(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】管渠ジョイント特定装置、管渠ジョイント特定方法および管渠ジョイント特定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240404BHJP
G01N 21/954 20060101ALI20240404BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20240404BHJP
【FI】
G06T7/00 610
G01N21/954 A
G06T7/11
(21)【出願番号】P 2021041890
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】394026714
【氏名又は名称】株式会社ジャスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】角田 賢明
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 勇樹
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-24746(JP,A)
【文献】特開2000-331168(JP,A)
【文献】特表2004-509321(JP,A)
【文献】特開2019-138755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/11
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得部と、
取得した前記内周面画像を前記内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成部と、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理部と、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成部と、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定部と、
を備え、
前記画像処理部は、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケール部と、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリング部と、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化部と、
をさらに有し、
前記統計処理画像生成部は、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部を有し、
前記ジョイント部分特定部は、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する、管渠ジョイント特定装置。
【請求項2】
前記展開平面画像は、前記内周面画像を前記管渠の底部部分から切り開いて展開して得られる底部展開平面画像である請求項1に記載の管渠ジョイント特定装置。
【請求項3】
前記管渠は、下水管である請求項1に記載の管渠ジョイント特定装置。
【請求項4】
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記内周面画像を前記内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成ステップと、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理ステップと、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成ステップと、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定ステップと、
を含み、
前記画像処理ステップにおいて、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケールステップと、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリングステップと、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化ステップと、
をさらに含み、
前記統計処理画像生成ステップにおいて、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップを含み、
前記ジョイント部分特定ステップにおいて、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する、管渠ジョイント特定方法。
【請求項5】
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記内周面画像を前記内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成ステップと、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理ステップと、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成ステップと、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記画像処理ステップにおいて、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケールステップと、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリングステップと、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化ステップと、
をさらにコンピュータに実行させ、
前記統計処理画像生成ステップにおいて、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップをコンピュータに実行させ、
前記ジョイント部分特定ステップにおいて、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する、管渠ジョイント特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管渠ジョイント特定装置、管渠ジョイント特定方法および管渠ジョイント特定プログラムに関し、特に、コンピュータに組み込まれた画像解析プログラムおよび人工知能による特定結果から管渠のジョイント部分を特定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ構造物の老朽化は加速度的に進んでおり,維持管理・更新の必要性は,今後さらに増大していくと言われている。労働人口が減り続ける中、維持管理・更新にかかる労務の効率化は喫緊の課題となっている。維持管理・更新にかかる労務の効率化の実現に向け、近年著しく性能が向上しているAIによる画像認識技術を適用する研究事例が増えている。深層学習と呼ばれる高度なニューラルネットワークを用いれば、従来では困難であった人間の直感に近い画像認識が実現でき損傷部位の目視点検の補助や代替が期待できる。
【0003】
一方、管渠などインフラ構造物の検査においては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の技術のように、調査対象の流路管内に投入する装置本体に、テレビカメラ等の撮影装置や蛍光灯等の照明装置を搭載し、撮影装置により撮影した管内画像をもとに損傷などの調査を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-346027号公報
【文献】特開平7-216972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、撮像した管内画像そのものを作業員が目で見て調査を行うものであり、見落としや見誤りが発生し易く、管渠のジョイント部分を精度高く特定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定装置は、
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得部と、
取得した前記内周面画像を前記第1内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成部と、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理部と、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成部と、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定部と、
を備え、
前記画像処理部は、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケール部と、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリング部と、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化部と、
をさらに有し、
前記統計処理画像生成部は、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部を有し、
前記ジョイント部分特定部は、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定方法は、
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記内周面画像を前記第1内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成ステップと、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理ステップと、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成ステップと、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定ステップと、
を含み、
前記画像処理ステップにおいて、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケールステップと、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリングステップと、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化ステップと、
をさらに含み、
前記統計処理画像生成ステップにおいて、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップを含み、
前記ジョイント部分特定ステップにおいて、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する。
【0008】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定プログラムは、
管渠の内周面を撮像した内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記内周面画像を前記内周面画像における前記管渠の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する展開平面画像生成ステップと、
生成した前記展開平面画像に画像処理を施す画像処理ステップと、
画像処理を施した前記展開平面画像を統計処理して、統計処理画像を生成する統計処理画像生成ステップと、
前記統計処理画像に基づいて、前記管渠のジョイント部分を特定するジョイント部分特定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記画像処理ステップにおいて、
生成した前記展開平面画像にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成するグレースケールステップと、
前記グレースケール画像にフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像を生成するフィルタリングステップと、
前記フィルタリング画像に2値化処理を施して、2値化画像を生成する2値化ステップと、
をさらにコンピュータに実行させ、
前記統計処理画像生成ステップにおいて、前記2値化画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップをコンピュータに実行させ、
前記ジョイント部分特定ステップにおいて、生成された前記ヒストグラムのピーク位置に基づいて、前記ジョイント部分を特定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管渠ジョイント特定装置によれば、管渠を撮像した画像に所定の画像処理および統計処理を施すので、管渠のジョイント部分を精度高く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置による処理の概要を説明するための図である。
【
図1B】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置による処理の概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置が有する画像処理テーブルの一例を説明するための図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態に係る管渠ジョイント特定装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明の好ましい実施形態としての管渠ジョイント特定装置100について、
図1A~
図5を参照して説明する。管渠ジョイント特定装置100は、画像処理を用いて管渠のジョイント部分を特定する装置である。
図1Aおよび
図1Bは、管渠ジョイント特定装置100による、管渠のジョイント部分の特定の概要について説明するための図である。
【0013】
ここで、管渠とは、水路の総称であり、給水、排水を目的として作られる水路全体を指す。例えば、上水管、下水管、給水管などが含まれる。本実施形態においては、管渠として下水管150を例に説明する。また、管渠の材質としては、コンクリート、陶器、鉄、塩化ビニルなどが含まれ、管渠の種類としては、コンクリート管、コンクリートヒューム管、陶管、鉄管、塩化ビニル管などが含まれる。
【0014】
また、ジョイント部分180は、下水管150の接続部分(継ぎ目部分)である。このような下水管150においては、複数の単位ユニット管を繋ぎ合わせて1つの下水管150の全長が構成される。単位ユニット管の管径(管の直径/内径)に対して単位ユニット管の長さは規格で決められているため、1つの下水管150において、ジョイント部分180は、等間隔で存在することとなる。
【0015】
なお、以下の説明では、管渠として下水管150を例に説明をする。下水管150の管径(内径)は、作業員が下水管150内に入って作業することが困難な程度の大きさであり、例えば、200mm~3000mmの下水管150であるが、下水管150の管径は、これには限定されない。
【0016】
下水管150の内部の検査においては、自走式検査ロボット140のカメラ142で撮像した下水管150の内周面の画像を用いた検査が行われている。ここで、下水管150の内周面画像は、下水管150の軸方向(中心軸151方向)に撮像した軸方向内周面画像110となっている。下水管150の軸方向は、下水管150の敷設方向に垂直な面における下水管150の円形断面の中心軸の方向、つまり、下水管150の敷設方向(走行方向)に沿った方向である。
【0017】
そして、作業員は、下水管150の外部に設置されたディスプレイなどを用いて、カメラ142で撮像した画像を確認し、下水管150のジョイント部分を確認する。制御部141は、自走式検査ロボット140の自走速度や撮影スケジュール、撮像条件を制御したり、管渠ジョイント特定装置100や作業員が所持するタブレット端末130との間の通信を制御したりする。作業員は、例えば、タブレット端末130にインストールされた操作用アプリケーションを用いて、自走式検査ロボット140を操作する。なお、自走式検査ロボット140が入れないような、管径の小さな下水管の場合、自走式検査ロボット140の代わりに、ファイバースコープなどの超小型検査装置を用いてもよい。
【0018】
そして、制御部141は、カメラ142で撮像した軸方向内周面画像110を、管渠ジョイント特定装置100に送信する。また、カメラ142は、通常のカメラ、広角カメラ、全周カメラのいずれであってもよい。広角カメラの場合、1周分の画像を複数回に分けて撮像し、撮像したい複数枚の画像を繋いで軸方向内周面画像110を生成してもよい。
【0019】
また、軸方向内周面画像110は、所定のピッチ(例えば、0.1m)ごとに決められた位置で下水管150に軸方向に撮像された画像である。例えば、下水管150の基準位置から規格で決められた下水管150の1ユニット分の長さごとに撮像した画像(軸方向内周面画像110)を輪切りにして、輪切り画像143を得て、これらを繋ぎ合わせることで軸方向内周面画像110を生成してもよい。
【0020】
そして、本実施形態においては、まず初めに、下水管150の内周面画像の撮像前に、自走式検査ロボット140の撮像部としてのカメラ142の中心軸と下水管150の中心軸151とが合致するように、自走式検査ロボット140を下水管150にセットすることが好ましい。そして、自走式検査ロボット140を走行させながら、検査対象範囲の下水管150の内周面を撮像する。撮像が完了したら、制御部141は、撮像した画像を管渠ジョイント特定装置100に送信する。
【0021】
管渠ジョイント特定装置100は、受信した軸方向内周面画像110に所定の画像処理を施すことにより、ジョイント部分を特定する。まず、管渠ジョイント特定装置100は、軸方向内周面画像110から展開平面画像101を生成する。
【0022】
そして、
図1Bに示したように、管渠ジョイント特定装置100は、展開平面画像101に対してグレースケール処理と所定のフィルタリング処理を施して、フィルタリング画像102を得る。次に、管渠ジョイント特定装置100は、フィルタリング画像102に2値化処理を施して、2値化画像103を生成する。その後、管渠ジョイント特定装置100は、2値化画像103のヒストグラム104を生成し、ヒストグラム104のピーク位置に基づいて、ジョイント部分180を特定する。
【0023】
次に、
図2を参照して本実施形態に係る管渠ジョイント特定装置100の構成について説明する。管渠ジョイント特定装置100は、画像取得部201、展開平面画像生成部202、画像処理部203、統計処理画像生成部204およびジョイント特定部205を有する。画像処理部203は、さらに、グレースケール部231、フィルタリング部232および2値化部233を有する。統計処理画像生成部204は、さらに、ヒストグラム生成部241を有する。
【0024】
画像取得部201は、下水管150の内周面を下水管150の軸方向に撮像した軸方向内周面画像110を取得する。画像取得部201は、自走式検査ロボット140のカメラ142で撮像した軸方向内周面画像110を制御部141から取得してもよいし、作業員が所持するタブレット端末130などを経由して軸方向内周面画像110を取得してもよい。ここで、軸方向内周面画像110は、下水管150の内周面を所定の間隔(ピッチ)ごとの決められた位置で下水管150の軸方向に撮像した連続画像であり、所定ピッチは、例えば、10cmであるが、これには限定されない。軸方向内周面画像110は、自走式検査ロボット140が10cm進むごとに撮像された画像である。
【0025】
展開平面画像生成部202は、取得した軸方向内周面画像110を軸方向内周面画像110における下水管150の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像を生成する。展開平面画像生成部202は、例えば、軸方向内周面画像110における下水管150の天井部分で切り開いて展開した展開平面画像101(天井展開平面画像)を生成する。
【0026】
つまり、展開平面画像生成部202は、まず、画像取得部201が取得した所定ピッチごとに撮像された軸方向内周面画像110から輪切りにされた帯状の画像である複数の輪切り画像143を生成する。そして、展開平面画像生成部202は、生成された輪切り画像143を、例えば、下水管150の天井部分で切り開いて展開して、天井展開画像を生成する。次に、展開平面画像生成部202は、生成した複数の天井展開画像を繋ぎ合わせて、横長の展開平面画像101(天井展開平面画像)を生成する。
【0027】
なお、展開平面画像生成部202は、展開平面画像101(天井展開平面画像)を生成した場合、展開平面画像101の中央部分、展開平面画像101の縦方向(幅方向)の中央の1/3をカットする。つまり、下水管150の天井部分で切り開いて展開して得られる天井展開平面画像においては、当該画像の真ん中には流水部が位置することとなる。この流水部は、ノイズが多く、後の画像処理等において、不利となることがあるので、この流水部を天井展開平面画像から予め取り除いておくことにより、後の画像処理を有利に進めることが可能となる。なお、画像を取り除く量は、1/3には限定されず、例えば、下水管150の管径に応じて決定してもよい。
【0028】
一方、展開平面画像生成部202において、展開平面画像101(天井展開平面画像)を生成した場合、上述のような処理を行わなければならず、全体の処理が遅れることが予想されるので、展開平面画像生成部202は、軸方向内周面画像110における下水管150の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像を生成する方が好ましい。
【0029】
画像処理部203は、生成した展開平面画像101(天井展開平面画像)に画像処理を施す。まず、グレースケール部231において、展開平面画像101にグレースケール処理を施してクレースケール画像を生成する。次に、フィルタリング部232において、グレースケール画像にフィルタリング処理を施す。フィルタリング部232は、例えば、Sobelフィルタを用いて、グレースケール画像をフィルタリング処理してフィルタリング画像102を生成する。
【0030】
ここで、Sobelフィルタは、1次微分フィルタといわれるものであり、左右の画素値の差分を取ることにより、エッジを強調するためのフィルタである。フィルタリング部232は、Sobelフィルタの他に例えば、Prewittフィルタを用いて、エッジを抽出して、この部分を強調するようにしてもよい。その後、2値化部233は、フィルタリング画像102に2値化処理を施して、2値化画像103を生成する。
【0031】
統計処理画像生成部204は、画像処理部203において、画像処理が施された展開平面画像101(2値化画像103)を統計処理して、統計処理画像を生成する。具体的には、ヒストグラム生成部241は、2値化画像103のヒストグラム104を生成する。
【0032】
ジョイント特定部205は、統計処理画像生成部204において統計処理された統計処理画像に基づいて、下水管150のジョイント部分180を特定する。具体的には、ジョイント特定部205は、生成されたヒストグラム104のピーク位置に基づいて、下水管150のジョイント部分180を特定する。つまり、ヒストグラム104において、ピークのある位置が、ジョイント部分180が存在する位置となる。
【0033】
図3は、管渠ジョイント特定装置100が有する画像処理テーブル301の一例を説明する図である。画像処理テーブル301は、画像ID(Identfier)311に関連付けて画像情報312を記憶する。画像ID311は、展開平面画像101のそれぞれを区別するための識別子である。画像情報312は、展開平面画像101のそれぞれが有する色情報や輝度などの情報である。そして、画像処理部203は、画像処理テーブル301を参照して、展開平面画像101の画像処理を行う。
【0034】
図4を参照して、管渠ジョイント特定装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2の管渠ジョイント特定装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0035】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。内周面画像データ441は、下水管150の軸方向に撮像した下水管150の内周面の画像である。展開平面画像データ442は、撮像された軸方向内周面画像110を下水管150の任意位置で切り開いて展開した2次元の平面画像データである。下水管データ443は、下水管150に関するデータであり、管径や全長などのデータを含み、展開平面画像101が不要な部分を取り除く際などに利用される。撮像条件データ444は、カメラ142で下水管150の内周面を撮像した際の条件であり、例えば、画像処理部203における画像処理において利用される。
【0036】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0037】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、画像処理テーブル301を格納する。画像処理テーブル301は、
図3に示した、画像ID311と画像情報312との関係を管理するテーブルである。
【0038】
ストレージ450は、さらに、画像取得モジュール451、展開平面画像生成モジュール452、画像処理モジュール453、統計処理画像生成モジュール454およびジョイント特定モジュール455を格納する。画像取得モジュール451は、軸方向内周面画像110を取得するモジュールである。展開平面画像生成モジュール452は、取得した軸方向内周面画像110を下水管150の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像101を生成するモジュールである。画像処理モジュール453は、生成した展開平面画像101に対して画像処理を施すモジュールである。画像処理モジュール453は、さらに、グレースケールモジュール、フィルタリングモジュールおよび2値化モジュールを有する。グレースケールモジュールは、展開平面画像101にグレースケール処理を施すモジュールである。フィルタリングモジュールは、グレースケール画像に対してSobelフィルタ処理を施して、フィルタリング画像102を生成するモジュールである。2値化モジュールは、フィルタリング画像102に2値化処理を施して、2値化画像103を生成するモジュールである。統計処理画像生成モジュール455は、2値化画像103を統計処理して統計処理画像を生成するモジュールである。統計処理画像生成モジュール455は、さらに、ヒストグラム生成モジュールを有する。ヒストグラム生成モジュールは、2値化画像103のヒストグラムを生成するモジュールである。これらのモジュール451~455は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム456は、管渠ジョイント特定装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0039】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、管渠ジョイント特定装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0040】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、管渠ジョイント特定装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2の管渠ジョイント特定装置100の各機能構成を実現する。
【0041】
ステップS501において、画像取得部201は、下水管150の内周面を撮像した軸方向内周面画像110を取得する。ステップS503において、展開平面画像生成部202は、取得した軸方向内周面画像110を軸方向内周面画像110における下水管150の任意位置で切り開いて展開して得られる展開平面画像101を生成する。ステップS505において、展開平面画像生成部202は、生成した展開平面画像が、下水管150の天井部分で切り開いて展開して得られる天井展開平面画像である場合、天井展開平面画像の中央部分を取り除く。なお、生成した展開平面画像が下水管150の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像である場合、このステップはスキップするか、あるいは、底部展開平面画像の上端部分および下端部分を取り除いてもよい。
【0042】
ステップS507において、画像処理部203のグレースケール部231は、展開平面画像101にグレースケール処理を施して、グレースケール画像を生成する。ステップS509において、フィルタリング部232は、グレースケール画像にSobelフィルタ処理を施してフィルタリング画像102を生成する。ステップS511において、2値化部233は、フィルタリング画像102に2値化処理を施して2値化画像103を生成する。ステップS513において、ヒストグラム生成部241は、生成した2値化画像103のヒストグラム104を生成する。ステップS515において、ジョイント特定部205は、生成されたヒストグラム104のピーク位置に基づいて、ジョイント部分180を特定する。
【0043】
本実施形態によれば、画像処理と統計処理とを組み合わせて画像処理するので、精度高く、効率的に管渠のジョイント部分を特定できる。
【0044】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0045】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。