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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】乳房インプラントの摘除装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61F2/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570026
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2018047724
(87)【国際公開番号】W WO2019245591
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】62/695,418
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/687,288
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520487336
【氏名又は名称】カーン メディカル デザイン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カーン,デーヴィッド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】モーズリー,ケヴィン,ジェイ.
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3137609(JP,U)
【文献】J.K. O'Neill , G.I.Taylor,A novel method to remove silicone gel after breast implant rupture,Short reports and correspondence,2006年02月22日,Volume 59, Issue 8 ,p.889-891,DOI:10.1016/j.bjps.2005.11.019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房インプラントを受け取る内室の境界を定め、遠位部分および近位部分を有するハウジングと、
前記近位部分の端部に固定され、乳房インプラントが摘除時に通過するオリフィスの境界を定める円形内縁部を有するリングと、
吸引口と、
を有し、
前記円形内縁部が前記オリフィスに隣接しており、前記乳房インプラントの摘除時に前記リングと前記乳房インプラントの間にシールが形成するように前記オリフィスの境界を定めた患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項2】
前記リングと前記ハウジングの近位部分との間に首部を形成する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項3】
前記リングが、前記ハウジングのオリフィスの境界を定める前記円形内縁部を有する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項4】
前記リングが、フレア付き、円形、またはロール状の外周唇状部を有する請求項3に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項5】
前記リングが、フレア付き、円形、またはロール状の外周唇状部を有する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項6】
前記リングを前記ハウジングと一体形成する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項7】
前記吸引口が前記ハウジングの前記遠位部分から延在する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項8】
前記近位部分および前記遠位部分が分離可能である請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項9】
前記近位部分および前記遠位部分が円錐台形の形を取る請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項10】
前記近位部分および前記遠位部分が、不使用時に一つの部分が他の部分にぴったり嵌り込む構造を有する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項11】
前記遠位部分および前記近位部分が嵌合位置にあるときに、前記吸引口が前記リングに少なくとも部分的に延在する請求項10に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項12】
前記近位部分および前記遠位部分にネジを刻設し、これら近位部分および遠位部分を接続する請求項7に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項13】
さらに真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの一つを有する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項14】
さらに前記真空ポンプ、前記シリンジおよび前記手動ポンプのうちの前記一つを前記吸引口に接続する配管を有する請求項13に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【請求項15】
さらに少なくとも一つのグリップを有する請求項1に記載の患者から乳房インプラントを摘除する装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2018年6月20日を出願日とする米国仮特許出願第62/687,288号および2018年7月9日を出願日とする米国仮特許出願第62/695,418号の優先権を主張する出願で、これらの明細書を援用する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は全体としては乳房用人工器官即ちインプラントに関し、より具体的には乳房インプラントの摘除装置に関する。
【背景技術】
【0003】
乳房用人工器官として知られている乳房インプラントは1960年代以来利用され、結果も満足のいくものである。このインプラントは外周エラストマーシェルおよび充填材からなる。大半のインプラントの場合、充填材はシリコーン系ポリマーである。所定時間の経過後、乳房インプラントは摘除する必要がある。摘除の最大の理由は、インプラントの機能不全、例えば外周シェルの外部へのシリコーン系充填材の漏出である。
【0004】
時間が経過するうちに、一部の乳房インプラントの外周のエラストマー系シェルが劣化し、充填材が漏出することがある。この劣化過程は一般にゲルブリード(gel bleed)として知られている。他の場合、外周シェルの明らかな破裂であり、この結果充填材が直接漏出する。インプラント摘除の指標となる場合もあり、これらの場合を例示すると、カプセルの痙縮、インプラントの変位、患者のサイズ変更要望および/または患者のインプラント摘除要望がある。
【0005】
取り外しの指標に関係なく、一般にカプセルとして知られている、自然に形成し、乳房インプラントを取り囲む傷跡ポケットから乳房インプラントを実際に摘除することは、手術室における技術的な、時間の要する問題になっている。詳しく説明すると、乳房インプラントの場合、傷跡ポケットおよび皮膚に開いた小さな開口から取り出さなければならず、好ましくは無傷で取り出す必要がある。インプラントを指によって処理すると、あるいはクランプなどの器具で処置すると、インプラントの外周のエラストマー系シェルに亀裂が発生し、あるいは既に存在している亀裂が拡大する。これは特に、外周シェルが極端に脆く、および/または部分的か、全面的に棄損する破壊された、あるいは漏出インプラントの場合について言える。このような場合、破壊状態にある乳房インプラント、あるいは漏出状態の充填材を取り出すために要する手術室における処置時間は相当なレベルに達する。
【0006】
摘除は難しいが、この問題はさらに一般にシリコーン系ポリマーであり、かつ乳房組織、皮膚、外科医の手袋、および/または手術器具を始めとするあらゆるものに付着する傾向がある充填材によって悪化する。シリコーン系ポリマー充填材それ自体扱いが、また封じ込めが難しく、乳房の組織および手術器具をクリーンな状態に保つためにはかなりの努力が必要である。さらに事態を複雑にしているのは、乳房ポケット内に残された充填材やゲルによって、触知できかつ肉眼で確認できる肉芽腫が発生することである。
【0007】
このように、充填材を封じ込めたまま無傷の、または破壊された乳房インプラントを効率よく摘除できる装置または対応する方法が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的および作用効果は、 患者の乳房インプラントを摘除する方法であって、
この乳房インプラントを露出する工程と、
ハウジングのオリフィスを上記乳房インプラントに接触する位置に設ける工程と、
上記オリフィスを介して上記乳房インプラントを吸引するために十分な吸引作用を加える工程と、
を有する摘除方法によって実現できる。
【0009】
別な実施可能な態様では、空気陽圧をハウジングに印加する工程でハウジングに取り付けたコネクターに空気配管を接続する。
【0010】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングの第1部分および第2部分を組み立てる(集成化する)。
【0011】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングが乳房インプラントを受け取る内室の境界を定める。
【0012】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングがオリフィスの境界を定める近位部分を有する。
【0013】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングが吸引口を有する。
【0014】
さらに別な実施可能な態様では、オリフィスを介して乳房インプラントを吸引するために十分な吸引作用を加える工程が、壁内吸引部(in-wall suction)を吸引口に接続する。
【0015】
一つの他の実施可能な態様では、オリフィスを介して乳房インプラントを吸引するために十分な吸引作用をハウジングに加える工程が真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの一つを吸引口に接続する工程を有する。
【0016】
別な実施可能な態様では、吸引口がハウジングの遠位部分に位置する。
【0017】
さらに別な実施可能な態様では、吸引口がハウジングの遠位端部に位置する。
【0018】
別な実施可能な態様では、吸引口がハウジングの遠位端部から延在する。
【0019】
さらに別な実施可能な態様では、吸引口が有刺コネクター(barbed connector)である。
【0020】
さらに別な実施可能な態様では、壁内吸引部を吸引口に接続する工程で、この壁内吸引部と吸引口との間に配管を接続する。
【0021】
さらに別な実施可能な態様では、真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプの一つを吸引口に接続する工程で、真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの上記の一つと吸引口との間に配管を接続する。
【0022】
別な実施可能な態様では、真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプの一つを吸引口に接続する工程で、真空ポンプ、上記シリンジおよび上記手動ポンプのうちの上記の一つと有刺コネクターとの間に配管を接続する。
【0023】
別な実施可能な態様では、乳房インプラントの露出工程で、患者の皮膚を切開する。
【0024】
さらに別な実施可能な態様では、乳房インプラントの露出工程で、乳房インプラントを少なくとも部分的に取り囲むカプセルを切開する。
【0025】
別な実施可能な態様では、ハウジングがリングを有する。
【0026】
別な実施可能な態様では、リングがハウジングから延在する。
【0027】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングのオリフィスの境界を定める円形内縁部を有する。
【0028】
別な実施可能な態様では、リングが外周唇状部(outer lip)を有する。
【0029】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングのオリフィスを乳房インプラントに接触する位置に設ける工程で、リングを上記乳房インプラントに接触する位置に設ける。
【0030】
別な実施可能な態様では、乳房インプラントを露出する工程で、上記患者の皮膚に切開部を形成し、リングを乳房インプラントに接触する位置に設ける工程で、リングを患者の皮膚の切開部に挿入する。
【0031】
別な実施可能な態様では、リングを乳房インプラントに接触する位置に設ける工程で、患者の皮膚の切開部が形成する縁部が、乳房インプラントの摘除時にリングの後に静止するようにリングの位置を設定する。
【0032】
さらに別な実施可能な態様では、乳房インプラントを露出する工程で、患者の皮膚およびこの乳房インプラントを少なくとも部分的に取り囲むカプセルに切開部を形成し、リングを乳房インプラントに接触する位置に設ける工程で、患者の皮膚およびカプセルの切開部にリングを挿入する。
【0033】
別な実施可能な態様では、リングを乳房インプラントに接触する位置に設ける工程で、カプセルの切開部が形成する縁部が、乳房インプラントの摘除時にリングの後に静止するようにリングの位置を設定する。
【0034】
さらに別な実施可能な態様では、リングを上記ハウジングに一体化する。
【0035】
さらに別な実施可能な態様では、ハウジングの第1部分および第2部分を組み立てる。
【0036】
さらに別な実施可能な態様では、本発明方法はさらに部分的被膜切除術/部分的関節包切除術(partial capsulectomy)を行う工程を有する。
【0037】
さらに別な実施可能な態様では、乳房インプラントの摘除に先立って部分的被膜切除術/部分的関節包切除術を行う。
【0038】
さらに別な実施可能な態様では、本発明方法はさらに完全被膜切除術/完全関節包切除術(total capsulectomy)を行う工程を有する。
【0039】
さらに別な実施可能は態様では、乳房インプラントの摘除に先立って完全被膜切除術/完全関節包切除術工程を行う。
【0040】
さらに別な実施可能な態様では、オリフィスを介して乳房インプラントを吸引するために十分な吸引作用をハウジングに加える工程で、オリフィスを介して乳房インプラントおよびカプセルを吸引するために十分な吸引作用をハウジングに加える。
【0041】
さらに別な実施可能な態様では、本発明方法はさらに乳房インプラントを廃棄容器に廃棄する工程を有する。
【0042】
さらに別な実施可能な態様では、本発明方法はさらに摘除された乳房インプランを始めとするハウジングを廃棄容器に廃棄する工程を有する。
【0043】
上記態様に加えて、本発明は患者から乳房インプラントを摘除する装置を提供するものである。この装置は乳房インプラントを受け取る内室の境界を定めるハウジングを備える。このハウジングは遠位部分、この乳房インプラントが摘除時に通過するオリフィスの境界を定める近位部分、および吸引口を有し、乳房インプラントの摘除時にこのハウジングと乳房インプラントの間にシールが形成するようにオリフィスの境界を定める。
【0044】
別な実施可能な態様では、ハウジングはリングを有する。
【0045】
さらに別な実施可能な態様では、リングは位置が固定されている。
【0046】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングから延在する。
【0047】
さらに別な実施可能な態様では、リングとハウジングの近位部分との間に首部を形成する。
【0048】
さらに別な実施可能な態様では、この首部がハウジングの遠位部分から離れてリングおよびオリフィスを拡張する。
【0049】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングのオリフィスの境界を定める円形内周縁部を有する。
【0050】
さらに別な実施可能な態様では、リングが外周唇状部を有する。
【0051】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングと一体化している。
【0052】
さらに別な実施可能な態様では、吸引口がハウジングの遠位部分から延在する。
【0053】
一つの他の実施可能な態様では、近位部部分および遠位部分が分離可能である。
【0054】
別な実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が二分した部分である。
【0055】
さらに一つの他の実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が円錐台形の形を取る。
【0056】
さらに別な実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が、不使用時に一つの部分が他の部分にぴったり嵌り込む構造を有する。
【0057】
一つの他の実施可能な態様では、遠位部分および近位部分が嵌合位置にあるときに、吸引口がオリフィスに延在する。
【0058】
別な実施可能は態様では、近位部分および遠位部分にネジを刻設し、これら近位部分および遠位部分を接続する。
【0059】
本発明装置がさらに真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの一つを有する。
【0060】
別な実施可能な態様では、本発明装置はさらに真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの上記一つを吸引口に接続する配管を有する。
【0061】
別な実施可能な態様では、本発明装置はさらに少なくとも一つのグリップを有する。
【0062】
さらに別な実施可能な態様では、この少なくとも一つのグリップはハウジングに形成した戻り止め(detent)である。
【0063】
一つの他の実施可能な態様では、上記の少なくとも一つのグリップの位置を高くする。
【0064】
別な実施可能な態様では、上記の高い位置にあるグリップがゴム材である。
【0065】
本発明のさらに追加的な実施態様は、患者から乳房インプラントを摘除する装置に関する。この装置は、乳房インプラントを受け取る内室の境界を定めるハウジングを有する。ハウジングは遠位部分および近位部分と、この近位部分に取り付けられ、乳房インプラントが摘除時に通過するオリフィスの境界を定めるリングと吸引口とを有する。
オリフィスは乳房インプラントの摘除時に上記リングと上記乳房インプラントの間にシールが形成される。
【0066】
別な実施可能な態様では、リングは位置が固定されている。
【0067】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングから延在する。
【0068】
さらに別な実施可能な態様では、リングとハウジングの近位部分との間に首部を形成する。
【0069】
一つの他の実施可能な態様では、首部がハウジングの遠位部分から離れてリングおよびオリフィスを拡張する。
【0070】
さらに別な実施可能な態様では、リングがハウジングのオリフィスの境界を定める円形内縁部を有する。
【0071】
一つの他の実施可能な態様では、リングが外周唇状部を有する。
【0072】
さらに別な実施可能な態様では、リングが上記ハウジングと一体化している。
【0073】
一つの他の実施可能な態様では、吸引口がハウジングの遠位部分から延在する。
【0074】
別な実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が分離可能である。
【0075】
さらに別な実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が二分した部分である。
【0076】
さらに別な実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が円錐台形の形を取る。
【0077】
一つの他の実施可能な態様では、近位部分および遠位部分が、不使用時に一つの部分が他の部分にぴったり嵌り込む構造を有する。
【0078】
さらに別な実施可能な態様では、遠位部分および近位部分が嵌合位置にあるときに、吸引口が上記オリフィスに少なくとも部分的に延在する。
【0079】
一つの他の実施可能な態様では、近位部分および遠位部分にネジを刻設し、これら近位部分および遠位部分を接続する。
【0080】
別な実施可能な態様では、本発明装置はさらに真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの一つを有する。
【0081】
さらに別な実施可能な態様では、本発明装置はさらに真空ポンプ、シリンジおよび手動ポンプのうちの上記一つを吸引口に接続する配管を有する。
【0082】
さらに別な実施可能な態様では、本発明装置は少なくとも一つのグリップを有する。
【0083】
さらに別な実施可能な態様では、上記の少なくとも一つのグリップが上記ハウジングに形成した戻り止めである。
【0084】
一つの他の実施可能な態様では、上記の少なくとも一つのグリップの位置を高くし、この高い位置にあるグリップがゴム材である。
【0085】
以下の説明では、患者の乳房インプラントを摘除する装置および対応する方法のいくつかの好適な実施態様を説明する。なお、本発明装置および方法はこれら以外の異なる態様でも可能であり、これら態様のいくつかの細部については、各種の自明な変更などが可能であり、いずれも特許請求の範囲に記載した装置および方法から逸脱するものではない。従って、添付図面および説明は例示的な性質であり、限定的な意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本明細書に添付され、本明細書の一部を成す添付図面に本発明のいくつかの態様を示し、以下いくつかの原理を添付図面に則して説明する。
【0087】
図1図1は、乳房インプラントの摘除装置を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の乳房インプラント摘除装置の一端を示す斜視図で、円形の唇状部を有する近位オリフィスを示す図である。
図3図3は、一部が分解状態にある本発明の乳房インプラント摘除装置の側部を示す斜視図である。
図4図4は、インプラント摘除プロセスの初期段において乳房インプラントに接触する近位オリフィスを示す本発明の乳房インプラント摘除装置の横断面図である。
図5図5は、一体型乳房インプラント摘除装置の別な実施態様を示す斜視図である。
【0088】
以下、乳房インプラント摘除装置および対応する方法を詳細に説明する。添付図面には実施例を示し、同じ要素は同じ参照符号で示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
患者から乳房インプラント(I)を摘除する装置10を示す図1を参照して本発明を説明する。乳房インプラントについては、無傷状態で、あるいは充填剤漏出時に摘除することができる。本明細書に記載する乳房インプラントは、外周のエラストマー系シェルよび充填材を有し(この場合シェルは無傷状態でもよく、あるいは充填材がシェルから漏出状態にあってもよい)、および/または乳房インプラントの周囲に少なくとも部分的に自然に形成するカプセルを有する。換言すると、乳房インプラント(I)に接触するものは漏出時の充填材、外周シェル、および/またはカプセルである。
【0090】
摘除装置10は第1の近位部分12および第2の遠位部分14からなり、これらが一体的にハウジングを構成する。本発明の実施態様では、全体として分離可能な2つの部分である。各部分12、14は主に中実壁16、18からなり、一体化して乳房インプラント(I)を受け取る内室を形成する。なお、装置10の他の実施態様では、近位部分および遠位部分が分離できない一体型ハウジングを備えることができる。
【0091】
本実施態様では、近位部分および遠位部分12、14のそれぞれは全体として円錐台形(frustoconical)であり、これらを接合し基端20、22にそってハウジングを構成する。むろん、(円形、楕円形、長方形、円錐形、少なくとも一部が円筒形などの)他の形状も利用可能である。任意の形状が利用可能であるが、近位部分および遠位部分12、14の形状については、乳房インプラント(I)の容積に対応し、かつ乳房インプラントの摘除または抽出を行う駆動力である真空圧下装置10の崩壊を阻止する十分な機械的強度を与えるように選択する必要がある。
【0092】
近位部分および遠位部分12、14の両者を加えた内室の全容積については、大きなサイズの乳房インプラントを摘除できる程度でなければならない。換言すると、内室の容積は、本実施態様では少なくとも600ccかそれ以上であり、大きなサイズの乳房インプラントの摘除に対応できる。むろん、他の実施態様では患者毎に小さな内室容積および/または特定サイズの内室容積を使用することも可能である。
【0093】
図1および図2に示すように、ハウジングの近位部分12がオリフィス24の境界を定め、このオリフィスを介して摘除時に乳房インプラント(I)が摘除される。具体的には、オリフィス24は、乳房インプラント(I)に摘除時に接触して位置するため、ハウジングと乳房インプラントとの間が十分にシールされ、真空圧が乳房インプラントを患者からハウジング内へ吸引する。
【0094】
本実施態様では、位置が固定され、ハウジングの近位部分12から延在する一体形成のリング26を備える。図3からよく理解できるように、この位置ではリング26とハウジングの近位部分12との間に首部28が形成し、この首部28がリング26およびオリフィス24をハウジングの遠位部分14から離れて拡張することができる。
【0095】
図示のように、上記首部26は、一つの実施態様ではオリフィス24の境界を定める円形の内縁部30を備える。他の実施態様では、リングを使用せずに、近位部分それ自体がオリフィスの境界を定める。この円形の、あるいはロール状の内縁部30が、摘除対象の乳房インプラント(I)に進入するほぼ平滑で、機械的に有利な進入部になる。このロール状内縁部30を有するリング26は平滑素材から構成してもよく、あるいはこのリングに医療用潤滑剤を使用して、インプラントが摘除プロセス中オリフィス24を通過している間、場合によっては漏出した/漏出している充填材(M)を含む乳房インプラント(I)とロール状内縁部との間の摩擦を制限することができる。
【0096】
さらに、上記リング26は図1および図3に示すように、フレア付きの、あるいは円形の、あるいはロール状の外周唇状部32を備える。この唇状部32を備えているため、患者の皮膚(D)の切開部、場合によってはキャプサレクトミィ(被膜切除術)切開部への挿入がスムーズになる。さらに、切開部内への装置10の保持が容易になり、リング/オリフィス24が摘除時に乳房インプラント(I)への接触時に切開部の縁部を開放位置に維持できる。換言すると、リングが乳房インプラント(I)に接触するようにリング26を切開部に挿入し、位置設定する。この位置では、切開部縁部が外周唇状部32の周囲に延在し、全体として首部28に隣接するリング26の後に静置する。リング26およびオリフィスについては一実施態様では円形であるが、オリフィスおよび/またはリングは楕円形や長円形などの他の形状を取ることができる。
【0097】
図1および図3に示すように、本実施態様では、ハウジングの遠位部分14から吸引口34が延在する。なお、この吸引口34はハウジング上の任意位置に設けることができる。この吸引口34は、本実施例では、(真空ポンプ、シリンジおよび/または手動ポンプなどの)吸引源36に接続する配管を受け取るニップルコネクターか有刺コネクターである。他の各種のコネクターを使用して、装置10を公知技術に従って吸引源に接続することができる。本実施態様では、吸引源36は真空ポンプである。一般的にいって、手術室が吸引源になり、この吸引源は遠隔位置に、あるいは手術室それ自体内に設置される真空ポンプであればよい。一部の実施態様では、携帯式真空ポンプ、シリンジ、あるいは場合によって手動ポンプなどに、適当な吸引源がない手術室で利用できる装置10を設ければよい。なお、各実施態様では、図1に示すように配管38を利用して装置10を吸引源36に接続する。
【0098】
図1および図4に示すように、遠位部分14の遠位端部32において、ニップルコネクターまたは有刺コネクター34が、摘除に使用される真空圧および/または挿入プロセスに使用され押し込み空気を発生するホース(図示省略)を受け取る。真空および空気源および/またはホースは、手術室内の外科的処置において普遍的に使用されている。別な実施態様では、配管またはホースをハウジングから延在させ、これにコネクターを取り付け、真空/流体ホースまたは真空/流体源コネクターに係合させる。
【0099】
図3に示すようにかつ上述したように、近位部分12および遠位部分14は、本実施態様では、分離可能であり、全体として円錐台形である。この形状のため、あるいは他の形状の場合でも、不使用時に一つの部分が他の部分にぴったりと嵌り込む。一つの実施態様では、吸引口34が、遠位部分および近位部分が嵌合位置にあるときにはオリフィス24を介して延在する。各部分が嵌合することは、一般的には、手術前の装置10を包装しておく際に特に有利に作用する。むろん、真空圧の下で十分な機械的剛性を維持できる限り、他の形状も利用可能であり、あるいは装置を一体構造にしておくことも可能である。
【0100】
さらに図示するように、近位部分12および遠位部分14は簡単なネジ式機構によって接続する。この機構によって得られる2つの部分12、14間の接続は気密であるため、真空圧を維持できる上に、装置10内に受け取られたシリコーン系ポリマー充填材が漏出することはない。具体的には、近位部分12の遠位端部40が遠位部分14の係合ネジ山44に係合して接続するネジ山42を備える。別な実施態様では、限定するわけではないが、例示するとプレス嵌め接続、摩擦嵌め接続、別に接続リングを使用する突き合わせ接続や圧縮バンドなどの他の型式の機械的接続をネジ式機構の代わりに使用することが可能である。さらに、このようなすべての実施態様においてはガスケットやOリングなどを使用して気密シールを確保してもよく、あるいは上記の一体設計を利用することも可能である。
【0101】
さらに便利を図るために、近位部分および遠位部分12、14の一方あるいは両方に一つかそれ以上のグリップ46を設けて、使用者による組立、解体の便宜を図ることができる。図3および図4から良く理解できるように、グリップ46としては近位部分および遠位部分12、14の一方に、あるいは両方に形成した戻り止めを利用することができる。本実施態様では、全体として楕円形として示すが、グリップ46の形状については、使用時、組み立て時あるいは解体時に各部分12、14を確実に保持できる形状であればよい。さらに、グリップについては、ハウジングの外周面よりも高くしてもよい(図示省略)。このように高く設定するグリップは、ゴムなどの素材から形成することができ、使用者の感触が剛くてもよく、および/またはねばりつく感触でもよい。むろん、他の形式のグリップを別な実施態様では、他の個数で使用することも可能である。
【0102】
上述したように、装置50は図5に示すように一体構造にすることも可能である。換言すると、装置50は一体型ユニットとして構成してもよく、前記装置10の近位部分および遠位部分12、14間にネジ式接続機構36を必要としない。同様に、装置50の別な実施態様は内室を形成する近位部分52および遠位部分54を備え、そしてさらに前記実施態様と同様に壁部56、58、オリフィス60、吸引口62およびリング64を少なくとも備える。ハウジングの一体構造以外に、装置50は前記実施態様などと同じである。さらに、この一体型装置50は使い捨て式である。
【0103】
すべての実施態様において、(図示を省略した)キャップを使用して、施術の前後で近位開口および/または遠位吸引口をシールすることができる。さらに、バイオハザード廃棄物として廃棄できる素材を使用して装置10、50を構成することができる。
【0104】
本発明装置を使用して患者から乳房インプラント(I)を脱着する方法は、乳房インプラントを露出する工程、装置のオリフィスを乳房インプラントに接触配置する工程、および装置に吸引作用を加えて、乳房インプラントをオリフィスから引き出す工程を備える。この方法について、前記装置10の一実施態様を参照して以下説明する。
【0105】
装置10は殺菌状態で用意する。ネジ式接続機構36を使用して、装置10の2つの部分12、14を組み立て、装置10を使用できる状態にする。乳房インプラントの設定位置に応じて、外科的には、自然に少なくとも部分的に乳房インプラント(I)の周囲に形成するカプセル(C)を切開によって、乳房インプラントの位置に応じて皮膚(S)、乳房組織(T)および筋肉に露出する。部分的被膜切除術/部分的関節包切除術、あるいは完全被膜切除術/完全関節包切除術が完了したならば、乳房インプラント(I)の摘除前後において所望の工程を実施することができる。
【0106】
前記摘除プロセスの一部として行う被膜切除術切開によってカプセル(C)内に切開部を形成し、これによって乳房インプラント(I)を直接露出する。被膜切除術切開部の大きさは、本発明方法においてリング26に十分に対応する大きさでなければならない。この大きさであれば、装置10が、乳房インプラント(I)の外周シェルが溶解するか、あるいは毀損した場合に必ず外周(S)および/または充填材を有することになる乳房インプラント(I)に直接接触する。換言すると、装置10のオリフィス24は乳房インプラントに対して接触位置にある
【0107】
前記方法では、患者の皮膚(D)の切開部およびカプセル(C)にリング挿入することによってリング26がオリフィスを形成し、乳房インプラント(I)に対して接触位置にある。別な方法では、カプセル(C)に孔を開けることなく、リング26を患者の皮膚(D)の切開部に挿入し、カプセルに接触する位置に設けてもよい。
【0108】
リング26を患者の皮膚(D)内の切開部およびカプセル(C)に挿入し、乳房インプラント(I)に接触させた状態では、リング26の外周唇状部30があるため、切開部内への装置10の保持が容易になり、開放位置に切開部の縁部を維持できる。換言すると、患者の皮膚(D)内の切開部が形成する縁部が外周唇状部32の周囲に延在し、乳房インプラント(I)の摘除時リング26の後ろに静置状態で収まる。同様に、カプセル(C)を切開した場合にも、カプセル切開部の縁部がリング26の後に静置状態で収まる。より詳しくは、切開部の縁部が全体として首部28に隣接するリング28の後ろにある凹部に静置状態で収まる。
【0109】
リング26の挿入およびオリフィス24の乳房インプラント(I)への接触に続いて、吸引口34に吸引源36を接続する。上述したように、吸引口34としては、前記実施態様における装置10の遠位部分14の遠位端部に位置するニップルコネクターまたは有刺コネクター34を使用することができる。前記実施態様では、配管38を利用して、吸引源36に吸引口34を接続しているが、ここでも同様に、吸引源36としては、装置10を備えた、あるいは手術室や、手術室のある建物の地下室に設けられる真空ポンプ36を使用することができる。他の実施態様では、シリンジや手動真空源を吸引源として使用することができる。換言すると、吸引源には当該装置を設けてもよく、あるいは既存の吸引源を利用し、これに当該装置を接続してもよい。
【0110】
接続後は、吸引源36を作動し、オリフィスを介して乳房インプラント(I)を吸引する十分な吸引作用をハウジングに加える。換言すると、吸引源36を作動し、配管38を介して装置10の内室から空気を吸引する。真空によって発生する陰圧がリング26か近位部分12内のオリフィス26を介してインプラント(I)を吸引し、装置10の内室にこれを引き込む。被摘除乳房インプラント(I)は摘除プロセス時、近位方向から遠位方向に移動することになる。
【0111】
外周シェル(S)および充填材(M)を備えたインプラント(I)が自然に備えている粘着性によって、漏出充填材またはゲルを始めとするインプラント全体がハウジングの内室に確実に吸引される。さらに、インプラント(I)の摘除前に、付着した周囲の軟質組織からカプセル(C)が十分に分離している場合には、一般的に、カプセル(C)に伴って乳房インプラント(I)が内室に吸引される。換言すると、ハウジングに作用する吸引力が十分なため、オリフィスを介して乳房インプラント(I)およびカプセル(C)を吸引することができる。なお、リング26の挿入に先立って、および/またはオリフィスの乳房インプラント(I)への接触に先立って、吸引口34に吸引源36を接続できる。同様に、吸引源36については、プロセス全体過程の任意の時点で作動開始することができる。
【0112】
装置10の内室に吸引保持されている乳房インプラント(I)を検査することが望まれる場合には、近位部分12および遠位部分14を分離し、装置を開き、乳房インプラントにアクセスすればよい。乳房インプラント(I)が損なわれていない場合には、装置内室から摘除し、さらに検査するか、および/または適当なバイオハザード廃棄容器48に廃棄すればよい。その後、装置10の2つの部分12、14を再び組み立て、同じ装置を使用して、必要な場合には対側乳房インプラントを脱着することができる。
【0113】
乳房インプラント(I)が毀損するか、あるいは実質的なゲルブリードが見られた場合には、乳房インプラントを内室から摘除しないことを勧める。摘除すると、手術野が粘稠なポリマー充填材(M)またはゲルに暴露されるからである。内室に乳房インプラント(I)をシールしておくことが望ましい場合には、むしろ、キャップをリング26および/または遠位吸引口34を装着したまたはしない状態で、乳房インプラント(I)および装置10をバイオハザード廃棄容器48に廃棄したほうがよい。本発明の新規な取り出し装置10は対側乳房インプラントの抽出に使用することができる。装置50の一体型実施態様を利用する場合には、一つの乳房インプラント(I)につき一つの摘除装置50を使用するのが好ましい。このアプローチでは、装置50の内室にある乳房インプラント(I)は検査などの目的で取り出してはならない。
【0114】
以上の説明は例示を目的とする。説明は徹底的であることや、実施態様を開示してきた正確な形態に限定することを意図していない。上記説明に照らして各種の自明な変更などを加えることが可能である。例えば、位置が固定され、ハウジングの近位部分から延在する一体形成リングについては、一体に形成しなくてもよい。リングやこのリングから延在する首部は、装置10の近位部分12に取り付けることが可能である。リングおよび首部については、取り外すことができるようにネジで固定することが可能である。このように構成すると、リングを近位部分12から首部の長さだけ目的に応じて延在させることが可能である。
【0115】
考えられる別な態様では、部分的被膜切除術/部分的関節包切除術や完全被膜切除術/完全関節包切除術切開が完了したならば、乳房インプラント(I)の摘除前後において目的の施術を実行することができる。さらに、前記装置の場合、体側インプラントの摘除に先立って最初に摘除したインプラントを摘除できるように、あるいは2つの装置を使用する必要がないように、2つの乳房インプラントに対応できるサイズに構成してもよい。このような変更例などはすべて、公正、法的に正しく、かつ衡平法上有効である範囲に従って解釈する場合には特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0116】
10 摘除装置
12 近位部分
14 遠位部分
16、18 中実壁
20、22 基端
24 オリフィス
26 リング
28 首部
30 内縁部
32 外周唇状部
34 吸引口
36 吸引源
38 配管
40 遠位端部
42 ネジ山
44 係合ネジ山
46 グリップ
48 廃棄容器
50 装置
52 近位部分
54 遠位部分
56、58 壁部
60 オリフィス
62 吸引口
64 リング
図1
図2
図3
図4
図5