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特許7465820ボトルブラシポリマーを使用したシリカスケールの阻害
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  • 特許-ボトルブラシポリマーを使用したシリカスケールの阻害 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ボトルブラシポリマーを使用したシリカスケールの阻害
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/10 20230101AFI20240404BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240404BHJP
   C02F 5/12 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
C02F5/10 620B
C02F5/00 620C
C02F5/10 620D
C02F5/12
C02F5/10 620G
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020567108
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 US2019034335
(87)【国際公開番号】W WO2019232011
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】201841020613
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201841029480
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デオ、プスパンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】アブラモ、グラハム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、カイリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】メータ、ソミル チャンドラカント
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027060(JP,A)
【文献】特表2014-503352(JP,A)
【文献】特公平06-085919(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F5/00-5/14
C08F251/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカスケールの形成を阻害する方法であって、前記方法は、
シリカを含む水性系を、以下の化学式を有する有効量のポリマーで処理するステップ
を含み、
【化1】


A成分が前記ポリマーの約5重量%~約45重量%を構成し、
B成分が前記ポリマーの約55重量%~約95重量%を構成し、
C成分が前記ポリマーの約0重量%~約25重量%を構成し、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択さ
れる1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後
に得られる繰り返し単位であり、
【化2】


式中、Rは、HまたはCHであり、
は、以下の化学式を有し、
【化3】


式中、Rは、H、CH、またはそれらの混合物であり、
は、H、またはC~Cのアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100であり、
Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択さ
れる1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である、方法。
【請求項2】
Aは、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、イタコン酸
、イタコン酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、およびそれらの混合物からなる群から
選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Bは、ポリオキソアルキレンアクリレート、メタクリレート、およびそれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Bは、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレー
ト、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメ
チルエーテルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1
に記載の方法。
【請求項5】
Cは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびセロソルブアクリレート、(メタ)アクリル
アミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピ
ルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ならびに
ジメチルアクリルアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーは、約2000ダルトン~約60000ダルトンの数平均分子量を有す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
A成分が前記ポリマーの約20重量%を構成し、および
B成分が前記ポリマーの約80重量%を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートは、約2000ダルトン
の数平均分子量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーの前記有効量は、約0.5ppm~約1000ppmである、請求項1
に記載の方法。
【請求項10】
前記水性系は、約6.0~約10.0のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水性系は、20℃~250℃の温度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
A成分が前記ポリマーの約5重量%~約30重量%を構成し、および
B成分が前記ポリマーの約70重量%~約95重量%を構成する、請求項1に記載の
方法。
【請求項13】
前記水性系は、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エ
ネルギーシステム、SAGDシステム、およびシリカブラインからなる群から選択される
、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記水性系は、前記シリカブラインである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
nは、40より大きく100以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
nは、60より大きく100以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
nは、80より大きく100以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
Cは、メチルメタクリレートであり、
A成分が前記ポリマーの約7重量%を構成し、
B成分が前記ポリマーの約72重量%を構成し、
C成分が前記ポリマーの約21重量%を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートが、約550ダルトンの
間の数平均分子量を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
シリカスケール形成を阻害するためのポリマーであって、前記ポリマーは、前記ポリ
マーが以下の化学式を有するものであり、
【化4】


A成分が前記ポリマーの約5重量%~約45重量%を構成し、
B成分が前記ポリマーの約55重量%~約95重量%を構成し、
C成分が前記ポリマーの約0重量%~約25重量%を構成し、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択さ
れる1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後
に得られる繰り返し単位であり、
【化5】


式中、Rは、HまたはCHであり、
は、以下の化学式を有し、
【化6】


式中、Rは、H、CH、またはそれらの混合物であり、
は、H、またはC~Cのアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100であり、
Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択さ
れる1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である、ポリマー。
【請求項21】
Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
A成分が前記ポリマーの約20重量%を構成し、および
B成分が前記ポリマーの約80重量%を構成する、請求項20に記載のポリマー。
【請求項22】
前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートが、約2000ダルトン
の数平均分子量を有する、請求項21に記載のポリマー。
【請求項23】
Aは、メタクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
Cは、メチルメタクリレートであり、
A成分が前記ポリマーの約7重量%を構成し、
成分が前記ポリマーの約72重量%を構成し、
成分が前記ポリマーの約21重量%を構成し、請求項20に記載のポリマー。
【請求項24】
前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートは、約550ダルトンの
数平均分子量を有する、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
請求項20~24のいずれか一項に記載のポリマーを含む、シリカスケール形成阻害用
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年6月1日に出願されたインド特許出願第201841020613号および2018年8月6日に出願されたインド特許出願第201841029480号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、スケール阻害に関する。具体的には、本発明は、シリカスケールの形成を阻害するためのボトルブラシポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
「ボトルブラシ」タイプのポリマーは、ポリマー鎖骨格の一部がその上にグラフトされた分岐を有し、これらの分岐がすべての方向において半径方向に延在するポリマーまたはコポリマーである。ボトルブラシポリマーは、とりわけ、米国特許第9,382,444号に開示されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
シリカおよび金属ケイ酸塩のスケールは、水性系を利用する多くの産業で問題がある。最も影響を受けるセグメントは、工業用水処理、特に逆浸透(RO)、冷却塔、ボイラ、ならびに石油およびガスの用途、特に地熱エネルギーの取り出しおよび蒸気支援重力排水(SAGD)の用途である。Bayerプロセスを利用したアルミナ精製などの採掘作業でも、シリカおよびケイ酸塩のスケールに重大な問題がある。
【0005】
シリカおよびケイ酸塩スケールの形成は、pH、温度、シリカ濃度、およびそのような系で使用される水中に存在する多価金属イオンの存在などの操作条件に依存する。それらの条件に基づいて、異なるタイプのシリカまたはケイ酸塩スケールが形成される場合がある。例えば、8.5を超えるpH値では、Mg2+、Ca2+、Al3+、またはFe3+などの多価イオンの存在および操作温度に応じて、シリカスケールは主に金属ケイ酸塩の形になるが、コロイダルシリカ(重合シリカ粒子)は、6.5~8.5のpH値でより一般的である。スケールは、水処理装置または生成装置に堆積し、最終的に流れを制限し、コストのかかるプロセスのダウンタイムにつながる可能性がある。典型的なスケール除去処理は、機械的洗浄、またはフッ化水素酸洗浄などの危険で腐食性の酸洗浄を含む。
【0006】
当技術分野で知られているシリカスケール阻害剤としては、例えば、0~5モル%のモノマー(すなわち、アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド)および95~100モル%のポリオキソアルキレン含有(メタ)アクリレートモノマーから作製された水溶性ポリマーのシリカスケール阻害剤としての使用を開示する米国公開特許出願第2009/0294374A1号が挙げられる。米国特許第4,566,974号は、アクリル酸/メタクリル酸、アクリルアミド/メタクリルアミド、および各エステル上に2~6個のエチレンオキシド単位を有する(メタ)アクリル酸エステルで作製されたポリマーを使用して、スケールの堆積を阻害するための方法を開示する。米国特許第4,618,448号は、スケール阻害剤として、35~90重量%の不飽和カルボン酸またはその塩、5~40%の不飽和スルホン酸またはその塩、および5~40重量%の不飽和ポリアルキレンオキシドのコポリマーの使用を開示する。米国特許第4,933,090号は、シリカ/ケイ酸塩の堆積を制御するための選択されたホスホネートおよび任意選択的なカルボン酸/スルホン酸/ポリアルキレンオキシドポリマーの使用を開示する。米国特許第5,180,498号および同第5,271,847号は、蒸気発生条件下での水性媒体中のシリカ堆積をアリルポリエチレングリコールを含有する水溶性ポリマーで制御するための方法を開示する。米国特許第5,445,758号および同第5,527,468号は、蒸気発生システムの構造表面上のスケール付与種の堆積を制御するための組成物を開示する。米国特許第6,051,142号は、冷却およびボイラ水システムにおけるシリカおよびケイ酸塩のスケールを制御するためのエチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO-PO)ブロックコポリマーの使用を開示する。最後に、米国特許第7,316,787号は、コロイド状シリカスケール阻害剤としての疎水性修飾エチレンオキシドポリマーの使用を開示する。
【0007】
新しいスケール阻害剤の開発にもかかわらず、シリカスケーリングは、水性系における主要な課題であり続けており、したがって、当技術分野で知られているものを超えるスケール阻害性能を有するポリマーの必要性を示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、シリカを含有する水性系を、以下の化学式を有する有効量のポリマーで処理することを介して、シリカスケール形成を阻害する方法が提供され、
【化1】

「A」は、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、好ましくはポリマーの約5重量%~約45重量%を構成し、より好ましくはポリマーの約5重量%~約30重量%を構成する。これとは別に、「B」は、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化2】

式中、Rは、HまたはCHであり、Rは、以下の化学式を有し、
【化3】

式中、Rは、H、CH、またはそれらの混合物であり、Rは、H、もしくはC~C4のアルキル基、またはそれらの混合物であり、nは、5~100の値を有する。「B」は、好ましくはポリマーの約55重量%~約95重量%を構成し、より好ましくはポリマーの約70重量%~約95重量%を構成する。最後に、Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である。「C」は、好ましくは、ボトルブラシポリマーの約0重量%~約25重量%を構成する
【0009】
開示された発明は、様々な分子量の1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーと組み合わせた1つ以上のアニオン性モノマーの新規のボトルブラシコポリマー、またはポリオキソアルキレン含有モノマーおよび2つ以上のアニオン性モノマーのいずれかもしくはアニオン性モノマーおよび非アニオン性モノマーのボトルブラシコポリマーの使用を対象とする。好ましいアニオン性モノマーとしては、これらに限定されないが、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、およびアクリルホスフェートが挙げられる一方、好ましいポリオキソアルキレン含有モノマーとしては、これらに限定されないが、ポリオキソアルキレンアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。好ましい非イオン性モノマーとしては、これらに限定されないが、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートヒドロキシプロピルアクリレートおよびセロソルブアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ならびにジメチルアクリルアミドが挙げられる。これらの系は、逆浸透(RO)、冷却塔、地熱、およびSAGD用途などの用途で使用することができる。
【0010】
本発明により、好ましいシリカスケール阻害剤は、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)および/または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)をポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA)と重合して、45%を超えるMPEGMA重量分率を有するボトルブラシコポリマーまたはターポリマーを形成することによって調製することができる。あるいは、好ましいシリカスケール阻害剤は、MAAおよびメチルメタクリレート(MMA)をMPEGMAと重合して、45%を超えるMPEGMA重量分率を有するボトルブラシターポリマーを形成することによって調製することができる。これらのようなボトルブラシポリマーは、有意なシリカスケール阻害特性を示すことが決定された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シリカスケールを阻害するための業界標準(比較例A)と比較した試料Xについての供給タンク内に残っている正規化された透過液流れおよび遊離シリカを示す、逆浸透フラットシート試験の結果を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された発明は、シリカを含有する水性系を以下の化学式を有する有効量のポリマーで処理することを介して、シリカスケール形成を阻害する方法を対象とする。
【化4】

「A」は、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、ホスホン酸、ホスフェート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である。「A」は、好ましくは、ポリマーの約5重量%~約45重量%を構成し、より好ましくは、ポリマーの約5重量%~約30重量%を構成する。これとは別に、「B」は、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化5】

式中、Rは、HまたはCHであり、Rは、以下の化学式を有し、
【化6】

式中、Rは、H、CH、またはそれらの混合物であり、Rは、H、もしくはC~Cのアルキル基、またはそれらの混合物であり、nは、5~100の値を有する。「B」は、好ましくは、ポリマーの約55重量%~約95重量%を構成し、より好ましくは、ポリマーの70重量%~約95重量%を構成する。最後に、Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である。「C」は、好ましくは、ボトルブラシポリマーの約0重量%~約25重量%を構成する
【0013】
本明細書に記載された全てのパーセンテージは、特に明記されていない限り、重量パーセント(重量%)である。温度は、摂氏(℃)で表され、「周囲温度」とは、特に指定がない限り、20℃~25℃を意味する。
【0014】
「ポリマー」は、同じまたは異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物または「樹脂」を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という一般用語は、1つ以上のタイプのモノマーから作製されたポリマー化合物を含む。本明細書で使用される「コポリマー」は、一般に、2つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー化合物を指す。同様に、「ターポリマー」は、3つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー化合物である。
【0015】
「水性系」は、一般に、これらに限定されないが、シリカブライン、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エネルギーシステム、SAGDなどを含む水を含む任意の系を指す。
【0016】
「シリカスケール」という用語は、一般に、RO膜、熱交換器、ならびに生成用チューブおよび配管などの水処理装置の内面に堆積および蓄積されるシリカを含む固体物を指す。シリカスケールは、一般に、コロイド状またはアモルファスシリカ(SiO)およびケイ酸塩(ケイ酸マグネシウムなど)などの複数のタイプのシリカスケールを含む。蓄積されたシリカスケールは、シリカおよびケイ酸塩タイプのスケールの組み合わせである場合があり、場合によっては、どちらか一方のタイプのスケールが優勢であることが多い。コロイド状/アモルファスシリカスケールは、以下、主にコロイド状/アモルファスタイプであるシリカスケール堆積物を一般的に指すために使用される用語である。金属の種類に応じて、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホスホン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸バリウム、沖積堆積物、金属酸化物、および金属水酸化物など、シリカタイプ以外の他の種類のスケールが存在し得、他のイオンは水性系に存在する。
【0017】
コロイド状/アモルファスシリカスケールを形成するための化学反応機構は、一般に、水酸化物イオンによって触媒されるケイ酸の縮合重合を伴う。この反応機構は、一般に、以下のように進行する。
Si(OH)+OH→(OH)SiO+H2O (I)
Si(OH) +Si(OH)+OH→(OH)Si-O-Si(OH)(二量体)+OH (II)
(OH)Si-O-Si(OH)(二量体)→環状→コロイダル→アモルファスシリカ(スケール) (III)
【0018】
反応機構は、水酸化物イオンによって触媒されるため、低pHではゆっくりと進行するが、pHが約7を超えると、大幅に増加する。したがって、6.5~8.5などの「中性」pHを有する水性系におけるシリカスケール形成の防止が特に懸念される。
【0019】
本発明の方法は、20℃~250℃の範囲の温度で、6.0~10.0のpHを有する水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を制御するのに好適である。本方法は、1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位、1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位、および1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位を含む有効量のボトルブラシポリマーを水性系に添加することを含む。
【0020】
ボトルブラシポリマー
ボトルブラシポリマーは、2つ以上のポリマーを含む分岐ポリマーまたはグラフトポリマーの一種であり、ポリマー側鎖「ブリストル」が線状ポリマー「骨格」に取り付けられており、その結果、その外観はボトルブラシの外観に似ている。本発明に望ましいボトルブラシポリマーは、以下の化学式を有し、
【化7】

Aは、1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、Bは、1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、Cは、1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である。好ましくは、1つ以上のアニオン性モノマーは、ボトルブラシポリマーの約5重量%~約45重量%を構成し、それにより、x=約5重量%~約45重量%である。より好ましくは、1つ以上のアニオン性モノマーは、ボトルブラシポリマーの約5重量%~約30重量%を構成し、それにより、x=約5重量%~約30重量%である。好ましくは、ポリオキソアルキレン含有モノマーは、ボトルブラシポリマーの約55重量%~約95重量%を構成し、それにより、y=約55重量%~約95重量%である。より好ましくは、ポリオキソアルキレン含有モノマーは、ボトルブラシポリマーの約70重量%~約95重量%を構成し、それにより、y=約70重量%~約95重量%である。最後に、1つ以上の非イオン性モノマーは、好ましくは、ボトルブラシポリマーの約0重量%~約25重量%を構成し、それにより、z=約0重量%~約25重量%である。
【0021】
好ましくは、本発明のボトルブラシポリマーは、約2000ダルトン~約60000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0022】
ポリオキソアルキレン含有モノマー
本発明に好適なポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位は、以下の化学式を有し、
【化8】
式中、Rは、HまたはCHであり、
は、以下の化学式を有し、
【化9】
式中、Rは、H、CH、またはそれらの混合物であり、
は、H、またはC~Cアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100である。
【0023】
好適なポリオキソアルキレン含有モノマーは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ならびにポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレートなどのポリオキソアルキレンアクリレートおよびメタクリレートを含む。
【0024】
アニオン性モノマー
アニオン性モノマーは、カルシウム、マグネシウム、鉄、およびアルミニウムなどの水溶液に見られる典型的なカチオンの存在下で分散剤として機能する。本発明のボトルブラシポリマーを合成するために使用することができる好ましいアニオン性モノマーは、これらに限定されないが、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸、不飽和リン酸塩、および不飽和アクリルホスフェートを含む。好ましい不飽和カルボン酸は、これらに限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびマレイン酸を含む。好ましい不飽和スルホン酸または塩は、これらに限定されないが、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびビニルスルホン酸を含む。好ましい不飽和アクリルホスフェートは、これに限定されないが、エチレングリコールメタクリレートホスフェートを含む。
【0025】
非イオン性モノマー
本発明のボトルブラシポリマーを合成するために使用することができる好ましい非イオン性モノマーは、これらに限定されないが、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドを含む。好ましいメタクリレートは、これらに限定されないが、メチルメタクリレート、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチルメタクリレートを含む。好ましいアクリレートは、エチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびセロソルブアクリレートを含む。好ましいアクリルアミドは、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミドおよびジメチルアクリルアミドを含む。
【0026】
使用方法
「有効量」は、処理される水性系におけるコロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を阻害するために必要なボトルブラシポリマーの量である。「阻害する」とは、コロイド状/アモルファスシリカスケールの堆積を遅らせて、機器の最大効率の期間を延長することを意味する。水性系に添加されるボトルブラシポリマーの有効量は、水性系に存在するシリカ、塩、および多価金属イオンの濃度とともに、水性系の温度およびpHに応じて変化し得る。ほとんどの用途では、ボトルブラシポリマーの有効量は、約0.5ppm~約1000ppm、およびより好ましくは約1ppm~100ppmの範囲である。本発明のボトルブラシポリマーによって処理される水性系は、通常、30ppm、50ppm、あるいは100ppmを超えるシリカ含量を有する。
【0027】
堆積を制御するための本発明の方法において有用なボトルブラシポリマーを調製するために使用される重合方法は、特に限定されず、現在または将来、当業者に知られている任意の方法であり得、これらに限定されないが、米国特許第4,711,725号に開示された重合方法を含む、エマルジョン、溶液、添加およびフリーラジカル重合技術を含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましくは、本発明のボトルブラシポリマーは、水溶液フリーラジカル重合を介して重合される。
【0028】
本発明の使用、用途、および利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の考察および説明によって明らかにされるであろう。
【実施例
【0029】
以下の実施例は、本明細書に開示および特許請求される本発明の様々な非限定的な実施形態、ならびにその特定の属性を示す。
【0030】
実施例1
重合
脱イオン水(271.5g)、メタ重亜硫酸ナトリウム(2g)、および硫酸鉄七水和物(2.4mg)を、撹拌機、熱電対、N入口、および還流冷却器を備えた2リットルの4つ口丸底ガラス反応器に添加した。反応器の内容物を、撹拌しながら窒素雰囲気下で72℃に加熱した。メタ重亜硫酸ナトリウム溶液(10gを15.6gの脱イオン水に溶解)、過硫酸ナトリウム溶液(2.6gを33gの脱イオン水に溶解)、および脱イオン水(159.7g)、アクリル酸(66g)、および2000分子量のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(264g)を、各々120分にわたって反応器に同時に添加した。モノマーの供給が完了した後、過硫酸ナトリウム溶液の第2の分量(2.72gの脱イオン水に0.61g)を反応器に添加し、反応器を60℃で5分間保持した。温度を60℃に維持しながら、50%の水酸化ナトリウム水溶液(29.8g)を反応器にゆっくりと添加して、ポリマーを部分的に中和した。脱イオン水(82g)を添加して、35%固形分であるポリマー溶液を得た。次いで、ポリマー溶液を室温に冷却し、回収した。
【0031】
静的ボトル試験
静的ボトル試験を使用して、シリカ重合を阻害する様々なポリマーの有効性を評価した。溶液中に残っている遊離シリカ(反応性シリカ)は、HACHケイモリブデン酸塩比色法を使用して追跡された。コロイダルシリカの形成を阻害する効果が高いポリマーは、溶液中の遊離シリカのレベルを長期間維持した。過飽和シリカ溶液は、SiOとして400ppmの初期シリカ濃度を得るために脱イオン水にケイ酸ナトリウム塩を溶解することによって調製された。
【0032】
静的ボトル試験の第1の組では、25ppm(活性物質として)の本発明の阻害剤を過飽和シリカ溶液の中に投与し、pHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で21時間静置した。21時間後、シリカ溶液を濁度計で濁度について分析して、不溶性沈殿物の存在をチェックした。次いで、シリカ試料を0.45μmのフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料A~Cは、アクリル酸(AA)と、2000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-2000)とのコポリマーである。試料A、B、およびCは、それぞれ30、40、および70重量%のMPEGMA-2000を含有する。試料Dは、MPEGMA-2000のホモポリマーである。1450、3350、および4600ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)ポリマーも比較するために評価した。
【0033】
阻害剤を含有する溶液および阻害剤を含まない溶液の最終可溶性シリカ濃度を測定した後、パーセントスケール阻害を以下の式に従って計算した。
【数1】
【0034】
濁度およびシリカ阻害試験の結果を表1にまとめている。
【表1】
【0035】
試料Cは、他の効果的なシリカ阻害ポリマーに共通する不溶性の沈殿物またはフロックを形成することなく、溶液中でより高いレベルの反応性シリカを維持した。比較すると、試料DおよびPEGポリマーは、コロイダルシリカの阻害を示したが、不溶性フロックをもたらし、シリカブラインの濁度が大幅に上昇した。
【0036】
静的ボトル試験の第2の組では、塩化カルシウム二水和物として添加した120ppmのCa2+、および塩化マグネシウム六水和物として添加した73ppmのMg2+を、ケイ酸ナトリウムとして添加した400ppmのSiOに加えて添加して、硬度イオンの影響を評価した。活性物質として25ppmの阻害剤を添加した後、ブラインのpHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で21時間静置した。21時間後、シリカ溶液を0.45μmフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料E、F、およびGは、アクリル酸と、それぞれ30、60、および70重量%のMPEGMA-2000を含有するMPEGMA-2000とのコポリマーである。試料Hは、7重量%のAA、3重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、および90重量%のMPEGMA-2000のターポリマーである。結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
試料F~Hは、CaおよびMgなどの硬度イオンの存在下で良好なシリカ阻害性能を示す。
【0038】
静的ボトル試験の第3の組では、本発明のMPEGMA成分の分子量の影響を評価した。塩化カルシウム二水和物として添加した120ppmのCa2+、および塩化マグネシウム六水和物として添加した73ppmのMg2+を、ケイ酸ナトリウムとして添加した400ppmのSiOに加えて添加した。活性物質として25ppmの阻害剤を添加した後、ブラインのpHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で21時間静置した。21時間後、シリカ溶液を0.45μmフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料Iは、27重量%のAA、13重量%のAMPS、および300の数平均分子量を有する60重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-300)のターポリマーである。試料Jは、20重量%のAAと80重量%のMPEGMA-300のコポリマーである。試料Kは、40重量%のAAと、950の数平均分子量を有する60重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-950)とのコポリマーである。試料Lは、20重量%のAAと、80重量%のMPEGMA-950とのコポリマーである。試料Mは、40重量%のAAと、60重量%のMPEGMA-2000とのコポリマーである。試料Nは、14重量%のAA、6重量%のAMPS、および80重量%のMPEGMA-2000のターポリマーである。結果を、表3内で要約する。
【表3】
【0039】
上記のデータは、評価された範囲内のより高い分子量のMPEGMAおよびより高い重量パーセントのMPEGMAを含有するポリマーについての優れたシリカ阻害を示す。
【0040】
逆浸透フラットシート試験
コロイダルシリカは、逆浸透(RO)膜にとって最も一般的な汚染物質のうちの1つであるため、ROフラットシートの実験室試験も阻害剤を用いて実施した。20ppm(活性物質に基づいて)の阻害剤を、ケイ酸ナトリウム塩として添加した400ppmのSiOを含有する10Lの合成ブラインに添加し、pHを7.5に調整した。次いで、10Lのブラインを、SterlitechフラットシートROユニットを通して約48時間再循環させた。メスシリンダおよびHACHケイモリブデン酸塩比色法をそれぞれ使用して、供給タンク溶液の透過液流量および遊離シリカ濃度を、48時間にわたって定期的に測定した。ROユニットを、25バールの圧力で、室温で毎分5.48リットルの供給流量で稼働させた。使用した膜は、12時間前に水で調節したDow FILMTEC(商標)BW-30膜であった。試料Xは、20重量%のAAと300の数平均分子量を有する80重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-300)とを含有するコポリマーである。比較例Aは、シリカスケール用の業界標準阻害剤である。図1は、ROフラットシート試験の結果を示す。図1は、試料Xが、RO用途に関連する条件下で、比較例Aと比較して、シリカの沈殿を阻止することにより、溶液中により多くの量のシリカを分散させたままにすることを経時的に示す(図1の丸で囲んだ部分)。
【0041】
実施例2
重合
プロピレングリコール(354g)を、撹拌機、熱電対、N入口、および還流冷却器を備えた3リットルの4つ口丸底ガラス反応器に添加した。反応器の内容物を、撹拌しながら窒素雰囲気下で92℃に加熱した。脱イオン水(10g)に溶解したリン酸水素二ナトリウム(2.46g)の溶液を反応器に添加し、続いてメルカプトエタノール(6.6g)を添加した。Bisomer550 MW(470.3g)、メタクリル酸メチル(138.7g)、およびメタクリル酸(45.5g)を含むモノマー混合物を、240分にわたって反応器に添加した。プロピレングリコール(90g)に溶解したTrigonox25 C75(89.6)の開始剤供給物を、モノマー混合物と同時に開始して反応器に添加し、250分にわたって供給した。供給中、反応器の温度を、撹拌を続けながら91℃に制御した。開始剤の供給が完了した後、バッチを、90℃で20分間保持した。水酸化アンモニウム水溶液(16.5g、30%)および脱イオン水(285g)の混合物を反応器に添加し、pHを7.0に上昇させた。脱イオン水(53g)中のTrigonox25 C75(52.8g)の溶液を、反応器に添加した。脱イオン水(70g)中のメタ重亜硫酸ナトリウム(23.6g)の溶液を反応器に添加し、バッチを90℃に45分間保持した。脱イオン水の最終希釈液(175g)をバッチに加え、バッチを室温まで冷却して回収した。
【0042】
静的ボトル試験
静的ボトル試験を使用して、シリカ重合を阻害するポリマーの有効性を評価した。溶液中に残っている遊離シリカ(反応性シリカ)は、HACHケイモリブデン酸塩比色法を使用して追跡された。コロイダルシリカの形成を阻害する効果が高いポリマーは、溶液中の遊離シリカのレベルを長期間維持した。過飽和シリカ溶液は、SiOとして400ppmの初期シリカ濃度を得るために脱イオン水にケイ酸ナトリウム塩を溶解することによって調製された。
【0043】
静的ボトル試験の第1の組では、10および25ppm(活性物質として)の本発明の阻害剤を過飽和シリカ溶液の中に投与し、pHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で24時間静置した。24時間後、シリカ溶液を濁度計で濁度について分析して、不溶性フロックの存在をチェックした。次いで、シリカ試料を0.45μmフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料1は、7重量%のメタクリル酸(AA)、21重量%のメチルメタクリレート、および550の数平均分子量を有する72重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-550)のターポリマーである。試料2は、300の数平均分子量を有するポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-300)のホモポリマーである。
【0044】
阻害剤を含有する溶液および阻害剤を含まない溶液の最終可溶性シリカ濃度を測定した後、パーセントスケール阻害を以下の式に従って計算した。
【数2】
【0045】
濁度およびシリカ阻害試験の結果を表4にまとめている。
【表4】
【0046】
試料1は、不溶性の沈殿物またはフロックを形成することなく、溶液中で高レベルの反応性シリカを維持した。比較すると、試料2は、コロイダルシリカの阻害を示したが、不溶性フロックをもたらし、シリカブラインの濁度が大幅に上昇した。
【0047】
静的ボトル試験の第2の組では、塩化カルシウム二水和物として添加した100ppmのCa2+、および塩化マグネシウム六水和物として添加した40ppmのMg2+を、ケイ酸ナトリウムとして添加した400ppmのSiOに加えて添加して、硬度イオンの影響を評価した。10および25ppm(活性物質として)で阻害剤を添加した後、ブラインのpHを7.5に調整した。次いで、試料を20℃で24時間静置した。24時間後、シリカ溶液を濁度計で濁度について分析して、不溶性フロックの存在をチェックした。次いで、シリカ試料を0.45μmフィルタでろ過し、HACH比色法を使用してろ液を分析した。試料3は、7重量%のメタクリル酸(AA)、21重量%のメチルメタクリレート、および550ダルトンの数平均分子量を有する72重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(MPEGMA-550)のターポリマーである。シリカ阻害試験の結果を表5にまとめている。
【表5】
【0048】
上記のデータは、阻害剤(例えば、試料3)が溶液中でより高いレベルの反応性シリカを維持したことを示す。
【0049】
本発明は、上記の明細書および図面に開示されたその好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のさらに多くの実施形態が可能である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

本出願の発明の例として、以下が挙げられる。
[1] シリカスケールの形成を阻害する方法であって、前記方法は、
シリカを含む水性系を、ポリマーが以下の化学式を有するように、モノマーA、モノマーB、およびモノマーCを含む有効量のポリマーで処理するステップを含み、
【化10-1】

x=約5重量%~約45重量%、
y=約55重量%~約95重量%、
z=約0重量%~約25重量%、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化10-2】

式中、R は、HまたはCH であり、
は、以下の化学式を有し、
【化10-3】

式中、R は、H、CH 、またはそれらの混合物であり、
は、H、またはC ~C のアルキル基、またはそれらの混合物であり、
n=5~100であり、
Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である、方法。
[2] Aは、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、イタコン酸、イタコン酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸(AMPS)、AMPSの塩、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸の塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[3] Bは、ポリオキソアルキレンアクリレート、メタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[4] Bは、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[5] Cは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびセロソルブアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ならびにジメチルアクリルアミドからなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[6] 前記ポリマーは、約2000ダルトン~約60000ダルトンの数平均分子量を有する、上記[1]に記載の方法。
[7] Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
x=約20重量%、および
y=約80重量%である、上記[1]に記載の方法。
[8] 前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートは、約2000ダルトンの数平均分子量を有する、上記[7]に記載の方法。
[9] 前記ポリマーの前記有効量は、約0.5ppm~約1000ppmである、上記[1]に記載の方法。
[10] 前記水性系は、約6.0~約10.0のpHを有する、上記[1]に記載の方法。
[11] 前記水性系は、20℃~250℃の温度を有する、上記[10]に記載の方法。
[12] x=約5重量%~約30重量%、および
y=約70重量%~約95重量%である、上記[1]に記載の方法。
[13] 前記水性系は、冷却水、脱塩、濾過、逆浸透、糖蒸発器、紙処理、採掘回路、地熱エネルギーシステム、SAGDシステム、およびシリカブラインからなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[14] 前記水性系は、前記シリカブラインであり、
前記ボトルブラシポリマーは、不溶性沈殿物を形成することなく、コロイダルシリカの形成を阻害する、上記[1]に記載の方法。
[15] nは、40より大きく100以下である、上記[1]に記載の方法。
[16] nは、60より大きく100以下である、上記[1]に記載の方法。
[17] nは、80より大きく100以下である、上記[1]に記載の方法。
[18] Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
Cは、メチルメタクリレートであり、
xは、約7重量%であり、
yは、約72重量%であり、
zは、約21重量%である、上記[1]に記載の方法。
[19] 前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートが、約550ダルトンの間の数平均分子量を有する、上記[18]に記載の方法。
[20] シリカスケール形成を阻害するためのポリマーであって、前記ポリマーは、前記ポリマーが以下の化学式を有するように、モノマーA、モノマーB、およびモノマーCを含み、
【化10-4】

x=約5重量%~約45重量%、
y=約55重量%~約95重量%、
z=約0重量%~約25重量%、
Aは、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、アクリルホスフェート、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のアニオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
Bは、以下の化学式を有する1つ以上のポリオキソアルキレン含有モノマーの重合後に得られる繰り返し単位であり、
【化10-5】

式中、R は、HまたはCH であり、
は、以下の化学式を有し、
【化10-6】

式中、R は、H、CH 、またはそれらの混合物であり、
は、H、またはC ~C のアルキル基、またはそれらの混合物であり、 n=5~100であり、
Cは、メタクリレート、アクリレート、およびアクリルアミドからなる群から選択される1つ以上の非イオン性モノマーの重合後に得られる繰り返し単位である、ポリマー。
[21] Aは、アクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
x=約20重量%、および
y=約80重量%である、上記[18]に記載のポリマー。
[22] 前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートが、約2000ダルトンの数平均分子量を有する、上記[21]に記載のポリマー。
[23] Aは、メタクリル酸であり、
Bは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートであり、
Cは、メチルメタクリレートであり、
xは、約7重量%であり、
yは、約72重量%であり、
zは、約21重量%である、上記[18]に記載のポリマー。
[24] 前記ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートは、約550ダルトンの数平均分子量を有する、上記[23]に記載のポリマー。
図1