(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/152 20210101AFI20240404BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240404BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240404BHJP
H01M 50/167 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M50/167
(21)【出願番号】P 2020563122
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049495
(87)【国際公開番号】W WO2020137716
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018246390
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫村 亮
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/146078(WO,A1)
【文献】実開昭48-102517(JP,U)
【文献】実開昭61-157261(JP,U)
【文献】特表2018-525793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板がセパレータを介して巻回された電極体と、電解液と、前記電極体及び電解液を収容する有底円筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部にガスケットを介してカシメ固定される封口板と、を備える円筒形電池であって、
前記封口板は、平面視で円形状をなし、その中央領域が電池内方側に凹んだ形状を有しており、
前記封口板の外周端縁部が前記外装缶にカシメ固定され、前記封口板の外周面に切り欠き部を有し、前記封口板
の外周端縁部が、
前記切り欠き部により板厚方向に第1部分と第2部分とに分かれている、円筒形電池。
【請求項2】
前記
切り欠き部は、前記第1部分と前記第2部分との分岐開始位置より前記封口板の外周側に設けられ、当該分岐開始位置が、前記外装缶の開口部周縁よりも径方向外側に位置している、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記第1部分と前記第2部分は、両者間の分岐開始位置を通る径方向線に対して対称形状をなしている、請求項1又は2に記載の円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には円筒形密閉電池が開示されている。この円筒形密閉電池は、有底円筒状の外装缶と、外装缶内に収納された円筒状巻回電極体および電解質と、外装缶の開口部に絶縁ガスケットを介してカシメ固定されて電池内部を密閉する封口体とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される円筒形密閉電池において、外装缶の開口部に封口体をカシメ固定するとき、封口体の外周端縁部に作用するモーメントや径方向内側への押圧力によって封口体の中央部分が電池内方側である下側に凹状に反ったり、その反対に上側に凸状に反ったりすることがある。封口体が下側に反った場合には問題にならないが、封口体が上側に反ることで中央部分が電池を立てた状態での最高点となった場合、複数の円筒形密閉電池を電池モジュールとして組み立てる際に円筒形密閉電池から出力電流を取り出すための外部リードと干渉し、封口体が破損するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、外装缶の開口部にカシメ固定された封口板の中央領域が確実に電池内方側に反った形状となるように構成した円筒形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の円筒形電池は、正極板と負極板がセパレータを介して巻回された電極体と、電解液と、電極体及び電解液を収容する有底円筒状の外装缶と、外装缶の開口部にガスケットを介してカシメ固定される封口板と、を備える。封口板は、平面視で円形状をなし、その中央領域が電池内方側に凹んだ形状を有しており、封口板において外装缶にカシメ固定される外周端縁部が、板厚方向に第1部分と第2部分とに分かれている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る円筒形電池によれば、外装缶の開口部にカシメ固定された封口板の中央領域を確実に電池内方側に反った形状にすることができる。したがって、電池モジュールとして組み立てる際に円筒形電池から出力電流を取り出すための外部リードと干渉して封口板が破損するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は一実施形態の円筒形電池の軸方向に沿った断面図である。
【
図3】
図3(a)はカシメ固定前の封口体及びその近傍を示す径方向半分の断面図であり、
図3(b)はカシメ固定されたときの封口体及びその近傍を示す径方向半分の断面図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は封口板の外周端縁部の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態である円筒形電池10の断面図である。
図2は、封口体20の断面図である。円筒形電池10は、例えば、非水電解質二次電池である。
図1及び
図2において、軸方向の中心線Oが一点鎖線で示されている。以下では、円筒形電池10において、封口体側を「上」といい、外装缶の底部側を「下」という。
【0011】
図1に示すように、円筒形電池10は、有底円筒状の外装缶12と、外装缶12の内部に収容された電極体14及び電解液(図示せず)と、外装缶12の開口部に絶縁性のガスケット16を介してカシメ固定された封口体20とを備える。
【0012】
外装缶12は、例えば、鉄を主成分とする鋼材からなる板材を深絞り加工することによって形成される。外装缶12の開口部が形成される上端部12aには、溝入部13が形成されている。溝入部13は、平面視で円環状をなし、外装缶12の径方向内側へ例えば略U字状に突出するように形成されている。溝入部13は、外装缶12にカシメ固定される際に封口体20の外周端縁部が載置される部分となる。
【0013】
外装缶12内には、正極板30と負極板32がセパレータ34を介して巻回された円筒状の電極体14が電解質と共に収容されている。電極体14と外装缶12の底部12bとの間には、下側絶縁部材36が介在されている。電極体14を構成する負極板32には、負極リード33が接続されている。
【0014】
下側絶縁部材36は、絶縁性を確保することができ、かつ、電池特性に影響を与えない材料を用いることができる。下側絶縁部材36に用いられる材料としてはポリマー樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。
【0015】
本実施形態では、負極リード33は電極体14の最外周位置で負極板32に接続されている。負極リード33は、電極体14から延出して径方向内側へ屈曲しており、下側絶縁部材36の下側において外装缶12の底部12bに接続されている。これにより、本実施形態の円筒形電池10では、外装缶12が負極端子として機能する。電極体14を構成する正極板30、負極板32及びセパレータ34の詳細については後述する。
【0016】
外装缶12内において電極体14は、溝入部13の下側に収容されている。電極体14上には上側絶縁部材38が配置されており、電極体14の軸方向の上側端面が封口体20及び外装缶12の溝入部13と接触しないようにしている。上側絶縁部材38は、絶縁性を確保することができ、かつ、電池特性に影響を与えない材料を用いることができる。上側絶縁部材38に用いられる材料としてはポリマー樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。
【0017】
封口体20は、外装缶12の上端部12aにガスケット16を介してカシメ固定されている。これにより、円筒形電池10の内部が密封されるとともに、封口体20が外装缶12に対して電気的に絶縁されている。
【0018】
封口体20は、封口板22、絶縁板24、及び端子板26から構成されている。封口体20は、電流遮断機構を有する。封口板22は、平面視で円形状をなしており、弁体として機能する。絶縁板24は、封口板22の電池内方側の表面に接触して配置されている。
【0019】
絶縁板24は、平面視で円環状に形成され、中央部に開口24aを有する。
【0020】
端子板26は、平面視で円形の外形を有し、絶縁板24を挟んで封口板22に対向して配置されている。封口板22と端子板26は、絶縁板24の開口24aを介して、それらの中心部同士が例えばレーザー溶接等によって接続されている。端子板26には、電極体14を構成する正極板30に一端部が接続された正極リード31の他端部が接続されている。正極リード31は、電極体14から上側絶縁部材38を貫通して延出して封口体20の端子板26に例えばレーザー溶接等によって接続されている。これにより、本実施形態の円筒形電池10では、電極体14の正極板30が正極リード31及び端子板26を介して封口板22に電気的に接続され、円筒形電池10の上端面において電池外部に露出した封口板22が正極端子として機能する。
【0021】
電流遮断機構は次のように作動する。端子板26には通気孔26aが設けられており、絶縁板24には通気孔24bが設けられている。そのため、電池内圧が上昇すると、封口板22が端子板26の通気孔26a及び絶縁板24の通気孔24bを介して、その圧力を受ける。その結果、電池内圧の上昇に伴って、封口板22が端子板26との接続部を電池外方へ引っ張るように作用する。そして電池内圧が所定値に達すると端子板26の封口板22との接続部又は端子板26に設けられた溝26bが破断して、封口板22と端子板26との間の電流経路が遮断される。その後、電流遮断機構の作動後さらに電池内圧が上昇すると、後述する封口板22の薄肉部である傾斜領域22bが破断して、電池内部のガスが排出される。すなわち、封口板22が所定の作動圧で開弁して電池内圧を解放する弁体として機能する。
【0022】
封口板22はアルミニウム又はアルミニウム合金の板材のプレス加工により作製することができる。アルミニウム及びアルミニウム合金は可撓性に優れているため封口板22の材料として好ましい。
【0023】
封口板22は、平面視で円形状をなしている。
図2に示すように、封口板22の中央領域22aは、電池外方側の表面(又は上面)が平坦面に形成されている。封口板22の中央領域22aの電池内方側の表面(又は下面)には、例えば扁平な円錐台状の突出部25が形成されている。突出部25の突出高さは、絶縁板24の板厚と略同じに設定されている。このような突出部25が形成されていることで、封口板22と端子板26との接続を容易かつ確実に行えるとともに、封口板22と端子板26との間に絶縁板24が介在するためのスペースを確保することができる。
【0024】
封口板22は、中央領域22aの外周側に傾斜領域22bを一体に有している。傾斜領域22bでは、電池外方側の表面が径方向外側へ向かって上り傾斜面に形成されている。これにより、封口板22の電池外方側の表面は、傾斜領域22bがあることで中央領域22aが電池内方側に凹んだ形状を有している。
【0025】
封口板22において、傾斜領域22bの電池内方側には、断面が略三角状の空間23が形成されている。これにより、傾斜領域22bは径方向外側にいくほど板厚が次第に薄くなった薄肉部となっている。このように傾斜領域が薄肉部として形成されていることで、電池内圧が上昇してその圧力が封口板22の傾斜領域22bに電池内方側から作用したときに、傾斜領域22bの最も薄い部分(すなわち三角状をなす空間23の頂点に対応する位置)において破断するように設定されている。
【0026】
なお、本実施形態では傾斜領域22bにおいて封口板22の板厚が径方向外側にいくほど次第に薄くなった薄肉部として形成される例を説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜領域22bにおいて径方向外側にいくほど板厚が次第に厚くなった薄肉部として形成されてもよい。
【0027】
封口板22の電池内方側の表面には、平面視で円環状をなす突起22cが形成されている。突起22cは、電池外方側の表面にある傾斜領域22bよりも径方向外側に位置している。突起22cは、その先端が径方向内側へ傾くように形成されており、その内側に絶縁板24が嵌め込まれて保持されるようになっている。
【0028】
封口板22において外装缶12にカシメ固定されることとなる外周端縁部27は、板厚方向に第1部分27aと第2部分27bとに分かれている。封口板22がカシメ固定される前は、第1部分27aと第2部分27bの間に空間が設けられている。より詳しくは、第1部分27aと第2部分27bは、封口板22の板厚内における分岐開始位置28から2つに分かれている。第1部分27aは、分岐開始位置28から径方向に対して斜め上方に屈曲してから径方向に沿って屈曲した形状を有する。第2部分27bは、分岐開始位置28から径方向に対して斜め下方に屈曲してから径方向に沿って屈曲した形状を有する。第1部分27aと第2部分27bは、封口板22の板厚方向に対向しており、両者間には径方向外側に向かって開口する切込部29が形成されている。このような封口板22の外周端縁部27の形状は、例えば、プレス加工を複数回行うことによって段階的に形成することができる。
【0029】
第1部分27aと第2部分27bとの分岐開始位置28は、外装缶12にカシメ固定されたときに外装缶12の開口周縁部12cよりも径方向外側に位置していることが好ましい。これにより、封口板22がカシメ固定されたときに第1部分27aと第2部分27bとが互いに一体となった状態に押し潰され、その結果、封口板22に対して径方向内側へ向かう押圧力G(
図3参照)を効果的に生じさせることができる。
【0030】
また、第1部分27aと第2部分27bは、両者間の分岐開始位置28を通る径方向線Cに対して対称形状をなしていることが好ましい。このような形状をなすことで、カシメ固定時に押し潰されたときに、封口板22に対して径方向内側へ向かう方向に沿った押圧力を生じさせることができる。ただし、これに限定されるものではなく、第1部分27aと第2部分27bは、両者間の分岐開始位置28を通る径方向線Cに対して非対称形状であってもよい。
【0031】
絶縁板24は、絶縁性を確保することができ、かつ、電池特性に影響を与えない材料を用いることができる。絶縁板24に用いられる材料としてはポリマー樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。
【0032】
絶縁板24はその外周部に電池内方側へ延びるスカート部24cを有している。スカート部24cの内周部に端子板26が嵌め合わされて保持される。これにより、端子板26の外周縁部がスカート部24cに係合した状態で組み付けられ、絶縁板24に対する端子板26の位置ズレを確実に防止することができる。
【0033】
端子板26は、平面視で絶縁板24より小径の円形をなし、中央部が薄肉部に形成されている。端子板26は、封口板22と同様にアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されることが好ましい。これにより封口板22と端子板26の中央部同士の接続が容易になる。接続方法としてはレーザー溶接を用いることが好ましい。端子板26の外周部には通気孔26aが貫通形成されている。
【0034】
封口体20は、次のようにして組み立てられる。まず、封口体20を構成する封口板22、絶縁板24、及び端子板26を準備する。次に、絶縁板24のスカート部24cの内側に端子板26を嵌め合わせ、続いて、封口板22の突起22cの内側に絶縁板24を嵌め合わせる。なお、上記の部材を嵌め合わせる2つの手順は順序を入れ替えてもよい。
【0035】
封口板22と端子板26との接続は上記の手順を完了した後に行うことが好ましい。封口板22と端子板26が互いに位置決め保持された状態で接続できるため、接続強度のバラツキが低減される。
【0036】
次に、電極体14について説明する。本実施形態では
図1に示すように正極板30と負極板32とをセパレータ34を介して巻回して円筒状に形成した電極体14を用いている。
【0037】
正極板30は、例えば次のようにして作製することができる。まず、正極活物質と結着剤を分散媒中で均一になるように混練して、正極合剤スラリーを作製する。結着剤にはポリフッ化ビニリデンを分散媒にはN-メチルピロリドンを用いることが好ましい。正極合剤スラリーには黒鉛やカーボンブラックなどの導電剤を添加することが好ましい。この正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合剤層が形成される。その際、正極集電体の一部に正極合剤層が形成されていない正極集電体露出部が設けられる。次に、正極合剤層をローラーで所定厚みに圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断する。最後に、正極集電体露出部に正極リード31を接続して正極板30が得られる。
【0038】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出することができるリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、一般式LiMO2(MはCo、Ni、及びMnの少なくとも1つ)、LiMn2O4及びLiFePO4が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができ、Al、Ti、Mg、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1つを添加して、又は遷移金属元素と置換して用いることもできる。
【0039】
負極板32は、例えば次のようにして作製することができる。まず、負極活物質と結着剤を分散媒中で均一になるように混練して、負極合剤スラリーを作製する。結着剤にはスチレンブタジエン(SBR)共重合体を、分散媒には水を用いることが好ましい。負極合剤スラリーにはカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を添加することが好ましい。この負極合剤スラリーを負極集電体上に塗布、乾燥して負極合剤層が形成される。その際、負極集電体の一部に負極合剤層が形成されていない負極集電体露出部が設けられる。次に、負極合剤層をローラーで所定厚みに圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断する。最後に、負極集電体露出部に負極リード33を接続して負極板32が得られる。
【0040】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出することができる炭素材料や金属材料を用いることができる。炭素材料としては、天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛が例示される。金属材料としては、ケイ素及びスズ並びにこれらの酸化物が挙げられる。炭素材料及び金属材料は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
セパレータ34として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィンを主成分とする微多孔膜を用いることができる。微多孔膜は1層単独で又は2層以上を積層して用いることができる。2層以上の積層セパレータにおいては、融点が低いポリエチレン(PE)を主成分とする層を中間層に、耐酸化性に優れたポリプロピレン(PP)を表面層とすることが好ましい。さらに、セパレータ34には酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)及び酸化ケイ素(SiO2)のような無機粒子を添加することができる。このような無機粒子はセパレータ中に担持させることができ、セパレータ表面に結着剤とともに塗布することもできる。
【0042】
非水電解液として、非水溶媒中に電解質塩としてのリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。
【0043】
非水溶媒として、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状カルボン酸エステルを用いることができ、これらは2種以上を混合して用いることが好ましい。環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)が例示される。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のように、水素の一部をフッ素で置換した環状炭酸エステルを用いることもできる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などが例示される。環状カルボン酸エステルとしてはγ-ブチロラクトン(γ-BL)及びγ-バレロラクトン(γ-VL)が例示され、鎖状カルボン酸エステルとしてはピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート及びメチルプロピオネートが例示される。
【0044】
リチウム塩として、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li2B10Cl10及びLi2B12Cl12が例示される。これらの中でもLiPF6が特に好ましく、非水電解液中の濃度は0.5~2.0mol/Lであることが好ましい。LiPF6にLiBF4など他のリチウム塩を混合することもできる。
【0045】
次に、
図3を参照して、封口体20のカシメ固定について説明する。
図3(a)はカシメ固定前の封口体20及びその近傍を示す径方向半分の断面図であり、
図3(b)はカシメ固定されたときの封口体20及びその近傍を示す径方向半分の断面図である。
図3(a),(b)において正極リード31及び電極体14等の図示が省略されている。
【0046】
封口体20が外装缶12にカシメ固定されるとき、
図3(a)に示すように、封口板22の外周端縁部27が外装缶12の溝入部13上にガスケット16を介して載置される。この状態で、
図3(b)に示すように、金型(図示せず)を用いて外装缶12の上端部12aを径方向内側に押し曲げて、封口体20をカシメ固定する。
【0047】
このとき、外装缶12の開口部の周縁部12cに対応する位置で最も大きくなる押し付け力Fが、封口板22の外周端縁部27に作用する。これにより、カシメ固定前に2つに分岐して形成されていた第1部分27aと第2部分27bとが密接して一体となった状態に押し潰され、このとき封口板22の外周端縁部27には径方向内側に向かう押圧力Gが作用する。また、封口板22は、傾斜領域22bがあることによって電池外方側の表面の中央領域22aが電池内方側に凹んだ形状を有している。そのため、カシメ固定時に外周端縁部27に作用する径方向内側への押圧力Gによって、封口板22は中央領域22aが下側(矢印A方向)へ凹状に反った形状で確実に組み付けられることなる。
【0048】
カシメ固定が完了して円筒形電池10が金型から取り出されると、封口板22及びこれを含む封口体20は
図3(b)中に二点鎖線で示す位置までスプリングバックするが、この戻った位置が所望位置となるように封口板22の外周端縁部27の第1部分27a及び第2部分27bの形状や、切込部29の寸法などを設定すればよい。
【0049】
上述したように、本実施形態の円筒形電池10によれば、封口板22が、平面視で円形状をなし、その中央領域22aが電池内方側に凹んだ形状を有しており、封口板22において外装缶12にカシメ固定される外周端縁部27が、板厚方向に第1部分27aと第2部分27bとに分かれている。封口板22がカシメ固定される前は、第1部分27aと第2部分27bの間に空間が設けられている。これにより、外装缶12にカシメ固定されるときに封口板22及びこれを含む封口体20を下側に反った形状で確実に組み付けることができる。したがって、封口体20が上側に反った形状で組み付けられた円筒形電池が電池モジュールとして組み立てる際に円筒形電池10から出力電流を取り出すための外部リードと干渉して封口体20が破損するのを防止できる。
【0050】
なお、本開示に係る円筒形電池は、上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0051】
例えば、
図4(a)に示すように、封口
板22の外周端縁部27に形成される第1部分27a及び第2部分27bは径方向外側へ向かってY字状に分かれるように形成されてもよいし、
図4(b),(c)に示すように、第1部分27aと第2部分27bが板厚方向に広がることなく、切込部29がV字状又はU字状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 円筒形電池、12 外装缶、12a 上端部、12b 底部、12c 周縁部、13 溝入部、14 電極体、16 ガスケット、20 封口体、22 封口板、22a 中央領域、22b 傾斜領域、22c 突起、23 空間、24 絶縁板、24a 開口、24b,26a 通気孔、24c スカート部、25 突出部、26 端子板、26b 溝、27 外周端縁部、27a 第1部分、27b 第2部分、28 分岐開始位置、29 切込部、30 正極板、31 正極リード、32 負極板、33 負極リード、34 セパレータ、36 下側絶縁部材、38 上側絶縁部材、F 押し付け力、G 押圧力、C 径方向線、O 中心線。