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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】吸気マニホルド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F02M35/104 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021107287
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005413
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】川崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤村 耕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】徳永 隆広
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄一朗
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-170566(JP,U)
【文献】特開2019-011715(JP,A)
【文献】特開2020-037918(JP,A)
【文献】特開2021-001578(JP,A)
【文献】実開昭61-059863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各吸気ポートに対応した開口を有する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備え、
前記吸気本体の形状は、複数の前記開口が並ぶ開口配列方向に長い箱状であるとともに、複数の前記開口に対する前記吸気本体の開口配列方向の位置が偏っており、
前記吸気本体の前記開口に対する偏り方向で上手側の側壁に吸気入口が設けられ、
前記吸気本体の長手方向で前記吸気入口のある側の入口側端部の断面積が、前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分の断面積よりも大となるように、前記吸気本体が基膨らみ形状に設定され、
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記偏り方向の下手側端の反入口側端部の断面積が、前記入口側端部と前記反入口側端部との間の中間部の断面積よりも大となるように、前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分が先膨らみ形状に設定されている吸気マニホルド。
【請求項2】
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記入口側端部の側の端部に、ブローバイガスの戻し口が設けられている請求項1に記載の吸気マニホルド。
【請求項3】
前記戻し口は、前記吸気本体における前記入口側端部と前記入口側端部に隣り合う中間部との境部分に形成される傾斜壁の近傍となる位置に設けられている請求項2に記載の吸気マニホルド。
【請求項4】
前記傾斜壁は、前記吸気本体における前記開口が設けられる側である開口側の側壁が、開口配列方向において前記入口側端部に近付くに従って前記開口側に寄るように傾くものとして形成されている請求項3に記載の吸気マニホルド。
【請求項5】
各吸気ポートに対応した開口を有する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備え、
前記吸気本体の形状は、複数の前記開口が並ぶ開口配列方向に長い箱状であるとともに、複数の前記開口に対する前記吸気本体の開口配列方向の位置が偏っており、
前記吸気本体の前記開口に対する偏り方向で上手側の側壁に吸気入口が設けられ、
前記吸気本体の長手方向で前記吸気入口のある側の入口側端部の断面積が、前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分の断面積よりも大となるように、前記吸気本体が基膨らみ形状に設定され、
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記入口側端部の側の端部に、ブローバイガスの戻し口が設けられ、
前記戻し口は、前記吸気本体における前記入口側端部と前記入口側端部に隣り合う中間部との境部分に形成される傾斜壁の近傍となる位置に設けられ、
前記傾斜壁は、前記吸気本体における前記開口が設けられる側である開口側の側壁が、開口配列方向において前記入口側端部に近付くに従って前記開口側に寄るように傾くものとして形成されている吸気マニホルド。
【請求項6】
複数の前記枝管のうちの前記偏り方向の最も上手側に位置する第1枝管は、前記入口側端部から取り出されている請求項1~5の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項7】
前記入口側端部における前記第1枝管の取出し箇所と前記吸気入口とは、互いに横方向で反対側に位置するように設定されている請求項6に記載の吸気マニホルド。
【請求項8】
前記第1枝管は、前記入口側端部から前記偏り方向の上手側に向かう傾斜角度を有して取出されている請求項6又は7に記載の吸気マニホルド。
【請求項9】
複数の前記枝管は、前記吸気本体の底壁及び/又は底壁付近の側壁から取り出されるとともに、前記入口側端部の開口配列方向視における形状が縦長形状に設定されている請求項1~8の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項10】
前記吸気入口は、前記上手側の側壁の上部に設けられている請求項9に記載の吸気マニホルド。
【請求項11】
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記入口側端部に隣合う中間部の上下幅は、前記入口側端部の上下幅よりも小に設定され、
前記入口側端部と前記中間部との境部分では、前記入口側端部から前記中間部に行くに従って上下幅が減少するように、前記吸気本体の天井壁及び/又は底壁に傾斜が付けられている請求項1~10の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各吸気ポートに対応した開口を有する複数の枝管と、複数の枝管の基端側に連通する1つの吸気本体8Hとを備えた吸気マニホルドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農機、建機などに用いられる産業用エンジンや自動車用エンジンに用いられる吸気マニホルドは、複数の枝管とそれら枝管の基端側に連通される吸気本体(サージタンク)とを持つ構造、いわゆる枝管構造の吸気マニホルドも多い。例えば、立型直列4気筒エンジンにおいては、特許文献1に開示されるように、4つの枝管(分岐管:12~15)と、それらの基端側に連通する1つの吸気本体(サージタンク:11)とを備えている。
【0003】
特許文献1が開示する吸気マニホルド(1)では、4つの枝管(分岐管:12~15)のそれぞれは比較的長い管であり、かつ、吸気本体(サージタンクタンク:11)の1ケ所の吸気入口(スロットル装置:3)は、吸気本体における枝管取出し側とは反対側の端に設けられている。従って、吸気本体の吸気入口(スロットル装置:3)から各枝管(分岐管:12~15)の先端までの長さや容積を揃えることができ、シリンダヘッドの各吸気ポート(各気筒)への吸気の流れが比較的均一となる状態とされている。
【0004】
一方、エンジンの機種や仕様によっては、吸気本体と各枝管との位置関係が歪になることがある。例えば特許文献2が示すエンジンにおいては、その図3図5に示されるように、シリンダヘッド(6)に対して吸気本体(サージタンク:14)が気筒配列方向(シリンダヘッドの長手方向)に大きく偏って配置され、かつ、吸気本体における偏り方向の上手側の側壁に吸気入口(取付フランジ28又はスロットルボディ16を参照)がある。
【0005】
そのため、各枝管(分岐管:46-1~46-4)はそれぞれが互いに異なる傾斜角度で、かつ、互いに異なる長さを有して吸気本体(サージタンク:14)に接続されるとともに、吸気本体から各枝管へ向かう吸気の流れ方向は、吸気本体の吸気入口における吸気の流れ方向に対して逆向きとなる角度が付いている。特に、偏り方向で上手側端にある第1枝管(第1分岐管:46-1)では、前述の逆向き角度が相当に急なものとなっている。
【0006】
故に、特許文献2が示す吸気マニホルドでは、吸気本体(サージタンク:14)の吸気入口から各枝管(分岐管:46-1~46-4)の先端までの長さや容積が互いに異なったものとなり、特に、第1枝管(第1分岐管:46-1)に吸気が円滑に流れ難く、シリンダヘッドの各吸気ポート(各気筒)への吸気の流れが不揃いになり易い。
【0007】
そこで、特許文献2に示される歪な形状を持つ吸気マニホルドと同様な吸気マニホルドを開示する特許文献3においては、4つの各枝管(13)の先端開口の配列方向に大きく偏って配置される吸気本体(主管:29)を、内容積を稼げる大きな箱状とすることにより、吸気入口からの吸気が極力等しい状態で各枝管に流れるように構成されていた。
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示される吸気マニホルドであっても、とりわけ長さの長い第1枝管に吸気が流れ難いなど、各吸気ポートへの吸気の流れが不揃いになり易い傾向が解消されるまでには至っていないとともに、吸気本体が大型化し易い不利もある。従って、吸気本体が気筒配列方向に偏って配置される歪な形状を採る吸気マニホルドにおいては、各枝管に均一に揃った吸気の流れを実現させる点では改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-94841号公報
【文献】特開平11-50923号公報
【文献】特開2012-197759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、主に吸気本体のさらなる構造工夫により、吸気本体が枝管に対して気筒配列方向に偏って配置される歪な形状を採る吸気マニホルドにおいて、吸気本体のコンパクトを図りながらも各枝管に極力均一に揃った吸気が流れるように、より改善されたものとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(請求項1と請求項5に係る発明に共通する発明特定事項)
本発明は、吸気マニホルドにおいて、
各吸気ポートに対応した開口を有する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備え、
前記吸気本体の形状は、複数の前記開口が並ぶ開口配列方向に長い箱状であるとともに、複数の前記開口に対する前記吸気本体の開口配列方向の位置が偏っており、
前記吸気本体の前記開口に対する偏り方向で上手側の側壁に吸気入口が設けられ、
前記吸気本体の長手方向で前記吸気入口のある側の入口側端部の断面積が、前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分の断面積よりも大となるように、前記吸気本体が基膨らみ形状に設定されている。
(請求項1に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記偏り方向の下手側端の反入口側端部の断面積が、前記入口側端部と前記反入口側端部との間の中間部の断面積よりも大となるように、前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分が先膨らみ形状に設定されていることを特徴とする。
(請求項5に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気本体の前記入口側端部以外の部分のうちの前記入口側端部の側の端部に、ブローバイガスの戻し口が設けられ、
前記戻し口は、前記吸気本体における前記入口側端部と前記入口側端部に隣り合う中間部との境部分に形成される傾斜壁の近傍となる位置に設けられ、
前記傾斜壁は、前記吸気本体における前記開口が設けられる側である開口側の側壁が、開口配列方向において前記入口側端部に近付くに従って前記開口側に寄るように傾くものとして形成されていることを特徴とする。
【0012】
複数の前記枝管のうちの前記偏り方向の最も上手側に位置する第1枝管は、前記入口側端部から取り出されていると好都合であり、前記入口側端部における前記第1枝管の取出し箇所と前記吸気入口とは、互いに横方向で反対側に位置するように設定されているとより好都合である。また、前記第1枝管は、前記入口側端部から前記偏り方向の上手側に向かう傾斜角度を有して取出されていてもよい。
【0013】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、請求項2~4,6~11を参照のこと。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、詳しくは後述するが、入口側端部からそれ以外の部分へ断面積が縮小される形状変化部位の存在によって、入口側端部の内部空間では吸気入口から偏り方向(前後方向)に向って入ってくる吸気の流れる向きを無理なく大きく変えることができて、偏り方向の最も上手側の枝管にも円滑に流入させることが可能になる。なお、その他の枝管では、吸気入口から偏り方向(前後方向)に向って入ってくる吸気の流れる向きに、吸気入口からの距離が十分とれるようになるから、比較的吸気は円滑に流れる。
【0015】
従って、偏り方向で最も上手側にあって特に吸気が流れて行き難かった枝管に、吸気入口からの吸気を円滑で効率良く流せるから、吸気本体を徒に大型化することなくコンパクトなものとしながら、複数の枝管への流れ方をできるだけ互いに等しい状態にすることができる。
【0016】
その結果、主に吸気本体のさらなる構造工夫により、吸気本体が枝管に対して気筒配列方向に偏って配置される歪な形状を採る吸気マニホルドにおいて、吸気本体のコンパクトを図りながらも各枝管に極力均一に揃った吸気が流れるように、より改善されたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】吸気マニホルドの左側面図
図2】吸気マニホルドの右側面図
図3】吸気マニホルドの底面図
図4】(A)は吸気マニホルドの正面図、(B)は吸気マニホルドの背面図
図5】吸気マニホルドの一部切欠きの平面図
図6】吸気マニホルドを左前上部から見下ろした斜視図
図7】産業用エンジンを左上方から見下ろした平面図
図8】産業用エンジンを左後上方から見下ろした平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による吸気マニホルド及びそれが適用された産業用エンジンの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下において、クランク軸方向で伝動ケース5が設けられている側を前、フライホイールハウジング7が設けられている側を後、吸気マニホルド8が設けられている側を右、排気カバー10が設けられている側を左とする。
【0019】
図7及び図8に、例えば農用トラクタやローントラクタなどの走行可能な作業機に用いられる火花点火式で立形直列多(複数)気筒の産業用エンジンEが示されている。この産業用エンジンEは、シリンダブロック1の上部にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上部にシリンダヘッドカバー(以下、単にヘッドカバーと略称する)3が組付けられ、シリンダブロック1の下部にオイルパン4が組付けられている。
【0020】
シリンダブロック1の前に伝動ケース5が組付けられ、シリンダブロック1の後にフライホイールハウジング7が配置されている。1Aはクランク軸、6はエンジン冷却ファン軸(ウォータポンプ軸)、8は吸気マニホルド、9はオルタネータ、10は排気カバーである。排気カバー10は、シリンダヘッド2の左横に取付けられる排気マニホルド(図示されていない)を覆うカバーである。なお、シリンダブロック1の上半部はシリンダ部(符記省略)に、そして、下半部はクランクケース(符記省略)である。
【0021】
シリンダヘッド2の右側上部には、ヘッドカバー3の右側に位置して前後に並ぶ4つのコイル一体形プラグ11が、斜め上方に立ち上がる状態で設けられている。ヘッドカバー3は、前部の上壁3aと、上壁3aの後側には上壁3aより少し高さの高い天井壁3bとを有し、上壁3aから立設される通路パイプ12Aの上端にはオイルキャップ12が設けられている。なお、図7,8において、15はスタータモータ、16はスロットルボディ、17はガスミキサ、18はヒューズボックス(エンジン関係補機)である。
【0022】
天井壁3bの前壁(符記省略)には、ブローバイガスの導出部13が前向きに設けられており、導出部13前方に取り出されて吸気マニホルド8に接続されるパイプ状(管状)のブローバイガス通路14が設けられている。ブローバイガス通路14は、通路パイプ12Aの後で、かつ、上壁3aの上で右に大きく(約180度)曲げられてから、コイル一体形プラグ11の最前のもの11と前から2つ目のもの11との前後間を通されて右方に延ばされている。
【0023】
次に、吸気マニホルド8及びその周辺構造について説明する。図1図6に示されるよ
うに、吸気マニホルド8は、シリンダヘッド2の各吸気ポートpa~pdに対応した開口41~44を有する4つ(複数の一例)の枝管8A~8Dと、4つの枝管8A~8Dの基端側に連通する1つの吸気本体(サージタンク)8Hとを備えている。つまり、吸気マニホルド8は所謂「枝管構造」が採られている。吸気マニホルド8の材質は、アルミ合金などの金属材が望ましいが、その他の材料(合成樹脂材など)からなるものでもよい。
【0024】
図1図6に示されるように、吸気本体8Hは、4つの開口41~44が並ぶ開口配列方向(クランク軸方向であって前後方向)に長い箱形に設定されており、大別して、前側の入口側端部21と、後側の反入口側端部23と、前後中間の中間部22とを有して構成されている。なお、開口配列方向と、気筒配列方向と、各吸気ポートpa~pdの配列方向とは同じ方向(前後方向)である。
入口側端部21は、前後方向視において縦長の矩形を呈し、前壁(「偏り方向で上手側の側壁」の一例)8Fと、前天井壁24と、前左側壁25と、前右側壁26と、前底壁27とを有している〔図4(A)を参照〕。なお、本実施形態における偏り方向とは、図1図8に示されるように、前後方向を意味する。また、偏り方向の上手側とは、前後方向の前側を意味する。
【0025】
中間部22は、前後方向視で縦長の断面形状を呈し、中間天井壁28と、中間左側壁29と、中間右側壁30と、中間底壁31とを有している。
反入口側端部23は、前後方向視で上下が左右より若干長い矩形を呈し、後壁(「長手方向の他端の側壁」の一例)8Rと、後天井壁32と、後左側壁33と、後右側壁34と、後底壁35とを有している〔図4(B)を参照〕。
【0026】
図1,3に示されるように、吸気本体8Hは、第1~第4開口41~44(又は取付フランジ36:後述)に対する前後方向(開口配列方向)の位置が後方に(第4開口44側に)偏っている。具体的には、吸気本体8Hの前後方向長さと、第1開口41と第4開口44との前後方向長さとがほぼ同じであって、吸気本体8Hの前面8fの前後方向の位置が、第1開口41と第2開口42との前後中間に位置し、かつ、吸気本体8Hの後面8rの前後方向の位置が第4開口44より後方に位置する状態に後方に偏っている。
【0027】
図1図2図4(A)、図5図6に示されるように、前左側壁25の後部(「入口側端部21と中間部22との境部分」に相当)は、後に行くに従って右に寄る傾斜が付けられた、即ち、前後方向に対する角度α(図5参照)が施された傾斜側壁8kとされている。前天井壁24の後部24aは、後に行くに従って下がる傾斜が付けられた傾斜天井壁に形成されている(図6参照)。前底壁27の後部27aは、後に行くに従って上がる傾斜が付けられた傾斜底壁に形成されている(図2参照)。
【0028】
前壁8Fの左側の大部分には、それ以外の部分より若干前に突出する平らな前面8fが形成されている〔図2図4(A)、図6を参照〕。この前面8fと、スロットルボディ16との接合面であってその上部には、前壁8Fを前後に貫通する円筒状の吸気入口iが形成されている。吸気入口iは、スロットルボディ16からの混合エアを吸気本体8Hに導入するための孔である。吸気入口iの周囲4カ所にはスロットルボディ16をボルト止めするためのナット部nが形成されている(図6を参照)。また、吸気入口iは、前壁8Fの幅方向で中央よりもやや左側(開口41~44側又はシリンダヘッド2側)に寄った位置に設けられている〔図4(A)を参照〕。
【0029】
図1図5図6に示されるように、後左側壁33の前部(反入口側端部23と中間部22との境部分)33aは、前に行くに従って右に寄る傾斜が付けられた、即ち、前後方向に対する角度β(図5参照)が施された傾斜側壁(33a)とされている。後壁8Rの外側には、前述のヒューズボックス18を取付けるための取付部20が左右に2カ所設けられている。取付部20は、例えばヒューズボックス18又はそれの支持部をボルト止めすべく後方突出するナット部に形成されているが、それ以外の手段でもよい。なお、封止栓38(図5を参照)で閉塞するとか各種センサ類を装着するとか通路を接続するといった多目的に使用可能な孔(円形孔)37が後壁8Rに形成されているが、孔37は無くてもよい。
【0030】
吸気本体8Hの形状は、次に述べるように、前後中間部が絞られたような複雑な形状に設定されている。即ち、後天井壁32と中間天井壁28とは互いに同じ上下幅を有しており(図2参照)、後右側壁34と中間右側壁30と前右側壁26とは互いに同じ左右位置(一直線に並んでいる)にある(図5を参照)。図2に示されるように、前天井壁24は中間天井壁28よりも高く、かつ、前底壁27は中間底壁31よりも低く、入口側端部21の上下幅は、中間部22及び反入口側端部23の上下幅より明らかに長く(大きく)設定されている。
【0031】
そして、図5に示されるように、前左側壁25は後左側壁33よりも左側(シリンダヘッド2側)に寄せられるとともに、中間部22の左右幅よりも反入口側端部23の左右幅が大きく、かつ、反入口側端部23の左右幅よりも入口側端部21の左右幅が大きくなるように設定されている。なお、角度αは、40度≦α≦70度(例:55度)で、角度βは、10度≦β30度(例:19度)であれば好ましいが、それらの限りではない。
【0032】
具体的には、吸気本体8Hの左側壁(シリンダヘッド2側の側壁)8Wは、その長手方向(前後方向)の中間部分が両端部分よりも右側(反シリンダヘッド2側)に寄った凹状壁に形成されている(図6参照)。入口側端部21と中間部22との境部分では、入口側端部21から中間部22に行くに従って上下幅が減少するように、前天井壁24の後部24a及び前底壁27の後部27aが形成され、吸気本体8Hの天井壁8T及び底壁8Uに傾斜が付けられている構成とされている(図2参照)。また、吸気本体8Hの右側壁(反シリンダヘッド2側の側壁)8Qは左右位置が一定の一直線状壁に形成されている(図5参照)。
【0033】
その結果、吸気本体8Hは、入口側端部21の断面積(容積)>反入口側端部23の断面積(容積)>中間部22の断面積(容積)、となる長手方向で中間部が絞られた形状に設定されている(図2,5を参照)。ここで言う「断面積」は、上下左右に拡がる平面で切った場合の断面積である。そして、吸気本体8Hの断面形状は基本的に上下に長い矩形であり、特に入口側端部21及び中間部22では縦に長い傾向にある。
【0034】
図1図6に示されるように、4つの枝管8A~8Dが前後に配列されており、それら前から順に第1~第4枝管8A~8Dは、吸気本体8Hの左側の側壁8Wの下部及び/又は底壁8Uから取り出されている(図3参照)。第1~第4枝管8A~8Dの先端部には、それら第1~第4枝管8A~8Dを一体化する取付フランジ36が形成されている。シリンダヘッド2に取付けられる取付フランジ36には、第1~第4枝管8A~8Dそれぞれの内部流路である第1~第4通路8a~8dに対応した第1~第4開口41~44が形成されている(図1参照)。
【0035】
吸気本体8Hの前に配置されるエンジン補機(スロットルボディ16,ガスミキサ17など)が配置される都合等により、吸気本体8Hの前端(前面8f)の前後方向の位置は、図3,7,8から分かるように、第1吸気ポートpaと第2吸気ポートpbとの前後中央部に相当するように設定されている。吸気本体8Hの後端(後壁8R)の前後方向の位置は、第4吸気ポートpdよりも後方に設定されている。なお、吸気本体8Hの「開口41~44側」は、「取付フランジ36配置(存在)側」や「枝管8A~8Dの延伸方向」、或いは「シリンダヘッド2側」と言い換えることができる。
【0036】
その結果、図3,5に示されるように、第4枝管8Dを除き、第1~第3枝管8A~8Cは、上下方向において、左に行く従って前に寄る前向き傾斜角が付けられた斜め管とされている。第2~第4枝管8B~8Dは、主に吸気本体8Hの底壁8Uから前方下向きに取り出され、第1枝管8Aは底壁8U及び前壁8Fに跨る状態で前方下向きに取り出されている(図2参照)。
【0037】
図7図8に示されるように、吸気本体8Hの左側壁8Wには、ブローバイガス通路14が接続される戻し口19が設けられている。具体的には、図1図5図6に示されるように、中間部22の中間左側壁29の前部に、僅かに左方に突出した縦長の補強部8sが形成されており、その上部にパイプ19aが貫通支持されている。パイプ19Aは水平から僅かに先上り(左上り)する姿勢で真左に、即ち、前後方向に対して垂直に左横方向に取り出されている。パイプ19aにはブローバイガス通路14が嵌装されて(図7,8を参照)、ヘッドカバー3と吸気本体8Hとが連通されており、ブローバイガスを吸気通路に戻せるように構成されている。
【0038】
ここで、吸気マニホルド8の形状の特徴をまとめると次のとおりである。図1図6に示されるように、吸気本体8Hの第1~第4開口41~44(又は取付フランジ36)に対する偏り方向(後方)で上手側(前側)の側壁(前壁)8Fに吸気入口iが設けられている。吸気本体8Hの長手方向(前後方向)で吸気入口iのある側の入口側端部21の断面積が、中間部22及び反入口側端部23(吸気本体8Hの入口側端部21以外の部分22,23)の断面積よりも大となるように、吸気本体8Hが基膨らみ形状(前膨らみ形状)に設定されている。基膨らみは、基拡がり、先窄まり、などと言い換え可能である。
【0039】
また、吸気本体8Hの後端部である反入口側端部23の断面積が中間部22の断面積よりも大となるように、中間部22と反入口側端部23(吸気本体8Hの入口側端部21以外の部分22,23)が先(後)膨らみ形状に(主に左側に膨らんでいる形状に)設定されている(図5参照)。先膨らみは、先拡がり、基窄まり、などと言い換え可能である。
【0040】
入口側端部21における第1枝管8Aの取出し箇所(第1基端管部40の基端部)と吸気入口iとは、互いに横方向(左右方向)で反対側に位置するように、即ち、第1枝管8Aの取出し箇所は前壁8Fの右に、かつ、吸気入口iは前壁8Fの左に設定されている〔図4(A)参照〕。そして、第1枝管8Aは、入口側端部21から偏り方向(前後方向)の上手側(前側)及び左下に向かう傾斜角度を有して取出されている(図1~3を参照)。
【0041】
図3に示されるように、第1~第4枝管8A~8Dの吸気本体8Hからの取出し角(上下方向視における前後方向に対する傾き角)θ1~θ4は、第4取出し角θ4から第1取出し角θ1に向かうに連れて小さくなるように設定されており、第1取出し角θ1は突出して小さい値である。例えば、第1取出し角θ1が15度前後(0度≦θ1<30度)、第2取出し角θ2が55度前後(45度≦θ2≦65度)、第3取出し角θ3が77度前後(70度≦θ2≦80度)、第4取出し角θ2が90度前後(80度≦θ2≦100度)である。
【0042】
各枝管8A~8Dは、吸気本体8Hの底壁8U及び/又は底壁8U付近の側壁8W,8Qから取り出されるとともに、入口側端部21の開口配列方向視における形状が縦長形状に設定され、吸気入口iは、前壁(偏り方向の上手側の側壁)8Fの上部に設けられている〔図3図4(A)を参照〕。中間部22の上下幅は、入口側端部21の上下幅よりも小に設定され、入口側端部21と中間部22との境部分では、入口側端部21から中間部22に行くに従って上下幅が減少するように、天井壁8Tの後下がり傾斜(後部24a)及び底壁8Uの後上り傾斜(後部27a)が付けられている(図2参照)。
【0043】
図1,5,6に示されるように、中間部22の前端部(吸気本体8Hの入口側端部21以外の部分22,23のうちの入口側端部21の側の端部)における左側壁(開口41~44側の側壁)8Wであって、傾斜側壁8kに極めて近い箇所にブローバイガスの戻し口19が設けられている。傾斜側壁8kは、開口配列方向(前後方向)において入口側端部21に近付く(前に行く)に従って開口側(取付フランジ36側であって左側)に寄るように傾く傾斜壁である。
すなわち、前記戻し口19は、前記吸気本体8Hにおける前記入口側端部21と前記中間部22に隣り合う中間部22との境部分に形成される傾斜壁(傾斜側壁8k)の近傍となる位置に設けられている。
【0044】
ところで、吸気本体8Hの天井壁8Tには、吸気圧センサや吸気温度センサなどの吸気マニホルド8用の計測装置38(図7,8を参照)を取付けるための取付座39(図1,2,6を参照)が設けられている。吸気本体8Hの右側壁8Qには、側方に突出する前後3つの横ボス部45(図2,3,5を参照)が設けられ、天井壁8Tには上方に突出する前後3つの上ボス部46(図1,2,6を参照)が設けられている。横ボス45は、例えば、オイルゲージ47(図7,8を参照)のガイド(図示省略)や、取付部20に代えてヒューズボックス18(又はその支持部材)などの各種部品類を固定するときに使用可能なものである。同様に上ボス部46も、種々の部品類を装着可能とするものである。
【0045】
〔作用効果などについて〕
前述したように、吸気本体8Hが開口41~44に対して開口配列方向に偏って配置されている枝管構造の吸気マニホルドでは、偏り方向(前後方向)の上手(前)側端の第1枝管8Aに吸気を流すには、吸気入口iから吸気本体8Hに入った直後に約180度向きを変える必要があり、複数の枝管の中で最も流れ難い(吸入効率が芳しくない)傾向がある。
【0046】
そこで本発明は、吸気本体8Hの長手方向で吸気入口iのある側の入口側端部21の断面積が、中間部22及び反入口側端部23(入口側端部21以外の部分22,23)の断面積よりも大となるように、吸気本体8Hを基膨らみ形状に設定した点に特徴がある。この場合、入口側端部21は、中間部22に比べて上及び下の双方に長く、かつ、左右幅も長い縦長形状とされての基膨らみ形状の吸気本体8Hであるとよい。
【0047】
つまり、入口側端部21から中間部22へ断面積が縮小される形状変化部位によって、入口側端部21の内部空間では、吸気入口iから偏り方向(前後方向)に向いて入ってくる吸気の流れる向きを無理なく大きく変えることができて、円滑に第1枝管8Aに流入させることが可能になる(図3参照、詳しくは後述)。なお、その他の枝管8B,8C,8Dでは、吸気入口iから偏り方向(前後方向)に向かって入ってくる吸気の流れる向きに、吸気入口iからの距離が十分とれるようになるから、比較的吸気は円滑に流れる。
【0048】
従って、偏り方向で最も上手側にあって特に吸気が流れて行き難かった第1枝管8Aに、吸気入口iからの吸気を円滑で効率良く流せるから、入口側端部21を、即ち吸気本体8Hを徒に大型化することなくコンパクトなものとしながら、複数の枝管への流れ易さをできるだけ互いに等しい状態にすることができる。
【0049】
その結果、主に吸気本体8Hのさらなる構造工夫により、吸気本体8Hが枝管8A~8Dに対して気筒配列方向に偏って配置される歪な形状を採る吸気マニホルド8において、吸気本体8Hのコンパクトを図りながらも各枝管8A~8Dに極力均一に揃った吸気が流れるように、より改善されたものとすることができる。
【0050】
そして、吸気マニホルド8の吸気本体8Hは、左側(シリンダヘッド側)の左側壁8Wが、その長手方向の中間部分(中間部22)が両端部分(入口側端部21、反入口側端部23)よりも右側(反シリンダヘッド側)に寄った凹状壁(図5,6を参照)に形成されている。中間左側壁29が、前左側壁25及び後左側壁33より右に寄って凹んでいる。
【0051】
従って、中間部22とシリンダヘッド2との左右間には十分なスペースが確保されており、シリンダヘッド2の上部右角部分において前後に亘って配策されるワイヤーハーネス(図示省略)の組付け、取付フランジ36のシリンダヘッド2への組付け、或いは、各種配管類の保守点検など、手や手指を用いての組付け作業やメンテナンス作業が行い易い構成とされている。
【0052】
吸気本体8Hは、その断面が左右に短く上下に長い縦長矩形に形成されて、内部容積も十分に確保されている。故に、右側壁8Qの左右位置を従来品に比べてシリンダヘッド2に近づくように吸気本体8Hを設けて、エンジン上部のコンパクトを図りながら、吸気本体8Hは十分な内部容積があり、かつ、各枝管8A~8Dの通路長さも必要十分に取れている。
その結果、シリンダヘッド回りのメンテナンス作業のし易さを損ねることが無い又は少ないようにしながら、エンジンの横側方への張出しを抑えてエンジン上部のコンパクト化が可能となるように、より改善された吸気マニホルド8が実現されている。
【0053】
吸気マニホルド8においては、吸気入口iが前壁8Fの上端部で左寄りの位置に設けられ〔図4(A)を参照〕、かつ、比較的大きな角度αが施された傾斜側壁8kにより、吸気本体の内部空間が入口側端部21から中間部22に架けて大きく左に寄る状態に構成されている(図5参照)。従って、吸気入口iから入る混合気(又はエア)は、図5に示される4本の実線矢印yのように、大きく右に曲がりながら流れる状態になり、その結果、パイプ19aの内側部分xにおいては負圧状態になり易く、ブローバイガスの吸気本体8Hへの戻し移動が促進される効果が得られる。
【0054】
また、入口側端部21の後部の上下に設けられた傾斜天井壁24a(前天井壁24の後部24a)及び傾斜天井壁27a(前底壁27の後部27a)により、図2に破線の矢印hで示されるように、吸気入口iから吸気本体8Hに入った混合気(又はエア)は、大きく下に向きを変えての旋回移動がし易くなっている。
そして、複数の枝管8A~8Dのうち、気筒配列方向で最も一端の側壁(前壁)8Fの側に位置する第1枝管8Aは、気筒配列方向で吸気本体8Hの長手方向の他端の側壁(後壁)8Rの方向と上方向との双方に向く複合傾斜姿勢で吸気本体8Hから取り出される第1基端管部40を有している(図3参照)。
【0055】
従って、吸気入口iとは前後が逆向きであって本来的に最も流れ難い状況にある第1枝管8Aの第1通路8aに、従来の吸気マニホルドに比べて、吸気本体8Hからの混合気(又はエア)が流入され易くなり、第1吸気ポートpaでの吸入効率が向上する、という利点がある(図2参照)。この場合、吸気入口iが左に寄り、かつ、第1枝管8Aの基端が右に寄っている構成によって、より吸入効率の向上が図れる利点もある(図5参照)。
【0056】
〔別実施形態〕
枝管8A~8Dの数は、4以外の複数でもよい。入口側端部21、中間部22、反入口側端部23それぞれの気筒配列方向の長さの比(左側壁8Wの全長に対する凹状部分の前後長さの比)は、図1,5,6などで図示される比以外の任意に設定可能である。
【0057】
次の(1)(2)に示される吸気本体8Hや吸気マニホルド8でもよい。(1)中間右側壁30が前右側壁26よりも開口側(左側)に寄せられたことによる基膨らみ形状の吸気本体8H。(2)吸気本体8Hにおける開口側と反対側の右側壁8Qが、その長手方向の中間部分が両端部分よりも開口側に寄った凹状壁に形成されている吸気マニホルド。
【符号の説明】
【0058】
8A~8D 枝管(第1~第4枝管)
8F 偏り方向で上手側の側壁(前壁)
8H 吸気本体
8Q 底壁付近の側壁(右側壁)
8T 天井壁
8U 底壁
8W 底壁付近の側壁(左側壁)、開口側の側壁
8k 傾斜壁
19 戻し口(ブローバイガス)
21 入口側端部
22 入口側端部以外の部分(中間部)
23 入口側端部以外の部分(反入口側端部)
41~44 開口(第1~第4開口)
i 吸気入口
pa~pd 吸気ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8