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特許7465800連結装置、連結方法およびシートフレームの支持構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】連結装置、連結方法およびシートフレームの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240404BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20240404BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/005
A47C7/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020218367
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103623
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康徳
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050983(JP,A)
【文献】特開2012-157484(JP,A)
【文献】登録実用新案第3066292(JP,U)
【文献】特開2005-067332(JP,A)
【文献】実開平01-158329(JP,U)
【文献】実公昭47-034976(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0212190(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014210139(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 ー 2/90
A47C 7/00
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材を連結するために、爪付きナットとボルトを備えた連結装置において、
前記爪付きナットは、雌ネジを有する筒部と、前記筒部の一端から径方向外側に張り出すフランジ部と、前記フランジ部から前記筒部と同方向に突出する複数の爪部とを有し、前記フランジ部が前記第1部材における前記第2部材の反対側の面に配置され、前記筒部と前記爪部が前記第1、第2部材から離れる方向に突出し、
前記ボルトは、その頭部が前記第2部材における前記第1部材の反対側の面に配置され、前記第1部材の第1ボルト挿通穴と前記第2部材の第2ボルト挿通穴を通して前記爪付きナットの前記筒部に螺合され、これにより、前記第1、第2部材が前記ボルトの前記頭部と前記爪付きナットの前記フランジ部間で挟持され、
さらに前記第1部材における前記第2部材の反対側の面に取り付けられる規制部材を備え、前記規制部材は、筒部挿通穴と、前記筒部挿通穴の周りに形成される複数の係合穴とを有し、
前記爪付きナットの前記フランジ部が、前記第1部材と前記規制部材との間に配置され、前記筒部が前記規制部材の前記筒部挿通穴に挿入され、前記爪部が前記規制部材の前記係合穴に係合されることを特徴とする連結装置。
【請求項2】
前記規制部材に前記係合穴が予め形成されており、前記係合穴に前記爪付きナットの前記爪部が圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の連結装置。
【請求項3】
前記規制部材は、基板と、前記爪付きナットを支持する複数の支持部とを有し、各支持部は前記爪付きナットの前記フランジ部を収容する収容空間を有するとともに、前記筒部挿通穴と前記複数の係合穴を有することを特徴とする請求項1または2に記載の連結装置。
【請求項4】
第1部材と第2部材を連結するために、前記第1部材側に配置される爪付きナットと、前記第2部材側に頭部が配置され前記第1部材と前記第2部材を挿通して前記爪付きナットに螺合するボルトと、を備えた連結装置において、
前記爪付きナットは、雌ネジを有する筒部と、前記筒部の一端から径方向外側に張り出すフランジ部と、前記フランジ部から前記筒部側に突出する複数の爪部とを有し、
さらに前記第1部材に取り付けられる規制部材を備え、前記規制部材は、筒部挿通穴と、前記筒部挿通穴の周りに形成される複数の係合穴とを有し、
前記爪付きナットの前記フランジ部が、前記第1部材と前記規制部材との間に配置され、前記爪付きナットの前記筒部と前記爪部が前記第1部材の反対側を向き、前記筒部が前記規制部材の前記筒部挿通穴に挿入され、前記爪部が前記規制部材の前記係合穴に係合され、
前記規制部材は、基板と、前記爪付きナットを支持する複数の支持部とを有し、各支持部は前記爪付きナットの前記フランジ部を収容する収容空間を有するとともに、前記筒部挿通穴と前記複数の係合穴を有し、
前記規制部材は、前記基板から前記第1部材に向かって突出する複数の係合突起を有し、前記第1部材には前記複数の係合突起を受け入れる複数の受部を有し、前記係合突起と前記受部の係合により、前記規制部材が前記第1部材に取り付けられることを特徴とする連結装置
【請求項5】
前記係合突起は、前記基板から前記基板と直交して突出する挿入片と、前記挿入片の先端から前記挿入片と直交して突出する凸部とを有し、
前記受部は、前記凸部が挿入される挿入穴と、前記挿入穴に対して第1方向に隣接する係合片と、前記係合片の前記第1部材側に形成された係合空間と、前記係合片に対して前記第1方向と直交する第2方向に隣接し前記挿入穴および前記係合空間に連なるスリットとを有し、
前記係合突起の凸部を前記受部の挿入穴に挿入した状態で、前記規制部材を前記第1方向にスライドさせることにより、前記挿入片が前記スリットに挿入され、前記凸部が前記係合空間に収容されるとともに前記係合片と係合され、これにより前記規制部材が前記第1部材に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の連結装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の連結装置を用いた連結方法において、
前記規制部材の前記筒部挿通穴に前記爪付きナットの前記筒部を通し、前記規制部材の前記係合穴に前記爪付きナットの前記爪部を圧入することにより、前記爪付きナットを前記規制部材に装着するナット装着工程と、
前記第1部材に形成された第1ボルト挿通穴と前記爪付きナットの前記筒部とを同軸に位置決めした状態で、前記爪付きナットを装着した前記規制部材を、前記第1部材に取り付ける規制部材取付工程と、
前記第1部材の前記第1ボルト挿通穴と前記第2部材に形成された第2ボルト挿通穴とを同軸に位置決めした状態で、前記第1部材と前記第2部材を重ね、前記ボルトを、前記第2ボルト挿通穴と前記第1ボルト挿通穴に順に通して前記爪付きナットの前記筒部にねじ込むことにより、前記第1部材と前記第2部材を連結する連結工程と、
を備えたことを特徴とする連結方法。
【請求項7】
射出成形品からなるシートフレームの着座部を、請求項1~5のいずれかに記載の連結装置を用いて、支持部材に連結する支持構造において、
前記シートフレームの着座部が前記第1部材として提供され、前記支持部材が前記第2部材として提供され、前記着座部は複数の連結領域を有しており、
前記着座部の前記複数の連結領域が、それぞれ前記連結装置により前記支持部材に連結されることを特徴とするシートフレームの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪付きナットとボルトを用いて2つの部材を連結する装置及び方法と、この連結装置を適用したシートフレームの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の樹脂製シートフレームの着座部(第1部材)を機体の床のブラケット(第2部材)に連結する場合、複数のナットを溶接した薄い鉄板を用意し、この鉄板を着座部に接着し、ボルトをブラケットと着座部に通してナットにねじ込んでいる。ボルトをねじ込む際に、ナットは鉄板に溶接されているため回り止めされている。しかし、このような連結装置では、鉄板にナットを溶接する作業が必要となり、コストが嵩む。
【0003】
特許文献1,2に開示された金属製の爪付きナットにより、シートフレームの着座部をブラケットに連結する装置も開発されている。爪付きナットは、雌ネジが形成された筒部と、この筒部の一端から径方向外方向に張り出すフランジ部と、フランジ部の周縁に形成され筒部側に突出する複数の爪部とを有している。
【0004】
爪付きナットを用いた連結装置では、シートフレームの着座部が次のようにして連結される。着座部に形成された複数の差込穴に上記爪付きナットの筒部を上方から差し込むとともに、爪付きナットの爪部を着座部の上面に油圧プレス機を用いて突き刺すことにより、爪付きナットを着座部に装着する。その後で、ボルトをブラケットの挿通穴に差し込み、さらに爪付きナットの筒部にねじ込むことにより、ボルトの頭部と爪付きナットのフランジ部とで着座部とブラケットを挟んで締め付ける。上記ボルトをねじ込む際に、爪部が着座部に突き刺さっているため、爪付きナットは回り止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-111419号
【文献】特開2012-157484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の爪付きナットを用いた連結装置では、第1部材の差込穴に爪付きナットの筒部を差し込み、爪部を第1部材突き刺すため、これら筒部と爪部が第1部材から第2部材に向かって突出して連結に支障をきたさないよう、第1部材は十分な厚さを有することが求められる。そのため材料費が嵩むとともに重量の増大を招くことになる。特に樹脂製シートフレームの着座部を第1部材とする場合、着座部が厚肉となるため、シートフレームを高コストのブロー成形法等で成形することを余儀なくされ、低コストの射出成形法で成形することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、第1部材と第2部材を、前記第1部材側に配置される爪付きナットと、前記第2部材側に頭部が配置され前記第1部材と前記第2部材を挿通して前記爪付きナットに螺合するボルトにより、連結する装置において、前記爪付きナットは、雌ネジを有する筒部と、前記筒部の一端から径方向外側に張り出すフランジ部と、前記フランジ部から前記筒部側に突出する複数の爪部とを有し、さらに前記第1部材に取り付けられる規制部材を備え、前記規制部材は、筒部挿通穴と、前記筒部挿通穴の周りに形成される複数の係合穴とを有し、前記爪付きナットの前記フランジ部が、前記第1部材と前記規制部材との間に配置され、前記爪付きナットの前記筒部と前記爪部が前記第1部材の反対側を向き、前記筒部が前記規制部材の前記筒部挿通穴に挿入され、前記爪部が前記規制部材の前記係合穴に係合されることを特徴とする。
上記構成によれば、爪付きナットの爪部が規制部材の係合穴に係合されるので、ボルトをねじ込む際に爪付きナットは回り止めされる。爪付きナットの筒部と爪部が第1部材の反対側を向いて規制部材の筒部挿通穴と係合穴にそれぞれ挿入されるので、第1部材の肉厚を必要に応じて薄くすることができる。
【0008】
好ましくは、前記規制部材に前記係合穴が予め形成されており、前記係合穴に前記爪付きナットの前記爪部が圧入されている。
上記構成によれば、予め形成された係合穴に爪部を比較的小さな力で圧入することができ、油圧プレス機等の設備が不要である。また、係合穴と爪部の圧入により、爪付きナットを規制部材に安定して装着することができるので、爪付きナットを装着した規制部材を効率良く第1部材に取り付けることができる。
【0009】
好ましくは、前記規制部材は、基板と、前記爪付きナットを支持する複数の支持部とを有し、各支持部は前記爪付きナットの前記フランジ部を収容する収容空間を有するとともに、前記筒部挿通穴と前記複数の係合穴を有する。
上記構成によれば、規制部材が複数の爪付きナットを装着するので、効率良く複数の爪付きナットを第1部材にセットすることができる。また、爪付きナットのフランジ部が規制部材の収容空間に収容されるので、規制部材を第1部材に取り付ける際に、フランジ部が邪魔にならない。
【0010】
好ましくは、前記規制部材は、前記基板から前記第1部材に向かって突出する複数の係合突起を有し、前記第1部材には前記複数の係合突起を受け入れる複数の受部を有し、前記係合突起と前記受部の係合により、前記規制部材が前記第1部材に取り付けられる。
上記構成によれば、係合突起と受部の係合により、接着手段を用いずに規制部材を第1部材に簡単に取り付けることができる。
【0011】
好ましくは、前記係合突起は、前記基板から前記基板と直交して突出する挿入片と、前記挿入片の先端から前記挿入片と直交して突出する凸部とを有し、前記受部は、前記凸部が挿入される挿入穴と、前記挿入穴に対して第1方向に隣接する係合片と、前記係合片の前記第1部材側に形成された係合空間と、前記係合片に対して前記第1方向と直交する第2方向に隣接し前記挿入穴および前記係合空間に連なるスリットとを有し、前記係合突起の凸部を前記受部の挿入穴に挿入した状態で、前記規制部材を前記第1方向にスライドさせることにより、前記挿入片が前記スリットに挿入され、前記凸部が前記係合空間に収容されるとともに前記係合片と係合され、これにより前記規制部材が前記第1部材に取り付けられている。
上記構成によれば、挿入とスライドの2段階の動作により、規制部材を第1部材に確実に取り付けることができる。
【0012】
本発明の他の態様は、上記連結装置を用いた連結方法において、前記規制部材の前記筒部挿通穴に前記爪付きナットの前記筒部を通し、前記規制部材の前記係合穴に前記爪付きナットの前記爪部を圧入することにより、前記爪付きナットを前記規制部材に装着するナット装着工程と、前記第1部材に形成された第1ボルト挿通穴と前記爪付きナットの前記筒部とを同軸に位置決めした状態で、前記爪付きナットを装着した前記規制部材を、前記第1部材に取り付ける規制部材取付工程と、前記第1部材の前記第1ボルト挿通穴と前記第2部材に形成された第2ボルト挿通穴とを軸に位置決めした状態で、前記第1部材と前記第2部材を重ね、前記ボルトを、前記第2ボルト挿通穴と前記第1ボルト挿通穴に順に通して前記爪付きナットの前記筒部にねじ込むことにより、前記第1部材と前記第2部材を連結する連結工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、射出成形品からなるシートフレームの着座部を、上記連結装置を用いて、支持部材に連結する支持構造において、前記シートフレームの着座部が前記第1部材として提供され、前記支持部材が前記第2部材として提供され、前記着座部は複数の連結領域を有しており、前記着座部の前記複数の連結領域が、それぞれ前記連結装置により前記支持部材に連結されることを特徴とする。
上記構成によれば、樹脂製のシートフレームを薄肉にすることができ、低コストの射出成形法で成形することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、爪付きナットと規制部材により、爪付きナットを回り止め状態で第1部材にセットすることができ、しかも、第1部材の肉厚を必要に応じて薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】産業機械のシートフレームを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る連結装置を用いてシートフレームの着座部を機体の床のブラケットに連結した状態を示す斜視図である。
図3】上記連結装置の構成要素である規制部材の平面図である。
図4】上記連結装置の構成要素である爪付きナットの平面図である。
図5A】上記規制部材に上記爪付きナットを装着する工程の途中の状態を示す要部の斜視図である。
図5B】上記爪付きナットの装着工程の途中の状態を示す拡大断面図であり、上記規制部材を図3のA-A線に沿う断面図で示し、上記爪付きナットを図4のB-B線に沿う断面図で示す。
図5C】上記爪付きナットの装着工程が完了した状態を示す拡大断面図である。
図6A】上記規制部材をシートフレームの着座部に取り付ける工程の途中の状態を示す要部の斜視図である。
図6B】上記規制部材の取付工程の途中の状態を示す拡大断面図である。
図7A】上記規制部材の取付工程の完了直前の状態を示す要部の斜視図である。
図7B】上記規制部材の取付工程が完了した状態を示す拡大断面図である。
図8A】シートフレームをブラケットに連結する工程が完了した状態を示す要部の斜視図である。
図8B】シートフレームの連結工程が完了した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。理解を容易にするため、以下の各構成部材の説明において、シートの設置状態を基準として上下、前後を定める。また、各構成部材の左右は、シートの前方から見た時を基準として定める。
【0017】
図1に示すように、建機等の産業機械のシートフレーム1は樹脂の射出成形品からなり、着座部2(第1部材)と背もたれ部3を一体に有している。シートフレーム1の着座部2は薄肉の板部2aに多数の補強リブ2bを形成することにより構成されている。背もたれ部3も同様である。
【0018】
着座部2の板部2aの前側の左右2ヶ所と後側の左右2ヶ所は、矩形の平板形状の連結領域2xとして提供される。各連結領域2xには複数の受部4と複数のボルト挿通穴5(第1ボルト挿通穴)が形成されている。受部4は、例えば連結領域2xの4隅と中央寄りの1ヶ所の計5ケ所に形成されている。受部4の特殊な形状については後述する。ボルト挿通穴5は前側の連結領域2xでは例えば5つ形成され、後側の連結領域2xでは2つ形成されている。
【0019】
図2に示すように、シートフレーム1の支持構造は、4つ(複数)の連結領域2xにそれぞれ配置された連結装置9を備えている。これら連結装置9により、シートフレーム1の着座部2が機体の床のブラケット7(支持部材;第2部材;図8Bにのみ示す)に連結される。
各連結装置9は、1つの扁平な規制部材10と、各連結領域2xのボルト挿通穴5に対応する数の爪付きナット20およびボルト30とを備えている。
【0020】
最初に、図4図5A図5Bを参照しながら爪付きナット20について説明する。爪付きナット20は、内周に雌ネジ21aが形成された筒部21と、この筒部21の下端から径方向外側に張り出すフランジ部22と、フランジ部22の周縁に形成された4つ(複数)の爪部23と、を一体に有している。爪部23は、筒部21と同じ側に筒部21の軸方向に突出するようにして、フランジ部22から切り起されている。
【0021】
図3図5A図5Bに示すように、規制部材10は樹脂の射出成形品からなり扁平な形状をなしている。すなわち規制部材10は、シートフレーム2の連結領域2xに対応した矩形の平板形状をなす薄肉の基板部11と、基板部11に形成された複数(連結領域2xのボルト挿通穴5に対応する数)の支持部12とを有している。この支持部12は基板部11から上方に隆起しており、その下側には浅い収容空間13が形成されている。
【0022】
各支持部12の中央には筒部挿通穴14が形成されている。各支持部12において筒部挿通穴14の周囲には、複数(爪付きナット20の爪部23に対応する数)の係合穴15が形成されている。規制部材10の4隅部と中央寄りの1箇所には、係合突起16が形成されている。係合突起16の特殊な形状については後述する。
【0023】
次に、上記連結装置9によりシートフレーム1の着座部2をブラケット7(図8B参照)に連結する方法を、順を追って説明する。
爪付きナットの規制部材への装着工程
図5A図5Bに示すように、爪付きナット20を規制部材10の下面に近づけ、筒部21を支持部12の筒部挿通穴14に通すとともに、爪部23を係合穴15に差し込む。さらに爪付きナット20を、フランジ部22が支持部12に当たるまで押し込む。これにより、図5Cに示すように、筒部21と爪部23が支持部12から上方に突出し、フランジ部22が収容空間13に収容される。フランジ部22は完全に収容空間13に収容されており、フランジ部22の下面は規制部材10の基板部11の下面と面一か僅かに上方に後退している。
【0024】
爪部23の厚さが係合穴15の幅より僅かに大きいので、爪部23は係合穴15に圧入された状態となる。これにより爪付きナット20は規制部材10に安定して保持され、その後の工程において爪付きナット20を装着した規制部材10の取り扱いが楽になる。なお、爪部23は規制部材10に予め形成された係合穴15に圧入されるので、格別に大きな力を必要とせず、油圧プレス機等の設備を必要としない。
【0025】
規制部材のシートフレームへの取付工程
上記のようにして複数の爪付きナット20の装着を完了した規制部材10を、着座部2の連結領域2xの上面に取り付ける。この取付工程を説明する前に、シートフレーム1の受部4と規制部材10の係合突起16の形状について説明する。
【0026】
図6A図6Bに示すように、連結領域2xの受部4は、矩形の挿入穴4aと、この挿入穴4aの左右方向(第1方向)例えば右側に隣接した係合片4bと、この係合片4bの下側に形成された係合空間4cと、係合片4bの前後方向(第2方向)に隣接するスリット4dとを有している。係合空間4cは挿入穴4aに連なっている。スリット4dは、挿入穴4aと係合空間4cに連なっている。
規制部材10の係合突起16は、基板部11から基板部11と直交して下方に突出する挿入片16aとその下端から挿入片16aと直交して前後方向に突出する凸部16bとを有している。
【0027】
図6A図6Bに示すように、複数の爪付きナット20を装着した規制部材10を、上方から着座部2の連結領域2xに近づけ、図7Aに示すように、複数の係合突起16の凸部16bを、連結領域2xの複数の受部4の挿入穴4aに差し込む。規制部材10の基板部11が連結領域2xに接したら、規制部材10を図において右方向にスライドさせる。これにより図7Bに示すように、係合突起16の挿入片16aがスリット4dに挿入され、凸部16bが係合空間4cに収容され、規制部材10の連結領域2xへの取り付けが完了する。
【0028】
スリット4dの摺動面には小突起(図示しない)が形成されており、挿入片16aがスリット4dへの挿入する過程で挿入片16aが小突起を乗り越え、挿入が完了した時に小突起が挿入片16aの側縁を係止する。これにより、規制部材4の横移動を禁じることができる。また、受部4の係合片4bと係合突起16の凸部16bの係合により、規制部材10は連結領域2xからの離脱を確実に防止することができる。
【0029】
図6A図6Bに例示するように、基板部11の下面に低い位置決め凸部17を形成し、着座部2の連結領域2xの上面に浅い位置決め凹部6を形成してもよい。この構成を採用する場合、係合突起16の凸部16bを受部4の挿入穴4aに差し込む際に、位置決め凸部17が連結領域2xの上面に当たる。次に、基板部11を弾性変形させて凸部16bをさらに深く挿入穴4aに挿入し、この状態で規制部材10を横にスライドさせることにより係合突起16の凸部16bを係合空間4cまで移動させると、図7Bに示すように位置決め凸部17が位置決め凹部6に嵌り、規制部材10の基板部11は弾性復帰して連結領域2xの上面に面接触する。この構成では、位置決め凸部17と位置決め凹部6の嵌合により、規制部材10を連結領域2xに正確に位置決めすることができるとともに、規制部材10の横移動をより一層確実に禁じることができる。
【0030】
規制部材10が連結領域2xに対して位置決めされた状態で、複数の爪付きナット20の筒部21は、連結領域2xのボルト挿通穴5と同軸に配置される。
【0031】
シートの製造工程
規制部材10を着座部2の全ての連結領域2xに取り付けた後、シートフレーム1の着座部2及び背もたれ部3の表側(乗員側)にパッド(図示しない)を取り付ける。これにより、規制部材10および爪付きナット20はパッドにより被覆される。
【0032】
着座部の連結工程
上記のように製造されたシートを、機体の床のブラケット7にボルト30を用いて取り付ける。すなわち、図8A図8Bに示すように、ボルト30を、ブラケット7の下側からブラケット7のボルト挿通穴8(第2ボルト挿通穴)およびシートフレーム1のボルト挿通穴5に通し、爪付きナット20の筒部21に螺合させる。ボルト30を回して螺合を進めると、爪付きナット20のフランジ部22が着座部2の連結領域2xの上面に強く当たり、このフランジ部22とボルト30の頭部とで着座部2とブラケット7を挟んで強く締め付けるため、着座部2がブラケット7に連結される。
【0033】
規制部材10が着座部2に取り付けられ、規制部材10の係合穴15に爪付きナット20の爪部23が係合されているため、爪付きナット20はボルト30に連れ回転せず、ボルト30による締付作業を確実に行うことができる。
【0034】
図8A図8Bに示すように、爪付きナット20の筒部21と爪部23は、着座部2と反対側を向いて規制部材10に装着されているので、着座部2は、筒部21を挿通させ爪部23と係合する役割を担わずに済み、薄肉にすることができる。
【0035】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様が可能である。
上記実施形態では、規制部材に爪付きナットの爪部を係合するための係合穴を予め形成しているが、この係合穴は爪付きナットの爪部を規制部材に突き刺すと同時に形成してもよい。
規制部材は第1部材に接着により取り付けてもよい。
第1部材と規制部材を樹脂以外の材料により形成してもよい。
上記実施形態では、本発明の連結装置をシートフレームの着座部と産業機械の機体の床のブラケットとの連結に適用したが、これに限らず、種々の第1、第2部材の連結に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、爪付きナットを用いた連結装置に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 シートフレーム
2 着座部(第1部材)
2x 連結領域
4 受部
4a 挿入穴
4b 係合片
4c 係合空間
4d スリット
5 ボルト挿通穴(第1ボルト挿通穴)
7 ブラケット(支持部材;第2部材)
8 ボルト挿通穴(第2ボルト挿通穴)
9 連結装置
10 規制部材
11 基板部
12 支持部
13 収容空間
14 挿通穴
15 係合穴
16 係合突起
16a 挿入片
16b 凸部
20 爪付きナット
21 筒部
21a 雌ネジ
22 フランジ部
23 爪部
30 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B