(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】回収容器判定装置
(51)【国際特許分類】
F17D 5/06 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F17D5/06
(21)【出願番号】P 2020163641
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】木村 真貴
(72)【発明者】
【氏名】五味 保城
(72)【発明者】
【氏名】金澤 一弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012825(JP,A)
【文献】特開平08-068498(JP,A)
【文献】特開2004-132662(JP,A)
【文献】特開2005-083475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0097098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収容器に回収される気体の単位時間当たりの流量を計測する流量計測部と、
前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示する表示部と、
前記流量計測部及び前記表示部の駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、パージの判定中に前記流量計測部が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合に、前記表示部に前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示させる、ことを特徴とする回収容器判定装置。
【請求項2】
気体の圧力を計測する圧力計測部を更に備え、
前記制御部は、パージの判定中に前記流量計測部が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下であって、前記圧力計測部が計測する気体の負圧の絶対値が所定値以下である場合に、前記表示部に前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示させる、ことを特徴とする請求項1に記載の回収容器判定装置。
【請求項3】
気体の流路を遮断する遮断部を備え、
前記制御部は、前記表示部に前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示させたと同時又はその後に前記遮断部に前記気体の流路を遮断させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回収容器判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収容器判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、残留ガス取出部の外形に対応した内径の開口を有する容器と、ソケットレンチと、その容器外部に配置されてその容器内の残留ガスの全ガス量を十分に回収できる活性炭充填容器と、その容器に配置された圧力計と、を備えるガス放出防止用器具が開示されている(例えば特許文献1参照)。この構成では、圧力計により残留ガスの圧力を計測して、残留ガスの活性炭充填容器への吸引状況を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の活性炭充填容器(回収容器)では、パージ可能な気体のおおよその容量は、確認できるものの、パージ可能な気体の容量が尽きるタイミングまでを正確に把握することは難しい。また、パージ途中でパージ可能な気体の容量が尽きた場合には、見た目にはそのタイミングの判断が難しく、パージの作業を完了させることができないにも関わらずパージの作業を継続させてしまう可能性もある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、作業者が、回収容器内でパージ可能な気体の容量が尽きるタイミングを従来よりも正確に把握することができる回収容器判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回収容器判定装置は、回収容器に回収される気体の単位時間当たりの流量を計測する流量計測部と、前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示する表示部と、前記流量計測部及び前記表示部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、パージの判定中に前記流量計測部が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合に、前記表示部に前記回収容器によるパージの完了が不可であることを表示させる、ことを特徴とする。
【0007】
この回収容器判定装置によれば、パージの判定中に流量計測部が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合には、既に回収容器が多量の気体を吸収してしまっている可能性が高い。そのため、作業者が、回収容器内でパージ可能な気体の容量が尽きるタイミングを従来よりも正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業者が、回収容器内でパージ可能な気体の容量が尽きるタイミングを従来よりも正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係る回収容器判定装置を示す概略図であって、全てのバルブを開状態に操作した様子を示す概略図である。(b)本発明の一実施形態に係る回収容器判定装置を示す概略図であって、一部のバルブを閉状態に操作した様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る回収容器判定装置1を示す概略図であって、全てのバルブ61~66を開状態に操作した様子を示す概略図である。
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る回収容器判定装置1を示す概略図であって、一部のバルブ61~64,66を閉状態に操作した様子を示す概略図である。
図1(a)及び
図1(b)に示す回収容器判定装置1は、吸着回収容器10(回収容器)と、パージ判定装置20と、圧力計30と、ガスメータ40と、複数の配管51~55と、複数のバルブ61~66と、を備える。
【0012】
吸着回収容器10は、吸着剤が入った容器であって、複数の配管51~55内に溜まった気体を除去するパージ作業のときに、パージされた気体を回収する容器である。ここでの吸着回収容器10は、複数の配管51~55内の気体のうち特にエア(空気)を除去するエアパージを目的としているものの、実際には、同時に複数の配管51~55内のガスも吸着することになる。また、吸着回収容器10は、気体を吸収する負圧(負の圧力)を計測する圧力計測部11を有する。
【0013】
パージ判定装置20は、流路21(気体の流路)と、電磁弁22(遮断部)と、流量計測部26と、表示部27と、制御部28と、を有する。
流路21は、パージ判定装置20の筐体20Aの内部に形成されて気体を流す流路である。
電磁弁22は、流路21の中に配置され、電磁石と弁とを組み合わせて電気をON、OFFすることにより流路21を開閉して気体を流したり止めたりする弁である。
【0014】
流量計測部26は、流路21を通過する気体の単位時間当たりの流量を計測することにより、吸着回収容器10に回収される気体の単位時間当たりの流量を計測するものである。
表示部27は、気体の単位時間当たりの流量が所定値よりも多い場合には、パージを完了まで続けることができるとして、『O』という文字を表示する。製造者は、予め『O』という文字を、吸着回収容器10によるパージを完了まで続けることができることを意味するものとして設定している。これに対して、表示部27は、気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合には、パージの完了が不可であるとして、『Q』という文字を表示する。製造者は、予め『Q』という文字を、吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを意味するものとして設定している。
【0015】
制御部28は、電磁弁22、流量計測部26、圧力計測部11及び表示部27の駆動を制御するものである。制御部28は、パージの判定中に流量計測部26が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合に、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させる。例えば、パージの途中から単位時間当たりの気体の流量が所定値以下に減少した場合には、気体の流れがあるのでパージが可能な状態にあると言えるが、吸着回収容器10による気体の吸着力が弱まっており、もうすぐ吸着回収容器10の気体容量が尽きる。従って、このような場合に対処するために、制御部28は、表示部27に、吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させ、作業者による吸着回収容器10の交換を促す機能を有する。
【0016】
また、制御部28は、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させたと同時に電磁弁22に流路21を遮断させる。なお、制御部28は、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させた後に電磁弁22に流路21を遮断させても良い。
【0017】
圧力計30は、パージの作業前と作業後に、複数の配管51~55内の気密性を検査するときに用いる計測器である。圧力計30としては、例えばマノメータが用いられる。
ガスメータ40は、ガスの消費量を計測する計測器である。
【0018】
複数の配管51~55は、吸着回収容器10、パージ判定装置20、圧力計30、ガスメータ40、ガス供給側(不図示)、及び需要者側(不図示)の間を接続するために用いられている。配管51は、上流側がガス供給側となり、下流端部がガスメータ40の入口41に接続されている。配管52は、上流端部がガスメータ40の出口42に接続され、配管52の下流側が需要者側となっている。
【0019】
配管53は、上流端部が配管52の分岐点Aに接続され、下流端部がパージ判定装置20の流路21に接続されている。配管54は、上流端部がパージ判定装置20の流路21に接続され、下流端部が吸着回収容器10に接続されている。配管55は、上流端部が配管53の分岐点Bに接続され、下流端部が圧力計30に接続されている。
【0020】
バルブ61は、配管51に設けられており、持ち手61aの長手方向を配管51が延びる方向に操作する(
図1(a)参照)ことで配管51を開状態とし、持ち手61aの長手方向を配管51が延びる方向と直交する方向に操作する(
図1(b)参照)ことで配管51を閉状態とする。
バルブ62,63は、配管53に設けられており、持ち手62a,63aの長手方向を配管53が延びる方向に操作する(
図1(a)参照)ことで配管53を開状態とし、持ち手62a,63aの長手方向を配管53が延びる方向と直交する方向に操作する(
図1(b)参照)ことで配管53を閉状態とする。バルブ62は、配管53から配管55へと分岐する分岐点Bよりも上流に配置され、バルブ63は分岐点Bよりも下流に配置されている。
バルブ64は、パージ用バルブであり、配管54に設けられており、持ち手64aの長手方向を配管54が延びる方向に操作する(
図1(a)参照)ことで配管54を開状態とし、持ち手64aの長手方向を配管54が延びる方向と直交する方向に操作する(
図1(b)参照)ことで配管54を閉状態とし、吸着回収容器10への流路を開閉する。
【0021】
バルブ65は、流量調整バルブであり、配管54のバルブ64よりも下流の部分に設けられ、持ち手65aを操作することにより、吸着回収容器10への気体の単位時間当たりの流量を調整する。バルブ65は、吸着回収容器10のみの吸込みでは気体の単位時間当たりの流量が大き過ぎるため、ガスメータ40の交換後のパージ用に気体の単位時間当たりの流量を制限するために用いられている。
バルブ66は、配管55に設けられており、持ち手66aの長手方向を配管55が延びる方向に操作する(
図1(a)参照)ことで配管55を開状態とし、持ち手66aの長手方向を配管55が延びる方向と直交する方向に操作する(
図1(b)参照)ことで配管55を閉状態とする。
【0022】
次に、
図1(a)及び
図1(b)を参照しつつ、本実施形態に係る回収容器判定装置1の使用方法について説明する。なお、圧力計30の操作については、ここでは省略する。
図1(a)に示されるように、ガスメータ40を交換した後に作業者がバルブ61~65を開状態へと操作すると、気体は、配管51、ガスメータ40、配管52を通過し、分岐点Aから配管53へと進入する。そして、気体は、パージ判定装置20に進入して通過し、吸着回収容器10に回収される。
図1(a)中の配管51~54に沿う矢印は、気体の流れを示している。この気体がパージ判定装置20を通過するときに、パージ判定装置20の制御部28は、以下のような制御をする。
【0023】
パージ判定装置20の制御部28は、流量計測部26が流路21を通過する間に計測した気体の単位時間当たりの流量が所定値よりも大きいときには、表示部27に『O』の文字を表示させる。そして、作業者は、その表示部27の『O』の文字を見て、パージが完了に向かっていることを確認でき、パージが完了したと思われるときに、バルブ62を閉状態に操作し、パージを完了させる。なお、このパージの完了をビーブ音等で報知しても良い。
【0024】
パージ判定装置20の制御部28は、流量計測部26が流路21を通過する間に計測した気体の単位時間当たりの流量が所定値以下であるときには、表示部27に『Q』の文字を表示させると共に、電磁弁22を閉状態に切り替える。そして、作業者は、その表示部27の『Q』の文字を見て、パージの完了が不可であることを知り、バルブ64を閉じて(
図1(b)のバルブ64部分参照)配管54を閉状態にする。それから、作業者は、吸着回収容器10を配管54から取り外し、交換し、再び配管54に接続する。その後、作業者は、バルブ64を開けて(
図1(a)のバルブ64部分参照)配管54を開状態にして、パージ判定装置20の操作部(図示せず)等を操作して電磁弁22を開けて流路21を開状態にする。
【0025】
以上で詳述してきたように、本実施形態の回収容器判定装置1は、吸着回収容器10に回収される気体の単位時間当たりの流量を計測する流量計測部26と、吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示する表示部27と、流量計測部26及び表示部27の駆動を制御する制御部28と、を備え、制御部28は、パージの判定中に流量計測部26が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合に、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させる。
【0026】
こうした構成によれば、パージの判定中に流量計測部26が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合には、既に吸着回収容器10が多量の気体を吸収してしまっている可能性が高い。そのため、作業者が、吸着回収容器10内でパージ可能な気体の容量が尽きるタイミングを従来よりも正確に把握することができる。ひいては、パージ可能な気体の容量不足によるパージの失敗を抑制させることができる。
【0027】
また、本実施形態の回収容器判定装置1は、流路21を遮断する電磁弁22を備え、制御部28は、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させたと同時又はその後に電磁弁22に流路21を遮断させる。こうした構成によれば、吸着回収容器10が交換されるときに、流路21よりも上流の気体がせき止められ、作業者は安全な交換作業をすることができる。
【0028】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えても良いし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせても良い。
【0029】
[変形例1]
また、本実施形態では、制御部28は、流量計測部26が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下である場合に、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させる構成であったが、上記実施形態に限定されない。例えば、制御部28は、流量計測部26が計測する気体の単位時間当たりの流量が所定値以下であり、かつ圧力計測部11が計測する気体の負圧の絶対値が所定値以下である場合に、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させる構成であっても良い。このような構成によれば、吸着回収容器10によるパージの完了が不可の状態であることが、制御部28による流量計測部26の情報に基づいた制御と、制御部28による圧力計測部11の情報に基づいた制御とのダブルチェックにより確認され、確認精度が向上する。なお、この場合には、例えば圧力計測部11としてデジタル式のものが用いられ、圧力計測部11が計測した圧力値がデジタル信号に変換されて制御部28に送信され、制御部28が制御するように構成しても良い。
【0030】
[変形例2]
また、本実施形態では、パージの途中から単位時間当たりの気体の流量が所定値以下に減少した場合に、制御部28は、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させ、電磁弁22に流路21を遮断させる構成であったが、上記実施形態に限定されない。例えば、パージの開始から単位時間当たりの気体の流量が所定値以下である場合に、制御部28は、表示部27に吸着回収容器10によるパージの完了が不可であることを表示させ、電磁弁22に流路21を遮断させる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 回収容器判定装置
10 吸着回収容器(回収容器)
11 圧力計測部
20 パージ判定装置
20A 筐体
21 流路(気体の流路)
22 電磁弁(遮断部)
26 流量計測部
27 表示部
28 制御部
30 圧力計
40 ガスメータ
41 入口
42 出口
51~55 配管
61~66 バルブ
61a~66a 持ち手
A,B 分岐点