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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】棟間ブリッジ架設工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20240404BHJP
   E01D 18/00 20060101ALI20240404BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D18/00 Z
E04G21/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020161153
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054133
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 逸人
(72)【発明者】
【氏名】棟口 和幸
(72)【発明者】
【氏名】町田 幸隆
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047525(JP,A)
【文献】特開平10-280327(JP,A)
【文献】特開平04-089938(JP,A)
【文献】特開2017-197960(JP,A)
【文献】特開平08-068206(JP,A)
【文献】特開平05-009981(JP,A)
【文献】特開昭59-163240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 18/00
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の棟と第2の棟との間にブリッジを架設する棟間ブリッジ架設工法であって、
前記第1の棟に設置された第1のジャッキ装置により前記ブリッジの一端側を吊り、前記第2の棟に設置された第2のジャッキ装置により前記ブリッジの他端側を吊り、前記第1のジャッキ装置と前記第2のジャッキ装置とを同時に用いて前記ブリッジを所定の高さまで吊り上げる第1の工程と、
前記所定の高さまで吊り上げられた前記ブリッジを、前記第1の棟と前記第2の棟との間に固定する第2の工程と、
を含み、
前記ブリッジは複数のブロックで構成され、
前記棟間ブリッジ架設工法は、前記第1の工程の前に、前記各ブロックを接続して前記ブリッジを組み立てる第3の工程をさらに含み、
前記各ブロックは地上に載置され、
前記第1の棟と前記第2の棟との間に、前記所定の高さより低い建物が設置され、
前記棟間ブリッジ架設工法は、
前記第3の工程の前に、地上に載置された前記各ブロックをクレーンにより前記建物の屋上に吊り上げ、第1の位置に仮置きする第4の工程と、
前記第1の位置に仮置きされた前記各ブロックを、前記第3の工程を行うために前記建物の屋上の第2の位置に移動する第5の工程と、
をさらに含むことを特徴とする棟間ブリッジ架設工法。
【請求項2】
請求項に記載の棟間ブリッジ架設工法において、
前記建物の屋上には、前記各ブロックを移動させるための移動装置が設置され、
前記第5の工程では、前記移動装置を用いて前記第1の位置から前記第2の位置まで前記各ブロックを移動させることを特徴とする棟間ブリッジ架設工法。
【請求項3】
請求項に記載の棟間ブリッジ架設工法において、
前記第1の棟および前記第2の棟は、それぞれ石炭を蓄えるバンカを設置するための鉄骨構造物であり、
前記ブリッジは、前記石炭を搬送するための搬送装置を備えた燃料搬送ギャラリーであり、
前記建物は、電気室であり、
前記移動装置は、レールである、
ことを特徴とする棟間ブリッジ架設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棟と棟の間にブリッジを架設する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電プラントにおいて、バンカに蓄えられた石炭は、ベルトコンベアによりミルに搬送される。搬送された石炭はミルにより微粉炭に粉砕され、ボイラによって燃焼される。電力需要の増加等の理由により、既存のプラント内にボイラ建屋を増設する場合がある。この際、既設のボイラ建屋から石炭を新設するボイラ建屋に搬送するために、ボイラ建屋間にブリッジ(燃料搬送ギャラリー)を架設する場合がある。
【0003】
ボイラ建屋などの棟間にブリッジを架設する工法として、例えば特許文献1には、「第1の棟にブリッジを配置し、第1の棟に隣接する第2の棟側にブリッジを片持ち支持しつつ送り出し、ブリッジを第1の棟および第2の棟に架設する工法であって、ブリッジを、送り出し方向で複数のブロックに分割し、送り出し方向の先端となるブロックを吊り上げて第1の棟に予め配置した前手延べ機に接続し、先端のブロックを前手延べ機とともに送り出し方向に移動させつつ、残りのブロックを先端側から順に吊り上げてブロック同士を繋ぎ合わせることにより、前手延べ機を第1の棟と第2の棟の間となる位置に浮かせた状態でブリッジを組み上げる工法」が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-047525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の工法では、前手延べ機を準備する必要があるうえ、ブリッジを片持ち支持するため、ブリッジのたわみ量の管理が必要となる。そのため、特許文献1に記載の工法では、ブリッジの架設工事が大掛かりで複雑になるといった課題がある。また、ブリッジの重量次第では、大型のクレーンを別途準備する必要があるが、既設のプラントのスペースの関係上、大型のクレーンの設置が困難な場合もある。そのため、ブリッジの架設工事を容易に行える工法が求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、棟間にブリッジを架設する工事を容易に行えるブリッジの架設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、第1の棟と第2の棟との間にブリッジを架設する棟間ブリッジ架設工法であって、前記第1の棟に設置された第1のジャッキ装置により前記ブリッジの一端側を吊り、前記第2の棟に設置された第2のジャッキ装置により前記ブリッジの他端側を吊り、前記第1のジャッキ装置と前記第2のジャッキ装置とを同時に用いて前記ブリッジを所定の高さまで吊り上げる第1の工程と、前記所定の高さまで吊り上げられた前記ブリッジを、前記第1の棟と前記第2の棟との間に固定する第2の工程と、を含み、前記ブリッジは複数のブロックで構成され、前記棟間ブリッジ架設工法は、前記第1の工程の前に、前記各ブロックを接続して前記ブリッジを組み立てる第3の工程をさらに含み、前記各ブロックは地上に載置され、前記第1の棟と前記第2の棟との間に、前記所定の高さより低い建物が設置され、前記棟間ブリッジ架設工法は、前記第3の工程の前に、地上に載置された前記各ブロックをクレーンにより前記建物の屋上に吊り上げ、第1の位置に仮置きする第4の工程と、前記第1の位置に仮置きされた前記各ブロックを、前記第3の工程を行うために前記建物の屋上の第2の位置に移動する第5の工程と、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、棟間にブリッジを架設する工事を容易に行える。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ボイラ周辺のエリア配置図。
図2図1に示す電気室の屋上の平面図。
図3図1のA矢視図。
図4】燃料搬送ギャラリーの架設工事の作業手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は火力発電プラントにおけるボイラ周辺のエリア配置図である。図1において、ボイラ1、バンカ鉄骨21、および電気室3は既設の設備である。この設備において、ボイラ2およびバンカ鉄骨22を増設することに伴って、燃料搬送ギャラリー7(ブリッジ)をバンカ鉄骨21(第1の棟)とバンカ鉄骨22(第2の棟)との間に架設する工事を行う必要がある。なお、燃料搬送ギャラリー7は、内部にベルトコンベア等の搬送装置が設けられており、この搬送装置を駆動することで燃料である石炭を搬送する。また、バンカ鉄骨21,22は、石炭を蓄えるためのバンカ23,24を支持するための鉄骨構造物である(図3参照)。
【0012】
図1に示すように、ボイラ1およびバンカ鉄骨21と、ボイラ2およびバンカ鉄骨22との間には低層の建物である電気室3が設置されており、電気室3の近傍にはクレーン5が設置されている。クレーン5の近傍には、地上の空きスペースである作業場50が確保されており、この作業場50には、燃料搬送ギャラリー7を構成するギャラリーブロック7A,7B,7C(ブロック)が載置されている。
【0013】
電気室3の屋上には、ギャラリーブロック7A,7B,7Cを移動させる移動装置の一例であるレール10,11が設置されている。なお、移動装置はレール10,11以外のものであっても良い。
【0014】
図2は電気室3の屋上の平面図である。図2に示すように、電気室3の屋上には、横レール10と、横レール10の端部において横レール10と直交する縦レール11と、が敷設されている。なお、図示しないが、横レール10および縦レール11は、電気室3に設置された土台(レール用基礎)に設置されている。横レール10および縦レール11は、ギャラリーブロック7A,7B,7Cの移動が可能な程度のレール幅を有している。
【0015】
なお、図2において、横レール10の一端側は、ギャラリーブロック7A,7B,7Cを仮置きする仮置き場15(第1の位置)であり、縦レール11はギャラリーブロック7A,7B,7Cを組み立てるための組立場16(第2の位置)である。
【0016】
図3図1に示す設備をA方向から見た矢視図である。図3に示すように、左右に一対のバンカ鉄骨21,22が設置されており、両者の間に電気室3が設置されている。そして、電気室3の屋上で組み立てられた燃料搬送ギャラリー7は、電気室3の屋上から所定の高さまで吊り上げられ、バンカ鉄骨21,22の頂部の取合部25,26に固定される。
【0017】
次に、燃料搬送ギャラリー7の架設工法の詳細について、図4を参照しつつ、図1図3も適宜用いて説明する。図4は燃料搬送ギャラリー7の架設工事の作業手順を示すフローチャートである。図4に示すように、燃料搬送ギャラリー7の架設工事は、作業場50での作業と、電気室3の屋上での作業と、バンカ鉄骨21,22の頂部での作業とに分かれて行われる。
【0018】
作業者は、作業場50(地上)において、燃料搬送ギャラリー7を構成するギャラリーブロック7A,7B,7Cを組み立てる(作業1)。なお、本実施形態において、ギャラリーブロック7A,7B,7Cの数は3つであるが、この数は任意で良い。
【0019】
作業者は、電気室3の屋上に、横レール10および縦レール11を載置するための土台(図示せず)を設置する(作業2)。
【0020】
作業者は、縦レール11を支持するための架構ブロック41,42を電気室3の左右の側壁に設置する(作業3)。なお、電気室3の屋上が十分に広く、縦レール11の全長を電気室3の屋上に設置できる場合には、架構ブロック41,42を設置しなくても良い。
【0021】
作業者は、横レール10および縦レール11を土台の上に設置する(作業4)。
【0022】
作業者は、既設のクレーン5を用いて、作業場50に載置してあるギャラリーブロック7Aを吊り上げて、図1の矢印W1,W2の方向に移動させ、電気室3の仮置き場15に仮置きする(作業5/第4の工程)。そして、作業者は、横レール10を用いてギャラリーブロック7Aを図1の矢印W3の方向に移動させた後、縦レール11を用いて矢印W4の方向に移動させる。こうして、ギャラリーブロック7Aを組立場16に配置する(作業6/第5の工程)。この作業をギャラリーブロック7B,7Cについても同様に行う(作業7)。
【0023】
なお、作業7において、作業者は、ギャラリーブロック7Cを矢印W5の方向に移動させ、ギャラリーブロック7Bをギャラリーブロック7Aとギャラリーブロック7Cの間に移動させる。そうすると、組立場16である縦レール11上に、ギャラリーブロック7A、ギャラリーブロック7B、ギャラリーブロック7Cが一列に並ぶ。
【0024】
この状態で、作業者は、ギャラリーブロックAとギャラリーブロックBとギャラリーブロックCとを接続し、外壁を取り付けて燃料搬送ギャラリー7を組み立てる(作業8/第3の工程)。
【0025】
作業者は、図3に示すように、バンカ鉄骨21,22の頂部に、ジャッキ装置35,36(第1のジャッキ装置、第2のジャッキ装置)を取り付けるための仮設リフティングビーム31,32を設置する(作業9)。
【0026】
作業者は、仮設リフティングビーム31,32にジャッキ装置35,36を設置し、バンカ鉄骨21,22の頂部に燃料搬送ギャラリー7を取り付けるための取合部25,26を設置する(作業10)。
【0027】
作業者は、ジャッキ装置35のワイヤ37を下降させて、燃料搬送ギャラリー7の一端部に固定し、ジャッキ装置36のワイヤ38を下降させて、燃料搬送ギャラリー7の他端部に固定する。そして、作業者は、燃料搬送ギャラリー7の水平状態を保持しながら、ジャッキ装置35とジャッキ装置36とを同時に駆動して、燃料搬送ギャラリー7を電気室3の屋上からバンカ鉄骨21,22の頂部へとゆっくり吊り上げる(作業11/第1の工程)。次いで、作業者は、燃料搬送ギャラリー7の両端部を取合部25,26にそれぞれ固定し、バンカ鉄骨21,22間の燃料搬送ギャラリー7の架設工事が完了する(作業11/第2の工程)。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料搬送ギャラリー7の架設工法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0029】
(1)ジャッキ装置35,36を用いて燃料搬送ギャラリー7を吊り上げる工法であるため、別途、大型のクレーンを準備する必要がない。そのため、大掛かりな架設工事は不要である。
【0030】
(2)ジャッキ装置35,36を用いて燃料搬送ギャラリー7を吊り上げる工法であるため、特許文献1に記載の工法のように燃料搬送ギャラリー7を片持ちする必要がない。そのため、架設工事が容易である。
【0031】
(3)作業場50でギャラリーブロック7A,7B,7Cをブロック単位で組み立てる工法であるため、既設のクレーン5でギャラリーブロック7A,7B,7Cの吊り上げが可能となり、架設工事が容易である。
【0032】
(4)電気室3の屋上のスペースを使用して燃料搬送ギャラリー7を組み立てる工法であるため、地上に燃料搬送ギャラリー7を組み立てるための大きなスペースを確保する必要がない。そのため、本実施形態に係る工法は、既設のプラントにボイラ建屋を増設する場合に特に使い勝手が良い。
【0033】
(5)電気室3の屋上に設置されたレール10,11を用いてギャラリーブロック7A,7B,7Cを移動できるため、作業効率が向上する。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0035】
例えば、電気室3がバンカ鉄骨21,22間に設置されていない場合や、バンカ鉄骨21,22間に燃料搬送ギャラリー7を組み立てるスペースが十分に確保されている場合には、そのスペースにおいて、ギャラリーブロック7A,7B,7Cを接続して燃料搬送ギャラリー7を組み立て、外壁を取り付けた後、ジャッキ装置35,36により燃料搬送ギャラリー7を吊り上げる工法を採用しても良い。
【符号の説明】
【0036】
1,2 ボイラ
3 電気室(建物)
5 クレーン
7 燃料搬送ギャラリー(ブリッジ)
7A,7B,7C ギャラリーブロック(ブロック)
10 横レール(移動装置)
11 縦レール(移動装置)
15 仮置き場(第1の位置)
16 組立場(第2の位置)
21,22 バンカ鉄骨(第1の棟、第2の棟)
23,24 バンカ
25,26 取合部
31,32 仮設リフティングビーム
35,36 ジャッキ装置(第1のジャッキ装置、第2のジャッキ装置)
37,38 ワイヤ
41,42 架構ブロック
50 作業場
図1
図2
図3
図4