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特許7465839車両管理方法、車両管理システム、及び車両管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両管理方法、車両管理システム、及び車両管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240404BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240404BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021043698
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143270
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】古市 光洋
(72)【発明者】
【氏名】今井 友揮
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059779(JP,A)
【文献】特開2018-136877(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132947(WO,A1)
【文献】特開2003-178153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間算出部により、作業車両が圃場で作業を行った実稼働時間と、前記圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出することと、
メンテナンス時期算出部により、前記仮想稼働時間に基づき、前記作業車両に含まれる部品のメンテナンス時期を算出することと、
前記メンテナンス時期算出部により、前記メンテナンス時期を表す情報を出力することと、
を含み、
前記仮想稼働時間を算出することは、
前記降水量と、前記実稼働時間とに基づき、雨により影響を受けた前記圃場で行われた作業により前記作業車両に与えられた負荷量を表す降水稼働時間を算出することと、
前記降水稼働時間に基づき、雨による前記圃場への影響が残っている状態で作業を行う程度を表す降水係数を算出することと、
前記降水係数と、前記実稼働時間とに基づき、前記仮想稼働時間を算出することと、
を含む車両管理方法。
【請求項2】
前記降水量は、前記圃場における作業を行った作業日直近の第1期間における直近降水量を表し、
前記降水稼働時間を算出することは、
前記直近降水量と、前記実稼働時間とに基づき、雨により影響を受けた前記圃場で行われた作業により前記作業車両に与えられた負荷量を表す前記降水稼働時間を算出するこ
含む請求項に記載の車両管理方法。
【請求項3】
前記仮想稼働時間を算出することは、
前記直近降水量に基づき、前記作業日において、雨により圃場が影響を受けた程度を表す圃場状態係数を算出することと、
前記実稼働時間と、前記圃場状態係数とに基づき、前記降水稼働時間を算出することと、
を含む請求項に記載の車両管理方法。
【請求項4】
前記圃場状態係数を算出することは、
前記直近降水量を表す指標に、前記作業日と前記直近降水量に対応する時期との差により決定される重み係数とを乗算した値を用いて前記圃場状態係数を算出すること
を含む請求項に記載の車両管理方法。
【請求項5】
前記降水係数を算出することは、
前記降水稼働時間と、前記実稼働時間とに基づき、単位時間当たりの降水稼働時間を算出することと、
複数の前記作業車両に対応する前記単位時間当たりの降水稼働時間の分布に基づき、前記降水係数を算出することと、
を含む請求項2から4のいずれか1項に記載の車両管理方法。
【請求項6】
前記降水係数を算出することは、
複数の閾値のうち、前記単位時間当たりの降水稼働時間を間に挟む隣接する2つの閾値を特定して、特定した前記2つの閾値に基づき、前記降水係数を決定すること
を含み、
前記複数の閾値は、前記単位時間当たりの降水稼働時間の分布に基づき決定される
請求項に記載の車両管理方法。
【請求項7】
作業車両が圃場で作業を行った実稼働時間と、前記圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出する時間算出部と、
前記仮想稼働時間に基づき、前記作業車両に含まれる部品のメンテナンス時期を算出し、算出された前記メンテナンス時期を表す情報を出力するメンテナンス時期算出部と、
を備え
前記時間算出部は、
前記降水量と、前記実稼働時間とに基づき、雨により影響を受けた前記圃場で行われた作業により前記作業車両に与えられた負荷量を表す降水稼働時間を算出し、
前記降水稼働時間に基づき、雨による前記圃場への影響が残っている状態で作業を行う程度を表す降水係数を算出し、
前記降水係数と、前記実稼働時間とに基づき、前記仮想稼働時間を算出する
車両管理システム。
【請求項8】
作業車両が圃場で作業を行った実稼働時間と、前記圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出することと、
前記仮想稼働時間に基づき、前記作業車両に含まれる部品のメンテナンス時期を算出することと、
前記メンテナンス時期を表す情報を出力することと、
を演算装置に実行させ
前記仮想稼働時間を算出することは、
前記降水量と、前記実稼働時間とに基づき、雨により影響を受けた前記圃場で行われた作業により前記作業車両に与えられた負荷量を表す降水稼働時間を算出することと、
前記降水稼働時間に基づき、雨による前記圃場への影響が残っている状態で作業を行う程度を表す降水係数を算出することと、
前記降水係数と、前記実稼働時間とに基づき、前記仮想稼働時間を算出することと、
を含む車両管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理方法、車両管理システム、及び車両管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場で作業を行う作業車両の部品をメンテナンスする時期は、作業車両の累積稼働時間に応じて行われる。
【0003】
特許文献1には、作業車両の累積稼働時間を算出し、算出された累積稼働時間に応じて、メンテナンスの要否を端末に報知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6148168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両の部品は、作業車両の稼働環境により、劣化の程度が異なる。しかし、特許文献1に記載の技術は、作業車両の稼働環境が考慮されておらず、作業車両の稼働時間に応じて部品のメンテナンス時期を通知している。
【0006】
上記の状況に鑑み、本開示は、作業車両の稼働環境に応じて、部品のメンテナンス時期を報知することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
上記目的を達成するための一実施の形態による車両管理方法は、作業車両(300)が圃場で作業を行った実稼働時間と、圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出することを含む。また、車両管理方法は、仮想稼働時間に基づき、作業車両(300)に含まれる部品のメンテナンス時期を算出することを含む。また、車両管理方法は、メンテナンス時期を表す情報を出力することを含む。
【0009】
上記目的を達成するための一実施の形態による車両管理システム(1000)は、時間算出部(160)と、メンテナンス時期算出部(170)とを備える。時間算出部(160)は、作業車両(300)が圃場で作業を行った実稼働時間と、圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出する。メンテナンス時期算出部(170)は、仮想稼働時間に基づき、作業車両(300)に含まれる部品のメンテナンス時期を算出する。また、メンテナンス時期算出部(170)は、算出されたメンテナンス時期を表す情報を出力する。
【0010】
上記目的を達成するための一実施の形態による車両管理プログラム(520)は、作業車両(300)が圃場で作業を行った実稼働時間と、圃場を含む地域の降水量とに基づき、仮想稼働時間を算出することを演算装置(120)に実行させる。また、車両管理プログラム(520)は、仮想稼働時間に基づき、作業車両(300)に含まれる部品のメンテナンス時期を算出することを演算装置(120)に実行させる。また、車両管理プログラム(520)は、メンテナンス時期を表す情報を出力することを演算装置(120)に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の形態によれば、作業車両の稼働環境に応じたメンテナンス時期を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態における車両管理システムの構成図である。
図2】一実施の形態における作業実績データの構成を表す図である。
図3】一実施の形態におけるメンテナンスデータの構成を表す図である。
図4】一実施の形態における降水係数データの構成を表す図である。
図5】一実施の形態におけるメンテナンス時期データの構成を表す図である。
図6】一実施の形態における車両管理システムが実行する機能ブロックを表す図である。
図7】一実施の形態における車両管理システムにより部品のメンテナンス時期を報知する処理を表すフローチャートである。
図8】一実施の形態における降水作業時間から降水係数を算出する処理を説明するための図である。
図9】一実施の形態における仮想稼働時間を算出する処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
本発明の本実施の形態による車両管理システム1000を、図面を参照して説明する。本実施の形態において、図1に示すように、車両管理システム1000は、車両管理装置100と、端末200と、複数の作業車両300とを備える。車両管理装置100は、ネットワーク20、例えばインターネットを介して、端末200と、複数の作業車両300と通信可能に接続されている。また、ネットワーク20は、気象情報装置400と通信可能に接続されている。
【0014】
車両管理装置100は、作業車両300が備える部品をメンテナンスすべきメンテナンス時期を算出して、端末200にメンテナンス時期を表す出力信号を出力する。端末200は、出力信号に基づき、メンテナンス時期をユーザ、例えば作業者、作業車両300のサービスマンなどに報知する。
【0015】
車両管理装置100は、メンテナンス時期を算出するときに、作業車両300が実際に稼働している実稼働時間に応じて算出される仮想稼働時間を利用する。仮想稼働時間は、作業車両300の稼働環境、例えば作業車両300が作業を行う圃場を含む地域の降水量に応じて、算出される。車両管理装置100が作業車両300の稼働環境に応じて算出される仮想稼働時間を用いることで、端末200は作業車両300の稼働環境に応じたメンテナンス時期をユーザに報知することができる。
【0016】
なお、圃場を含む降水量を表す気象情報は、気象情報装置400から出力される。車両管理装置100は、気象情報装置400から出力される気象情報を取得する。気象情報は、作業車両300が圃場で作業を行った作業日から第1期間だけ前までの気象情報、例えば第1期間が3日であるとき、作業日の前日と、2日前と、3日前との気象情報を含む。
【0017】
(車両管理システムの構成)
車両管理システム1000の構成を説明する。作業車両300は、圃場で作業を行っているときの作業車両300の状態を表す稼働情報を取得し、取得された稼働情報を車両管理システム1000に送信する。例えば、作業車両300は、測位装置、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機を備え、各時刻の位置を表す位置情報を取得する。また、作業車両300は、稼働時間、例えばエンジンが起動してから停止するまでの時間を測定する。位置情報と、稼働時間を表す時間情報とは、稼働情報に含まれ、車両管理システム1000に送信される。
【0018】
また、稼働情報は、作業車両300の速度、操舵角、エンジン回転数、各種クラッチのON/OFF状況、作業期間などを表す情報を含んでもよい。作業車両300が作業機械を牽引する車両、例えばトラクターであるとき、稼働情報には、作業機械に動力を伝達するときのPTO(power take-off)回転数、作業機械の姿勢を示すヒッチ高さやリフトアーム角度などの情報が含まれてもよい。
【0019】
車両管理装置100は、入出力装置110と、演算装置120と、通信装置130と、記憶装置140とを備える。車両管理装置100は、例えば、コンピュータである。入出力装置110には、演算装置120が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置110は、演算装置120が処理を実行した結果を出力する。入出力装置110は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。入出力装置110は省略されてもよい。
【0020】
通信装置130は、ネットワーク20に電気的に接続され、ネットワーク20を介して各々の装置との通信を行う。通信装置130は、作業車両300から取得する稼働情報を演算装置120に転送する。また、演算装置120が生成した信号を端末200に転送する。さらに、通信装置130は、気象情報装置400から取得する気象情報を演算装置120に転送する。通信装置130は、例えば、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0021】
記憶装置140は、作業車両300に設けられた部品のメンテナンス時期を算出するための様々なデータ、例えば作業実績データ500と、メンテナンスデータ510と、車両管理プログラム520とを格納する。記憶装置140は、車両管理プログラム520を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。車両管理プログラム520は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体1に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0022】
作業実績データ500は、作業車両300の稼働状態を作業車両300ごとに表す。稼働状態は、例えば、図2に示すように、作業日と、作業圃場と、実稼働時間とを関連付けて表す。作業日は、対応する作業車両300が圃場で作業を行った日を表す。作業圃場は、対応する作業車両300が作業を行った圃場を表す。実稼働時間は、対応する作業日に対応する作業車両300が稼働した時間、例えばエンジンが起動してから停止するまでの時間を表す。
【0023】
図1に示すメンテナンスデータ510は、図3に示すように、降水係数データ511と、メンテナンス時期データ512とを備える。降水係数データ511は、例えば、図4に示すように、作業車両番号と、降水係数とを関連付けて表す。作業車両番号は、作業車両300を特定するための識別子を表す。降水係数は、雨による圃場への影響が残っている状態で作業を行う程度、例えば圃場がぬかるんでいる状態で作業を行う程度を表す。降水係数は、対応する作業車両300が作業を行う地域における降水量に基づき、算出される。
【0024】
メンテナンス時期データ512は、作業車両300の部品をメンテナンスする時期を表す。例えば、メンテナンス時期データ512は、図5に示すように、部品ごとのメンテナンス時期を記憶する。メンテナンス時期は、例えば部品をメンテナンスするときの仮想稼働時間を表す。図5において、「部品A」に表されたメンテナンス時期は、「部品A」に対応する仮想稼働時間が100時間、200時間、300時間であるときに「部品A」をメンテナンスすることを表す。「部品B」に表されたメンテナンス時期は、「部品B」に対応する仮想稼働時間が200時間、600時間、1000時間であるときに「部品B」をメンテナンスすることを表す。
【0025】
演算装置120は、車両管理プログラム520を記憶装置140から読み出し実行して、作業車両300に設けられた部品のメンテナンス時期を算出するための様々なデータ処理を行う。例えば、演算装置120は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)などを含む。
【0026】
演算装置120は、車両管理プログラム520を読み出し実行することで、図6に示すように、データ記憶部150と、時間算出部160と、メンテナンス時期算出部170とを実現する。データ記憶部150は、作業実績データ500と、メンテナンスデータ510とを記憶する。時間算出部160は、作業実績データ500と、メンテナンスデータ510と、気象情報とに基づき、仮想稼働時間を算出する。メンテナンス時期算出部170は、算出された仮想稼働時間に基づき、部品のメンテナンス時期を算出する。
【0027】
時間算出部160は、降水稼働時間算出部161と、降水係数算出部162と、仮想稼働時間算出部163とを備える。降水稼働時間算出部161は、作業実績データ500と、気象情報とに基づき、降水稼働時間を算出する。降水稼働時間は、作業車両300が作業を行った圃場の状態と、稼働時間とに応じて算出され、雨により影響を受けた圃場で行われた作業の作業車両300に与えられた負荷量を表す。降水係数算出部162は、降水稼働時間に基づき、降水係数を算出する。仮想稼働時間算出部163は、降水係数と、作業実績データ500とに基づき、仮想稼働時間を算出する。
【0028】
端末200は、図1に示すように、入出力装置210と、演算装置220と、通信装置230と、記憶装置240とを備える。端末200は、例えば、コンピュータ、タブレット、携帯電話などを含む。入出力装置210には、演算装置220が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置210は、演算装置220が処理を実行した結果を出力する。入出力装置210は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。
【0029】
通信装置230は、ネットワーク20に電気的に接続され、ネットワーク20を介して各々の装置との通信を行う。通信装置230は、車両管理装置100から取得する信号を演算装置220に転送する。また、演算装置220が生成した信号を車両管理装置100に転送する。通信装置230は、例えば、無線LAN(Local Area Network)やセルラーネットワークなどの無線通信に用いられる送受信機、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0030】
記憶装置240は、作業車両300に設けられた部品のメンテナンス時期をユーザに報知するための様々なデータ、例えば報知プログラム530を格納する。記憶装置240は、報知プログラム530を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。報知プログラム530は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体2に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。報知プログラム530は、記憶媒体1に記録されて提供されてもよい。
【0031】
演算装置220は、報知プログラム530を読み出し実行することで、図6に示すように、入出力装置210と協働して、報知部250を実現する。報知部250は、車両管理装置100からメンテナンス時期を表す情報を取得して、ユーザにメンテナンス時期を報知する。例えば、車両管理装置100が電子メールを用いてメンテナンス時期を報知するとき、報知部250は電子メールを閲覧するソフトウェアを含む。
【0032】
(車両管理システムの動作)
図1に示す作業車両300は、圃場での作業を行うと、稼働情報を車両管理装置100の演算装置120に送信する。例えば、作業車両300は、エンジンを停止したときに、エンジンを起動してから停止するまでの稼働情報を車両管理装置100の演算装置120に送信する。演算装置120は、作業車両300の稼働情報を受信すると、車両管理プログラム520を読み出し実行する。車両管理プログラム520を実行することで、演算装置120は、車両管理方法の一部である図7に示す処理を開始する。車両管理装置100の演算装置120は、端末200の演算装置220からメンテナンス時期を表す情報を要求する要求信号を受信したときに、車両管理プログラム520を読み出し実行してもよい。
【0033】
ステップS110において、演算装置120で実現されるデータ記憶部150は、作業車両300から取得した稼働情報を作業実績データ500として記憶する。データ記憶部150は、稼働情報に基づき、作業車両300の実稼働時間を算出する。例えば、データ記憶部150は、稼働情報からエンジンを起動した起動時刻と停止した停止時刻とを抽出し、抽出された起動時刻から停止時刻までの時間を実稼働時間として算出する。
【0034】
また、データ記憶部150は、稼働情報に基づき、作業車両300が作業を行った作業日を特定する。例えば、データ記憶部150は、稼働情報からエンジンを起動した起動時刻を抽出し、抽出された起動時刻に含まれる日付情報に基づき、作業日を特定する。
【0035】
さらに、データ記憶部150は、稼働情報から作業車両300の位置情報を抽出して、抽出された位置情報に基づき、作業車両300が作業を行った作業圃場を特定する。例えば、データ記憶部150は、作業車両300の位置情報に基づき、作業車両300が作業を行った位置を含む作業圃場を特定する。なお、この場合、作業圃場の領域は、データ記憶部150に予め記憶されている。
【0036】
さらに、データ記憶部150は、稼働情報を送信した作業車両300を特定する。例えば、データ記憶部150は、稼働情報から送信元の作業車両300を特定する。また、データ記憶部150は、稼働情報の送信元を表す情報から作業車両300を特定してもよい。
【0037】
算出された実稼働時間は、特定された作業日と、特定された作業車両300の識別子と関連付けて、作業実績データ500に記憶される。
【0038】
ステップS120において、降水稼働時間算出部161は、作業実績データ500と、気象情報とに基づき、降水稼働時間を算出する。降水稼働時間は、作業車両300が作業を行った作業日より前の降水量と、作業日における稼働時間とに基づき、算出される。降水稼働時間は、作業車両300が行った土壌の状態が悪いほど大きくなり、稼働時間が長いほど大きくなる。
【0039】
降水稼働時間は、作業車両300が作業を行った作業日直近の第1期間において、作業車両300が作業を行った作業圃場を含む地域における直近降水量と、作業車両300の稼働時間とに基づき、作業車両300ごとに算出される。最初に、降水稼働時間算出部161は、気象情報装置400から直近降水量を含む気象情報を取得する。例えば、降水稼働時間算出部161は、作業実績データ500から作業日と、作業圃場とを抽出する。降水稼働時間算出部161は、作業日直近の第1期間において、作業圃場を含む地域における直近降水量を表す気象情報を要求する気象要求信号を気象情報装置400に送信して、気象情報を取得する。
【0040】
次に、降水稼働時間算出部161は、作業日直近の第1期間における直近降水量に基づき、圃場状態係数を算出する。圃場状態係数は、作業日において、雨により圃場が影響を受けた程度、例えば圃場がぬかるんでいる程度を表す。作業日より前の直近降水量が多いとき、圃場状態係数は大きくなる。圃場状態係数は、例えば(1)式により算出される。
【数1】
ここで、Rは、作業日nにおける圃場状態係数を表し、rn-iは作業日nからi日前の降水量を表し、wは重み係数を表し、dは第1期間を表す。例えば、作業日直近の3日における降水量に基づき、圃場状態係数を算出するとき、dは「3」を表す。重み係数wは、作業日と対応する時期との差により決定され、差を表すiによらず同じ値でもよく、iが大きくなるほど小さな値でもよい。例えば、2日前の重み係数wが1日前の重み係数wの半分の値でもよい。また、wとwi+1との比率は同じでも、異なってもよい。重み係数wは、シミュレーションや、実際のデータに基づき設定される。
【0041】
例えば、降水稼働時間算出部161は、作業日よりも所定の期間だけ前の降水量に、対応する係数を乗算した値を算出する。降水稼働時間算出部161は、作業日から、作業日よりも第1期間だけ前までの期間において、算出された値の累計を圃場状態係数として算出する。
【0042】
次に、降水稼働時間算出部161は、算出された圃場状態係数と、作業実績データ500の実稼働時間に基づき、単位時間当たりの降水稼働時間を算出する。降水稼働時間算出部161は、例えば、式(2)により単位時間当たりの降水稼働時間を算出する。
【数2】
ここで、Tは単位時間当たりの降水稼働時間を表し、Rは作業日iの圃場状態係数を表し、tは作業日iの実稼働時間を表し、Dは作業車両300が作業を行った作業日の集合を表す。
【0043】
例えば、降水稼働時間算出部161は、作業日における実稼働時間に、作業日に応じた圃場状態係数を乗算することで作業日における降水稼働時間を算出する。所定の期間、例えば1年間に含まれる作業日における降水稼働時間の合計を算出することで、降水稼働時間算出部161は、所定の期間における降水稼働時間を算出する。降水稼働時間算出部161は、所定の期間における降水稼働時間を、所定の期間における実稼働時間で除算することで、単位時間当たりの降水稼働時間を算出する。
【0044】
図7に示すステップS130において、降水係数算出部162は、単位時間当たりの降水稼働時間に基づき、降水係数を算出する。降水係数は、単位時間当たりの降水稼働時間に応じて変化する値であり、例えば、単位時間当たりの降水稼働時間から数学的な計算処理により算出される。
【0045】
例えば、各作業車両300の単位時間当たりの降水稼働時間の分布は、正規分布に近似すると仮定される。このため、降水係数算出部162は、各作業車両300の単位時間当たりの降水稼働時間の分布を標準化して、平均が0、かつ、分散が1の分布に変換する。具体的には、降水係数算出部162は、各作業車両300の降水稼働時間を式(3)により標準降水稼働時間に変換する。
【数3】
ここで、Tsは標準化された降水稼働時間である標準降水稼働時間を表し、Tは降水稼働時間を表し、μは降水稼働時間の平均を表し、αは降水稼働時間の標準偏差を表す。
【0046】
なお、降水稼働時間の平均μと標準偏差αとは、算出された単位時間当たりの降水稼働時間のすべてを用いてもよく、一部を用いてもよい。例えば、降水係数算出部162は、算出された単位時間当たりの降水稼働時間のうち、除外条件を満たす降水稼働時間を除外して、平均μと標準偏差αを算出してもよい。例えば、除外条件は、実稼働時間が閾値以下である作業車両300の降水稼働時間であることを含む。この場合、実稼働時間が閾値以下である作業車両300の降水稼働時間を除外して、平均μと標準偏差αとが算出される。また、除外条件は、単位時間当たりの降水稼働時間が、所定の範囲に含まれることを含んでもよい。所定の範囲は、単位時間当たりの降水稼働時間が上位から所定の割合、例えば5%を表す。また、所定の範囲は、単位時間当たりの降水稼働時間が下位から所定の割合、例えば5%を表す。除外条件は、複数の条件を含み、複数の条件のうちいずれかを満たすことでもよい。
【0047】
次に、降水係数算出部162は、標準降水稼働時間に基づき、降水スコアを算出する。降水スコアは、図8に示すように、複数の閾値のうち、標準降水稼働時間を間に挟む隣接する2つの閾値を特定して、特定した2つの閾値により決定される。具体的には、標準降水稼働時間がZより小さいとき、降水スコアは「1」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「2」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「3」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「4」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「5」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「6」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「7」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「8」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZより小さいとき、降水スコアは「9」として算出される。標準降水稼働時間がZ以上かつZ10より小さいとき、降水スコアは「10」として算出される。標準降水稼働時間がZ10以上かつZ11より小さいとき、降水スコアは「11」として算出される。標準降水稼働時間がZ11以上であるとき、降水スコアは「12」として算出される。
【0048】
からZ11は、各降水スコアに割り当てられる標準降水稼働時間に割り当てられる作業車両300の数量に基づき、設定される。例えば、Zは、-1.65に設定され、降水スコアが「1」になる作業車両300の割合が5%になるように設定される。Zは、-1.04に設定され、降水スコアが「2」になる作業車両300の割合が10%になるように設定される。ZからZ11も、各降水スコアに含まれる作業車両300の割合が10%になるように設定される。例えば、Zは-0.68を表し、Zは-0.39を表し、Zは-0.13を表し、Zは0を表し、Zは0.13を表し、Zは0.39を表し、Zは0.68を表し、Z10は1.04を表し、Z11は1.65を表す。
【0049】
次に、降水係数算出部162は、算出された降水スコアに基づき、降水係数を算出する。例えば、降水係数算出部162は、降水スコアを正規化することで、降水係数を算出する。降水係数算出部162は、降水係数の最大値と、最小値とが所定の値となるように正規化してもよい。具体的には、降水係数算出部162は、式(4)により、降水係数を算出する。
【数4】
ここで、kは識別子がiである作業車両300の降水係数を表し、xは識別子がiである作業車両300の降水スコアを表し、xminは降水スコアの最小値を表し、xmaxは降水スコアの最大値を表す。Mは正規化した後の最大値を表し、mは正規化した後の最小値を表す。
【0050】
図7に示すステップS140において、仮想稼働時間算出部163は、算出された降水係数と、実稼働時間とに基づき、仮想稼働時間を算出する。仮想稼働時間は、図9に示すように、部品ごとに算出される。例えば、部品Aの仮想稼働時間は関数f(k、t)により算出され、部品Bの仮想稼働時間は関数f(k、t)により算出され、部品Cの仮想稼働時間は関数f(k、t)により算出される。部品Aに対応する関数f(k、T)は、部品Bに対応する関数f(k、t)と同じでも、異なっていてもよい。ここで、tは、対応する作業車両300の実稼働時間を表し、作業日iの実稼働時間tの集合でも、累計実稼働時間でもよい。なお、部品jに対応する関数f(k、t)は、任意の関数を表す。
【0051】
図7に示すステップS150において、メンテナンス時期算出部170は、仮想稼働時間と、メンテナンス時期データ512に基づき、メンテナンス時期を算出する。メンテナンス時期算出部170は、各部品に対して、仮想稼働時間と、図5に示すメンテナンス時期データ512に記憶されたメンテナンス時期とを比較する。仮想稼働時間が対応する部品のメンテナンス時期に表された時間に達しているとき、メンテナンス時期算出部170は、対応する部品のメンテナンス時期を表す報知信号を出力する。メンテナンス時期算出部170は、仮想稼働時間がメンテナンス時期に表された時間から所定の時間を減算した時間に達しているとき、報知信号を出力してもよい。報知信号は、対応する部品をメンテナンスすることを表す。報知信号は、1つ以上の部品に関する仮想稼働時間を表してもよい。
【0052】
図7に示すステップS160において、端末200の演算装置220は、車両管理装置100から報知信号を受信すると、報知プログラム530を読み出し、報知部250を実行する。報知部250は、報知信号に基づき、メンテナンス時期を表す情報をユーザに報知する。例えば、報知部250は、報知信号からメンテナンスを行うべき部品の情報と、メンテナンス時期とを抽出し、メンテナンスを行うべき部品と、メンテナンス時期とを入出力装置210に出力する。報知部250は、仮想稼働時間と、メンテナンス時期とを入出力装置210に出力してもよい。
【0053】
このように、車両管理システム1000は、作業車両300の稼働環境に応じて算出された仮想稼働時間を用いることで、稼働環境に応じたメンテナンス時期をユーザに報知する。
【0054】
(変形例)
実施の形態において説明した構成は一例であり、機能を阻害しない範囲で構成を変更することができる。例えば、作業実績データ500に表される稼働時間は、降水係数を算出できる単位の稼働時間を取得できればよく、任意の単位で表してもよい。例えば、稼働時間は、日単位よりも短い単位、例えば12時間単位で表されてもよい。例えば、稼働時間は、午前と午後とに分かれて表されてもよい。この場合、降水量も午前と午後の単位で取得してもよい。
【0055】
作業車両300が作業を行った作業圃場を含む地域は、任意の方法で特定してもよい。例えば、車両管理装置100の記憶装置140は、作業車両300の識別子に関連付けて、作業圃場または地域を記憶してもよい。この場合、データ記憶部150は、稼働情報の送信元の作業車両300に基づき、作業車両300が作業を行った作業圃場または地域を特定する。また、データ記憶部150は、稼働情報に含まれる作業車両300の位置情報から作業車両300が作業を行った地域を直接特定してもよい。
【0056】
降水係数は、雨による圃場への影響が残っている状態で作業を行う程度を表すことができれば、任意の方法で算出されてもよい。例えば、降水係数は、作業車両300が作業を行った地域の年間降水量に基づき、算出されてもよい。例えば、降水係数算出部162は、降水稼働時間を用いずに、年間降水量から降水係数を算出してもよい。
【0057】
降水稼働時間は、雨により影響を受けた圃場で行われた作業により作業車両300に与えられた負荷量を表すことができれば、任意の方法で算出されてもよい。例えば、降水稼働時間算出部161は、ステップS120において、年間降水量と、作業車両300の実稼働時間とを乗算することで、降水稼働時間を算出してもよい。この場合、降水係数算出部162は、年間降水量を用いて算出された降水稼働時間を用いて、降水係数を算出する。
【0058】
圃場状態係数は、雨により影響を受けた圃場の状態を表せれば、任意の方法で算出されてもよい。例えば、降水稼働時間算出部161は、作業日を含めて圃場状態係数を算出してもよい。この場合、降水稼働時間算出部161は、式(1)で得られる圃場状態係数に、作業日の降水量に係数を乗算した値を加算して圃場状態係数を算出する。
【0059】
また、降水稼働時間算出部161は、第1期間において、日単位の降水量を用いて圃場状態係数を算出したが、任意の単位の降水量を用いて圃場状態係数を算出してもよい。例えば、圃場状態係数は、1時間単位の降水量を用いて算出されてもよい。
【0060】
また、降水稼働時間算出部161は、降水量を表す指標を用いて、圃場状態係数を算出してもよい。ここで、指標は、降水量をそのまま表してもよく、降水量に基づき算出される値でもよい。例えば、指標は、複数の閾値を用いて、降水量を変換した値を表してもよい。この場合、降水稼働時間算出部161は、複数の閾値のうち、降水量を間に挟む隣接する2つの閾値を特定して、特定した2つの閾値により指標を決定する。例えば、降水量が第1閾値未満であるとき、指標は「1」を表し、降水量が第1閾値以上、かつ、第2閾値未満のとき、指標は「2」を表す。降水量が第2閾値以上のとき、指標は「3」を表す。降水稼働時間算出部161は、式(1)において降水量を表したrn-1に指標を代入して、圃場状態係数を算出する。
【0061】
以上において説明した実施の形態および変形例は一例であり、各実施の形態および変形例で説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよく、または/および、任意に組み合わせてもよい。さらに、必要となる機能を実現できれば、実施の形態および変形例で説明した一部の機能を省略してもよい。例えば、図1に示す車両管理システム1000に端末200と作業車両300とが含まれなくてもよい。また、車両管理装置100の処理は、すべてまたは一部が作業車両300または端末200で実行されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、2 :記憶媒体
20 :ネットワーク
100 :車両管理装置
110 :入出力装置
120 :演算装置
130 :通信装置
140 :記憶装置
150 :データ記憶部
160 :時間算出部
161 :降水稼働時間算出部
162 :降水係数算出部
163 :仮想稼働時間算出部
170 :メンテナンス時期算出部
200 :端末
210 :入出力装置
220 :演算装置
230 :通信装置
240 :記憶装置
250 :報知部
300 :作業車両
400 :気象情報装置
500 :作業実績データ
510 :メンテナンスデータ
511 :降水係数データ
512 :メンテナンス時期データ
520 :車両管理プログラム
530 :報知プログラム
1000 :車両管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9