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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】防熱板
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/34 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F24C15/34 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020204997
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092280
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岩井 由加里
(72)【発明者】
【氏名】山根 賢哉
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-195478(JP,A)
【文献】特開2014-202406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 9/00-15/36
A47B 77/00-77/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロ周辺の壁面に設置される防熱板であって、
金属製の前板の裏面にプレート状の不燃材を前板との間に配置する板金部材が取り付けられ、
板金部材及び不燃材は、前板よりも小さい外形サイズとし、
板金部材は、不燃材を囲って保持する箱状に形成され、且つ、前板の外周縁から内側に離れて前板の裏面に取り付けられ、
前板の外周縁と板金部材の外周縁との間に空間領域を有する構成とした防熱板。
【請求項2】
請求項1に記載の防熱板において、
前記前板の外周縁にフランジを備え、このフランジの一部で前記空間領域を有して前記板金部材を支持する構成とした防熱板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防熱板において、
前記前板の外周縁にフランジを備え、
前記板金部材には、前記空間領域を有して前記前板の下部のフランジに着地する脚部が設けられている防熱板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロ周辺の壁面に設置される防熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンロとコンロ周辺の壁面との距離が消防法に定める所定の距離(15cm)に満たない場合は、消防法に沿ったガイドライン(ガス器具の設置基準及び実務指針)に従って壁面に防熱板を取り付ける必要がある。従来の防熱板として、金属製の前板の裏面に、熱伝導材と断熱材とから構成した不燃材を貼り付け、壁面温度の上昇を防ぐようにしたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-175754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の防熱板は、前板の裏面に不燃材がむき出し状態で接着剤により貼り付けられた構成となっている。そのため、防熱板の輸送時や取扱い時等の衝撃が不燃材に直接加わって不燃材が割れたり欠けたり等する問題があった。また、不燃材を貼り付けた接着剤の劣化やコンロからの加熱による前板の熱膨張と熱収縮の繰り返し等により不燃材に割れが発生したり落下したり等し、不燃材の位置が変わったり欠損したり等して防熱板としての機能を損なってしまう不都合があった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、前記のような不燃材の割れや落下や位置ずれ等を防止して防熱板としての機能を維持でき、壁面に対する防熱効果が適切に発揮される防熱板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防熱板は、
コンロ周辺の壁面に設置される防熱板であって、
金属製の前板の裏面にプレート状の不燃材を前板との間に配置する板金部材が取り付けられ、
板金部材及び不燃材は、前板よりも小さい外形サイズとし、
板金部材は、不燃材を囲って保持する箱状に形成され、且つ、前板の外周縁から内側に離れて前板の裏面に取り付けられ、
前板の外周縁と板金部材の外周縁との間に空間領域を有する構成としたものである。
【0007】
前記構成より、不燃材を保持する板金部材は、外周縁の外側周囲に空間領域を有して前板の外周縁から内側に離れて前板の裏面に取り付けられている。従って、前板の外周縁に衝撃が加わっても空間領域で衝撃吸収されて不燃材に負荷が掛かり難くすることができ、防熱板の輸送時や取扱い時等に前板に衝撃が加わっても不燃材に割れや欠け等が発生することを防止できる。
【0008】
また、不燃材は、前板に接着されることなく箱状の板金部材によって保持することができ、前板の熱膨張や熱収縮の影響を受け難くすることができる。従って、コンロからの加熱によって前板が熱膨張と熱収縮を繰り返しても、不燃材に割れ等が発生することを防止できる。従来例(特許文献1)のように接着剤の劣化により不燃材が落下することもない。
【0009】
さらには、万一、不燃材に割れが発生しても、不燃材は、箱状の板金部材によって収容して保持されているから、不燃材が位置ずれしたり落下したり等することもない。
【0010】
以上より、本構成によれば、不燃材の割れや落下や位置ずれ等が防止されて防熱板としての機能を維持することができ、壁面に対する防熱効果が適切に発揮される防熱板を提供することができる。
【0011】
前記防熱板は、前記前板の外周縁にフランジを備え、このフランジの一部で前記空間領域を有して前記板金部材を支持する構成とすることができる。これにより、板金部材を前板に取り付けるためのビスの使用数を少なくできるので、板金部材の前板への取り付けを簡易且つ容易に行うことができ、また、ビスの使用数を減らすことでコストも抑えられる。
【0012】
前記防熱板は、前記前板の外周縁にフランジを備え、前記板金部材には、前記空間領域を有して前記前板の下部のフランジに着地する脚部を設けるようにすることができる。これにより、板金部材は、前板の下部側からの衝撃に対して脚部が衝撃を受け止める強い構成とすることができる。従って、輸送時や取扱い時等に防熱板が下部から落下しても、空間領域及び脚部で衝撃吸収されて不燃材に落下衝撃が掛かり難くなり、不燃材の割れ等の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンロ周辺の壁面において、実施形態の防熱板が設置された状態を示す模式図である。
図2】実施形態の防熱板を表面側から見た状態を示す斜視図である。
図3】実施形態の防熱板を裏面側から見た状態を示す斜視図である。
図4】実施形態の防熱板を構成部品に分解して、表面側から見た状態を示す分解斜視図である。
図5】実施形態の防熱板を構成部品に分解して、裏面側から見た状態を示す分解斜視図である。
図6】実施形態の防熱板の構成を示す断面図である。
図7】板金部材の脚部の部分を拡大して示す斜視図である。
図8】板金部材の脚部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
実施形態の防熱板1は、コンロ2の周辺の壁面3に設置され、壁面温度の上昇を防ぐようにしたものである。本実施形態では、防熱板1は、図1に示すように、コンロ2が最も接近した側方の壁面3に設置されるが、コンロ2の後方の壁面3に設置されてもよい。図1に示すコンロ2は、所謂ビルトイン式コンロであって、コンロ本体がコンロ用キャビネット4のワークトップ41の開口に吊持されている。なお、本発明に係る防熱板は、ビルトイン式コンロに限らず、テーブルコンロが設置される周辺の壁面3に設置されてもよい。
【0015】
防熱板1は、図2図6を参照して、金属製板材(ステンレス板等)により形成される前板5と、金属製板材(ステンレス板等)により形成される板金部材6と、前板5と板金部材6との間に配置される不燃材7とを備えている。
【0016】
前板5は、略矩形状の広面部51と、広面部51の外周縁に連設されて壁面3側となる後方側へ延びるフランジ52とを備えている。下部のフランジ52aは、中央部に内側へ略90度に折り返した支持片53が形成されている。この支持片53によって板金部材6の下部を引っ掛けるようにして板金部材6が支持される。
【0017】
板金部材6は、前板5よりも小さい外形サイズに形成され、不燃材7を囲って保持する箱状に形成されている。板金部材6は、略矩形状の広面部61と、広面部61の外周縁に連設された周壁部62とを備えている。周壁部62は、不燃材7の厚み程度の高さを有し、周壁部62で囲われた広面部61の内側空間部63に不燃材7が配置される。
【0018】
板金部材6の上部の周壁部62には、その先端から外側へ延びる固定片64が形成されている。この固定片64を前板5に対してビス止めすることで、板金部材6が前板5の後面に固定される。上部の周壁部62dは、他の周壁部62よりも少し高く形成されているので、固定片64を前板5にビスb1で固定する際は他の周壁部62によって固定片64が浮くことなく前板5に密着してしっかり固定することができる。このように、板金部材6は、前板5とは固定片64で接触するだけであるから、コンロ2から熱を受ける前板2からの熱伝導が抑えられる。
【0019】
板金部材6の下部には、図7に示すように、左右両側位置に広面部61の端部から外側へ延設した脚部65が設けられている。この脚部65は、前板5の下部のフランジ52aに当接して着地される。これにより、板金部材6の下方には、前板5の下部のフランジ52aと板金部材6との間に空間領域8a(8)が形成される。また、板金部材6は、前板5における左右中央位置及び上下中央より下位置に配置され、前板5のフランジ52を形成する外周縁から内側に離れて前板5の裏面に取り付けられている。従って、防熱板1は、前板5のフランジ52を形成する外周縁と板金部材6の周壁部62を形成する外周縁との間に空間領域8を有する構成とされている。
【0020】
不燃材7は、熱伝導性の低い材質のもので構成され、例えば、繊維混入のパーライトセメント板により形成される。不燃材7は、板金部材6の広面部61の外形サイズと略同じ外形サイズ又は少し小さい外形サイズの四角形プレート状に形成され、板金部材6の周壁部62で囲われた広面部61の内側空間部63内に収容される。
【0021】
防熱板1の組み立ては、不燃材7を板金部材6の内側空間部63に配置した状態とし、この不燃材7を収容した板金部材6を前板5の裏面に重ね合わる。この際、板金部材6を不燃材7が前板5と板金部材6との間に配置される向きにして、板金部材6の下部を前板5の下部の支持片53に引っ掛けるようにして、板金部材6の下部の脚部65を前板5の下部のフランジ52aに当接させる。そして、板金部材6の上部の固定片64を前板5に3か所でビスb1にて固定すれば、防熱板1の組み立てが完了する。
【0022】
防熱板1を壁面3に取り付けたとき、板金部材6で保持する不燃材7は、前板5の上下中央より下位置に配置されているので、調理容器を載せたときや調理容器を外したときのコンロ2におけるバーナの炎が向かうような壁面3の位置に不燃材7が配置される。これにより、コンロ2の加熱による壁面3の温度上昇を防止する防熱効果が発揮される。
【0023】
不燃材7を保持する板金部材6を前板5に取り付けたときの板金部材6の厚みとなる板金部材6の周壁部62の高さは、前板5のフランジ52の高さよりも低くなるように形成されている。これにより、防熱板1を壁面3に取り付けたとき、不燃材7を保持する板金部材6と壁面3との間に隙間S1(S)が形成され、この隙間S1の空気層によって防熱効果を向上することができる。
【0024】
また、本実施形態では、防熱板1を壁面3に取り付ける際、前板5の四隅の4か所でビス固定することにより防熱板1が壁面3に取り付けられるが、各ビスb2にスペーサ9を介在させて壁面3に取り付けられる。スペーサ9は、前板5のフランジ52の高さよりも高い長さを有するものが使用される。これにより、防熱板1と壁面3との間には、スペーサ9によって隙間S2(S)が形成される。従って、この隙間S2に形成される空気層によって防熱効果を向上することができる。
【0025】
以上より、本実施形態の防熱板1によれば、不燃材7を保持する板金部材6は、周壁部62を形成する外周縁の外側周囲に空間領域8を有して前板5のフランジ52を形成する外周縁から内側に離れて前板5の裏面に取り付けられている。従って、前板5の外周縁に衝撃が加わっても不燃材7に負荷が掛かり難くすることができ、防熱板1の輸送時や取扱い時等に前板5に衝撃が加わっても不燃材7に割れや欠け等が発生することを防止できる。すなわち、板金部材6の外側周囲における左右側及び上側には、前板5の外周縁となるフランジ52から内側に離れた広い空間領域8を有しているので、前板5の左右側及び上側の外周縁に衝撃が加わっても空間領域8で衝撃吸収されて不燃材7には衝撃の負荷が掛かり難くなっている。また、板金部材6の外周縁における下側は、前板5の下部のフランジ52aとの間に狭い空間領域8aしか有しないが、板金部材6には、前板5の下部のフランジ52aに着地する脚部65が設けられているので、板金部材6は、この脚部65によって前板5の下部側での落下衝撃を受け止める強い構成となっている。従って、輸送時や取扱い時等に防熱板1が下部から落下しても、空間領域8a及び脚部65が衝撃吸収して不燃材7に落下衝撃が掛かり難くなり、不燃材7の割れ等の発生を防止できる。
【0026】
また、不燃材7は、前板5に接着されることなく箱状の板金部材6における内側空間部63に収容して保持されているので、前板5の熱膨張や熱収縮の影響を受け難くすることができる。従って、コンロ2からの加熱によって前板5が熱膨張と熱収縮を繰り返しても、不燃材7に割れ等が発生することを防止できる。よって、従来例(特許文献1)のように接着剤の劣化により不燃材7が落下することもない。
【0027】
さらには、万一、不燃材7に割れが発生しても、不燃材7は、箱状の板金部材6によって収容して保持されているから、不燃材7が位置ずれしたり落下したり等することもない。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、不燃材7の割れや落下や位置ずれ等が防止されて防熱板1としての機能を維持することができ、また、万一、不燃材7が割れても不燃材7の位置ずれや落下等を防止できるので、壁面3に対する防熱効果が適切に発揮される防熱板1が提供される。
【0029】
また、本実施形態の防熱板1は、前板5におけるフランジ52の一部で板金部材6の外側周囲に空間領域8を有して板金部材6を支持する構成としている。すなわち、板金部材6の下部は、前板5の下部のフランジ52に形成した支持片53によって引っ掛けるようにして支持される。これにより、板金部材6は、上部の固定片64のみでビス止めして前板5に取り付けられるようにすることができる。従って、板金部材6を前板5に取り付けるためのビスの使用数を少なくできるので、板金部材6の前板5への取り付け作業を簡単且つ容易に行うことができる。さらには、ビスの使用数を減らすことでコストも抑えることができる。
【0030】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲により特定する発明の範囲内で様々な変更を施すことが可能である。
例えば、板金部材6の脚部65には、図8に示すように、先端部を内側に折り曲げた折曲片66を形成したものでもよい。これにより、折曲片66のクッション作用が加わることで、板金部材6は、脚部65によって前板5の下部側での衝撃を受け止める性能を更に向上することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 防熱板
2 コンロ
3 壁面
4 キャビネット
5 前板
6 板金部材
7 不燃材
8,8a 空間領域
9 スペーサ
41 ワークトップ
51 前板の広面部
52 フランジ
52a 前板の下部のフランジ
53 支持片
61 板金部材の広面部
62 周壁部
62d 板金部材の上部の周壁部
63 内側空間部
64 固定片
65 脚部
66 折曲片
b1,b2 ビス
S,S1,S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8