(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】加熱処理装置、搬入搬出治具、および有機膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240404BHJP
F24H 3/04 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L21/30 567
F24H3/04 302
(21)【出願番号】P 2021156921
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】磯 明典
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩一
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014514(JP,A)
【文献】特開2005-015171(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123111(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/067544(WO,A1)
【文献】特開平08-321470(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0078376(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/04
H01L 21/027
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、少なくとも一対の受け部材を有するカセットラックと、
前記一対の受け部材の上方に設けられ、少なくとも1つの第1のヒータを有する第1の加熱部と、
前記一対の受け部材の下方に設けられ、少なくとも1つの第2のヒータを有し、前記第1の加熱部と対向する第2の加熱部と、
箱状を呈し、内部にワークが支持される空間を有し、前記第1の加熱部と前記第2の加熱部との間において、前記一対の受け部材に着脱自在に支持されるカセットと、
を備え、
前記カセットの、互いに対向する一対の側面のそれぞれには、前記受け部材に支持されるカセット支持部が設けられている加熱処理装置。
【請求項2】
前記受け部材は、
前記第1の加熱部側に設けられ、前記カセットの前記カセット支持部を支持する第1の端部と、
前記第2の加熱部側に設けられ、前記第1の端部と対向する第2の端部と、
を有し、
前記第1の端部から前記第2の端部に向かう方向に見た場合に、前記第2の端部の先端は、前記第1の端部の先端よりも、前記カセットの前記側面側に位置している請求項1記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記カセットは、前記ワークが支持される空間の外縁を形成する骨組み構造であって、直方体の縁を形成するカセットフレームと、
前記カセットフレームに設けられる均熱板と、を有することを特徴とする請求項1記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記均熱板は、前記カセットフレームの上面と下面の少なくとも一方が、単一の板状部材である前記均熱板からなることを特徴とする請求項3記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記カセットは、
前記カセットの内部に設けられ、前記ワークに冷却ガスを供給する少なくとも1つのノズルと、
前記ノズルと接続され、前記冷却ガスが流通する筒状体と、
をさらに備え、
前記筒状体は、前記カセットの一部を構成する請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間に、着脱自在に設けられ、前記カセットを昇降可能な搬入搬出治具をさらに備えた請求項2記載の加熱処理装置。
【請求項7】
箱状を呈
し内部にワークを加熱する空間を有するカセットを、加熱処理装置に搬入、または、前記加熱処理装置から搬出する際に用いられる治具であって、
前記カセットに接触する複数のローラと、
前記複数のローラを昇降させる昇降ユニットと、
を備えた搬入搬出治具。
【請求項8】
前記昇降ユニットと、連結および分離可能な連結ユニットをさらに備え、
前記複数のローラは、前記昇降ユニットと前記連結ユニットの連結方向に並んでいる請求項7記載の搬入搬出治具。
【請求項9】
請求項7または8に記載の搬入搬出治具を用いて、基板と、前記基板の表面に塗布された溶液と、を有するワークを加熱する処理空間を有するカセットを、加熱処理装置のチャンバの内部に搬入する工程と、
前記カセットの内部に、前記ワークを支持させる工程と、
前記チャンバの内部に搬入された前記カセットを加熱して、前記基板の表面に有機膜を形成する工程と、
を備えた有機膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加熱処理装置、搬入搬出治具、および有機膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加熱して、ワークの表面に膜などを形成したり、ワークの表面を処理したりする加熱処理装置がある。
例えば、内部にワークが保持される処理容器と、処理容器の内部に設けられ、ワークの表面に対向する板材と、処理容器の内部に設けられ、ワークの裏面に対向する板材と、処理容器の上側および下側に設けられた複数のヒータと、処理容器に連結されたロードロック室と、を有する加熱処理装置が提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
この様な加熱処理装置とすれば、ワークの表面側、およびワークの裏面側から加熱を行うことができるので、処理時間の短縮を図ることができる。
【0003】
また、処理容器の内部に、ワークの表面に対向する板材が設けられているので、複数のヒータからの熱を板材に入射させることができる。板材に入射した熱は、板材の面方向に伝達しながらワークの表面に入射する。
また、処理容器の内部に、ワークの裏面に対向する板材が設けられているので、複数のヒータからの熱を板材に入射させることができる。板材に入射した熱は、板材の面方向に伝達しながらワークの裏面に入射する。
そのため、加熱処理の際に、ワークの表面温度、およびワークの裏面温度に面内分布のばらつきが生じるのを抑制することができる。その結果、形成された膜や、処理された層の品質に面内分布のばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0004】
ここで、加熱処理の際に、ワークから昇華物が放出される場合がある。放出された昇華物は、板材や、処理容器の内壁などに付着する。そのため、必要に応じて、あるいは定期的に昇華物を除去するメンテナンスが必要となる。
ところが、板材は処理容器の内部に固定され、処理容器はロードロック室に固定されている。そのため、昇華物を除去する際にこれらの要素の分解と組立が必要となるので、メンテナンスに要する時間や労力が過大となる。また、昇華物を除去するメンテナンスを行っている間は、加熱処理装置を稼働させることができない。
【0005】
そこで、メンテナンスの容易化を図ることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、メンテナンスの容易化を図ることができる加熱処理装置、搬入搬出治具、および有機膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る加熱処理装置は、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられ、少なくとも一対の受け部材を有するカセットラックと、前記一対の受け部材の上方に設けられ、少なくとも1つの第1のヒータを有する第1の加熱部と、前記一対の受け部材の下方に設けられ、少なくとも1つの第2のヒータを有し、前記第1の加熱部と対向する第2の加熱部と、箱状を呈し、内部にワークが支持される空間を有し、前記第1の加熱部と前記第2の加熱部との間において、前記一対の受け部材に着脱自在に支持されるカセットと、を備えている。前記カセットの、互いに対向する一対の側面のそれぞれには、前記受け部材に支持されるカセット支持部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、メンテナンスの容易化を図ることができる加熱処理装置、搬入搬出治具、および有機膜の形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る加熱処理装置を例示するための模式正面図である。
【
図2】
図1における加熱処理装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図3】チャンバ、およびカセットラックの模式斜視図である。
【
図4】カセットの外観を例示するための模式斜視図である。
【
図5】カセットの内部を例示するための模式斜視図である。
【
図6】カセットラックのフレームの受け部材が設けられる部分を例示するための模式図である。
【
図7】カセットをチャンバ内に搬入または搬出させる際に用いられる搬入搬出治具を例示するための模式斜視図である。
【
図8】搬入搬出治具の駆動ユニットを例示するための模式斜視図である。
【
図9】搬入搬出治具の駆動ユニットと連結された昇降ユニットを例示するための模式断面図である。
【
図10】連結ユニットと連結ユニットとの間に連結された昇降ユニットを例示するための模式断面図である。
【
図11】
図10におけるブロックをY方向から見た場合の模式分解図である。
【
図12】昇降ユニットと昇降ユニットとの間に連結された連結ユニットを例示するための模式断面図である。
【
図13】連結ユニットのカバーおよびシャフトの模式側面図である。
【
図14】搬入搬出治具が下降端にある場合の昇降ユニットの状態を例示するための模式図である。
【
図15】搬入搬出治具が上昇端にある場合の昇降ユニットの状態を例示するための模式図である。
【
図16】カセットの搬入搬出方法を例示するための模式図である。
【
図17】カセットの搬入搬出方法を例示するための模式図である。
【
図18】(a)は、他の実施形態に係るカセットの内部を例示するための模式斜視図である。(b)は、(a)におけるB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下においては、一例として、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワークを加熱して、ワークの表面に有機膜を形成する加熱処理装置を説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるわけではない。例えば、本発明は、ワークを加熱して、ワークの表面に無機膜などを形成したり、ワークの表面を処理したりする加熱処理装置にも適用することができる。
【0012】
また、加熱前のワークは、例えば、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有するものであってもよいし、基板のみであってもよい。以下においては、一例として、加熱前のワークが、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有する場合を説明する。
なお、溶液には、液体が仮焼成されて半硬化状態(流れない状態)のものも含まれる。
【0013】
本実施の形態に係る加熱処理装置1により加熱処理される前のワーク100は、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有する。
基板は、例えば、ガラス基板や半導体ウェーハなどである。ただし、基板は、例示をしたものに限定されるわけではない。
溶液は、例えば、有機材料と溶剤を含んでいる。有機材料は、溶剤により溶解が可能なものであれば特に限定はない。溶液は、例えば、ポリアミド酸を含むワニスなどとすることができる。ただし、溶液は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る加熱処理装置1を例示するための模式正面図である。
なお、
図1においては、繁雑となるのを避けるために、カセット50を1つのみ描いている。
図2は、
図1における加熱処理装置1のA-A線方向の模式断面図である。
なお、
図2においては、繁雑となるのを避けるために、カセット50を省いて描いている。
図3は、チャンバ10、およびカセットラック60の模式斜視図である。
なお、各図中のX方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する三方向を表している。本明細書における上下方向は、Z方向とすることができる。
【0015】
図1および
図2に示すように、加熱処理装置1には、例えば、チャンバ10、排気部20、加熱部30、冷却部40、カセット50、カセットラック60、およびコントローラ70が設けられている。
【0016】
コントローラ70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。コントローラ70は、例えば、コンピュータなどである。コントローラ70は、例えば、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、加熱処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0017】
図1~
図3に示すように、チャンバ10は、箱状を呈している。チャンバ10は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。チャンバ10の外観形状には特に限定はない。チャンバ10の外観形状は、例えば、直方体や円筒とすることができる。チャンバ10は、例えば、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0018】
例えば、Y方向におけるチャンバ10の両端には開口が設けられている。Y方向におけるチャンバ10の一方の端部には、フランジ11が設けられている。フランジ11には、Oリングなどのシール材12が設けられている。チャンバ10の、フランジ11が設けられた側には開閉扉13が設けられている。開閉扉13を閉めた際には、シール材12により、チャンバ10の開口が気密になるように閉鎖される。開閉扉13を開けた際には、チャンバ10の一方の端部における開口を介したワーク100の搬入または搬出を行うことができる。
【0019】
例えば、Y方向におけるチャンバ10の他方の端部には、フランジ14が設けられている。フランジ14には、シール材12が設けられている。チャンバ10の、フランジ14が設けられた側には蓋15が設けられている。例えば、蓋15は、ネジなどの締結部材を用いて、フランジ14に着脱可能に設けることができる。蓋15を取り付けた際には、シール材12により、チャンバ10の開口が気密になるように閉鎖される。着脱可能な蓋15が設けられていれば、加熱処理装置1の、フランジ14が設けられた側からのメンテナンスが容易となる。また、メンテナンスのために蓋15を開けた際には、ワーク100を加熱する処理空間を有するカセット50は、チャンバ10の他方の端部における開口を介して、チャンバ10の内部に搬入される。また、カセット50は、チャンバ10の他方の端部における開口を介して、チャンバ10の外部に搬出される。なお、カセット50およびカセット50の搬入搬出に関する詳細は後述する。
【0020】
また、チャンバ10の外壁には図示しない冷却装置を設けることができる。冷却装置は、例えば、ウォータージャケット(Water Jacket)とすることができる。冷却装置が設けられていれば、チャンバ10の外壁温度が所定の温度よりも高くなるのを抑制することができる。
【0021】
排気部20は、チャンバ10の内部を排気する。
図1に示すように、排気部20は、第1の排気部21、および第2の排気部22を有する。第1の排気部21、および第2の排気部22は、チャンバ10の底面に設けられた排気口16に接続されている。
【0022】
第1の排気部21は、排気ポンプ21aと、圧力制御部21bを有する。
排気ポンプ21aは、大気圧から所定の圧力まで粗引き排気を行う排気ポンプとすることができる。そのため、排気ポンプ21aは、後述する排気ポンプ22aよりも排気量が多い。排気ポンプ21aは、例えば、ドライ真空ポンプなどとすることができる。
【0023】
圧力制御部21bは、排気口16と排気ポンプ21aとの間に設けられている。圧力制御部21bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部21bは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0024】
第2の排気部22は、排気ポンプ22aと、圧力制御部22bを有する。
排気ポンプ22aは、排気ポンプ21aによる粗引き排気の後、さらに低い所定の圧力まで排気を行う。排気ポンプ22aは、例えば、高真空の分子流領域まで排気可能な排気能力を有する。例えば、排気ポンプ22aは、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
【0025】
圧力制御部22bは、排気口16と排気ポンプ22aとの間に設けられている。圧力制御部22bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部22bは、例えば、APCなどとすることができる。
【0026】
排気口16は、チャンバ10の底面に配置されている。そのため、第1の排気部21あるいは第2の排気部22によってチャンバ10の内部が排気されることで、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面に向かうダウンフローの気流が形成される。ダウンフローの気流が形成されれば、ワーク100を加熱した際に生じた、有機材料を含む昇華物が、ダウンフローの気流に乗ってチャンバ10の外部に排出される。そのため、チャンバ10の内壁などに昇華物などの異物が付着するのを抑制することができる。
【0027】
なお、以上においては、排気口16がチャンバ10の底面に設けられる場合を例示したが、排気口16は、例えば、チャンバ10の天井面や側面に設けることもできる。排気口16がチャンバ10の底面、または天井面に設けられていれば、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面、または天井面に向かう気流を形成することができる。
【0028】
チャンバ10の内部空間の圧力が減圧されれば、チャンバ10の外部に放出される熱を抑制することができる。そのため、加熱効率と蓄熱効率を向上させることができるので、後述するヒータ33(第1のヒータおよび第2のヒータの一例に相当する)に印加する電力を低減できる。ヒータ33に印加する電力を低減できれば、ヒータ33の負荷が高くなるのを抑制できる。そのため、ヒータ33の寿命を長くすることができる。
【0029】
加熱部30は、例えば、第1の加熱部31、および第2の加熱部32を有する。第1の加熱部31、および第2の加熱部32は、チャンバ10の内部に設けられている。
第1の加熱部31は、カセット50の上方に設けられている。第1の加熱部31は、例えば、後述する一対の受け部材62の上方に設けられている。なお、カセット50の詳細については後述する。
【0030】
第2の加熱部32は、カセット50の下方に設けられている。第2の加熱部32は、例えば、後述する一対の受け部材62の下方に設けられている。第2の加熱部32は、第1の加熱部31と対向している。
後述するように、カセット50の内部にワーク100が支持される。そのため、第1の加熱部31は、カセット50の内部に支持されたワーク100の表面(上面)を加熱する。第2の加熱部32は、カセット50の内部に支持されたワーク100の裏面(下面)を加熱する。
【0031】
例えば、複数のカセット50が、チャンバ10の内部において、Z方向(上下方向)に並べて設けられる場合がある。この様な場合には、上側のカセット50の下方に設けられた第2の加熱部32を、下側のカセット50の上方に設けられた第1の加熱部31とすることができる。すなわち、カセット50とカセット50との間に設けられた第1の加熱部31または第2の加熱部32は、兼用することができる。
【0032】
この場合、上側のカセット50の内部に支持されたワーク100の裏面は、兼用される第1の加熱部31または第2の加熱部32により加熱される。下側のカセット50の内部に支持されたワーク100の表面は、兼用される第1の加熱部31または第2の加熱部32により加熱される。この様にすれば、第1の加熱部31または第2の加熱部32の数を減らすことができる。したがって、消費電力の低減、製造コストの低減、省スペース化などを図ることができる。
【0033】
第1の加熱部31は、少なくとも1つのヒータ33を有する。第2の加熱部32は、少なくとも1つのヒータ33を有する。ヒータ33は、例えば、後述するカセットラック60に保持される。ヒータ33の端子側の端部は、チャンバ10の側面から外側に露出している。この様にすれば、ヒータ33のメンテナンスが容易となる。また、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワーク100を加熱する場合、ヒータ33の端子側の端部における真空放電のおそれを抑制することができる。
【0034】
図1および
図2に例示をした本実施形態に係る第1の加熱部31および第2の加熱部32は、複数のヒータ33を有している。複数のヒータ33は、例えば、X方向に延び、Y方向に並んでいる。なお、複数のヒータ33は、Y方向に延び、X方向に並んでいてもよい。複数のヒータ33は、等間隔に並べてもよいし、ワーク100の温度の面内分布などに応じて間隔を変化させてもよい。また、第2の加熱部32に設けられるヒータ33の仕様、数、間隔などは、第1の加熱部31に設けられるヒータ33の仕様、数、間隔などと同じであってもよいし、異なっていてもよい。ヒータ33の仕様、数、間隔などは、加熱する溶液の組成(溶液の加熱温度)、ワーク100の大きさなどに応じて適宜変更することができる。ヒータ33の仕様、数、間隔などは、シミュレーションや実験などを行うことで適宜決定することができる。
【0035】
ヒータ33は、例えば、シーズヒータ、遠赤外線ヒータ、遠赤外線ランプ、セラミックヒータ、カートリッジヒータなどである。また、各種ヒータを石英カバーで覆うこともできる。
また、ヒータ33は、一方向に延びる棒状のヒータとすることができる。なお、本明細書においては、石英カバーで覆われた各種ヒータをも含めて「棒状のヒータ」と称する。また、「棒状」の外観形状には限定がなく、例えば、円柱状や角柱状などとすることができる。
【0036】
また、ヒータ33は、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワーク100を加熱できれば、前述したものに限定されない。すなわち、ヒータ33は、放射による熱エネルギーを利用するものであればよい。
【0037】
冷却部40は、後述するカセット50に設けられた冷却部57と協働してカセット50に冷却ガスを供給する。後述する様に、カセット50に供給された冷却ガスは、カセット50の内部に支持されているワーク100に供給される。また、カセット50に供給された冷却ガスは、後述するカセット50の均熱板(上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、側部均熱板55)にも供給される。
【0038】
冷却ガスがワーク100に供給されることで、高温状態にあるワーク100が直接冷却される。また、ワーク100に供給された冷却ガスがカセット50の均熱板に供給されることで、カセット50も冷却される。カセット50が冷却されることで、カセット50の熱がワーク100に伝わるのを抑制することができる。したがって、ワーク100がカセット50によって間接的に冷却される。
【0039】
冷却部40が設けられていれば、ワーク100の冷却時間を短縮することができる。また、ワーク100の冷却の際に、カセット50からの熱で、ワーク100の面内において温度分布のばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0040】
冷却部40は、例えば、ジョイント41、ガス源42、およびガス制御部43を有する。ジョイント41、ガス源42、およびガス制御部43は、配管44により接続されている。
【0041】
ジョイント41は、例えば、カセット50に設けられた冷却部57の配管57aまたはジョイント57cに、着脱自在に接続される(
図4参照)。なお、ガス制御部43に接続された配管44を、カセット50に設けられた冷却部57のジョイント57cに、着脱自在に接続する場合には、ジョイント41を省くことができる。
【0042】
ガス源42は、ガス制御部43を介して、カセット50の冷却部57に冷却ガスを供給する。ガス源42は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。
冷却ガスは、加熱されたワーク100と反応し難いガスであれば特に限定がない。冷却ガスは、例えば、窒素ガス、希ガスなどである。希ガスは、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどである。冷却ガスの温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以下とすることができる。
【0043】
ガス制御部43は、ジョイント41とガス源42との間に設けられている。ガス制御部43は、例えば、冷却ガスの供給と、供給の停止と、冷却ガスの流速および流量の少なくともいずれかの制御と、を行うことができる。
なお、煩雑さを避けるため、
図1および
図2には、直線状の配管44を示した。しかし、複数のカセット50がチャンバ10内に設けられる場合、配管44を複数の分岐を有する配管としても良いことは言うまでもない。
【0044】
次に、カセット50について詳細に説明する。
図1に示すように、カセット50は、チャンバ10の内部に設けられたカセットラック60の、一対の受け部材62に着脱自在に設けられる。この場合、カセット50は、第1の加熱部31と第2の加熱部32との間に着脱自在に設けられる。
【0045】
図4は、カセット50の外観を例示するための模式斜視図である。
図4に示すように、カセット50は、箱状を呈し、内部にワーク100が支持される空間を有している。カセット50の外観形状には特に限定はない。カセット50の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。
【0046】
カセット50は、例えば、カセットフレーム51、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、側部均熱板55、ワーク支持部56、冷却部57、およびカセット支持部58を有する。
【0047】
カセットフレーム51は、ワーク100を加熱する処理空間の外縁を形成する。本実施の形態においては、カセットフレーム51は、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、および側部均熱板55により囲まれた空間の外縁を形成する。カセットフレーム51は、例えば、細長い板材や形鋼などを用いた骨組み構造である。または、カセットフレーム51は、板金加工などで形成された枠体などとすることができる。カセットフレーム51の外観形状には特に限定はない。カセットフレーム51は、例えば、直方体の縁を形成する。カセットフレーム51は、枠状部材51a、支柱51b、梁51c、を有する。
【0048】
図5は、カセット50の内部を例示するための模式斜視図である。
枠状部材51aは、前述した処理空間の上面および下面を構成する役割を有する。そのため、枠状部材51aは、垂直方向に2つ配置される。なお、
図5では、煩雑さを避けるため、上側の枠状部材51aは、省略されている。
【0049】
枠状部材51aは、例えば、矩形の枠状を呈する。枠状部材51aは、例えば、複数の細長い板材や形鋼などを組み合わせて形成される。あるいは、枠状部材51aは、1枚の細長い板材や形鋼などを板金加工によって枠状に加工することによって形成される。枠状部材51aは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0050】
以下、上側の枠状部材51aの開口を、「カセットフレーム51の上部」と呼ぶことがある。また、下側の枠状部材51aの開口を、「カセットフレーム51の下部」と呼ぶことがある。
【0051】
支柱51bは、2つの枠状部材51aを連結するための部材である。また、支柱51bは、枠状部材51aと共に前述した処理空間の側面を構成する役割を有する。支柱51bは、例えば、枠状部材51aの各々の角において、2つの枠状部材51aを連結する。支柱51bが枠状部材51aの各々の角において、2つの枠状部材51aを連結することによって、2つの枠状部材51a間に隙間が形成される。以下、この隙間は、カセットフレーム51の側部とも呼ばれる。支柱51bは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0052】
枠状部材51aには、梁51cが形成される。梁51cは、枠状部材51aが熱変形することを抑制するための部材である。梁51cは、例えば、枠状部材51aの向かい合う2つの辺をつなぐように形成される。本実施形態では、梁51cは、6つ設けられている。梁51cは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0053】
上部均熱板52は、板状を呈し、カセットフレーム51の上部に設けられる。上部均熱板52は、カセットフレーム51の上部に着脱自在に設けることができる。例えば、上部均熱板52は、枠状部材51aおよび梁51cにネジ等によって固定されてもよい。あるいは、枠状部材51aおよび梁51cの側面に溝を設けるようにしてもよい。枠状部材51aおよび梁51cの側面の溝に上部均熱板52をはめ込むことで、上部均熱板52は、固定される。上部均熱板52は、少なくとも1つ設けることができる。
図4に例示をしたカセット50には21個の上部均熱板52が設けられている。上部均熱板52の平面形状は、例えば、四角形とすることができる。上部均熱板52の数と平面形状は、カセットフレーム51の上部の大きさと形状に応じて適宜変更することができる。
【0054】
下部均熱板53は、板状を呈し、カセットフレーム51の下部に設けられる(
図5参照)。下部均熱板53は、上部均熱板52と同様に、カセットフレーム51の下部に着脱自在に設けることができる。下部均熱板53は、上部均熱板52と対向している。下部均熱板53は、少なくとも1つ設けることができる。下部均熱板53の数と平面形状は、上部均熱板52の数と平面形状と同じとすることもできるし、異なるものとすることもできる。
【0055】
なお、
図4および
図5においては、複数の上部均熱板52および複数の下部均熱板53が、設けられる場合を例示したが、上部均熱板52および下部均熱板53の少なくとも一方は、単一の板状部材とすることもできる。
【0056】
側部均熱板54は、板状を呈する。本実施の形態では1つのカセット50に対し2枚用いられる。一方の側部均熱板54は、カセットフレーム51の、互いに対向する側部の一方に設けられる。ワーク100は、カセットフレーム51の側部に設けられた開口を介して、カセット50の内部に搬入される。あるいは、ワーク100は、カセットフレーム51の側部に設けられた開口を介して、カセット50の内部から搬出される。そのため、カセットフレーム51の、側部均熱板54が設けられる側部とは反対側の側部は、開口している。
【0057】
他方の側部均熱板54は、カセットフレーム51の、一方の側部均熱板54が設けられる側部とは反対側の側部に隣接するように設けられる。例えば、他方の側部均熱板54は、開閉扉13に設けることができる。あるいは、側部均熱板54の少なくとも一方は、カセットフレーム51の側部に開閉自在に設けられる。
【0058】
側部均熱板55は、カセットフレーム51の内部に一対設けられる。一対の側部均熱板55は、互いに対向し、一対の側部均熱板54の間を延びている。一対の側部均熱板55の一方は、カセットフレーム51の、カセット支持部58が設けられる一方の側部の近傍に設けられる。一対の側部均熱板55の他方は、カセットフレーム51の、カセット支持部58が設けられる他方の側部の近傍に設けられる。
【0059】
上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、および側部均熱板55により囲まれた空間が、ワーク100を加熱する処理空間となる。カセット50の内部の処理空間と、チャンバ10の内部空間とは、例えば、均熱板同士の間の隙間などを介して繋がっている。そのため、チャンバ10の内部空間の圧力が減圧されると、カセット50の内部の処理空間の圧力も減圧される。
【0060】
ここで、前述したように、棒状を呈する複数のヒータ33が、所定の間隔を空けて並べて設けられる場合がある。ヒータ33が棒状である場合、ヒータ33の中心軸を中心として放射状に熱が放射される。この場合、ヒータ33の中心軸と加熱される部分との間の距離が短くなるほど加熱される部分の温度が高くなる。すなわち、棒状を呈する複数のヒータ33を用いてワーク100を直接加熱すると、加熱されたワーク100の面内において温度分布にばらつきが生じる。
【0061】
ワーク100の面内において温度分布にばらつきが生じると、形成された有機膜の品質が低下するおそれがある。例えば、温度が高くなった部分において、泡が発生したり、有機膜の組成が変化したりするおそれがある。
【0062】
上部均熱板52、および下部均熱板53が設けられていれば、複数のヒータ33から放射された熱は、上部均熱板52および下部均熱板53に入射する。上部均熱板52および下部均熱板53に入射した熱は、これらの内部を面方向に伝搬しながらワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の面内において温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができる。結果として、形成される有機膜の品質を向上させることができる。
【0063】
上部均熱板52および下部均熱板53の材料は、熱伝導率の高い材料とすることが好ましい。これらの材料は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどとすることができる。なお、アルミニウムや銅などの酸化しやすい材料を用いる場合には、酸化しにくい材料を含む層を表面に設けることができる。
【0064】
上部均熱板52および下部均熱板53から放射された熱の一部は、処理空間の側方に向かう。そのため、カセット50には側部均熱板54、55が設けられている。側部均熱板54、55に入射した熱は、側部均熱板54、55を面方向に伝搬しながら、その一部がワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の加熱効率を向上させることができる。
側部均熱板54、55の材料は、前述した上部均熱板52および下部均熱板53の材料と同じとすることができる。
【0065】
図4および
図5に示すように、ワーク支持部56は、カセット50の内部に複数設けられている。複数のワーク支持部56は、ワーク100を加熱する処理空間においてワーク100の裏面を支持する。複数のワーク支持部56は、ワーク100が、上部均熱板52および下部均熱板53と対向するようにワーク100を支持する。
【0066】
複数のワーク支持部56は、棒状体とすることができる 。
複数のワーク支持部56の一方の端部(ワーク100側の端部)の形状は、半球状などとすることができる。複数のワーク支持部56の一方の端部の形状が半球状であれば、ワーク100の裏面に損傷が発生するのを抑制することができる。また、ワーク100の裏面と複数のワーク支持部56との接触面積を小さくすることができる。そのため、ワーク100から複数のワーク支持部56に伝わる熱を少なくすることができる。
【0067】
複数のワーク支持部56の他方の端部(ワーク100側とは反対側の端部)は、例えば、カセットフレーム51の、下部均熱板53が取り付けられる梁51cなどに固定することができる。
【0068】
複数のワーク支持部56は、例えば、ステンレスなどから形成される。
複数のワーク支持部56の数、配置、間隔などは、ワーク100の大きさや剛性(撓み)などに応じて適宜変更することができる。
【0069】
冷却部57は、前述した冷却部40から供給される冷却ガスをカセット50内のワーク100に供給する役割を有する。冷却部57は、例えば、カセットフレーム51の、側部均熱板54が取り付けられる側面に設けることができる。
図5に示すように、冷却部57は、例えば、配管57a、ノズル57b、およびジョイント57cを有する。
【0070】
配管57aは、前述した冷却部40から供給された冷却ガスをノズル57bに供給するための配管である。配管57aの冷却部40と接続する端部は、例えば、カセット50(カセットフレーム51)の外部に設けられる。配管57aの冷却部40と接続する端部とは反対側の端部は、例えば、カセットフレーム51の、側部均熱板54が取り付けられる側面に取り付けることができる。本実施の形態では、配管57aの冷却部40と接続する端部とは反対側の端部は、
図5に例示をした様に、下側の枠状部材51aの、側部均熱板54が取り付けられる1辺に取り付けることができる。以下、配管57aの冷却部40と接続する端部とは反対側の端部は、「配管57aの先端」と呼ぶことがある。
【0071】
配管57aは、少なくとも1つ設けることができる。また、配管57aの先端を分岐させて、複数の先端を有するようにしてもよい。本実施の形態では、1つの先端を有する配管57aと、4つの先端を有する配管57aを下側の枠状部材51aの前述した1辺に取り付けた。
【0072】
ノズル57bは、カセット50(カセットフレーム51)の内部に設けられる。ノズル57bは、前述した処理空間に設けられる。例えば、ノズル57bは、カセット50の内部空間に支持されたワーク100の裏面に冷却ガスを供給する。
【0073】
ノズル57bは、少なくとも1つ設けることができる。この場合、ノズル57bを複数設ければ、ワーク100を均一に冷却したり、冷却時間を短縮したりするのが容易となる。ノズル57bは、例えば、
図5に例示をした様に、配管57aの先端に取り付けることができる。
【0074】
なお、配管57aの先端の数とノズル57bの数は、必ずしも一致させる必要は無い。例えば、配管57aの先端の数がノズル57bの数よりも多い場合、ノズル57bが取り付けられなかった配管57aの先端にキャップを設けるようにすればよい。
ワーク100の表面に垂直な方向から見て、ノズル57bの吐出口は、ワーク100と重ならない位置に設けることができる。
【0075】
ノズル57bの吐出口は、ワーク100の裏面に対して傾斜するように屈曲させることができる。この場合、ノズル57bの吐出口の位置と傾斜角度は、ノズル57bから吐出した冷却ガスが、ワーク100の裏面の、端部の近傍に供給されるように設定される。ノズル57bの吐出口とワーク100の裏面との間の角度(傾斜角度)は、例えば、0°を超え、30°以下とすることができる。
【0076】
ここで、ワーク100の裏面における冷却ガスの流速は、ノズル57bから離れるに従い遅くなる。冷却ガスの流速が遅い領域においては温度境界層が厚くなるので、熱伝達率が低下する。そのため、冷却ガスの流速が遅い領域の温度低下が不充分となるおそれがある。温度低下が不充分な領域が生じると、ワーク100の面内に温度分布のばらつきが生じたり、均一な温度となるまでの冷却時間が長くなったりする。
【0077】
本実施の形態に係るカセット50においては、ノズル57bの配置を前述したもののようにしている。そのため、ノズル57bから吐出した冷却ガスを、ワーク100の裏面に沿って、Y方向における一方の端部から他方の端部に亘って流すことができる。冷却ガスが、ワーク100の裏面を一方向に流れれば、流速が低下したり、淀みが発生したりする領域が生じるのを抑制することができる。
【0078】
そのため、冷却ガスの流速が速い領域を大きくすることができる。冷却ガスの流速が速い領域においては、温度境界層が薄くなる。そのため、熱伝達率を増加させることができる。熱伝達率を増加させることができれば、ワーク100の面内に温度分布のばらつきが生じるのを抑制したり、冷却時間を短縮したりすることができる。
【0079】
ジョイント57cは、前述した冷却部40と冷却部57の配管57aとを接続する役割を担う。ジョイント57cは、配管57aを介してノズル57bと接続されている。ジョイント57cは、例えば、前述した冷却部40のジョイント41または配管44に、着脱自在に接続される。なお、ノズル57bに接続された配管57aを冷却部40に設けられたジョイント41に、着脱自在に接続する場合には、ジョイント57cを省くことができる。
【0080】
カセット支持部58は、カセットフレーム51の、側部均熱板54が設けられる側面と交差する側面に設けられている。カセット支持部58は、一対設けられている。カセット支持部58は、カセットフレーム51の側面から外部に向けて突出し、側部均熱板54が設けられる側面と直交する方向に延びている。
【0081】
カセット支持部58は、カセット50の、互いに対向する一対の側面のそれぞれに設けられる。カセット支持部58は、後述するカセットラック60の受け部材62に支持される。その結果、カセット50をチャンバ10の内部に載置することができる。また、カセット支持部58は、カセット50を、チャンバ10の内部に搬入、または、チャンバ10の内部から搬出する際に、後述する搬入搬出治具200に支持される役割も担う。以下、カセット50をチャンバ10の内部に搬入することを「カセット50の搬入」と呼ぶ。また、カセット50をチャンバ10の内部から搬出することを「カセット50の搬出」と呼ぶ。
【0082】
次に、カセットラック60について説明する。
図1~
図3に示すように、カセットラック60は、チャンバ10の内部に設けられている。カセットラック60は、ヒータ33およびカセット50をチャンバ10内で所定の位置に固定する役割を有する。カセットラック60は、フレーム61、受け部材62、および反射板63を有する。
フレーム61は、例えば、細長い部材を用いて構成された骨組み構造を有している。フレーム61の外観形状には特に限定はない。フレーム61の外観形状は、例えば、直方体や円筒とすることができる。
【0083】
フレーム61は、複数の細長い部材を連結して1本の細長い部材としてもよい。本実施の形態では、
図1に示すように、フレーム61を構成し、Z方向に平行な細長い部材は、2つの細長い部材を連結して形成されている。
【0084】
フレーム61の内部には、少なくとも一対の受け部材62が設けられている。一対の受け部材62は、チャンバ10内において、カセット50を支持する役割を有する。また、受け部材62は、カセット50の搬入、あるいは、カセット50の搬出の際に、後述する搬入搬出治具200を支持する役割も有する。Z方向において、一対の受け部材62は、第1の加熱部31と第2の加熱部32との間に設けられる。一対の受け部材62の上には、1つのカセット50が載置される。そのため、一対の受け部材62は、カセット50毎に設けられる。例えば、フレーム61の内部に14個のカセット50を収納可能とする場合には、一対の受け部材62がフレーム61の内部に14組設けられる。
【0085】
一対の受け部材62のそれぞれは、例えば、骨組み構造を有するフレーム61の、X方向において互いに対向する内壁に設けることができる。一対の受け部材62は、Y方向に延びている。一対の受け部材62を複数組設ける場合には、一対の受け部材62をZ方向に並べて設けることができる。
【0086】
図6は、カセットラック60のフレーム61の受け部材62が設けられる部分を例示するための模式図である。
図6に示すように、受け部材62は、例えば、板金加工などにより形成された細長い部材とすることができる。受け部材62は、例えば、短手方向に2つの端部と、2つの端部を接続する側部を有する。つまり、受け部材62は、側部62a、上端部62bおよび下端部62cを有する。
【0087】
受け部材62の側部62aは、上端部62bおよび下端部62cを繋ぐ役割を担う。受け部材62は、例えば、短手方向と平行な断面がU字形状である。したがって、受け部材62の側部62aは、U字の底部に相当する。つまり、受け部材62は、U字を90°傾けた断面形状を有する。受け部材62の側部62aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて、フレーム61の内壁に取り付けられる。
【0088】
受け部材62の上端部62b(第1の端部の一例に相当する)は、側部62aの上側の端部に設けられ、側部62aと略直交している。受け部材62の上端部62bの上側の面には、カセット50のカセット支持部58が載置される。そのため、一対の受け部材62により、カセット50がフレーム61の内部に着脱自在に設けられる。結果的として、カセット50は、チャンバ10の内部に着脱自在に設けられる。なお、本実施の形態では、受け部材62の上端部62bの強度を上げるために、上端部62bと下端部62cとの間にリブを設けている。そのため、カセット50の荷重によって受け部材62の上端部62bが変形することを抑制することができる。
【0089】
前述したように、一対の受け部材62は、第1の加熱部31と第2の加熱部32との間に設けられている。そのため、一対の受け部材62の上に、カセット50のカセット支持部58を載置すると、カセット50が、第1の加熱部31と第2の加熱部32との間に支持される。
【0090】
受け部材62の下端部62c(第2の端部の一例に相当する)は、側部62aの下側の端部に設けられ、側部62aと略直交している。下端部62cは、上端部62bと対向している。以下、下端部62cの、側部62a側とは反対側の端部を「下端部62cの先端」と呼ぶ。また、上端部62bの、側部62a側とは反対側の端部を「上端部62bの先端」と呼ぶ。下端部62cの先端は、上端部62bの先端よりもフレーム61の内側に位置している。
【0091】
すなわち、受け部材62は、第1の加熱部31側に設けられ、カセット50のカセット支持部58を支持する上端部62bと、第2の加熱部32側に設けられ、上端部62bと対向する下端部62cと、を有している。
上端部62bから下端部62cに向かう方向に見た場合に、下端部62cの先端は、上端部62bの先端よりも、カセット50の、カセット支持部58が設けられた側面側に位置している。
【0092】
この場合、
図6に示すように、上端部62bの先端と、カセット50の、カセット支持部58が設けられた側面と、の間には隙間が設けられる。そのため、下端部62cの上方には、カセット50のカセット支持部58の一部が露出している。
【0093】
後述するように、下端部62cの上端部62b側の面には、搬入搬出治具200が着脱自在に設けられる。すなわち、下端部62c、上端部62b、および側部62aにより画されたスペースが、搬入搬出治具200を着脱自在に設けるスペースとなる。搬入搬出治具200を下端部62cに設けた際に、カセット50のカセット支持部58の一部が下端部62cの上方に露出していれば、搬入搬出治具200により、カセット支持部58を昇降させることができる。すなわち、搬入搬出治具200により、カセット50を上端部62bから上方に離隔させたり、カセット50を上端部62bに載置したりすることができる。
【0094】
反射板63は、ヒータ33側から入射した熱を、カセット50内の処理空間に反射する機能を有する。反射板63は、板状を呈し、フレーム61の外周に設けられる。例えば、フレーム61の外観形状が直方体の場合、反射板63は、直方体の各面に設けられる。なお、煩雑さを避けるため、
図1および
図2には反射板63は描かれていない。また、
図3において、フレーム61の、受け部材62が取り付けられた側面に取り付けられる反射板63のみ描かれている。
【0095】
ここで、フレーム61の、開閉扉13と対向する面に反射板63を設けると、ワーク100をカセット50内に搬入、あるいは、カセット50から搬出するのが困難となる。そのため、開閉扉13側の反射板63は、開閉扉13と側部均熱板54の間に設けることが好ましい。
【0096】
また、フレーム61の、蓋15と対向する面に反射板63が設けられた場合、カセット50の搬出を行う際には、フレーム61から反射板63を取り外す必要がある。そのため、蓋15側の反射板63は、蓋15に設けることが好ましい。あるいは、反射板63をカセット50の数と同じ枚数の複数の板が並んだ構造とすることが好ましい。この場合、カセット50の搬入、あるいは、カセット50の搬出を行う際に、対応する反射板63を取り外す。その結果、必要最低限の反射板63を取り外すことで、カセット50の搬入、あるいは、カセット50の搬出を行うことができる。したがって、反射板63の取り外し作業が容易となる。
【0097】
反射板63がヒータ33側から入射した熱を、カセット50内の処理空間に反射することで、カセット50内の処理空間の蓄熱性を向上させることができる。
【0098】
ここで、ワーク100の溶液を加熱すると、昇華物を含む蒸気が発生する。昇華物を含む蒸気は、ワーク100の温度よりも低い温度の物に付着しやすい。ワーク100を加熱する場合、上部均熱板52、下部均熱板53、および側部均熱板54、55も加熱されている。そのため、昇華物が上部均熱板52、下部均熱板53、および側部均熱板54、55に付着するのが抑制される。しかしながら、例えば、ワーク100の処理数が多くなると、昇華物がカセット50の構成要素に付着する場合がある。
【0099】
前述したように、カセット50は、チャンバ10の内部に着脱自在に設けられている。そのため、昇華物がカセット50の構成要素に付着した場合には、当該カセット50をチャンバ10から容易に取り外すことができる。したがって、チャンバ10の外部において、カセット50に付着した昇華物を除去することができる。
【0100】
また、カセット50は予め余分に作製することができる。そのため、例えば、昇華物が付着したカセット50を清掃している間に、他のカセット50を用いてワーク100の加熱処理を行うことができる。
【0101】
以上に説明したように、本実施の形態に係る加熱処理装置1は、チャンバ10の内部に着脱自在に設けられるカセット50を有している。そのため、メンテナンスの容易化を図ることができる。
【0102】
ここで、カセット50の搬入、あるいは、カセット50の搬出の際に、受け部材62とカセット50のカセット支持部58との間に擦れが生じるとパーティクルが発生する場合がある。発生したパーティクルがワーク100に付着すると、形成された有機膜の品質が低下するおそれがある。
【0103】
この場合、例えば、受け部材62にローラなどの回転部材を設けることが考えられる。回転部材の上にカセット50のカセット支持部58を載置すれば、回転部材とカセット支持部58との間に擦れが発生するのを抑制することができる。そのため、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0104】
ところが、受け部材62に回転部材を設けると、ワーク100を加熱処理した際に回転部材が加熱されることになる。例えば、回転部材が高温に加熱される場合も生じ得る。回転部材が高温になると、例えば、回転軸などの回転部材の構成要素が歪んで回転がし難くなったり、回転ができなくなったりする場合が生じる。そのため、回転部材とカセット支持部58との間の擦れ、あるいは、回転部材の構成要素同士の擦れが生じる。その結果、パーティクルが発生するおそれがある。
【0105】
そこで、本実施の形態に係る加熱処理装置1においては、受け部材62に、搬入搬出治具200が着脱自在に設けられる様になっている。搬入搬出治具200は、カセット50をカセットラック60の受け部材62から着脱する際に受け部材62に設けられるようにすればよい。そのため、加熱処理の際に搬入搬出治具200が加熱されることがない。したがって、受け部材62に回転部材を設ける場合のように、搬入搬出治具200が加熱されることでパーティクルが発生することがない。
【0106】
次に、搬入搬出治具200、および搬入搬出治具200を用いたカセット50の搬入搬出方法について説明する。
搬入搬出治具200は、カセット50の搬入、または、カセット50の搬出の際に用いられる治具である。
【0107】
搬入搬出治具200は、搬入または搬出を行う1つのカセット50に対して一対用いられる。なお、搬入搬出治具200は、例えば、少なくとも1つの加熱処理装置1に対して、少なくとも一対備えることができる。例えば、1つの加熱処理装置1に対して、少なくとも一対の搬入搬出治具200を備えることができる。例えば、複数の加熱処理装置1に対して、少なくとも一対の搬入搬出治具200を備えることができる。
【0108】
搬入搬出治具200は、受け部材62の上端部62bと下端部62cとの間に、着脱自在に設けられる。また、搬入搬出治具200は、上昇した位置と下降した位置に移動することができる。そのため、搬入搬出治具200は、カセット50を昇降させる。以下、搬入搬出治具200の上昇した位置を「上昇端」と呼ぶ。また、搬入搬出治具200の下降した位置を「下降端」と呼ぶ。
【0109】
図7は、カセット50をチャンバ10内に搬入または搬出させる際用いられる搬入搬出治具200を例示するための模式斜視図である。
図7に示すように、搬入搬出治具200は、例えば、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230を有する。
駆動ユニット210は、搬入搬出治具200を上昇端あるいは下降端に移動させるための動力源の役割を担う。駆動ユニット210は、例えば、1つ設けることができる。
【0110】
昇降ユニット220は、搬入搬出治具200を昇降させる役割を担う。昇降ユニット220は、2つ以上設けることができる。1つの昇降ユニット220は、駆動ユニット210と連結および分離可能に設けられる。また、昇降ユニット220同士も連結および分離可能に設けられる。また、昇降ユニット220同士は、連結ユニット230を介して連結されてもよい。したがって、他の昇降ユニット220は、例えば、駆動ユニット210に設けられた昇降ユニット220とY方向に所定の間隔をあけて並べて設けられる。
【0111】
連結ユニット230は、昇降ユニット220と昇降ユニット220との間に、連結および分離可能に設けられる。連結ユニット230は、1つ以上設けることができる。連結ユニット230の数は、昇降ユニット220の数よりも1つ少ない。複数の連結ユニット230が設けられる場合には、Y方向における複数の連結ユニット230の長さを同じにしてもよいし、異なる様にしてもよい。
【0112】
本実施の形態に係る搬入搬出治具200は、昇降ユニット220および連結ユニット230を組み合わせる数を変えることができる。また、本実施の形態に係る搬入搬出治具200は、連結ユニット230の長さを変えることができる。このようにすることで、Y方向における搬入搬出治具200の長さを変えることができる。そのため、Y方向における長さが異なるカセット50にも対応が可能となる。
【0113】
ここで、Y方向におけるカセット50の長さが長い場合には、搬入搬出治具200の長さが長くなる。搬入搬出治具200の長さが長くなると、搬入搬出治具200のハンドリングや保管が困難となる。しかしながら、後述するように、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230は、連結および分離が可能となっている。そのため、搬入搬出治具200を用いる際に、昇降ユニット220および連結ユニット230を受け部材62の内部に載置しながら連結することができる。そして、最後に駆動ユニット210を昇降ユニット220に連結することができる。また、搬入搬出治具200を取り外す際には、これと逆の手順で駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230を分離することができる。そのため、長さの長い搬入搬出治具200が必要な場合であっても、ハンドリングや保管が容易となる。
【0114】
図8は、搬入搬出治具200の駆動ユニット210を例示するための模式斜視図である。
図8に示すように、駆動ユニット210は、例えば、ブロック211、駆動部212、およびジョイント213を有する。
【0115】
ブロック211は、例えば、筒状を呈する。ブロック211は、内部にジョイント213を収納する空間を有する。Y方向におけるブロック211の一方の端部には駆動部212が設けられ、他方の端部には昇降ユニット220が設けられる。
【0116】
駆動部212は、ジョイント213をY方向に移動させる。駆動部212は、直線駆動装置であれば特に限定はない。駆動部212は、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、ソレノイドなどとすることもできるし、モータと、ボールネジやラックピニオンなどの機構とを有するものであってもよい。なお、
図8に例示をした駆動部212は、エアシリンダである。駆動部212がエアシリンダであれば、駆動ユニット210の構成の簡易化を図ることができる。また、駆動部212がエアシリンダであれば、カセット50を持ち上げる力の調整も容易となる。
【0117】
駆動部212がエアシリンダである場合には、駆動部212は、ロッド212cを有する。また、駆動部212には、例えば、切替弁212a、およびレギュレータ212bを設けることができる。
切替弁212aは、配管を介して、駆動部212の2つのポートに接続される。切替弁212aは、例えば、四方弁とすることができる。作業者が切替弁212aを操作することで、Y方向におけるロッド212cの位置をエア源の空気圧により変化させることができる。その結果、Y方向におけるジョイント213の位置、ひいては後述する搬入搬出治具200の昇降位置を変化させることができる。この場合、切替弁212aは、一対の搬入搬出治具200に対して1つ設けることもできる。この様にすれば、作業者が1つの切替弁212aを操作することで、一対の搬入搬出治具200の昇降位置を同時に変化させることができる。
また、切替弁212aが手動弁である場合を例示したが、例えば、切替弁212aは、手動スイッチやコントローラ70により動作する電磁弁などであってもよい。ただし、切替弁212aが手動弁であれば、構成の簡易化や、設置作業の容易化などを図ることができる。
【0118】
レギュレータ212bは、配管を介して、切替弁212aとエア源との間に接続されている。エア源は、所定の圧力のエアを供給する工場配管などである。駆動部212に供給されるエアの圧力を、レギュレータ212bにより制御すれば、駆動部212が後述する昇降ユニット220のシャフト222を押す力を調整することができる。結果として、搬入搬出治具200がカセット50を持ち上げる力を調整することができる。なお、レギュレータ212bは省くこともできる。例えば、エア源にレギュレータ212bが設けられていたり、エア源から供給されるエアの圧力を調整する必要がなかったりする場合には、レギュレータ212bを省くことができる。
【0119】
ジョイント213は、駆動部212の動力を昇降ユニット220に伝える役割を担う。
ジョイント213は、駆動部212のロッド212cと後述する昇降ユニット220のシャフト222とを接続する(
図9参照)。
【0120】
図9は、搬入搬出治具200の駆動ユニット210と連結された昇降ユニット220を例示するための模式断面図である。
図10は、連結ユニット230と連結ユニット230との間に連結された昇降ユニット220を例示するための模式断面図である。
昇降ユニット220は、搬入搬出治具200、ひいては複数のローラ223を昇降させる。
図9および
図10に示すように、昇降ユニット220は、例えば、ブロック221、シャフト222、ローラ223、ピン224、リンク225、ピン226、フット227、ピン228、および受け渡し部229を有する。
【0121】
図11は、
図10におけるブロック221をY方向から見た場合の模式分解図である。
図11に示すように、例えば、ブロック221は、上部プレート221a、軸受け221b、およびベース221cを有する。
上部プレート221aの上面には、ローラ223が設けられる。
軸受け221bは、シャフト222が往復運動する際の軸を支持する役割を有する。軸受け221bは、上部プレート221aの下面に一対設けられる。一対の軸受け221bは、互いに対向し、Y方向に並べて設けられている。軸受け221bには、厚み方向を貫通し、シャフト222が挿通される孔221baが設けられている。
【0122】
ベース221cは、上部プレート221aの下面に設けられている。ベース221cは、一対の軸受け221bが設けられる溝221caを有する。溝221caは、ベース221cのY方向における側面に開口している。溝221caの底面には、リンク225およびフット227を設けるための孔221cbが設けられている。ベース221cのY方向における側面には、受け渡し部229や、後述する連結ユニット230に設けられているカバー231を取り付けるためのネジ孔を設けることができる。
【0123】
図9および
図10に示すように、シャフト222の端部には、凹部222aが設けられている。凹部222aには、連結ユニット230に設けられているシャフト232の嵌合部232aが嵌め込まれる。シャフト222の端部は、駆動ユニット210に設けられているジョイント213の凹部213aに嵌め込まれる(
図9参照)。また、シャフト222には、軸方向と直交する方向に貫通する孔222bが設けられている。孔222bには、ピン224が挿通される。また、ピン224を介してリンク225がシャフト222と接続される。
【0124】
ローラ223は、搬入あるいは搬出を円滑にする役割を担う。ローラ223は、カセット50のカセット支持部58に接触する。ローラ223は、例えば、いわゆるフリーボールベアリングなどとすることができる。
ピン226は、ブロック221のベース221cに設けられた孔221cbの内部をX方向に挿通している。また、ピン226は、リンク225を貫通する。
リンク225は、ピン226を中心として揺動可能となっている。また、リンク225には、ピン224が挿通されている。そのため、駆動ユニット210の駆動部212がシャフト222を動かす力が、ピン224を介して、リンク225に伝えられる。
フット227は、搬入搬出治具200が上昇した際に、搬入搬出治具200を支える役割を担う。フット227は、リンク225の、シャフト222の往復運動に連動して昇降する位置に設けられている。フット227は、ピン228を介して、リンク225に揺動可能に設けられている。
【0125】
受け渡し部229は、搬入搬出治具200を受け部材62に着脱するときに、搬入搬出治具200の往復運動を円滑にする役割を担う。受け渡し部229は、昇降ユニット220に対して、少なくとも1つ設けることができる。
受け渡し部229は、例えば、ブラケット229a、ローラ229c、および固定部材229bを有する。
【0126】
ブラケット229aは、Y方向におけるブロック221の側面に設けられている。ブラケット229aは、ブロック221の側面の下端の近傍に設けられている。ブラケット229aは、例えば、短辺と長辺を有するL字形状である。ブラケット229aは、ブロック221と同じ幅を有する。ブラケット229aは、短辺側をブロック221の側面に設ける。ブロック221の長辺側の先端には、ローラ229cがネジ込まれるネジ孔229aaが2つ設けられる。
【0127】
ローラ229cは、ブラケット229aのネジ孔229aaを中心として回転可能に設けられている。ローラ229cは、例えば、円柱である。ローラ229cの一端には、回転可能なローラが設けられる。ローラ229cの他端は、ネジの溝が設けられている。ローラ229cの側面は、オネジとなっている。ローラ229cの側面は、ローラが設けられた一端を下方に向けた状態で、ブラケット229aのネジ孔229aaにネジ込まれる。ローラ229cは、例えば、ボールプランジャである。なお、以下、ローラ229cの一端を「ローラ229cの下端」と呼ぶことがある。また、ローラ229cの他端を「ローラ229cの上端」と呼ぶことがある。
【0128】
昇降ユニット220が下降端にあるとき(搬入搬出治具200を受け部材62に着脱するとき)には、ローラ229cの下端は、フット227の下端よりも下方に位置している(
図14を参照)。したがって、ローラ229cの下端は、ブラケット229aの下面よりも下方に位置している。
【0129】
固定部材229bは、ブラケット229aとローラ229cとを固定する役割を有する。固定部材229bの中央には、ネジ孔229baが設けられる。固定部材229bのネジ孔229baは、ローラ229cの側面に設けられたオネジがネジ込まれる。固定部材229bは、ブラケット229aの上面と接触するまで、ローラ229cの上端側からローラ229cに挿通される。固定部材229bがブラケット229aと接触することで、ローラ229cがブラケット229aのネジ孔229aaの中で回転することを防止することができる。そのため、ローラ229cの位置を固定することができる。固定部材229bは、例えば、ナットである。
【0130】
前述したように、搬入搬出治具200は、受け部材62の下端部62cの上に着脱自在に設けられる。この場合、搬入搬出治具200と、受け部材62の下端部62cとの間で擦れが生じると、パーティクルが発生するおそれがある。
搬入搬出治具200には、ローラ229cを有する受け渡し部229が設けられている。そのため、搬入搬出治具200を受け部材62に着脱する際には、ローラ229cを受け部材62の下端部62cに接触させることができる。したがって、搬入搬出治具200を着脱する際にパーティクルが発生するのを抑制することができる。
【0131】
なお、以上においては、リンク機構を有する昇降ユニット220を例示した。しかし、昇降ユニット220の機構は、これに限定されない。例えば、ブロック221を直接持ち上げるエアシリンダなどを有する昇降ユニットとしてもよい。ただし、リンク機構を有する昇降ユニット220とすれば、複数の昇降ユニット220における昇降動作を機械的に同期させることができる。そのため、例えば、カセット50を受け部材62に平行な状態で昇降させるのが容易となる。
【0132】
図12は、昇降ユニット220と昇降ユニット220との間に連結された連結ユニット230を例示するための模式断面図である。
図12に示すように、連結ユニット230は、例えば、カバー231、ローラ223、およびシャフト232を有する。
【0133】
図13は、連結ユニット230のカバー231およびシャフト232の模式側面図である。
図13に示すように、カバー231は、筒状を呈する。Y方向におけるカバー231の端部は、昇降ユニット220のブロック221に着脱自在に設けられている(
図12参照)。例えば、Y方向におけるカバー231の端部には、フランジ231aを設けることができる。フランジ231aには、ブロック221のベース221cのY方向における側面に設けられたネジ孔に対応する孔231bが設けられている。そのため、カバー231は、ネジなどの締結部材を用いて、ブロック221に取り付けることができる。Z方向において、カバー231の上面は、ブロック221の上面と略同じ位置となっている。X方向におけるカバー231の側面は、シャフト232の側方を覆っている。
ローラ223は、カバー231の上面に少なくとも1つ設けることができる。昇降ユニット220と連結ユニット230を連結した際には、複数のローラ223は、昇降ユニット220と連結ユニット230の連結方向に並んでいる。
シャフト232は、カバー231の内部をY方向に延びている。
【0134】
図13に示すように、シャフト232の両端には、嵌合部232aを設けることができる。嵌合部232aの径寸法は、シャフト232の中央部分の径寸法よりも小さい。
図12に示すように、嵌合部232aは、昇降ユニット220に設けられたシャフト222の凹部222aに嵌め込まれる。なお、嵌合部232aが凹部222aに嵌め込まれる場合を例示したが、例えば、嵌合部232aを雄ネジとし、凹部222aを雌ネジとして、シャフト232とシャフト222を連結するようにしてもよい。また、いわゆるワンタッチ継ぎ手などを用いてシャフト232とシャフト222を連結するようにしてもよい。
【0135】
以上に説明した様に、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230は、ジョイント213、シャフト222、232を介して、連結されている。そのため、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230は、連結および分離可能となっている。
【0136】
次に、搬入搬出治具200の昇降動作について説明する。
図14は、搬入搬出治具200が下降端にある場合の昇降ユニット220の状態を例示するための模式図である。
図14は、受け部材62の上にカセット50を受け渡した際の状態、または、搬入搬出治具200を受け部材62の下端部62cから着脱する際の状態である。
【0137】
図14に示すように、シャフト222が駆動ユニット210の駆動部212により引き込まれると、ピン224を介して、リンク225が時計回りに揺動する。この際、リンク225は、ピン226を中心として揺動するので、ピン228を介してリンク225に設けられているフット227が、受け部材62の下端部62cから上方に離れる。そのため、搬入搬出治具200の全体が下降する。その結果、受け渡し部229のローラ229cが受け部材62の下端部62cに接触する。
【0138】
以上の様にして、搬入搬出治具200が下降端まで下降する。カセット50が、搬入搬出治具200に設けられた複数のローラ223の上に載置されている場合には、搬入搬出治具200が下降する。その結果、カセット50が、受け部材62の上に受け渡される。
【0139】
また、搬入搬出治具200を受け部材62の下端部62cから着脱する際には、フット227は受け部材62の下端部62cと接触しない。この場合、受け渡し部229のローラ229cが受け部材62の下端部62cに接触する。そのため、搬入搬出治具200と、受け部材62の下端部62cとの間に擦れが生じるのを抑制することができる。したがって、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0140】
図15は、搬入搬出治具200が上昇端にある場合の昇降ユニット220の状態を例示するための模式図である。
図15は、受け部材62の上からカセット50を持ち上げた際の状態、または、カセット50が受け部材62に受け渡される位置までカセット50が移動する際の状態である。
【0141】
図15に示すように、シャフト222が駆動ユニット210の駆動部212により押し出されると、ピン224を介して、リンク225が反時計回りに揺動する。この際、リンク225は、ピン226を中心として揺動する。そのため、ピン228を介してリンク225に設けられているフット227が、受け部材62の下端部62cに接触する。そして、リンク225がさらに揺動することで、フット227およびリンク225を介して、シャフト222が持ち上げられる。シャフト222が持ち上げられれば、搬入搬出治具200の全体が、受け部材62の上方に持ち上げられる。この際、受け渡し部229のローラ229cが受け部材62の下端部62cから上方に離隔する。
【0142】
以上の様にして、搬入搬出治具200が上昇端まで上昇する。カセット50が、受け部材62の上に載置されている場合には、カセット50が、搬入搬出治具200に設けられた複数のローラ223の上に受け渡される。結果として、カセット50が受け部材62の上方に離隔する。複数のローラ223の上に受け渡されたカセット50は、複数のローラ223が並ぶ方向(Y方向)に容易に移動させることができる。また、複数のローラ223とカセット50との間に擦れが生じるのを抑制することができる。したがって、パーティクルの発生を抑制することができる。搬入搬出治具200は、カセット50が受け部材62に受け渡される位置までカセット50が移動する際も上昇端の状態を維持する。カセット50は、複数のローラ223が並ぶ方向(Y方向)に容易に移動することができる。そのため、カセット50が受け部材62に受け渡される位置までカセット50を容易に移動することができる。
【0143】
次に、搬入搬出治具200を用いたカセット50の搬入搬出方法について説明する。
図16および
図17は、カセット50の搬入搬出方法を例示するための模式図である。 まず、
図16に示すように、カセットラック60の一対の受け部材62のそれぞれに、搬入搬出治具200を設ける。前述したように、搬入搬出治具200は、受け部材62の、下端部62c、上端部62b、および側部62aにより画されたスペースに設けられる。例えば、搬入搬出治具200は、受け部材62の下端部62cの上に載置される。
【0144】
前述したように、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230は、連結および分離可能となっている。そのため、昇降ユニット220および連結ユニット230を受け部材62の内部に載置しながら連結し、最後に駆動ユニット210を連結することができる。したがって、長さの長い搬入搬出治具200であっても、ハンドリングが容易となる。
【0145】
次に、搬入搬出治具200の切替弁212aに配管を接続する。
続いて、切替弁212aを操作して駆動部212を動作させて、搬入搬出治具200を上昇端まで上昇させる。搬入搬出治具200が上昇端まで上昇すると、
図16に示すように、複数のローラ223の頂部が、受け部材62の上方に突出する。
【0146】
次に、リフタなどの昇降機能を有する搬送装置300を用いて、カセット50を、チャンバ10の開口近傍に搬送する。
続いて、搬送装置300は、カセット50を昇降させて、カセット50のZ方向の位置を調整する。カセット50は、カセット50のカセット支持部58の下端と、複数のローラ223の頂部との位置が略同じとなるように調整される。
【0147】
次に、
図17に示すように、搬送装置300から複数のローラ223の上方に、カセット50を押し入れる。
次に、切替弁212aを操作して駆動部212を動作させて、搬入搬出治具200を下降端まで下降させる。搬入搬出治具200が下降端まで下降すると、複数のローラ223が、受け部材62の内部に収納される。そのため、複数のローラ223に支持されていたカセット50のカセット支持部58が、受け部材62の上に載置される。
以上の様にして、チャンバ10の内部にカセット50を搬入することができる。
【0148】
チャンバ10の内部からカセット50を搬出する際には、前述した手順と同様にして、カセットラック60の一対の受け部材62のそれぞれに、搬入搬出治具200を設ける。 次に、搬入搬出治具200の切替弁212aに配管を接続し、切替弁212aを操作して、搬入搬出治具200を上昇端まで上昇させる。搬入搬出治具200が上昇端まで上昇すると、受け部材62に載置されていたカセット50が、複数のローラ223の上に受け渡される。
【0149】
次に、搬送装置300をチャンバ10の開口近傍に移動させ、複数のローラ223の上方から搬送装置300に、カセット50を引き込む。
以上の様にして、チャンバ10の内部からカセット50を搬出することができる。
【0150】
搬入搬出治具200を受け部材62から取り外す際には、前述した手順と逆の手順で、駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230を分離することができる。分離された駆動ユニット210、昇降ユニット220、および連結ユニット230は、受け部材62から取り外すことができる。そのため、長さの長い搬入搬出治具200であっても、ハンドリングや保管が容易となる。
複数のカセット50の搬入搬出を行う際には、前述した手順を繰り返し行えばよい。
【0151】
次に、本実施の形態に係る有機膜の形成方法について説明する。
本実施の形態に係る有機膜の形成方法は、例えば、以下の工程を備えることができる。
前述した搬入搬出治具200を用いて、ワーク100が支持されたカセット50を、加熱処理装置1のチャンバ10の内部に搬入する工程。
箱状を呈するカセット50の内部に、基板と、基板の表面に塗布された溶液と、を有するワーク100を支持させる工程。
チャンバ10の内部に搬入されたカセット50を加熱して、基板の表面に有機膜を形成する工程。
有機膜が形成されたワーク100の温度を低下させる冷却工程。
有機膜が形成されたワーク100をカセット50から搬出する工程。
前述した搬入搬出治具200を用いて、カセット50を、加熱処理装置1のチャンバ10から外部に搬出する工程。
なお、ワーク100の加熱条件およびワーク100の冷却条件などには既知の技術を適用することができる。また、各工程における内容は、前述したものと同様とすることができる。そのため、各工程における詳細な説明は省略する。
【0152】
図18は、他の実施形態に係るカセット50aの内部を例示するための模式斜視図である。
カセット50aは、例えば、カセットフレーム151、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、側部均熱板55、ワーク支持部56、冷却部157、およびカセット支持部58を有する。つまり、カセット50aは、カセット50と比べて、カセットフレーム151および冷却部157が異なる。
なお、
図18は、煩雑さを避けるため、上部均熱板52、側部均熱板54および側部均熱板55が省略されている。
【0153】
カセットフレーム151は、枠状部材151a、梁151c、支柱51b、枠状部材51a、梁51c、キャップ151dを有する。例えば、Z方向において、梁151cが設けられた枠状部材151aが下側に設けられ、梁51cが設けられた枠状部材51aが上側に設けられる。したがって、カセットフレーム151は、カセットフレーム51と比べて枠状部材151a、梁151b、およびキャップ151dが異なる。
なお、
図18は、煩雑さを避けるため、上側の枠状部材51aは、省略されている。
【0154】
枠状部材151aは、前述した処理空間の下面を構成する役割を有する。
枠状部材151aは、例えば、矩形の枠状を呈する。枠状部材151aは、例えば、複数の角パイプなどの筒状体を組み合わせることで形成される。つまり、枠状部材151aの内部は中空である。枠状部材151aは、例えば、複数の筒状体を溶接することで形成される。枠状部材151aは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0155】
枠状部材151aの外側の側面の一部、例えば、枠状部材151aの1辺が有する外周面には、後述する冷却部157の配管157aが接続される孔151aaが設けられる。
枠状部材151aの内側の側面の一部、例えば、枠状部材151aの1辺が有する内周面には、ノズル57bが接続される孔151abおよび梁151cが接続される孔151acが設けられる。
【0156】
梁151cは、枠状部材151aが熱変形することを抑制するための部材である。梁151cは、例えば、枠状部材151aの向かい合う2つの辺をつなぐように形成される。梁151cは、例えば、角パイプなどの筒状体から形成される。つまり、梁151cの内部は、中空である。梁151cは、例えば、溶接によって枠状部材151aの孔151acに取り付けられる。そのため、枠状部材151aの内部と梁151bの内部が繋がる。梁151cは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。本実施形態では、梁151bは、6つ設けられている。
【0157】
梁151cの両側の側面には、後述するノズル157bが設けられる孔151cbが複数設けられる。梁151cの両側の側面に形成された全ての孔151cbにノズル157bが設けられる訳ではない。そのため、ノズル157bが接続されない孔151cbには、キャップ151dが設けられる。
【0158】
キャップ151dは、ノズル157bが接続されない孔151cbを気密に塞ぐ機能を有する。キャップ151dは、例えば、イモネジや沈みプラグである。孔151cbに雌ネジを設け、キャップ151dを孔151cbにねじ込む。このようにすることで、孔151cbを気密に塞ぐことができる。キャップ151dは、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0159】
カセットフレーム151には、冷却部157が設けられる。
図18に示すように、冷却部157は、例えば、配管157a、ノズル57b、ノズル157b、およびジョイント57cを有する。
【0160】
配管157aは、前述した冷却部40から供給された冷却ガスを枠状部材151aの内部に供給するための配管である。配管157aは、例えば、L字の配管である。配管157aは、Y方向において、カセットフレーム151の一方の側面に取り付けられる。具体的には、配管157aは、枠状部材151aの孔151aaに取り付けられる。配管157aのX方向の端部には、ジョイント57cが接続される。
【0161】
配管157aの長さは、配管57aの長さと比べて短くすることができる。そのため、配管157aの熱容量は、配管57aの熱容量よりも小さくすることができる。したがって、配管157aの、冷却ガスにより冷却される速度は、配管57aのそれよりも向上する。その結果、ワーク100の冷却時間の短縮を図ることができる。また、配管157aが設けられていれば、冷却部157の省スペース化を図ることができる。また、配管157aから枠状部材151aの内部に冷却ガスが流通する。そのため、枠状部材151aおよび梁151cの、冷却される速度は、枠状部材51aおよび梁51cのそれよりも向上する。その結果、カセット50aから輻射によってワーク100に伝わる熱量を抑制することができる。したがって、ワーク100の冷却時間の短縮を図ることができる。
【0162】
枠状部材151aの内部に供給された冷却ガスは、枠状部材151aの孔151acを介してノズル57bに供給される。ノズル57bは、カセット50の場合と同様の役割を担うので、詳細な説明は省略する。
【0163】
ノズル157bは、梁151cの孔151cbに取り付けられる。そのため、枠状部材151aの内部に供給された冷却ガスは、梁151cの孔151cbを介してノズル157bに供給される。ノズル157bは、カセット50a(カセットフレーム151)の内部に設けられる。ノズル157bは、前述した処理空間に設けられる。例えば、ノズル157bは、ノズル57bと同様に、カセット50aの内部空間に支持されたワーク100の裏面に冷却ガスを供給する。ノズル157bは、ワーク100の、冷却ガスが供給される面に対して、ノズル57bと同じ方向に傾斜させることができる。また、ノズル157bの傾斜角度は、ノズル57bの傾斜角度と同じか小さくすることができる。
【0164】
ノズル157bは、ノズル57bと比較して、ワーク100の中央に近い位置に設けられる。つまり、ワーク100の表面に垂直な方向から見て、ノズル157bの吐出口は、ワーク100と重なる位置に設けることができる。例えば、ワーク100の長手方向において、ワーク100の外側にノズル57bを設け、ワーク100の内側にノズル157bを設けることができる。
【0165】
前述したように、梁151cの孔151cbは、梁151cの両側の側面に複数設けられる。そのため、ノズル157bの取付位置は、調整可能である。その結果、ノズル57bから噴出された冷却ガスだけでは温度低下が不十分となるであろう領域の温度を、ノズル157bから噴出される冷却ガスによって、低下させることができる。また、ノズル57b、157bのそれぞれから供給された冷却ガスの流れ方向を略同じとしている。その結果、ノズル57bから噴出された冷却ガスの流速を低下させたり淀みを生じさせたりすることを抑制することができる。つまり、加熱されたワーク100を迅速、且つ、均一に冷却することができる。
【0166】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、加熱処理装置1の形状、寸法、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0167】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0168】
1 加熱処理装置、10 チャンバ、30 加熱部、31 第1の加熱部、32 第2の加熱部、33 ヒータ、50 カセット、50a カセット、57 冷却部、57a ノズル、58 カセット支持部、60 カセットラック、61 フレーム、62 受け部材、62a 側部、62b 上端部、62c 下端部、63 反射板、100 ワーク、157 冷却部、157a 配管、157b ノズル、200 搬入搬出治具、210 駆動ユニット、212 駆動部、212a 切替弁、213 ジョイント、220 昇降ユニット、222 シャフト、223 ローラ、230 連結ユニット、231 カバー、232 シャフト、232a 嵌合部、300 搬送装置