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特許7465813インスリン化合物の送達のための医療用注入ポンプシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】インスリン化合物の送達のための医療用注入ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/30 20060101AFI20240404BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240404BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240404BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240404BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61K38/30
A61M5/142 522
A61P3/10
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/42
A61K47/26
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020554161
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 GB2019050985
(87)【国際公開番号】W WO2019193349
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】1805535.0
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1807321.3
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
(72)【発明者】
【氏名】サラ ハウエル
(72)【発明者】
【氏名】レオン ザクルゼウスキ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/191464(WO,A1)
【文献】特表2018-507869(JP,A)
【文献】特表2012-531431(JP,A)
【文献】特表2019-529506(JP,A)
【文献】特表2019-533656(JP,A)
【文献】特表2020-518636(JP,A)
【文献】Langmuir,2019年02月15日,Vol.35, No.12,pp.4287-4295
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61M 5/142
A61K 47/12
A61K 47/24
A61K 47/18
A61K 47/22
A61K 47/42
A61K 47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ、及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性液体医薬組成物を含むリザーバーを備える医療用注入ポンプシステムであって、
該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含み;
該アルキルグリコシドが、10200μg/mlの濃度で存在し、かつドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択され
該システムが、該哺乳動物への該組成物の投与の用量及び頻度を制御するための制御装置を備え;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、前記医療用注入ポンプシステム。
【請求項2】
前記インスリン化合物が、インスリンリスプロであるか;又は
該インスリン化合物が、インスリングルリジンであるか;又は
該インスリン化合物が、組換えヒトインスリンである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記インスリン化合物が、インスリンアスパルトである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記インスリン化合物が、組換えヒトインスリンではない、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記インスリン化合物が、10~1000U/mlの濃度で存在するか;又は
該インスリン化合物が、50~1000U/mlの濃度で存在するか;又は
該インスリン化合物が、10~250U/mlの濃度で存在するか;又は
該インスリン化合物が、400~1000U/mlの濃度で存在するか;又は
該インスリン化合物が、500~1000U/ml、例えば、600~1000U/ml、例えば、700~1000U/ml、例えば、800~1000U/ml、例えば、900~1000U/ml、例えば、1000U/mlの濃度で存在する、請求項1~4のいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン性亜鉛が、前記組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.05%超の濃度で存在し;
特に該イオン性亜鉛が、該組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5%超の濃度で存在し;
特に該イオン性亜鉛が、該組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~1%の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記組成物が、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される1mM以上の濃度の亜鉛結合種をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記亜鉛結合種が、シトレート、ピロホスフェート、アスパルテート、グルタメート、システイン、シスチン、グルタチオン、エチレンジアミン、ヒスチジン、DETA、及びTETAから選択される、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記亜鉛結合種が、シトレートであり、好適には前記シトレートの源が、クエン酸である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種が、1~50mMの濃度で存在し、かつ/又は
イオン性亜鉛の亜鉛結合種に対するモル比が、1:3~1:175である、請求項7~9のいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記1mM以上の濃度の亜鉛結合種が、25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択されるか、又は
前記システムが、25℃で10~12.3である亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種を実質的に含まない、請求項7記載のシステム。
【請求項12】
前記アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド又はデシルグルコピラノシドであり、特にドデシルマルトシドである、請求項1~11のいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記アルキルグリコシドが、20~200μg/ml、50~200μg/ml、10~100μg/ml、20~100μg/ml、50~100μg/ml、又は約50μg/mlの濃度で存在する、請求項1~12のいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記組成物が、浸透圧調節剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記浸透圧調節剤が、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオールからなる群から選択される非荷電性浸透圧調節剤、特にグリセロールである、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記浸透圧調節剤が、荷電性浸透圧調節剤、特にナトリウムイオン及び塩化物イオンからなる塩化ナトリウムである、請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記塩化物イオンが、>60mM、例えば、>65mM、>75mM、>80mM、>90mM、>100mM、>120mM、又は>140mMの濃度で存在する、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記組成物のpHが、5.5~9.0の範囲であり、例えば7.0~7.5の範囲、例えば、7.4であるか、又は7.6~8.0の範囲、例えば、7.8である、請求項1~17のいずれか1項記載のシステム。
【請求項19】
前記組成物が、(i)50~500U/mlの濃度のインスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii) 10200μg/mlの濃度のアルキルグリコシドであり、かつドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択される非イオン性界面活性剤、及び(iv) 任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、を含み;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず;
存在する場合、好適には該シトレートが、10~30mMの濃度で該組成物中に存在する、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
前記組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物、(iv) 10200μg/mlの濃度の非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドであって、ドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択される、該アルキルグリコシド;及び(v)第1族金属と一価又は二価のアニオンとの間で形成される塩から選択される塩を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
前記ポンプが、設定された基礎速度、例えば、0.1~20U/時で前記哺乳動物へ前記組成物中の前記インスリン化合物を送達する、請求項1~20のいずれか1項記載のシステム。
【請求項22】
前記ポンプが、パルスで前記組成物を送達する、請求項1~21のいずれか1項記載のシステム。
【請求項23】
前記パルスが、0.001~1μL、例えば、0.005~0.1μL、例えば、0.005~0.05μLのパルス体積を有する、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
各パルスが、0.001~1U、例えば、0.001~0.1Uのインスリン化合物を送達する、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
各パルスが、0.05~50ng、例えば、0.5ngのアルキルグリコシドを送達する、請求項23記載のシステム。
【請求項26】
前記ポンプが、1時間あたり10~1000パルス、1時間あたり、例えば、10~500、例えば、10~250、例えば、10~200、例えば、10~150、例えば、10~100、例えば、10~75、例えば、10~50パルスを送達する、請求項22~25のいずれか1項記載のシステム。
【請求項27】
前記ポンプが、前記哺乳動物へ前記組成物中の前記インスリン化合物をボーラス用量で送達し、
好適には、該ボーラス用量が、1~100Uであり;かつ/又は
前記リザーバーが、最大で3mL、例えば、3mL、例えば、2mL、例えば、1mLの総容量を有する、請求項1~21のいずれか1項記載のシステム。
【請求項28】
開ループシステム又は閉ループシステムである、請求項1~27のいずれか1項記載のシステム。
【請求項29】
前記システムが、体の表面に好適には1日以上、例えば、2日以上、例えば、3日以上、例えば、5日以上、例えば、7日以上着用され;かつ/又は
該システムが、前記哺乳動物中に前記インスリン組成物を皮下注入するための、前記ポンプ又は少なくとも1つのリザーバーと流体連通している少なくとも1つのカニューレ又は針を備え;かつ/又は
該システムが、パッチポンプシステムである、請求項1~28のいずれか1項記載のシステム。
【請求項30】
前記組成物が、使用中に、すなわち、3日以上にわたる前記ポンプの運転の間、アルキルグリコシドが非存在の同一の組成物よりも安定であり(例えば、より少数の可視粒子及び/又は可溶性凝集体を形成する);かつ/又は
前記システムが、グルコースセンサー、及び前記ポンプに該グルコースセンサーから受信される情報に基づきある用量のインスリン化合物を送達するよう指示する制御手段をさらに備え;
好適には該システムが、該組成物を前記哺乳動物に皮下投与する、請求項1~29のいずれか1項記載のシステム。
【請求項31】
前記哺乳動物における真性糖尿病の治療における使用のための、請求項1~30のいずれか1項記載のシステムであって、好適には該哺乳動物が、ヒトである、前記システム。
【請求項32】
ポンプ及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性組成物を備える医療用注入ポンプシステムにおける水性液体医薬組成物中のインスリン化合物の安定性を向上させる非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドの使用であって、該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含み;
該アルキルグリコシドが、10200μg/mlの濃度で存在し、かつドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択され;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、前記使用。
【請求項33】
医療用注入ポンプシステムによって投与されるインスリン化合物の安定性を向上させる方法であって、アルキルグリコシドを、該インスリン化合物及びイオン性亜鉛を含む水性液体医薬組成物に対して添加することを含み
該アルキルグリコシドが、10200μg/mlの濃度で存在し、かつドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択され;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特に、インスリン化合物、特に、インスリン及びインスリン類似体の速効型水性液体医薬組成物の送達のための医療用注入ポンプシステムに関する。そのようなシステムは、真性糖尿病(diabetes mellitus)、特に、1型真性糖尿病に罹患している対象の治療に好適である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
真性糖尿病(「糖尿病(diabetes)」)は、低血糖又は高血糖に至る血糖値の制御不全と関連する代謝障害である。未治療の糖尿病は、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、卒中、糖尿病性腎症、ニューロパチー、及び網膜症を含む、重篤な微小血管及び大血管合併症に至ることがある。糖尿病の2つの主要なタイプは、(i)インスリンを産生しない膵臓に起因し、それに対する通常の治療がインスリン補充療法である、1型糖尿病、及び(ii)患者が不十分なインスリンを産生するか又はインスリン抵抗性を有するかのいずれかであり、かつそれに対する治療がインスリン抵抗性改善剤(例えば、メトホルミン又はピオグリタゾン)、従来型インスリン分泌促進物質(例えば、スルホニルウレア)、腎臓におけるグルコース吸収を低下させ、それにより、グルコース排泄を促進するSGLT2阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、及びエンパグリフロジン)、膵臓β細胞からのインスリン放出を刺激するGLP-1アゴニスト(例えば、エキセナチド及びデュラグルチド)、並びにGLP-1の分解を阻害して、インスリン分泌の増加をもたらすDPPIV阻害剤(例えば、シタグリプチン又はビルダグリプチン)を含む、2型糖尿病である。2型糖尿病を有する患者は、最終的には、インスリン補充療法を必要とし得る。
【0003】
インスリン補充療法を必要とする患者のために、種々の治療選択肢があり得る。組換えヒトインスリンの使用は、近年、改変された性質を有する、例えば、通常のインスリンよりも作用が長いか又は作用が速いインスリン類似体の使用に取って代わられている。したがって、患者に対する一般的なレジメンは、食事時の頃に、速効型インスリンを補足した長時間作用型の基本インスリンの受容を伴う。
【0004】
インスリンは、ジスルフィド架橋によって連結された2つの鎖(それぞれ、長さが21アミノ酸及び30アミノ酸のA鎖及びB鎖)から形成されるペプチドホルモンである。インスリンは、通常、中性pHでは、六量体の形態で存在し、各々の六量体は、亜鉛イオンで結び付けられた3つの二量体を含む。インスリン上のヒスチジン残基は、亜鉛イオンとの相互作用に関与することが知られている。インスリンは、体内で六量体形態で貯蔵されるが、単量体形態が活性形態である。従来より、インスリンの治療用組成物も、亜鉛イオンの存在下、六量体形態で製剤化されている。典型的には、1つのインスリン六量体当たりおよそ3個の亜鉛カチオンが存在する。六量体形態は、単量体及び二量体形態よりもかなりゆっくりと注射部位から吸収されると理解されている。それゆえ、六量体形態を不安定化し、注射後に皮下空間における亜鉛結合六量体から二量体及び単量体へのより迅速な解離を可能にすれば、より速やかなインスリン作用の開始を達成することができる。この原理を念頭に置いて、3つのインスリン類似体が遺伝子改変されている。1つ目は、B鎖の残基28及び29(それぞれ、Pro及びLys)が逆転しているインスリンリスプロ(HUMALOG(登録商標))であり、2つ目は、通常ProであるB鎖の残基28がAspに置き換えられているインスリンアスパルト(NOVORAPID(登録商標))であり、3つ目は、通常AsnであるB鎖の残基3がLysに置き換えられ、かつ通常LysであるB鎖の残基29がGluに置き換えられているインスリングルリジン(APIDRA(登録商標))である。
【0005】
既存の速効型インスリン類似体は、より迅速な作用開始を達成することができるが、亜鉛カチオンをインスリンから完全に除去することにより、より一層迅速に作用する(「超速効型」)インスリンを達成することができると理解されている。残念なことに、六量体解離の結果は、通常、物理的安定性(例えば、凝集に対する安定性)と化学的安定性(例えば、脱アミド化に対する安定性)の両方に関して、インスリン安定性の相当な悪化となる。例えば、作用が迅速に開始される単量体インスリン又はインスリン類似体は凝集し、極めて迅速に物理的に不安定化することが知られているが、それは、不溶性凝集体の形成がインスリンの単量体を介して進行するからである。この問題に対処するための様々なアプローチが当技術分野において記載されている:
【0006】
US5,866,538号(Norup)は、ヒトインスリン又はその類似体もしくは誘導体、グリセロール及び/又はマンニトール、並びに5mM~100mMのハロゲン化物(例えば、NaCl)を含む化学的安定性に優れたインスリン調製物を記載している。
【0007】
US7,205,276号(Boderke)は、インスリン並びにインスリン誘導体及び類似体の亜鉛不含製剤の調製と関連する安定性の問題に対処し、少なくとも1つのインスリン誘導体、少なくとも1つの界面活性剤、任意に、少なくとも1つの防腐剤、並びに任意に、等張化剤(isotonicizing agent)、緩衝剤、及び賦形剤のうちの少なくとも1つを含む水性液体製剤(ここで、該製剤は安定であり、亜鉛を含まないか又は製剤のインスリン含有量ベースで0.4重量%未満(例えば、0.2重量%未満)の亜鉛を含む)が記載されている。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)であるように思われる。
【0008】
US2008/0194461号(Maggio)は、その成分が凝集及び免疫原性を低下させると考えられているアルキルグリコシドを含有する、インスリンを含むペプチド及びポリペプチドの製剤を記載している。
【0009】
WO2012/006283号(Pohl)は、インスリンをエチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)などの亜鉛キレーターとともに含有する製剤を記載している。EDTAの種類及び量を調節することにより、インスリン吸収プロファイルが変化すると考えられている。カルシウムEDTAは、注射部位での疼痛の軽減と関連していると考えられており、かつカルシウムを体内から除去する可能性が低いので、EDTAの好ましい形態である。好ましい製剤は、吸収をさらに増強させ、かつ製剤の化学的安定性を改善すると考えられているシトレートも含有する。
【0010】
US2010/0227795号(Steiner)は、インスリン、解離剤、例えば、クエン酸又はクエン酸ナトリウム、及び亜鉛キレーター、例えば、EDTAを含む組成物(ここで、該製剤は生理的pHを有し、透明な水溶液である)を記載している。該製剤は、安定性が改善され、かつ作用が迅速に開始されると考えられている。
【0011】
WO2015/120457号(Wilson)は、亜鉛キレーター、例えば、EDTA、溶解/安定化剤、例えば、クエン酸、マグネシウム塩、亜鉛化合物、及び任意に追加の賦形剤と組み合わせたインスリンを含む安定化された超速効型インスリン製剤を記載している。
【0012】
特定の加速添加剤の使用によるインスリンの吸収及び効果を加速させるためのさらなるアプローチが記載されている:
【0013】
WO91/09617号(Jorgensen)は、ニコチンアミドもしくはニコチン酸又はこれらの塩が非経口投与された水性調製物からのインスリンの吸収速度を高めることを報告している。
【0014】
WO2010/149772号(Olsen)は、インスリン、ニコチン化合物、及びアルギニンを含む製剤を記載している。アルギニンの存在は、製剤の化学的安定性を改善すると考えられている。
【0015】
WO2015/171484号(Christe)は、トレプロスチニルの存在のために、インスリンの作用の開始及び/又は吸収がより速い速効型インスリン製剤を記載している。
【0016】
US2013/0231281号(Soula)は、インスリン又はインスリン類似体及びその平均重合度が3~13であり、かつその多分散指数が1.0を上回る少なくとも1つのオリゴ糖を含む水性溶液組成物であって、該オリゴ糖が部分的に置換されたカルボキシル官能基を有し、非置換カルボキシル官能基が塩形成性である、水性溶液組成物を記載している。そのような製剤は速効性であると考えられている。
【0017】
WO2017/191464号(Arecor Limited)は、インスリン又はインスリン類似体、イオン性亜鉛、キレート剤、及びポリソルベート80を含む水性液体医薬製剤を記載している。
【0018】
WO2016/100042号(Eli Lilly and Company)は、特定の濃度のシトレート、塩化物を含み、場合により、塩化ナトリウム、亜鉛、及び任意に、塩化マグネシウム及び/又は界面活性剤の添加を含み、既存のインスリン類似体産物の市販製剤よりも速い薬物動態及び/又は薬力学作用を有すると考えられている、ヒトインスリン又はインスリン類似体の組成物を記載している。
【0019】
シリンジ、インスリンペン、及びインスリンポンプを含む、インスリンを送達するのに使用することができる装置がいくつか存在する。
【0020】
シリンジは、通常、基礎(長時間作用型)インスリンを、通常、1日あたり1回の注射として送達するのに用いることができる。シリンジは、今なお用いられているが、より使いやすいインスリンペンで徐々に置き換えられているところである。
【0021】
インスリンペンは、非常に使いやすい基礎インスリン及び食事時インスリン(prandial insulin)の双方を送達する方法である。インスリンペンには、インスリンで満たされたカートリッジ、及び使用者によって必要に応じて、必要な量のインスリンを投与するための装置が入っている。先ず、必要とされる量が、特別に設計された機構を用いて選択され(これは、多くの場合、「ダイヤル調整(dialed)」されると呼ばれる)、その後、該ペンが体(通常は腹部)に押し当てられつつ、非常に小さい格納式の針を通じて投与される。
【0022】
インスリンポンプは、最も先進的なインスリンの送達系であり、ますます普及してきている。従来から、インスリンポンプは、主に、1型糖尿病の者によって用いられてきたが、徐々に、2型糖尿病に最適な治療ともなってきている。全てのインスリンポンプは、その中に水性インスリン組成物が保持されるリザーバー、及び微細なカニューレを通じて、ボーラス用量として又は連続的な注入としてのいずれかで体内にインスリン組成物を皮下投与するポンプ機構を備える。
【0023】
現在、インスリンポンプの主なカテゴリーが3種存在する。すなわち、従来型の「繋留型ポンプ(tethered pump)」、「パッチポンプ」、及び「埋め込み型ポンプ」である。
【0024】
従来型である繋留型ポンプは、ポケット内に入れて身に着けられるか又はベルトにクリップ留めされ、微細な配管を用いて該ポンプをカニューレに接続する。ポンプ本体は、低速の連続的な(基礎)速度で及び食事前の追加(ボーラス)用量でのインスリン送達をプログラムすること、又は、必要な場合にインスリン注入を中止することを可能とするボタンを含む。従来型である繋留型ポンプの例としては、MINIMED(登録商標)530G、MINIMED(登録商標)630G、MINIMED(登録商標)670G(Medtronic Diabetes)が挙げられる。
【0025】
パッチポンプは、接着剤層によって取り付けられて、身体(通常は腹部)に直接着用される。パッチポンプは、低速の連続的な(基礎)速度で及び食事前の追加(ボーラス)用量でのインスリン送達をプログラムすること、又は、必要な場合にインスリン注入を中止することを可能とする別個の装置によって無線制御される。カニューレは、パッチポンプの固有の一部分であり、従って、追加の配管は必要ではない。カニューレは、遠隔装置からのパッチの起動をプログラムすることによって、パッチを皮膚上に取りつけた後に自動的に挿入される。インスリンパッチポンプの例としては、OMNIPOD(登録商標)(Insulet Corporation)、T-SLIM(登録商標)X2(Tandem Diabetes Care)、T-FLEX(登録商標)(Tandem Diabetes Care)、CELLNOVO(登録商標)(Cellnovo)が挙げられる。
【0026】
埋め込み型インスリンポンプは、非常に珍しく、全世界での使用者は500名未満である。このポンプは、皮下に外科的に埋め込まれ、該ポンプからのカテーテルが、腹膜腔内に延びる。腹膜腔内への送達は、インスリンの通常の標的である肝臓へのインスリンの迅速な送達を確実なものとする。このポンプは、中にインスリン組成物が保持されるリザーバー、及び該組成物を必要とする速度で投与するための機構を含む。リザーバーは、特別に設計されたポートを通じてシリンジを用いて再充填可能である。埋め込み型インスリンポンプの例は、MINIMED(登録商標)埋め込み型ポンプ(MIP)モデル2000(Medtronic Diabetes)である。
【0027】
高い又は低い血糖値について使用者に警告することができる連続的なグルコースモニターと連動する多くのポンプが現在利用可能である。
【0028】
市販の速効型インスリン製剤が、100U/ml製剤(HUMALOG(登録商標)(インスリンリスプロ)、NOVORAPID(登録商標)(別名:NOVOLOG(登録商標)、インスリンアスパルト)、及びAPIDRA(登録商標)(インスリングルリジン))、並びに200U/ml製剤(HUMALOG(登録商標))として入手可能である。正規ヒトインスリン製品が、100U/ml製剤(例えば、HUMULIN(登録商標)R)及び500U/ml製剤HUMULIN(登録商標) R U-500)として入手可能である。しかしながら、正規ヒトインスリンのかなり不利な点は、速効型の類似体と比較して作用の開始が遅いことである。作用開始の速度は、より高い濃度でさらに低下し、そのような濃厚なインスリンを食事時の使用(prandial use)に不適としている。
【0029】
より高い濃度のインスリン化合物を有する組成物が、例えば、より高いインスリン用量を必要とする患者、例えば、肥満患者又はインスリン抵抗性を発症した患者に望ましい。必要とされる高い用量をより小さい体積で送達することができるので、より高い濃度のインスリンを有する組成物は、結果として、これらのカテゴリーの患者に望ましい。200U/ml HUMALOG(登録商標)製剤の開発は、上記の状況における患者の利便性に向けての重要な一歩であったが、例えば、400U/ml以上又は500U/ml以上又は1000U/ml以上などのかなり高い濃度の速効型インスリンの製剤を開発することが依然として強く必要とされている。また、そのような高強度の組成物におけるインスリンの迅速な作用開始を維持することも有利であろう。
【0030】
また、より高い濃度のインスリン化合物を有する組成物も、送達装置、特に、インスリンパッチポンプの小型化に非常に望ましい。所与の用量を小体積で保持する能力は、パッチポンプを、より小型化し、使用者にとってより使いやすいものとすることができることを意味する。加えて、より多くのインスリンユニット数が所与の体積に保持されるために、濃厚なインスリン組成物は、ポンプ内のリザーバーのより長期間にわたる使用を可能とし得る。
【0031】
より高い濃度のインスリン化合物、特に、速効型インスリン化合物を含有する製剤の使用と関連する既知の問題は、低濃度(又は低強度)製剤、例えば、100U/mlのインスリン化合物で観察される速効作用が低下するということである。したがって、インスリン化合物の濃度を増加させると、同じ用量が送達された場合でも、作用開始がより遅くなることが観察されている。例えば、de la Penaらの文献、健康な肥満対象における高用量ヒト正規U-500インスリンとヒト正規U-100インスリンの薬物動態及び薬力学(Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of High-Dose Human Regular U-500 Insulin Versus Human Regular U-100 Insulin in Healthy Obese Subjects)、Diabetes Care、34、pp 2496-2501、2011を参照されたい。
【0032】
インスリンポンプの使用に関連する既知の問題は、(例えば、リザーバーから注射部位へとインスリンを送達するマイクロ流体システムのカニューレ、配管、又は任意の他の部分の)閉塞、すなわち、それが詰まることである。閉塞は、いくつかの因子によって引き起こされ得るが、インスリンの凝集及び結果として生じる不溶粒子の形成に関連することが最も多い。ポンプの故障に繋がってしまう閉塞のリスクを回避することは、自律的なインスリンポンプシステム、特に、埋め込まれることになっているものの開発に成功するための必要条件である。
【0033】
速効型又は超速効型であり、かつ貯蔵時及び使用中に体内及び体外双方の温度で安定なままであるインスリン又はインスリン類似体の組成物をリザーバーから送達することができる医療用注入ポンプシステムが入手可能であれば望ましいであろう。加えて、そのような医療用注入ポンプシステムの使用の利便性を向上させるために、システムの小型化が望ましいであろうが、これには、リザーバーの小型化及び結果としてのリザーバー内のインスリンの総量を同じままとするようなインスリンの濃度の増加が必要となるであろう。
【発明の概要】
【0034】
(発明の概要)
本発明により、ポンプ、及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性液体医薬組成物を含むリザーバーを備える医療用注入ポンプシステムであって、該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、前記医療用注入ポンプシステムが提供される。
【0035】
本発明のシステムの組成物は、インスリンを、良好な物理的及び化学的安定性を有する形態で、好ましくは、速効型又は超速効型の形態で提供する。重要なことに、本発明者らは、非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドの使用が、インスリン組成物の貯蔵安定性を増加させることを確認しており、これは、使用中の良好な安定性を伴って、1つ以上のリザーバーから哺乳動物の体にインスリンの水性液体医薬組成物を送達するポンプベースのシステムの使用を可能とすることが期待されている。
【0036】
上の背景の考察において述べられているように、六量体インスリン中の亜鉛イオンをキレートするためのEDTAの使用は作用の速度を確かに増加させるが、安定性を大いに低下させるという代償を払う。理論に束縛されるものではないが、本発明者らはまた、本発明のある実施態様において亜鉛を亜鉛との結合があまり強くない種と併用することにより、作用速度に関して同様の効果を達成することができ、非イオン性界面活性剤を使用することにより、その中程度に不安定化する効果を低下又は消失させることができることも理解している。さらに、本発明者らは、そのような亜鉛結合種の存在が、高濃度(高強度)インスリン化合物組成物の作用開始を加速し、それによって、組成物中のインスリン化合物の濃度が増加した場合に認められているインスリンの作用開始に対する遅延化作用を緩和することを確認している。
【0037】
本発明のシステムの組成物は、真性糖尿病、特に、1型真性糖尿病に罹患している対象の治療に使用し得る。
【0038】
共に示される実施例から分かるように、本発明のシステムの例示的組成物は、注入ポンプシステムのものをモデル化するストレス条件下を含めて、非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含まない組成物よりもかなり安定である。この例示的組成物は、迅速なインスリンの作用の速度を達成し、かつEDTAを含有する従来技術の速効型インスリン製剤よりも安定である。更に、本発明のシステムの例示的組成物は、良好な安定性及び迅速な作用開始を維持しつつ、高い濃度のインスリン化合物を含有する。
【0039】
(配列表の説明)
配列番号1:ヒトインスリンのA鎖
配列番号2:ヒトインスリンのB鎖
配列番号3:インスリンリスプロのB鎖
配列番号4:インスリンアスパルトのB鎖
配列番号5:インスリングルリジンのB鎖
【図面の簡単な説明】
【0040】
(図面)
図1】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例4の製剤4A~4Cの薬力学プロファイル。
図2】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例13の製剤13A及び13Bの薬力学プロファイル。
図3】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例14の製剤14A~14Dの薬力学プロファイル。
図4】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例14の製剤14A~14Cの薬物動態プロファイル。
図5】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例15の製剤15A~15Dの薬力学プロファイル。
図6】検証済みの糖尿病ユカタンミニブタモデルにおける実施例15の製剤15A、15B、及び15Dの薬物動態プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
本明細書で使用される場合、「インスリン化合物」は、インスリン及びインスリン類似体を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「インスリン」は、配列番号1及び2に示されるA鎖及びB鎖を有し、ネイティブな分子と同様のジスルフィド架橋を含有し、かつそれによって接続されている(Cys A6-Cys A11、Cys B7-Cys A7、及びCys-B19-Cys A20)、ネイティブなヒトインスリンを指す。インスリンは、好適には、組換えインスリンである。
【0043】
「インスリン類似体」は、インスリン受容体アゴニストであり、かつ例えば、A又はB鎖(特に、B鎖)の配列中に1個又は2個のアミノ酸変化を含有する、修飾されたアミノ酸配列を有する、インスリンの類似体を指す。望ましくは、そのようなアミノ酸修飾は、該分子の亜鉛に対する親和性を低下させ、それにより、作用速度を増加させることが意図される。したがって、望ましくは、インスリン類似体は、インスリンの作用速度と同じか又は好ましくはそれを上回る作用速度を有する。インスリン又はインスリン類似体の作用速度は、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)で決定することができる。例示的なインスリン類似体としては、速効型類似体、例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、及びインスリングルリジンが挙げられる。これらの形態のインスリンは、ヒトインスリンA鎖を有するが、バリアントB鎖を有する。配列番号3~5を参照されたい。さらに速効型類似体は、その内容が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、EP0214826号、EP0375437号、及びEP0678522号に記載されている。好適には、インスリン化合物は、インスリングラルギンではない。好適には、インスリン化合物は、インスリンデグルデクではない。好適には、インスリン化合物は、速効型インスリン化合物であり、ここで、「速効型」は、例えば、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的な方法(c)を参照)を用いて測定したときに、ネイティブなヒトインスリンの作用速度を上回る作用速度を有する、インスリン化合物と定義される。
【0044】
一実施態様において、インスリン化合物は、組換えヒトインスリンである。別の実施態様において、それは、インスリンリスプロである。別の実施態様において、それは、インスリンアスパルトである。別の実施態様において、それは、インスリングルリジンである、別の実施態様において、インスリン化合物は、組換えヒトインスリンではない。
【0045】
本明細書で使用される「水性液体医薬組成物」という用語は、水性成分が、水、好ましくは、蒸留水、脱イオン水、注射用水、滅菌注射用水、もしくは静菌注射用水であるか、又はそれらを含む、治療的使用に好適な組成物を指す。本発明のシステムの水性液体医薬組成物は、全成分が水に溶解している溶液組成物である。
【0046】
組成物中のインスリン化合物の濃度は、好適には、10~1000U/mlの範囲であり、例えば、50~1000U/ml、例えば、400~1000U/ml、例えば、500~1000U/ml、例えば、600~1000U/ml、例えば、700~1000U/ml、例えば、800~1000U/ml、例えば、900~1000U/ml、例えば、1000U/mlである。一実施態様において、組成物中のインスリン化合物の濃度は、10~250U/mlである。
【0047】
本明細書で使用される「U/ml」は、容量当たりの単位に換算したインスリン化合物の濃度を記載したものであり、ここで、「U」は、インスリン活性の国際単位である(例えば、欧州薬局方5.0、ヒトインスリン(European Pharmacopoeia 5.0、Human Insulin)、pp 1800-1802を参照)。
【0048】
本発明のシステムの組成物は、イオン性亜鉛、すなわち、Zn2+イオンを含有する。イオン性亜鉛の源は、通常、水溶性亜鉛塩、例えば、ZnCl2、ZnO、ZnSO4、Zn(NO3)2、又はZn(酢酸)2、最も好ましくは、ZnCl2又はZnOである。
【0049】
組成物中のイオン性亜鉛は、通常、組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で、0.05%超、例えば、0.1%超、例えば、0.2%超、0.3%超、又は0.4%超の濃度で存在する。したがって、組成物中のイオン性亜鉛の濃度は、組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で、0.5%超、例えば、組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で、0.5~1%、例えば、0.5~0.75%、例えば、0.5~0.6%であり得る。計算のために、亜鉛に対する対イオンの重量は除外される。
【0050】
例えば、1000U/mlのインスリン化合物を含有する組成物において、イオン性亜鉛の濃度は、通常、0.15mM超、例えば、0.3mM超、例えば、0.6mM超、0.9mM超、又は1.2mM超である。したがって、組成物中のイオン性亜鉛の濃度は、1.5mM超、例えば、1.5~6.0mM、例えば、2.0~4.5mM、例えば、2.5~3.5mMであり得る。
【0051】
本発明のシステムの組成物は、任意に、例えば、1mM以上の濃度の、例えば、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される亜鉛結合種を含み得る。好適には、前記亜鉛結合種は、25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される。アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)の参照データベース46(金属錯体の厳しく選択された安定度定数)に掲載されている金属結合安定度定数を使用することができる。このデータベースは、通常、25℃で決定されたlogK定数を掲載している。それゆえ、本発明に対する亜鉛結合種の好適性は、25℃で測定される及び該データベースに引用されている、亜鉛結合に関するその金属結合安定度定数logKに基づいて決定することができる。亜鉛結合種は、本発明による組成物中の「加速剤」と記載されてもよい。例示的な亜鉛結合種としては、多座配位有機アニオンが挙げられる。したがって、好ましい実施態様において、亜鉛結合種は、例えば、クエン酸三ナトリウム又はクエン酸として利用することができるシトレート(logK=4.93)である。さらなる例としては、ピロホスフェート(logK=8.71)、アスパルテート(logK=5.87)、グルタメート(logK=4.62)、システイン(logK=9.11)、シスチン(logK=6.67)、及びグルタチオン(logK=7.98)が挙げられる。他の考えられる亜鉛結合種としては、イオン性亜鉛との相互作用のための孤立電子対又は電子密度に寄与し得る物質、例えば、エチレンジアミン(logK=5.69)、ジエチレントリアミン(DETA、logK=8.88)、及びトリエチレンテトラミン(TETA、logK=11.95)を含む、多座配位アミン;並びに孤立電子対に寄与し得る芳香族又はヘテロ芳香族物質、特に、イミダゾール部分を含むもの、例えば、ヒスチジン(logK=6.51)が挙げられる。したがって、一実施態様において、亜鉛イオン結合に関するlogKが4.5~12.3の範囲である亜鉛結合種は、シトレート、ピロホスフェート、アスパルテート、グルタメート、システイン、シスチン、グルタチオン、エチレンジアミン、ヒスチジン、DETA、及びTETAから選択される。
【0052】
亜鉛結合種の最も好適な濃度は、薬剤とそのlogK値によって決まり、通常、1~100mMの範囲である。亜鉛結合種の濃度は、所望の加速効果をもたらすために、組成物中に存在するインスリン化合物の特定の濃度に従って調整することができる。
【0053】
例えば、4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、1~60mMの濃度で存在し得る。好適には、組成物中の亜鉛結合種の濃度は、該亜鉛結合種が、インスリン化合物1000U/mlの組成物用のシトレート又はヒスチジンである場合には、5~60mM、例えば、5~60mM、例えば、10~60mM、例えば、20~60mM、例えば、30~60mM、例えば、40~60mM、例えば、40~50mM、より好ましくは、約44mMである。一実施態様において、4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、1~50mMの濃度で存在する。
【0054】
アニオン性亜鉛結合種は、遊離酸又は塩形態、例えば、ナトリウムもしくはカルシウムイオン、特に、ナトリウムイオンとの塩形態として利用することができる。
【0055】
亜鉛結合種の混合物を利用することができるが、単一の亜鉛結合種が好ましい。
【0056】
好適には、組成物中のイオン性亜鉛と亜鉛結合種のモル比は、1:3~1:175である。
【0057】
亜鉛結合種としてのシトレート又はヒスチジンについて、以下の範囲が特に対象となる:例えば、1:10~1:175、例えば、1:10~1:100、例えば、1:10~1:50、例えば、1:10~1:30、例えば、1:10~1:20(特に、インスリン化合物1000U/ml組成物の場合)。
【0058】
例えば、1000U/mLのインスリン化合物を含有する組成物は、約3mMのイオン性亜鉛(すなわち、約197μg/mLのイオン性亜鉛、すなわち、組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で約0.54%)、及び約30~60mM、例えば、40~60mM、例えば、40~50mMの亜鉛結合種(特に、シトレート)を含有し得る。
【0059】
一実施態様において、組成物中のインスリン化合物濃度(U/ml)と亜鉛結合種(mM)の比は、100:1~2:1の範囲、例えば、50:1~2:1、例えば、40:1~2:1である。
【0060】
一実施態様において、組成物は、EDTA及び25℃で決定したときに12.3を上回る亜鉛結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない。実施態様において、本発明の製剤は、EDTA(logK=14.5)を実質的に含まない。避けられるべき亜鉛結合に関する金属結合安定度定数logKが12.3を上回る亜鉛結合種のさらなる例としては、EGTA(logK=12.6)が挙げられる。一般に、本発明のシステムの組成物は、四座配位子又は配位座数がより大きい配位子を実質的に含まない。実施態様において、本発明のシステムの組成物は、25℃で10~12.3である亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、指定されているような亜鉛結合に関する金属結合安定度定数logKを有する亜鉛結合種(例えば、EDTA)の濃度が、0.1mM未満、例えば、0.05mM未満、例えば、0.04mM未満、又は0.01mM未満であることを意味する。
【0061】
存在する場合、酸形態を有する亜鉛イオン結合種(例えば、クエン酸)を、本発明のシステムの水性組成物中に、該酸の塩、例えば、ナトリウム塩(例えば、クエン酸三ナトリウム)の形態で導入することができる。或いは、それらを酸の形態で導入し、その後、pHを必要とされるレベルに調整することができる。本発明者らは、ある状況では、塩形態(例えば、クエン酸三ナトリウム)の代わりに酸形態(例えば、クエン酸などの)を組成物中に導入することが、優れた化学的及び物理的安定性を提供するという観点で利点があり得ることを見出だしている。従って、ある実施態様において、亜鉛イオン結合種としてのシトレートの源は、クエン酸である。
【0062】
実施態様において、組成物は、(i)インスリン化合物(例えば、インスリングラルギン以外のインスリン化合物)、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ジエチレントリアミン(DETA)及びトリエチレンテトラミン(TETA)から選択される亜鉛結合種、並びに(iv)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む。そのような組成物は、例えば、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まないものであり得る。亜鉛結合種は、例えば、約0.05mM以上、例えば、0.05~5mM、例えば、0.05~2mMの濃度で存在し得る。組成物中のイオン性亜鉛の亜鉛結合種に対するモル比は、例えば、2:1~1:10であり得る。
【0063】
実施態様において、組成物は、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される1mM以上の濃度の亜鉛結合種、(iv)25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される約0.3mM未満の濃度の亜鉛結合種、及び(v)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む。実施態様において、25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、約0.01mM~約0.3mMの濃度で前記組成物中に存在する。実施態様において、25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)、エチレングリコールテトラアセテート(EGTA)、テトラエチレンペンタミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジニトリロトリアセテート(HEDTA)、1-メチル-エチレンジニトリロトリアセテート(PDTA)、1-エチル-エチレンジニトリロトリアセテート、1-プロピル-チレンジニトリロトリアセテート(1-propyl-thylenedinitrilotriacetate)、1-カルボキシエチレン-エチレンジニトリロトリアセテート、トリエチレンテトラニトリロヘキサアセテート、テトラエチレンペンタニトリロヘプタアセテート(TPHA)、及びトリス(2-アミノエチル)アミン(Tren)から選択され、特に、EDTAである。例えば、イオン性亜鉛の25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種としてのEDTAに対するモル比は、2:1~25:1である。実施態様において、25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、シトレート、ピロホスフェート、アスパルテート、グルタメート、システイン、シスチン、グルタチオン、エチレンジアミン、及びヒスチジンから選択され、特に、シトレートである。実施態様において、25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種は、1~50mMの濃度で存在する。実施態様において、イオン性亜鉛の25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種に対するモル比は、1:3~1:500である。
【0064】
本発明のシステムの組成物は、非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含有する。一実施態様において、前記アルキルグリコシドは、ドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルグルコピラノシド、デシルマルトシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択される。一実施態様において、アルキルグリコシドは、ドデシルマルトシド又はデシルグルコピラノシドである。好ましい一実施態様において、アルキルグリコシドは、ドデシルマルトシドである。
【0065】
組成物中のアルキルグリコシドの濃度は、通常、1~1000μg/mlの範囲、例えば、5~500μg/ml、例えば、10~200μg/ml、例えば、10~100μg/ml、又は約50μg/mlである。一実施態様において、非イオン性界面活性剤は、10~400μg/ml、例えば、20~400μg/ml、50~400μg/ml、10~300μg/ml、20~300μg/ml、50~300μg/ml、10~200μg/ml、20~200μg/ml、50~200μg/ml、10~100μg/ml、20~100μg/ml、又は50~100μg/mlの濃度で存在する。
【0066】
別の実施態様において、インスリン化合物の濃度は、800~1000U/mlであり、かつ非イオン性界面活性剤は、50~200μg/mlの濃度で存在する。この実施態様において、好適には、非イオン性界面活性剤は、ドデシルマルトシドである。
【0067】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、(i)50~500U/mlの濃度のインスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつ該組成物は、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない。好適には、シトレートは、10~30mM、例えば、10~20mM、例えば、15~25mM、例えば、20~30mMの濃度で前記組成物中に存在し得る。
【0068】
別の実施態様において、本発明のシステムの組成物は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつ、該組成物は、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない。好適には、シトレートは、30~50mM、例えば、30~40mM、例えば、35~45mM、例えば、40~50mMの濃度で前記組成物中に存在し得る。一実施態様において、シトレートは、30~60mMの濃度で前記組成物中に存在する。
【0069】
好適には、本発明のシステムの組成物のpHは、5.5~9.0の範囲、例えば、7.0~7.5の範囲にある。注射痛を最小限に抑えるために、pHは、好ましくは、生理的pH(約pH 7.4)付近である。本発明のシステムの一実施態様において、pHは、7.0~8.0の範囲にあり、例えば、7.5である。本システムの別の実施態様において、pHは、7.6~8.0の範囲にあり、例えば、7.8である。
【0070】
好適には、本発明のシステムの組成物は、組成物のpHを安定化するために、緩衝剤(例えば、1以上の緩衝剤)を含み、これは、タンパク質安定性を増強するように選択することもできる。一実施態様において、緩衝剤は、組成物のpHに近いpKaを有するように選択され;例えば、組成物のpHが5.0~7.0の範囲である場合には、ヒスチジンが、緩衝剤として好適に利用される。そのような緩衝剤は、0.5~20mM、例えば、2~5mMの濃度で利用され得る。ヒスチジンが組成物中に亜鉛結合種として含まれる場合、それは、このpHで緩衝する役割も有する。別の実施態様において、組成物は、リン酸緩衝剤を含む。組成物のpHが6.1~8.1の範囲である場合には、リン酸ナトリウムが緩衝剤として好適に利用される。そのような緩衝剤は、0.5~20mM、例えば、2~5mM、例えば、2mMの濃度で利用され得る。或いは、別の実施態様において、本発明のシステムの組成物は、タンパク質及び1種以上の添加剤を含む組成物であって、系が従来の緩衝剤、すなわち、組成物の意図される貯蔵温度範囲、例えば、25℃で、組成物のpHの1単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする、組成物を記載しているWO2008/084237号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に開示されているようにさらに安定化にされる。この実施態様において、組成物のpHは、該組成物がpHに関して最大の測定可能な安定性を有する値に設定され;1種以上の添加剤(置換緩衝剤)は、プロトンをインスリン化合物と交換することができ、組成物の意図される貯蔵温度範囲で組成物のpHよりも少なくとも1単位大きい又は小さいpKa値を有する。添加剤は、組成物の意図される貯蔵温度範囲(例えば、25℃)で、水性組成物のpHの1~5 pH単位、好ましくは、1~3 pH単位、最も好ましくは、1.5~2.5 pH単位のpKaを有するイオン化可能な基を有し得る。そのような添加剤は、通常、0.5~10mM、例えば、2~5mMの濃度で利用され得る。
【0071】
本システムの組成物は、低張、等張、及び高張組成物を含む、広範囲のオスモル濃度に及ぶ。好ましくは、本発明のシステムの組成物は、実質的に等張である。好適には、組成物のオスモル濃度は、投与経路による、例えば、注射時の痛みを最小限に抑えるように選択される。好ましい組成物は、約200~約500mOsm/Lの範囲のオスモル濃度を有する。好ましくは、オスモル濃度は、約250~約350mOsm/Lの範囲である。より好ましくは、オスモル濃度は、約300mOsm/Lである。
【0072】
組成物の浸透圧は、浸透圧調節剤(例えば、1以上の浸透圧調節剤)で調整することができる。従って、本発明のシステムの組成物は、浸透圧調節剤(例えば、1以上の浸透圧調節剤)をさらに含んでいてもよい。浸透圧調節剤は、荷電性であっても非荷電性であってもよい。荷電性浸透圧調節剤の例としては、塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はカルシウムイオンと、塩化物、硫酸、炭酸、亜硫酸、硝酸、乳酸、コハク酸、酢酸、又はマレイン酸イオンとの組合せ(特に、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム、特に、塩化ナトリウム)が挙げられる。
【0073】
一実施態様において、荷電性浸透圧調節剤は、塩化ナトリウムである。本発明のシステムのインスリン化合物組成物は、インスリン組成物を調製する際に利用される標準的な酸性化及び後続の中和工程の使用の結果として、2~4mMの残存NaCl濃度を含有し得る。アルギニン、グリシン、又はヒスチジンなどのアミノ酸も、この目的で使用し得る。荷電性浸透圧調節剤(例えば、NaCl)は、100~300mM、例えば、約150mMの濃度で使用され得る。好ましくは、塩化物は、>60mM、例えば、>65mM、>75mM、>80mM、>90mM、>100mM、>120mM、又は>140mMの濃度で存在する。
【0074】
組成物中のインスリン化合物の濃度が、400U/ml以上である場合には、好適には、荷電性浸透圧調節剤よりも非荷電性浸透圧調節剤が使用される。
【0075】
非荷電性浸透圧調節剤の例としては、糖、糖アルコール及び他のポリオール、例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、又はラクチトール(特に、トレハロース、マンニトール、グリセロール、もしくは1,2-プロパンジオール、特に、グリセロール)が挙げられる。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオールからなる群から選択される。別の実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、グリセロールである。非荷電性浸透圧調節剤は、好ましくは、200~500mM、例えば、約300mMの濃度で使用される。別の対象となる範囲は、100~500mMである。一実施態様において、組成物中の非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度で使用される。一実施態様において、組成物中の非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度のグリセロールである。
【0076】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、<10mMの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、例えば、<9mM、<8mM、<7mM、<6mM、又は<5mMを含むか、又は塩化物(例えば、塩化ナトリウム)を実質的に含まず、すなわち、pH調整の一部として供給され得る塩化物の以外の塩化物が、組成物に添加されることはない。
【0077】
インスリン化合物が、インスリンリスプロである場合、浸透圧は、好ましくは、200~500mM、例えば、約300mMの濃度の非荷電性浸透圧調節剤を用いて好適に調整される。この実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、好適には、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオール(最も好適には、グリセロール)からなる群から選択される。別の実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度で使用される。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度のグリセロールである。
【0078】
インスリン化合物が、インスリンアスパルトである場合、浸透圧は、好ましくは、200~500mM、例えば、約300mMの濃度の非荷電性浸透圧調節剤を用いて好適に調整される。この実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、好適には、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオール(最も好適には、グリセロール)からなる群から選択される。別の実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度で使用される。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度のグリセロールである。
【0079】
インスリン化合物が、インスリングルリジンである場合、浸透圧は、好ましくは、200~500mM、例えば、約300mMの濃度の非荷電性浸透圧調節剤を用いて好適に調整される。この実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、好適には、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオール(最も好適には、グリセロール)からなる群から選択される。別の実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度で使用される。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、100~300mM、例えば、150~200mM、170~180mM、又は約174mMの濃度のグリセロールである。
【0080】
本発明のシステムの組成物のイオン強度は、式I:
【数1】
(式中、cxは、イオンxのモル濃度(mol L-1)であり、zxは、イオンxの電荷の絶対値であり、かつ総和は、前記組成物中に存在する全てのイオン(n)を含め、ここで、インスリン化合物及び亜鉛結合種(存在する場合)の寄与は、計算のために無視するものとする)に従って計算することができる。イオン性亜鉛の寄与は、含めるものとする。双性イオンの場合、電荷の絶対値は、極性を除いた総電荷であり、例えば、グリシンの場合、考えられるイオンは、0、1、又は2という絶対電荷を有し、アスパラギン酸の場合、考えられるイオンは、0、1、2、又は3という絶対電荷を有する。
【0081】
特に、インスリン化合物の濃度が、400U/mL以上である実施態様において、組成物のイオン強度は、好適には、40mM未満、30mM、20mM未満、又は10mM未満である。
【0082】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリン化合物(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、及び(iv)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含み;ここで、該組成物は、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず、かつここで、組成物のイオン強度は、40mM未満であり、該イオン強度は、式I:
【数2】
(式中、cxは、イオンxのモル濃度(mol L-1)であり、zxは、イオンxの電荷の絶対値であり、かつ総和は、該組成物中に存在する全てのイオン(n)を含め、ここで、インスリン化合物及び亜鉛結合種(存在する場合)の寄与は、計算のために無視するものとする)を用いて計算される。イオン性亜鉛の寄与は含めるものとする。好適には、シトレートは、30~50mM、例えば、40~50mMの濃度で前記組成物中に存在する。好適には、組成物のイオン強度は、式Iを用いて計算して40mM未満である。好適には、本発明の製剤は、<10mMの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、例えば、<9mM、<8mM、<7mM、<6mM、又は<5mMを含むか、又は塩化物(例えば、塩化ナトリウム)を実質的に含まず、すなわち、pH調整の一部として供給され得る塩化物以外の塩化物が、製剤に添加されることはない。一実施態様において、組成物は、非荷電性浸透圧調節剤を含む。
【0083】
一実施態様において、インスリン化合物は、400~1000U/ml、例えば、>400~1000U/ml、500~1000U/ml、例えば、>500~1000U/ml、600~1000U/ml、>600~1000U/ml、700~1000U/ml、>700~1000U/ml、750~1000U/ml、>750~1000U/ml、800~1000U/ml、>800~1000U/ml、900~1000U/ml、>900~1000U/ml、又は1000U/mlの濃度で存在し、かつ亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、30mM未満、例えば、20mM未満、例えば、10mM未満、例えば、1~10mMである。さらなる実施態様において、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、25mM未満、20mM未満、15mM未満、もしくは10mM未満であるか、又は5~<30mM、5~30mM、5~20mM、2~20mM、1~10mM、2~10mM、もしくは5~10mMの範囲である。
【0084】
インスリン化合物が、400~1000U/ml、例えば、>400~1000U/ml、500~1000U/ml、例えば、>500~1000U/ml、600~1000U/ml、>600~1000U/ml、700~1000U/ml、>700~1000U/ml、750~1000U/ml、>750~1000U/ml、800~1000U/ml、>800~1000U/ml、900~1000U/ml、>900~1000U/ml、又は1000U/mlの濃度のインスリンリスプロである場合、イオン強度のより高い組成物が、イオン強度のより低い組成物よりも、特に、高いインスリン濃度で安定性が低いために、組成物のイオン強度は、好適には、最低レベルに維持される。好適には、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、30mM未満、例えば、20mM未満、例えば、10mM未満、例えば、1~10mMである。特に、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、25mM未満、20mM未満、15mM未満、もしくは10mM未満であるか、又は、5~<30mM、5~30mM、5~20mM、2~20mM、1~10mM、2~10mM、又は5~10mMの範囲にある。
【0085】
インスリン化合物が、400~1000U/ml、例えば、>400~1000U/ml、500~1000U/ml、例えば、>500~1000U/ml、600~1000U/ml、>600~1000U/ml、700~1000U/ml、>700~1000U/ml、750~1000U/ml、>750~1000U/ml、800~1000U/ml、>800~1000U/ml、900~1000U/ml、>900~1000U/ml、又は1000U/mlの濃度のインスリンアスパルトである場合、イオン強度のより高い組成物が、イオン強度のより低い組成物よりも安定性が低いために、組成物のイオン強度は、好適には、最低レベルに維持される。好適には、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、30mM未満、例えば、20mM未満、例えば、10mM未満である。特に、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、25mM未満、20mM未満、15mM未満、もしくは10mM未満であるか、又は、5~<30mM、5~30mM、5~20mM、2~20mM、1~10mM、2~10mM、もしくは5~10mMの範囲にある。浸透圧は、好適には、非荷電性浸透圧調節剤を用いて調整され得る。
【0086】
インスリン化合物が、400~1000U/ml、例えば、>400~1000U/ml、500~1000U/ml、例えば、>500~1000U/ml、600~1000U/ml、>600~1000U/ml、700~1000U/ml、>700~1000U/ml、750~1000U/ml、>750~1000U/ml、800~1000U/ml、>800~1000U/ml、900~1000U/ml、>900~1000U/ml、又は1000U/mlの濃度のインスリングルリジンである場合、イオン強度のより高い組成物が、イオン強度のより低い組成物よりも安定性が低い可能性があるために、組成物のイオン強度は、好適には、最低レベルに維持される。好適には、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、30mM未満、例えば、20mM未満、例えば、10mM未満である。特に、亜鉛結合種、インスリン化合物、及びイオン性亜鉛を除く組成物中のイオンを考慮したイオン強度は、25mM未満、20mM未満、15mM未満、もしくは10mM未満であるか、又は、5~<30mM、5~30mM、5~20mM、2~20mM、1~10mM、2~10mM、もしくは5~10mMの範囲である。
【0087】
本発明のシステムの組成物は、任意に、防腐剤(例えば、1種以上の防腐剤)をさらに含み得る。1種以上の防腐剤を採用し得る。一実施態様において、防腐剤は、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される。
【0088】
本発明のシステムの組成物は、任意に、ニコチンアミドをさらに含み得る。ニコチンアミドの存在は、本発明のシステムの組成物中に製剤化されたインスリンの作用開始の速度をさらに増加させ得る。好適には、ニコチンアミドの濃度は、10~150mMの範囲、好ましくは、20~100mMの範囲、例えば、約80mMである。
【0089】
本発明のシステムの組成物は、任意に、ニコチン酸又はその塩をさらに含み得る。ニコチン酸又はその塩の存在も、本発明のシステムの組成物中に製剤化されたインスリンの作用開始の速度をさらに増加させ得る。好適には、ニコチン酸又はその塩の濃度は、10~150mMの範囲、好ましくは、20~100mMの範囲、例えば、約80mMである。例となる塩としては、金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0090】
典型的には、ニコチンアミド及びニコチン酸(又はその塩としてのもの)のうちの1つを組成物中に含めることができるが、両方を含めることはできない。
【0091】
実施態様において、組成物は、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物、(iv)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシド;及び(v)第1族金属と一価又は二価のアニオンとの間で形成される塩から選択される塩を含む。実施態様において、ニコチン化合物は、ニコチンアミド又はニコチン酸もしくはその塩である。実施態様において、ニコチン化合物は、10~150mMの濃度で前記組成物中に存在する。実施態様において、第1族金属は、ナトリウムである。実施態様において、塩は、一価又は二価のアニオンのナトリウム塩である。実施態様において、アニオンは、塩化物イオン又は酢酸イオンである。従って、例えば、塩は、塩化ナトリウム又は酢酸ナトリウムである。実施態様において、塩は、30~200mMの濃度で前記組成物中に存在する。
【0092】
本発明のシステムの組成物は、任意に、トレプロスチニル又はその塩をさらに含み得る。トレプロスチニルの存在は、本発明のシステムの組成物中に製剤化されたインスリンの作用開始の速度をさらに増加させ得る。好適には、組成物中のトレプロスチニルの濃度は、0.1~12μg/mlの範囲、例えば、0.1~10μg/ml、0.1~9μg/ml、0.1~8μg/ml、0.1~7μg/ml、0.1~6μg/ml、0.1~5μg/ml、0.1~4μg/ml、0.1~3μg/ml、0.1~2μg/ml、0.5~2μg/ml、又は約1μg/mlである。
【0093】
一実施態様において、組成物は、血管拡張剤を含有しない。さらなる実施態様において、組成物は、トレプロスチニルも、ニコチンアミドも、ニコチン酸も、これらの塩も含有しない。
【0094】
本システムの組成物は、任意に、安定剤を含む他の有益な成分を含み得る。例えば、安定化する性質を有し得るアルギニン又はプロリンなどのアミノ酸を含め得る。したがって、一実施態様において、本システムの組成物は、アルギニンを含む。
【0095】
本発明の実施態様において、組成物は、グルタミン酸、アスコルビン酸、コハク酸、アスパラギン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、及び酢酸から選択される酸を含まず、これらの酸の対応するイオン形態も含まない。
【0096】
本発明の実施態様において、本システムの組成物は、アルギニンを含まない。
【0097】
本発明の実施態様において、本システムの組成物は、プロタミン及びプロタミン塩を含まない。
【0098】
本発明の実施態様において、本システムの組成物は、マグネシウムイオンを含まない。
【0099】
例えば、塩化マグネシウムの形態での、マグネシウムイオンの添加は、安定化効果をもたらし得る。したがって、本発明の実施態様において、組成物は、マグネシウムイオン、例えば、MgCl2を含有する。
【0100】
本発明の実施態様において、本システムの組成物は、カルシウムイオンを含まない。
【0101】
本システムの組成物は、追加の治療活性剤(「活性剤」)、特に、糖尿病の治療において有用な(すなわち、インスリン化合物、特に、速効型インスリン化合物に加えての)薬剤、例えば、アミリン類似体又はGLP-1アゴニストをさらに含み得る。一実施態様において、組成物は、好適には、0.1~10mg/ml、例えば、0.2~6mg/mlの濃度のアミリン類似体、例えば、プラムリンタイドをさらに含む。一実施態様において、組成物は、好適には、10μg/ml~50mg/ml、例えば、200μg/ml~10mg/ml、又は1mg/ml~10mg/mlの濃度のGLP-1アゴニスト、例えば、リラグルチド、デュラグルチド、アルビグルチド、エキセナチド、又はリキシセナチドをさらに含む。
【0102】
好適には、本システムの組成物は、長期貯蔵したときに高分子量種の濃度が低い状態であり続ける程度に十分に安定である。本明細書で使用される「高分子量種」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィーなどの好適な分析法によって検出したときに、親インスリン化合物の分子量の少なくとも約2倍の見掛けの分子量を有するタンパク質含有物の任意の不可逆的に形成された成分を指す。すなわち、高分子量種は、親インスリン化合物の多量体凝集物である。多量体凝集物は、かなり変化した立体構造を有する親タンパク質分子を含み得るか、又はそれらは、ネイティブなもしくはネイティブに近い立体構造の親タンパク質ユニットの集合体であり得る。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離、光散乱、動的光散乱、静的光散乱、及びフィールドフローフラクショネーションを含む、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0103】
好適には、本システムの組成物は、それらが、30℃で少なくとも、1カ月以上、2カ月以上、又は3カ月カ月以上貯蔵した後に、可視粒子を実質的に含まない状態であり続ける程度に十分に安定である。可視粒子は、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(European Pharmacopoeia Monograph)(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出される。例えば、組成物が、実施例の項で与えられる定義に従って、視覚的評価スコアリング方法Bによる1、2、又は3、特に、1又は2という視覚的スコアを有する場合、それは、可視粒子を実質的に含まない。
【0104】
好適には、本システムの組成物は、30℃で1か月以上、2か月以上、又は3か月以上の貯蔵後に、可溶性凝集体の最小の増加、例えば、<0.5%、<0.2%、又は<0.1%の増加が存在する程度に十分に安定である。可溶性凝集体は、好適には、SECを用いて検出される(一般的方法を参照されたい)。
【0105】
好適には、本システムの組成物は、長期貯蔵したときに関連種の濃度が低い状態であり続ける程度に十分に安定である。本明細書で使用される「関連種」という用語は、親インスリン化合物の化学修飾によって形成されるタンパク質含有物の任意の成分、特に、インスリンのデスアミド又は環状イミド形態を指す。関連種は、好適には、RP-HPLCによって検出される。
【0106】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、30℃で1、2、又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくとも97%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%の親インスリン化合物を保持する。(全タンパク質の重量による)インスリン化合物のパーセンテージは、サイズ排除クロマトグラフィー又はRP-HPLCによって決定することができる。
【0107】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、30℃で1、2、又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)4%以下、好ましくは、2%以下の高分子量種(例えば、可視粒子及び/又は可溶性凝集体)を含む。
【0108】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、30℃で1、2、又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)4%以下、好ましくは、2%以下、好ましくは、1%以下のインスリン化合物のA-21デスアミド形態を含む。
【0109】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、同じ条件(例えば、30℃)及び時間の長さ(例えば、1、2、又は3カ月)の下で貯蔵した後に、非イオン性界面活性剤を欠くが、その他の点では同一である組成物よりも少なくとも10%低い、好ましくは、少なくとも25%低い、より好ましくは、少なくとも50%低い、貯蔵時の高分子量種(例えば、可視粒子及び/又は可溶性凝集体)の増加を示すべきである。
【0110】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、同じ条件(例えば、30℃)及び時間の長さ(例えば、1、2、又は3カ月)の下で貯蔵した後に、非イオン性界面活性剤を欠くが、その他の点では同一である組成物よりも少なくとも10%低い、好ましくは、少なくとも25%低い、より好ましくは、少なくとも50%低い貯蔵時の関連種の増加を示すべきである。
【0111】
本発明のシステムの組成物の作用速度は、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)で決定することができる。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、このモデルを用いると、亜鉛イオン結合に関するlogKが25℃で4.5~12.3の範囲(例えば、4.5~10の範囲)である亜鉛結合種を欠くが、その他の点では同一である組成物よりも少なくとも20%短い、好ましくは、少なくとも30%短いTmax(すなわち、最大インスリン濃度までの時間)を示す。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、このモデルを用いると、亜鉛イオン結合に関するlogKが25℃で4.5~12.3の範囲(例えば、4.5~10の範囲)である亜鉛結合種を欠くが、その他の点では同一である組成物よりも少なくとも20%大きい、好ましくは、少なくとも30%大きい注射後の最初の45分以内の薬力学プロファイルでの曲線下面積を示す。
【0112】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリンリスプロ、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される亜鉛結合種、例えば、シトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつここで、該組成物は、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)を用いて、インスリンリスプロ(100U/ml)、リン酸ナトリウム(13.2mM)、グリセロール(174mM)、m-クレゾール(29mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、対イオンを除く)からなりpH 7.3に調整された水性組成物よりも少なくとも20%短い、好ましくは、少なくとも30%短いTmax(すなわち、最大インスリン濃度までの時間)を示す。別の実施態様において、本発明は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリンリスプロ、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される亜鉛結合種、例えば、シトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含む組成物であって;該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)を用いて、インスリンリスプロ(100U/ml)、リン酸ナトリウム(13.2mM)、グリセロール(174mM)、m-クレゾール(29mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、対イオンを除く)からなり、pH 7.3に調整された水性組成物よりも少なくとも20%大きい、好ましくは、少なくとも30%大きい注射後の最初の45分以内の薬力学プロファイル上での曲線下面積を示す、前記組成物を提供する。
【0113】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリンアスパルト、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される亜鉛結合種、例えば、シトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつ、ここで、該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)を用いて、:インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(7mM)、グリセロール(174mM)、塩化ナトリウム(10mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、及びイオン性亜鉛(19.7μg/ml、対アニオンを除く)からなり、pH 7.4に調整された水性組成物よりも少なくとも20%短い、好ましくは、少なくとも30%短いTmax(すなわち、最大インスリン濃度までの時間)を示す。別の実施態様において、本発明は、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリンアスパルト、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される亜鉛結合種、例えば、シトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含む組成物であって;EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まず、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法(c)を参照)を用いて、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(7mM)、グリセロール(174mM)、塩化ナトリウム(10mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、及びイオン性亜鉛(19.7μg/ml、対アニオンを除く)からなり、pH 7.4に調整された水性組成物よりも少なくとも20%大きい、好ましくは、少なくとも30%大きい注射後の最初の45分以内の薬力学プロファイル上での曲線下面積を示す前記組成物を提供する。
【0114】
好ましい実施態様において、本発明のシステムの組成物は、100U/mlのインスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「生物学的に同等な」は、本発明のシステムの組成物が、標準組成物と同等な又は類似の薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)プロファイルを有することを意味する。例えば、本発明のシステムの組成物は、標準組成物のものと実質的に同じ(例えば、それの±20%の範囲、例えば、±10%の範囲)TMAX又はT1/2MAX(一般的方法のセクション(c) で記載される糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデルに従って測定される)を示す。生物学的同等性は、一般的方法のセクション(c)に記載される糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデルに記載されているように2つの異なる組成物を用いて達成された薬物動態学的/薬力学的結果に対して、Studentのt検定を、を適用することによって確立することもできる。
【0116】
「標準組成物」によって、例えば、HUMALOG(登録商標)(インスリンリスプロの場合)、又はNOVORAPID(登録商標)(インスリンアスパルトの場合)、又はAPIDRA(登録商標)(インスリングルリジンの場合)などの100U/mlの濃度の同じインスリン化合物の市販の組成物が意味される。
【0117】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、400~1000U/mL、例えば、500~1000U/mLの濃度のインスリン化合物を含み、かつここで、該組成物は、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である。別の実施態様において、前記システムを用いた投与後の前記哺乳動物の血流中へのインスリン化合物の吸収は、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む濃度の標準組成物と生物学的に同等である。別の実施態様において、前記システムを用いた前記哺乳動物への所与の量のインスリン化合物の投与によって引き起こされるグルコース低下反応は、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である。
【0118】
一実施態様において、インスリン化合物がインスリンリスプロである本発明のシステムの組成物は、100U/mlの濃度のインスリンリスプロの市販の組成物、例えば、インスリンリスプロ(100U/ml)、リン酸ナトリウム(13.2mM)、グリセロール(174mM)、m-クレゾール(29mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、対イオンを除く)からなり、pH 7.3に調整された水性組成物(すなわち、HUMALOG(登録商標)の組成物)と生物学的に同等である。
【0119】
一実施態様において、インスリン化合物がインスリンアスパルトである本発明のシステムの組成物は、100U/mlの濃度のインスリンアスパルトの市販の組成物、例えば、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(7mM)、グリセロール(174mM)、塩化ナトリウム(10mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、及びイオン性亜鉛(19.7μg/ml、対アニオンを除く)からなり、pH 7.4に調整された水性組成物(すなわち、NOVORAPID(登録商標))の組成物と生物学的に同等である。
【0120】
本発明のさらなる態様によれば、真性糖尿病に罹患している対象の治療における使用のための本発明のシステムの組成物が提供される。それを必要としている対象に有効量の本発明のシステムの組成物を投与することを含む、真性糖尿病の治療の方法も提供される。
【0121】
一実施態様において、本発明のシステムの組成物は、好適には、50~1000U/ml、例えば、100~500U/ml、又は100~200U/mlの濃度の長時間作用型インスリン、例えば、インスリングラルギン又はインスリンデグルデクと共投与される。
【0122】
本発明のシステムの組成物は、注入による投与、好ましくは、皮下注入による投与のためのものである。
【0123】
本発明のシステムのポンプは、例えば、インスリンリザーバーが、小型のシリンジの形態であり、かつインスリン組成物が、可動性のピストンの作用によって投与されるシリンジポンプであり得る。さまざまな機構を使用して、(これらに限定されないが)電気機械的作用、圧電作用、又は電気化学的作用(気体の電気化学的形成による膨張)などの、適切な力をピストン上に働かせて、必要とされる用量を正確に送達することができる。あるいは、本発明のシステムは、シリンジ及びピストンを必要としない種々のポンプ機構、例えば、ワックス駆動技術(WO2015/114374、Cellnovoを参照されたい))又は用量の正確な送達を確実なものとするTandemのマイクロ送達(登録商標)技術などに依拠してもよい。
【0124】
本発明のシステムは、インスリン組成物を、哺乳動物に、設定された基礎速度で送達することができる。一実施態様において、前記ポンプは、組成物中のインスリン化合物を、哺乳動物に、設定された基礎速度、例えば、0.1~20U/時、例えば、1~20U/時、例えば、1~10U/時、例えば、0.1~10U/時で送達する。本発明のシステムは、任意に、基礎速度を制御するための制御装置、例えば、前記哺乳動物への組成物の投与の用量及び頻度を制御するための制御装置を備えていてもよい。
【0125】
本システムのポンプは、組成物をパルスで送達してもよい。ポンプのそのようなパルスは、0.001~1μL、例えば、0.005~0.1μL、例えば、0.005~0.05μLのパルス体積を有し得る。一実施態様において、各パルスは、0.001~1U、例えば、0.001~0.1Uのインスリン化合物を送達する。ポンプのそのようなパルスは、0.05~50ng、例えば、0.5ng、例えば、1ng、例えば、5ng、例えば、10ng、例えば、20ng、例えば、50ngのアルキルグリコシドを送達し得る。好ましくは、送達されるインスリン化合物の用量(U)とパルス体積(μL)との比は、少なくとも0.4:1、例えば、少なくとも0.5:1、例えば、少なくとも0.6:1である。実施態様において、ポンプは、1時間あたり10~1000パルス、例えば、1時間あたり10~500、例えば、10~250、例えば、10~200、例えば、10~150、例えば、10~100、例えば、10~75、例えば、10~50パルスを送達するであろう。特定の実施態様において、ポンプは、1時間あたり10~100パルスを送達するであろう。一実施態様において、ポンプは、1時間あたり20~1000パルスの、例えば、1時間あたり20~500、例えば、20~250、例えば、20~200、例えば、20~150、例えば、20~100、例えば、20~75、例えば、20~50パルスを送達するであろう。特定の実施態様において、ポンプは、1時間あたり20~100パルスを送達するであろう。実施態様において、ポンプは、1時間あたり30~1000パルス、例えば、1時間あたり30~500、例えば、30~100、例えば、30~75、例えば、30~50パルスを送達するであろう。特定の実施態様において、ポンプは、1時間あたり30~100パルスを送達するであろう。実施態様において、ポンプは、1時間あたり40~1000パルス、例えば、1時間あたり40~250、例えば、100~500、例えば、100~1000、例えば、500~1000パルスを送達するであろう。本発明のシステムは、任意に、パルスの大きさ及び周波数を制御するための制御装置を備えてもよい。
【0126】
本システムのポンプは、組成物中のインスリン化合物を哺乳動物にボーラス用量で送達し得る。ボーラス用量の投与は、食事の15分前(すなわち、食事の開始前)から食事の15分後(すなわち、食事の終了後)までの間のウィンドウ内で適切に行われるべきである。一実施態様において、ボーラス用量は、1~100U、例えば、1~10U、例えば、2~20U、例えば、5~50U、例えば、10~100U、例えば、50~100Uである。
【0127】
ポンプによる送達のための水性液体医薬組成物を含むシステムのリザーバーは、通常、最大で3mL、例えば、3mL、例えば、2mL、例えば、1mLの総容積を有するであろう。システムは、1つ以上のさらなるリザーバーを備え得る。一実施態様において、さらなるリザーバーは、活性成分としてインスリン化合物を含む水性液体医薬組成物を含む。別の実施態様において、さらなるリザーバーは、インスリン化合物ではない活性成分を含む水性組成物を含む。
【0128】
本システムのリザーバーは、容器、例えば、カートリッジ又はシリンジ内に保持される。容器は、該システムの置き換え可能又は再充填可能な構成要素であってもよい。
【0129】
システムは、任意に、グルコースセンサー、及びポンプに該グルコースセンサーから受信される情報に基づきある用量のインスリン化合物を送達するよう指示する制御手段をさらに備え得る。グルコースセンサーは、一定期間毎、例えば、5分毎にグルコースの読み取り値を提供する。これは、連続的グルコースモニタリング(CGM)と呼ばれる。
【0130】
本発明のシステムは、開ループシステム又は閉ループシステムのいずれかであり得る。
【0131】
開ループシステムにおいては、注入ポンプは、所定の量のインスリンを供給し、着用者は、グルコースレベルが必要とされる範囲内にあり続けることを確実とするように、CGMの読み取り値に基づいて手動で投薬を調節するよう期待される。
【0132】
閉ループシステムにおいては、使い捨てのセンサーで、間質液中のグルコースレベルが測定され、それは、皮下組織内へのインスリンの送達を制御するアルゴリズムによって制御されるインスリンポンプ内に無線送信によって送られる。そのようなシステムにおいて、血中グルコース制御を維持するための着用者の関与は、最低限である。そのような閉ループシステムは、時には、人工膵臓と呼ばれる。閉ループシステムアルゴリズムの成功は、かなりの部分が、該ポンプにおいて用いられるインスリン化合物の作用開始の速度にかかっている。作用開始が速ければ速いほど、アルゴリズムが、インスリンレベルをより正確に正すことができ、血中グルコースが、可能な限り正常な範囲内であり続けることを確実なものとする。
【0133】
本発明の別の態様は、複数用量の組成物を含むリザーバー、及び自動又は遠隔操作したときに、1以上の用量の組成物が、体内に、例えば、皮下又は筋肉内に投与されるように自動又は遠隔操作に適応しているポンプを備える医療用注入ポンプシステムである。そのような装置は、体の外側に着用するか又は体内に埋め込むことができる。
【0134】
一実施態様において、システムは、体の表面に着用され得る。好適には、システムは、1日以上、例えば、2日以上、例えば、3日以上、例えば、5日以上、例えば、7日以上体の表面に着用される。
【0135】
システムは、前記哺乳動物中に前記インスリン組成物を皮下注入するための、ポンプ又は少なくとも1つのリザーバーと流体連通している少なくとも1つのカニューレ又は針を備えていてもよい。
【0136】
一実施態様において、カニューレ又は針は、配管によってポンプの本体に取り付けられる。
【0137】
一実施態様において、カニューレ又は針は、ポンプの固有の一部である。通常、遠隔装置からのポンプの起動をプログラムすることによって、ポンプを皮膚の上に取りつけた後に、カニューレが自動的に挿入される。一実施態様において、システムは、パッチポンプシステムである。
【0138】
別の実施態様において、システムは、体内に埋め込まれる。
【0139】
医療用注入ポンプシステムは、インスリンの活性を保存するには過酷な環境をもたらす。例えば、そのようなシステムのリザーバーは、温かさ(埋め込まれた場合には37℃、又は体に着用した場合にはそれよりも僅かに低い温度)、攪拌(体の動作を原因とする)、及び剪断応力(ポンプの運転を原因とする)に曝される。
【0140】
実施態様において、本発明のシステムの組成物は、使用中に、すなわち、3日以上、例えば、3日、例えば、5日以上、例えば、5日、例えば、7日以上、例えば、7日、例えば、10日以上、例えば、10日、例えば、14日以上、例えば、14日、例えば、21日以上、例えば、21日、例えば、28日にわたる前記ポンプの運転の間、非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドの非存在下でよりも安定である。例えば、本発明のシステムの組成物は、使用中に、すなわち、3日以上、例えば、3日、例えば、5日以上、例えば、5日、例えば、7日以上、例えば、7日、例えば、10日以上、例えば、10日、例えば、14日以上、例えば、14日、例えば、21日以上、例えば、21日、例えば、28日にわたる前記ポンプの運転の間、アルキルグルコシドの非存在下で同一の組成物よりも少ない可視粒子及び/又は可溶性凝集体を形成する。
【0141】
実施態様において、前記使用中の安定性は、前記日数の後のリザーバー中のより少数の可視粒子及び/又は可溶性凝集体の存在によって示される。実施態様において、安定性は、前記日数の後のパルス化用量中のより少数の可視粒子及び/又は可溶性凝集体の存在によって示される。
【0142】
可視粒子及び可溶性凝集体は、視覚的評価スコアリング方法B及びSEC(一般的方法を参照)によって決定することができる。
【0143】
システムは、任意に、グルコースセンサー、及びポンプに該グルコースセンサーから受信される情報に基づきある用量のインスリン化合物を送達するよう指示する制御手段をさらに備え得る。
【0144】
実施態様において、システムは、哺乳動物に組成物を皮下投与する。本発明のある態様において、該哺乳動物における真性糖尿病の治療におけるシステムの使用が提供される。実施態様において、前記哺乳動物は、ヒトである。
【0145】
別の実施態様において、真性糖尿病の治療の方法であって、それを必要としている哺乳動物に、有効量のインスリン化合物含有組成物を、ポンプによって、本発明のシステムを用いて投与することを含む、前記方法が提供される。好適には、前記哺乳動物は、ヒトである。
【0146】
本発明のシステムの組成物は、原料を混合することにより調製することができる。例えば、インスリン化合物を、他の成分を含む水性組成物に溶解させることができる。或いは、インスリン化合物を、強酸(通常、HCl)に溶解させ、溶解後、他の成分を含む水性組成物で希釈し、その後、アルカリ(例えば、NaOH)を添加して、pHを所望のpHに調整することができる。この方法のバリエーションとして、酸溶液を中和する工程を希釈工程の前に実施してもよく、その時は、希釈工程の後にpHを調整する必要がない場合がある(又はわずかな調整しか必要でない場合がある)。
【0147】
本発明の別の態様において、ポンプ及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性組成物を含む医療用注入ポンプシステムにおける水性液体医薬組成物中のインスリン化合物の安定性を向上させる非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドの使用であって、該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、前記使用が提供される。
【0148】
本発明のさらなる態様において、医療用注入ポンプシステムによって投与されるインスリン化合物の安定性を向上させる方法であって、アルキルグリコシドを、該インスリン化合物及びイオン性亜鉛を含む水性液体医薬組成物に対して添加することを含む、前記方法が提供される。
【0149】
少なくともいくつかの実施態様における本発明のシステムは、以下の有利な性質のうちの1つ又は複数を有すると考えられる:
・システムが、速効型又は超速効型である高強度インスリンを含むインスリンを送達することができる;
・システムが、速効型又は超速効型であるインスリンを送達しつつ、適切に小型化されることによって使用者の利便性を向上させる;
・システムが、長期間、例えば、3日以上使用することができ、従って、使用者の利便性を向上させる;
・システムが、インスリン化合物から誘導される可視粒子及び/又は可溶性凝集体の形成を減少させることによって、閉塞の発生率を最小限とすることができる;
・システムの組成物が、埋め込み型システム又は体に着用されるシステムとしての使用の間、例えば、数日の使用の後良好な物理的安定性を有する;
・システムの組成物が、貯蔵時に、特に、HMWS、例えば、可視粒子及び/又は可溶性凝集体の量によって測定して、良好な物理的安定性を有する;
・システムの組成物が、貯蔵時に、特に、関連する生成物、例えば、脱アミド化の生成物の量によって測定して、良好な化学的安定性を有する;
・システムの組成物が、対象への投与時に、通常、正常ヒトインスリンよりも速い迅速な作用の速度を有する;
・システムの組成物が、通常、インスリン化合物濃度が100U/mlである標準組成物と同速度の迅速な作用の速度を有する;
・システムの組成物が、迅速な作用の速度を維持しつつ、高いインスリン濃度を有する。
【0150】
(略語)
DETA ジエチレントリアミン
EDTA エチレンジアミンテトラアセテート
EGTA エチレングリコールテトラアセテート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HMWS 高分子量種
RP 逆相
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
TETA トリエチレンテトラミン
PD 薬力学
PK 薬物動態学
【実施例
【0151】
(実施例)
(一般的方法)
(a)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
インスリン調製物の超高速サイズ排除クロマトグラフィーは、Waters ACQUITY H-class Bio UPLC(登録商標)システムを、1.7μmエチレン架橋ハイブリッド125Å孔充填材料とともに、300mm×4.6mmのカラム中で用いて実施した。カラムは、0.65mg/ml L-アルギニン、20%v/vアセトニトリル、15%v/v氷酢酸移動相で平衡化し、0.01M HClで酸性化した10μlの試料を、276nmでのUV検出により、0.4mL/分で分析した。分析は全て、周囲温度で実施した。
【0152】
(b)逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)
超高速逆相クロマトグラフィーは、50mm×2.1mmのカラム内の3つの官能基を介してC18リガンドで固定化された1.7μmエチレン架橋ハイブリッド粒子の130Å孔樹脂で、Waters ACQUITY H-class Bio UPLC(登録商標)システムを用いて実施した。インスリン試料を、82%w/v Na2SO4、18%v/vアセトニトリル、pH 2.3の移動相中で結合させ、50%w/v Na2SO4、50%v/vアセトニトリル勾配流中で溶出させた。2μlの試料を0.01M HClで酸性化し、214nmでのUV検出により、0.61mL/分で分析した。分析は全て、40℃で実施した。
【0153】
(c)糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル:作用速度を決定する方法:
10匹のオスの糖尿病ユカタンミニブタを使用した。ブタに、試験製剤の試料を皮下注射し、血液を、注射後約240分までの注射を基準とする様々な時点(分)で採取した(1又は2ml)。薬力学プロファイルのために、血清を(市販の血糖値測定器を用いて)グルコースについて分析した。薬物動態プロファイルのために、インスリン濃度を、イムノアッセイを用いて、血清中で決定した。
【0154】
製剤を生物学的等価性について評価するために、TMAX(すなわち、血清中で最大インスリン濃度に達するまでの時間)の平均値及び対応する標準偏差を本試験で使用された10匹のブタの全セットにわたって計算した。同様に、T1/2MAX(すなわち、最大濃度の半分に達するまでの時間)の平均値及び対応する標準偏差を本試験で使用された10匹のブタの全セットにわたって計算した。その後、スチューデントのt-検定(95%信頼区間)を適用して、試験された任意の2つの製剤間の生物学的同等性の評価を可能にした。2つの試料の結果母集団に適用されたt-検定のp-値が≧0.05である場合、試料を生物学的に同等であるとみなし、結果が<0.05である場合、試料を生物学的に同等ではないとみなした。
【0155】
(d)視覚的評価
可視粒子を、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(European Pharmacopoeia Monograph)(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出した。必要とされる装置は、以下のものを備えるビューイングステーションからなる:
・直立位置に保持された適当なサイズの艶消し黒色パネル
・黒色パネルの隣に直立位置に保持された適当なサイズの反射防止白色パネル
・好適な笠付白色光源及び好適な散光器が装着された調整可能なランプホルダー(各々長さ525mmの2本の13W蛍光管が入ったビューイングイルミネーターが好適である)。ビューイングポイントにおける照明の強度は、2000ルクス~3750ルクスに維持される。
【0156】
いかなる接着ラベルも容器から除去し、外側を洗浄し、乾燥させる。気泡が確実に入らないようにしながら、容器を穏やかに旋回又は反転させて、白色パネルの前で約5秒間観察する。この手順を黒色パネルの前で繰り返す。いかなる粒子の存在も記録する。
【0157】
視覚的スコアを次のように順位付ける:
(視覚的評価スコアリング方法A)
視覚的スコア1:可視粒子を含まない透明な溶液
視覚的スコア2:わずかな粒子形成
視覚的スコア3:より顕著な沈殿
【0158】
(視覚的評価スコアリング方法B)
視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液
視覚的スコア2:~5個の極めて小さい粒子
視覚的スコア3:~10から20個の極めて小さい粒子
視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子
視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子
【0159】
視覚的スコア4及び5を有する試料中の粒子は、普通光下での略式の視覚的評価で明らかに検出可能であるが、視覚的スコア1~3を有する試料は、通常、同じ評価で透明な溶液に見える。視覚的スコア1~3を有する試料は「合格」とみなされ;視覚的スコア4~5を有する試料は「不合格」とみなされる。
【0160】
(実施例1-実例となる製剤)
以下の実例となる製剤を調製することができる:
(実施例A:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート(三ナトリウム塩として) 22mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0161】
(実施例B:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート(三ナトリウム塩として) 22mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0162】
(実施例C:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート(三ナトリウム塩として) 22mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
追加のNaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0163】
(実施例D:)
インスリングルリジン 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート(三ナトリウム塩として) 22mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0164】
(実施例E:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 22mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0165】
(実施例F:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 22mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0166】
(実施例G:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 22mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
追加のNaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0167】
(実施例H:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0168】
(実施例I:)
インスリンリスプロ 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0169】
(実施例J:)
インスリングルリジン 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0170】
(実施例K:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0171】
(実施例L:)
インスリンリスプロ 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0172】
(実施例M:)
インスリングルリジン 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
クエン酸 44mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0173】
(実施例N:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 0.5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0174】
(実施例O:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 0.5mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0175】
(実施例P:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0176】
(実施例Q:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 0.5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0177】
(実施例R:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 0.5mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0178】
(実施例S:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0179】
(実施例T:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
DETA 5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0180】
(実施例U:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
DETA 5mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0181】
(実施例V:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
DETA 5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0182】
(実施例W:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
DETA 0.5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0183】
(実施例X:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 0.5mM
NaCl 150mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0184】
(実施例Y:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 197μg/ml(3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
TETA 5mM
グリセロール 174mM
界面活性剤 ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0185】
(実施例Z:)
インスリン化合物 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
ニコチンアミド 80mM
NaCl 70mM
ドデシルマルトシド 0.1mM
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0186】
(実施例AA:)
インスリン化合物 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
ニコチンアミド 80mM
NaCl 70mM
ドデシルマルトシド 0.1mM
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0187】
(実施例AB:)
インスリン化合物 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
ニコチンアミド 80mM
NaCl 70mM
ドデシルマルトシド 0.05mM
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0188】
(実施例AC:)
インスリン化合物 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
ニコチンアミド 80mM
NaCl 70mM
ドデシルマルトシド 0.05mM
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0189】
(実施例AD:)
インスリン化合物 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
ニコチンアミド 80mM
クエン酸 22mM
グリセロール 70mM
ドデシルマルトシド 0.1mM
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
実施例Z及びAA~AD:インスリン化合物=インスリンアスパルト又はインスリンリスプロ又はインスリングルリジン又は組換えヒトインスリン
【0190】
(実施例AE:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
NaCl 150mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0191】
(実施例AF:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0192】
(実施例AG:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
NaCl 150mM
EDTA 0.02mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0193】
(実施例AH:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.02mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0194】
(実施例AI:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 44mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0195】
(実施例AJ:)
インスリンリスプロ 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 44mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを、7.4に調整する
【0196】
(実施例AK:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
NaCl 150mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0197】
(実施例AL:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0198】
(実施例AM:)
インスリンアスパルト 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
NaCl 150mM
EDTA 0.02mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0199】
(実施例AN:)
インスリンリスプロ 100U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 22mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.02mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0200】
(実施例AO:)
インスリンアスパルト 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 44mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0201】
(実施例AP:)
インスリンリスプロ 1000U/ml
リン酸ナトリウム 2mM
フェノール 15.9mM
m-クレゾール 15.9mM
イオン性亜鉛(ZnCl2として) 19.7μg/ml(0.3mM)、製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、0.55%(w/w)に相当する
シトレート 44mM
グリセロール 174mM
EDTA 0.1mM
ドデシルマルトシド 0.05mg/ml
注射用水 適量
残存NaCl 調製時の酸性化及びその後の中和により、2~4mMのNaClが形成される
pHを7.8に調整する
【0202】
(上記の製剤の調製方法:)
インスリン粉末を水に添加し、該粉末が完全に溶解するまでHClを添加する(完全溶解を達成するために、pHは<3でなければならない)。ZnCl2を所要のレベルまで添加する。溶解したら、pHをおよそ7に調整し、インスリン濃度が所要の濃度の2倍となるように、容量を水で調整する。その後、組成物を(全て所要の濃度の2倍の)追加の賦形剤の混合物と1:1(v/v)で混合する。
【0203】
(実施例2-シトレートの存在下における本発明のインスリンアスパルト製剤の安定性)
インスリンアスパルトの安定性に対するシトレートの効果を調べた。さらに、本実験において、様々な界面活性剤がインスリンアスパルトの安定性に対するシトレートの効果にどのように影響するかということを調べた。これらの効果を、浸透圧調節剤としてのNaClの存在下とグリセロールの存在下の両方で調べた。インスリンアスパルトの安定性を、以下によって評価した:
・視覚的評価(視覚的評価スコアリング方法Aを用いる一般的方法に記載されている)
・SEC(一般的方法に記載されている、可溶性凝集体の形成)
【0204】
表1: 30℃で4及び8週間貯蔵された後に視覚的評価スコアリング方法Aを用いて評価されたインスリンアスパルトの安定性。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(2mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、NaCl(150mM)、及び19.7μg/mlの亜鉛(製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、ZnCl2として0.55%(w/w))を含有し、pH 7.4に調整された。可視沈殿の度合いに、1~3の段階で点数を付ける;1=可視粒子を含まない透明な溶液;2=わずかな微粒子形成、3=より顕著な沈殿。
【表1】
【0205】
表2: 30℃で4及び8週間貯蔵された後にSECによって評価されたインスリンアスパルトの安定性。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(2mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、NaCl(150mM)、及び19.7μg/mlの亜鉛(製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、ZnCl2として0.55%(w/w))を含有し、pH 7.4に調整された。
【表2】
【0206】
表3: 30℃で4及び8週間貯蔵された後に視覚的評価スコアリング方法Aを用いて評価されたインスリンアスパルトの安定性。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(2mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(174mM)、及び19.7μg/mlの亜鉛(製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、ZnCl2として0.55%(w/w))を含有し、pH 7.4に調整された。可視沈殿の度合いに、1~3の段階で点数を付ける;1=可視粒子を含まない透明な溶液;2=わずかな微粒子形成、3=より顕著な沈殿。
【表3】
【0207】
表4: 30℃で4及び8週間貯蔵された後にSECによって評価されたインスリンアスパルトの安定性。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、リン酸ナトリウム(2mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(174mM)、及び19.7μg/mlの亜鉛(製剤中のインスリン化合物の重量に基づくと、ZnCl2として0.55%(w/w))を含有し、pH 7.4に調整された。
【表4】
【0208】
NaClを浸透圧調節剤として用いて、インスリンアスパルトの組成物へのシトレート(22mM)の添加が、特に、可視粒子の形成に関して、インスリンアスパルトの安定性の悪化をもたらすことが示された(表1及び2)。30℃で4週間インキュベートした後、明白な粒子の形成が観察され、8週間後、より顕著な沈殿が観察された。シトレートの添加も可溶性凝集体の形成にわずかに負の影響を及ぼした(表2のSECクロマトグラム上で主ピークの保持として表されている)。シトレートの悪影響は、ドデシルマルトシドの存在下で完全に覆されるように思われた。Tween(登録商標) 20の存在下では若干の改善も観察されたが、その効果は、ドデシルマルトシドの場合と同じくらいに明白ではなかった。明白な粒子の形成は、Tween(登録商標) 20の存在下、30℃で8週間インキュベートした後にもなお観察された。
【0209】
グリセロールを浸透圧調節剤として用いて(表3及び4)、シトレート及び界面活性剤の同様の効果も観察された。しかしながら、この場合、シトレートによるインスリンアスパルトの不安定化は、より顕著であった。特に、視覚的評価に関して、ドデシルマルトシドの安定化効果も観察されたが、全体的な安定性は、NaClの存在下の対応する組成物よりも悪かった。したがって、100U/mlのインスリンアスパルトでは、低イオン強度製剤は、イオン強度のより高い製剤よりも安定ではない可能性がある。Tween(登録商標) 20も軽い安定化効果を有していたが、ドデシルマルトシドの安定化効果ほど顕著ではなかった。
【0210】
(実施例3-TETA及びEDTAの存在下におけるインスリンアスパルト製剤の安定性)
インスリンアスパルトの安定性に対するTETA及びEDTAの効果を調べた。この安定性を、WO2010/149772号に開示されている超速効型製剤(WO2010/149772号の実施例1の製剤K)の安定性と比較した。試験された製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、フェノール(16mM)、m-クレゾール(16mM)、及び亜鉛(ZnCl2由来、亜鉛に関して19.7μg/ml=0.3mM)を含み、pH 7.4に調整された。各々の製剤の追加の成分は、表5に示される。
【0211】
表5:試験されたインスリンアスパルトの製剤中の追加の成分。
【表5】
【0212】
インスリンアスパルトの安定性を、一般的方法に記載されている視覚的評価スコアリング方法Bを用いて調べた。結果を表6に示す。NovoRapid(登録商標)の組成物は、30℃で4週間貯蔵した後に、透明でかつ粒子を含まない状態であり続けた。ニコチンアミドに基づく組成物(WO2010/149772号の実施例1の製剤K)も30℃で4週間にわたって良好な安定性を示したが、わずかな粒子形成が4週の時点で観察された。顕著な沈殿が、EDTAに基づく製剤で観察された。ドデシルマルトシドの存在が沈殿を遅延させるように思われたが、顕著な粒子形成が4週の時点でなおも観察された。ゆっくりとした沈殿がTETAに基づく製剤でも観察された。しかしながら、ドデシルマルトシドの存在下では、TETAに基づく製剤は、30℃で4週間貯蔵した後に、透明でかつ粒子を含まない状態であり続けた。
【0213】
表6: 30℃で貯蔵した後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト組成物の視覚的スコア。視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない、透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の極めて小さい粒子;視覚的スコア3:~10~20個の極めて小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む、20~50個の粒子;視覚的スコア5:巨大粒子を含む、>50個の粒子。
【表6】
【0214】
(実施例4-(a)TETA、(b)EDTA、及び(c)ニコチンアミドの存在下におけるインスリンアスパルト製剤の薬力学プロファイルの比較)
以下の組成物の薬力学プロファイルを糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(一般的方法(c)を参照)を用いて検討した:
(製剤4A:)インスリンアスパルト(100U/ml)、NaCl(10mM)、TRIS(7mM)、グリセロール(83.6mM)、アルギニン(30mM)、ニコチンアミド(80mM)、フェノール(16mM)、m-クレゾール(16mM)、亜鉛(ZnCl2由来、亜鉛に関して19.7μg/ml)、pH 7.4
(製剤4B:)インスリンアスパルト(100U/ml)、NaCl(150mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、EDTA(0.5mM)、ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)、フェノール(16mM)、m-クレゾール(16mM)、亜鉛(ZnCl2由来、亜鉛に関して19.7μg/ml)、pH 7.4
(製剤4C:)インスリンアスパルト(100U/ml)、NaCl(150mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、TETA(0.5mM)、ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)、フェノール(16mM)、m-クレゾール(16mM)、亜鉛(ZnCl2由来、亜鉛に関して19.7μg/ml)、pH 7.4
【0215】
製剤4Aは、市販のNovoRapid(登録商標)製品(WO2010/149772号の実施例1の製剤A)の作用開始と比較して有意に作用開始が速いことが示されたWO2010/149772号の実施例1の製剤Kと同一である(WO2010/149772号の図4及び5を参照されたい)。製剤4A、4B、及び4Cは、それぞれ、本出願の実施例3で言及されている、製剤3B、3E、及び3Iとも同じである。
【0216】
結果を、図1に示す。TETAを含む製剤(製剤4C)がニコチンアミドを含む組成物(製剤4A)のPDプロファイルと同程度のPDプロファイルを生じることが示された。グルコース濃度の低下は、注射後の最初の50分間は、TETAに基づく製剤においてわずかに速いように見えたが、その時点を超えると、減速するように見えた。
【0217】
EDTAを含む製剤(製剤4B)は、TETAに基づく製剤とニコチンアミドに基づく製剤の両方と比較して、より速いグルコース減少をもたらした。しかしながら、実施例3に示されているように、この製剤は不安定であり、それゆえ、実現可能な医薬製品に適していない。
【0218】
(実施例5-インスリンアスパルトの安定性に対するpH及びシトレートの源の効果)
37℃及び30℃で貯蔵した後に、現在市販されているNovoRapid(登録商標)速効型製品(表7の製剤5A)の製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)の安定性を、ドデシルマルトシド及びクエン酸三ナトリウム又はクエン酸のいずれかを含むいくつかの組成物(表7の製剤5B~5I)中のインスリンアスパルトの安定性と比較した。
【0219】
製剤は、次のように調製した。
【0220】
インスリン粉末を水に添加し、該粉末が完全に溶解するまでHClを添加した(完全溶解を達成するために、pHは<3でなければならない)。ZnCl2を所要のレベルまで添加した。ZnCl2が完全に溶解したら、pHをおよそ7に調整し、インスリン濃度が200U/mlとなるように、容量を脱イオン水で調整した。それとは別に、所要濃度の2倍で全ての必要な賦形剤を含有する試験された製剤の各々について、バックグラウンド溶液を調製した。その後、各々のバックグラウンド溶液を所要のレベルに調整した。例えば、製剤5Bのバックグラウンド溶液は、4mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、0.1mg/mlドデシルマルトシド、44mMクエン酸三ナトリウムを含有し、pH 7.0に調整された。同様に、製剤5Hのバックグラウンド溶液は、4mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、0.1mg/mlドデシルマルトシド、44mMクエン酸を含有し、pH 7.8に調整された。その後、1部(v/v)の200U/mlのインスリン溶液を1部(v/v)のバックグラウンド溶液と混合することにより、製剤5A~5Iを調製した。その後、各々の組成物のpHが正しいレベルにあることを保証するために、それをチェックした。
【0221】
表7:試験されたインスリンアスパルトの製剤(5A~5I)の組成物。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、亜鉛(0.3mM)、フェノール(16mM)、及びm-クレゾール(16mM)を含有し、水酸化ナトリウム又は塩酸のいずれかにより、所要のpHに調整された。
【表7】
【0222】
製剤5A~5Iの視覚的評価(視覚的評価スコアリング方法Bを使用)及び関連種の形成(RP-HPLCによる)の結果を、表8に示す。クエン酸三ナトリウムの存在下では、37℃(加速貯蔵温度)で、pH 7.0及び7.4で顕著な粒子形成があることが示された。粒子形成の速度は、より高いpHレベルで、特に、pH 7.8でかなりより低かった。同様の傾向が、30℃で観察され、30℃でも、pH 7.8が最適であるように見えた。クエン酸三ナトリウムの代わりにクエン酸を使用すると、全pH範囲にわたって、より少ない粒子形成がもたらされた。クエン酸を用いたpH 7.8での粒子形成の速度とクエン酸三ナトリウムを用いた該速度は、実際、現在市販されているNovoRapid(登録商標)製品の製剤よりも低かった。pH 7.8では、クエン酸三ナトリウムの使用とクエン酸の使用の間で違いは最小限であるが、製品の目標pH周辺での変動が小さいことが規制当局によって期待され、そのため、製品が製造中に目標pHをわずかに下回って製剤化された場合、クエン酸であれば、より少ない粒子形成を保証するので、クエン酸の使用が製品の安全性を保証するのに好ましいように思われる。
【0223】
製剤のpHの増加に伴って、関連種形成の速度のわずかな増加が観察されたが、クエン酸の使用は、クエン酸三ナトリウムに基づく対応する製剤と比較して、関連種形成の速度の低下ももたらし、クエン酸を使用することの利益をさらに強調した。重要なことに、pH 7.8のクエン酸に基づく組成物は、あらゆる点において、現在市販されているNovoRapid(登録商標)製品の製剤よりも良好な安定性を示した。
【0224】
表8: 37℃及び30℃で4週間貯蔵した後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト製剤5A~5Iの視覚的スコア及び関連種の形成。視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない、透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の極めて小さい粒子;視覚的スコア3:~10から20個の極めて小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む、20~50個の粒子;視覚的スコア5:巨大粒子を含む、>50個の粒子。
【表8】
過度の沈殿のために分析を行わなかった試料。
【0225】
(実施例6-クエン酸三ナトリウム、L-ヒスチジン、及びピロホスフェートの存在下におけるインスリンアスパルトの安定性に対するアルキルグリコシド及び他の非イオン性界面活性剤の効果)
インスリンアスパルト(100U/ml)の安定性を、クエン酸三ナトリウム(22mM)、L-ヒスチジン(10mM)、又はピロホスフェート(5mM)を含む組成物中、アルキルグリコシド及び他の選択された非イオン性界面活性剤の存在下と非存在下の両方で調べた。試験された組成物は全て、塩化ナトリウム(150mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含み、pH 7.4に調整された。
【0226】
視覚的評価スコアリング方法Bを用いて、クエン酸三ナトリウム、L-ヒスチジン、又はピロホスフェートの存在によって、インスリンアスパルトの製剤中での粒子形成の速度がかなり増加することが示された(表9)。アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドの存在は、粒子形成の速度の増加を緩和したように見えた。ポリソルベート80も安定化効果を示したが、ドデシルマルトシドほど大きな効果ではなかった。粒子形成の速度の増加を緩和するポロキサマー188の能力は、試験された他の非イオン性界面活性剤のものよりも劣ることが示された。ポリソルベート20は、本実験では、全く効果がなかった。
【0227】
表9: 30℃で貯蔵した後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表9】
【0228】
(実施例7-クエン酸の存在下におけるインスリンリスプロの安定性に対するドデシルマルトシド及び他の非イオン性界面活性剤の効果)
インスリンリスプロ(100U/ml)の安定性を、クエン酸(22mM)を含む製剤中、ドデシルマルトシド及び他の選択された非イオン性界面活性剤の存在下と非存在下の両方で調べた。製剤(Humalog(登録商標)対照を除く、下記参照)は全て:フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml、対アニオンを除く)を含み、pH 7.8に調整された。製剤は、浸透圧調節剤として、グリセロール(174mM)又はNaCl(150mM)のいずれかを含有していた。
【0229】
比較のために、市販のインスリンリスプロ製品(Humalog(登録商標))の製剤も本試験に含めた。この製剤は、本実験で検討された他の全ての製剤に使用された手順と同じ手順を用いて調製され、市販のHumalog(登録商標)製品の賦形剤を含有していた。Humalog(登録商標)の組成は: pH 7.3に調整された、リン酸ナトリウム(13.2mM)、グリセロール(174mM)、m-クレゾール(29mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、対イオンを除く)である。
【0230】
視覚的評価スコアリング方法Bを用いて、クエン酸(22~44mM)の存在が、ドデシルマルトシド又は他の非イオン性界面活性剤の非存在下のインスリンリスプロの組成物中での粒子形成を増加させることが示された(表10)。より高い濃度のクエン酸は、より高い速度の粒子形成をもたらした。浸透圧調整剤の性質は、粒子形成の速度に最小限の影響を有していた。したがって、製剤がより高いイオン強度のものであるか、それともより低いイオン強度のものであるかということは、100U/mlの濃度のインスリンリスプロの安定性にそれほど大きい影響を及ぼさないようである。ドデシルマルトシドの存在は、不安定化効果を緩和した。不安定化効果は、22及び34mMクエン酸を含む製剤では、ドデシルマルトシドによって完全に覆された。44mMを含む製剤では、この効果は、ほぼ完全に覆され、粒子形成の速度は、クエン酸を含まない参照製剤よりも極めてわずかにしか高くなかった。ドデシルマルトシドの安定化効果は、200μg/mlよりも50μg/ml又は100μg/mlで強いようであり、より低いドデシルマルトシド濃度を使用することの利点があり得ることを示した。
【0231】
ポリソルベート80も不安定化効果を緩和するように見えたが、ドデシルマルトシドと同程度ではなかった。ポリソルベート20及びポロキサマー188の安定化効果は、ドデシルマルトシド及びポリソルベート80の安定化効果よりもかなり弱かった。
【0232】
表10:表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンリスプロ(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表10】
【0233】
(実施例8-クエン酸三ナトリウム、L-ヒスチジン、及びピロホスフェートの存在下におけるインスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するドデシルマルトシド及びポリソルベート80の効果)
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性を、クエン酸三ナトリウム(44mM)、L-ヒスチジン(22mM)、又はピロホスフェート(22mM)を含む製剤中、ドデシルマルトシド又はポリソルベート80の存在下と非存在下の両方で調べた。組成物(NovoRapid(登録商標)組成物に基づく対照を除く、下記参照)は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、グリセロール(174mM)、塩化ナトリウム(10mM)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含み、pH 7.4に調整された。
【0234】
比較のために、100U/mlの市販のインスリンアスパルト製品(NovoRapid(登録商標))の組成物中のインスリンアスパルト(1000U/ml)の製剤も本試験に含めた。この製剤は、本実験で検討された他の全ての1000U/mlの製剤に使用された手順と同じ手順を用いて調製され、市販のNovoRapid(登録商標)製品の賦形剤を含有していた。インスリンアスパルトとイオン性亜鉛の比が100U/ml NovoRapid(登録商標)製品中での比と確実に同じになるように、イオン性亜鉛の濃度を調整した。したがって、本製剤は、リン酸ナトリウム(7mM)、グリセロール(174mM)、塩化ナトリウム(10mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、及びイオン性亜鉛(197μg/ml、対アニオンを除く)を含み、pH 7.4に調整された。
【0235】
視覚的評価スコアリング方法Bを用いて、クエン酸三ナトリウム、L-ヒスチジン、又はピロホスフェートの存在が、インスリンアスパルトの粒子形成の速度をかなり増加させることが示された(表11)。ドデシルマルトシドの存在は、不安定化効果を緩和した。ポリソルベート80も安定化効果を示したが、ドデシルマルトシドのものと同程度ではなかった。
【0236】
表11:表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表11】
イオン強度の計算は、式Iを用いて、亜鉛結合種(クエン酸三ナトリウム、L-ヒスチジン、又はピロホスフェート)及びインスリン化合物を除く、製剤中の全てのイオンを考慮に入れる。
【0237】
(実施例9-クエン酸三ナトリウム/ドデシルマルトシドの組合せの存在下と非存在下の両方におけるインスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するNaCl濃度の効果)
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するNaCl濃度の効果をクエン酸三ナトリウム(44mM)/ドデシルマルトシド(50μg/ml)の組合せの存在下と非存在下の両方で調べた。製剤は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含み、pH 7.4に調整された。
【0238】
この製剤は、浸透圧調節剤としてのグリセロール(174mM)又はNaCl(150mM)又はグリセロールとNaClの混合物のいずれかを含んでいた(表12を参照)。グリセロールとNaClの混合物を含む製剤中のグリセロールの濃度は、組成物の全体的なオスモル濃度がグリセロールのみを含む組成物中と同じままであるように174mM未満であった。
【0239】
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性が、クエン酸三ナトリウム(44mM)/ドデシルマルトシド(50μg/ml)の組合せの非存在下と存在下の両方で、NaClの存在による負の影響を受けることが示された(表12)。クエン酸三ナトリウム(44mM)/ドデシルマルトシド(50μg/ml)の組合せの非存在下では、グリセロール(174mM)及びグリセロール(154mM)/NaCl(10mM)混合物を浸透圧調節剤として使用すると、安定性は同程度であった。しかしながら、150mM NaClを使用したとき、安定性のかなりの悪化が観察された。興味深いことに、この悪化は、2~8℃でしか観察されず、2~8℃では、150mM NaClの存在下で、粒子形成の速度の顕著な増加が観察された。インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するNaCl濃度増加の悪い影響は、クエン酸三ナトリウム(44mM)/ドデシルマルトシド(50μg/ml)の組合せの存在下でも観察された。浸透圧調節剤としてグリセロール(174mM)を含む組成物とグリセロール(154mM)/NaCl(10mM)混合物を含む組成物の間ではごくわずかな違いしか観察されなかったが、グリセロール(154mM)/NaCl(50mM)混合物を含む組成物は、2~8℃でかなり損なわれた安定性を示した。
【0240】
したがって、1000U/mlのインスリンアスパルトの組成物のイオン強度を増加させると、粒子形成の速度の増加がもたらされることが示された。
【0241】
表12:表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表12】
イオン強度の計算は、式Iを用いて、亜鉛結合種(クエン酸三ナトリウム)及びインスリン化合物を除く、製剤中の全てのイオンを考慮に入れる。
【0242】
(実施例10:インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するシトレートの源及び製剤のpHの比較)
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対する製剤のシトレートアニオンの源及びpHの効果を調べた。クエン酸とクエン酸三ナトリウムをシトレートアニオンの源として比較した。クエン酸を含む製剤をpH 7.8で試験し、クエン酸三ナトリウムを含む製剤をpH 7.4で試験した。両製剤は、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、グリセロール(174mM)、ドデシルマルトシド(50μg/ml)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含んでいた。
【0243】
シトレートの源及びpHは、インスリンアスパルトの安定性に最小限の影響しか有さないことが示された(表13)。クエン酸(pH 7.8)を含む製剤は、30℃で、8週の時点で、ごくわずかにより安定であるように見えた。
【0244】
表13.表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表13】
イオン強度の計算は、式Iaを用いて、亜鉛結合種(クエン酸三ナトリウム、クエン酸)及びインスリン化合物を除く、製剤中の全てのイオンを考慮に入れる。
【0245】
(実施例11:ドデシルマルトシドの存在下におけるインスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するクエン酸濃度の効果の検討)
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するクエン酸濃度の効果をドデシルマルトシド(0.05mg/ml)の存在下で調べた。試験された製剤は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、グリセロール(174mM)、ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含み、pH 7.8に調整された。
【0246】
クエン酸の濃度を0から44mMに増加させることは、ドデシルマルトシド(0.05mg/ml)の存在下におけるインスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対して、ごくわずかな影響しかないことが示された(表14)。効果は、実験期間中、2~8℃及び37℃で観察されず、粒子形成の速度は、30℃で、0及び11mMクエン酸を含む組成物と比較して、22、33、及び44mMクエン酸を含む組成物中でごくわずかしか高くなかった。
【0247】
表14:表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表14】
イオン強度の計算は、式Iを用いて、亜鉛結合種(クエン酸)及びインスリン化合物を除く、製剤中の全てのイオンを考慮に入れる。
【0248】
(実施例12:様々な濃度のクエン酸の存在下におけるインスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性に対するドデシルマルトシド及びポリソルベート80の最適濃度の検討)
インスリンアスパルト(1000U/ml)の安定性を様々な濃度のクエン酸及び様々な濃度のドデシルマルトシド又はポリソルベート80のいずれかの存在下で調べた。試験された製剤は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、グリセロール(174mM)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml、対アニオンを除く)をさらに含み、pH 7.8に調整された。3種の濃度のクエン酸(44、66、及び88mM)並びに4種の濃度の各々の非イオン性界面活性剤を、対応する界面活性剤不含組成物と共に試験した。
【0249】
インスリンアスパルト(1000U/ml)の製剤中の粒子形成の速度は、44~88mMの範囲でクエン酸濃度に比例し、44mMというより低いクエン酸濃度が最も好適であることが分かった(表15)。ドデシルマルトシドとポリソルベート80の両方の存在は粒子形成の速度の低下をもたらすが、ドデシルマルトシドは、ポリソルベート80よりも粒子形成を阻害するのに効果的であることが分かった。より低い濃度のドデシルマルトシド(0.05及び0.1mg/ml)は、より高い濃度(0.2及び0.3mg/ml)よりも粒子形成を阻害するのに効果的であるように見えた。対照的に、ポリソルベート80の場合、より低い濃度(0.05及び0.1mg/ml)よりも粒子形成の速度を低下させる能力が大きいことを示したのは、より高い濃度(0.3及び0.5mg/ml)であった。
【0250】
表15.表示された温度での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表15】
イオン強度の計算は、式Iを用いて、亜鉛結合種(クエン酸)及びインスリン化合物を除く、製剤中の全てのイオンを考慮に入れる。
【0251】
(実施例13-インスリンアスパルト(100U/ml)の薬力学プロファイルに対するクエン酸三ナトリウム及びドデシルマルトシドの効果)
インスリンアスパルトの薬力学プロファイルを、以下の製剤において、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(一般的方法(c)を参照)を用いて比較した:
・現在市販されているNovoRapid(登録商標)(100U/ml)速効型製品の製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)
・22mMクエン酸三ナトリウム及び0.05mg/mlドデシルマルトシドを含む製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)
【0252】
試験された両製剤は、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml、対アニオンを除く)を含み、pH 7.4に調整された。各々の製剤の追加の成分は、表16に示される。
【0253】
表16:試験されたインスリンアスパルト(100U/ml)の製剤中の追加の成分。
【表16】
【0254】
製剤13A及び13Bの薬力学プロファイルを、図2に示す。クエン酸三ナトリウム及びドデシルマルトシドを含むインスリンアスパルトの製剤は、現在市販されているNovoRapid(登録商標)速効型製品の組成物と比較して、かなりより速い作用開始をもたらした。
【0255】
(実施例14:インスリンアスパルト(100U/ml)の薬力学及び薬物動態プロファイルに対する賦形剤の効果)
インスリンアスパルトの薬力学プロファイルを、以下の製剤において、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(一般的方法(c)を参照)を用いて比較した:
・NovoRapid(登録商標)(100U/ml)速効型製品と比較して作用開始が有意により速いことが示されたWO2010/149772号の実施例1の製剤K中のインスリンアスパルト(100U/ml)。
・現在市販されているNovoRapid(登録商標)(100U/ml)速効型製品の製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)
・22mMクエン酸三ナトリウム及び0.05mg/mlドデシルマルトシドを含む製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)
・22mM L-ヒスチジン及び0.05mg/mlドデシルマルトシドを含む製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)。
【0256】
試験された製剤は全て、フェノール(16mM)、m-クレゾール(16mM)、及びイオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml、対アニオンを除く)を含み、pH 7.4に調整された。各々の製剤の追加の成分は、表17に示される。
【0257】
表17:試験されたインスリンアスパルト(100U/ml)の製剤中の追加の成分。
【表17】
WO2010/149772号の製剤K
**NovoRapid(登録商標)の製剤
【0258】
製剤14A~14Dの薬力学プロファイルを、図3に示す。WO2010/149772号の製剤Kは、インスリンアスパルトの現在市販されているNovoRapid(登録商標)速効型製品の組成物と比較して(製剤14A対製剤14B)、より速い作用開始をもたらすことが確認された。クエン酸三ナトリウム及びドデシルマルトシド(14C)又はヒスチジン及びドデシルマルトシド(14D)のいずれかを含む製剤も、現在市販されているNovoRapid(登録商標)速効型製品の製剤(14B)と比較して、かなりより速い作用開始をもたらした。
【0259】
製剤14A、14B、及び14Cの薬物動態プロファイル(糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(一般的方法(c)を参照)を使用、図4)は、薬力学プロファイルと一致し、WO2010/149772号の製剤K並びにクエン酸三ナトリウム及びドデシルマルトシドを含む製剤が、市販のNovoRapid(登録商標)製品の製剤と比較して、血清インスリンレベルのより速やかな増加をもたらすことを示した。製剤14Dの薬物動態プロファイルは、試験しなかった。
【0260】
(実施例15-シトレート及びドデシルマルトシドの存在下及び非存在下におけるインスリンアスパルト(100及び1000U/ml)製剤の薬力学及び薬物動態プロファイルの比較)
インスリンアスパルトの薬力学及び薬物動態プロファイルを、以下の組成物において、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(一般的方法(c)を参照)を用いて比較した:
・現在市販されているNovoRapid(登録商標)(100U/ml)速効型製品の製剤中のインスリンアスパルト(100U/ml)
・現在市販されているNovoRapid(登録商標)(100U/ml)速効型製品の製剤中のインスリンアスパルト(1000U/ml)
・22mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1mg/mlのドデシルマルトシドを含む本発明の製剤中のインスリンアスパルト(1000U/ml)
・44mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1mg/mlのドデシルマルトシドを含む本発明の製剤中のインスリンアスパルト(1000U/ml)
【0261】
試験された製剤は全て、フェノール(15.9mM)及びm-クレゾール(15.9mM)を含み、pH 7.4に調整された。各々の製剤の追加の成分は、表18に示される。
【0262】
表18:試験されたインスリンアスパルトの製剤中の追加の成分。
【表18】
対アニオンの寄与を含まない
【0263】
製剤15A~15Dの薬力学プロファイルを、図5に示す。市販のNovoRapid(登録商標)製品の製剤中のインスリンアスパルトの濃度を100U/mlから1000U/mlへと増加させることが、より遅い作用開始をもたらすことが示された。これは、速効型インスリンのグルコース低下効果の用量依存的遅延に関する以前の報告と一致する(例えば、de la Penaらの文献、健康な肥満対象におけるヒト正規U-100インスリンと比較した高用量ヒト正規U-500インスリンの薬物動態及び薬力学(Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of high-dose human regular U-500 insulin versus human regular U-100 insulin in healthy obese subjects)、Diabetes Care, 24, pp 2496-2501, 2011)。44mMクエン酸三ナトリウム及び0.1mg/mlドデシルマルトシドを含むインスリンアスパルト(1000U/ml)の製剤が、市販のNovoRapid(登録商標)製品(100U/ml)の製剤によって達成されるものと同程度の薬力学プロファイルをもたらすことも示された(図5)。グルコース低下の開始のそのような加速は、22mMクエン酸三ナトリウム及び0.1mg/mlドデシルマルトシドを含む組成物では観察されず、このシトレート濃度が低すぎて、このインスリンアスパルト濃度では加速効果を達成することができないことが示された。
【0264】
製剤15A、15B、及び15Dの薬物動態プロファイル(図6)は、薬力学プロファイルと一致し、市販のNovoRapid(登録商標)製品の製剤中のインスリンアスパルト濃度を100U/mlから1000U/mlへと増加させることが、よりゆっくりとした血清インスリンレベルの増加をもたらすのに対し、44mMクエン酸三ナトリウム及び0.1mg/mlドデシルマルトシドを含む製剤は、市販のNovoRapid(登録商標)製品(100U/ml)の製剤によって達成されるものと同程度のプロファイルをもたらすことを示した。製剤15Cの薬物動態プロファイルは、試験しなかった。
【0265】
製剤15A、15B、及び15Dの薬物動態プロファイルに関するTMAX及びT1/2MAXの平均値及び標準偏差(SD)を、下の表19に示す。
【0266】
表19:製剤15A、15B、及び15Dの薬物動態プロファイルに関するTMAX及びT1/2MAXの平均値及び標準偏差(SD)。
【表19】
【0267】
製剤15Aと製剤15Bと製剤15Dの間の生物学的同等性を評価するために実施されたスチューデントのt-検定の結果を、下の表20に示す。製剤15Aと製剤15Dが生物学的に同等であることが示されたのに対し、製剤15Aと製剤15B及び製剤15Bと製剤15Dは、生物学的に同等ではないことが示された。
【0268】
表20:製剤15A、15B、及び15Dの薬物動態プロファイルの生物学的同等性のt-検定分析。
【表20】
【0269】
(実施例16-クエン酸三ナトリウム及び非イオン性界面活性剤の存在下におけるインスリンリスプロの安定性-WO2016/100042号に開示されている製剤との比較)
WO2016/100042号のインスリンリスプロ(100U/ml)の以下の組成物を、50ページ(15~20行目)の記載に基づいて選択した:シトレート(25mM-クエン酸ナトリウム由来)、ポロキサマー188(0.09%w/v)、グリセロール(16mg/ml)、m-クレゾール(3.15mg/ml)、亜鉛(0.3mM、塩化亜鉛由来)、塩化マグネシウム(5mM)、塩化ナトリウム(13mM)、pH 7.45。この組成物は、以下、「基本製剤」と呼ばれる。
【0270】
以下のパラメータの効果を、インスリンリスプロの安定性に関して、基本製剤中の選択成分及び/又はその濃度を変化させることにより調べた:
・ポロキサマー188濃度の効果
・NaCl濃度の効果(すなわち、総塩化物濃度の効果)
・塩化マグネシウムの存在の効果
・ドデシルマルトシド(ポロキサマー188の代替物として)の効果
【0271】
さらなる比較を可能にするために、上記の効果の全てをインスリンアスパルトも用いて調べた。
【0272】
インスリンリスプロ及びインスリンアスパルトの安定性を、WO2016/100042号に記載されているストレスと一致する2つの別々のストレス条件下で試験した:
・30℃での貯蔵(撹拌なし)
・振盪ストレス(1分間当たり75ストローク、30℃)
【0273】
試験された製剤は全て、インスリンリスプロ又はインスリンアスパルト(100U/ml)、クエン酸三ナトリウム(25mM)、グリセロール(16mg/ml)、m-クレゾール(3.15mg/ml)、及び亜鉛(0.3mM、塩化亜鉛由来)を含み、pH 7.45に調整された。追加の成分は、表21~24に記載される。
【0274】
インスリンリスプロを用いて、以下のことが示された(表21及び22):
・ドデシルマルトシドの存在下で達成されたインスリンリスプロの安定性は、ポロキサマー188を含む対応する組成物で達成されるものよりもかなり良好であった。この効果は、どちらのストレス条件下でも観察された。
・より低い濃度のドデシルマルトシドは、より高い濃度のものよりも良好なインスリンリスプロの安定性をもたらすように見えた。この効果は、どちらのストレス条件下でも観察された。
・(NaClの濃度を増加させることにより、総塩化物濃度を維持しながら)塩化マグネシウムを除去すると、どちらのストレス条件下でもインスリンリスプロの安定性の悪化がもたらされた。これは、マグネシウムイオンの安定化効果を示している。塩化マグネシウムの存在がドデシルマルトシド含有製剤に対して適度な安定化効果を有することが認められた。
・(NaClの濃度を増加させることによる)総塩化物の濃度は、このインスリンリスプロ濃度でのインスリンリスプロの安定性に対して最小限の影響しか有しなかった。
【0275】
インスリンアスパルトを用いて、同様の観察が行われた(表23及び24)。
【0276】
表21: 30℃での非撹拌貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンリスプロ(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表21】
【0277】
表22:振盪ストレス(1分間当たり75ストローク、30℃)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンリスプロ(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表22】
【0278】
表23: 30℃での非撹拌貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表23】
【0279】
表24:振盪ストレス(1分間当たり75ストローク、30℃)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(100U/ml)組成物の視覚的スコア。
【表24】
【0280】
(実施例17-US7998927号に開示されているドデシルマルトシドを含む製剤中のインスリンリスプロ及びインスリンアスパルトの安定性)
US7998927号の以下の組成物を、実施例1(カラム25)の記載に基づいて選択した:酢酸ナトリウム緩衝剤(5mM)、食塩水(0.9%w/v)、ドデシルマルトシド(0.18%w/v)、pH 6.0。インスリンアスパルト(100U/ml)及びインスリンリスプロ(100U/ml)を上記の製剤中に調製した。
【0281】
その調製の後、どちらのインスリン類似体の製剤も濁っており、ストレスがなくても、多数の粒子があった(視覚的評価スコアリング方法Bにより、5というスコアが付いた)。試料を24時間撹拌することにより、いかなる改善も達成されず、組成物は、非常に濁った状態のままであった。透明な溶液として製剤を調製するのが不可能なのは、pHがインスリン類似体の等電点(pI=~5.4)に極めて近いという事実によるものである可能性が非常に高い。組成物のpHを≧7.0に調整すると、透明な溶液が非常に速やかに生じるが、pH 6.0で透明な溶液を達成することは不可能であることが分かった。それゆえ、US7998927号の組成物は、100U/ml以上の治療用製品の製剤として使用可能ではない。
【0282】
(実施例18-pH 6.0及び7.4のドデシルマルトシドを含む製剤中のヒトインスリンの安定性-US7998927号に開示されている製剤との比較)
組換えヒトインスリンは、Sigma Aldrich, St. Louis, MO(USA)から入手した。
【0283】
US7998927号の以下の組成物を、実施例1(カラム25)の記載に基づいて選択した:酢酸ナトリウム緩衝剤(5mM)、食塩水(0.9%w/v)、ドデシルマルトシド(0.18%w/v)、pH 6.0。
【0284】
US7998927号の実施例1は、5U/ml(すなわち、100μl中0.5U)及び25U/ml(すなわち、20μl中の0.5U)の上記の製剤中のヒトインスリンの組成物を記載している。どちらの場合も、インスリン濃度は、ヒト使用のための市販のインスリン製品のインスリン濃度(≧100U/ml)よりも低かった。
【0285】
ヒトインスリンの製剤を5U/ml、25U/ml、及び100U/mlの上記の製剤中に調製した。上記のヒトインスリン製剤を試験された3種のインスリン濃度のいずれでも透明な溶液として調製することが不可能であることが分かった(表25)。組成物は、ストレスが存在しなくても多数の粒子を示し、視覚的評価スコアリング方法Bにより、3(5U/mlインスリン製剤)、4(25U/mlインスリン製剤)、及び5(100U/mlインスリン製剤)というスコアが付いた。その後の30でのストレスは、さらに速やかな粒子形成をもたらし、3つの製剤は全て、30℃で4週間インキュベートした後の視覚的評価スコアリング方法Bにより、5というスコアが付いた。
【0286】
表25: 30℃での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたヒトインスリン製剤の視覚的スコア。
【表25】
=0.9%w/v
【0287】
0.18%w/v及び0.005%w/vの濃度のドデシルマルトシドを含む製剤へのクエン酸の添加の効果も比較した。試験された製剤は全て、ヒトインスリン(100U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、リン酸ナトリウム(2mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml、対アニオンを除く)を含み、pH 7.4に調整された。追加の成分は、表26に示される。
【0288】
シトレートの存在下では、製剤を透明な液体として調製することができることが示された(表26)。しかしながら、より低レベルのドデシルマルトシドを含む製剤だけが、30℃での貯蔵の後、安定な状態のままであった。0.18%ドデシルマルトシドを含む製剤は、かなり大きい粒子形成を示した。
【0289】
表26: 30℃での貯蔵の後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたヒトインスリン製剤の視覚的スコア。
【表26】
(実施例19-界面活性剤を伴う及び伴わない低濃度の強力なキレート化剤の存在下でのインスリンアスパルトの安定性)
インスリンアスパルトの安定性に対する低濃度のEDTAの作用を、界面活性剤の非存在下及び存在下の双方で調査した。作用は、2種の異なるバックグラウンド溶液中で調査した:
【0290】
バックグラウンド溶液1:リン酸ナトリウム(13.2mM)、クエン酸ナトリウム(9.3mM)、硫酸マグネシウム(4mM)、グリセロール(173.7mM)、フェノール(0.3mM)、m-クレゾール(29.1mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、ZnCl2として)、pH 7.4
バックグラウンド溶液2:リン酸ナトリウム(2mM)、クエン酸ナトリウム(22mM)、塩化ナトリウム(150mM)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、イオン性亜鉛(19.7μg/ml、ZnCl2として)、pH 7.4
【0291】
バックグラウンド溶液1の組成物は、EDTAの濃度を除けば、WO2015/120457の出願中に示されるもの(表8の製剤BIOD-288)と同一である。
【0292】
試験した製剤を、表27に示す。
【0293】
表27: 試験されたインスリンアスパルトの製剤中の追加成分
【表27】
1WO2015/120457の表8中の製剤BIOD-288に対応
2実施例1の製剤AGと同等
3実施例1の製剤AEと同等
【0294】
インスリンアスパルトの安定性を、視覚的評価によって試験した。結果を、表28に示す。粒子形成が、EDTA及びドデシル-β-D-マルトシドの非存在下でのバックグラウンド溶液の双方において観察され、7日で「不合格」の限度(視覚的スコア4)に達した。0.02mM EDTAの存在は、測定可能な差をもたらさなかった。より高い濃度のEDTA(0.05~0.33mM)の存在は、粒子形成の加速をもたらし、この作用は、EDTA濃度に比例した。このように、EDTA含有製剤は、より早い時点で「不合格」の限度に到達した。ドデシル-β-D-マルトシドの存在は、粒子形成をかなり遅らせた。ドデシル-β-D-マルトシドの存在下で最大で0.2mMのEDTAを含有する製剤は、7日の時点まで「合格」レベルのままであり、0.33mMのEDTAを含有する製剤のみが、「不合格」の限度に到達した。
【0295】
表28: 30℃での貯蔵後のインスリンアスパルト製剤の視覚的スコア。視覚的スコア1:10個未満の極めて小さい粒子;視覚的スコア2:10~20個の極めて小さい粒子;視覚的スコア3:巨大粒子を含む、20~50個の粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む、>50個の粒子。
【表28】
【0296】
(実施例20-ニコチンアミド及び追加の賦形剤の存在下でのインスリンアスパルトの安定性)
現在市販されているNovoRapid(登録商標)速効型製品の製剤(表29の製剤20A)中のインスリンアスパルトの37℃での貯蔵後の安定性を、いくつかのニコチンアミド含有製剤(表29の製剤20B~20Q)中のインスリンアスパルトのものと比較した。製剤20Bは、アルギニンを含有しており、超速効型薬力学的/薬物動態プロファイルを有することが示されているWO2010/149772の表1の製剤Kに基づくものであった。製剤20BとWO2010/149772の製剤Kとの差は、現在市販されているNovoRapid(登録商標)と比較するにあたり緩衝剤の作用を除くためにTRISの代わりにリン酸緩衝剤を用いたことのみである。製剤20C~20Qは、(1)塩、(2)ポリオール、及び(3)非イオン性界面活性剤のインスリンアスパルトの安定性に対する作用を調査するよう設計された。
【0297】
表29: 試験されたインスリンアスパルトの製剤20A~20Qの組成物。全ての製剤は、インスリンアスパルト(100U/ml)、ZnCl2としてのイオン性亜鉛(0.3mM)、フェノール(16mM)、及びm-クレゾール(16mM)を含み、pH 7.4に調整された。他の成分は、表に示される。
【表29】
【0298】
製剤20A~20Qの視覚的評価の結果を、表30に示す。驚くべきことに、アルギニン含有製剤20Bが、製剤20A(すなわち、NovoRapid(登録商標)の製剤)と比較して、かなり増加した速度の粒子形成をもたらすことが示された。製剤20Bが、37℃で1週間の貯蔵後に「不合格」の限度に達したのに対して、製剤20Aは、同温度で3週間貯蔵後に該限度に達しただけであった。製剤20Bからの10mM NaClの除去が、粒子形成の速度に対して有意な影響を何らもたらさないことも示された(製剤20C対製剤20B)。製剤20Cからのアルギニンの除去は、粒子形成の速度のかなりの低下に繋がり(製剤20D対製剤20C)、アルギニン不含製剤中のグリセロールの濃度を増加させること(製剤20E対製剤20D)や、それを代替ポリオールであるマンニトールで置き換えること(製剤20F対製剤20E)は、粒子形成の速度に対して最小の影響を有するのみであることも示された。塩化ナトリウム(製剤20G~20I)、塩化カリウム(製剤20J)、及び酢酸ナトリウム(製剤20K)を含む塩の使用は、アルギニンの存在下でのものと類似の粒子形成の速度をもたらした。最低濃度の塩化ナトリウムを含む製剤(製剤20G)のみが、第1週で「合格」の視覚的スコアをもたらしたように見えたが、塩を含む全ての他の製剤と共に第2週で「不合格」スコア5に達した。70mMの塩化ナトリウム(製剤20M、製剤20O、及び製剤20Q)又は141mMのグリセロール(製剤20L、製剤20N、及び製剤20P)のいずれかを含む製剤への非イオン性界面活性剤の添加は、粒子形成の速度のかなりの低下をもたらした。全ての場合で、粒子形成の速度は、製剤20A(すなわち、NovoRapid(登録商標)の製剤)のものより低いか又は同程度であった。ドデシルマルトシドを含有する製剤(製剤20P及び製剤20Q)が、最高の性能を示した。
【0299】
表30: 37℃での貯蔵後のインスリンアスパルト製剤20A~20Qの視覚的スコア。視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の極めて小さい粒子;視覚的スコア3:~10から20個の極めて小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む、20~50個の粒子;視覚的スコア5:巨大粒子を含む、>50個の粒子。
【表30】
【0300】
製剤20A~20Q中のHMWSの形成を、表31に示し、化学的関連種の形成を、表32に示す。アルギニン含有製剤20Bは、製剤20A(すなわち、NovoRapid(登録商標)の製剤)と比較して、HMWS及び化学的関連種のより低い比率をもたらした。製剤20Cからのアルギニンの除去は、HMWSに関して及び化学的関連種に関しての双方での安定性の悪化に繋がった(製剤20D対製剤20C)。アルギニン不含製剤中のグリセロールの濃度を増加させること(製剤20E対製剤20D)又はそれを代替ポリオールであるマンニトールで置き換えること(製剤20F対製剤20E)は、安定性に対して最小の影響を有するのみであった。塩化ナトリウム(製剤20G~20I)、塩化カリウム(製剤20J)、及び酢酸ナトリウム(製剤20K)を含む塩の使用は、塩を含有しない製剤と比較して、HMWSに関して及び化学的関連種に関しての双方でのより良好な安定性をもたらした。塩の有益な作用は、濃度依存的であるようであり(製剤20G-20I)、全ての場合で、それは、製剤20A(すなわち、NovoRapid(登録商標)の製剤)のものよりも良好であった。70mMの塩化ナトリウム(製剤20M、製剤20O、及び製剤20Q)又は141mMのグリセロール(製剤20L、製剤20N及び製剤20P)のいずれかを含む製剤への非イオン性界面活性剤の添加は、HMWSに関して及び化学的関連種に関しての双方での安定性の最小の影響をもたらすのみであった。
【0301】
まとめると、非イオン性界面活性剤及び塩を含む製剤のみが、市販のNovoRapid(登録商標)の製剤において達成されるものよりも全ての面でかなり良好な安定性をもたらした。
【0302】
表31:37℃での貯蔵後にSECによって評価されたインスリンアスパルト製剤20A~20Q中のHMWSの増加(開始時と比較)。
【表31】
【0303】
表32:37℃での貯蔵後に逆相クロマトグラフィーによって評価されたインスリンアスパルト製剤20A~20Q中の化学的関連種の増加(開始時と比較)
【表32】
【0304】
(実施例21-攪拌ストレス下でのガラスバイアル中のインスリンアスパルト(100U/ml)の安定性に対する界面活性剤の作用)
25℃での攪拌ストレス下でのインスリンアスパルトの安定性に対する界面活性剤の作用を調査した。インスリンアスパルトの製剤(100U/ml)を、ブロモブチルゴムの栓を備える1型ガラスバイアル中に入れた。バイアルを、オービタルシェーカー上に置き、110RPM(25℃)で撹拌した。試料の安定性を、視覚的評価スコアリング方法Bを用いて試験した。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、塩化ナトリウム(150mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml-対アニオンを除く)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。追加の成分は、表33に示される。
【0305】
表33: インスリンアスパルト(100U/ml)の製剤(21A~21L)中の追加の成分。
【表33】
【0306】
アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドの存在が、22mMのクエン酸三ナトリウムの存在下及び非存在下の双方で、かなり低下したインスリンアスパルトの粒子形成の速度をもたらすことが示された(表34)。他の非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、及びポロキサマー188)も、安定化効果を示したが、アルキルグリコシドと同程度までではなかった。
【0307】
表34: 25℃で攪拌(110RPM)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表34】
【0308】
(実施例22-攪拌ストレス下でのガラスバイアル中のインスリンアスパルトの安定性(1000U/ml)に対する界面活性剤の作用)
25℃での攪拌ストレス下でのインスリンアスパルトの安定性に対する界面活性剤の作用を調査した。インスリンアスパルトの製剤(1000U/ml)を、ブロモブチルゴム栓を備える1型ガラスバイアル中に入れた。バイアルを、オービタルシェーカー上に置き、110RPM(25℃)で撹拌した。試料の安定性を、視覚的評価スコアリング方法Bを用いて試験した。製剤は全て、インスリンアスパルト(1000U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(174mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml-対アニオンを除く)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。追加の成分は、表35に示される。
【0309】
表35: インスリンアスパルト(1000U/ml)の製剤(22A-22J)中の追加の成分。
【表35】
【0310】
アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドの存在が、22mMのクエン酸三ナトリウムの存在下及び非存在下の双方で、かなり低下したインスリンアスパルトの粒子形成速度をもたらすことが示された(表36)。他の非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80及びポロキサマー188)も、安定化効果を示したが、アルキルグリコシドと同程度までではなかった。
【0311】
表36: 25℃で攪拌(110RPM)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表36】
【0312】
(実施例23-攪拌ストレス下での注入ポンプリザーバー内のインスリンアスパルト(100U/ml)の安定性に対する界面活性剤の作用)
25℃での攪拌ストレス下での注入ポンプリザーバー内のインスリンアスパルトの安定性に対する界面活性剤の作用を調査した。2mLのアリコートのインスリンアスパルト製剤(100U/ml)を、3mLのポリプロピレン注入ポンプリザーバー(MMT-332A)に入れた。リザーバーを、オービタルシェーカー上に置き、110RPM(25℃)で撹拌した。実験は、医療用注入ポンプシステムの使用の間に受けるストレスを模倣するように設計された。試料の安定性を、視覚的評価スコアリング方法Bを用いて試験した。製剤は全て、インスリンアスパルト(100U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、塩化ナトリウム(150mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として19.7μg/ml-対アニオンを除く)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。追加の成分は、表37に示される。
【0313】
表37: インスリンアスパルト(100U/ml)の製剤(23A~23L)中の追加の成分。
【表37】
【0314】
アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドの存在が、22mMのクエン酸三ナトリウムの存在下及び非存在下の双方で、かなり低下したインスリンアスパルトの粒子形成速度をもたらすことが示された(表38)。他の非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、及びポロキサマー188)も安定化効果を示したが、アルキルグリコシドと同程度までではなかった。
【0315】
表38: 25℃で攪拌(110RPM)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたポリプロピレン注入ポンプリザーバー中のインスリンアスパルト(100U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表38】
【0316】
(実施例24-攪拌ストレス下での注入ポンプリザーバー内のインスリンアスパルトの安定性(1000U/ml)に対する界面活性剤の作用)
25℃での攪拌ストレス下での注入ポンプリザーバー内のインスリンアスパルトの安定性に対する界面活性剤の作用を調査した。2mLのアリコートのインスリンアスパルト製剤(1000U/ml)を、3mLのポリプロピレン注入ポンプリザーバー(MMT-332A)に入れた。リザーバーを、オービタルシェーカー上に置き、110RPM(25℃)で撹拌した。実験は、医療用注入ポンプシステムの使用の間に受けるストレスを模倣するように設計された。試料の安定性を、視覚的評価スコアリング方法Bを用いて試験した。製剤は全て、インスリンアスパルト(1000U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(174mM)、イオン性亜鉛(ZnCl2として197μg/ml-対アニオンを除く)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。追加の成分は、表39に示される。
【0317】
表39: インスリンアスパルト(1000U/ml)製剤(24A~24J)中の追加の成分。
【表39】
【0318】
アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドの存在が、22mMのクエン酸三ナトリウムの存在下及び非存在下の双方で、かなり低下したインスリンアスパルトの粒子形成速度をもたらしたことが示された(表40)。他の非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80及びポロキサマー188)も、安定化効果を示したが、アルキルグリコシドと同程度までではなかった。
【0319】
表40: 25℃で攪拌(110RPM)後の視覚的評価スコアリング方法Bを用いたポリプロピレン注入ポンプリザーバー中のインスリンアスパルト(1000U/ml)製剤の視覚的スコア。
【表40】
【0320】
(実施例25-注入ポンプを用いるドデシルマルトシドを含むインスリンアスパルト(1000U/ml)組成物の連続的なポンプによる送出)
インスリンアスパルトの製剤(1000U/ml)を、3mLのポリプロピレン注入ポンプリザーバー(MMT-332A)に入れた。リザーバーを、Minimed Paradigmインスリン注入ポンプに入れた。リザーバーの内容物を、0.25μLのパルスを1分あたり1パルスの周波数を用いて、ポンプの動作によって吐出させた。吐出された部分に対して、視覚的評価を行った。2種の製剤を試験した。製剤は双方とも、インスリンアスパルト(1000U/ml)、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(174mM)、イオン性亜鉛(197μg/ml-対アニオンを除く、ZnCl2として)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。一方の製剤は、クエン酸ナトリウム(44mM)をさらに含んでいた。他方の製剤は、クエン酸ナトリウムを含まなかった。5日の間のポンプによる送出後に、製剤は双方とも、視覚的評価スコアリング方法Bを用いて視覚的スコア1のスコアを付けられた。
【0321】
(実施例26-さまざまなストレス条件下での医療用注入ポンプシステムリザーバー中のインスリンアスパルトの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用)
医療用注入ポンプシステムリザーバー中のインスリンアスパルトの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用を、攪拌しながら及び撹拌せずにの双方で30℃及び37℃で調査する。試料の攪拌は、オービタルシェーカー(100rpm)を用いて行う。全ての組成物は、上部に空間(最小限の0.5ml)を空けた状態及び空けない状態の双方で、これらのストレス条件下で試験される。試料の安定性を、サイズ排除クロマトグラフィー(可溶性凝集体の形成)及び視覚的評価スコアリング方法B(可視微粒子の形成)によって試験する。実験は、医療用注入ポンプシステムの使用の間に受けるストレスを模倣するよう設計される。安定性は、3種の異なるインスリン濃度-100U/ml、500U/ml、及び1000U/mlを用いて試験される。試験される組成物は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(300mM)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整される。追加の成分は、表41に示される。全てのストレス条件での試験プロトコールを、表42に示す。
【0322】
表41: インスリンアスパルトの組成物(26A~26R)中の追加の成分。組成物は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(300mM)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整される。
【表41】
対アニオンを除く、ZnCl2として。
【0323】
表42: 組成物26A~26Rの試験プロトコール。
【表42】
【0324】
(実施例27-医療用注入ポンプシステムを用いるポンプ作動の間のインスリンアスパルトの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用)
医療用注入ポンプシステムリザーバー中のインスリンアスパルトの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用を、攪拌しながら及び撹拌せずにの双方で30℃及び37℃でのインスリンポンプのポンプ作動の間に調査する。試料の攪拌は、オービタルシェーカー(100rpm)を用いて行う。インスリン組成物(界面活性剤を含むか又は含まないかのいずれか)を、ポンプシステムリザーバーの中に移送する。その後、リザーバーを、インスリンポンプシステムに入れ、ポンプシステムを、インキュベーター(30℃又は37℃)内に入れ、インスリン組成物を、設定された基礎速度で最長で14日間ポンプにより送出する。ポンプ作用によってリザーバーから取り出したインスリン組成物を、ガラス容器内に集め、サイズ排除クロマトグラフィー(可溶性凝集体の形成)を用いて及び視覚的評価スコアリング方法B(可視微粒子の形成)によって規則的な間隔で分析する。インスリン安定性を、3種の異なるインスリンの濃度-100U/ml、500U/ml、及び1000U/mlを用いて試験する。試験される組成物は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(300mM)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整される。追加の成分は、表43に示される。全てのストレス条件での試験プロトコールを、表44に示す。
【0325】
表43: インスリンアスパルトの組成物(27A~27R)中の追加の成分。組成物は全て、フェノール(15.9mM)、m-クレゾール(15.9mM)、グリセロール(300mM)、及びリン酸ナトリウム(2mM)を含み、pH 7.4に調整された。
【表43】
対アニオンを除く、ZnCl2として。
【0326】
表44: 組成物27A~27Rの試験プロトコール。
【表44】
【0327】
(実施例28-医療用注入ポンプシステムを用いるポンプ作動の間のインスリンリスプロの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用)
実施例26のプロトコールを、インスリンアスパルトの代わりにインスリンリスプロを用いて繰り返す。
【0328】
(実施例29-医療用注入ポンプシステムを用いるポンプ作動の間のインスリンリスプロの安定性に対するアルキルグリコシド界面活性剤の作用)
実施例27のプロトコールを、インスリンアスパルトの代わりにインスリンリスプロを用いて繰り返す。
【0329】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上、別段の解釈を要する場合を除き、「含む/備える(comprise)」という用語並びに「含む/備える(comprises)」及び「含む/備える(comprising)」などのその変化形は、記載されたインテジャー(integer)、工程、インテジャーの群、又は工程の群の包含を意味するが、任意の他のインテジャー、工程、インテジャーの群、又は工程の群の除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【0330】
本明細書において「A及び/又はB」などの語句の中で使用される「及び/又は」という用語は、AとBの両方; A又はB; A(のみ);及びB(のみ)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句の中で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施態様の各々を包含することが意図される: A、B、及びC; A、B、又はC; A又はC; A又はB; B又はC; A及びC; A及びB; B及びC; A(のみ); B(のみ);並びにC(のみ)。
【0331】
引用された刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両方を含む)は全て、あたかも各々の個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号/データベース配列が引用によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
ポンプ、及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性液体医薬組成物を含むリザーバーを備える医療用注入ポンプシステムであって、
該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、前記医療用注入ポンプシステム。
(態様2)
前記インスリン化合物が、インスリングラルギンではない、態様1記載のシステム。
(態様3)
前記インスリン化合物が、インスリンリスプロである、態様1記載のシステム。
(態様4)
前記インスリン化合物が、インスリンアスパルトである、態様1記載のシステム。
(態様5)
前記インスリン化合物が、インスリングルリジンである、態様1記載のシステム。
(態様6)
前記インスリン化合物が、組換えヒトインスリンである、態様1記載のシステム。
(態様7)
前記インスリン化合物が、組換えヒトインスリンではない、態様1記載のシステム。
(態様8)
前記インスリン化合物が、10~1000U/mlの濃度で存在する、態様1~6のいずれか1項記載のシステム。
(態様9)
前記インスリン化合物が、50~1000U/mlの濃度で存在する、態様8記載のシステム。
(態様10)
前記インスリン化合物が、10~250U/mlの濃度で存在する、態様8記載のシステム。
(態様11)
前記インスリン化合物が、400~1000U/mlの濃度で存在する、態様9記載のシステム。
(態様12)
前記インスリン化合物が、500~1000U/ml、例えば、600~1000U/ml、例えば、700~1000U/ml、例えば、800~1000U/ml、例えば、900~1000U/ml、例えば、1000U/mlの濃度で存在する、態様11記載のシステム。
(態様13)
前記イオン性亜鉛が、前記組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.05%超の濃度で存在する、態様1~12のいずれか1項記載のシステム。
(態様14)
前記イオン性亜鉛が、前記組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5%超の濃度で存在する、態様13記載のシステム。
(態様15)
前記イオン性亜鉛が、前記組成物中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~1%の濃度で存在する、態様14記載のシステム。
(態様16)
前記組成物が、25℃で4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される1mM以上の濃度の亜鉛結合種をさらに含む、態様1~15のいずれか1項記載のシステム。
(態様17)
前記組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、態様1~16のいずれか1項記載のシステム。
(態様18)
前記亜鉛結合種が、シトレート、ピロホスフェート、アスパルテート、グルタメート、システイン、シスチン、グルタチオン、エチレンジアミン、ヒスチジン、DETA、及びTETAから選択される、態様16又は17記載のシステム。
(態様19)
前記亜鉛結合種が、シトレートである、態様18記載のシステム。
(態様20)
前記シトレートの源が、クエン酸である、態様19記載のシステム。
(態様21)
前記4.5~12.3の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種が、1~50mMの濃度で存在する、態様16~20のいずれか1項記載のシステム。
(態様22)
イオン性亜鉛の亜鉛結合種に対するモル比が、1:3~1:175である、態様16~21のいずれか1項記載のシステム。
(態様23)
前記1mM以上の濃度の亜鉛結合種が、25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される、態様16又は17記載のシステム。
(態様24)
25℃で10~12.3である亜鉛イオン結合に関するlogKを有する亜鉛結合種を実質的に含まない、態様16又は17記載のシステム。
(態様25)
前記アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、デシルグルコピラノシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、モノオクタン酸スクロース、モノデカン酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、及びモノヘキサデカン酸スクロースからなる群から選択される、態様1~24のいずれか1項記載のシステム。
(態様26)
前記アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド又はデシルグルコピラノシドである、態様25記載のシステム。
(態様27)
前記アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシドである、態様26記載のシステム。
(態様28)
前記アルキルグリコシドが、1~1000μg/ml、例えば、5~500μg/ml、10~200μg/ml、10~100μg/ml、又は約50μg/mlの濃度で存在する、態様1~27のいずれか1項記載のシステム。
(態様29)
前記アルキルグリコシドが、10~400μg/ml、例えば、20~400μg/ml、50~400μg/ml、10~300μg/ml、20~300μg/ml、50~300μg/ml、10~200μg/ml、20~200μg/ml、50~200μg/ml、10~100μg/ml、20~100μg/ml、又は50~100μg/mlの濃度で存在する、態様28記載のシステム。
(態様30)
前記組成物が、浸透圧調節剤をさらに含む、態様1~29のいずれか1項記載のシステム。
(態様31)
前記浸透圧調節剤が、非荷電性浸透圧調節剤である、態様30記載のシステム。
(態様32)
前記非荷電性浸透圧調節剤が、トレハロース、マンニトール、グリセロール、及び1,2-プロパンジオールからなる群から選択される、態様31記載のシステム。
(態様33)
前記非荷電性浸透圧調節剤が、グリセロールである、態様32記載のシステム。
(態様34)
前記浸透圧調節剤が、荷電性浸透圧調節剤である、態様30記載のシステム。
(態様35)
前記荷電性浸透圧調節剤が、塩化ナトリウムである、態様34記載のシステム。
(態様36)
前記塩化物が、>60mM、例えば、>65mM、>75mM、>80mM、>90mM、>100mM、>120mM、又は>140mMの濃度で存在する、態様34又は35記載のシステム。
(態様37)
すべての亜鉛結合種及び前記インスリン化合物を除く前記組成物のイオン強度が、<40mM、例えば、<30mM、<20mM、又は<10mMであり、ここで、イオン強度が、式I:
(数1)
(式中、c x は、イオンxのモル濃度(mol L -1 )であり、z x は、イオンxの電荷の絶対値であり、かつ総和は、該組成物中に存在する全てのイオン(n)を含め、インスリン化合物及び亜鉛結合種(存在する場合)の寄与は、計算のために無視するものとする)に従って計算される、態様1~31のいずれか1項記載のシステム。
(態様38)
前記組成物が、実質的に等張である、態様1~37のいずれか1項記載のシステム。
(態様39)
前記組成物のpHが、5.5~9.0の範囲にある、態様1~38のいずれか1項記載のシステム。
(態様40)
前記pHが、7.0~7.5の範囲、例えば、7.4である、態様39記載のシステム。
(態様41)
前記pHが、7.6~8.0の範囲、例えば、7.8である、態様39記載のシステム。
(態様42)
リン酸緩衝剤、例えば、リン酸ナトリウムを含む、態様40又は41記載のシステム。
(態様43)
前記組成物が、防腐剤をさらに含む、態様1~42のいずれか1項記載のシステム。
(態様44)
前記防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、態様43記載のシステム。
(態様45)
前記組成物が、ニコチンアミドをさらに含む、態様1~44のいずれか1項記載のシステム。
(態様46)
前記組成物が、ニコチン酸又はその塩をさらに含む、態様1~45のいずれか1項記載のシステム。
(態様47)
前記組成物が、トレプロスチニル又はその塩をさらに含む、態様1~46のいずれか1項記載のシステム。
(態様48)
前記組成物が、(i)50~500U/mlの濃度のインスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、
態様1記載のシステム。
(態様49)
前記シトレートが、10~30mMの濃度で前記組成物中に存在する、態様48記載のシステム。
(態様50)
前記組成物が、(i)400~1000U/ml、例えば、500~1000U/mlの濃度のインスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)任意に、1mM以上の濃度の亜鉛結合種としてのシトレート、及び(iv)アルキルグリコシドである非イオン性界面活性剤を含み;かつ
該組成物が、EDTA及び25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する任意の他の亜鉛結合種を実質的に含まない、
態様1記載のシステム。
(態様51)
前記シトレートが、30~60mMの濃度で前記組成物中に存在する、態様50記載のシステム。
(態様52)
前記組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ジエチレントリアミン(DETA)及びトリエチレンテトラミン(TETA)から選択される亜鉛結合種、及び(iv)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、態様1記載のシステム。
(態様53)
前記組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)25℃で4.5~10の範囲の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される1mM以上の濃度の亜鉛結合種、(iv)25℃で12.3を上回る亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択される約0.3mM未満の濃度の亜鉛結合種、及び(v)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、態様1記載のシステム。
(態様54)
前記組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物、(iv)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシド;及び(v)第1族金属と一価又は二価のアニオンとの間で形成される塩から選択される塩を含む、態様1記載のシステム。
(態様55)
前記組成物が、400~1000U/mL、例えば、500~1000U/mLの濃度のインスリン化合物を含み、かつ
該組成物が、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である、
態様1~54のいずれか1項記載のシステム。
(態様56)
態様1~54のいずれか1項記載のシステムであって、該システムを用いた投与後の前記哺乳動物の血流中へのインスリン化合物の吸収が、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である、前記システム。
(態様57)
態様1~54のいずれか1項記載のシステムであって、該システムを用いた前記哺乳動物への所与の量のインスリン化合物の投与によって引き起こされるグルコース低下反応が、100U/mLの濃度で該インスリン化合物を含む標準組成物と生物学的に同等である、前記システム。
(態様58)
前記哺乳動物への組成物の投与の用量及び頻度を制御するための制御装置を備える、態様1~57のいずれか1項記載のシステム。
(態様59)
前記ポンプが、設定された基礎速度、例えば、0.1~20U/時で前記哺乳動物へ前記組成物中の前記インスリン化合物を送達する、態様1~58のいずれか1項記載のシステム。
(態様60)
前記ポンプが、パルスで前記組成物を送達する、態様1~59のいずれか1項記載のシステム。
(態様61)
前記パルスが、0.001~1μL、例えば、0.005~0.1μL、例えば、0.005~0.05μLのパルス体積を有する、態様60記載のシステム。
(態様62)
各パルスが、0.001~1U、例えば、0.001~0.1Uのインスリン化合物を送達する、態様60記載のシステム。
(態様63)
各パルスが、0.05~50ng、例えば、0.5ngのアルキルグリコシドを送達する、態様60記載のシステム。
(態様64)
送達されるインスリン化合物の用量(U)とパルス体積(μL)との比が、少なくとも0.4:1、例えば、少なくとも0.5:1、例えば、少なくとも0.6:1である、態様60~63のいずれか1項記載のシステム。
(態様65)
前記ポンプが、1時間あたり10~1000パルス、1時間あたり、例えば、10~500、例えば、10~250、例えば、10~200、例えば、10~150、例えば、10~100、例えば、10~75、例えば、10~50パルスを送達する、態様60~64のいずれか1項記載のシステム。
(態様66)
前記ポンプが、前記哺乳動物へ前記組成物中の前記インスリン化合物をボーラス用量で送達する、態様1~58のいずれか1項記載のシステム。
(態様67)
前記ボーラス用量が、1~100Uである、態様66記載のシステム。
(態様68)
前記リザーバーが、最大で3mL、例えば、3mL、例えば、2mL、例えば、1mLの総容量を有する、態様1~67のいずれか1項記載のシステム。
(態様69)
1つ以上のさらなるリザーバーを備える、態様1~68のいずれか1項記載のシステム。
(態様70)
1つ以上のさらなるリザーバーが、活性成分としてインスリン化合物を含む水性液体医薬組成物を含む、態様69記載のシステム。
(態様71)
1つ以上のさらなるリザーバーが、インスリン化合物ではない活性成分を含む水性液体医薬組成物を含む、態様69又は70記載のシステム。
(態様72)
閉ループシステム又は閉ループシステムである、態様1~71のいずれか1項記載のシステム。
(態様73)
体の表面に着用される、態様1~72のいずれか1項記載のシステム。
(態様74)
前記体の前記表面に1日以上、例えば、2日以上、例えば、3日以上、例えば、5日以上、例えば、7日以上着用される、態様73記載のシステム。
(態様75)
前記哺乳動物中に前記インスリン組成物を皮下注入するための、前記ポンプ又は前記少なくとも1つのリザーバーと流体連通している少なくとも1つのカニューレ又は針を備える、態様1~74のいずれか1項記載のシステム。
(態様76)
パッチポンプシステムである、態様73又は74記載のシステム。
(態様77)
体内に埋め込まれる、態様1~72のいずれか1項記載のシステム。
(態様78)
前記組成物が、使用中に、すなわち、3日以上にわたる前記ポンプの運転の間、アルキルグリコシドの非存在下で同一の組成物よりも安定である(例えば、より少数の可視粒子及び/又は可溶性凝集体を形成する)、態様1~77のいずれか1項記載のシステム。
(態様79)
グルコースセンサー、及び前記ポンプに該グルコースセンサーから受信される情報に基づきある用量のインスリン化合物を送達するよう指示する制御手段をさらに備える、態様1~78のいずれか1項記載のシステム。
(態様80)
前記組成物を前記哺乳動物に皮下投与する、態様1~79のいずれか1項記載の使用のためのシステム。
(態様81)
前記哺乳動物における真性糖尿病の治療における使用のための、態様1~80のいずれか1項記載のシステム。
(態様82)
前記哺乳動物が、ヒトである、態様81記載の使用のためのシステム。
(態様83)
真性糖尿病の治療の方法であって、それを必要としている哺乳動物に、態様1~80のいずれか1項記載のシステムを用いてポンプによって有効量のインスリン化合物含有組成物を投与することを含む、前記方法。
(態様84)
前記哺乳動物が、ヒトである、態様83記載の方法。
(態様85)
ポンプ及び該ポンプによる哺乳動物への送達のための水性組成物を備える医療用注入ポンプシステムにおける水性液体医薬組成物中のインスリン化合物の安定性を向上させる非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドの使用であって、該組成物が、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、及び(iii)非イオン性界面活性剤としてのアルキルグリコシドを含む、前記使用。
(態様86)
医療用注入ポンプシステムによって投与されるインスリン化合物の安定性を向上させる方法であって、アルキルグリコシドを、該インスリン化合物及びイオン性亜鉛を含む水性液体医薬組成物に対して添加することを含む、前記方法。
【0332】
(配列表)
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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