(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】非極性有機ポリマーおよび超低湿潤性カーボンブラックの複合物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240404BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240404BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240404BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
H01B1/24 E
C08L23/02
(21)【出願番号】P 2020550130
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 US2019023505
(87)【国際公開番号】W WO2019190899
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ラン、ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、シンティー
(72)【発明者】
【氏名】トラン、マイケル、キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリガンディ、ポール、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー、エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーチー
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-505975(JP,A)
【文献】特表2004-510836(JP,A)
【文献】特開2001-040148(JP,A)
【文献】特開2001-310980(JP,A)
【文献】特表2020-524362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導電性複合材料であって、
(A)非極性ポリオレフィンポリマー、
(B)導電有効量である20重量%未満の超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)であって、Brunauer-Emmett-Teller(BET)窒素表面積試験方法によって測定された、35~190平方メートル/グラム(m
2/g)のBET窒素表面積と、吸油量試験方法によって測定された、115~180ミリリットル油/100グラム(mL/100g)の吸油量(OAN)と、吸湿性試験方法によって測定された、400~2400百万分率(ppm、重量)の吸水性と、を有する、超低湿潤性カーボンブラック、及び、
5.0重量%未満の極性有機ポリマーを含む、半導電性複合材料。
【請求項2】
前記(B)ULW-CBが、限定(i)~(iii):(i)前記(B)ULW-CBが、前記BET窒素表面積試験方法によって測定された、40~63m
2/gのBET窒素表面積と、前記吸油量試験方法によって測定された、120~150mL/100gのOANと、を有する、(ii)前記(B)ULW-CBが、前記BET窒素表面積試験方法によって測定された、120~180m
2/gのBET窒素表面積と、前記吸油量試験方法によって測定された、150~175mL/100gのOANと、を有する、ならびに(iii)前記(B)ULW-CBが、(i)および(ii)の前記ULW-CBのブレンドである、のうちのいずれか1つによって特徴付けられる、請求項1に記載の半導電性複合材料。
【請求項3】
前記(B)ULW-CBが、限定(i):(i)前記BET窒素表面積試験方法によって測定された、40~180m
2/gのBET窒素表面積によって特徴付けられる、請求項1に記載の半導電性複合材料。
【請求項4】
前記超低湿潤性カーボンブラック以外のカーボンブラックを含まない、請求項1~
3のいずれか1項に記載の半導電性複合材料。
【請求項5】
限定(i)~(v):(i)前記半導電性複合材料の総重量に基づいて、61.0~99.0重量%の前記(A)非極性ポリオレフィンポリマー、および19.0~1.5重量%の前記(B)ULW-CBを含む、(ii)前記(A)非極性ポリオレフィンポリマーが、非極性エチレン系ポリマーである、(iii)(i)および(ii)の両方、(iv)前記(A)非極性ポリオレフィンポリマーが、非極性プロピレン系ポリマーである、ならびに(v)(i)および(iv)の両方、のうちのいずれか1つによって特徴付けられる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の半導電性複合材料。
【請求項6】
(C)プラストマー、(D)酸化防止剤、(E)有機過酸化物、(F)スコーチ遅延剤、(G)アルケニル官能性補助剤、(H)核形成剤、(I)加工助剤、(J)エキステンダー油、(K)安定剤(例えば、紫外線(UV)光に関連する劣化を抑制する化合物)から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の半導電性複合材料。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導電性複合材料の作製方法であって、導電有効量である20重量%未満の前記(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)を、前記(A)非極性ポリオレフィンポリマーの溶融物に混合して、成分(A)および(B)を含む溶融ブレンドとして、前記半導電性複合材料を得ることを含む、方法。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導電性複合材料を硬化させた生成物である架橋ポリエチレン生成物。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の、もしくは請求項
7に記載の方法によって作製された半導電性複合材料、または請求項
8に記載の架橋ポリエチレン生成物の成形形態を含む、製造物品。
【請求項10】
導電性コアと、前記導電性コアを少なくとも部分的に被覆する半導電性層と、を含む導電体デバイスであって、前記半導電性層の少なくとも一部が、請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導電性複合材料、請求項
7に記載の方法によって作製された半導電性複合材料、または請求項
8に記載の架橋ポリエチレン生成物を含む、デバイス。
【請求項11】
電気の伝導方法であって、請求項
10に記載の導電体デバイスの導電性コアにわたって電圧を印加して、前記導電性コアを通る電気の流動を発生させることを含む、方法。
【請求項12】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導電性複合材料を、前記半導電性複合材料を170℃~190℃に1~5分間加熱することを含む熱サイクルに付し、次いで30℃に冷却して、冷却された熱サイクル半導電性複合材料を得ることを含む、熱サイクル半導電性複合材料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機ポリマーおよびカーボンブラックの複合物、ならびに関連する態様。
【背景技術】
【0002】
この分野における特許としては、US6,277,303(B1)、US6,284,832(B1)、US6,331,586(B1)、US7,767,910(B2)が挙げられる。US6,277,303(B1)およびUS6,284,832(B1)の例では、Vulcan XC 72カーボンブラックが使用される。US6,331,586(B1)の例では、Printex XE2カーボンブラック(DeGussa)、Black Pearls 1000カーボンブラック(Cabot Corp.)、Vulcan XC 72カーボンブラック(Cabot Corp.)、Ketjenblack EC600JDカーボンブラック(Akzo)、Vulcan Pカーボンブラック(Cabot Corp.)、United 120カーボンブラック(Cabot Corp.)、またはDenka Blackカーボンブラック(Denka)のうちの1種が使用される。US7,767,910(B2)の例では、Vulcan XC 500カーボンブラックが使用される。Cabot Corp.は、Cabot Corporation(Billerica,Massachusetts,USA)である。別のカーボンブラックは、Acetylene Black AB 100%-01(Soltex,Inc.、Houston,Texas,USA)である。上記のカーボンブラックの各々は、超低湿潤性特性を有さない。
【発明の概要】
【0003】
中~超高電圧電力ケーブルの半導電性層に使用される従来の半導電性複合材料中のカーボンブラックの含有量が高いと、望ましくない問題が発生し得ることを認識した。これらは、電力ケーブルの運用中の、半導電性層への望ましくない高い吸湿性を含む。これらの半導電性複合材料中のカーボンブラックの含有量が低すぎると、高すぎる体積抵抗率または電気的パーコレーションの欠如などの、電力ケーブルにおいて他の望ましくない問題が発生し得ることも確認した。課題は、材料の望ましい電気的特性を損なうことなく、半導電性複合材料中のカーボンブラック含有量を低減させることである。
【0004】
これらの問題を解決するための従来の試みとして、部分的に非混和性の極性ポリマーおよび非極性ポリマーを、従来のカーボンブラックと組み合わせて、少なくとも1つの連続ポリマー相を有する半導電性複合材料を形成した。従来のカーボンブラックの一部は、連続相のうちの1つ、または2つの相の間の界面に位置し、カーボンブラックの一部は、不連続相に位置する。ほとんど分離する相中で、カーボンブラックの部分的な分離のみ、および/またはカーボンブラックの不十分な分散のため、結果は、多くの場合不満足であった。本明細書において、高すぎるカーボンブラック含有量、および低すぎるカーボンブラック含有量の悪影響を、非混和性の極性ポリマーおよび非極性ポリマーを使用することなく克服する、代替の単純化された技術的解決策が提供される。技術的解決策の実施形態は、以下に記載されるものを含む。
【0005】
非極性有機ポリマーおよび導電有効量の超低湿潤性カーボンブラックから本質的になる、半導電性複合材料。
【0006】
半導電性複合材料の作製方法。
【0007】
導電体コアと、その上に配置された半導電性層とを含む導電体デバイス、半導電性複合材料を含む半導電性層。
【0008】
導電体デバイスの導電体コアを介する送電方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概要および要約は、参照により本明細書に援用される。
【0010】
超低湿潤性カーボンブラックの超低湿潤性の性質は、任意の好適な技術または方法によって特徴付けられ得る。例としては、吸油量(OAN)、吸湿量、および表面湿潤性プロファイルがあり、これらのすべては後述される。
【0011】
非極性有機ポリマーは、半導電性複合材料から省略および除外される極性有機ポリマーとは構造が異なる。非極性有機ポリマーは、1つまたは2つの炭素-炭素二重結合を含有する非置換オレフィンモノマーを重合することによって作製される任意のホモポリマーであり得るか、または1つまたは2つの炭素-炭素二重結合を独立して含有する2つ以上の異なる非置換オレフィンモノマーを重合することによって作製される任意のコポリマーであり得る。そのような各オレフィンモノマーは、独立して、非環式または環式であり得る。非環式オレフィンモノマーは、直鎖または分岐鎖であり得、直鎖オレフィンモノマーは、アルファ-オレフィンまたは直鎖ジエンであり得る。非極性有機ポリマーは、ケイ素原子を含まなくてもよく、あるいはその中に共重合またはそれにグラフト化されたオレフィン官能性加水分解性シランコモノマーを含有し得る。
【0012】
いくつかの態様では、非極性有機ポリマーは、非極性エチレン系ポリマーであり得る。非極性エチレン系ポリマーは、それぞれ、50~100重量パーセント(重量%)のエチレン(H2C=CH2)から誘導された構成単位と、50~0重量%の少なくとも1種のエチレン以外の非置換オレフィンコモノマーおよび/またはオレフィン官能性加水分解性シランコモノマーから誘導された構成単位とから本質的になる。オレフィンコモノマーは、非置換(C3~C20)オレフィン、あるいは非置換(C4~C20)オレフィン、あるいは非置換(C4~C8)オレフィン、あるいは1-ブテン、あるいは1-ヘキセン、あるいは1-オクテンであり得る。非極性エチレン系ポリマーは、ポリエチレンホモポリマーまたはエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり得る。非極性エチレン系ポリマーは、ケイ素原子を含まなくてもよく、あるいはその中に共重合またはそれにグラフト化されたオレフィン官能性加水分解性シランコモノマーを含有し得る。非極性プロピレン系ポリマーは、50~100重量%のプロピレン(H2C=CHCH3)から誘導された構成単位と、50~0重量%のエチレン、(C4~C20)アルファ-オレフィン、(C4~C20)ジエン、およびそれらの任意の2種以上の組み合わせから選択される炭化水素であるオレフィンコモノマーから誘導された構成単位とから本質的になり得る。
【0013】
ある特定の発明の実施形態を、相互参照を容易にするために番号付きの態様として以下に説明する。
【0014】
態様1.(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)と、導電有効量の(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)であって、Brunauer-Emmett-Teller(BET)窒素表面積試験方法(後述)によって測定された、35~190平方メートル/グラム(m2/g)のBET窒素表面積と、吸油量試験方法(後述)によって測定された、115~180ミリリットル油/100グラム(mL/100g)(115~180立方メートル/100グラム(cc/100g))の吸油量(OAN)と、を有する、超低湿潤性カーボンブラックと、から本質的になる、半導電性複合材料。(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)は、後述される表面エネルギー試験方法によって測定された、0超~5ミリジュール/平方メートル(mJ/m2)以下の表面エネルギーの極性構成要素によって特徴付けられ得る。(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)は、単一の低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)などの、単峰性分子量分布(MWD、Mw/Mn)を有する単一構成要素ポリマーであり得る。あるいは、(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)は、二峰性LDPEにおけるような、多峰性MWD(Mw/Mn)ポリマーを有する多構成要素ポリマーであり得る。(A)の多峰性MWDポリマーの実施形態は、2つの異なる触媒(例えば、チーグラー・ナッタ触媒およびメタロセン触媒、または2つの異なるメタロセン触媒)、もしくは2つの異なる反応器条件下で同じ触媒を使用して単一の反応器内で作製され得るか、または2つの異なる反応器内で作製され得るか、または単峰性MWD LDPEと単峰性MWD直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とをブレンドすることなどの、2種の異なる単峰性MWDポリマーを一緒にブレンドすることによって作製され得る。
【0015】
態様2.(B)ULW-CBが、限定(i)~(iii):(i)(B)ULW-CBが、BET窒素表面積試験方法によって測定された、40~63m2/gのBET窒素表面積と、吸油量試験方法によって測定された、120~150mL/100gのOANと、を有する、(ii)(B)ULW-CBが、BET窒素表面積試験方法によって測定された、120~180m2/gのBET窒素表面積と、吸油量試験方法によって測定された、150~175mL/100gのOANと、を有する、(iii)(B)ULW-CBが、(i)および(ii)のULW-CBのブレンドである、のうちのいずれか1つによって特徴付けられる、態様1に記載の半導電性複合材料。(i)の例は、LITX 50導電性添加剤である。(ii)の例は、LITX 200導電性添加剤である。(iii)の例は、LITX 50とLITX 200導電性添加剤のブレンドである。LITX 50およびLITX 200導電性添加剤は、リチウムイオン電池の電極に使用するための、Cabot Corporationのカーボンブラック製品である。LITX 50導電性添加剤は、いくつかの態様では、BET窒素表面積試験方法によって測定された、45~60m2/gのBET窒素表面積と、吸油量試験方法によって測定された、125~145mL/100gのOANと、によって特徴付けられる(B)ULW-CBを有する。LITX 200導電性添加剤は、いくつかの態様では、BET窒素表面積試験方法によって測定された、125~175m2/gのBET窒素表面積と、吸油量試験方法によって測定された、152~172mL/100gのOANと、によって特徴付けられる(B)ULW-CBを有する。
【0016】
態様3.(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)と、導電有効量の(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)であって、湿潤性試験方法(後述)に従って、逆ガスクロマトグラフィー(IGC)によって測定された、0.02の表面被覆率での0.0101以下の湿潤性、0.04の表面被覆率での0.0101以下の湿潤性、および0.06の表面被覆率での0.0099以下の湿潤性、および0.08の表面被覆率での0.0111以下の湿潤性、および0.10の表面被覆率での0.0113以下の湿潤性によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイルを有する、超低湿潤性カーボンブラックと、から本質的になる、半導電性複合材料。
【0017】
態様4.(B)ULW-CBが、限定(i)~(vii):(i)BET窒素表面積試験方法によって測定された、40~180m2/g、あるいは40~63m2/g、あるいは150~175m2/gのBET窒素表面積、(ii)吸湿性試験方法(後述)によって測定された、400~2400百万分率(ppm、重量)、あるいは450~1,000ppm、あるいは501~600ppmの吸水性、iii)湿潤性試験方法に従って、IGCによって測定された、0.02の表面被覆率での0.0058以下の湿潤性、および0.04の表面被覆率での0.0070以下の湿潤性、および0.06の表面被覆率での0.0075以下の湿潤性、および0.08の表面被覆率での0.0086以下の湿潤性、および0.10の表面被覆率での0.0091以下の湿潤性によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイル、あるいは湿潤性試験方法に従って、IGCによって測定された、0.02の表面被覆率での0.0014以下の湿潤性、および0.04の表面被覆率での0.0039以下の湿潤性、および0.06の表面被覆率での0.0051以下の湿潤性、および0.08の表面被覆率での0.0061以下の湿潤性、および0.10の表面被覆率での0.0069以下の湿潤性によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイル、(iv)(i)および(ii)の両方、(v)(i)および(iii)の両方、(vi)(ii)および(iii)の両方、(vii)(i)、(ii)、および(iii)の組み合わせ、のうちのいずれか1つによって特徴付けられる、態様1~3のいずれか1つに記載の半導電性複合材料。LITX 50およびLITX 200導電性添加剤は、独立して、上記の表面湿潤性プロファイルを有する。いくつかの態様では、(B)ULW-CBは、半導電性複合物中で10重量%の量で測定された(B)ULW-CBの総BET窒素表面積が、BET窒素表面積試験方法によって測定された、6.0m2/g未満であるように特徴付けられる。(B)ULW-CBはまた、従来のカーボンブラックに比較して、極端に低い吸湿性も有する。
【0018】
態様5.超低湿潤性カーボンブラック以外のカーボンブラックを含まない、態様1~4のいずれか1つに記載の半導電性複合材料。
【0019】
態様6.限定(i)~(v):(i)半導電性材料の総重量に基づいて、61.0~99.0重量%の(A)非極性ポリオレフィンポリマー、および39.0~1.0重量%の(B)ULW-CBから本質的になる、(ii)(A)非極性ポリオレフィンポリマーが、非極性エチレン系ポリマーである、(iii)(i)および(ii)の両方、(iv)(A)非極性ポリオレフィンポリマーが、非極性プロピレン系ポリマーである、ならびに(v)(i)および(iv)の両方、のうちのいずれか1つによって特徴付けられる、態様1~5のいずれか1つに記載の半導電性複合材料。
【0020】
態様7.(C)プラストマー、(D)酸化防止剤、(E)有機過酸化物、(F)スコーチ遅延剤、(G)アルケニル官能性補助剤、(H)核形成剤、(I)加工助剤、(J)エキステンダー油、(K)安定剤(例えば、紫外線(UV)光に関連する劣化を抑制する化合物)から選択される少なくとも1種の添加剤からさらに本質的になる、態様1~6のいずれか1つに記載の半導電性複合材料。少なくとも1種の添加剤は、少なくとも組成において成分(A)および(B)とは異なる。
【0021】
態様8.異なる量の(B)ULW-CBを有するそれらの第1のシリーズの実施形態によって特徴付けられ、第1のシリーズが、体積抵抗率試験方法(後述)によって測定された33重量%の導電有効量で1.0log(オーム-センチメートル(オーム-cm))未満、および20重量%の導電有効量で4.5log(オーム-cm)未満、および15重量%の導電有効量で10.0log(オーム-cm)未満、および10重量%の前記導電有効量で16.5log(オーム-cm)未満、および5重量%の導電有効量で17.5log(オーム-cm)未満のlog(体積抵抗率)プロファイルを有し、(B)ULW-CBの導電有効量が、半導電性複合材料の総重量に基づく、態様1~7のいずれか1つに記載の半導電性複合材料。いくつかの態様では、第1のシリーズは、33重量%の導電有効量で0.61~0.90log(オーム-cm)、および20重量%の導電有効量で1.3~4.4log(オーム-cm)、および15重量%の導電有効量で7.5~9.9log(オーム-cm)、および10重量%の導電有効量で15.1~16.4log(オーム-cm)、および5重量%の導電有効量で16.1~17.4log(オーム-cm)のlog(体積抵抗率)プロファイルを有し、(B)ULW-CBの導電有効量は、半導電性複合材料の総重量に基づく。
【0022】
態様9.(B)ULW-CBの異なる総BET N2表面積を有するそれらの第2のシリーズの実施形態によって特徴付けられ、第2のシリーズが、体積抵抗率試験方法によって測定された15.0~20.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で2Log(オーム-cm)以下、および10.0~15.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で4Log(オーム-cm)以下、および7.5~10m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で10Log(オーム-cm)以下、および5.0~7.5m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で16Log(オーム-cm)以下、および2.5~5.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で17.1Log(オーム-cm)以下のlog(体積抵抗率)プロファイルを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の半導電性複合材料。いくつかの態様では、第2のシリーズは、15.0~20.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で0.5~1.9Log(オーム-cm)、および10.0~15.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で1.7~3.9Log(オーム-cm)、および7.5~10m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で8.1~9.9Log(オーム-cm)、および5.0~7.5m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で14.0~15.9Log(オーム-cm)、および2.5~5.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で16.5~17.1Log(オーム-cm)のlog(体積抵抗率)プロファイルを有する。いくつかの態様では、第2シリーズのlog(体積抵抗率)プロファイルは、20.0~30.0m2/gの複合体中のカーボンブラックの総BET N2表面積で0.7Log(オーム-cm)以下、あるいは0.3~0.6log(オーム-cm)によってさらに特徴付けられる。態様8の第1のシリーズ(またはセット)の実施形態は、態様9の第2のシリーズ(またはセット)の実施形態と同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
態様10.態様1~9のいずれか1つに記載の半導電性複合材料の作製方法であって、(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)を、(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)の溶融物に混合して、成分(A)および(B)を含む溶融ブレンドとして、半導電性複合材料を得ることを含む、方法。いくつかの態様において、本方法は、1種以上の添加剤(例えば、成分(C)~(K)のうちの1種以上)を、(A)の溶融物に混合することをさらに含む。本方法はまた、溶融ブレンドを押し出して、半導電性複合材料の押出物を得ることも含み得る。いくつかの態様において、方法は、溶融ブレンドまたは押出物を冷却して、それぞれ固体ブレンドまたは固体押出物を得ることをさらに含む。
【0024】
態様11.態様1~9のいずれか1つに記載の半導電性複合材料を硬化させた生成物である架橋ポリエチレン生成物。いくつかの態様では、半導電性複合材料は、硬化される必要があり、0.1~3重量%の(E)有機過酸化物と、それぞれ98.80重量%または98.75重量%以下の(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)をさらに含む。
【0025】
態様12.態様1~9のいずれか1つに記載の、もしくは態様10に記載の方法によって作製された半導電性複合材料、または態様11に記載の架橋ポリエチレン生成物の成形形態を含む製造物品。製造物品の成形形態は、円筒形、螺旋形、または不規則であってもよい。いくつかの態様では、製造物品は、態様13(以下)の導電体デバイスの半導電性層であり得る。いくつかの態様では、製造物品は、態様13の導電体デバイスであり得る。
【0026】
態様13.導電性コアと、導電性コアを少なくとも部分的に被覆する半導電性層と、を含む導電体デバイスであって、半導電性層の少なくとも一部が、態様1~9のいずれか1つに記載の半導電性複合材料、態様10に記載の方法によって作製された半導電性複合材料、または態様11に記載の架橋ポリエチレン生成物を含む、デバイス。導電体デバイスの半導電性層中の半導電性複合材料の量は、半導電性複合材料が、シールド層(導電体またはストランドシールド、絶縁シールド)、ならび低、中、高、および超高電圧を含む送電/配電ケーブルの保護ジャケットとして使用される場合、導電性を提供して、電荷を散逸させるのに有効である量であり得る。有効量は、半導電性複合材料が、100,000オーム-cm未満、あるいは0超~100,000オーム-cm未満、あるいは0超~50,000オーム-cm未満の体積抵抗率を達成するのに十分な量であり得る。半導電性層は、その少なくとも一部が、本発明の複合材料または生成物である単一層から構成され得るか、またはその少なくとも一層が、本発明の複合材料または生成物を含む多層から構成され得る。導電体デバイスは、コーティングされたワイヤまたは電力ケーブルであり得る。導電体デバイスは、低、中、高、および超高電圧用途を含む送電/配電用途に有用である。
【0027】
態様14.電気の伝導方法であって、態様13に記載の導電体デバイスの導電性コアにわたって電圧を印加して、導電性コアを通る電気の流動を発生させることを含む、方法。印加電圧は、低(0キロボルト(kV)超~5kV未満)、中(5~69kV未満)、高(69~230kV)、または超高(230kV超)電圧である。
【0028】
態様15.態様1~9のいずれか1つに記載の半導電性複合材料を、半導電性複合材料を170℃~190℃に1~5分間加熱することを含む熱サイクルに付し、次いで30℃に冷却して、冷却された熱サイクル半導電性複合材料を得ることによって作製された熱サイクル半導電性複合材料。任意選択的に、加熱工程は、冷却された熱サイクル半導電性複合材料に対して1回以上繰り返され得る。熱サイクルの例については、熱サイクル試験方法で後述する。
【0029】
先行する態様のいずれか1つの非極性ポリオレフィンポリマーは、非極性エチレン系ポリマー、あるいは非極性プロピレン系ポリマー、あるいは非極性エチレン系ポリマーと非極性プロピレン系ポリマーとのブレンドであり得る。
【0030】
半導電性複合材料の文脈で「から本質的になる」とは、半導電性複合材料が、極性有機ポリマーの5.0重量%未満、あるいは1.0重量%未満を含有するか、あるいは含まない(すなわち、追加のまたは検出可能な量を含有しない、例えば、0.0重量%)ことを意味する。極性有機ポリマーは、極性有機ホモポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリアミド)または極性有機コポリマー(例えば、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー)であり得る。例えば、半導電性複合材料は、エチレンと、不飽和カルボン酸またはエステルであるコモノマーとから作製されるエチレン系コポリマーなどの極性エチレン系コポリマーを含まない。いくつかの態様では、半導電性複合材料はまた、極性有機ポリマーまたはコポリマーを含まず、モノマーおよび任意のコモノマー(複数可)の少なくとも1種は、分子当たりハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、またはI)および/または(アルコール基の)C-O、(エポキシドまたはエーテル基の)C-O-C、(アルデヒドまたはケトン基の)C=O、(カルボン酸基の)C(=O)-O、(カルボキサミド基の)C(=O)-N、(尿素基の)N-C(=O)-N、(アミン基の)C-N、(イミンまたはオキシム基の)C=N、(アミジン基の)C(=N)-N、(グアニジン基の)N-C(=N)-N、(ニトリル基の)C≡N、(チオカルボン酸またはエステル基の)C(=O)-S、(メルカプタン基の)C-S、(スルフィド基の)C-S-Cなどの、炭素結合ヘテロ原子基、またはそのような高分子の集合を含有する。いくつかの実施形態では、半導電性複合材料はまた、ポリスチレンなどのポリ(ビニルアレーン)も含まない。
【0031】
「ポリマー」とは、ホモポリマーまたはコポリマーを意味する。ホモポリマーは、1つのモノマーのみから誘導されたモノマー単位で構成される高分子であり、コモノマーはない。コポリマーは、モノマー単位およびコモノマー単位を有する高分子であり、モノマー単位は、第1のモノマーを重合することによって作製され、コモノマー単位は、コモノマーと称される、1種以上の異なる第2のモノマーまたはそれ以上のモノマーを重合することによって作製される。ポリマーはまた、そのような高分子の集合も含む。モノマーおよびコモノマーは重合性分子である。モノマー単位または「マー」とも呼ばれるモノマー単位は、単一のモノマー分子によって高分子(複数可)の構造に寄与される(誘導される)最大の構成単位である。コモノマー単位または「コマー」とも呼ばれるコモノマー単位は、単一のコモノマー分子によって(それから誘導される)高分子の構造に寄与される最大の構成単位である。各単位は典型的には二価である。「バイポリマー」は、モノマーと1つのコモノマーとから製造されるコポリマーである。「ターポリマー」は、モノマーと2つの異なるコモノマーとから製造されるコポリマーである。エチレン性コポリマーは、モノマー単位がモノマーエチレン(CH2=CH2)から誘導され、平均して高分子の分子当たり少なくとも50重量パーセントを構成し、コモノマー単位が本明細書に記載の1つまたは複数のコモノマーから誘導され、平均して分子当たり0超から最大で50重量パーセントを構成するようなコポリマーである。
【0032】
「硬化」および「架橋」とは、本明細書では互換的に使用されて、架橋生成物(網目構造ポリマー)を形成することを意味する。
【0033】
「導電有効量」とは、半導電性複合材料中の超低湿潤性カーボンブラックの量が、そのパーコレーション閾値を超えるのに十分であることを意味する。すなわち、超低湿潤性カーボンブラックの量は、それ自体で、ULW-CBを介して半導電性複合材料を通しての導電を可能にするのに十分である。導電体上に配置された半導電性層において、導電有効量を有する半導電性複合材料は、100,000オーム-cm未満の体積抵抗率を達成するであろう。
【0034】
特に明記しない限り、log(オーム-cm)の「log(体積抵抗率)」は、熱サイクルを行わなかった試料で測定される。「log(体積抵抗率)(熱サイクルなし)」と記載されることもある。すべての疑いを取り除くために、番号の付いた態様および請求項で示されるlog(オーム-cm)値は、log(体積抵抗率)(熱サイクルなし)値である。
【0035】
「(メタ)アクリレート」としては、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。(メタ)アクリレートは、非置換であってもよい。
【0036】
「極性有機コポリマー」:モノマーおよび0、1種以上のコモノマーから調製される高分子、モノマーおよびコモノマー(複数可)の少なくとも1種は、分子当たりハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、またはI)および/または(アルコール基の)C-O、(エポキシドまたはエーテル基の)C-O-C、(アルデヒドまたはケトン基の)C=O、(カルボン酸またはエステル基の)C(=O)-O、(カルボキサミド基の)C(=O)-N、(尿素基の)N-C(=O)-N、(アミン基の)C-N、(イミンまたはオキシム基の)C=N、(アミジン基の)C(=N)-N、(グアニジン基の)N-C(=N)-N、(ニトリル基の)C≡N、(チオカルボン酸またはエステル基の)C(=O)-S、(メルカプタン基の)C-S、(スルフィド基の)C-S-Cなどの、炭素結合ヘテロ原子基、またはそのような高分子の集合を含有する。
【0037】
半導電性複合材料。成分(A)である単一の非極性ポリマーから本質的になり、(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)のパーコレーション有効充填量を含有する。複合材料は、任意選択的に、添加剤(C)~(K)などの添加剤のうちの0または1種以上から本質的になり得る。半導電性複合材料の総重量は、100.00重量%である。
【0038】
半導電性複合材料は、多くの異なる方法によって作製され得る。いくつかの態様では、半導電性複合材料は、(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)の溶融物を、(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)、および任意の成分(例えば、成分(C)~(K)の0、1種以上)と混合して、成分(A)、(B)、および任意選択の成分の混合物として、半導電性複合材料を得ることによって作製され得る。混合には、調合、混練、または押出が含まれ得る。混合を促進するために、1種以上の成分(例えば、(B)、添加剤(C)、(D)、(E)など)は、(A)の一部に、添加剤マスターバッチの形態で、または(A)以外の非極性キャリア樹脂中の分散液として提供され得る。非極性キャリア樹脂は、ポリプロピレンポリマーであり得る。
【0039】
添加剤(C)~(K)などの1種以上の任意選択の成分を含有する半導電性複合材料が作成され得る別の方法は、(A)および(B)超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)からなる、半導電性複合材料の非溶融形態、例えばペレット形態を作製すること、および非溶融形態を任意選択の成分と接触させることによる。接触は、浸漬、吸収または注入を含み得る。接触は、約20℃~100℃の温度で0.1~100時間、例えば、60℃~80℃で0.1~24時間実施され得る。
【0040】
半導電性複合材料は、一液型調合物、あるいは二液型調合物あるいは三液型調合物などの多液型調合物として調製され得る。一液型調合物は、半導電性複合材料の実施形態のすべての成分を含有する。多液型調合物は、異なるもの、または異なる部分中の半導電性複合材料の実施形態の成分の異なる量を有する多液を含有する。所望により、多液型調合物の異なる部分を組み合わせて、一液型調合物を提供してもよい。成分の任意の組み合わせをこれらの調合物の一部(複数可)に含めることができない固有の理由はない。
【0041】
半導電性複合材料は、分割固体形態または連続形態であり得る。分割固体形態は、顆粒、ペレット、粉末、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含んでもよい。連続形態は、成形部品(例えば、ブロー成形部品)、または押出部品(例えば、導電体デバイスの絶縁層)であり得る。半導電性複合材料は、照射硬化または有機過酸化物/熱硬化によって架橋可能であり得る。必要に応じて、半導電性複合材料は、貯蔵温度(例えば、23℃)に冷却されて、1時間、1週間、1か月、またはそれ以上の期間貯蔵され得る。
【0042】
成分(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)。(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、単一構成要素の非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー(単峰性分子量分布を有する)、または2種以上のそのような非極性ポリオレフィンポリマーのブレンドであり得る。各(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、架橋可能または架橋(硬化)された単相または多相(例えば、非晶相および結晶相)材料であり得る。コポリマーは、バイポリマー、ターポリマーなどを含む。
【0043】
(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、99~100重量%のエチレン性モノマー単位を含有するポリエチレンホモポリマーであり得る。ポリエチレンホモポリマーは、配位重合により作製された高密度ポリエチレン(HDPE)ホモポリマー、またはラジカル重合により作製された低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーであってもよい。
【0044】
あるいは、(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、50~<100重量%のエチレン性モノマー単位、および50~0重量%の(C3~C20)アルファ-オレフィン誘導コモノマー単位を含有するエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり得る。(A)のエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの実施形態は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)であり得る。あるいは、ポリエチレンポリマーは低密度ポリエチレン(LDPE)であってもよい。インターポリマーの全重量を基準として少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%のα-オレフィン含量を有するエチレン/アルファ-オレフィン(α-オレフィン)インターポリマー。これらのインターポリマーは、インターポリマーの全重量を基準として50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、または35重量%未満のα-オレフィン含量を有してもよい。例示的なエチレン/α-オレフィンインターポリマーは、エチレン/プロピレン、エチレン/1-ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、20~1重量%のジエンコモノマー単位を含むエチレン/ジエン、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/1-ブテン、エチレン/1-ブテン/1-オクテン、50~100重量%のエチレンモノマー単位、49~0重量%超のプロピレンコモノマー単位、および20~1重量%のジエンコモノマー単位を含むエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)である。エチレン/ジエンコポリマーまたはEPDM中のジエンコモノマー単位を独立して作製するために使用されるジエンは、1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0045】
(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)のエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー態様の(C3~C20)アルファ-オレフィンは、式(I):H2C=C(H)-R(I)の化合物であり得、式中、Rは、直鎖(C1~C18)アルキル基である。(C1~C18)アルキル基は、1~18個の炭素原子を有する一価の非置換オレフィンである。R基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、およびオクタデシルである。いくつかの実施形態において、(C3~C20)アルファオレフィンは、1-プロペン、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテン;あるいは1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテン;あるいは1-ブテンまたは1-ヘキセン;あるいは1-ブテンまたは1-オクテン;あるいは1-ヘキセンまたは1-オクテン;あるいは1-ブテン;あるいは1-ヘキセン;あるいは1-オクテン;あるいは、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンの任意の2つの組み合わせである。あるいは、アルファ-オレフィンは、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα-オレフィンをもたらす、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環状構造を有してもよい。(C3~C20)アルファ-オレフィンは、エチレンモノマーとコモノマーとして使用することができる。
【0046】
あるいは、(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、エチレン/オレフィン官能性シランコポリマーであり得る。エチレン/オレフィン官能性シランコポリマーを作製するために使用されるオレフィン官能性シランコポリマーは、ChaudharyによるWO2016/200600(A1)(2016年5月24日に出願されたPCT/US16/033879)の項[0019]、またはMeverdenらによるUS5,266,627の加水分解性シランコモノマーであり得る。オレフィン官能性加水分解性シランは、(A)のコポリマー実施形態にグラフト化(ポスト反応器)され得る。あるいは、オレフィン官能性加水分解性シランをエチレンおよびコモノマーと共重合させて、加水分解性シリル基を含むコポリマーの実施形態を直接作製してもよい。いくつかの態様において、オレフィン官能性加水分解性シランは、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビニルトリアセトキシシラン、またはγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランであり、加水分解性シリル基は、2-トリメトキシシリルエチル、2-トリエトキシシリルエチル、2-トリアセトキシエチルで、または3-トリメトキシシリルプロピルオキシカルボニルエチルもしくは3-トリメトキシシリルプロピルオキシカルボニルプロピルである。
【0047】
(A)非極性ポリオレフィンポリマーは、2種以上の異なる(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系および/もしくはプロピレン系ポリマー)のブレンド、または2種以上の異なる触媒を用いる重合反応の反応器生成物であり得る。(A)非極性ポリオレフィンポリマー、例えば、The Dow Chemical Companyの非極性エチレン系ポリマー、ELITE(商標)ポリマーなどは、2つ以上の反応器内で作製され得る。
【0048】
(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)は、その多くが知られている任意の好適なプロセスによって作製され得る。(A)を調製するために、ポリエチレンポリマーを生成するための任意の従来のまたは今後発見されるプロセスが使用され得る。典型的には、生成プロセスは、1つまたは複数の重合反応を含む。例えば、LDPEは、高圧重合プロセスを使用して調製され得る。あるいは、LDPEは、チーグラー・ナッタ、酸化クロム、メタロセン、ポストメタロセン触媒などの1種または複数種の重合触媒を使用して行われる配位重合プロセスを使用して調製され得る。好適な温度は、0℃~250℃、または30℃~200℃である。好適な圧力は、大気圧(101kPa)~10,000気圧(約1,013メガパスカル(「MPa」))である。ほとんどの重合反応では、用いられる触媒対重合性オレフィン(モノマー/コモノマー)のモル比は、10-12:1~10-1:1、または10-9:1~10-5:1である。
【0049】
(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)の量は、半導電性複合材料の総重量の70~98.9重量%、あるいは80~95重量%、あるいは80~98重量%であり得る。
【0050】
半導電性複合材料は、極性有機ポリマー、例えば、エチレン性モノマー単位および不飽和カルボン酸エステル(または酸)コモノマー単位を含むエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーなどの極性エチレン系ポリマーを含まない(欠如している)。(AA)極性エチレン系コポリマー中の不飽和カルボン酸エステルコモノマー単位の割合は、(AA)の重量に基づいて、5~40重量%、あるいは20~35重量%、あるいは25~31重量%であり得る。エチレン性単位は、(AA)の重量の95~60重量%、あるいは80~65重量%、あるいは75~69重量%であり得る。各不飽和カルボン酸エステルコモノマーは、独立して、水素原子および1分子当たり3~20個の炭素原子を有してもよく、すなわち(C3~C20)不飽和カルボン酸エステルコモノマーであってもよい。
【0051】
省略および除外された不飽和カルボン酸エステルコモノマー単位が誘導される不飽和カルボン酸エステルコモノマーは、ビニル(C2~C8)カルボキシレートであり得、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーは、エチレン-ビニル(C2~C8)カルボキシレートコポリマーである。いくつかの態様において、ビニル(C2~C8)カルボキシレートは、2~8個の炭素原子、または2~4個の炭素原子を有するカルボン酸アニオンのビニルエステルである。カルボン酸ビニルエステルの例は、US7,767,910(B2)、第2欄、34~50行に記載されている。ビニル(C2~C8)カルボキシレートは、ビニル(C2~C4)カルボキシレート、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネートまたはビニルブタノエートであってもよく、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーは、エチレン-ビニル(C2~C4)カルボキシレートバイポリマー、またはエチレン-ビニルアセテート(EVA)バイポリマー、またはエチレン-ビニルプロピオネートバイポリマー、またはエチレン-ビニルブタノエートバイポリマーであってもよい。EVAバイポリマーは、本質的にエチレン由来モノマー単位およびビニルアセテート由来コモノマー単位で構成される。EVAバイポリマーの酢酸ビニルコモノマー単位含有量は、EVAバイポリマーの重量に基づいて、5~40重量%、あるいは20~35重量%、あるいは25~31重量%であり得る。重量%値は、EVA1分子当たりの平均である。代替的または追加的には、(A)(例えば、EVAバイポリマー)は、ASTM D1238-04によって測定された、2~60g/10分、あるいは5~40g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有し得る。
【0052】
省略および除外された不飽和カルボン酸エステルコモノマー単位が誘導される不飽和カルボン酸エステルコモノマーはまた、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートなどの(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートであり得る。(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートは、エチレン-(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(EAA)などの、省略および除外された不飽和エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー中に見出され得る。いくつかの態様において(C1~C8)アルキルは、(C1~C4)アルキル、(C5~C8)アルキル、または(C2~C4)アルキルであってもよい。EAAは、エチレン由来モノマー単位、ならびにエチルアクリレートおよび/またはエチルメタクリレートコモノマー単位などの(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレート由来コモノマー単位の1つ以上の異なる種類から本質的になる。(C1~C8)アルキルは、メチル、エチル、1,1-ジメチルエチル、ブチルまたは2-エチルヘキシルであってもよい。(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレート、またはそれらの組み合わせであってもよい。(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレートであってもよく、EAAは、エチレン-エチルアクリレートコポリマー(EEA)であってもよいか、または、(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートは、エチルメタクリレートであってもよく、EAAはエチレン-エチルメタクリレートコポリマー(EEMA)であってもよい。EEAまたはEEMAのエチルアクリレートまたはエチルメタクリレートコモノマー単位含有量は、それぞれ独立して、EEAまたはEEMAバイポリマーの重量に基づき、5~40重量%、あるいは20~35重量%、あるいは25~31重量%であり得る。
【0053】
成分(B):超低湿潤性カーボンブラック(ULW-CB)。ULW-CBについては、前述した。(B)ULW-CBは、半導電性複合材料の1.0~39重量%、あるいは1.5~29重量%、あるいは1.5~20.5重量%、あるいは1.5~19重量%、あるいは1.5~16重量%、あるいは1.5~11重量%、あるいは1.5~6重量%であり得る。
【0054】
いくつかの態様では、半導電性複合材料はまた、(B)ULW-CB以外のカーボンブラックも含有し得る。そのような他のカーボンブラックの例は、Printex XE2カーボンブラック(DeGussa)、Black Pearls 1000カーボンブラック(Cabot Corp.)、Vulcan XC 72カーボンブラック(Cabot Corp.)、Ketjenblack EC600JDカーボンブラック(Akzo)、Vulcan Pカーボンブラック(Cabot Corp.)、United 120カーボンブラック(Cabot Corp.)、デンカブラックカーボンブラック(Denka)、Vulcan XC 500カーボンブラック、またはAcetylene Black AB 100%-01カーボンブラック(Soltex)である。他の態様では、(B)ULW-CBは、他のカーボンブラックを含まない。
【0055】
成分(C):プラストマー。(C)プラストマーは、ゴムのような特性などのエラストマーおよびプラスチックの品質と、プラスチックの加工能力とを併せ持つポリマー材料であり得る。いくつかの態様では、(C)プラストマーはまた、(A)非極性ポリオレフィンポリマーの実施形態であり得る。(C)の例は、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、0.905g/cm3の密度の密度、0.9g/10分のメルトインデックス(I2)(ASTM D1238-04、190℃、2.16kg)を有する、The Dow Chemical CompanyからDFNA-1477 NTとして入手可能である、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。いくつかの態様では、半導電性複合材料および架橋ポリエチレン生成物は、(C)を含まない。存在する場合、(C)は、半導電性複合材料の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0056】
任意選択の成分(D)酸化防止剤。(D)酸化防止剤は、半導電性複合材料および/または過酸化物硬化半導体生成物に酸化防止特性を提供するように機能する。適切な(D)の例は、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4、6-トリオン(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、およびジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)である。いくつかの態様において、(D)は、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、Addivant(Danbury,Connecticut,USA)から市販されているNAUGARD445)である。いくつかの態様では、半導電性複合物および架橋ポリエチレン生成物は、(D)を含まない。存在する場合、(D)は、半導電性複合材料の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0057】
任意選択の成分(E):有機過酸化物。炭素原子、水素原子、および2個以上の酸素原子を含み、少なくとも1つの-O-O-基を有する分子(ただし、複数の-O-O-基がある場合、各-O-O-基は、1個以上の炭素原子を介して別の-O-O-基に間接的に結合する);またはそのような分子の集合。(E)有機過酸化物は、半導電性複合材料の硬化、特に、成分(A)、(B)、および(E)を含む半導電性複合材料を、(E)有機過酸化物の分解温度以上の温度まで加熱することを含む硬化が望ましい場合、半導電性複合材料に添加され得る。(E)有機過酸化物は、式RO-O-O-ROのモノペルオキシドあってよく、式中、各ROは、独立して、(C1~C20)アルキル基または(C6~C20)アリール基である。各(C1~C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、または1もしくは2つの(C6~C12)アリール基で置換されている。各(C6~C20)アリール基は、非置換であるかまたは1~4つの(C1~C10)アルキル基で置換されている。あるいは、(E)は、式RO-O-O-R-O-O-ROのジペルオキシドであってもよく、式中、Rは、(C2~C10)アルキレン、(C3~C10)シクロアルキレン、またはフェニレン等の二価炭化水素基であり、各ROは、上記で定義した通りである。(E)有機過酸化物は、ビス(1,1-ジメチルエチル)過酸化物;ビス(1,1-ジメチルプロピル)ペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン;4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸;ブチルエステル;1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;過酸化ベンゾイル;過安息香酸tert-ブチル;ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」);ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」);イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド;2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;イソプロピルクミルクミルペルオキシド;4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル;または過酸化ジ(イソプロピルクミル);または過酸化ジクミルであってもよい。(E)有機過酸化物は、過酸化ジクミルであってもよい。いくつかの態様において、2種以上の(E)有機過酸化物のブレンド、例えば、t-ブチルクミルペルオキシドおよびビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンの20:80(wt/wt)ブレンド(例えば、Arkemaから市販されているLUPEROX D446B)のみが使用される。いくつかの態様において、少なくとも1つ、または各(E)有機過酸化物が1つの-O-O-基を含む。いくつかの態様では、半導電性複合材料および架橋ポリエチレン生成物は、(E)を含まない。存在する場合、(E)有機過酸化物は、半導電性複合材料の0.05~3.0重量%、あるいは0.1~3重量%、あるいは0.5~2.5重量%であり得る。典型的には、半導電性複合材料が、(D)酸化防止剤および(E)有機過酸化物の両方をさらに含む場合、(D)酸化防止剤対(E)有機過酸化物の重量/重量比は、2未満((D)/(E)(重量/重量)<2)である。
【0058】
任意選択の成分(F)スコーチ遅延剤。早期硬化を阻害する分子、またはそのような分子の集合。スコーチ遅延剤の例は、ヒンダードフェノール;セミヒンダードフェノール; TEMPO; TEMPO誘導体;1,1-ジフェニルエチレン;2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(アルファ-メチルスチレンダイマーまたはAMSDとも呼ばれる);およびUS6277925(B1)、第2欄第62行~第3欄第46行に記載されているアリル含有化合物である。いくつかの態様では、半導電性複合材料および架橋ポリエチレン生成物は、(K)を含まない。存在する場合、(K)スコーチ遅延剤は、半導電性複合材料の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0059】
任意選択の成分(G)アルケニル官能性補助剤。骨格もしくは環の部分構造、ならびにそれに結合した1つ、もしくは2つ以上のプロペニル、アクリレート、および/もしくはビニル基を含む分子であって、部分構造は炭素原子および任意選択的に窒素原子で構成される分子、またはそのような分子の集合。(D)従来の補助剤は、ケイ素原子を含まなくてもよい。(G)アルケニル官能性補助剤は、制限(i)~(v)のいずれか1つによって説明されるプロペニル官能性の従来の補助剤であってもよい:(i)(G)が、2-アリルフェニルアリルエーテル、4-イソプロペニル-2,6-ジメチルフェニルアリルエーテル、2,6-ジメチル-4-アリルフェニルアリルエーテル、2-メトキシ-4-アリルフェニルアリルエーテル、2,2’-ジアリルビスフェノールA、O、O’-ジアリルビスフェノールA、またはテトラメチルジアリルビスフェノールAである;(ii)(G)が、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンまたは1,3-ジイソプロペニルベンゼンである;(iii)(G)が、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(「HATATA」、N2,N2,N4,N4,N6,N6-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンとも呼ばれる)、オルトギ酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、クエン酸トリアリル、またはトリアリールアコニテートである;(iv)(G)が、(i)のプロペニル官能性補助剤のうちのいずれか2つの混合物である。あるいは、(G)は、トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(「TMPTMA」)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびプロポキシ化グリセリルトリアクリレートから選択されるアクリレート官能性の従来の補助剤であってもよい。あるいは、(G)は、少なくとも50重量%の1,2-ビニル含量を有するポリブタジエンおよびトリビニルシクロヘキサン(「TVCH」)から選択されるビニル官能性の従来の補助剤であってもよい。あるいは、(G)は、US5,346,961またはUS4,018,852に記載されている従来の補助剤であってもよい。あるいは、(G)は、前述の補助剤の組み合わせまたは任意の2つ以上であってもよい。いくつかの態様では、半導電性複合材料および架橋ポリエチレン生成物は、(G)を含まない。存在する場合、(G)補助剤は、半導電性複合材料の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.1~1重量%、あるいは0.2~0.5重量%であり得る。
【0060】
任意選択の成分(H)核形成剤。ポリエチレンポリマーの結晶化速度を高める有機または無機添加剤。(H)の例は、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、超高分子量ポリエチレン、フタル酸水素カリウム、安息香酸化合物、安息香酸ナトリウム化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウム、モノグリセロール酸亜鉛、および1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩:ステアリン酸亜鉛である。いくつかの態様では、半導電性複合材料および架橋ポリエチレン生成物は、(H)を含まない。存在する場合、(H)は、半導電性複合材料の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%の濃度であり得る。
【0061】
任意選択の成分(I)加工助剤。(I)の例は、フルオロエラストマー、およびThe Chemours Company(Wilmington,Delaware,USA)のViton FreeFlow 23などのViton FreeFlow加工助剤である。いくつかの実施形態では、半導電性複合材料は、(C)、(D)、および(I)を含むマスターバッチをさらに含む。
【0062】
任意選択の成分(J)エキステンダー油。(J)の例は、鉱油、パラフィン油、およびそれらの組み合わせである。
【0063】
任意選択の成分(K)安定剤。18~22ナノメートル(nm)の平均粒子サイズを有する粒子状の固体。(K)は、Cabot CorporationからCAB-O-SILの商品名で市販されているものなどの疎水化ヒュームドシリカであり得る。(K)は、難燃効果も有し得るUV安定剤であり得る。
【0064】
半導電性複合材料は、独立して、キャリア樹脂、腐食防止剤(例えば、SnSO4)、潤滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、界面活性剤、酸捕捉剤、電圧安定剤、および金属不活性化剤から選択される1種以上の任意選択の添加剤を含み得ない、あるいはさらに、それぞれ0.005~0.5重量%から本質的になり得る。
【0065】
任意選択の添加剤を使用して、本発明の半導電性複合材料および/または本発明の生成物に1つ以上の有益な特性を付与し得る。いくつかの態様では、任意選択の成分または添加剤のいずれか1つは、実施例において後で使用されるものである。
【0066】
導電体デバイス:コーティングされた金属ワイヤ、電気ケーブル、または低、中、高、および超高電圧の送電用途に使用するなどの電力ケーブル。「ワイヤ」は、導電性材料、例えば銅もしくはアルミニウム等の導電性金属の一本鎖もしくはフィラメント、または光ファイバーの一本鎖もしくはフィラメントを意味する。「電力ケーブル」とは、絶縁層と称され得る半導電性層および被覆内に配置される少なくとも1本のワイヤを含む。導電体デバイスは、中、高、および超高電圧の用途に使用するために設計および構成され得る。好適なケーブル設計の例は、US5,246,783、US6,496,629、およびUS6,714,707に示されている。
【0067】
導電体デバイスは、内側から、導電性コア、内部半導電性層、および任意選択的に内部絶縁層を含有し得る。導電体デバイスの任意選択の絶縁態様は、外側半導電性層および外側絶縁層を含有し得る。導電性コアは、1つ以上の金属ワイヤで構成されてもよい。導電性コアが「撚り合わされている」場合、個別のワイヤ束に細分化され得る2つ以上の金属ワイヤが含まれている。導電性コア内の各ワイヤは、束ねられているか否かに関わらず、絶縁層で個別にコーティングされてもよく、および/または個別の束が絶縁層でコーティングされてもよい。各絶縁層は、独立して、単層または多層の被覆、コーティング、またはシースであり得る。絶縁層(複数可)は、主に、日光、水、熱、酸素、他の導電性材料(例えば、短絡を防止するため)、および/または腐食性材料(例えば、化学ヒューム)などの外部環境から導電性コアおよび半導電性層(複数可)を保護または絶縁するように機能する。
【0068】
ある絶縁された導電体デバイスから次への単層または多層被覆は、それぞれの意図された用途に応じて異なって構成され得る。例えば、断面で見ると、絶縁された導電体デバイスの多層被覆は、その最内層からその最外層まで、以下の構成要素で順次構成され得る:内側半導電性層(導電性コアと物理的に接触している)、架橋ポリエチレン生成物(本発明の架橋生成物)を含む絶縁層、外側半導電性層、金属シールド、および保護シース。層およびシースは、円周方向および同軸方向(長手方向)に連続している。金属シールド(接地)は、同軸方向に連続しており、円周方向には連続(層)または不連続(テープまたはワイヤ)のいずれかである。外側半導体層は、存在する場合、絶縁層から剥離可能な過酸化物架橋半導体生成物で構成されてもよい。
【0069】
電気の伝導方法。本発明の電気の伝導方法は、導電体デバイスを使用し得るか、または本発明の半導電性複合材料もしくは生成物を含む異なる導電体デバイスを使用し得る。
【0070】
導電体デバイスは、データ送信用途および/または低、中、高、および超高電圧用途を含む送電用途に有用である。
【0071】
本発明の半導電性複合材料および生成物は、容器、車両部品、およびエレクトロニクスパッケージングを含む様々な他の用途に有用である。
【0072】
化合物は、そのすべての同位体および天然の存在量ならびに同位体濃縮型を含む。濃縮型は、医学的用途または偽造防止用途を有してもよい。
【0073】
いくつかの態様では、本明細書における任意の化合物、組成物、調合物、材料、混合物、または反応生成物は、H、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、およびアクチノイドからなる群から選択される化学元素のうちのいずれか1つを含まなくてもよいが、ただし、化合物、組成物、調合物、材料、混合物、または反応生成物に必要な化学元素(例えば、ポリエチレンに必要なCおよびH、またはアルコールに必要なC、H、およびO)は除く。
【0074】
特に示されない限り、以下を適用する。あるいは、異なる実施形態に先行する。AEICとは、Association of Edison Illuminating Companies(Birmingham,Alabama,USA)を意味する。ASTMとは、標準化機構であるASTM International(West Conshohocken,Pennsylvania,USA)を意味する。IECとは、標準化機構であるInternational Electrotechnical Commission(Geneva,Switzerland)を意味する。ISOとは、標準化機構であるInternational Organization for Standardization(Geneva,Switzerland)を意味する。いずれの比較例も説明目的でのみ使用されており、先行技術ではない。含まないまたは欠いているは、完全に存在しないこと、代替として検出不可能であることを意味する。ICEAとは、Insulated Cable Engineers AssociationおよびIHS Markit(London, England)によって公布された規格を意味する。IUPACとは、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat(Research Triangle Park,North Carolina,USA))である。してもよい(may)は、必須ではなく、選択の許容を与える。機能的とは、機能的に可能または有効なことを意味する。任意選択では、存在しない(または除外される)、代替として存在する(または含まれる)ことを意味する。特性は、標準試験方法および測定条件(例えば、粘度:23℃および101.3kPa)を使用して測定される。範囲は、端点、部分範囲、およびその中に包含される整数値および/または小数値を含むが、整数の範囲が小数値を含まない場合を除く。室温:23℃。±1℃である。化合物に関連するとき置換されているとは、水素の代わりに、置換ごとに1個または複数個(その数を含む)の置換基を有することを意味する。
【0075】
半導電性複合材料の調製方法:(A)および(B)を、C.W.Brabender調製混合器を使用して、50回転/分(rpm)の混合速度で160℃で20分間溶融混合して、濃縮マスターバッチとして半導電性複合材料の実施形態を得ることによって、67重量%の(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系ポリマー)と、33重量%の(B)ULW-CBとから本質的になる半導電性複合材料の実施形態を調製する。これらの溶融混合条件は、(A)が非極性のエチレン系ポリマーである場合の使用に好適である。非極性プロピレン系ポリマーなどの(A)の他の実施形態の適切な溶融混合を確実にするために、より高い温度(例えば、200℃)を使用するなど条件が調整され得る。必要に応じて、半導電性複合材料の濃縮マスターバッチの実施形態を、濃縮マスターバッチの(A)と同じであっても異なっていてもよい、独立して選択された(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)と溶融混合して、0超~33重量%未満の(B)ULW-CBの濃度を有する半導電性複合材料の実施形態を得る。
【0076】
ペレット調製方法。半導電性複合材料の調製方法によって調製された半導電性複合材料を、Brabender単軸押出機のホッパーに調合し、25rpmのスクリュー速度、120℃で半導電性複合材料の溶融物を押し出して、半導電性複合材料を溶融ストランドとして得る。これらの押出およびストランド条件は、(A)が非極性のエチレン系ポリマーである場合の使用に好適である。非極性プロピレン系ポリマーなどの(A)の他の実施形態の適切な押出およびストランドを確実にするために、より高い温度(例えば、200℃)を使用するなど条件が調整され得る。溶融ストランドを、Brabenderペレタイザーに供給して、ペレットの形態の第2の本発明の半導電性複合材料を得る。
【0077】
浸漬方法。ペレット調製方法で調製された第2の本発明の半導電性複合材料の50グラム(g)のペレット、および0.865gの(E)有機過酸化物を、250ミリリットル容量のフッ素化高密度ポリエチレン(F-HDPE)ボトルに添加する。ペレットおよび(E)が入ったボトルをしっかりと密閉する。(E)有機過酸化物を、70℃で8時間ペレットに浸漬させ、0、2、5、10、20、および30分間、密閉ボトルを振盪し、有機過酸化物浸漬ペレットとして第3の本発明の半導電性複合材料を得る。有機過酸化物浸漬ペレットを、試験に必要となるまで、F-HDPEボトル内に23℃で保管する。
【0078】
架橋ポリエチレン生成物および圧縮成形プラークの調製方法1:散逸率試験のために、架橋ポリエチレン生成物の圧縮成形プラークを調製する。2ミリメートル(mm)厚さの2枚のポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの間に、浸漬法1によって調製された15gの有機過酸化物浸漬ペレットを挟み、サンドイッチを得る。以下の寸法:180mm×190mm×0.5mmを有する金型にサンドイッチを配置する。ホットプレス機の上下のプレートの間にサンドイッチを含有する金型を配置し、120℃および0メガパスカル(MPa)の印加圧力で10分間圧成形し、予熱された金型を得る。金型を120C、5MPaで0.5分間保持し、次いで120C、10MPaで0.5分間保持する。金型を8回通気し、次いで180℃、10MPaの圧力で約13分間金型を保持して、追加硬化させて、架橋ポリエチレン生成物を得る。金型を10分以内に10MPaで180℃から25℃に冷却し、圧縮成形されたプラークの形態である架橋ポリエチレン生成物を取り外す。以下の方法に従って散逸係数を試験する。
【0079】
圧縮成形プラークの調製方法:材料の未使用試料(例:(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例:非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)、または半導電性複合材料)を、金型に配置し、以下のようにGrenerd油圧プレスでプレスし、プレスを150℃に予熱し、次いで、試料を圧力をかけずに金型内で3分間加熱して、加熱試料を得、加熱試料を0.689メガパスカル(MPa、100ポンド/平方インチ(psi))の圧力で3分間プレスし、次いで、17.2MPa(2500psi)の圧力で3分間プレスし、金型を急冷し、試料を40℃、0.689MPaの圧力で3分間に保ち、試料の圧縮成形プラークを得る。
【0080】
BET窒素表面積試験方法:Micromeritics Accelerated Surface Area & Porosimetry測定器(ASAP 2420)を使用して、BET表面積分析を実施する。分析の前に、試料を、真空下250℃でガス抜きする。測定器は、注入試料の静的(容量)方法を採用しており、液体窒素温度で固体に物理的に吸着(物理吸着)し得る気体の量を測定する。多点BET測定のために、窒素吸収量を、予め選択された相対圧力点で、一定温度で測定する。相対圧力とは、-196℃の分析温度での窒素の蒸気圧に対して加えられた窒素の圧力の比である。
【0081】
密度試験方法:ASTM D792-13、変位によるプラスチックの密度と比重(相対密度)の標準試験法の方法Bに従って測定した(水以外の液体中、例えば、液体2-プロパノール中で固体プラスチックを試験するため)。結果は1立方センチメートル当たりのグラム数(g/cm3)の単位で報告する。
【0082】
メルトインデックス(190℃、2.16キログラム(kg)、「I2」)試験方法:非極性エチレン系ポリマーの場合、以前は「条件E」として、かつI2としても知られている、190℃/2.16キログラム(kg)の条件を使用して、ASTM D1238-04、Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Platometerに従って測定される。結果は、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)の単位で報告される。190℃の代わりに230℃を使用することを除いて、非極性プロピレン系ポリマーを複製する。
【0083】
吸湿性試験方法:カーボンブラック試料を、100℃の真空オーブン内で一晩乾燥させて、乾燥カーボンブラック試料の重量を測定し、乾燥カーボンブラック試料を、十分に制御された80%の相対湿度(RH)および24℃の温度で24時間チャンバ内に配置して、加湿カーボンブラック試料を得て、加湿カーボンブラック試料の重量を測定し、以下の等式:吸湿量=(加湿CB試料の重量-乾燥CB試料の重量)/乾燥CB試料の重量、を使用して、重量百万分率で吸湿量を計算することによって、カーボンブラックの吸湿性を測定する。
【0084】
吸油量(OAN)試験方法:ASTM D2414-04、手順Aを、フタル酸ジブチル(DBP)を用いて使用する。
【0085】
相形態試験方法:走査型電子顕微鏡検査(SEM)を使用して、半導電性複合材料の相形態を特徴付ける。分析の準備のために、まず、圧縮成形プラークの調製方法によって調製された圧縮成形プラーク試料を、かみそりの刃を使用して切り開いて、その内部を露出させる。露出した内部を、Leica Ultracut EM FC7クライオウルトラミクロトームで-80℃で研磨する。10キロボルト(kV)で動作するジルコニウム化タングステン電界放出電子源、Everhart-Thornley二次電子検出器、および低電圧高コントラスト後方散乱電子検出器を備えたFEI Nova NanoSEM 630電子顕微鏡で電子顕微鏡写真を取得する。
【0086】
レオロジー試験方法:粘度対角周波数。粘弾性挙動の分析のために、ARES振動剪断レオメーターを用いて動的振動剪断レオロジーを実施する。線形粘弾性領域内のひずみに対して、0.1~100ラジアン/秒(rad/s)の角周波数で、0.25%ひずみの周波数スイープを使用して、平行プレート形状(プレート直径25mm)で振動剪断測定を実施する。160℃で測定を実施する。パスカル-秒(Pa-s)で結果を報告する。
【0087】
表面エネルギー試験方法:Owens-Wendt等式を使用して、23℃で3つの液体の接触角から測定する。(A)非極性ポリオレフィンポリマー(例えば、非極性エチレン系またはプロピレン系ポリマー)の試料のプラークを、圧縮成形プラークの調製方法(前述)によって作製する。OWENS-WENDT方法を使用して、液体の接触角に基づいて試料の表面エネルギーを計算する。手動ベースラインを使用して、明度=100、コントラスト=80、およびフレームレート=50で、KRUSS DSA100 Drop Shape Analyzer(ゴニオメーター)上の液滴によって接触角を測定する。3つの液体は、水、ホルムアミド、およびジヨードメタンであり、タレットのセットアップから0.5ミリメートル(mm)のステンレス鋼/ポリマーの針で使用される。楕円(正接1)方法を使用して、接触角を適合させる。各液体について少なくとも6滴を分析し、結果の平均を報告する。平均を使用して、OWENS-WENDT方法による表面エネルギーを計算する。
【0088】
熱サイクル試験方法:半導電性複合材料の試料を、銅製の型(油圧プレス内に配置)内で、180℃、無圧力、3分間、続いて、0.689MPa(100psi)の圧力下で3分間、そして17.2MPa(2500psi)の圧力下で3分間加熱する。次いで、試料を0.689MPa(100psi)の圧力下で40℃に急冷する。この熱サイクルを2回繰り返して、熱サイクル試料を得る。
【0089】
体積抵抗率試験方法:2点プローブを備えたKeithley 2700 Integra Seriesデジタルマルチメーターを使用して、低抵抗率(108オーム-cm(Ω・cm)未満)を有する試料の抵抗率を測定する。銀塗料(導電性銀#4817N)を塗布して、試料と電極との間の接触抵抗を最小化する。ここで、試料は、圧縮成形プラークの調製方法によって調製された、1.905~1.203mm(75ミル~80ミル)の厚さ、101.6mmの長さ、50.8mmの幅を有する圧縮成形プラーク試料である。高抵抗率(>108Ω・cm)を有する試料の抵抗率を、モデル8009抵抗率試験チャンバに結合されたKeithleyモデル6517B電位計を使用し、円形ディスク試料を使用して測定する。ここで、試料は、圧縮成形プラークの調製方法によって調製された、1.905~1.203mm(75ミル~80ミル)の厚さ、63.5mmの直径を有する圧縮成形プラーク試料として調製された円形ディスクである。
【0090】
湿潤性試験方法:いずれもSurface Measurement Systems,Ltd.(Allentown,Pennsylvania,USA)のIGC Surface Energy Analyzer測定器およびSEA Analysis Softwareを用いた逆ガスクロマトグラフィー(IGC)方法を使用する。材料の総表面エネルギー(γ(合計))は、分散構成要素(γ(分散))と極性構成要素(γ(極性))との2つの構成要素の合計:γ(合計)=γ(極性)+γ(分散)である。4つのアルカンガスプローブ(デカン、ノナン、オクタン、およびヘプタン)を用いてγ(分散)構成要素を測定し、DorrisおよびGrayの方法(下記参照)を用いてγ(分散)を決定する。2つの極性ガスプローブ(酢酸エチルおよびジクロロメタン)を用いてγ(極性)構成要素を測定し、Della Volpeスケールを用いたvan Oss手法に基づいてγ(極性)を分析する(D.J.Burnettら,AAPS PharmSciTech,2010,13,1511-1517、G.M.Dorrisら,J.Colloid Interface Sci.1980,23,45-60、C.Della Volpeら,J Colloid Interface Sci,1997,195,121-136)。約10~20ミリグラム(mg)の量のニートカーボンブラックの試験試料を、個々のシラン化ガラスカラム(長さ300mm、内径4mm)に充填する。カーボンブラックを充填したカラムを、100℃、ヘリウムキャリアガスを用いた相対湿度0%で2時間、前処理して、試料を標準化する。ヘリウムの総流量10標準立方センチメートル/分(sccm)で測定を実施し、デッドボリュームの補正にメタンを使用する。100℃、相対湿度0%で構成要素を測定する。カーボンブラックの表面エネルギーは、表面被覆率n/nmの関数として測定され、式中、nは、ガスプローブの吸着量、nmは、カーボンブラックの単層容量である。表面被覆率の関数としての表面エネルギーの分布は、カーボンブラック表面の不均一性を明らかにする。
【実施例】
【0091】
Cabot CorporationのVulcan XC 500ファーネスカーボンブラック。BET窒素表面積試験方法によって測定された、65m2/gのBET窒素表面積、ASTM D2414-04によって測定された、148mL/100gのOAN、および吸湿性試験方法によって測定された、10,000ppmの吸湿性、および0.02の表面被覆率での湿潤性=0.0115、0.04の表面被覆率での湿潤性=0.0101、0.06の表面被覆率での湿潤性=0.0099、0.08の表面被覆率での湿潤性=0.0111、0.10の表面被覆率での湿潤性=0.0117によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイル。
【0092】
SoltexのAcetylene Black AB 100%-01カーボンブラック。BET窒素表面積試験方法によって測定された、77m2/gのBET窒素表面積、ASTM D2414-04によって測定された、187~202mL/100gのOAN、吸湿性試験方法によって測定された、3,000ppmの吸湿性、および0.02の表面被覆率での湿潤性=0.0101、0.04の表面被覆率での湿潤性=0.0108、0.06の表面被覆率での湿潤性=0.0111、0.08の表面被覆率での湿潤性=0.0112、0.10の表面被覆率での湿潤性=0.0113によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイル。
【0093】
成分(A1):0.918グラム/立方センチメートル(g/cm3)の密度、および8.0グラム/10分(g/10分)のメルトインデックス(I2)(ASTM D1238-04、190℃、2.16kg)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)である、非極性エチレン系ポリマーである、(A)非極性ポリマー。The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から製品DOW(商標)LDPE 722として入手可能。
【0094】
成分(A2):0.905g/cm3の密度、および0.9g/10分のメルトインデックス(I2)(ASTM D1238-04、190℃、2.16kg)を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である、非極性エチレン系ポリマーである、(A)非極性ポリオレフィンポリマー。The Dow Chemical Companyから製品DFNA-1477NTとして入手可能。
【0095】
成分(A3):UNIPOL(商標)気相重合プロセスによって調製された、単峰性分子量分布、0.920g/cm3の密度、および0.55g/10分のメルトインデックス(I2)(ASTM D1238-04、190℃、2.16kg)を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である、非極性エチレン系ポリマーである、(A)非極性ポリオレフィンポリマー。The Dow Chemical Companyから製品DFNA-2065として入手可能。
【0096】
成分(B1):Cabot CorporationのLITX 50導電性添加剤である(B)ULW-CB。BET窒素表面積試験方法によって測定された、56m2/gのBET窒素表面積、ASTM D2414-04によって測定された、125~145mL/100gのOAN、吸湿性試験方法によって測定された、520ppmの吸湿性、および0.02の表面被覆率での湿潤性=0.0014、0.04の表面被覆率での湿潤性=0.0039、0.06の表面被覆率での湿潤性=0.0051、0.08の表面被覆率での湿潤性=0.0061、0.10の表面被覆率での湿潤性=0.0069によって特徴付けられる表面湿潤性プロファイル。
【0097】
成分(D1):ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン)とも呼ばれる、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリンホモポリマーである(D)酸化防止剤。
【0098】
成分(C1)/(D1)/(I1):74.9重量%の(C1)DFDA-7047 LLDPE、25.0重量%の(I1)Viton FreeFlow 23加工助剤、および0.1重量%の(D1)テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン(酸化防止剤)を含む、加工助剤含有マスターバッチ調合物。Plastomer (C1) DFDA-7047 LLDPEは、0.918g/cm3の密度、および1.0g/10分のメルトインデックスI2を有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、The Dow Chemical Companyから入手可能である。Viton FreeFlow 23は、The Chemours Companyから入手可能なフルオロエラストマー加工助剤である。
【0099】
比較例1~3(CE1~CE3):成分(A1)DOW LDPE 722、およびVulcan XC 500ファーネスカーボンブラックを使用して調製された比較複合材料。半導電性複合材料の調製方法に従って成分(A1)とVulcan XC 500とを溶融混合することによって調製し、CE1~CE3の半導電性材料を得る。圧縮成形プラーク調製方法に従ってCE1~CE3の試料を別個にプレスして、プラークを形成する。
【0100】
比較例4~6(CE4~CE6):成分(A1)DOW LDPE 722、およびAcetylene Black AB 100%-01カーボンブラックを使用して調製された比較複合材料。半導電性複合材料の調製方法に従って成分(A1)とAcetylene Black AB 100%-01とを溶融混合することによって調製し、CE4~CE6の半導電性材料を得る。圧縮成形プラーク調製方法に従ってCE4~CE6の試料を別個にプレスして、プラークを形成する。
【0101】
本発明の実施例1~5(IE1~IE5):成分(A1)DOW LDPE 722、および成分(B1)LITX 50カーボンブラックを使用して調製された本発明の半導電性複合材料。半導電性複合材料の調製方法に従って成分(A1)と(B1)とを溶融混合することによって調製し、IE1~IE5の半導電性材料を得る。圧縮成形プラーク調製方法に従ってIE1~IE5の試料を別個にプレスして、プラークを形成する。
【0102】
本発明の実施例6および7(IE6およびIE7):成分(A1)DOW LDPE 722、成分(A2)Univation DFNA-2065、および成分(B1)LITX 50カーボンブラックを使用して調製された本発明の半導電性複合材料。内部C.W.Brabender調製混合器を、40rpmのモーター速度で180℃で10分間使用する以外は、半導電性複合材料の調製方法に従って成分(A1)、(A2)、(B1)、および(C1)を溶融混合することによって調製し、IE6およびIE7の半導電性材料を得る。圧縮成形プラーク調製方法に従ってIE6およびIE7の試料を別個に150℃でプレスして、1.27mm(50ミル)の厚さを有するプラークを形成する。
【表1】
【0103】
表1のデータによって示されるように、CE1~CE6は、複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積の所定の範囲で高い抵抗率を有し、これは、半導電性層にとって望ましくない。Log(体積抵抗率)値は、20.0~30.0m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で0.7Log(オーム-cm)超、15.0~20.0m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で2Log(オーム-cm)超、10.0~15.0m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で4Log(オーム-cm)超、7.5~10m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で10Log(オーム-cm)超、5~7.5m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で16Log(オーム-cm)超、2.5~5.0m
2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で17.1Log(オーム-cm)超である。比較材料CE1~CE6は、様々な充填量で従来の導電性カーボンブラックを含有し、充填量と導電率との関係を示す。結果は、100,000オーム-cm未満の体積抵抗率が、これらの従来のカーボンブラックの20重量%超の充填量を必要とすることを示している。そのような高い充填量は、比較調合物の溶融加工および押出/ストランドを困難にし、それを含有する電力ケーブルの運用中に望ましくない量の吸湿性をもたらすことになる。
【表2】
【0104】
表2のデータによって示されるように、IE1~IE7は、複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積の所定の範囲で高い抵抗率を有し、これは、半導電性層にとって非常に望ましい。Log(体積抵抗率)値は、20.0~30.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で0.7Log(オーム-cm)以下、15.0~20.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で2Log(オーム-cm)以下、10.0~15.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で4Log(オーム-cm)以下、7.5~10m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で10Log(オーム-cm)以下、5.0~7.5m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で16Log(オーム-cm)以下、および2.5~5.0m2/gの複合物中のカーボンブラックの総BET N2表面積で17.1Log(オーム-cm)以下である。本発明の実施例IE1~IE7は、比較例で使用されるカーボンブラックの充填量と同じ充填量のULW-CBで、より大きな導電率(より低い体積抵抗率)が達成され得ることを明確に示している。20重量%未満の充填量のULW-CBを用いて、100,000オーム-cm未満(5Log(オーム-cm)未満)の体積低効率が達成される。これにより、改善された導電率とカーボンブラック充填量とのバランスが提供される。