機構が動作すれば第2印字ヘッド351は第2プラテンローラ352の方向に付勢されて当接する。
【0034】
第2プラテンローラ352は、第2印字ヘッド351と対向する位置に設けられた回転ローラである。第2プラテンローラ352は、第2印字ヘッド351とともにラベル用紙20及びインクリボン40を挟持した状態で回転することで、ラベル用紙20を搬送する。
【0035】
インクリボン供給装置36は、リボン保持軸361と、リボン巻取軸362とを主に有している。リボン保持軸361は、未使用のインクリボン40をロール状に巻装している。リボン巻取軸362は、印字後のインクリボン40を巻き取る軸である。リボン巻取軸362は、図示しないモータによって、第2プラテンローラ352によるインクリボン40の搬送速度と略同等又は当該搬送速度よりも速い速度でインクリボン40を巻き取るように、インクリボンを巻取方向(図5では時計回り方向)に回転する。
【0036】
また、インクリボン供給装置36は、リボン保持軸361から引き出されたインクリボン40を案内するガイドシャフト(図示せず)を備えている。ガイドシャフトは、リボン保持軸361とリボン巻取軸362との間のインクリボン40の搬送経路に沿って設けられている。このように設けられたガイドシャフトにインクリボン40が架け渡される。
【0037】
印字前のインクリボン40は、第2印字ヘッド351と第2プラテンローラ352とが当接する位置(即ち、印字位置)に達し、第2印字ヘッド351により同時に挟持されているラベル用紙20の裏面22に対してインクの転写、即ち印字が行われる。転写後のインクリボン40は、リボン巻取軸362に巻き取られ回収される。
【0038】
上記の構成において、第2印字ヘッド351は、後述する制御部100(図6参照)の制御の下、上記した発熱素子を発熱させることで、フィード方向に搬送されるラベル用紙20の裏面22に印字を行う。より詳細には、制御部100は、検出部33で検出されたブラックマーク221の検出タイミングや搬送速度に基づき、第2印字ヘッド351の発熱を制御することで、ラベル用紙20の裏面22に設けられた非粘着領域223に印字を行う。また、制御部100は、ヘッドアップ機構及びヘッド当接機構を動作させることで、印字のタイミングで第2印字ヘッド351が第2プラテンローラ352に当接するよう制御する。
【0039】
また、搬送経路Aには、印字が完了したラベル用紙20を切断するための切断部37が設けられる。具体的には、切断部37は、搬送経路Aにおいて、第1印字部34の下流であってラベル発行口10の手前側に設けられる。
【0040】
切断部37は、搬送経路Aを挟んで対向する可動刃371と固定刃372とを備えた所謂ギロチン式の切断機構である。切断部37は、後述する制御部100の制御の下、固定刃372に対して可動刃371を移動させることで、可動刃371と固定刃372との間に挟んだラベル用紙20の先端部分を切断する。より詳細には、制御部100は、ブラックマーク221の位置でラベル用紙20を切断させる。そして、切断部37で切断されたラベル用紙20の先端部分(ラベル)は、ケース8とカッターユニット9との間隙に設けられたラベル発行口10から排出される。なお、可動刃371及び固定刃372の表面には、粘着剤の粘着量を低減させる粘着量低減処理が施されているものとする。
【0041】
続いて、図4を用いて、上述した第1印字部34と第2印字部35との位置関係について説明する。
【0042】
図4に示すように、本実施形態のプリンタ装置1では、筐体内におけるインクリボン供給装置36のボリューム及び収容位置を考慮し、第1印字部34の上流側に第2印字部35を配置している。
【0043】
また、第1印字部34の第1プラテンローラ342と、第2印字部35の第2プラテンローラ352とは、搬送経路Aを略S字状に屈曲させる位置に配置されている。
【0044】
より具体的には、第2プラテンローラ352は、引出ローラ32から搬送されるラベル用紙20に表面21側から当接し、第1プラテンローラ342は、第2プラテンローラ352から搬送されるラベル用紙20に裏面22側から当接することで、搬送経路Aを略S字状に屈曲させる。そして、第1プラテンローラ342と第2プラテンローラ352との間の搬送経路Aの傾斜が、他の区間の搬送経路Aの傾斜よりも急峻となるよう第1プラテンローラ342と第2プラテンローラ352とが配置されている。
【0045】
上記の構成とすることで、第1印字部34を第2プラテンローラ352と干渉することなく配置することができる。また、同様に、第2印字部35を第2プラテンローラ352と干渉することなく配置することができる。また、これにより、搬送経路Aにおける第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351とを、より接近させた状態で配置することができる。
【0046】
ここで、第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351との間の離間距離は、小さくすることが好ましく、ラベル用紙20の仕様等に応じて決定してもよい。例えば、図5のラベル用紙20を用いる場合、第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351との離間距離は、ラベル用紙20の搬送方向における、ブラックマーク221から縁部222までの距離、つまり図5で説明した幅Lに準じた値とすることが好ましい。本実施形態のプリンタ装置1では、第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351との離間距離は、幅Lと略同等の長さで構成されているものとする。
【0047】
次に、図6を参照して、プリンタ装置1のハードウェア構成について説明する。図6は、プリンタ装置1のハードウェア構成を示す図である。
【0048】
図6に示すように、プリンタ装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103を備えている。
【0049】
CPU101は、プロセッサの一例であり、プリンタ装置1の制御主体となる。ROM102は、各種プログラムを記憶する。RAM103は、プログラムや各種データを展開する。CPU101、ROM102、及びRAM103は、バス等を介して接続されている。CPU101とROM102とRAM103は、制御部100を構成する。すなわち、制御部100は、CPU101がROM102や後述する記憶部104に記憶されRAM103に展開された制御プログラム1041に従って動作することによって、プリンタ装置1に係る制御処理を実行する。
【0050】
記憶部104は、電源を切っても記憶情報が保持されるHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。記憶部104は、プリンタ装置1の動作を制御するための制御プログラム1041を記憶する。また、記憶部104は、プリンタ装置1の動作に係る各種の設定情報を記憶する。
【0051】
また、制御部100は、バス等を介して、データの入出力を制御するコントローラ105に接続される。コントローラ105には、上述した表示部4、操作部5、検出部33、第1印字ヘッド341、及び第2印字ヘッド351等の他、搬送モータ106、ヘッドアップモータ107、及び切断部モータ108等が接続される。
【0052】
ここで、搬送モータ106は、引出ローラ32(駆動ローラ321)や、第1プラテンローラ342、第2プラテンローラ352等、ラベル用紙20の搬送に係る各種ローラの駆動源である。搬送モータ106は、例えばステッピングモータ等であり、上述した各種ローラ等とともに、ラベル用紙20の搬送機構を実現する。なお、搬送モータ106は、ローラ毎に設けられてもよいし、複数のローラで共用する構成としてもよい。
【0053】
コントローラ105は、制御部100の制御の下、搬送モータ106の動作を制御することで、ラベル用紙20を所定の搬送速度でフィードさせたり、バックフィードさせたりする。なお、上述したローラ以外の動作(例えば、リボン巻取軸362の回転動作)の駆動源を搬送モータ106に含めてもよい。
【0054】
ヘッドアップモータ107は、カム3532の回転動作の駆動源である。コントローラ105は、制御部100の制御の下、ヘッドアップモータ107の動作、つまりヘッドアップ機構及びヘッド当接機構の動作を制御することで、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352から離間させたり、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352に当接させたりする。
【0055】
切断部モータ108は、切断部37の可動刃371を固定刃372に移動させるための駆動源である。コントローラ105は、制御部100の制御の下、切断部モータ108の動作を制御することで、可動刃371を固定刃372に移動させたり、可動刃371を固定刃372から離間させたりする。
【0056】
また、制御部100は、バス等を介して、通信部109と接続される。通信部109は、図示しない通信回線を介して、情報処理装置等の外部装置と通信を行う。通信部109は、外部装置からラベル用紙20の表裏面に印字する印字データを取得する。なお、通信回線は、有線の通信回線であっても無線の通信回線であってもよい。
【0057】
上記構成のプリンタ装置1において、制御部100は、制御プログラム1041と協働することで、プリンタ装置1の各部を制御し、ラベル用紙20の印字を行う。
【0058】
例えば、制御部100は、操作部5を介してラベルの印字が指示されると、コントローラ105を介して搬送モータ106を駆動させることで、受動ローラ322、第1印字ヘッド341、及び第2印字ヘッド351をフィード方向に回転させる。これにより、用紙保持部31に巻回されたラベル用紙20が搬送経路Aへと供給(搬送)される。
【0059】
ラベル用紙20の搬送に伴い、検出部33でブラックマーク221が検出されると、制御部100は、その検出信号を、コントローラ105を介して受け付ける。次いで、制御部100は、予め定められたラベル用紙20の搬送速度や、搬送経路Aにおける第1印字部34、第2印字部35及び切断部37の配置位置から、第1印字部34及び第2印字部35で印字を行う印字タイミングや、切断部37でラベル用紙20を切断する切断タイミングを特定する。
【0060】
続いて、制御部100は、コントローラ105を介して、第1印字ヘッド341の発熱素子に電圧を印加することで、特定した印字タイミングに基づき、表面用に印字データに応じた画像(文字列等)をラベル用紙20の表面21に印字させる。また、制御部100は、コントローラ105を介して、第2印字ヘッド351の発熱素子に電圧を印加することで、特定した印字タイミングに基づき、裏面用の印字データに応じた画像(文字列等)をラベル用紙20の裏面22に印字させる。なお、制御部100は、第2印字ヘッド351で印字を行わない間、コントローラ105を介してヘッドアップモータ107を駆動し、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352から離間させることで、インクリボン40が不用意に消費されないように制御する。
【0061】
フィードされたラベル用紙20が切断部37に達すると、制御部100は、特定した切断タイミングで切断部モータ108を駆動させることで、ラベル用紙20をブラックマーク221の位置で切断する。これにより、制御部100は、表裏面に文字列等を印字したラベルをラベル発行口10から発行する。
【0062】
そして、制御部100は、操作部5を介してラベル印字の停止が指示されるまでの間、上述したラベル発行動作を継続して行い、ラベル印字の停止が指示されると、ラベル用紙20の搬送(フィード)を停止する。なお、制御部100は、ラベル用紙20の搬送を停止した際も、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352から離間させる。
【0063】
ところで、プリンタ装置1では、ラベル印字を停止させた場合、再開後のラベル印字に備えるため、ラベル用紙20をバックフィードさせる制御を行う。しかしながら、本実施形態のように、一面に粘着剤が付されたラベル用紙20の裏面22に印字を行う構成では、バックフィードの制御を不用意に設計すると、ラベル用紙20の粘着剤が搬送経路Aに張り付いてしまい、用紙ジャムが発生する可能性がある。例えば、プリンタ装置1では、ラベル用紙20の端面が、第1プラテンローラ342と第2プラテンローラ352との間にバックフィードされると、重力方向に降下したラベル用紙20の裏面22の粘着剤が第2印字ヘッド351やインクリボン40に張り付く可能性がある。
【0064】
そこで、本実施形態のプリンタ装置1では、ラベル印字の停止が指示されると、制御部100は、図7に示すように。切断部37で切断されたラベル用紙20の端面を、第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との当接位置までバックフィードさせる。
【0065】
ここで、図7は、実施形態に係るラベル用紙20のバックフィード後の状態を示す図である。図7に示すように、ラベル用紙20は、制御部100の制御により、その端面が第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との当接位置までバックフィードされる。
【0066】
これにより、バックフィードされたラベル用紙20の端面は、第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との間に挟持されることになる。また、ラベル用紙20の他方の端部側は、駆動ローラ321と受動ローラ322との間で挟持されることになる。つまり、バックフィードされたラベル用紙20は、駆動ローラ321及び受動ローラ322と、第1印字ヘッド341及び第1プラテンローラ342との間に張った状態で保持される。
【0067】
したがって、本実施形態のプリンタ装置1では、ラベル用紙20がバックフィードされた場合であっても、ラベル用紙20の裏面22の粘着剤が搬送経路Aに張り付くことを防ぐことができ、用紙ジャムの発生を抑えることができる。
【0068】
また、ラベル用紙20をバックフィードさせる間、制御部100は、図7に示すように、カム3532を開転させることで、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352から離間された状態で保持する。そのため、本実施形態のプリンタ装置1では、インクリボン40がラベル用紙20の裏面22の粘着剤に接触することを防止することができるため、用紙ジャムの発生やリボンジャムの発生を抑えることができる。なお、図7の状態は、ラベル用紙20をバックフィードさせた後も、印字が再開されるまで保持される。
【0069】
また、上述したように、第1印字ヘッド341と第2印字ヘッド351との離間距離は、ラベル用紙20の裏面22のブラックマーク221から縁部222までの長さ(幅L)と略同等に構成されている。したがって、本実施形態のプリンタ装置1では、印字の再開時に、ラベル用紙20のバックフィードを追加で行うことなく、第2印字ヘッド351を第2プラテンローラ352に当接させることで非粘着領域223への印字を開始することができるため、印字処理の効率化を図ることができる。
【0070】
以上説明した通り、本実施形態のプリンタ装置1は、裏面22側の少なくとも一部の領域に粘着剤が付された長尺状のラベル用紙20を搬送する搬送機構(搬送モータ106等)と、フィード方向に搬送されるラベル用紙20の表面21に印字を行う第1印字ヘッド341と、第1印字ヘッド341との間でラベル用紙20を挟持可能な第1プラテンローラ342と、第1印字ヘッド341よりもフィード方向の上流側に配置され、フィード方向に搬送されるラベル用紙20の裏面22に印字を行う第2印字ヘッド351と、第2印字ヘッド351との間でラベル用紙20を挟持可能な第2プラテンローラ352と、第1印字ヘッド341よりもフィード方向の下流側に配置され、印字されたラベル用紙20用紙の先端部分を切断する切断部37と、印字を停止する場合に、搬送機構を制御し、切断されたラベル用紙20の端面を、第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との当接位置までラベル用紙20をバックフィードさせる制御部100とを備える。
【0071】
これにより、本実施形態のプリンタ装置1は、ラベル用紙20の端面を第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との間で保持することができるため、バックフォード後のラベル用紙20が搬送経路Aに張り付いてしまう事態を防ぐことができる。したがって、本実施形態のプリンタ装置1は、バックフィードに伴うジャムの発生を抑えることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、ライナレス用紙の一例であるラベル用紙20に印字を行うプリンタ装置1を説明した。しかしながら、プリンタ装置1は、ラベル用紙20以外のライナレス用紙、つまり一方の面に粘着剤が付された用紙の両目に印字を行うプリンタ装置であってもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、搬送経路Aの下流側にダイレクトサーマル型の第1印字部34を配置し、搬送経路Aの上流側にインクリボン40を用いる熱転写タイプの第2印字部35を配置したプリンタ装置1を説明した。しかしながら、第2印字部35を上流側に配置可能な構成であれば、第1印字部34と第2印字部35との配置順を入れ替れかえたプリンタ装置1であってもよい。
【0075】
なお、この場合においても、制御部100は、ラベル用紙20の端面を第1印字部34の第1印字ヘッド341と第1プラテンローラ342との当接位置までバックフィードさせるものとする。これにより、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0076】
上述の実施形態のプリンタ装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0077】
また、実施形態のプリンタ装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、実施形態のプリンタ装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0078】
また、実施形態のプリンタで実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…プリンタ、10…ラベル発行口、20…ラベル用紙、31…用紙保持部、32…引出ローラ、321…駆動ローラ、322…受動ローラ、33…検出部、34…第1印字部、341…第1印字ヘッド、342…第1プラテンローラ、343…第1ヘッド保持部、35…第2印字部、351…第2印字ヘッド、352…第2プラテンローラ、353…第2ヘッド保持部、3531…回動軸、3532…カム、36…インクリボン供給装置、361…リボン保持軸、362…リボン巻取軸、37…切断部、371…可動刃、372…固定刃、40…インクリボン、100…制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【文献】特開2013-52605号公報
図1
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図5
図6
図7