(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】渦流ブロワ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/60 20060101AFI20240404BHJP
F04D 23/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F04D29/60 H
F04D23/00 A
(21)【出願番号】P 2021122933
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朋生
(72)【発明者】
【氏名】武田 諭
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278231(JP,A)
【文献】特開平8-210293(JP,A)
【文献】特開平4-124495(JP,A)
【文献】実開平5-78990(JP,U)
【文献】特開2006-63880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/60
F04D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる回転軸を有する電動機と、
環状の溝部および該溝部に位置するブレードを有し、前記回転軸に取付けられる羽根車と、
前記溝部の開口に対向する通風路を有し、前記第1方向において前記羽根車と間隔を空けて位置するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、前記第1方向に延びる突条部を有し、
前記突条部は、前記第1方向に延びる長孔と、前記長孔に位置するとともに前記電動機と前記ケーシングとの相対位置を固定する固定部材と、を備えることを特徴とする渦流ブロワ。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流ブロワにおいて、
前記電動機が固定されるベース部を備え、
前記電動機は、前記突条部が前記第1方向に進退自在に移動する穴または溝が形成されていることを特徴とする渦流ブロワ。
【請求項3】
請求項2に記載の渦流ブロワにおいて、
前記ケーシングは、前記ベース部に形成された吸込流路から空気を吸い込む吸込口と、前記ベース部に形成された吐出流路に空気を吐出する吐出口と、を備え、
前記突条部は、前記吸込口と前記吐出口の上部にそれぞれ設けられていることを特徴とする渦流ブロワ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の渦流ブロワにおいて、
前記羽根車は、前記回転軸と一体に形成されていることを特徴とする渦流ブロワ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の渦流ブロワにおいて、
前記長孔は、前記回転軸の軸方向に沿って延びるとともに鉛直方向に貫通して形成されていることを特徴とする渦流ブロワ。
【請求項6】
請求項5に記載の渦流ブロワにおいて、
前記長孔は、前記第1方向に沿って段階的に異なる幅となる段付き部を有し、
前記段付き部の段付き幅に調整されたキャップと突き合わせて固定することを特徴とする渦流ブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流ブロワのギャップ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渦流ブロワは、隣接して設けられた吸入口から吐出口に至る環状の流路を有する羽根車と、この羽根車を駆動するモータと、モータと羽根車との間に設けられて、モータの軸を指示するベアリングを備えている(特許文献1参照)。この種の渦流ブロワは、ケーシングと羽根車のギャップの変化により性能が変化する。ギャップの調整は、ベアリングと羽根車の間に挟むギャップ調整用シムの量を変更して行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す渦流ブロワは、ギャップの調整をするために分解してシムの量を調整し、組立し直す必要があるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、分解・組立をすることなくギャップの調整を行うことが可能な渦流ブロワを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1方向に延びる回転軸を有する電動機と、環状の溝部および該溝部に位置するブレードを有し、前記回転軸に取付けられる羽根車と、前記溝部の開口に対向する通風路を有し、前記第1方向において前記羽根車と間隔を空けて位置するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記第1方向に延びる突条部を有し、前記突条部は、前記第1方向に延びる長孔と、前記長孔に位置するとともに前記電動機と前記ケーシングとの相対位置を固定する固定部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分解・組立をすることなくギャップの調整を行うことが可能な渦流ブロワを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る渦流ブロワの分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る渦流ブロワのケーシング単体を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る渦流ブロワの一部切欠縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるギャップ調整時の性能変化図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る渦流ブロワの一部切欠縦断面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係る渦流ブロワの正面図である。
【
図10】本実施形態の長孔の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る渦流ブロワを示す分解斜視図である。
図1に示すように、渦流ブロワ100は、モータ(電動機)110と、羽根車120と、ケーシング130と、ベース部140と、を備えて構成されている。なお、
図1は、モータ110、羽根車120、ケーシング130を軸方向Axに離した状態で図示している。また、
図1は、モータ110、ケーシング130、ベース部140を鉛直方向(上下方向)に離した状態で図示している。
【0010】
モータ110は、シャフト(回転軸)111と、このシャフト111に固定されるロータ112(
図3参照)と、ロータ112に回転力を与えるステータ113(
図3参照)と、ロータ112およびステータ113を収容するモータケース114とが組み合わされて構成されている。シャフト111の一端は、モータケース114から羽根車120側に突出している。
【0011】
モータケース114の鉛直方向の下部には、シャフト111の軸方向Ax(第1方向)に対して直交する方向に突出するフランジ部115が形成されている。このフランジ部115は、モータ110をベース部140に固定するための部材であり、軸方向Axに沿って略板状に形成されている。また、フランジ部115の羽根車120が位置する側には、ボルト150(固定部材)が挿通されるボルト挿通孔115aが形成されている。また、フランジ部115の羽根車120が位置する側とは反対側には、ボルト151が挿通されるボルト挿通孔115bが形成されている。
図1では、一方のフランジ部115のみを図示しているが、モータケース114を挟んだ反対側にも同様のフランジ部が形成され、そのフランジ部に同様にボルト挿通孔115a,115bが形成されている。
【0012】
羽根車120は、シャフト111に固定されるディスク部121(
図3参照)と湾曲部122(
図3参照)とが設けられたシュラウド123を有している。湾曲部122は、凹面がモータ110側(ケーシング130側)を向くように構成されている。また、湾曲部122の内面には円環状の溝部124(
図3参照)が形成されている。羽根車120はシャフト111と一体に形成されていてもよい。
【0013】
溝部124は、シュラウド123の湾曲部122(
図3参照)内に円周方向に所定の間隔毎に設けられる複数の羽根つまりブレード125により区画されている。円周方向に隣り合うブレード125の間は遠心溝となっている。ブレード125は、羽根車120の回転方向前方側が凹面となるようにシャフト111に沿う軸方向Axに湾曲するとともに、径方向中央部よりも径方向両端部が回転方向前方側に迫り出すように湾曲している。このように、ブレード125は、円周面に沿う二次元方向と回転軸に沿う軸方向Axとに三次元的に湾曲した湾曲タイプとなっている。
【0014】
ケーシング130は、環状部131(
図2参照)に一体となって形成された湾曲部132を有している。この湾曲部132は、溝部124の開口に対向する静止流路132s(通風路)を有している。また、ケーシング130は、湾曲部132の外周部に、軸方向Axに突出する円筒部133が一体に形成されている。
【0015】
また、ケーシング130の円筒部133には、ケーシングカバー160(
図3参照)が取り付けられている。羽根車120は、ケーシングカバー160により覆われている。なお、
図1では、ケーシングカバー160の図示を省略している。
【0016】
ベース部140は、モータ110が固定される台座部であり、上面140aにモータ110をボルト150,151で固定するための固定穴141a,141bが形成されている。なお、
図1では固定穴141a,141bが四個所に形成されるが、一個所の固定穴141aの図示を省略している。また、固定穴141a,141bの数は四個所に限定されるわけではなく、適宜設定してもよい。
【0017】
また、ベース部140は、軸方向Axを向く側面に吸込流路142と吐出流路143とが水平に並んで形成されている。吸込流路142の外方端には、図示しない吸込配管を接続するための接続口142aが形成され、吸込配管を介して吸込流路142には外部から空気が供給される。吐出流路143の外方端には、図示しない吐出配管を接続するための接続口143aが形成されている。また、吸込流路142には消音器(不図示)が組み込まれ、吐出流路143にも図示しない消音器が組み込まれている。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る渦流ブロワの羽根車を示す斜視図である。
図2に示すように、ケーシング130は、ベース部140(
図1参照)に形成された吸込流路142と接続される吸込口134と、吐出流路143と接続される吐出口135とが形成されている。吸込口134は、湾曲部132に形成された静止流路132sの一端と連通している。吐出口135は、湾曲部132に形成された静止流路132sの他端と連通している。
【0019】
また、ケーシング130には、吸込口134の上部に、モータ110(
図1参照)側に向けて延びる突条部136が形成されている。また、ケーシング130には、吐出口135の上部に、軸方向Axに沿ってモータ110(
図1参照)側に向けて延びる突条部137が形成されている。なお、突条部136,137の位置は、吸込口134,135の上部に限定されるものではなく、適宜変更することができる。この突条部136,137は、例えば四角板状に形成されるとともに、軸方向Ax(
図1参照)に沿って延びている。また、突条部136,137には、長孔136a,137aが形成されている。長孔136a,137aは、軸方向Axに沿って延びるとともに鉛直方向(上下方向)に貫通して形成されている。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る渦流ブロワの一部切欠縦断面図である。なお、
図3の上部は、シャフト111の位置で切断した状態であり、下部は、突条部137の位置で切断した状態である。
図3に示すように、ケーシング130の湾曲部132の内面には、円弧状(略円環状)の静止流路132sが形成されている。この静止流路132sの周方向の一端部外周側に吸込口134(
図2参照)が形成され、吸込口134が吸込流路142(
図1参照)と接続されている。また、静止流路132sの周方向の他端部外周側に吐出口135が形成され、吐出口135が吐出流路143と接続されている。このように、吸込流路142と静止流路132sとを連通させる部分が吸込口134となっている。また、吐出流路143と静止流路132sとを連通させる部分が吐出口135となっている。吸込口134と吐出口135は、それぞれが静止流路132sの径方向外周部側に設けられている。
【0021】
シャフト111には、該シャフト111の軸方向Axの両側に、ベアリング116,116が設けられている。ベアリング116は、例えばボール型であり、内輪116aがシャフト111に固定され、外輪116bがモータ110のブラケット114aに固定されている。
【0022】
吐出口135と吐出流路143とは、例えばシール材144を介して密閉され、吐出口135と吐出流路143との隙間から空気が漏れ出ないようになっている。なお、図示省略しているが、吸込口134と吸込流路142とについても同様にシール材を介して密閉され、吸込口134と吸込流路142との接続部の隙間から空気が漏れ出ないようになっている。
【0023】
モータケース114に形成されたフランジ部115には、突条部137がスライド可能に挿入される切欠溝115cが形成されている。この切欠溝115cは、ベース部140の上面140a側を向く面(下面)が解放した形状である。モータ110をベース部140に固定することで、切欠溝115cとベース部140の上面140aとによって、突条部137が進退自在に挿入される穴115dが形成される。なお、突条部136側についても同様にして、フランジ部115に切欠溝が形成され、突条部136が進退自在に挿入される穴が形成されている。この穴115d内を突条部137が軸方向Axに移動することで、ケーシング130を軸方向Axに移動させることができる。これにより、モータ110とケーシング130との相対位置(相対的な位置)を変更できるようになっている。その結果、シムを用いるとともにシムの量を調整することなく、羽根車120とケーシング130とのギャップを調整することができる。
【0024】
また、フランジ部115とベース部140とは、ボルト151がフランジ部115のボルト挿通孔115bに挿通され、ベース部140の固定穴141b(
図1参照)に螺合されることで互いに固定される。
【0025】
突条部137は、穴115dに対して軸方向Axに進退自在に挿入される。突条部137を穴115dに挿入した後に、ボルト150をフランジ部115のボルト挿通孔115aに挿通する。そして、ボルト150を突条部137の長孔137a(
図2参照)に挿通して、ベース部140の上面140aに形成された固定穴141aにねじ込む。なお、ボルト150が締め付けられることによって、突条部137が穴115d内において抑え付けられ、軸方向Axに移動することが規制される。なお、突条部136についても、突条部137と同様にしてボルト150によって固定され、軸方向Axへの移動が規制される。
【0026】
図4は、
図3の要部拡大図である。
図4に示すように、モータ110は、円筒状のモータケース114の軸方向Axの一端に該モータケース114の一端を塞ぐ蓋部117を備えている。なお、この蓋部117は、
図4においてハッチングを省略して図示した部分である。また、蓋部117は、ボルト152を介してブラケット114aに固定されている。
【0027】
蓋部117の軸方向Axの外面117aは、ケーシング130の環状部131の外面131aと面で接している。また、蓋部117には、外面117aよりも径方向の内側に、軸方向Axの外側(羽根車120側)に向けて突出するボス部117bが形成されている。このボス部117bは、環状部131の軸方向Axに貫通する貫通孔131bに摺動可能に挿入されている。
図4では、外面117aと外面131aとが密接した状態であり、換言するとケーシング130がモータ110に突き当たっている状態である。この状態では、ケーシング130は、羽根車120から最も離れて、最大のギャップgが形成された状態である。
【0028】
羽根車120の湾曲部122は、ケーシング130の湾曲部132と対向するように配置される。また、湾曲部122の外周には、円環状の周面125aが形成されている。この周面125aは、ケーシング130の円筒部133の内周面133aと摺動するように構成されている。これにより、ケーシング130に対して羽根車120を軸方向Axにスライドさせることができるようになっている。つまり、羽根車120のディスク部121とケーシング130の環状部131との間の隙間(ギャップg)を調整できるようになっている。本実施形態の渦流ブロワ100では、ギャップgを狭めれば狭めるほど圧力を上げることができ、広げれば広げるほど風量を上げることができる特性を有している。
【0029】
図5は、本発明の実施形態におけるギャップ調整時の性能変化図である。なお、
図5において、ギャップgが0.3mmの場合を実線で示し、ギャップgが0.6mmの場合を破線で示している。
図5に示すように、本実施形態の渦流ブロワ100は、ギャップgの大小にかかわらず、風量Q(m
3/min)の増加に伴い圧力Ps(kPa)が低下する特性を有している。
【0030】
また、本実施形態の渦流ブロワ100において、ギャップgが0.3mmの場合の性能は、ギャップgが0.6mmの場合よりも、締め切り側で圧力Psが高くなり、解放側で風量Qが低くなる。この性能は、ギャップgを狭めることにより圧力を上げることが可能になり、ギャップgを広げることにより風量を上げることが可能である。
【0031】
次に、
図6および
図7に示す従来の渦流ブロワ1000と、本実施形態の渦流ブロワ100とを比較して説明する。
図6は、従来の渦流ブロワの縦断面図、
図7は、
図6の要部拡大図である。
図6に示すように、比較例として示す従来の渦流ブロワ1000は、モータ(電動機)1001と、羽根車1002と、ケーシング1003と、を備えて構成されている。ケーシング1003は、モータ1001にボルト1004を介して固定されている。また、渦流ブロワ1000では、ケーシング1003にモータ1001を取り付け、モータ1001のシャフト1011(回転軸)に、ギャップ調整用シム1005と羽根車1002を取り付けている。モータ1001とケーシング1003の相対位置は、ケーシング1003に設けられた嵌合部1006にモータ1001を突き当てることで決まる。一方、羽根車1002は、モータ1001のシャフト1011に嵌合させ、モータ1001の突き当て部1007(軸受部又は段差等)に突き当てることで、軸方向の位置決めを行っている。このとき、羽根車1002とケーシング1003とのギャップ面間の距離(ギャップ部)は、モータ1001、ケーシング1003、羽根車1002の寸法公差の集積によって発生するため一定とはならず、調整作業が発生する。
【0032】
渦流ブロワ1000の性能を調整する際は、ギャップ調整用シム1005を使用する枚数を変更し、調整を行っている。ギャップ調整用シム1005は、モータ1001と羽根車1002の間(
図7では、シャフト1011に固定されたベアリングと羽根車1002との間)に挿入され、調整を行う際は、分解・再組立を実施する。このように、従来の渦流ブロワ1000では、ギャップの調整に分解・組立を繰り返す必要があるという課題があった。
【0033】
そこで、本実施形態では、
図1ないし
図5において説明した渦流ブロワ100を構成したものである。すなわち、ケーシング130は、ベース部140に突条部136,137を介して固定されている。これにより、モータ110は、軸方向Axに動くことが可能になる。また、羽根車120は、モータ110(シャフト111)に固定されているため、モータ110が軸方向Axに動くことで、羽根車120も軸方向Axに同時に動く。モータ110は、位置決めを実施した後にボルト150(固定部材)で固定することで、ケーシング130とモータ110の相対位置が固定され、渦流ブロワ100としての構造が構成される。なお、ボルト150は、長孔136a,137aを設けて、モータ110が軸方向Axに動くことを阻害しない構造になっている。モータ110の位置決めは、ボルト150でモータ110を固定する前に、羽根車120とケーシング130のギャップgを調整・確認しながら実施する。この場合、羽根車120を分解する必要が無い。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の渦流ブロワ100は、軸方向Ax(第1方向)に延びるシャフト111を有するモータ110と、環状の溝部124および該溝部124に位置するブレード125を有する。また、渦流ブロワ100は、シャフト111に取付けられる羽根車120と、溝部124の開口に対向する静止流路132s(通風路)を有し、軸方向Axにおいて羽根車120と間隔(ギャップg)を空けて位置するケーシング130と、を備える。ケーシング130は、軸方向Axに延びる突条部136,137を有する。突条部136,137は、軸方向Axに延びる長孔136a,137aを有する。長孔136a,137aに位置し、モータ110とケーシング130との相対位置を固定するボルト150(固定部材)を備える(
図1ないし
図3参照)。これによれば、ケーシング130とモータ110との軸方向Axにおける相対位置を調整できるので、分解・組立を行う必要がなくなり、ギャップgを調整する際の作業性を向上できる。
【0035】
また、本実施形態において、モータ110が固定されるベース部140を備え、モータ110(モータケース114のフランジ115)は、突条部136,137が軸方向Axに進退自在にスライド(移動)する切欠溝115c(溝)が形成されている(
図3参照)。これによれば、ベース部140側に突条部136,137を挿入可能な溝や穴を加工する必要がないので、ベース部140が大型化する(高さ寸法が高くなる)のを抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態において、ケーシング130は、ベース部140に形成された吸込流路142から空気を吸い込む吸込口134と、ベース部140に形成された吐出流路143に空気を吐出口135と、を備える。突条部136,137は、吸込口134と吐出口135の上部にそれぞれ設けられている。これによれば、突条部136,137がモータ110(フランジ部115)とベース部140との間に配置できるので、ボルト150を用いてモータ110をベース部140に固定すると同時に、ケーシング130(突条部136,137)をベース部140およびモータ110に固定することができる。
【0037】
(別の実施形態)
図8は、本発明の別の実施形態に係る渦流ブロワの一部切欠縦断面図である。
図9は、本発明の別の実施形態に係る渦流ブロワの正面図である。
図8に示すように、渦流ブロワ100Aは、シャフト110と一体に形成された羽根車180を備えている。なお、一体化とは、部品を組みわせることなく、一つの部品で構成されていることを意味する。シムを用いないことにより羽根車とシャフトとを一体化することが可能となる。羽根車とシャフトとを一体化することにより、当該部品同士を組み合わせることにより発生する組立誤差が減り、より精度の高いギャップ調整が可能となる。
【0038】
図9に示すように、渦流ブロワ100Aは、ケーシング181を固定する共通ベース182と、モータ110を固定するモータベース183と、を備えている。共通ベース182には、ボルト150が挿通されるボルト挿通孔(不図示)が設けられている。これにより、軸方向Axを調整することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例を含むことができる。例えば、本実施形態では、モータ110(フランジ部115)に切欠溝115cを形成して、フランジ部115とベース部140とで突条部136,137を挟んで固定する構造を例に挙げて説明したが、フランジ部115に突条部136,137が進退自在に移動する穴が設けられていてもよく、あるいはベース部140に突条部136,137が進退自在に移動する穴が設けられていてもよい。また、フランジ部115の上面に、突条部136,137がスライド可能な溝を形成してもよい。
【0040】
また、
図10に示すように、突条部136,137に段付きの長孔(段付きの孔)191を形成し、さらにボルト150に段付きの長孔191の段201(
図11参照)に合わせたキャップ192を挿入して固定してもよい。この段付きの長孔191は、所定のギャップ調整量毎に段201が付いた段付き構造となっている。また、所定の段付き部の幅(段付き幅)Wに合う形状のキャップ192を用意し、段付き部分と固定することにより、段形状毎において段階的にギャップ量を調整することが可能となる。これにより、キャップ192の大きさを変更することによりギャップ測定することなく、任意のギャップ量に変更することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 渦流ブロワ
110 モータ(電動機)
111 シャフト(回転軸)
114 モータケース
115 フランジ部
115a ボルト挿通孔
115c 切欠溝
115d 穴
120 羽根車
124 溝部
125 ブレード
130 ケーシング
132s 静止流路(通風路)
134 吸込口
135 吐出口
136,137 突条部
136a,137a 長孔
140 ベース部
142 吸込流路
143 吐出流路
141a 固定穴
150 ボルト(固定部材)
180 シャフトと一体化した羽根車
181 ケーシング
182 共通ベース
183 モータベース
191 段付きの長孔(段付きの孔)
192 段付きの長孔用のキャップ
201 段(段付き部)
Ax 軸方向(第1方向)
g ギャップ(間隔)
W 段付き部の幅(段付き幅)