(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】施工現場管理装置、および施工現場の管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240404BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021078799
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2019530949の分割
【原出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2017139408
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 喜之
(72)【発明者】
【氏名】加納 伸也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】古川 章太
(72)【発明者】
【氏名】大室 直之
【合議体】
【審判長】渡邊 聡
【審判官】佐藤 智康
【審判官】安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132181(JP,A)
【文献】特開2017-004347(JP,A)
【文献】特開2014-237505(JP,A)
【文献】特開2019-530949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場で稼働する、1台以上の運搬車両と当該運搬車両に積込作業を行う作業機械の組み合わせからなる一のフリートを構成する作業機械および運搬車両それぞれの対象期間における時刻別の作業状態を、前記対象期間の終了後に特定する作業状態特定部と、
前記特定した作業状態に基づいて、前記作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを前記対象期間の終了後に生成するタイムチャート生成部と、
前記作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを、それぞれ時間軸を共通にして前記対象期間の終了後に同一画面上に出力する出力制御部と、
を備える施工現場管理装置。
【請求項2】
前記作業状態特定部は、前記作業機械および前記運搬車両の時刻ごとの位置データまたは方位データに基づいて前記作業状態を特定する
請求項1に記載の施工現場管理装置。
【請求項3】
前記作業状態特定部は、前記運搬車両の時刻ごとの位置データと、切土場または盛土場の位置関係とに基づいて、前記作業状態を特定する
請求項1または2に記載の施工現場管理装置。
【請求項4】
前記作業状態特定部は、前記運搬車両の位置と前記作業機械の位置との関係に基づいて、前記作業状態を特定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の施工現場管理装置。
【請求項5】
施工現場管理装置が、施工現場で稼働する、1台以上の運搬車両と当該運搬車両に積込作業を行う作業機械の組み合わせからなる一のフリートを構成する作業機械および運搬車両それぞれの対象期間における時刻別の作業状態を、前記対象期間の終了後に特定することと、
前記施工現場管理装置が、前記特定した作業状態に基づいて、前記
作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを前記対象期間の終了後に生成することと、
前記施工現場管理装置が、前記作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを、それぞれ時間軸を共通にして前記対象期間の終了後に同一画面上に出力することと
を有する施工現場の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場管理装置、および施工現場の管理方法に関する。
本願は、2017年7月18日に日本に出願された特願2017-139408号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の運搬車両の走行進捗を表すタイムチャートを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施工現場には、土砂を運搬する運搬車両と、切土や盛土などの作業を行う作業機械とが配備される。つまり、施工現場においては、1台以上の運搬車両とその運搬車両に積込作業を行う作業機械の組み合わせからなる一団、いわゆるフリートを構成する。施工現場において、運搬車両と作業機械を含むフリート全体の効率に鑑みて、運搬車両および作業機械の適切な台数を検討したいという要望がある。そのため、フリートの効率を鑑みるために、フリートを構成する運搬車両および作業機械の作業を容易に把握できるようにしたいという要望がある。特許文献1に記載のタイムチャートによれば、複数の運搬車両の走行進捗が表示される一方で、フリートを構成する作業機械の状態を認識することができず、タイムチャートからフリート全体の効率を読み取ることができない可能性がある。
本発明の態様は、運搬車両および作業機械を含むフリートの作業状態を容易に把握できるようにする施工現場管理装置、および施工現場の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、施工現場管理装置は、施工現場で稼働する一のフリートを構成する作業機械および運搬車両それぞれの対象期間における時刻別の作業状態を、前記対象期間の終了後に特定する作業状態特定部と、前記特定した作業状態に基づいて、作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを生成するタイムチャート生成部と、前記作業機械の時刻別の作業状態を表すタイムチャートと前記運搬車両の時刻別の作業状態を表すタイムチャートとを、それぞれ時間軸を共通にして同一画面上に出力する出力制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、施工現場管理装置は、運搬車両および作業機械を含むフリートの作業状態を容易に把握できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る作業機械管理装置による管理の対象となる施工現場の例を示す図である。
【
図2】油圧ショベルによる積み込み作業の動作を表すフローチャートである。
【
図3】ブルドーザによる敷き均し作業の動作を表すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態に係る作業機械管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】時系列記憶部が記憶するデータを示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係るタイムチャートの出力方法を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態における切土場に配備された油圧ショベルの状態の特定方法を示すフローチャートである。
【
図8】油圧ショベルの方位データの時系列の例を表す図である。
【
図9】第1の実施形態における盛土場に配備された油圧ショベルの状態の特定方法を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態における法面ショベルの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態におけるブルドーザの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態におけるダンプトラックの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態に係る施工現場管理装置が生成するタイムチャートの例である。
【
図14】第2の実施形態におけるダンプトラックの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《施工現場》
図1は、第1の実施形態に係る施工現場管理装置による管理の対象となる施工現場の例を示す図である。
第1の実施形態に係る施工現場Gは切土場G1と盛土場G2とを有する。切土場G1と盛土場G2とはそれぞれ走行路G3によって接続される。走行路G3は、切土場G1と盛土場G2とを接続する一般道路、および施工現場G内に土砂の搬送用に用意された搬送路を含む。切土場G1および盛土場G2には、それぞれ油圧ショベルM1とブルドーザM2とが配備されている。油圧ショベルM1およびブルドーザM2は、施工現場Gで土砂に係る作業を実行する作業機械の一例である。また複数のダンプトラックM3が切土場G1と盛土場G2との間を走行している。ダンプトラックM3は、土砂を運搬する運搬車両の一例である。油圧ショベルM1、ブルドーザM2およびダンプトラックM3は、車両Mの一例である。なお、他の実施形態においては、切土場G1および盛土場G2には、複数の油圧ショベルM1が配備されていてもよいし、複数のブルドーザM2が配備されていてもよいし、油圧ショベルM1またはブルドーザM2の一方が配備されなくてもよいし、他の車両Mが配備されてもよい。施工現場Gに配備される運搬車両の数は、作業機械の数より多い。
【0009】
《車両》
切土場G1に配備された油圧ショベルM1は、切土場G1において土砂を掘削し、ダンプトラックM3に土砂を積み込む。
図2は、油圧ショベルによる積み込み作業の動作を表すフローチャートである。
油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3が到着する前に、予めダンプトラックM3の停車位置の近傍に掘削した土砂を集めておく(ステップS01)。また、油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3が到着する前に、油圧ショベルM1に土砂を一杯すくい上げさせておく(ステップS02)。なお、作業時間に余裕がない場合には、ステップS01、S02の作業が省略され得る。ダンプトラックM3は、切土場G1の所定の積込エリアに到着すると、油圧ショベルM1の近傍に停車する(ステップS03)。次に、油圧ショベルM1のオペレータは、すくい上げた土砂をダンプトラックM3のベッセルに投下させる(ステップS04)。油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3に積み込まれた土砂の量がダンプトラックM3の積載可能容量未満であるか否かを推定する(ステップS05)。油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3に積み込まれた土砂の量がダンプトラックM3の積載可能容量未満であると判断すると(ステップS05:YES)、油圧ショベルM1の上部旋回体を集められた土砂または掘削すべき土砂の方向へ旋回させる(ステップS06)。油圧ショベルM1のオペレータは、集めておいた土砂または掘削した土砂を油圧ショベルM1にすくい上げさせる(ステップS07)。次に、油圧ショベルM1のオペレータは、油圧ショベルM1の上部旋回体をダンプトラックM3の方向へ旋回させ(ステップS08)、ステップS4に処理を戻し、土砂を投下させる。これを繰り返し実行することで、油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3の積載可能容量まで土砂を積み込むことができる。油圧ショベルM1のオペレータは、ダンプトラックM3に積み込まれた土砂の量がダンプトラックM3の積載可能容量に達したと判断すると(ステップS05:NO)、油圧ショベルM1による積み込み作業を終了する。
【0010】
また、切土場G1に配備された油圧ショベルM1は、切土場G1において法面の成形をしてもよい。油圧ショベルM1のオペレータは、油圧ショベルM1を法面として設計された法面エリアに近接させ、法面の伸びる方向に沿って移動しながら、バケットで法面エリアの表面の土砂を成形する。以下、法面成形作業のための油圧ショベルM1を法面ショベルともいう。
【0011】
切土場G1に配備されたブルドーザM2は、切土場G1において土砂を掘削・運搬する。ブルドーザM2のオペレータは、ブルドーザM2のブレードの位置を合わせてブルドーザM2を前進させることで、ブルドーザM2に土砂を掘削させることができる。また、切土場G1に配備されたブルドーザM2は、掘削後の地盤を締め固める。ブルドーザM2のオペレータは、ブルドーザM2のブレードを上げてブルドーザM2を走行させることで、ブルドーザM2に地盤を締め固めさせることができる。ブルドーザM2における締固め時の走行速度は、掘削時の走行速度より高い。
【0012】
ダンプトラックM3は、切土場G1にて積み込まれた土砂を盛土場G2に輸送する。ダンプトラックM3は、盛土場G2で土砂を降ろすと、盛土場G2から切土場G1へ移動する。ダンプトラックM3の走行速度は、土砂の積載時と無積載時とで異なる。また、ダンプトラックM3の走行速度は、盛土場G2または切土場G1の場内を走行するときと、場外の走行路G3を走行するときとでも異なる。
また切土場G1および盛土場G2において、ダンプトラックM3を停車位置に停車させる場合、ダンプトラックM3のオペレータは、ダンプトラックM3を転回させ、後退走行させることで、停車位置に停車させる。
【0013】
盛土場G2に配備された油圧ショベルM1は、ダンプトラックM3が降ろした土砂を盛土場G2に盛る。このとき、盛土場G2に配備された油圧ショベルM1も、切土場G1に配備された油圧ショベルM1と同様に、降ろされた土砂へ上部旋回体を向けて土砂をすくった後、撒き出すべき箇所へ上部旋回体を旋回させ、撒き出すべき箇所に土砂を投下する処理を繰り返し実行する。
また、盛土場G2に配備された油圧ショベルM1は、盛土場G2において法面の成形をしてもよい。
【0014】
盛土場G2に配備されたブルドーザM2は、ダンプトラックM3によって輸送された土砂を盛土場G2に敷き均す。具体的には、ブルドーザM2はダンプトラックM3等により排土された土砂を敷き均すべきエリアに均一に敷均す。敷均し作業においては、施工現場Gの状況やオペレータによって1回あたりに敷きならすべき高さ、つまり敷均し前よりも地形を盛り上げる高さが決まっている。排土された土砂を所定高さだけ敷き均すために、ブルドーザM2はブレードを所定の高さに設定した上で敷均し作業を行う。敷均し作業は、最終的に敷き均すべきエリアが目的高さに達するまで、複数回繰り返される。
図3は、ブルドーザによる敷き均し作業の動作を表すフローチャートである。
ブルドーザM2のオペレータは、ダンプトラックM3により敷き均すべきエリアに土砂が撒かれると、ブルドーザM2のブレードを任意の高さまで下ろす(ステップS11)。このブレードの高さによって、敷き均される土砂の高さが決定される。次に、ブルドーザM2のオペレータは、敷き均しエリア内でブルドーザM2を前進させることで、土砂を均す(ステップS12)。ブルドーザM2を1回前進させることで、一定距離(例えば約10メートル)前方まで土砂を敷き均すことができる。一定距離前進すると、ブルドーザM2のオペレータは、ブルドーザM2を後退させる(ステップS13)。ブルドーザM2のオペレータは、敷き均しエリア全体をブルドーザM2で敷き均したか否かを判断する(ステップS14)。敷き均されていない箇所が残っている場合(ステップS14:NO)、ブルドーザM2のオペレータは、敷き均されていない箇所を含み、かつ既に敷き均された箇所と一部重複する位置にブレードが合うように移動する(ステップS15)。例えば、ブルドーザM2のオペレータは、ステップS13の後退時にブルドーザM2を斜め後方へ後退させる。そして、ステップS12に処理を戻し、敷き均しエリア全体を敷き均すまで前進と後退を繰り返す。ブルドーザM2のオペレータは、敷き均しエリア全体を敷き均したと判断した場合(ステップS14:YES)、敷き均しエリアの均し高さが目的高さに達したか否かを判断する(ステップS16)。敷き均しエリアの均し高さが目的高さに達していないと判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS12に処理を戻し、敷き均しエリアの均し高さが目的高さに達するまで前進と後退を繰り返す。他方、ブルドーザM2のオペレータは、敷き均しエリアの均し高さが目的高さに達したと判断した場合(ステップS16:YES)、ブルドーザM2による敷き均し作業を終了する。
また、盛土場G2に配備されたブルドーザM2は、地盤を締め固めてもよい。ブルドーザM2のオペレータは、ブルドーザM2のブレードを上げてブルドーザM2を走行させることで、ブルドーザM2の履帯により地盤を締め固めさせることができる。ブルドーザM2における締固め時の走行速度は、敷き均し時の走行速度より速い。
【0015】
《施工現場管理装置の構成》
図4は、第1の実施形態に係る施工現場管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
施工現場管理装置10は、施工現場Gにおける各車両Mの時刻ごとの状態を特定し、タイムチャートとして出力する。
【0016】
施工現場管理装置10は、プロセッサ100、メインメモリ200、ストレージ300、インタフェース400を備えるコンピュータである。ストレージ300は、プログラムを記憶する。プロセッサ100は、プログラムをストレージ300から読み出してメインメモリ200に展開し、プログラムに従った処理を実行する。施工現場管理装置10は、インタフェース400を介してネットワークに接続される。また施工現場管理装置10は、インタフェース400を介して入力装置500および出力装置600に接続される。入力装置500の例としては、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。出力装置600の例としては、モニタ、スピーカ、プリンタなどが挙げられる。
【0017】
ストレージ300の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ300は、施工現場管理装置10のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース400を介して施工現場管理装置10に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0018】
プロセッサ100は、プログラムの実行により、位置受信部101、方位受信部102、時系列記録部103、作業状態特定部104、設計地形取得部105、タイムチャート生成部106、出力制御部107として機能する。
またプロセッサ100は、プログラムの実行により、メインメモリ200に、時系列記憶部201の記憶領域を確保する。
【0019】
位置受信部101は、施工現場Gに配備された各車両Mの位置データを一定時間ごとに受信する。車両Mの位置データは、車両Mが備えるコンピュータから受信してもよいし、車両Mに持ち込まれたコンピュータから受信してもよい。車両Mに持ち込まれたコンピュータの例としては、携帯端末が挙げられる。
【0020】
方位受信部102は、施工現場Gに配備された各車両Mの方位データを一定時間ごとに受信する。車両Mの方位データは、車両Mが備えるコンピュータから受信してもよいし、車両Mに持ち込まれたコンピュータから受信してもよい。車両Mに持ち込まれたコンピュータが方位データを送信する場合、コンピュータが回転しないようにコンピュータを車両Mに固定しておく。方位データは、電子コンパスや地磁気センサ等のセンサによる出力データだけでなく、旋回レバー操作の検出(PPC圧含む)や、ジャイロセンサ、上部旋回体の角度センサの検出結果も含む。すなわち、方位受信部102は、方位の瞬時の変化量を積算することで、車両Mの方位を特定してもよい。方位データは、車両Mに設けられたセンサまたは車両Mの外部に設けられたセンサによって検出されてもよい。このセンサは例えば、モーションセンサやカメラによる画像解析によって方位データを検出するものであってもよい。
【0021】
時系列記録部103は、位置受信部101が受信した位置データおよび方位受信部102が受信した方位データを、車両MのIDと受信時刻とに関連付けて時系列記憶部201に記憶させる。
図5は、時系列記憶部が記憶するデータを示す図である。これにより、時系列記憶部201には、各車両Mの位置データの時系列と各車両Mの方位データの時系列とが記憶される。なお、位置データ、方位データの時系列は、時刻別の方位データとして、例えば所定時間毎の位置・方位データをまとめたものであってもよいし、不定期の時間における位置・方位データをまとめたものであってもよい。
【0022】
作業状態特定部104は、時系列記憶部201が記憶する位置データの時系列、方位データの時系列、および走行速度の時系列に基づいて、各車両Mの作業状態を特定する。車両Mの作業状態の例としては、車両Mが実行している作業の種別、車両Mが位置する場所、車両Mの走行方向(前進または後退)などが挙げられる。
油圧ショベルM1の作業の種別としては、掘削作業、積込作業、盛土作業、撒き出し作業、法面成形作業などが挙げられる。掘削作業は、施工現場Gの土砂を掘削する作業である。積込作業は、掘削した土砂をダンプトラックM3に積み込む作業である。盛土作業は、ダンプトラックM3によって排土された土砂を施工現場Gに盛り固める作業である。撒き出し作業は、ダンプトラックM3によって排土された土砂を施工現場Gに撒き広げる作業である。法面成形作業は、施工現場Gにおける法面領域を設計地形データどおりに掘削・成形するための成形作業である。
ブルドーザM2の作業の種別としては、掘削運搬作業、敷き均し作業、締固め作業が挙げられる。掘削運搬作業は、施工現場Gの土砂をブレードにより掘削して運搬する作業である。敷き均し作業は、ダンプトラックM3によって排土された土砂を所定の高さに敷き均す作業である。締固め作業は、施工現場Gの土砂を履帯により締固める成形作業である。
ダンプトラックM3の作業の種別としては、空荷走行、積載走行、積込作業、排土作業が挙げられる。空荷走行は、ベッセルに土砂がない状態で走行する作業である。積載走行は、ベッセルに土砂がある状態で走行する作業である。積込作業は、油圧ショベルM1によってベッセルに土砂が積載される間待機する作業である。排土作業は、ベッセルに積載された土砂を下ろす作業である。
また、作業状態特定部104は、ブルドーザM2の走行状態が前進であるか後退であるかを特定する。また、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の走行状態として切土場G1または盛土場G2の内部にいるか否か、および転回中または後退中であるか否かを特定する。走行状態は作業状態の一例である。
【0023】
設計地形取得部105は、施工現場Gの設計地形を表す設計地形データを取得する。設計地形データは三次元データであって、グローバル座標系における位置データを含む。設計地形データは、地形の種別を示す地形種別データを含む。設計地形データは、例えば三次元CADによって作成される。
【0024】
タイムチャート生成部106は、作業状態特定部104が特定した作業の種別に基づいて、タイムチャートを生成する。第1の実施形態に係るタイムチャートは、時刻を横軸にとり、車両Mを縦軸に並べ、各車両について時間帯ごとの作業内容を表示する図である。
【0025】
出力制御部107は、タイムチャート生成部106が生成したタイムチャートを出力させる出力信号を出力装置600に出力する。
【0026】
《タイムチャートの出力方法》
次に、第1の実施形態に係る施工現場管理装置10の動作について説明する。
図6は、第1の実施形態に係るタイムチャートの出力方法を示すフローチャートである。
施工現場管理装置10は、タイムチャートの対象となる期間の間、各車両Mから定期的に位置データおよび方位データを収集し、時系列データを生成しておく。
【0027】
各車両Mに搭載されたコンピュータ、または各車両Mに持ち込まれたコンピュータ(以下、車両Mのコンピュータという)は、一定時間ごとに車両Mの位置および方位を測定する。車両Mのコンピュータは、測定した位置を示す位置データおよび測定した方位を示す方位データを施工現場管理装置10に送信する。車両Mの位置は、例えばGPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)によって特定される。車両Mの方位は、例えば車両Mまたは車両Mのコンピュータが備える電子コンパスによって特定される。
【0028】
施工現場管理装置10の位置受信部101は、車両Mのコンピュータから位置データを受信する(ステップS101)。方位受信部102は、車両Mのコンピュータから方位データを受信する(ステップS102)。時系列記録部103は、受信した位置データおよび方位データを、受信時刻と受信元のコンピュータに係る車両MのIDとに関連付けて時系列記憶部201に記憶させる(ステップS103)。施工現場管理装置10は、利用者の操作等によりパラメータ特定処理が開始されたか否かを判定する(ステップS104)。
施工現場管理装置10は、パラメータ特定処理が開始されていない場合(ステップS104:NO)、パラメータ特定処理が開始されるまでステップS101からステップS103の処理を繰り返し実行することで、時系列記憶部201に位置データおよび方位データの時系列が形成される。
【0029】
タイムチャートの対象となる期間が終了した場合(ステップS104:YES)、設計地形取得部105は、設計地形データを取得する(ステップS105)。作業状態特定部104は、時系列記憶部201に記憶された各車両Mの位置データの時系列に基づいて、時刻ごとの各車両Mの走行速度を算出する(ステップS106)。つまり、作業状態特定部104は、各車両Mの走行速度の時系列を生成する。なお、走行速度の時系列は、車両MのCAN(Control Area Network)データによって取得されてもよい。次に、作業状態特定部104は、設計地形データ、ならびに各車両Mの位置データ、方位データ、および走行速度の時系列に基づいて各車両Mの時刻ごとの作業状態を特定する(ステップS107)。そして、タイムチャート生成部106は、作業状態特定部104が特定した状態に基づいてタイムチャートを生成する(ステップS108)。出力制御部107は、タイムチャート生成部106が生成したタイムチャートを出力させる出力信号を出力装置600に出力する(ステップS109)。
【0030】
ここで、ステップS107における作業状態特定部104による状態の特定方法について具体的に説明する。
【0031】
《切土場G1に配備された油圧ショベルM1の作業状態の特定方法》
図7は、第1の実施形態における切土場に配備された油圧ショベルの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
図8は、油圧ショベルの方位データの時系列の例を表す図である。
作業状態特定部104は、切土場G1に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時間帯を特定する(ステップS107A1)。なお、車両Mが「停止している」とは、車両Mが走行していない作業状態をいう。つまり、車両Mが走行せずに、掘削、旋回、ブームの上げ下ろしなどの作業をしている状態も、車両Mが「停止している」という。一方、車両Mが走行せず、かつ他の作業もされていない作業状態を、車両Mが「停車している」という。次に、作業状態特定部104は、方位データの時系列に基づいて、特定された時間帯のうち、油圧ショベルM1が反復的に旋回している時間帯について、油圧ショベルM1の作業状態(作業の種別)が積込作業状態であると特定する(ステップS107A2)。作業状態特定部104は、例えば、特定された時間帯において、油圧ショベルM1の方位が所定角度(例えば、10度)以上の角度で連続して同じ方向に変化する旋回が左右方向に反復的に所定回数以上繰り返される場合に、反復的に旋回していると判定することができる。これは、
図2に示すステップS04からステップS08までのサイクル動作が、
図8に示すように、油圧ショベルM1の反復的な方位の変化として現れるためである。
図8において、網掛け部は、油圧ショベルM1とダンプトラックM3との距離が所定距離以内である時間帯を表す。作業状態特定部104は、
図8に示すように、油圧ショベルM1とダンプトラックM3との距離が所定距離以内であり、かつ反復的な旋回がなされている時間帯における、油圧ショベルM1の作業状態を、積込作業状態と判定する。
【0032】
次に、作業状態特定部104は、油圧ショベルM1の作業状態が特定されていない時間帯のうち、油圧ショベルM1が走行している、又は油圧ショベルM1の方位が変化している時間帯について、油圧ショベルM1の作業状態がその他作業状態であると特定する(ステップS107A3)。その他作業状態には、掘削作業、および積み込みのための土砂を集める作業などが含まれる。
次に、作業状態特定部104は、油圧ショベルM1の作業状態が特定されていない時間帯について、油圧ショベルM1の作業状態が停車状態であると特定する(ステップS107A4)。
【0033】
《盛土場G2に配備された油圧ショベルM1の作業状態の特定方法》
図9は、第1の実施形態における盛土場G2に配備された油圧ショベルの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
作業状態特定部104は、盛土場G2に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時刻を特定する(ステップS107B1)。次に、作業状態特定部104は、特定した時刻を起点として、少なくとも油圧ショベルM1が停止している時刻を特定する(ステップS107B2)。起点時以降にダンプトラックM3の位置データを用いないのは、ダンプトラックM3がベッセルの土砂を排土し終えると、油圧ショベルM1の作業状態によらず切土場G1へ移動するためである。次に、作業状態特定部104は、方位データの時系列に基づいて、特定された時間帯のうち、油圧ショベルM1が反復的に旋回している時間帯について、油圧ショベルM1の作業状態(作業の種別)が撒き出し作業であると特定する(ステップS107B3)。
【0034】
以降、作業状態特定部104は、ステップS107B4からステップS107B5までの処理を実行し、油圧ショベルM1の作業状態が特定されていない時間帯について、油圧ショベルM1の作業状態がその他作業状態、または停車状態のいずれであるかを特定する。ステップS107B4からステップS107B5までの処理は、ステップS107A3からステップS107A4までの処理と同様である。
【0035】
《法面ショベルの作業状態の特定方法》
図10は、第1の実施形態における法面ショベルの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。法面ショベルとは、法面を成形する作業を担う油圧ショベルM1のことを言う。
作業状態特定部104は、法面ショベルについて、位置データの時系列と設計地形取得部105が取得した設計地形データとに基づいて、法面ショベルが設計地形データの法面エリアの所定距離以内に位置する時間帯を特定する(ステップS107C1)。作業状態特定部104は、特定した時間帯のうち、法面ショベルが法面の伸びる方向に沿って移動している、または法面ショベルの方位が旋回している時間帯について、法面ショベルの作業状態(作業の種別)が法面成形作業であると特定する(ステップS107C2)。法面成形作業とは、法面ショベルが施工現場における法面領域を設計地形データどおりに掘削・成形するための作業である。
【0036】
次に、作業状態特定部104は、法面ショベルの作業状態が特定されていない時間帯、すなわち法面ショベルが法面エリアの所定距離以内に位置していない時間帯のうち、法面ショベルが走行している、又は法面ショベルの方位が変化している時間帯について、法面ショベルの作業状態がその他作業状態であると特定する(ステップS107C3)。次に、作業状態特定部104は、法面ショベルの作業状態が特定されていない時間帯について、法面ショベルの作業状態が停車状態であると特定する(ステップS107C4)。
【0037】
《ブルドーザM2の作業状態の特定方法》
図11は、第1の実施形態におけるブルドーザの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
作業状態特定部104は、ブルドーザM2について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ブルドーザM2が反復的に前進と後退とを繰り返し、かつ前進時の速度が所定速度(例えば、5キロメートル毎時)以下である時間帯を特定する(ステップS107D1)。次に、作業状態特定部104は、位置データの時系列に基づいてブルドーザM2が切土場G1に配備されているか盛土場G2に配備されているかを判定する(ステップS107D2)。ブルドーザM2が切土場G1に配備されている場合(ステップS107D2:切土場)、作業状態特定部104は、特定された時間帯について、ブルドーザM2の作業状態(作業の種別)が掘削運搬作業であると特定する(ステップS107D3)。他方、ブルドーザM2が盛土場G2に配備されている場合(ステップS107D2:盛土場)、作業状態特定部104は、特定された時間帯について、ブルドーザM2の作業状態(作業の種別)が敷き均し作業であると特定する(ステップS107D4)。
【0038】
次に、作業状態特定部104は、ブルドーザM2の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ブルドーザM2が所定距離(例えば、8メートル)以下で反復的に前進と後退とを繰り返している時間帯について、ブルドーザM2の作業状態(作業の種別)が締固め作業であると特定する(ステップS107D5)。
次に、作業状態特定部104は、ブルドーザM2の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ブルドーザM2の走行速度が所定値以上である時間帯について、ブルドーザM2の作業状態が走行状態であると特定する(ステップS107D6)。
次に、作業状態特定部104は、ブルドーザM2の作業状態が特定されていない時間帯について、ブルドーザM2の作業状態が停車状態であると特定する(ステップS107D7)。
【0039】
第1の実施形態に係る作業状態特定部104は、ブルドーザM2による走行速度に基づいて作業の種別が掘削運搬作業または敷き均し作業であるか否かを判定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、作業状態特定部104は、ブルドーザM2による反復走行距離と走行速度の両方または一方に基づいて作業の種別が掘削運搬作業または敷き均し作業であるか否かを判定してもよい。
第1の実施形態に係る作業状態特定部104は、ブルドーザM2による反復走行距離に基づいて作業の種別が締固め作業であるか否かを判定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、作業状態特定部104は、ブルドーザM2による反復走行距離と走行速度の両方または一方に基づいて作業の種別が締固め作業であるか否かを判定してもよい。
なお、一般的に、掘削運搬作業および敷き均し作業における走行速度は締固め作業における走行速度より遅い。また、一般的に、掘削運搬作業および敷き均し作業における走行距離は締固め作業における走行距離より長い。
【0040】
《ダンプトラックM3の作業状態の特定方法》
図12は、第1の実施形態におけるダンプトラックの作業状態の特定方法を示すフローチャートである。
作業状態特定部104は、切土場G1に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時間帯を特定する(ステップS107E1)。次に、作業状態特定部104は、方位データの時系列に基づいて、特定された時間帯のうち、油圧ショベルM1が反復的に旋回している時間帯について、当該油圧ショベルM1と所定距離以内に位置するダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が積込作業状態であると特定する(ステップS107E2)。
【0041】
作業状態特定部104は、盛土場G2に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時刻を特定する(ステップS107E3)。次に、作業状態特定部104は、特定した時刻を起点として、少なくともダンプトラックM3が停止している時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が排土作業状態であると特定する(ステップS107E4)。
【0042】
作業状態特定部104は、ダンプトラックM3について、ステップS107E2で積込作業と特定されず、かつステップS107E4で排土作業と特定されていない時間帯のうち、積込作業の終了時刻から排土作業の開始時刻までの時間帯を特定する(ステップS107E5)。作業状態特定部104は、走行速度の時系列に基づいて、特定された時間帯のうちダンプトラックM3が走行している時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が積載走行であると特定する(ステップS107E6)。また、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3について、ステップS107E2で積込作業と特定されず、かつステップS107E4で排土作業と特定されていない時間帯のうち、排土作業の終了時刻から積込作業の開始時刻までの時間帯を特定する(ステップS107E7)。作業状態特定部104は、走行速度の時系列に基づいて、特定された時間帯のうちダンプトラックM3が走行している時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が空荷走行であると特定する(ステップS107E8)。なお、他の実施形態においては、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の走行速度、走行方向等に基づいて、積込作業状態または排土作業状態の直前におけるダンプトラックM3の作業状態が、転回走行、後退走行、場内走行のいずれであるかをさらに特定してもよい。例えば、走行速度が低速である場合に、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態を場内走行と特定してよい。例えば、走行方向が後方である場合に、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態を後退走行と特定してよい。
次に、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態が停車状態であると特定する(ステップS107E9)。
【0043】
図13は、第1の実施形態に係る施工現場管理装置が生成するタイムチャート画面の例である。
上記のステップS107の処理により作業状態特定部104が各車両Mの各時間における状態を特定すると、タイムチャート生成部106は、
図13に示すように、横軸を時間軸とし、縦軸にフリートを構成する車両Mを並べたタイムチャート画面を生成する。なお、タイムチャート画面の縦軸に並ぶ車両Mは、同じ種類の異なる個体を含み、例えば車両Mの識別番号を表示することによって個体が特定されてよい。
図13に示すタイムチャート画面は、例えば切土場G1に配備される1台の油圧ショベルM1、およびその油圧ショベルM1によって土砂が積み込まれ切土場G1と盛土場G2との間で土砂を運搬する8台のダンプトラックM3の時間別の状態を表すタイムチャートを、時間軸を共通にして同一画面上に表示させた画面である。すなわち、この施工現場Gでは、1台の油圧ショベルM1と8台のダンプトラックM3とがフリートを構成する。なお、「同一画面」は、出力装置がプリンタである場合における同一紙面を含む。
【0044】
油圧ショベルM1が積込中である時間帯は、いずれかのダンプトラックM3も積込中であることがわかる。あるダンプトラックM3の積込が完了した後に次のダンプトラックM3がまだ積込エリアに到着していない場合、油圧ショベルM1はその他作業を行う。すなわち、油圧ショベルM1は、その他作業として、掘削すべき土砂を予め掘削して油圧ショベルM1の近傍に積み上げておく、いわゆる餌集めをする(
図2のステップS01)。これによって、油圧ショベルM1は、ダンプトラックM3が到着した際に効率よく積込作業を行うことができる。
図13の例では、1回目の8台のダンプトラックM3(A~F)への積込作業が完了した後に油圧ショベルM1が所定期間その他作業をしている。一方で、次のダンプトラックM3Aが到着するまでかなりの時間が余っているため、油圧ショベルM1が長時間にわたって停車状態になってしまっている。そこで、この施工現場Gに、ダンプトラックM3を追加で配備することによって油圧ショベルM1が停車状態となっている時間を低減することができ、全体的な効率を向上させられることが見て取れる。
【0045】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、施工現場管理装置10は、車両Mの時刻ごとの状態を特定し、特定された時刻ごとの状態を表示するタイムチャートを出力装置600の同一画面上に出力する。これにより、施工現場Gの管理者は、運搬車両および作業機械を含むフリートの作業状態を画面を切り替えることなく容易に把握することができる。施工現場Gの管理者は、出力されたタイムチャートを視認することにより、フリートの全体的な効率を認識することができる。例えば、
図13に示す例では、切土場G1の油圧ショベルM1が停車している時間が多く見受けられることから、管理者は、この時間に積込作業を行うことができるようにダンプトラックM3を増やすことや、この時間に油圧ショベルM1に法面成形作業などの作業を行わせることなどを検討することができる。
【0046】
また、第1の実施形態によれば、施工現場管理装置10は、ある車両M(例えば、油圧ショベルM1)の位置と他の車両M(例えば、ダンプトラックM3)の位置との関係に基づいて、ある車両Mの作業の種別を特定する。これにより、施工現場管理装置10は、精度よく車両Mの作業の種別を特定することができる。
【0047】
また、第1の実施形態によれば、施工現場管理装置10は、車両Mの状態(前進、後退、作業種別)別に、車両Mの位置データの時系列に基づいて、その状態における車両Mの走行速度を特定する。これにより、施工現場管理装置10は、車両Mが状態および走行速度を通信により出力しないものであっても、状態別の走行速度を特定することができる。
【0048】
第1の実施形態に係る施工現場管理装置10は、車両Mと別の車両MとのGNSSによる位置関係に基づいて車両Mの作業状態を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る施工現場管理装置10は、車車間通信による車両M間の位置関係を用いて車両Mの作業状態を特定してもよい。
【0049】
第1の実施形態では、横軸を時間軸とし、縦軸にフリートを構成する車両Mを並べることで、時間軸を共通にして各車両Mのタイムチャートを並べたタイムチャート画面を生成したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、車両Mごとに時間軸がそろっている形態であれば時間軸を縦軸とするなど、他の形態によりタイムチャート画面が生成されてもよい。
【0050】
〈第2の実施形態〉
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態に係る施工現場管理装置10は、ダンプトラックM3の状態について、積込作業後かつ排土作業前の走行である場合に積載走行と判定し、排土作業後かつ積込作業前の走行である場合に空車走行と判定する。これに対し、第2の実施形態では、ダンプトラックM3の位置情報に基づいてダンプトラックM3の状態を特定する。
【0051】
第2の実施形態に係る施工現場管理装置10が特定するダンプトラックM3の作業状態は、走行路G3を積載状態で走行する場外積載走行、走行路G3を空荷状態で走行する場外空荷走行、切土場G1または盛土場G2内に設けられた転回エリアを走行する転回走行、切土場G1または盛土場G2内に設けられた後退エリアを走行する後退走行、切土場G1または盛土場G2内を積載状態で走行する通常に走行する場内積載走行、切土場G1または盛土場G2内を空荷状態で走行する通常に走行する場内空荷走行である。切土場G1、盛土場G2、転回エリアおよび後退エリアは、例えば予めジオフェンスとして指定される。この場合、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の位置データが示す位置が、ジオフェンス内であるか否かに基づいてダンプトラックM3の作業状態を特定する。
【0052】
図14は、第2の実施形態におけるダンプトラックの状態の特定方法を示すフローチャートである。
作業状態特定部104は、切土場G1に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時間帯を特定する(ステップS107F1)。次に、作業状態特定部104は、方位データの時系列に基づいて、特定された時間帯のうち、油圧ショベルM1が反復的に旋回している時間帯について、当該油圧ショベルM1と所定距離以内に位置するダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が積込作業状態であると特定する(ステップS107F2)。
【0053】
作業状態特定部104は、盛土場G2に配備された油圧ショベルM1について、位置データの時系列および走行速度の時系列に基づいて、ダンプトラックM3と互いに所定距離以内に位置し、かつ油圧ショベルM1およびダンプトラックM3が停止している時刻を特定する(ステップS107F3)。次に、作業状態特定部104は、特定した時刻を起点として、少なくともダンプトラックM3が停止している時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態(作業の種別)が排土作業状態であると特定する(ステップS107F4)。
【0054】
作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ダンプトラックM3の走行速度が所定値未満である時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態が停車状態であると特定する(ステップS107F5)。
作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ダンプトラックM3が転回エリアに位置する時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態を転回走行と特定する(ステップS107F6)。また作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ダンプトラックM3が後退エリアに位置する時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態を後退走行と特定する(ステップS107F7)。
【0055】
作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ダンプトラックM3が切土場G1における積込作業の終了時刻から切土場G1を出た時刻までの時間帯、または盛土場G2に入った時刻から盛土場G2の転回エリアに入った時刻までの時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態を場内積載走行と特定する(ステップS107F8)。また、作業状態特定部104は、ダンプトラックM3の作業状態が特定されていない時間帯のうち、ダンプトラックM3が盛土場G2における排土作業の終了時刻から盛土場G2を出た時刻までの時間帯、または切土場G1に入った時刻から切土場G1の転回エリアに入った時刻までの時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態を場内空荷走行と特定する(ステップS107F9)。つまり、ダンプトラックM3が切土場G1または盛土場G2に位置するとしても、そのダンプトラックM3が切土場G1内または盛土場G2内の転回エリアまたは後退エリアに位置する場合、そのダンプトラックM3の作業状態を場内積載走行または場内空荷走行としない。
【0056】
作業状態特定部104は、切土場G1の外に出た時刻から盛土場G2内に入る時刻までの時間帯を特定する(ステップS107F10)。作業状態特定部104は、ステップS107F10により特定された時間帯のうち、ダンプトラックM3の作業状態がまだ特定されていない時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態が場外積載走行であると特定する(ステップS107F11)。
また、作業状態特定部104は、盛土場G2の外に出た時刻から切土場G1内に入る時刻までの時間帯を特定する(ステップS107F12)。作業状態特定部104は、ステップS107F12により特定された時間帯のうち、ダンプトラックM3の作業状態がまだ特定されていない時間帯について、ダンプトラックM3の作業状態が場外空荷走行であると特定する(ステップS107F13)。
【0057】
つまり、第2の実施形態に係る施工現場管理装置10は、車両Mの位置に基づいて、車両Mが所定のエリアに存在するか否か、車両Mがエリア内に入ったか否か、または車両Mがエリア外に出たか否かに基づいて、車両Mの状態を特定する。
【0058】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、
図13に示すタイムチャートは、油圧ショベルM1およびダンプトラックM3の状態を表すものである。すなわち、油圧ショベルM1は作業機械の一例であり、ダンプトラックM3は運搬車両の一例である。他方、他の実施形態に係る施工現場管理装置10が生成するタイムチャートは、油圧ショベルM1とダンプトラックM3との関係を示すものに限られない。例えば、他の実施形態において、盛土場G2にブルドーザM2が配備され、ダンプトラックM3が切土場G1から盛土場G2へ土砂を運搬する場合、施工現場管理装置10は、ブルドーザM2とダンプトラックM3との関係を示すタイムチャートを生成してもよい。この場合、ブルドーザM2は作業機械の一例であり、ダンプトラックM3は運搬車両の一例である。また例えば、他の実施形態において、盛土場G2に油圧ショベルM1とブルドーザM2が配備され、ブルドーザM2が油圧ショベルM1によって掘削された土砂を盛土場G2内で運搬する場合、施工現場管理装置10は、油圧ショベルM1とブルドーザM2との関係を示すタイムチャートを生成してもよい。この場合、油圧ショベルM1は作業機械の一例であり、ブルドーザM2は運搬車両の一例である。
【0059】
また上述した実施形態においては、施工現場管理装置10は、各車両Mの各時間または所定時間毎における作業状態を特定し、これに基づいてタイムチャートを生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、時刻別の作業状態として各車両Mの不定期な時間における作業状態を特定しこれに基づいてタイムチャートを生成してもよいし、時刻別の作業状態として施工現場管理装置10は各作業状態の開始時刻と終了時刻を特定し、これに基づいてタイムチャートを作成してもよい。
【0060】
また上述した実施形態においては、車両Mの例として油圧ショベルM1、ブルドーザM2、およびダンプトラックM3について説明したが、これに限られない。例えば、施工現場管理装置10は、ホイールローダやロードローラについて状態を特定し、またタイムチャートを生成してもよい。ホイールローダおよびロードローラの状態は、ブルドーザM2の状態と同様の方法により求めることができる。
【0061】
また、他の実施形態に係る油圧ショベルM1は、溝を成形してもよい。溝を成形する油圧ショベルM1の作業状態およびパラメータは、法面ショベルの作業状態およびパラメータと同様の方法により求めることができる。溝掘削作業における作業量に係るパラメータとして、時間あたりに掘削おおび成形した溝の距離、溝の面積、または溝の土量が挙げられる。なお、溝掘削作業は、成形作業の一例である。
【0062】
また、他の実施形態に係る油圧ショベルM1は、積込を伴わない掘削作業をしてもよい。例えば、油圧ショベルM1が掘削対象の土砂を掘削し、その掘削した土砂を、別の積込ショベルが土砂を掘削しやすくなるよう、その積込ショベルの近傍に排土してもよい。この場合、掘削作業の判定は、油圧ショベルM1が停止し、かつ反復旋回している時間帯を特定することでなされる。掘削作業の判定においては、油圧ショベルM1がダンプトラックM3に近接しているという条件は鑑みなくてよい。この場合の掘削作業のパラメータは、油圧ショベルM1の積込作業のパラメータと同様の方法により求めることができる。
【0063】
上述した実施形態に係る施工現場管理装置10においては、プログラムがストレージ300に格納される場合について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、プログラムが通信回線によって施工現場管理装置10に配信されるものであってもよい。この場合、配信を受けた施工現場管理装置10が当該プログラムをメインメモリ200に展開し、上記処理を実行する。
【0064】
また、プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、上述した機能をストレージ300に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせで実現するものであってもよい。
【0065】
また、施工現場管理装置10は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ100によって実現される機能の一部が当該PLDによって実現されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
上記施工現場管理装置は、運搬車両および作業機械を含むフリートの作業状態を容易に把握できるようにすることができる。
【符号の説明】
【0067】
10…施工現場管理装置 100…プロセッサ 200…メインメモリ 300…ストレージ 400…インタフェース 500…入力装置 600…出力装置 101…位置受信部 102…方位受信部 103…時系列記録部 104…作業状態特定部 105…設計地形取得部 106…タイムチャート生成部 107…出力制御部 201…時系列記憶部 G…施工現場 G1…切土場 G2…盛土場 M…車両 M1…油圧ショベル M2…ブルドーザ M3…ダンプトラック