(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240404BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2021068913
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132394(JP,A)
【文献】特開2019-60479(JP,A)
【文献】特開2016-164435(JP,A)
【文献】特開2019-218996(JP,A)
【文献】中国実用新案第211599545(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/11,1/00-1/54
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁体と、該弁体を進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、前記駆動軸を軸線方向に移動自在に支持する支持部材と、を備えた電動弁であって、
前記弁体は、前記弁ポートに接近または離間する弁部と、前記駆動部の前記駆動軸と前記弁部とを接続する弁体本体部と、を有し、
前記支持部材は、前記弁本体に固定される固定部と、前記駆動軸を支持する軸支持部と、前記固定部よりも前記弁ポート側に延びて設けられて前記弁体を案内する弁体案内部と、を有し、樹脂製の前記弁体案内部の内側には、金属製の案内部材がインサート成形により一体に設けられ、該案内部材によって前記弁体本体部が軸線方向に案内されることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記案内部材は、円筒状に形成され、その内周面によって前記弁体本体部が案内されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記案内部材の外周には、径方向に凹んだ凹部または径方向に突出した凸部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記凹部または前記凸部は、周方向に連続して形成されるとともに、軸線方向に一または複数設けられていることを特徴とする請求
項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記案内部材は、前記弁体本体部よりも柔らかい材質の金属により構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁ポートを有する弁本体と、弁ポートの開度を変更する弁体と、弁体を進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、弁体を軸線方向に案内する案内部として、弁本体の内部に固定された案内部材(弁体案内部30a)を有するもの(特許文献1参照)や、支持部材(メネジ)の下部を弁座方向に延長した円筒部(主弁ガイド部13a)を有するもの(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-164435号公報
【文献】特開2019-132394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電動弁では、案内部材を別途準備し、弁本体内部に固定しなければならないため、組み立て工数が増加するとともに、案内部材の固定精度に左右されることで弁体の案内精度を高めることが難しい。特許文献2に記載の電動弁では、樹脂製の支持部材によって円筒部が構成されているため、樹脂成形加工時の収縮によるひずみ(ヒケ)が生じる等、樹脂の成形精度に左右されることで弁体の案内精度を高めることが難しい。このように、弁体の案内精度を高めにくいため、弁体が振れるなどして弁体の作動性が悪化するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、案内部による弁体の案内精度を高め、弁体の作動性を向上させることができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁室及び弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁体と、該弁体を進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、前記駆動軸を軸線方向に移動自在に支持する支持部材と、を備えた電動弁であって、前記弁体は、前記弁ポートに接近または離間する弁部と、前記駆動部の前記駆動軸と前記弁部とを接続する弁体本体部と、を有し、前記支持部材は、前記弁本体に固定される固定部と、前記駆動軸を支持する軸支持部と、前記固定部よりも前記弁ポート側に延びて設けられて前記弁体を案内する弁体案内部と、を有し、樹脂製の前記弁体案内部の内側には、金属製の案内部材がインサート成形により一体に設けられ、該案内部材によって前記弁体本体部が軸線方向に案内されることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、金属製の案内部材が支持部材に一体化されていることで、案内部材を別途準備し組み立てる工数を削減することができるとともに、案内部材の位置精度や寸法精度を高めることができる。これにより、弁体案内部の固定精度や成形精度に弁体の案内精度が左右されにくくなり、案内精度を高め、弁体の作動性を向上させることができる。
【0008】
この際、前記案内部材は、円筒状に形成され、その内周面によって前記弁体本体部が案内されることが好ましい。
【0009】
また、前記案内部材の外周には、径方向に凹んだ凹部または径方向に突出した凸部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、インサート成形の際に凹部または凸部と支持部材とが接するようにすることで、凹部または凸部が設けられていない場合に比べて案内部材と支持部材との接触面積を増大させることができる。これにより、案内部材と支持部材との一体化を安定して行うことができる。また、案内部材または支持部材に軸線方向の力が加わった場合、凹部または凸部がいわゆる抜け止めとして機能し、案内部材および支持部材の一方が他方に対して軸線方向に脱離するのを防止することができる。
【0010】
また、前記凹部または前記凸部は、周方向に連続して形成されるとともに、軸線方向に一または複数設けられていることが好ましい。この構成によれば、凹部または凸部が周方向に連続して形成されていない場合や、軸線方向に複数設けられていない場合と比較して、より一層、案内部材と支持部材との一体化を安定して行えるとともに、案内部材および支持部材の一方が他方に対して軸線方向に脱離するのを防止することができる。
【0011】
また、前記案内部材は、前記弁体本体部よりも柔らかい材質の金属により構成されていることが好ましい。このような構成によれば、案内部材が弁体本体部よりも柔らかい材質の金属により構成されていることで、同等またはそれ以上硬い材質の金属で構成した場合と比べて、案内部材に対する弁体本体部の摺動性を向上させることができる。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような冷凍サイクルシステムによれば、前述の電動弁による効果と同様に、電動弁を組み立てる工数を削減するとともに、案内部材の位置精度や寸法精度を高めることができ、案内部による弁体の案内精度を高め、弁体の作動性を向上させることができる。したがって、より円滑に冷凍サイクルシステムを稼働することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、案内部による弁体の案内精度を高め、弁体の作動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の電動弁における全閉状態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の第1変形例における前記案内部材の側面図である。
【
図5】本発明の第2変形例における前記案内部材の側面図である。
【
図6】本発明の冷凍サイクルシステムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る電動弁を
図1~3に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態の電動弁10は、弁ハウジング1と、支持部材2と、弁体3と、駆動部4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1、2の図面における上下に対応する。
【0016】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1aを有し、この弁本体1aは、ステンレス製であり、その内部に円筒状の弁室1Aが形成されている。弁本体1aには、側面側から弁室1Aに連通して冷媒が流入される一次継手管11が取り付けられ、底面側から弁室1Aに連通して冷媒が流出される二次継手管12が取り付けられている。さらに、弁本体1aには、弁室1Aと二次継手管12とを連通する位置に弁座1bが形成されている。この弁座1bは、二次継手管12の弁室1A側の端部から上方に向けて弁本体1aの軸線L側に傾きながら立ち上がっている。また、弁座1bから二次継手管12側にかけて、弁ポート1cが形成されている。上述の弁座1bの形状により、弁ポート1cは、断面形状が逆テーパ形状に形成されている。弁本体1aの上部開口には、ケース13と、支持部材2と、が固定されている。ケース13は、内部に後述するマグネットロータ41を収容するロータ収容室13Aを有する部材であり、溶接等によって弁本体1aに固定されている。弁本体1aおよびケース13によって、弁ハウジング1内には気密な空間が形成されている。
【0017】
支持部材2は、
図2にも示すように、後述する駆動軸42を軸線L方向に移動自在に支持する部材であり、全体略円筒状に形成された樹脂部20を有している。樹脂部20を構成する樹脂材料としては、適宜な硬度や耐熱性等を有した各種のエンジニアリングプラスチックが利用可能である。樹脂部20は、軸線L方向中央部が他の部分よりも大径に形成されており、その大径部分には、リング状に形成された金属製の固定部21がインサート成形により一体に設けられている。この固定部21は、外周縁部が弁本体1aの上部開口に溶接されるようになっている。
図2に示すように、樹脂部20は、固定部21よりも上方(弁ポート1cと反対側)に延びて駆動軸42を支持するホルダ部22と、ホルダ部22の下端部から固定部21よりも下方(弁ポート1c側)に延びる弁体案内部23と、を備えている。
【0018】
ホルダ部22の内周壁には、雌ねじ部(軸支持部)22aが形成されている。雌ねじ部22aは、軸線Lと同軸に形成され、後述する雄ねじ部42bと螺合することで、駆動軸42を、軸線L回りに回転自在かつ軸線L方向に移動自在に支持している。弁体案内部23は、ホルダ部22より大きく固定部21よりも小さな直径を有して形成されている。弁体案内部23の内部には、弁体3を収容する円柱状の収容空間23Aが形成されている。収容空間23Aは、ホルダ部22の内部と連通しており、当該ホルダ部22の内径よりも大きな直径を有している。弁体案内部23の側壁には、収容空間23Aとロータ収容室13Aとを連通する第1均圧孔23aが形成されている。弁体案内部23の下部内周壁には、案内部材24が設けられている。
【0019】
案内部材24は、弁体案内部23の内側に配置される円筒状部材であり、インサート成形により弁体案内部23と一体に設けられている。この案内部材24は、後述する弁体本体部31を軸線L方向に案内する案内部として機能する部材であり、弁体本体部31よりも柔らかい材質の金属(例えば真鍮)などで構成されている。案内部材24の内径は、弁体案内部23の内径と同じ大きさに形成されており、弁体案内部23の内周面と、案内部材24の内周面とが、軸線L方向に段差なく連続するようになっている。案内部材24の下端部は、弁体案内部23の下端部よりも下方(弁ポート1c側)に突出して形成されている。
図3に示すように、案内部材24上部の外周面には、径方向に凹んだ台形溝状の凹部24aが周方向に連続して形成されている。この凹部24aには、インサート成形の際に弁体案内部23を構成する樹脂が流れ込むようになっている。これにより、凹部24a付近では、弁体案内部23を構成する樹脂と案内部材24を構成する金属とが軸線L方向に並ぶことになるので、凹部24aはいわゆる抜け止めとして機能し、特に、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止している。ここで、凹部24aの形状は上述のように径方向に凹んだ台形溝状となっているが、この凹部24aの形状は径方向に凹んだ四角溝状でもよい。この場合も、凹部24aの形状を台形溝状とした場合と同様の作用、効果を奏することができる。
【0020】
弁体3は、弁ポート1cの開度を変更する弁部30と、弁部30と駆動部4の駆動軸42とを接続する筒状の弁体本体部31と、を備えて構成され、収容空間23A内に配置されている。弁部30は、弁ポート1cと接近または離間する部分であり、弁体3の下端部に、弁ポート1cと対向するように設けられている。弁部30は、下方に向かうにつれて小径となるよう、断面略テーパ形状に形成されている。弁体本体部31は、略円筒状に形成されたステンレス製部材であって、弁部30の上端部から上方に向けて軸線L方向に延びている。弁体本体部31の側壁には、当該弁体本体部31の内部と、弁室1Aとを連通する第2均圧孔31aが形成されている。弁体本体部31の上端部には、軸線L側に折れ曲がった接続部31bが形成されている。この接続部31bの中央部には、軸線L方向に貫通する接続孔31cが形成されている。
【0021】
弁体本体部31は、上部側の直径が案内部材24の内径よりもわずかに小さく形成され、下部側の直径が案内部材24の内径と略同じに形成されている。この構成により、収容空間23A内では、弁体本体部31の上部側と、弁体案内部23および案内部材24の内周壁との間に周方向の隙間が形成される一方、弁体本体部31の下部側が、案内部材24の内周面に摺接するようになっている。このため、弁体本体部31は、案内部材24によって軸線L方向に案内されるようになっている。
【0022】
駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ40と、ねじ送り機構43と、ステッピングモータ40の回転を規制するストッパ機構44と、を備えている。ステッピングモータ40は、外周部が多極に磁着されたマグネットロータ41と、ケース13の外周に配置された不図示のステータコイルと、マグネットロータ41に固定されて軸線L方向に延び弁体3を進退駆動する駆動軸42と、を備えている。ステッピングモータ40は、ステータコイルにパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ41が回転されるように構成されている。駆動軸42は、固定部材42aを介してマグネットロータ41に固定された長尺棒状の部材であり、ステンレス等の金属で形成されている。駆動軸42は、ホルダ部22の内部に挿通され、前記接続部31bに形成された接続孔31cを通って弁体本体部31の内部まで延びている。
【0023】
駆動軸42の中間部には、雄ねじ部42bが一体に形成され、この雄ねじ部42bが支持部材2の雌ねじ部22aと螺合し、これによってねじ送り機構43が構成されている。駆動部4のマグネットロータ41および駆動軸42が回転すると、雄ねじ部42bが雌ねじ部22aに案内され、ねじピッチに応じて軸線L方向にマグネットロータ41および駆動軸42が移動する。ここで、マグネットロータ41および駆動軸42は、その正回転に伴って下降するように構成されている。一方、マグネットロータ41および駆動軸42は、その逆回転に伴って上昇するように構成されている。
【0024】
駆動軸42の下端部には、接続孔31cの直径より大径のフランジ部42cが形成されている。フランジ部42cは、駆動軸42が弁体本体部31から軸線L方向に抜け出すのを防ぐいわゆる抜け止めとして機能している。そして、フランジ部42cの上面と、接続部31bの下面との間には、円環状のワッシャ5が配置されている。このように、ワッシャ5、接続部31bおよびフランジ部42cを介して駆動軸42と弁体本体部31が接続されるようになっており、弁体本体部31は、駆動軸42の軸線L方向への移動に伴って、軸線L方向に進退移動するように構成されている。なお、本実施形態では、駆動軸42の接続部31bに囲まれる部分は、接続孔31cの直径よりも小径に形成されており、弁体本体部31と駆動軸42とは周方向に隙間を空けて接続されている。また、ワッシャ5は、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂製ワッシャ、あるいは高滑性樹脂コーティングされたワッシャ等の高滑性のワッシャで構成されている。これにより、駆動軸42が正回転または逆回転をする際の回転力は、弁体本体部31に伝達されないようになっている。そして、ワッシャ5の下面と弁部30の上面との間には、弁体3を軸線Lの下方(弁閉方向)に付勢する弁ばね6が、ばね受け部6aを介して配設されている。これにより、弁体3は、弁閉方向に付勢されるようになっている。
【0025】
ストッパ機構44は、ホルダ部22の外周面に形成されるガイドねじ45と、ガイドねじ45の外周に螺合するコイル状の可動スライダ46と、を備えている。可動スライダ46は、径方向外側に突出する爪部46aを有して形成されており、この爪部46aは、マグネットロータ41と周方向に当接するようになっている。マグネットロータ41が回転すると、マグネットロータ41が爪部46aを押すことで、可動スライダ46がガイドねじ45に倣って回転かつ上下するように構成されている。ガイドねじ45には、マグネットロータ41の最上端位置を規定する上端ストッパ45aと、マグネットロータ41の最下端位置を規定する下端ストッパ45bと、が形成されている。マグネットロータ41の正回転に伴って下降した可動スライダ46が下端ストッパ45bに当接すると、この当接した位置で可動スライダ46の回転が不能となり、これによりマグネットロータ41の回転が規制され、弁体3の下降も停止される。一方、マグネットロータ41の逆回転に伴って上昇した可動スライダ46が上端ストッパ45aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ46が回転不能となり、これによりマグネットロータ41の回転が規制され、弁体3の上昇も停止される。本実施形態では、マグネットロータ41の下降が停止される位置は、弁座1bに弁部30が着座した後フランジ部42cがばね受け部6aをわずかに弁部30側に押し込んだ位置(弁ばね6の上端部がわずかに弁部30側に押し込まれた位置)になるように規定されている。一方、マグネットロータ41の上昇が停止される位置は、フランジ部42cが弁体3を弁ポート1cの最大弁開位置まで引き上げた位置になるように規定されている。
【0026】
以上の電動弁10は、以下のように動作する。まず、
図1の状態では、弁体3の弁部30が弁座1bに着座し、弁ポート1cが閉じられた閉弁状態である。この際、一次継手管11から弁室1Aに流入した冷媒は、二次継手管12からは流出しない。次に、駆動部4のステッピングモータ40を駆動してマグネットロータ41を逆回転させると駆動軸42が上昇し、これに伴って弁体3が引き上げられる。弁体3が上昇することで、弁部30の先端部が弁ポート1cの内側に位置するようになり、その隙間に弁ポート1cの流路(図示なし)が形成される。この際、一次継手管11から流入した冷媒は、流路を通って二次継手管12に流出することとなる。ここで、弁部30はテーパ形状に形成されていることから、上記隙間は徐々に大きくなり、これによって流路が拡大されるため、冷媒の流量は徐々に増加する。
【0027】
以上の本実施形態によれば、金属製の案内部材24が支持部材2に一体化されていることで、案内部材24を別途準備し組み立てる工数を削減することができるとともに、案内部材24の位置精度や寸法精度を高めることができる。これにより、弁体案内部23の固定精度や成形精度に弁体3の案内精度が左右されにくくなり、案内精度を高め、弁体3の作動性を向上させることができる。
【0028】
また、案内部材24の外周面には、径方向に凹んだ凹部24aが形成されており、この凹部24aには、インサート成形の際に弁体案内部23を構成する樹脂が流れ込むようになっている。このため、凹部24aが設けられていない場合に比べて案内部材24と支持部材2との接触面積が増大し、案内部材24と支持部材2との一体化を安定して行うことができる。また、案内部材24または支持部材2に軸線L方向の力が加わった場合、凹部24aがいわゆる抜け止めとして機能することで、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止することができる。
【0029】
また、凹部24aは、周方向に連続して形成されていることで、連続して形成されていない場合と比較して、より一層、案内部材24と支持部材2との一体化を安定して行えるとともに、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止することができる。
【0030】
また、弁体本体部31をステンレスで構成し、案内部材24をステンレスよりも柔らかい材質の金属である真鍮などで構成したことで、案内部材24を弁体本体部31と同等またはそれ以上硬い材質の金属で構成した場合と比べて、案内部材24に対する弁体本体部31の摺動性を向上させることができる。
【0031】
次に、
図6に基づいて、本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁10は、空気調和機の室外側熱交換器(凝縮器または蒸発器)91と室内側熱交換器(凝縮器または蒸発器)92との間に設けられる膨張弁であり、圧縮機93、四方弁94とともに、ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成している。室内側熱交換器92および電動弁10は室内に設置され、圧縮機93、四方弁94および室外側熱交換器91は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。このような冷凍サイクルシステム90によれば、本実施形態における電動弁10による効果と同様に、電動弁10を組み立てる工数を削減するとともに、案内部材24の位置精度や寸法精度を高めることができ、弁体3の案内精度を高め、弁体3の作動性を向上させることができる。したがって、より円滑に冷凍サイクルシステム90を稼働することができる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、案内部材24上部の外周面には、径方向に凹む凹部24aが周方向に連続して形成されているが、案内部材24の構成はこれに限られない。
図4は、案内部材24の第1変形例を示した図である。
図4(A)に示すように、案内部材24の外周面には、径方向に凹む四角溝状の凹部24bが周方向に断続的に設けられていてもよい。また、
図4(B)及び(C)に示すように、案内部材24の外周面には、径方向に突出した側面視四角状の凸部24cが周方向に連続して設けられていてもよいし、同様の凸部24dが周方向に断続的に設けられていてもよい。
【0033】
この構成によれば、本実施形態の案内部材24の作用効果と同様に、案内部材24と支持部材2との一体化を安定して行うことができる。また、案内部材24または支持部材2に軸線L方向の力が加わった場合、凹部24b、および凸部24c、24dがいわゆる抜け止めとして機能し、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止することができる。また、
図4(A)や
図4(C)のように、凹部24bや凸部24dが周方向に断続的に設けられていると、案内部材24が支持部材2に対して、周方向へ回転するのを防ぐ回転止めにもなる。また、前記実施形態の凹部24aや、第1変形例の凹部24bおよび凸部24c、24dは、軸線L方向に複数設けられていてもよい。この構成によれば、凹部24a、24bや凸部24c、24dが軸線L方向に複数設けられていない場合と比較して、より一層、案内部材24と支持部材2との一体化を安定して行えるとともに、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止することができる。さらに、凹部24a、24bの形状は台形溝状や四角溝状に限られないし、凸部24c、24dの形状は側面視四角状に限られない。例えば、側面視で湾曲したR状の形状等、支持部材2との接触面積が増大し、抜け止めとして機能する形状であれば、凹部24a、24bおよび凸部24c、24dの形状はどのような形状でもよい。
【0034】
図5は、案内部材24の第2変形例を示した図である。
図5(A)に示すように、案内部材24の外周面には、周方向および軸方向に連続する凹凸24eによる、いわゆるローレット加工が施されていてもよい。また、
図5(B)に示すように、案内部材24の外周面には、少なくとも1周以上のらせん溝24fが形成されていてもよい。さらに、
図5(C)に示すように、案内部材24の外周面には、径方向に凹むV溝24gが周方向に連続又は断続して、軸線L方向に少なくとも1以上設けられていてもよい。いずれの案内部材24も、本実施形態の案内部材24の作用効果と同様に、支持部材2との一体化を安定して行うことができる。また、案内部材24または支持部材2に軸線L方向の力が加わった場合、本実施形態の凹部24aに相当する部分24e、24f、24gがいわゆる抜け止めとして機能し、案内部材24および支持部材2の一方が他方に対して軸線L方向に脱離するのを防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態の凹部24aと、第1変形例、第2変形例における当該凹部24aに相当する部分24b、24c、24d、24e、24f、24gは、常に同じ大きさで形成する必要はなく、周方向または軸線L方向に違う大きさで形成してもよい。また、本実施形態、第1変形例、第2変形例をそれぞれ組合せて用いることも可能である。例えば、軸線L方向上側から凹部24a、24b、凸部24cが順に形成された案内部材24を構成することも可能である。
【0036】
また、案内部材24は、必ずしも弁体本体部31よりも柔らかい材質の金属で構成しなくてもよく、案内部材24を、弁体本体部31と同等またはそれ以上硬い材質の金属で構成してもよい。そして、弁体本体部31は、案内部材24の内周面と必ず摺接しなければならないわけではなく、弁体本体部31が案内部材24に案内されるのであれば、弁体本体部31と案内部材24との間に周方向の隙間があってもよい。また、前記実施形態、第1変形例および第2変形例では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0037】
また、前記実施形態では、ねじ送り機構43が駆動軸42の雄ねじ部42bと支持部材2の雌ねじ部22aとで構成されていたが、ねじ送り機構43の構成は前記実施形態のものに限らず、任意の構成が採用可能である。さらに、弁体3を進退駆動する機構としては、ねじ送り機構に限らず、適宜な機構が適用可能である。また、前記実施形態では、ストッパ機構44がホルダ部22の外周面に形成されるガイドねじ45と、ガイドねじ45に螺合する可動スライダ46と、上端ストッパ45aと、下端ストッパ45bと、で構成されていたが、ストッパ機構44としては、マグネットロータ41の回転を規制できるものであればよく、その配設位置や構造は特に限定されない。また、樹脂部20の外形や、ストッパ機構44の一部を構成するガイドねじ45などは、支持部材2をインサート成形する際に形成してもよいし、当該インサート成形後に、切削加工などの方法により、形成してもよい。
【0038】
なお、インサート成形により支持部材2と一体に設けられる案内部材24は、プレス加工や切削加工等の方法により成形される。プレス加工よりも切削加工のほうが寸法精度を高くできることから、本実施形態では切削加工を用いている。これにより、案内部材24の寸法精度を高めることができ、弁体3の案内精度を高め、弁体3の作動性を向上させることができる。また、案内部材24と、当該案内部材24と同様に支持部材2と一体に設けられる固定部21とは、別々の部材で構成されている。これにより、案内部材24の製作方法を、固定部21の製作方法に左右されることなく寸法精度の高い製作方法(例えば、上述の切削加工)にすることができる。また、この構成によれば、何らかの原因で固定部21の中心軸と支持部材2の雌ねじ部22aの中心軸とにずれが生じたとしても、インサート成形により案内部材24の中心軸を支持部材2の雌ねじ部22aの中心軸に合わせて位置決めすることができるため、上記中心軸のずれに影響されることがなくなる。
【0039】
したがって、案内部材24を切削加工により製作し固定部21とは別体とすることで、プレス加工等で案内部材24と固定部21とを一体に製作した場合と比べ、案内部材24の寸法精度を高めることができ、弁体3の案内精度を高め、弁体3の作動性を向上させることができる。なお、案内部材24は、全て切削加工としなくてもよい。例えば、プレス加工等で外形を成形した後に、特に高い寸法精度が要求される内径のみを切削加工やサイジング加工等で成形してもよい。
【0040】
以上、本発明の実施の形態において図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 電動弁
1A 弁室
1a 弁本体
1c 弁ポート
2 支持部材
3 弁体
4 駆動部
21 固定部
22a 雌ねじ部(軸支持部)
23 弁体案内部
24 案内部材
30 弁部
31 弁体本体部
42 駆動軸
L 軸線