(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】液体製品分配装置の使用を補助する装置
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240404BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240404BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61J1/05 313B
B65D83/00 G
A61F9/007 170
(21)【出願番号】P 2020542283
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052777
(87)【国際公開番号】W WO2019154807
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-01
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519009817
【氏名又は名称】ヌメラ ラ ヴェルピリエール
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】デコック ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】カサーニュ ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ピントゥス ピエール
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/123553(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257206(US,A1)
【文献】特開2010-145334(JP,A)
【文献】特開2005-140514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 83/00
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバ(32)を含む滴状の液体製品の分配装置(14)の使用を補助する
補助装置(10)であって、
液体製品はユーザの目に分配され、前記補助装置(10)が、
-前記分配装置(14)への結合手段(17)と、
―前記分配装置(14)が内部に配置される主要本体(18)と、
―目に滴を分配する際にユーザの肌へ当接させられる当接構造(20)と、
-液体製品の分配穴(16)の付近に配置されて、前記分配装置(14)による液体製品の1滴の分配についての情報を供給するように構成された、光学手段(26、28)とを含む装置において、前記光学手段(26、28)が、光学信号(40)の送信機(26)と受信機(28)を含み、前記光学信号(40)を妨害する1滴の存在を検知するとともに、この存在の持続時間を測定
し、これらを1滴の分配についての情報として供給するように構成されており、
前記補助装置(10)が、さらに、
-前記補助装置(10)に結合される前記分配装置(14)の
水平に対する傾斜についての情報を供給するように構成された、傾斜測定手段と、
-分配された液体製品の量についての情報を供給するために、前記補助装置(10)に結合される前記分配装置(14)の1滴の分配についての情報と傾斜についての情報とを処理する情報処理システム(23)と、
を含む、補助装置(10)。
【請求項2】
滴の分配を作動させるためにユーザがリザーバ(32)に作動圧力をかけるときに、前記分配装置(14)のリザーバ(32)と接触するように構成された接触エリア(29)を含み、前記接触エリア(29)が、この接触エリア(29)に及ぼされる作動圧力を測定するための手段(34)を含んで前記光学手段(26、28)を始動し、および/または、分配された液体製品の量についての追加情報、好ましくは、付与される作動圧力の強さと、この作動圧力の付与の持続時間とについての情報を供給する、請求項1に記載の補助装置(10)。
【請求項3】
前記補助装置(10)に結合される前記分配装置(14)の重量を測定するための手段(33)を含み、この手段が、前記リザーバ(32)内の液体量についての情報を供給するように構成される、請求項1または2に記載の補助装置(10)。
【請求項4】
前記傾斜測定手段が傾斜計を含んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の補助装置(10)。
【請求項5】
受信機(28)が
分配装置(14)の軸方向および/または周方向に延在する受信エリアを備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の補助装置(10)。
【請求項6】
前記情報処理システム(23)が、前記分配装置(14)によりもたらされる情報の読み取り手段(38)を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の補助装置(10)。
【請求項7】
前記情報処理システム(23)が、分配された液体製品の量および/または前記リザーバ(32)内に残っている液体製品の量に対応する可変値の保存手段(39)を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の補助装置(10)。
【請求項8】
液体製品の分配装置(14)と請求項1~
7のいずれか一項に記載の補助装置(10)とを含む、患者の器官への滴状の液体製品の分配キット(12)。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の補助装置(10)を用いて液体分配装置(14)により滴状で分配される液体製品の量の決定方法であって、
-1滴の検知工程(E3)と、
-検知された滴の体積の推定工程(E6)と、
を含む方法。
【請求項10】
前回の残留体積値から、検知された滴の体積を減算することによって、新しい残留体積値を計算する工程(E7)を含む、請求項
9に記載の決定方法。
【請求項11】
前記滴の検知工程(E3)が、前記光学手段(26、28)により供給された光学信号(40)の妨害を特定する工程と、前記光学信号(40)の妨害の持続時間の測定工程とを含む、請求項
9または
10に記載の決定方法。
【請求項12】
前記検知された滴の体積の推定工程(E6)が、この滴の理論上の体積の決定工程を含み、好ましくは、液体製品の粘性についての情報および/または分配穴(16)の幾何学的な特徴についての情報、さらには、分配用の端部品および/または前記分配装置(14)の他の特徴についての情報に基づいて前記理論上の体積を計算する工程を含む、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項13】
前記滴の体積の推定工程(E6)が、検知された滴の体積の加重工程を含み、この工程の最中に、検知された滴の体積の推定を加重するために少なくとも1つの以下のパラメータすなわち:
-滴の形成を誘発するためにユーザが前記リザーバ(32)に付与する作動圧力の強さ
-この作動圧力の経時的な変動特性
-前記補助装置
(10)および/または前記分配装置(14)の
水平に対する傾斜
-前記光学手段(26、28)により供給される光学信号(40)の妨害の持続時間
-前記分配装置(14)の重量の測定
を考慮する、請求項
12に記載の決定方法。
【請求項14】
残留体積の計算値を確定するために前記分配装置(14)の重量の測定工程(E9)を含む、請求項
10から
13のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項15】
前記分配装置(14)上の保護キャップ(15)の存在についてのテスト工程(E10、E10’)を含む、請求項
9から
14のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項16】
前記滴の検知工程(E3)は、滴の分配を作動させるためにユーザが前記分配装置(14)のリザーバにかける作動圧力の検知(E1)により始動される、請求項
9から
15のいずれか一項に記載の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴状の液体製品の分配装置の使用を補助する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体製品を分配する場合、分配される液体量を知ることがしばしば有利である。これは、特に、投与された薬品量を処方に従って正確に管理しなければならない薬品投与に対して事実である。患者の健康を守るには、薬品の摂取不足あるいは過剰摂取を避ける必要がある。
【0003】
特許文献1は、光学的な原理による滴の計数計を備えた、目薬液の滴下制御装置を記載している。この装置は、薬品ボトルの出口における1滴の存在を検知し、そのため、分配される滴の数を数えることができる。これによって、装置および/またはユーザは、投与される滴数を制御することができる。しかしながら、この装置は、分配された液体製品の量についての情報を与えない。実際、1滴の体積(volume)は常に一定とは限らないことに気づく。体積は、各滴の分配条件に応じた多数の可変パラメータに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第2014/0257206号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に、分配された液体製品の量(quantite)を決定可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、リザーバを含む滴状の液体製品の分配装置の使用を補助する装置を目的とし、この補助装置は、
-分配装置への結合手段と、
-液体製品の分配穴の付近に配置されて、分配装置による液体製品の1滴の分配についての情報を供給するように構成された、光学手段と、
-補助装置に結合される分配装置の傾斜についての情報を供給するように構成された、傾斜測定手段と、
-分配された液体製品の量についての情報を供給するために、補助装置に結合される分配装置の1滴の分配についての情報と傾斜についての情報とを処理する情報処理システムと、
を含む。
【0007】
多数の実験と研究から、1滴の分配時の分配装置の傾斜が滴の体積に影響を与えることが確認されているので、傾斜の測定により、こうした情報の処理後に1滴の体積を推定することができる。そのため、提案されている補助装置は、この補助装置が結合される分配装置の傾斜測定手段と情報処理システムとを含み、したがって、分配された滴の体積、ひいては分配された液体製品の量を後で推定することが可能な適切な情報を供給できる。さらに、補助装置は、分配装置による液体製品の1滴の分配についての情報を得るために、分配穴付近における1滴の存在を検知可能な光学手段を含み、その場合、情報処理システムは、この光学手段のおかげで、滴の分配の瞬間に、分配装置の傾斜と関係させながら1滴の分配についての情報を処理することができる。このように設計された補助装置は、分配された液体製品の量の値を計算して決定可能である。
【0008】
さらに、情報処理システムは、分配された液体製品の量に基づいて、有利には、分配装置のリザーバ内に残っている液体製品の量を導き出すことができる。この量は、その後、分配装置の理論上の使用条件を取り入れることによって、残っている滴の理論上の数として表すことができる。こうした情報は、ユーザに対して有利に働くことができ、ユーザは、リザーバが空になる瞬間を予測し、したがって、その継続使用能力を算定できる。この情報は同様に、追加情報を得ることをめざした他のタイプの分析または処理にも使用可能である。
【0009】
情報処理は、分配される液体量を推定するために情報処理システムに利用提供される他の情報、たとえば、あらかじめ決められた値のリストにおける、液体製品の物理的または化学的特性についての情報、バルブの幾何学的形状についての情報を考慮できることが分かる。
【0010】
「光学」とは、可視スペクトルに属するか、または属さないあらゆる電磁波を意味する。光学手段は、一般に、このような電磁波を送信、受信、および/または反射可能な手段である。
【0011】
補助装置は、さらに、単独または組み合わせて選択される1つまたは複数の以下の特徴を含むことができる。
【0012】
-補助装置は、滴の分配を作動させるためにユーザがリザーバに作動圧力をかけるときに分配装置のリザーバと接触するように構成された接触エリアを含み、接触エリアは、この接触エリアに及ぼされる作動圧を測定するための手段を含んで、光学手段を始動し、および/または、分配された液体製品の量についての追加情報、好ましくは、付与される作動圧力の強さと、当該作動圧力の付与の持続時間とについての情報を供給する。上記の測定手段が測定する接触エリアに及ぼされる作動圧力は、たとえば直接または非直接的に補助装置を押し、その後、これが分配装置に伝達されることによって、あるいは、あらゆる適切な手段により直接または非直接的に分配装置を押すことによって、ユーザがリザーバに及ぼす作動圧力を表す。接触エリアに及ぼされる作動圧力に関する情報が特に有効となりうることが分かる。特に、光学手段は、ユーザが特定の作動圧力を及ぼすときだけ始動されるので、光学手段のエネルギー消費が抑えられ、寿命が延び、装置の使用期間以外は不要な情報を発生しないようにすることができる。さらに、ユーザが及ぼす作動圧力は同様に、分配装置の傾斜に加えて、送られる1滴の体積に影響するパラメータである。そのため、この作動圧力を測定することによって、情報処理システムは、分配された液体製品の量、好ましくは同様に分配装置のリザーバ内に残る液体製品の量を付加的および/または一段と正確に推定することができる。
【0013】
一般に「作動圧力の測定手段」とは、圧力または力を直接測定可能なあらゆる手段を意味する。
【0014】
-補助装置は、この補助装置に結合される分配装置の重量を測定するための手段を含み、この手段が、リザーバ内の液体量についての情報を供給するように構成される。使用の前と後のリザーバ内の液体量についての情報に基づいて、分配される製品量をそこから導くことができる。この情報は、分配される滴の体積をより正確に推定するために、他の検知手段から得られた情報、たとえば分配装置の傾斜についての情報に付け加えることができ、および/または、情報処理システムの出力における結果(分配された液体製品の量、残っている液体製品の量)を検証するために、他の検知手段から得られた情報と突き合わせることができる。有利には、重量を測定するための手段は、たとえば圧力センサタイプの重量センサ(「Force Sensing Resistor:感圧抵抗体素子」またはFSR)を含み、これは、分配装置の休止時にリザーバの下に、および/または、休止時にその上に配置可能である。適切な重量センサの1つの例は、0~4Nの力範囲で作用するFlexiforce商標の圧力センサである。有利には、重量を測定するための手段は、リザーバの周囲に配置された複数の重量センサを含んで、補助装置に結合された分配装置の重量を、その傾斜とは無関係に測定することができる。
【0015】
-光学手段は、光学信号の送信機と受信機を含み、光学信号を妨害する1滴の存在を検知するとともに、この存在の持続時間を測定するように構成されている。光学信号は、たとえば赤外線である。送信機と受信機は、補助装置が分配装置に結合されている場合、分配穴の両側に配置可能であるので、光学信号は、分配される滴全体を通る。補助装置が分配装置に結合されている場合、必要に応じて、送信機と受信機は分配穴の同一側に配置され、光学信号は、少なくとも部分的に反射する壁で反射して受信される。適切な赤外線検知器の1つの例は、OSRAM Opto Semiconductors Inc.商標、またはVishay Semiconductor Opto Division商標の検知器である。有利には、光学手段は、光学信号の第2の送信機と第2の受信機を含み、これらは、分配装置による液体製品の1滴の分配についての情報を確定するように構成されている。この第2の送信機および第2の受信機は、第1の光学信号の妨害がまさに、液体製品の1滴の形成、次いで切り離しによるものであるかどうか確認することができる。
【0016】
-傾斜測定手段は傾斜計を含む。傾斜計は、たとえば、必要に応じて性能が選択される電子ジャイロスコープまたは加速度計である。
【0017】
-情報処理システムは、分配装置によりもたらされる情報の読み取り手段を含む。その場合、この処理システムは、分配装置内に収容される液体製品について、または分配装置自体について様々な情報にアクセスし、補助装置のパラメータ設定を手動で行う必要性を制限もしくはなくし、分配される製品の特性に、および/または分配装置に、分配を適合させる。これらの情報は、たとえば、リザーバ内に収容される理論上の用量数(nombre de doses)、1滴の理論上の体積、粘性等の液体製品の物理的または化学的特性、バルブの寸法等の分配装置の技術的な特徴であり、これらの特徴や特性は、あらかじめ決められた値のリストを基礎とすることができる。これらの情報の一部は、様々な手段、たとえば傾斜測定手段から供給される情報の処理に役立てることができる。分配装置は、デジタルチップ、磁気テープ、バーコードの形状の情報媒体または、電子手段により書き込み情報が読み取られる他のあらゆるタイプの媒体を含むことができる。
【0018】
-情報処理システムは、補助装置の外部のオブジェクト、たとえばサーバ、受信機、イントラネットネットワークまたはインターネットに接続される。情報処理システムは、遠隔情報を送信し、必要に応じてこれを受信できる。
【0019】
-補助装置は、処理システムにより供給される情報の表示手段、たとえば視覚手段、音響手段、および/またはタッチ手段を含む。これらの手段は、1回分の用量の適切な供給についての情報、供給された製品量および/または残っている製品量についての情報、および/または液体製品についての他の情報(たとえば読み取り手段により読み取られたもの)をユーザに示すことができる。表示手段は、たとえばカラーまたは異なる形態で、英数字および/または光信号として情報を表示する画面を含むことができる。
【0020】
-情報処理システムは、分配された液体製品の量および/またはリザーバ内に残っている液体製品の量に対応する可変値の保存手段を含む。可変値は、たとえば、分配された液体製品の量を導き出して、リザーバ内に残っている液体製品の量を制御するために使用される。分配された液体製品の量に関する可変値は、また、処理が順守されているかチェックするためにも使用可能である。可変値は、液体の分配時に更新される。有利には、保存手段は、処理システムおよび/またはユーザに有用な他の値および情報を保存可能である。
【0021】
-本発明は、さらに、液体製品の分配装置と上記の補助装置とを含む、患者の器官への滴状の液体製品の分配キットに関する。器官は、たとえば目、耳または皮膚である。好ましくは、補助装置および分配装置は、互いにはめ込まれる別々の着脱式装置であるが、その一方で、これらを同材料で形成されるモノブロックとすることも検討可能である。
【0022】
本発明は、さらに、上記のような補助装置を用いて液体分配装置により滴状で分配される液体製品の量の決定方法に関し、この方法は、
-1滴の検知工程と、
-検知された滴の体積の推定工程と、
を含む。
【0023】
分配装置の使用を通してこの方法を用いることによって、また、検知される各滴、したがって分配される各滴の推定体積を加算することによって、こうした使用中に分配された液体製品の総量が得られる。
【0024】
1滴の検知は、分配装置の光学手段により実施される。光学手段と傾斜測定手段とにより供給される情報の集合が情報処理システムにより処理され、検知された滴の体積を推定し、そこから、分配された液体製品の量が導き出される。
【0025】
決定方法は、さらに、単独または組み合わせて選択される1つまたは複数の以下の特徴を含むことができる。
【0026】
-決定方法は、前回の残留体積値から、検知された滴の体積を減算することによって、新しい残留体積値を計算する工程を含む。そのため、情報処理システムおよび/またはユーザは、液体製品の分配後にリザーバ内に残っている液体製品の量を知り、この情報は、最初は、リザーバ外部からはアクセスできない。「前回の残留体積値」に対応する第1の値は、リザーバの充填体積であることに留意されたい。
【0027】
一般に「残留体積」は、分配装置のリザーバ内に残っている液体製品の体積を意味する。
【0028】
滴の検知工程は、光学手段により供給された光学信号の妨害を特定する工程と、光学信号の妨害の持続時間の測定工程とを含む。妨害は、たとえば、光学信号がその経路で滴の存在により吸収されるために光学信号がないこと、あるいは光学信号の強度が低いこととすることができる。妨害の持続時間は、基本的に、分配穴付近における滴の存在の持続時間に対応すると思われる。
【0029】
-検知された滴の体積の推定工程が、この滴の理論上の体積の決定工程を含み、好ましくは、液体製品の粘性についての情報および/または分配穴の幾何学的な特徴についての情報、さらには、分配用の端部品および/または分配装置の他の特徴についての情報に基づいて、理論上の体積を計算する工程を含む。理論上の体積は、液体製品または分配装置について、その使用条件に応じて変動しない固定データに基づいて計算される体積である。固定データは、たとえば、分配装置によりもたらされた情報の読み取り後、情報処理システムによって決定され、あるいは読み取りによって直接決定される。
【0030】
-滴の体積の推定工程は、検知された滴の体積の加重工程を含み、この工程の最中に、検知された滴の体積の推定を加重するために少なくとも1つの以下のパラメータすなわち:
-滴の形成を誘発するためにユーザがリザーバに付与する作動圧力の強さ、
-この作動圧力の経時的な変動特性
-補助装置および/または分配装置の傾斜
-光学手段により供給される信号の妨害の持続時間
-分配装置の重量の測定
を考慮する。
これらのパラメータの少なくとも1つを考慮することによって、計算された理論上の体積を分配装置の使用条件に適合させるので、これによって、より現実に即した推定が得られ、したがって、分配された液体製品の量を、いっそう正確に高い信頼性で決定することができる。
【0031】
-この決定方法は、残留体積の計算値を確定するために分配装置の重量の測定工程を含む。重量測定により残留体積の値を知ることによって、分配された液体製品の量をそこから導くことができる。そのため、重量測定によって、検知された滴の推定体積を同様に確定することができる。重量の測定工程は、検知された傾斜に応じて、特に、あらかじめ決められた持続時間中の分配装置の特定の傾斜の保持に応じて、条件付きで始動可能である。
【0032】
-決定方法は、分配装置上の保護キャップの存在についてのテスト工程を含む。分配装置を確実に保護するために、あるいは、衛生状態を改善するとともに分配穴に液体製品の残留量がある場合の抗菌機能を高めるために、キャップをしておくことが有利である。このテストによって、使用終了時にキャップが所定の位置に適切に戻されたかどうかが分かり、キャップが戻されなかった場合は必要に応じてユーザに知らせることができる。さらに、決定方法が分配装置の重量の測定工程を含む場合、キャップの有無は、測定された重量の値に影響するので、したがって残留体積の決定ではキャップの有無を考慮しなければならない。
【0033】
-滴の検知工程は、滴の分配を作動させるためにユーザが分配装置のリザーバにかける作動圧力の検知により始動される。実際、滴の分配を作動させるために、ユーザは、リザーバに作動圧力を及ぼす必要がある。この作動圧力の検知は、使用開始の指標となるうえ、1滴たりとも検知し落とすリスクなしに滴の検知工程を始動するのに適した瞬間である。こうした作動圧力の検知は、
-分配装置を作動させるためにユーザが押圧エリアに及ぼす圧力の測定によって直接的に、あるいは、
-たとえば、リザーバまたは他の押圧エリアにユーザが作動圧力をかけるときに分配装置のリザーバと接触するように構成された接触エリアに及ぼされる圧力の測定によって間接的に、
実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
次に、添付図面を裏付けるために限定的ではなく例として挙げられた本発明の個々の実施形態について説明する。
【
図1A】1つの実施形態による補助装置を示す斜視図であり、補助装置を単独で示す図である。
【
図1B】1つの実施形態による補助装置を示す斜視図であり、補助装置と、この補助装置に結合される分配装置とからなるアセンブリの上部を示し、補助装置が開放位置にあって分配装置が分配穴の保護キャップを備えるところを示す図である。
【
図2A】
図1Bのアセンブリの各部分を示す概略的な縦断面図である。
【
図2B】
図1Bのアセンブリの各部分を示す概略的な縦断面図である。
【
図3】
図1Bのアセンブリの各部分を示す概略的な斜視図である。
【
図4】
図1Bのアセンブリの各部分を示す概略的な縦断面図である。
【
図5】別の実施形態による補助装置と分配装置とのアセンブリの一部を示す概略図である。
【
図6】
図1Aの補助装置を上部なしに上から見たところを示す斜視図である。
【
図7】
図1Bの分配装置の上部を示す縦断面図である。
【
図8】滴状の液体製品の様々な分配穴を示す斜視図である。
【
図9】液体製品の分配中の分配製品の傾斜に応じて1滴の体積の変化を示すグラフである。
【
図10】
図1Bの液体分配装置により分配された液体製品の量の決定方法の工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図1Bの補助装置により処理される情報を示す1つのグラフと、1滴の様々な分配工程で
図1Bの分配装置の上部を示す3つの縦断面図とを合わせたものである。
【
図12】別の2つの実施形態により、分配された液体製品の量の決定方法の工程を示すフローチャートである。
【
図13】別の2つの実施形態により、分配された液体製品の量の決定方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aは、滴状の液体製品の分配装置の使用を補助する装置10を示し、
図1Bは、補助装置10と、この補助装置10の内部に配置される分配装置14とを含む分配キット12を示している。分配装置14は、ここでは、リザーバ32(
図3参照)と、滴の分配穴16(
図2B参照)を備えた分配用の端部品とを含み、分配穴は、たとえば分配用の端部品にねじで固定されたキャップ15により保護される。補助装置10は、分配装置14の結合手段17を含むので、分配キット12は一体的なアセンブリを形成する。結合手段17は、たとえば、補助装置10へのリザーバ32のクリック係止部を含むことができる。特に1つの変形実施形態では、分配穴16を備えた分配用の端部品が、補助装置10および分配装置14の2つの装置の結合時に分配装置14のリザーバ32にはめ込まれて補助装置10の一部をなすことができる。
【0036】
補助装置10は、分配装置14が内部に配置される主要本体18と、目標器官、たとえば目に滴を分配するときのユーザの肌への当接構造20とを含む。当接構造20は、たとえばヒンジ21を用いて、分配装置14の挿入開放位置と使用閉鎖位置との間で主要本体18に着脱式に装着される。当接構造20は、ユーザの肌への快適な当接を保証するとともに目標器官付近の凹凸に適合させるために十分に柔らかく構成可能であり、および/または、当接支持機能を保証するとともに分配穴16と目標器官との間にあらかじめ決められた距離を課すために十分に剛性に構成可能である。当接構造20は、液体製品の滴が分配穴16からユーザの器官に向かって移行できるようにするための軸方向の穴30を含む。当接構造20は、特に、補助装置10がユーザの肌の目の周りに押し当てられるときユーザの目が暗闇にないようにするために、対向する2つの側でその端部にくり抜き19を任意で含む。当接構造20の輪郭は閉じていてもいなくてもよく、たとえばC字型の輪郭を有することができる。C字型の輪郭によって、たとえば、ユーザは、C字型の開口部から下まぶたを引っ張って目をいっそう開け、滴が目に届くようにすることができる。
【0037】
補助装置10は、同様に、ここでは液体製品を分配するためにユーザが把持すると同時に押すことができるように構成された押圧エリア22を含む。押圧エリア22は、ここでは、主要本体18の対向する2つの側に配置される。別の実施形態では、単一の押圧エリアを主要本体18の片側だけに配置することを検討してもよい。押圧エリア22に及ぼされる作動圧力は、特にリザーバと補助装置10との間の接触エリア29の位置で分配装置14のリザーバ32に伝達される。押圧エリア22は、主要本体18の他の部分とは異なる材料、特に、他の部分より柔軟な材料から形成可能である。押圧エリアは同様に、ユーザによる把持を容易にする凹凸を含むことができる。さらに、押圧エリア22の存在によって、補助装置10は、分配装置14だけの面積に比べて、ユーザの把持面積と、リザーバ32への作動圧力の面積とを増大し、これは、神経筋疾患を患っているユーザにとっては特に有利である。
【0038】
補助装置10は、さらに、この補助装置10に結合される分配装置14の傾斜についての情報を供給するように構成された傾斜測定手段を含む。1つの例では、傾斜測定手段は、電子ジャイロスコープまたは加速度計等の傾斜計を含む。傾斜計は、好ましくは主要本体18に配置され、たとえば分配用の端部品の付近に配置されるように構成されたエリアに配置される。
【0039】
補助装置10は、分配された液体製品の量についての情報を供給するために、補助装置10に結合される分配装置14の滴の分配についての情報と傾斜についての情報とを特に処理する、情報処理システム23を含む。情報処理システム23は、様々な情報を自動的に処理可能な(機械的、電子的、化学的、光工学的、および/または生物学的な)構成部品の集合を含むシステムである。情報処理システムは、たとえばPCB(「printed circuit board:プリント回路板」)タイプのプリント回路、トランジスタアセンブリ、および/またはコンピュータを含む。
【0040】
有利には、補助装置10は、様々な構成部品、特に、傾斜測定手段および情報処理システム23を供給するための統合エネルギー源、たとえばポータブルバッテリを含む。代替的には、補助装置は外部電源からエネルギー供給される。
【0041】
補助装置10は、有利には、処理システム23から供給される情報の表示手段、たとえば視覚手段24、25、音響手段および/またはタッチ手段を含む。
図1Aと
図1Bの実施形態では、補助装置は、英数字の形態を呈する情報の表示画面24を有する。
図6から分かるように、たとえば適切な傾斜または適切な圧力を示すために、補助装置10は、さらに、あるいは代替的に、光信号を供給可能な発光ダイオード25を分配穴16の周囲に含む。
【0042】
図2Bに示したように、補助装置10は、分配穴16の付近に配置されて、分配装置14による液体製品の1滴の分配についての情報を供給するように構成された、光学手段26、28を含む。光学手段26、28は、ここでは、光学信号40の送信機26と受信機28を含み、これらは、光学信号40を妨害する1滴の存在を検知するとともに、この存在の持続時間を測定するように構成される。送信機26は、たとえば赤外線発光ダイオードを含み、受信機28は、たとえば、赤外線を検知可能なフォトトランジスタを含む。送信機26と受信機28は、光線が妨害されたとき、たとえば光線の強さの変化によって光学信号40を通過する1滴の存在を検知する。好ましくは、送信機26と受信機28は、分配穴16から1~3mm、好ましくは2mmの距離のところに配置される。
【0043】
受信機のサイズが限られているので、補助装置が傾斜した場合、1滴の通過が受信機により検知されないことがありうる。この問題を解消するために、受信機は、有利には、軸方向および/または周方向に延在する受信エリアを備えることができ、受信エリアは、補助装置が傾斜しているときでも1滴の通過の検知を保証する。
【0044】
図3から分かるように、補助装置10は、この補助装置10に結合される分配装置14の重量を測定するための手段33を含み、この手段は、リザーバ32内の液体量についての情報を供給するように構成される。重量を測定するための手段は、たとえば圧力センサタイプの重量センサ33(「Force Sensing Resistor:感圧抵抗体素子」またはFSR)を含み、これは、分配装置14を計量するためにリザーバ32の下に配置され、そこから、リザーバ32内に残っている液体量の重量、ひいては体積を導き出す。図示されていない変形実施形態では、重量センサがリザーバの上に配置される。図示されていない別の変形実施形態では、補助装置が、リザーバの周囲に複数の重量センサを有して、傾斜とは無関係に補助装置に結合される分配装置の重量を測定することができる。
【0045】
図示されていない1つの実施形態によれば、補助装置は、この補助装置に結合された分配装置の検知手段、たとえば圧力センサあるいはまた光学センサを含むことができ、情報処理システムは、分配装置の存在をユーザに確認し、および/または分配装置がないことをユーザに知らせることができる。
【0046】
補助装置10と分配装置14は、補助装置10に対して分配装置14の回転を阻止可能なロック手段を含むことができる。ロック手段は、リザーバ32が円筒形の場合に特に有利である。ロック手段は、補助装置10および分配装置14にそれぞれ設けられた、たとえばノッチに収容されるつめ等の係合かみ合い形状を含むことができる。そのため、回転が阻止されるので、ユーザは、分配用の端部品に、端部品が自在に回ることなく、キャップをねじ止めしなおすことができる。さらに、これらのロック手段は、補助装置と分配装置との間でクランプされるはめ合わせとは違って、分配装置14の重量測定を阻止しない。
【0047】
図4から分かるように、リザーバ32と補助装置10の押圧エリア22との間の接触エリア29は、光学手段26、28を始動するために、および/または、分配された液体製品の量についての追加情報を供給するために、この接触エリア29に及ぼされる作動圧力を測定する手段を含む。作動圧力を測定するための手段34は、接触エリア29に付与される作動圧力の強さと、この作動圧力を付与する持続時間とについての情報を供給可能である。接触エリア29は、押圧エリア22を支持する主要本体18の壁の内面に配置される。作動圧力を測定するための手段は、たとえば、リザーバ32に接して配置されたFSRタイプの圧力センサ34を含む。
【0048】
図1Aの実施形態に同様に適用可能な
図5の実施形態から分かるように、補助装置10は、分配装置14により支持される情報読み取り手段38を含む。分配装置14は、電子手段により読み取れる情報媒体36を含む。この情報媒体は、たとえば、リザーバ32の下に貼り付けられる無線タグ36(RFID、すなわち「radio frequency identification」タグのタイプ)である。無線タグ36は、この例では、リザーバ32の充填体積(および/または理論上の滴数として表される)、分配穴16の直径、液体製品の粘性、液体製品の投与量、期限/製造日等の情報を含む。読み取り手段は、この例では、無線タグ36を読み取って、そこから情報処理に必要な情報を抽出可能なアンテナ38を含む。タグはまた、リザーバの側面または他のあらゆる適切な場所に貼り付け可能である。
【0049】
1つの変形実施形態では、情報処理システム23は、補助装置10の外部オブジェクト、たとえばサーバ、受信機、イントラネットネットワークまたはインターネットに接続される。
【0050】
有利には、情報処理システム23は、リザーバ32内に残っている液体製品の量についての可変値の保存手段39を含む。
【0051】
次に、補助装置10を用いて液体分配装置14により滴状に分配された液体製品の量の決定方法について説明する。
【0052】
分配された液体製品の量を決定するには、まず、光学手段26、28によって分配穴16の付近の1滴の存在を検知し、これにより補助装置10の傾斜測定が開始される。光学手段26、28と傾斜測定手段とによって検知された情報は、その後、情報処理システム23に送られ、情報処理システムは、これらを分析して、検知された滴の体積の推定値を供給する。別の実施形態では、光学手段26、28の点灯を開始する前に、最初に補助装置10の傾斜の変化を検知する。補助装置10の傾斜と、補助装置10および分配装置14の幾何学的形状が分かれば、分配装置14の傾斜が分かる。分配装置14の使用中に1滴の存在を決定するこの方法を用いることによって、1滴ずつ分配される液体製品の量を示す値が得られる。この値に基づいて、リザーバ32内に残っている液体製品の前回の残留体積値から、検知された滴の推定体積または分配された液体製品の量の推定体積を減算することによって新しい残留体積値を計算できる。初回の使用に際しては、前回の残留体積値は、リザーバ32の充填体積である。残留体積値は、1滴の分配後、あるいは1回の使用(複数滴の分配)後、更新される変数であり、補助装置10の保存手段に保存可能である。
【0053】
好ましくは、光学手段26、28により供給される光学信号40の妨害を識別することによって、より好ましくは、光学信号40の妨害の持続時間も測定することによって、1滴の存在を検知する。この妨害は、送信機26と受信機28の間の光学信号40に1滴が存在することによって生じる。
【0054】
検知された滴の体積の推定は2つの工程で実施可能である。第1の工程は、たとえば、液体製品の粘性についての情報および/または分配穴16の幾何学的な特徴についての情報、さらには分配用の端部品の他の特徴についての情報に基づいて、滴の理論上の体積を決定することからなる。1滴の理論上の体積の決定方法は、分配穴16の直径と液体製品の粘性とを考慮しながら、分配装置14が水平線に対して90°の角度α(アルファ)で傾斜している場合の1滴の体積を値として選択することからなる。上記の2つの固定パラメータは、分配される1滴の体積に著しく影響する。固定パラメータとは、傾斜、作動圧力、押圧速度等の、補助装置10の使用条件に依存しないパラメータを意味する。これらの情報は、たとえば、分配装置14の無線タグ36で補助装置14により読み取られる。さらに、傾斜角度αは、垂直方向を画定する重力の方向を基準として水平方向に対して、分配穴16の軸に対応する分配装置14の軸がなす角度に対応する。
【0055】
様々な形状および寸法を有する分配装置14の6個の分配バルブV1~V6を示す
図8から分かるように、一般には、分配穴16の直径に伴って1滴の体積が増える。下表は、分配穴16の直径と滴の理論上の体積との対応の1例である。この結果は、水を用い、分配装置14を90°の角度αで傾斜することによって得られた。
【表1】
【0056】
さらに、液体製品の粘性は、分配装置14の使用条件に応じて可変の様々なパラメータを考慮しなくても、分配される1滴の体積に影響することが確認される。実際、理論上の使用条件(分配装置14を水平線に対して90°の角度αで傾斜し、バルブV3を用いる)において、液体製品の粘性に伴って1滴の体積が増える。下表は、液体製品の粘性と、滴の理論上の体積との対応の1例である。
【表2】
【0057】
第2の工程は、少なくとも1つの以下のパラメータすなわち
-滴の形成を誘発するためにリザーバ32にユーザが及ぼす作動圧力の強さ
-この作動圧力の経時的な変動特性
-補助装置10および分配装置14の傾斜
-光学手段により供給される光学信号40の妨害の持続時間
-分配装置14の重量の測定
を考慮することにより理論上の体積を加重することからなる。
【0058】
理論上の体積の加重方法は、その値を、たとえば、傾斜測定手段により供給される補助装置10および分配装置14の傾斜に関係する係数A1と、光学手段26、28により供給される光学信号40の妨害の持続時間とリザーバ32に収容される液体製品の粘性とに関係する係数A2とによって乗じることからなる。
【0059】
実際、1滴を分配している間の分配装置14の傾斜は、この滴の体積に影響を及ぼす。
図9のグラフが示すように、分配される滴の体積(縦座標)は、水平線に対して測定された分配装置14の傾斜角度α(横座標)に伴って増加する。たとえば、使用される液体製品が水であり、使用されるバルブが、基準として使用されるバルブV3である場合、傾斜角度αが45°のとき体積34μl、傾斜角度αが60°のとき体積37μl、傾斜角度αが90°のとき体積40μlが測定される。情報処理システム23は、傾斜測定手段により供給される傾斜値を受信すると、この傾斜値を、分配装置14がバルブV3を選択し水平線に対して90°の角度αの傾斜を有するときの1滴の水滴の理論上の体積、すなわち40μlにより割ることによって係数A1を計算する。
【0060】
さらに、分配される滴の体積は、滴の形成速度に応じて液体製品の粘性と共に変動しうる。したがって、液体製品の粘性と滴の形成速度とを考慮して係数A2により1滴の理論上の体積を加重することが同様に有効である。こうした滴の形成速度は、有利には、光学信号40の妨害の持続時間および/または1滴を分配するために及ぼされる作動圧力の強さと持続時間を用いて得られる。下表は、液体製品の粘性と、滴の形成速度とにより供給される集合と係数A2との対応の1例を示している。
【表3】
【0061】
1つの変形実施形態では、1滴の理論上の体積は、滴の形成を誘発するためにユーザがリザーバ32に及ぼす作動圧力の強さ、および/または、この作動圧力の経時的な変動特性に関係する係数によって加重することができる。
【0062】
図10には、決定方法の工程の1例を示した。この方法は、押圧エリア22にユーザが及ぼす作動圧力の第1の検知工程E1から開始され、作動圧力は、作動圧力センサが配置される、リザーバと補助装置10との間の接触エリア29を介して、分配装置14のリザーバ32に伝達される。検知された作動圧力があらかじめ決められた閾値、たとえば15Nを超えると、工程E2で、1滴の検知と分配装置14の傾斜の測定とのために光学手段26、28と傾斜測定手段とが作動される。光学手段26、28は、分配穴16の付近で、滴の存在を検知するまで滴の形成エリアを監視する(工程E3)。滴が検知されると工程E4でタイマーが始動される。光学手段により監視されている形成エリアを滴が離れない限り、すなわち分配穴16から切り離されない限り時間がカウントされる。滴が形成エリアを離れて分配されると(工程E5)、光学手段26、28の光学信号40が修正され、より正確には、光学信号40がもはや妨害されず、タイマーが停止し、情報処理システム23に滴の形成の持続時間を供給し、情報処理システムは、分配された滴数を1つインクリメントする(工程E6)。傾斜測定手段は、滴の体積を推定するために情報処理システム23に傾斜測定値を供給する(工程E6)。任意の工程E7では、リザーバ32内に残っている残留体積ならびに滴数をそこから導くことができる。この方法は、あらかじめ決められた閾値を超える作動圧力が検知される限り、および/または、光学手段26、28が1滴の存在を検知する限り、複数回繰り返すことができる。
【0063】
図11は、横座標に時間、縦座標に作動圧力の強さ、または光学手段40の妨害の強さを示すグラフである。このグラフは、情報処理システム23が、光学手段26、28から受信する情報(曲線C1)と、1滴の分配中にユーザが及ぼす作動圧力の測定手段34から受信する情報(曲線C2)との1例を示している。測定された作動圧力があらかじめ決められた閾値、たとえば15Nを超えると、光学手段26、28、ここでは、光学信号40の送信機26と受信機28が作動される。送信機26と受信機28の間で1滴が形成されると光学信号40が妨害されるので、強い妨害が発生する。こうした妨害は、滴が分配穴16から切り離されると消える。
【0064】
図12は、分配装置14の重力の測定によって
図10の実施例の工程E7で計算された残留体積値を検証することが可能な、決定方法の別の例を示している。工程E1~E7は、
図10の例と同様であるので示していない。工程E7での残留体積の計算に続いて、傾斜測定手段は情報処理システム23にデータを供給し続ける。情報処理システムは、垂直位置をテストする工程E8を実施する。分配装置14および/または補助装置10がその休止位置に戻ると、情報処理システム23は垂直位置を確定し、分配装置14の重量の測定工程E9が補助装置10の適切な手段により実施される。1つの変形実施形態では、工程E8が実施されず、すなわち、たとえば滴の分配に続いて分配装置14の傾斜が大きく変動した後、分配装置14および/または補助装置10の傾斜とは関係なく、分配装置14の重量を測定する。工程E9で測定される重量は、分配装置14のキャップ15の有無に応じて異なる。そのため、キャップ15が所定の位置に戻っているかを検証する工程E10を実施する。こうした検証は、補助装置10にこの情報を供給するユーザが手動で実施するか、あるいは、いっそう有利には、補助装置10に配置されるキャップ15の検知手段により実施される。キャップ15の検知手段は、たとえば機械接触センサあるいは作動圧による接触センサ、または、いっそう有利には光学手段を含むことができる。実際、光学信号40の妨害の種類に応じて、情報処理システム23および/または光学手段26、28は、1滴の液体の存在またはキャップ15の存在を識別することができる。工程E10で得られた結果に応じて、情報処理システム23は、工程E11で、測定された重量に基づいてリザーバ32内に残っている液体量を計算する。
【0065】
図13は、
図12の実施形態の変形実施形態である。この変形実施形態では、キャップ15が所定の位置に戻ったかどうかの検証工程E10が、計算されたデータ、あらかじめ構成されたデータ、および/または分配装置14で読み取られたデータを用いて、もっぱら情報処理システム23により実施される。この工程E10’は、2つの連続する下位工程E10’aとE10’bを含む。工程E10’aでは、情報処理システム23は、(工程E6で得られた)残留体積の重量と、キャップ15があるとき(またはないとき)の分配装置14の自重とを加算することによってキャップ15があるとき(またはないとき)の分配装置14の重量を推定する。工程E10’bでは、情報処理システム23が、測定された重量と、キャップ15があるとき(またはないとき)の分配装置14の推定重量とを比較する。測定された重量が、キャップ15があるときの分配装置14の推定重量よりずっと小さいか、および/または、キャップ15がないときの分配装置14の推定重量にほぼ等しい場合、情報処理システム23は、そこから、キャップ15が分配装置14に戻されなかったと判断する。測定された重量が、キャップ15がないときの分配装置14の推定重量よりずっと大きいか、キャップ15があるときの分配装置14の推定重量にほぼ等しい場合、情報処理システムは、そこから、キャップ15が適切に所定の位置に戻されたと判断する。情報処理システム23は、工程E10’で得られた結果に応じて、工程E11で、測定された重量から、キャップ15があるときまたはないときの分配装置14の自重を減算することにより、リザーバ32内に残っている液体量を計算する。
【0066】
図示されていない1つの変形実施形態によれば、ユーザが押圧エリアに及ぼす作動圧力は、補助装置に結合される分配装置の重量を測定するための手段を介して決定される。柔軟性のあるリザーバの場合、リザーバは、作動圧力によりその直径が半径方向に、またその長さが長手方向に変形する。長さの変形は、秤によって測定可能であり、作動圧力についての情報が導き出される。この変形実施形態では、接触エリアがユーザの押圧エリアと異なる。
【0067】
本発明は、以上の実施形態に制限されるものではなく、当該技術の専門家にとって他の様々な実施形態が明らかになるであろう。たとえば補助装置、分配キット、またはニーズに合った決定方法を得るために、示された各手段の多様な組み合わせを行うことが可能である。