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特許7465866センサ問合せを介したセンサ動作状態の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】センサ問合せを介したセンサ動作状態の決定
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01N27/26 381B
G01N27/26 381Z
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2021517358
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019053458
(87)【国際公開番号】W WO2020069317
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】62/738,190
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150586
【氏名又は名称】エムエスエー テクノロジー, リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マイケル,アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,ブライアン,キース
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0186777(US,A1)
【文献】特開2006-284584(JP,A)
【文献】特開2018-051326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0273263(US,A1)
【文献】特開2008-286724(JP,A)
【文献】米国特許第07751864(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知構成要素を含む、ガス分析物のためのガスセンサをガス環境中で操作する方法であって、
第1のモードにおいて、前記ガス分析物を検知するための前記ガスセンサが配備される期間中に前記ガスセンサの検知構成要素に第1のモードの電気信号を周期的に印加することより前記ガスセンサに問い合わせ、前記第1のモードの電気信号が前記検知構成要素に印加される毎に前記ガスセンサの感度を示す前記第1のモードの電気信号に対するセンサ応答を測定することと、
周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答を分析し、前記第1のモードにおいて前記第1のモードの電気信号が前記検知構成要素に印加される毎に決定される前記センサ応答に基づいて、1つ以上の閾値が超過されたかどうかを決定することと、
1つ以上の閾値が超過された場合に第2のモードに入ることと、
前記第2モードにおいて、前記ガスセンサの前記検知構成要素に第2のモードの電気信号を周期的に印加することと、
前記第2のモードの電気信号が前記検知構成要素に印加される毎に、前記第2のモードの電気信号に対するセンサ応答を測定することと、
前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記セサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答の分析とは異なる、前記第2のモードにおける前記周期的に印加される電気信号に対する前記センサ応答を分析することと、を含む方法。
【請求項2】
前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、前記第2のモードの間に前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答の変化率を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答が安定したことを決定した後に、前記1つ以上の閾値を変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答および前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答は、前記ガスセンサに試験ガスを適用することなく決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答の変化率の、大きさ、および方向のうち少なくとも1つが決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ガスセンサが電気化学ガスセンサであり、そして前記検知構成要素が前記電気化学ガスセンサの作用電極である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答の値が、前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータに基づいて決定され、且つ、前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答が、前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータに基づいて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答の前記少なくとも1つの定義されたパラメータと、前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータとが、独立して、最大電流ピーク値、電流曲線下面積、最小ピーク値、ピークツーピーク値、反転曲線下面積、ベースライン値、またはそれらの1つ以上の関数、の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記周期的に印加される第1のモードの電気信号の各々における前記センサ応答の値が、前記周期的に印加される第1のモードの電気信号の各々において測定される前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータの値についての、前記ガスセンサのキャリブレーション時に決定された値からの変化である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、前記センサ応答の値を経時的に追跡し、そして前記ガスセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、複数の類似ガスセンサについて前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値を決定することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の他の閾値が、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を、前記グループの上限閾値および前記グループの下限閾値、並びに前記個々の上限閾値および前記個々の下限閾値と比較することに基づいて、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれが前記第2のモードに入る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、前記センサ応答の値を経時的に追跡し、そして前記ガスセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、複数の類似ガスセンサの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値を決定することによって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の他の閾値が、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を、前記グループの上限閾値および前記グループの下限閾値、並びに前記個々の上限閾値および前記個々の下限閾値と比較することに基づいて、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれが前記第2のモードに入る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の類似ガスセンサの各々は、類似ガスセンサであること以外の少なくとも1つの共通の特性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの共通の特性が、配備された地理的領域または製造時間の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ガスセンサからのデータが、分析のために遠隔プロセッサシステムに送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ガス分析物とは異なる第2のガス分析物のための第2のガスセンサからのデータ、または、環境条件のための第3のセンサからのデータが前記ガスセンサに送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
ガス環境中でガス分析物に対して感受性を有する少なくとも1つの特性を有する検知構成要素を含むガスセンサと、
前記ガス分析物を検知するための前記ガスセンサの配備期間中に、第1のモードの電気信号を前記検知構成要素に周期的に印加することによって前記ガスセンサに問い合わせる第1のモードで前記検知構成要素とともに動作可能に構成された回路であって、前記検知構成要素に前記第1のモードの電気信号が印加される毎に前記ガスセンサの感度を示す前記第1のモードの電気信号に対するセンサ応答を測定し、前記第1のモードにおいて周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答を分析し、前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答と1つ以上の閾値との比較に基づいて、1つ以上の閾値のうちの少なくとも1つが超過しているかどうかを決定し、前記回路はさらに、前記1つ以上の閾値のうちの少なくとも1つが超過される場合に第2のモードに入るように構成され、前記第2のモードにおける前記ガス分析物の検知のための前記ガスセンサの動作期間の間に前記ガスセンサの前記検知構成要素に対して第2のモードの電気信号を周期的に印加し、前記第2のモードの電気信号が前記検知構成要素に印加される毎に前記ガスセンサの感度を示す前記第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答を測定し、且つ、前記第1のモードにおける前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答の分析とは異なる、前記第2のモードにおける前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答を分析し、前記第2のモードにおける前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答が安定化しているかどうかを決定する、前記回路と、
を含むシステム。
【請求項23】
前記回路が、前記第2のモードにおいて前記周期的に印加される電気信号に対する前記センサ応答を分析して、前記周期的に印加される電気信号に対する前記センサ応答が安定化しているかどうかを決定するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記回路は、前記第2のモードの間に前記センサ応答の変化率を決定し、前記周期的に印加される電気信号に対する前記センサ応答が安定化しているかどうかを決定するようにさらに構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記回路は、前記周期的に印加される電気信号に対する前記センサ応答が安定したことを決定した後に、前記1つ以上の閾値を変更するようにさらに構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記回路は、前記ガスセンサに試験ガスを適用することなく、前記センサ応答を決定するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記センサ応答の変化率の大きさ、および方向の少なくとも1つが決定される、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記ガスセンサが電気化学ガスセンサであり、そして前記検知構成要素が前記電気化学ガスセンサの作用電極である、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記センサ応答の値が、前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータに基づいて決定される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記センサ応答の前記少なくとも1つの定義されたパラメータが、最大電流ピーク値、電流曲線下面積、最小ピーク値、ピークツーピーク値、反転曲線下面積、前記センサ応答のベースライン値、またはそれらの1つ以上の関数、の群から選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記周期的に印加される電子的問い合わせの各々における前記センサ応答の値が、前記ガスセンサのキャリブレーション時に決定された値からの、前記周期的に印加される電気信号の各々において測定される前記センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータの値の変化である、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記センサ応答の1つ以上の閾値が、前記センサ応答の値を経時的に追跡し、そして前記ガスセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される、請求項22に記載のシステム。
【請求項33】
複数の類似ガスセンサを含み、
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、複数の類似ガスセンサについて前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値を決定することによって決定される、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
1つ以上の他の閾値が、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を、前記グループの上限閾値および前記グループの下限閾値、並びに前記個々の上限閾値および前記個々の下限閾値と比較することに基づいて、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれが前記第2のモードに入る、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、前記センサ応答の値を経時的に追跡し、そして前記ガスセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される、請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
複数の類似ガスセンサを含み、
前記センサ応答の前記1つ以上の閾値が、複数の類似ガスセンサの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値を決定することによって決定される、請求項28に記載のシステム。
【請求項38】
1つ以上の他の閾値が、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を経時的に追跡し、そして前記複数の類似ガスセンサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記複数の類似ガスセンサの各々は、前記周期的に印加される電子的問い合わせに対する前記センサ応答に関するデータを送信し、そして前記複数の類似ガスセンサに関する基準の動作についての前記グループの上限閾値および前記グループの下限閾値に関するデータを受診するための通信システムを備える、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記複数の類似ガスセンサのそれぞれの前記センサ応答を、前記グループの上限閾値および前記グループの下限閾値、並びに前記個々の上限閾値および前記個々の下限閾値と比較することに基づいて、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれが前記第2のモードに入る、請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
前記複数の類似ガスセンサの各々は、類似センサであること以外の少なくとも1つの共通の特性を有する、請求項38に記載のシステム。
【請求項42】
前記少なくとも1つの共通の特性が、配備された地理的領域または製造時間の範囲である、請求項4に記載のシステム。
【請求項43】
前記ガスセンサからのデータが、分析のために遠隔プロセッサシステムに送信される、請求項22に記載のシステム。
【請求項44】
前記ガス分析物とは異なる第2のガス分析物のための第2のガスセンサからのデータ、または、環境条件のための第3のセンサからのデータが前記ガスセンサに送信される、請求項22に記載のシステム。
【請求項45】
複数の類似ガスセンサを含むシステムを操作する方法であって、前記複数の類似ガスセンサの各々は、ガス環境中のガス分析物を検知するための検知構成要素を含み、
第1のモードでは、前記ガス分析物を検知するための前記複数の類似ガスセンサの各々が配備されている期間中に、前記複数の類似ガスセンサの各々の前記検知構成要素に第1のモードの電気信号を周期的に印加することによって前記複数の類似ガスセンサの各々に問い合わせることと、前記第1のモードの電気信号がその前記検知構成要素に印加されるたびに前記複数の類似ガスセンサの各々に対する感度を示す前記第1のモードの電気信号に対するセンサ応答を決定することと、そして経時的に決定される周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記複数の類似ガスセンサの基準の応答に基づき、前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記複数の類似ガスセンサの各々の前記センサ応答を独立して分析することと、を含む方法。
【請求項46】
前記複数の類似ガスセンサの各々の前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答と、前記第1のモードにおける前記複数の類似ガスセンサの前記基準の応答との比較に基づいて、前記複数の類似ガスセンサのそれぞれについて独立して第2のモードに入るかどうかを決定することと、前記第2のモードにおいて前記複数の類似ガスセンサのグループの前記基準の応答から外れていると決定された前記複数の類似ガスセンサのうちの1つの前記知構成要素に第2のモードの電気信号を周期的に印加することと、前記第2のモードにおいて前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記センサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、前記第1のモードにおいて前記周期的に印加される第1のモードの電気信号に対する前記センサ応答の分析とは異なり、前記第2のモードにおいて前記周期的に印加される第2のモードの電気信号に対する前記複数の類似ガスセンサのうちの1つの前記センサ応答を分析することと、
を含む、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/738,190号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
以下の情報は、読者が以下に開示される技術およびそのような技術が典型的に使用され得る環境を理解するのを助けるために提供される。本明細書で使用される用語は、本文書で別段の明確な規定がない限り、特定の狭義の解釈に限定されることを意図するものではない。本明細書中に記載された参照は、技術またはその背景の理解を容易にすることができる。本明細書に引用されている全ての参考文献の開示は、参照として組み入れられる。
【0003】
電気化学センサのようなガスセンサは、職場環境において有毒ガスのようなガスを検出するのに有効であることが何十年にもわたって証明されてきた。例えば、電気化学ガスセンサの低コスト、応答速度、および選択性は、そのようなセンサを安全に係る製品にとって魅力的なものにした特徴のほんの一部にすぎない。しかしながら、電気化学的ガスセンサおよび他のガスセンサを使用するための必要な要件の一つは、頻繁なキャリブレーションである。例えば、電気化学センサの感度は、季節や地理的位置などより周囲の相対湿度が変動する結果、それによって変化する電解質の水分含有量に影響される。このような相対湿度の変動は、乾燥地域や乾季での感度の低下、および、湿潤地域や湿潤季での感度の上昇につながる。
【0004】
従って、慎重には、電気化学的ガスセンサおよび/または他のガスセンサを含むガス検出器具を、機能性について周期的に試験することが指示される。例えば、既知の濃度の分析物またはターゲットガス(非ゼロおよびゼロ濃度を含む)を有する試験ガスによる頻繁なキャリブレーションが、上述の感度変化を調整するために必要とされている。例えば、携帯型ガス検知器の「バンプチェック」や機能チェックを日常的に行うことが一般的である。この試験の目的は、一般に計器と呼ばれるガス検知システム全体の機能性を確認することである。また、周期的なバンプチェックまたは機能性チェックは、例えば、完全なキャリブレーションの間隔を延ばすために、恒久的なガス検出器で実施され得る。ガス検出システムは、少なくとも1つのガスセンサと、センサを駆動し、その応答を解釈し、そしてユーザに対する応答を表示するための電子回路(電源を含む)とを含む。このシステムはさらに、このような構成要素を囲み、そして保護するためのハウジングを含む。バンプチェックは、典型的には、a)関心対象の試験ガス(通常、機器が検出することを意図しているターゲットガスまたは分析対象ガスの既知の濃度、または機器が応答しているそのための模擬ガスを含む)を適用すること、b)センサ応答を収集および解釈すること、および、c)システムの機能状態(すなわち、機器が適切に機能しているかどうか)をエンドユーザに示すこと、を含む。
【0005】
従来、バンプ試験は定期的に、典型的には毎日、実施されていた。バンプチェックは、ガス検出装置が適切に作動していることをユーザに比較的高度に保証する。バンプチェックは、有害ガスの警報レベルを検出するために必要な同様の方法で、ガス検知装置の全ての部分の必要な機能を全て実行する。この点に関して、バンプチェックは、能動センサ構成要素と接触するための任意の輸送経路(例えば、任意の保護膜および/または拡散膜を含む)を介して、機器の外部からの効率的なガス送達が確実に行われるようにする。また、バンプチェックは、センサ自体の検出面が適切に機能していること、およびセンサが適切な応答機能または信号を提供することを確認する。バンプチェックは、さらに、センサがその関連する電源および電子回路に適切に接続されていること、およびセンサ信号が適切に解釈されていることを確認する。さらに、バンプチェックは、ガス検出器の単数または複数のインジケータ、ならびに単数または複数のユーザインターフェース(例えば、表示および/または通知機能)が意図された通りに機能していることを確認する。
【0006】
しかし、周期的/毎日のバンプチェックには、多くの重大な欠点がある。例えば、このようなバンプチェックは、特にいくつかのガス検知システムまたは計器を含む産業施設のような施設においては、時間を消費する。バンプチェックはまた、高価で潜在的に危険なキャリブレーションまたは試験ガスの使用を必要とする。さらに、バンプチェックには、通常、加圧ガスボトル、減圧レギュレータ、およびキャリブレーションガスまたは試験ガスを計器に正しく供給するためのチューブおよびアダプタを含む、特殊なガス供給システムも必要とされる。特殊なガス供給システムを必要とすることは、しばしば、個人用ガス検出装置をバンプチェックする機会が、ガス供給装置の利用可能性により、所定の場所および時間に制限されることを意味する。
【0007】
近年、必要なバンプ試験の数を減らすために、いくつかのシステムおよび方法が提案されている。そのようなシステムは、例えば、試験ガスの非存在下でのセンサの電子的問い合わせを含み得る。多数のセンサにおける水分の損失または増加から生じる電気化学ガスセンサの感度の変動は、平均相対湿度が緩やかに変化するにつれて、徐々にではあるが予測可能な様式で生じる。同様に、電子的問い合わせ(既知の濃度の分析対象ガスまたはその代替物を含む試験ガスが存在しない、または適用しない場合)に対するセンサ応答も同様に変化する。電子的問い合わせは、例えば、感度の変化を測定し、そして、それらを補正するために使用され得る。そのような電子的問い合わせ技術および結果として生じる電気化学的ガスセンサの補正は、例えば、米国特許第7,413,645号、第7,959,777号、第9,784,755号、第9,528,957号、および、米国特許出願公開第2013/0186777号および第2017/0219515号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。このような電子的問い合わせアプローチでは、電位パルスのような電気信号が典型的には、センサの検知素子または構成要素に印加され、そして得られた応答が測定され、並びに記録される。応答は、例えば、最大ピーク(電流)値(MPV)または、および/または別のパラメータの形で測定され得る。これらの応答は、以前のガス試験/パルスサイクル中に得られた値と比較される。キャリブレーション値からの変化は、センサの感度の変化と相関され得る。
【0008】
電気化学センサ以外のセンサ(可燃性ガスセンサなど)についても、種々の電子的問い合わせ技術が開発されている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0273263号は、検知素子の動作状態を決定するための、可燃性ガスセンサの検知素子のリアクタンスに関連する変数の周期的な測定を開示している。米国特許出願番号第15/597,933号、および、米国特許出願番号第15/597,859号は、可燃性ガスセンサの電子的問い合わせ技術を開示しており、該電子的問い合わせ技術では、検知要素の質量に関連する変数(例えば、抵抗のような電気的特性)が周期的に測定され、例えば、抑制剤または毒物のような物質が検知要素上に堆積されたかどうかが判断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の試験または問い合わせ技術は、個々のセンサが試験の時点で動作状態にあるかどうかを決定する際に有用であるが、そのようなセンサの将来の故障を予測することについては、比較的僅かにしか成功していない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
要約
一態様では、検知構成要素を含むガス分析物のガスセンサを動作させる方法は、第1のモードとして、電気信号をセンサの検知構成要素に周期的に印加することによってセンサに問い合わせ、電気信号が検知構成要素に印加されるたびにセンサの感度を示す電気信号に対するセンサ応答を測定し、電気信号が検知構成要素に印加されるたびに決定されるセンサ応答に基づいて1つ以上の閾値を超過したかどうかを決定すること、および、1つ以上の閾値を超過した場合に、周期的に印加される電気信号に対するセンサ応答の分析において、第1のモードとは異なる第2のモードに入ること、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2のモードで周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定化しているかどうかを決定するために分析される。この方法は、例えば、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、第2のモードの間にセンサ応答の変化率を決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、センサ応答の変化率の、大きさ、および方向のうちの少なくとも1つが決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定したことを決定した後に、1つ以上の閾値を変更することをさらに含む。電子センサ問い合わせの間に試験ガスを適用する必要はない。この点に関して、センサ応答は、センサに試験ガスを印加することなく決定され得る。いくつかの実施形態では、センサ応答の変化率の大きさおよび方向のうちの少なくとも1つが決定される。
【0012】
センサは、例えば、電気化学ガスセンサであり得、検知構成要素は、例えば、電気化学ガスセンサの作用電極であり得る。センサ応答の値は、例えば、センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータに基づいて決定され得る。いくつかの実施形態において、センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータは、最大電流ピーク値、電流曲線下面積、最小ピーク値、ピークツーピーク値、反転曲線下面積、センサ応答のベースライン値、またはそれらの1つ以上の関数(例えば、1つ以上そのようなパラメータの積、比、またはより複雑な関数)の群から選択される。周期的に適用される電子的問い合わせの各々におけるセンサ応答の値は、例えば、周期的に適用される電子的問い合わせの各々におけるセンサ応答測定値の少なくとも1つの定義されたパラメータの値の、センサのキャリブレーション時に決定された値からの、変化であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、センサ応答の1つ以上の閾値は、センサ応答の値を経時的に追跡し、そしてセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される。いくつかの実施形態において、センサ応答の1つ以上の閾値は、複数の類似センサについてセンサ応答を経時的に追跡し、そして複数のセンサに関する基準の動作についてのグループの上側閾値およびグループの下側閾値を決定することによって決定される。グループ閾値が決定されるいくつかの実施形態では、1つ以上の他の閾値は、複数の類似センサのそれぞれのセンサ応答を経時的に追跡し、そして複数の類似センサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される。第2のモードは、例えば、複数の類似センサの各々について、複数の類似センサのそれぞれのセンサ応答を、グループの上限閾値およびグループの下限閾値、並びに個々の上限閾値および個々の下限閾値と比較することに基づいて入力することができる。
【0014】
本明細書の複数の類似センサのセンサは、例えば、類似センサであること以外の少なくとも1つの共通の特性を示し得る。少なくとも1つの共通の特徴は、例えば、配備された地理的領域または製造の範囲であり得る。複数の実施形態において、類似センサのグループおよびサブグループが確立され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、センサからのデータは、処理および/または分析のために遠隔プロセッサシステムに送信される。いくつかの実施形態では、ガス分析物とは異なる第2のガス分析物のための第2のガスセンサからのデータまたは情報、または環境条件のための第3のセンサからのデータが、ガスセンサに送信される。
【0016】
別の態様では、システムは、分析物に対して感受性を有する少なくとも1つの特性を有する検知構成要素、および検知構成要素と動作可能に接続された回路を含むセンサを備える。回路は、第1のモードにおいて、電気信号を検知構成要素に周期的に印加し、電気信号が検知構成要素に印加されるたびにセンサの感度を示す電気信号に対するセンサ応答を測定し、センサ応答を1つ以上の閾値と比較することによってセンサに問い合わせるように構成される。回路はさらに、1つ以上の閾値に対するセンサ応答の比較に基づいて、1つ以上の閾値を超過する場合に、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答の分析において第1のモードとは異なる第2のモードに入るかどうかを決定するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、回路は、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答を第2のモードで分析して、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定化しているかどうかを決定するように構成される。回路は、例えば、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、第2のモードの間にセンサ応答の変化率を決定するようにさらに構成されてもよい。例えば、センサ応答の変化率の大きさおよび方向のうちの少なくとも1つが決定され得る。いくつかの実施形態では、回路は、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答が安定したことを決定した後に、1つ以上の閾値を変更するようにさらに構成される。回路は、例えば、センサに試験ガスを印加することなく、センサ応答を決定するように構成され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、センサは電気化学ガスセンサであり、そしてセンサ構成要素は電気化学ガスセンサの作用電極である。上述のように、センサ応答の値は、センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータに基づいて決定される。いくつかの実施形態において、センサ応答の少なくとも1つの定義されたパラメータは、最大電流ピーク値、電流曲線下面積、最小ピーク値、ピークツーピーク値、反転曲線下面積、センサ応答のベースライン値、関数、または上述の1つ以上の関数、の群から選択される。周期的に適用される電子的問い合わせの各々におけるセンサ応答の値は、例えば、周期的に適用される電子的問い合わせの各々におけるセンサ応答測定値の少なくとも1つの定義されたパラメータの、センサのキャリブレーション時に決定された値からの変化であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、センサ応答の1つ以上の閾値は、センサ応答の値を経時的に追跡し、そしてセンサに関する基準の動作についての上限閾値および下限閾値を決定することによって決定される。いくつかの実施形態において、センサ応答の1つ以上の閾値は、複数の類似センサに対するセンサ応答を経時的に追跡し、そして複数のセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値を決定することによって決定される。複数の類似センサの各々は、例えば、周期的に印加される電子的問い合わせに対してセンサ応答に関するデータを送信し、そして複数のセンサに関する基準の動作についてのグループの上限閾値およびグループの下限閾値に関するデータを受信するための通信システムを含み得る。グループの閾値が決定されるいくつかの実施形態では、1つ以上の他の閾値が、複数の類似センサのそれぞれのセンサ応答を経時的に追跡し、そして複数の類似センサのそれぞれに関する基準の動作についての個々の上限閾値および個々の下限閾値を決定することによって決定される。第2のモードは、例えば、複数の類似センサのそれぞれのセンサ応答を、グループの上限閾値およびグループの下限閾値、並びに個々の上限閾値および個々の下限閾値と比較することに基づいて、複数の類似センサのそれぞれについて入力し得る。
【0020】
複数の類似センサが追跡されるいくつかの実施形態では、複数の類似センサの各々は、類似センサであること以外の少なくとも1つの共通の特性を有する。少なくとも1つの共通の特徴は、例えば、配備された地理的領域または製造時間の範囲であり得る。
【0021】
センサからのデータは、例えば、処理および/または分析のために遠隔プロセッサシステムに送信され得る。ガス分析物とは異なる第2のガス分析物のための第2のガスセンサからのデータまたは情報、または環境条件のための第3のセンサからのデータが、ガスセンサに送信される。
【0022】
更なる態様では、複数の類似ガスセンサを含むシステムを動作させる方法であって、複数の類似ガスセンサの各々は検知構成要素を含み、第1のモードでは、電気信号をセンサの前記検知構成要素に周期的に印加することによって複数の類似ガスセンサの各々に問い合わせ、前記電気信号が前記検知構成要素に印加されるたびに、複数の類似ガスセンサの各々に対する感度を示す前記電気信号に対するセンサ応答を決定し、そして経時的に決定される周期的に印加される電気信号に対する複数の類似ガスセンサの基準の応答に基づき、周期的に印加される電気信号に対する複数の類似ガスセンサの各々のセンサ応答を分析することを含む方法が示される。この方法は、例えば、複数の類似ガスセンサのそれぞれのセンサ応答と第1のモードにおける前記複数の類似のガスセンサの基準の応答との比較に基づいて、複数の類似ガスセンサのそれぞれについて、周期的に印加された電気信号に対するセンサ応答の分析において、第1のモードとは異なる第2のモードに入るかどうかを決定することをさらに含み得る。この方法は、上記のようにさらに特徴付けられ得る。
【0023】
更に別の態様では、システムは、複数の類似ガスセンサを含み、複数の類似ガスセンサの各々は、検知構成要素と、検知構成要素と動作可能な電子回路とを含む。電子回路は、第1のモードにおいて、電気信号をセンサの検知構成要素に周期的に印加することによって複数の類似ガスセンサのそれぞれに問い合わせ、電気信号がその検知構成要素に印加されるたびに複数の類似ガスセンサのそれぞれについて感度を示す電気信号に対するセンサ応答を測定し、そして経時的に決定される周期的に印加される電気信号に対する複数の類似ガスセンサの基準の応答に基づいて、周期的に印加される電気信号に対するセンサ応答を分析するように構成される。複数の類似センサの各々の電子回路は、例えば、第1のモードにおける複数の類似ガスセンサの基準の応答に対するセンサ応答の比較に基づいて、周期的に印加される電気信号に対するセンサ応答の分析において第1のモードとは異なる第2のモードに入るかどうかを決定するようにさらに構成することができる。このシステムは、上記のようにさらに特徴付けられ得る。
【0024】
本装置、システム、および方法は、それらの属性および付随する利点とともに、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮して、最もよく認識され理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A図1Aは、本明細書の電気化学センサの一実施形態を概略的に示す図である。
図1B図1Bは、本明細書のセンサの一実施形態の概略回路図である。
図1C図1Cは、電気化学的ガスセンサの電子的問い合わせに対する代表的な応答を示す図である。
図1D図1Dは、図1Cの応答を拡大されたスケールで示す図である。
図2図2は、初期キャリブレーション後の、経時的な電子的問い合わせに対するセンサ応答(最大ピーク(電流)値またはMPV)の変化を示す図である。
図3図3は、初期キャリブレーション後の、複数のセンサに対する、経時的な電子的問い合わせに対するセンサ応答(MPV)の変化を示す図である。
図4図4は、初期キャリブレーション後の、複数のセンサに対する、経時的な電子的問い合わせに対するセンサ応答(MPVの変化とMPVの平均変化との差として示される)の変化を示す図である。
図5図5は、初期キャリブレーション後の、単一のセンサの経時的な電子的問い合わせに対するセンサ応答(MPV)の変化を示す図であり、標準偏差-3の閾値を一時的に下回るが、その後回復している。
図6図6は、初期キャリブレーション後の、複数のセンサに対する、経時的な電子的問い合わせに対するセンサ応答(MPVの変化とMPVの平均変化との差として記載)の変化を示す図であり、センサのうちの1つの出力は他のセンサとは異なる態様で変化しているが、出力は基準の範囲にある。
図7図7は、1つ以上の施設または場所からのセンサデータのためのデータ通信、処理、および分析のためのシステムの代表的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本明細書の図に一般的に記載され、図示されている実施形態の構成要素は、記載された代表的な実施形態に加えて、広範な異なる構成に配置され、設計されてもよいことが容易に理解されるであろう。従って、以下の、図に示されるような代表的な実施形態のより詳細な説明は、特許請求されるような具体例の範囲を限定することを意図するものではなく、単に代表的な実施形態を例示するに過ぎない。
【0027】
本明細書中で「一実施形態」または「1つの実施形態」(または類似のもの)を参照するとは、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特徴が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」または「1つの実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同一実施形態を参照するものではない。
【0028】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられ得る。以下の説明では、実施形態の完全な理解を与えるために、多数の特定の詳細が提供される。しかし、当業者であれば、種々の実施形態は、特定の詳細の1つ以上を用いることなく、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを理解するであろう。他の例では、周知の構造、材料、または動作は、不明瞭化を回避するために詳細に示されていないか、または説明されていない。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形である一つの(a、an)および前記(the)は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「プロセッサ」への言及は、複数のそのようなプロセッサおよび当業者に知られているその等価物を含み、「前記(the)プロセッサ」への言及は、当業者に知られているそのような1つ以上のプロセッサおよび等価物への言及である。本明細書における値の範囲の詳述は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための簡略化された方法として機能することを意図する。本明細書に別段の記載がない限り、各別個の値、および中間の範囲は、本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り、または本文により別段の明白な禁忌が示されない限り、任意の適切な順序で実施され得る。
【0030】
本明細書で使用される「電子の回路」、「電子回路」または「回路」なる用語は、機能または動作を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、または各々の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、所望の機能やニーズに基づいて、回路は、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)などの離散論理(回路)、または他のプログラムされた論理デバイスを含み得る。回路はまた、ソフトウェアとして完全に具体化されてもよい。本明細書で使用される場合、「回路」は、「ロジック」と同義であると考えられる。本明細書で使用される「ロジック(論理)」なる用語は、本明細書で使用される場合、機能または動作を実行するための、または他の構成要素から機能または動作を引き起こすための、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、または各々の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、所望の用途またはニーズに基づいて、ロジックは、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)のような個別のロジック、または他のプログラムされた論理デバイスを含み得る。また、ロジックは、ソフトウェアとして完全に具現化され得る。
【0031】
本明細書で使用される「プロセッサ」なる用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPUs)、およびデジタル信号プロセッサの(DSP)ような、事実上任意の数のプロセッサシステムまたはスタンドアロンプロセッサのうちの1つ以上を任意の組み合わせで含むが、これらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能な読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなど、プロセッサの動作をサポートする種々の他の回路と関連付けられ得る。これらのサポート回路は、プロセッサまたはその関連する電子パッケージングの内部または外部にあってもよい。サポート回路は、プロセッサと動作可能に通信している。サポート回路は、必ずしもプロセッサとは別個にブロック図または他の図面で示されてはいない。
【0032】
本明細書で使用される「コントローラ」なる用語は、1つ以上の入力および/または出力デバイスの動作を調整および制御する任意の回路またはデバイスを含むが、これらに限定されない。コントローラは、例えば、機能を実行するようにプログラムすることができる1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、または中央処理ユニットを有するデバイスを含み得る。
【0033】
本明細書で使用される「ロジック(論理)」なる用語は、機能もしくは動作を実行するため、または別の要素もしくは構成要素から機能もしくは動作を引き起こすためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。特定のアプリケーションまたはニーズに基づいて、ロジックは、例えば、ソフトウェア制御されたマイクロプロセス、特定用途向け集積回路(ASIC)などの個別のロジック、または他のプログラムされた論理デバイスを含み得る。ロジックは、ソフトウェアとして完全に具現化されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「ロジック」は、用語「回路」と同義であるとみなされる。
【0034】
本明細書で使用される用語「ソフトウェア」は、コンピュータまたは他の電子デバイスに所望の方法で機能、動作、または挙動を実行させる、1つ以上のコンピュータ読取り可能または実行可能な命令を含むが、これらに限定されない。命令は、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、または、ダイナミックにリンクされたライブラリからの別個のアプリケーションまたはコードを含むプログラムのような種々の形式で具体化され得る。ソフトウェアはまた、スタンドアロンプログラム、関数呼び出し、サーブレット、アプレット、メモリに格納された命令、オペレーティングシステムの一部、または他のタイプの実行可能な命令のような種々の形式で実装され得る。ソフトウェアの形態は、例えば、所望のアプリケーションの要件、それが実行される環境、またはデザイナ/プログラマの所望等に依存することが当業者には理解されるであろう。
【0035】
本明細書のいくつかの実施形態は、電気化学的ガスセンサおよびその電子的問い合わせに関連して説明される。しかし、本発明の装置、システム、および方法は、検知構成要素の診断試験または電子的問い合わせが実行される任意のタイプのセンサに適用可能である。
【0036】
上述したように、電気化学センサの電子的問い合わせのための最近の開発は、試験ガスによる頻繁なキャリブレーションの必要性を減少させた。電子的問い合わせでは、電気信号が、ターゲットまたは分析対象ガスと相互作用するセンサの検知構成要素に印加される。例えば、電気信号は、分析対象ガスとの還元または酸化反応を触媒する電気触媒を含む電気化学センサの作用電極に印加され得る。同様に、電気信号は、可燃性ガスセンサの検知要素に印加されてもよく、この検知要素は、検知要素を適切な温度に加熱すると、検知ガスの燃焼を(例えば、触媒なしの反応よりも低い活性化エネルギーを有する反応経路を提供することによって)促進する触媒を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0037】
電気化学ガスセンサの場合、電子的問い合わせは、例えば、センサがオフラインでセンサ試験診断を実施する総時間(すなわち、センサ電子問い合わせサイクルの間)を最小限にするために、かなり短い時間とし得る。例えば、電気化学的ガスセンサ装置、システム、および/または電子的問い合わせのための方法のいくつかの代表的な実施形態では、本明細書の電気化学的センサについて、10秒未満、5秒未満、または1秒未満に、通常の(ガスセンシング)モード動作に戻ることを可能にし得る。センサの電子的問い合わせのための装置、システムおよび方法は、1つ以上のセンサを含む計器が「オンライン」のままであることを可能にするだけでなく、ユーザの起動の必要なしに、バックグラウンド動作として能動的な、自動センサ状態モニタリングを提供する。本明細書の電子的問い合わせは、周期的に行われる。本明細書で使用される「周期的に」なる用語は、時々または経時的に複数回発生するが、必ずしも固定された間隔または頻度ではない電子的問い合わせを指す。電子的問い合わせの頻度は、一定であってもよいし、変化してもよい。例えば、1時間に数回の頻度でセンサの問い合わせを提供することで、ほぼ一定のセンサ寿命および健全性状態のモニタリングを提供することができる。
【0038】
電気化学的ガスセンサでは、測定されるガスは、典型的には、周囲の雰囲気または環境から、ガス多孔質膜またはガス透過性膜を介して、化学反応が起こる第1の電極または作用電極(検知電極とも称される)へと、センサハウジング内を通過する。相補的な化学反応は、対極(または補助電極)として知られる第2の電極で起こる。電気化学センサは、作用電極での分析対象ガス(すなわち、検出されるガス)の酸化または還元から直接生じる電流の発生を介して、分析信号を生成する。電気化学的ガスセンサの包括的な説明は、Cao, Z. and Stetter, J.R.,”The Properties and Applications of Amperometric Gas Sensors,” Electroanalysis, 4(3), 253(1992)にも提供されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
作用電極と対極との組合せは電気信号を生成し、それは、(1)分析対象ガスの濃度に関連し、そして、(2)対象とする全範囲にわたって分析対象ガスの濃度レベルを区別するのに適した信号対ノイズ比を提供するのに十分に強い。換言すれば、作用電極と対極との間の電流の流れは、対象とする濃度範囲にわたって分析対象ガスの濃度に対して、測定可能に比例する必要がある。
【0040】
作用電極および対極に加えて、電気化学センサはしばしば、一般に参照電極と称される第3の電極を含む。参照電極は、作用電極を既知の電圧または電位に維持するために使用される。参照電極は、物理的および化学的に電解質中で安定であるべきである。
【0041】
作用電極と対極との間の電気的接続は、電解質を介して維持される。電解質の機能は、(1)イオン電流を効率的に運ぶこと、(2)分析対象ガスを可溶化すること、(3)対極および作用電極の反応の両方をサポートすること、および(4)参照電極と安定した基準電位を形成すること、を含む。電解質の基準には、例えば、(1)電気化学的不活性度、(2)イオン伝導度、(3)化学的不活性度、(4)温度安定性、(5)低コスト、(6)低毒性、(7)低燃焼性、および(8)適切な粘度、が含まれる。
【0042】
一般に、電気化学セルの電極は、酸化または還元(酸化還元)反応が起こる表面を提供し、これにより、電解質溶液のイオン伝導が電極の電子伝導と結合し、電流のための完全な回路を提供するメカニズムを提供する。電気化学セルのセル反応から生じる測定可能な電流は、電極で生じる反応の程度に正比例する。従って、好ましくは、高い反応速度が電気化学セル内で維持される。このため、電気化学セルの対極および/または作用電極は、一般に、反応速度をサポートするために、その表面上に適当な電極触媒を含む。
【0043】
静電力の結果として、作用電極表面に非常に近い溶液の体積は、非常に高度に秩序化された構造となる。この構造は電極プロセスを理解する上で重要である。電極表面に非常に近い溶液の体積は、拡散層(diffusion layer)、拡散する層(diffuse layer)、および/またはヘルムホルツ層、または平面と、様々に称される。
【0044】
電気化学セルに存在する抵抗および静電容量の大きさは、その製造に使用される材料の性質および同一性の結果である。電解質の抵抗は、溶媒に溶けているイオンの数および種類の結果である。電極の静電容量は、主として電極触媒の有効表面積の関数である。理想的には、これらの量は不変である。しかしながら、水性(水ベース)電解質を利用する電流測定ガスセンサに存在する溶液抵抗は、例えば、異なる周囲相対湿度レベルに曝露された結果として変化し得る。水がセンサから蒸散するにつれて、イオン電解質の化学的濃度が増加する。この濃度変化は、実際に使用される電解質に依存して、電解質の抵抗率の増加または減少をもたらす可能性がある。
【0045】
さらに、通常、特定の溶媒に不溶であると考えられる物質でさえ、溶媒中に、小さいながらも有限な物質の濃度がある。例えば、電気化学センサの電解質に溶解した電極からの金属の濃度は、非常に小さいながらも有限である。溶存金属のこの小さな濃度は、常に流動している。つまり、金属原子は電極から絶えず溶解し、そしてどこか別の場所に再メッキされる。このプロセスの正味の効果は、電極の有効表面積を減少させることである。これには、センサ容量を経時的に低下させる効果がある。上記の効果の両方は、センサの寿命全体にわたって、センサの感度を変化させるという正味の効果を有する。
【0046】
図1Aは、本明細書の装置、システム、および方法において使用され得る電気化学センサ10の代表的な実施形態の概略図を示す。センサ10は、1つ以上のターゲットガスまたは分析対象ガスをセンサ10内に導入させるための、ガス入口30を有するハウジング20を含む。図示の実施形態では、電解質飽和芯材料(electrolyte saturated wick material)40a、40bおよび40cは、作用電極50をセンサ10内の参照電極70および対極80から分離し、および/または、ハウジング20内の電解質44を介してそれらの間にイオン伝導を提供し、そして芯材料40a、40bおよび40c内に吸収される。当該技術分野で知られている電子回路100は、例えば、作用電極50と参照電極70との間の所望の電位差を維持し、本明細書に記載されるように電位差を変化またはパルス化し、そしてセンサ10からの出力信号を処理するため、提供される。
【0047】
図示の実施形態では、作用電極50は例えば、拡散膜52上に触媒54の第1の層を堆積させることによって(例えば、センサ技術において公知の触媒堆積技術を用いて)、形成され得る。ガスは、拡散膜52を通して容易に移送または輸送されるが(例えば、拡散を介して)、電解質44は拡散膜52を通して容易に移送または輸送されない。作用電極50はハウジング20の、上部、キャップ、または蓋22、の内面に(例えば、ヒートシールを介して)取り付けることができる。
【0048】
電子回路100は、例えば、センサ10の動作の種々の態様を制御するための1つ以上のプロセッサまたはマイクロプロセッサを含む、プロセッサまたはコントローラシステム102を含み得る。メモリシステム104は、プロセッサシステム102との動作可能または通信可能な接続に配置され得、本明細書に記載されるように、センサ10の制御および/またはその出力の分析のためのソフトウェアを格納し得る。ユーザインターフェースシステム(例えば、ディスプレイ、スピーカなどを含む)もまた、プロセッサシステム102との作動接続または通信接続に配置され得る。トランシーバなどの通信システム108は、有線および/または無線通信のために、プロセッサシステム102との動作可能にまたは通信可能な接続に配置され得る。電源110(例えば、バッテリシステム)は、電子回路100に電力を供給し得る。
【0049】
図1Bは、本願のセンサのいくつかの研究において使用される電子回路または制御回路100の一部分または一部の実施形態を概略的に示す。図1Bに示される電子回路100の部分は、定電位回路とも称される。図1Aに示されるような3電極センサでは、電気化学反応を制御し、そしてセンサによって生成された電流に比例した出力信号を送るために、参照電極70と検知電極または作用電極50との間に所定の電位差または電圧が維持される。上述のように、作用電極50は、ガスを酸化または還元することによって、分析対象ガスまたはターゲットガスに応答する。酸化還元反応は、ガス濃度に比例した電流を生成する。電流は対極80を介してセンサ10に供給される。作用電極での反応とは逆の酸化還元反応が対極80で起こり、作用電極50を有する回路が完成する。対極80の電位は、浮動し得る。ガスが検出されると、セル電流は上昇し、対極80は参照電極70に対して分極する。回路が作用電極50の正しい電位を維持するのに十分な電圧および電流を提供する限り、対極80の電位は重要ではない。
【0050】
例えば、米国特許出願公開第2017/0219515号に記載されているように、いくつかの代表的な実施形態では、電気/電子回路100の測定回路は、単段オペレーショナル・アンプ、即ちオペアンプIC1を含む。センサ電流は、利得抵抗120(図示の実施形態では5kΩの抵抗を有する)により反射され、出力電圧を生成する。負荷抵抗122(図示の実施形態では56Ωの抵抗を有する)は、例えば、最速応答時間と最良の信号対ノイズ比との間のバランスを介して選択され得る。
【0051】
制御オペアンプIC2は、定電位制御を提供し、作用電極50によって必要とされる電流のバランスをとるために対極80に電流を提供する。IC2への反転入力は、参照電極に接続されているが、参照電極から有意な電流は流れない。
【0052】
センサ10のような本明細書の電気化学ガスセンサの電子的問い合わせの間に、非ファラデー電流が(例えば、作用電極50へのエネルギーの印加を介して)誘導され得る。例えば、電気信号を作用電極50に印加して、非ファラデー電流を発生させる電位の段階的変化が生成され得る。発生された非ファラデー電流は、複数の電極の充電の結果として、センサの動作状態、機能性、または健全性状態を監視するために使用され得る。しかしながら、上述のように、センサはその後、ターゲットまたは分析対象ガスを感知する際の通常動作のために、その通常バイアス電位または電位範囲に戻される。センサをその動作バイアスまたは動作電位差(ゼロであってもよい)に戻すプロセスは、反対方向に電流ピーク(電荷の蓄積)を生成する。動作電位差に戻る際に発生する電流ピークは、消失するのに何秒もかかることがある。
【0053】
センサの健全性、動作状態、または動作状況に関する情報は、例えば、(i)最大ピーク値(MPV),これは、電位パルスの印加時に観測される最大電流である;(ii)曲線下面積(AUC),これは、電位パルスの印加後の動作電極の積分電流応答(これはセンサの充電応答に相当する)である;(iii)最小ピーク値(mPV),これは、電位パルスの除去または反転時に得られる最小電流であり、通常、電位パルスの除去または反転の直後と直前に観察される電流の差として得られ、最小電流とベースラインの差として表にしても使用され得る;(iv)ピーク間値(PP),これは、観測された電流の最大と最小との間の代数的差である;(v)曲線下反転面積(rAUC)、または、より正確には、逆曲線下面積,これは、電位パルスの除去または反転後の電流応答を積分することによって得られる充電電流である;(vi)ベースラインまたはベースライン出力の変化およびその関数(例えば、1つ、2つ、またはそれ以上のそのようなパラメータの、製品、比率、および/または、より複雑な関数)、の形式で測定された電子問い合わせへの応答から取得され得る。検知構成要素(例えば、電気化学ガスセンサの作用電極、または可燃性ガスセンサの検知要素)およびセンサ/センサ装置の動作状況は、典型的には、そのようなパラメータおよび/または他のパラメータをセンサの感度の変化に関連付けることによって決定される。感度とは、出力信号(例えば、電流)と測定された物理量(例えば、分析対象物またはターゲットガスの濃度)との比率を指す。
【0054】
短期間で単一のデータポイントまたは複数のデータポイントを測定/分析することは、例えば、図1Cおよび1Dに示されるように、硫化水素またはHSのための代表的な電気化学的ガスセンサについて、応答/電流対時間曲線を提供する。センサ10(または本明細書の別のセンサ)に非ファラデー電流を誘導する際、および/または、センサ10(または本明細書の別のセンサ)をその動作電位差に戻す際に生じる比較的大きな電流ピークの急速な放電も、センサ電子回路または電子回路100の能動制御(例えば、動作電極50と試験電位差が印加された後に出力/応答が測定されるポイントとの間の電子回路100の負荷抵抗を低下させることにより)を介して達成され得る。いくつかの実施形態では、作用電極50とオペアンプIC1の出力との間の負荷抵抗は、低い値に低下する。続いて、作用電極50とオペアンプIC1の出力との間の負荷抵抗は、電荷が実質的に放散された後または完全に放散された後に、その通常の抵抗または動作負荷抵抗(または負荷抵抗の動作範囲内)に回復される。
【0055】
いくつかの実施形態では、負荷抵抗122(図1B参照)は、動作電極50とオペアンプIC1の反転端子との間の負荷抵抗を減少させるために、バイパスされる。バイパス回路124は、例えば負荷抵抗122をバイパスするために設けられ得る。いくつかの実施形態では、電界効果トランジスタ(FET)126が、負荷抵抗122の周囲のバイパスまたは短絡を制御可能にするために、バイパス回路124内のスイッチとして使用された。いくつかの実施形態では、金属酸化物半導体FETまたはMOSFETが使用された。
【0056】
図1Cおよび1Dは、硫化水素またはHSを検出するように設計された作用電極50を含む代表的なセンサ10の出力を示す。図1Cおよび図1Dにおいて研究された実施形態では、作用電極50はイリジウム触媒を拡散膜上に堆積させることによって形成され、参照電極70はイリジウム触媒を拡散膜上に堆積させることによって形成され、そして対極80はイリジウム触媒を拡散膜上に堆積させることによって形成された。センサのバイアス電位または動作電位差は0mVであった。図1Cに例示されているように、点Aによって表される時に、電子的問い合わせ手順が開始される。0.5秒後(点Bで表されている)に、試験電位差が印加される。図示された研究では、+10mVの試験電位が印可された。出力の最大ピーク値(MPV)は、点Cで表されるように試験電位印加後、1/16秒後に記録された。その時点で、電位も0mVの動作電位差に戻された。負荷抵抗122をバイパスする際に、FET126は、動作電位差への電位の戻りとほぼ同時に、または同時に起動された。負荷抵抗がかなり低くなると、大きな負の電流スパイク(通常の動作モードでは、非常に高い負のガスppmの読み取り値である)が生じる。しかし、負荷抵抗122をバイパスする際に発生する急速放電は、非常に短い時間(すなわち、1秒未満)でセンサ出力をベースラインに戻す。この結果を分かり易く説明するために、図1Dではスケールを拡大している。しかしながら、負荷抵抗122がバイパスされない場合、出力がベースライン出力に戻るのに数秒を要する。図1Cに示されるように、点Dにより表されるようにFET126が非アクティブにされ、そして56Ω負荷抵抗122が約0.95秒の時間で回路内に復元されると、出力電流はエンドユーザによって識別される値未満になる。この値は、通常、ターゲットガスの約0~±2ppmの範囲である。
【0057】
センサの健全性またはセンサの状態に関する情報は、例えば、極めて小さいおよび/または短い持続時間の電極電位変化の形態における電気信号の印加に際して、および、結果としての応答/電流曲線における短い時間スパンにわたる単一のデータポイントまたは複数のデータポイントの測定/分析に際して、上述の最大ピーク値(電流)値(MPV)および/または別のパラメータを取得し得る。本明細書のいくつかの代表的な実施形態では、MPVは、電気化学センサの検知要素/作用電極を特徴付けるために使用される。上述したように、センサ10(または本明細書の別の電気化学センサ)に非ファラデー電流を誘導する際、および/または、センサ10(または本明細書の別のセンサ)をその動作電位差に戻す際に生じる比較的大きな電流ピークの急速な放電は、センサ電子回路/電子回路100の能動制御を介して(例えば、動作電極50と試験電位差が印加された後に出力/応答が測定される点との間の電子回路100の負荷抵抗を低減することによって)達成され得る。いくつかの実施形態では、作用電極50とオペアンプIC1の出力との間の負荷抵抗は、低い値に低下する。続いて、作用電極50とオペアンプIC1の出力との間の負荷抵抗は、電荷が実質的に放散された後または完全に放散された後に、その通常の抵抗または動作負荷抵抗(または負荷抵抗の動作範囲内)に回復される。
【0058】
例えば、水分損失または増加の結果としての電気化学センサの感度の変動は徐々に生じるが、平均相対湿度が緩やかに変化するにつれて、一般に予測可能な様式で生じる。上述のようなガスの無い電子的問い合わせに対するセンサ応答も同様に変化する。電子的問い合わせは、例えば、米国特許番号第7,413,645号,第7,959,777号,第9,784,755号,および第9,528,957号,並びに米国特許出願公開第2013/0186777号および第2017/0219515号に記載されているように、感度の変化を追跡し感度の変化を補正するために使用され得る。上述のように、電位パルスは典型的にはセンサの検知構成要素に印加され、そして得られた応答は、例えば、最大ピーク(電流)値および/または1つ以上の他のパラメータの形で記録される。これらの応答は、以前のガス試験/パルスサイクル中に得られた値と比較され得る。キャリブレーション値からの変化は、動作状態/センサ感度の変化と相関している。このようにして、問い合わせ時のセンサの健全性が評価される。次いで、感度を調整して、そのような変化を補正することができる。このような方法は、問い合わせ時のセンサの健全性状態のリアルタイム状態を提供するが、将来のセンサ性能には対応しない。
【0059】
本明細書の装置、システム、および方法のいくつかの実施形態において、複数の連続した問い合わせ事象は、例えば、電子的問い合わせに対するセンサ応答が基準の動作の範囲外であるかどうかを決定するために、第1のモードまたは第1の問い合わせモードで実行される。例えば、MPV、AUC、および/または他のパラメータのような1つ以上のパラメータに基づく、またはそれらから決定された1つ以上の変数の値の変化を使用して、センサがさらなる/変更された分析、および/またはメンテナンスの必要がある場合を評価し得る。仮に、例えば、問い合わせに対するセンサ応答が、基準、正常、または予想される変動(例えば、正常で、徐々に変化する相対湿度の結果として予想される変動)の範囲外である場合、そのセンサは、注意を必要とするものとして識別されるかまたはフラグ付けされ得る。
【0060】
本明細書のいくつかの実施形態において、センサが、応答の基準の範囲外の電子的問い合わせに対する応答を示すと、第2のモード、第2の問い合わせモード、または観察モードが入力される。第2のモードでは、電子的問い合わせに対するセンサ応答の分析は、第1のモードとは異なる。第2のモードでは、1つ以上のパラメータのサンプリング速度は変更されてもよく、および/または、測定された1つ以上パラメータの識別は変化され得る。いくつかの実施形態において、電子的問い合わせに対するセンサ応答が安定しているかまたは安定化されていている場合、決定は、第2のモードで測定された応答から周期的な電子的問い合わせ(すなわち、経時的な複数の電子的問い合わせ)までの、1つ以上の期間にわたって行われる。例えば、センサ応答が、第2のモードでの1つ以上の期間にわたって所定の閾値内での平均変化率に近づいているか、または、第2のモードでの1つ以上の期間にわたって、所定のまたは規定された応答範囲内に残っているかどうかが、第2のモードで1つ以上の期間にわたって決定されてもよい。いくつかの実施形態において、測定変数の変化率(1つ以上のパラメータに基づくか、または1つ以上のパラメータから導出される)は、例えば、センサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、第2のモードにおいて1つ以上の期間にわたって決定され得る。センサ応答安定性に関する決定(例えば、第2のモードにおける1つ以上の期間にわたる変化率の大きさ/方向から決定される)は、例えば、センサ設定が変更されるべきか否か(例えば、応答の基準の範囲の変更、感度補正の変更など)、センサの再キャリブレーションが必要であるか否か、またはセンサを交換する必要があるか否か、を決定するために使用され得る。本明細書に記載される装置、システムおよび方法では、センサの健全性または動作状態(すなわち、感度)は、電子的問い合わせの際に測定されるだけでなく、その将来の健全性状態は、健全性の測定値の集合(すなわち、電子的問い合わせに対する測定された応答)を用いて推定される。
【0061】
電子的問い合わせに対するセンサ応答の基準の範囲は、いくつかの方法で導出され得る。応答の基準の範囲を決定する簡単な方法は、センサ応答を一定時間にわたって追跡し、基準または通常変動を決定することである。次に、リミット(例えば、上限閾値および下限閾値)を設定して、センサ動作における偏差を識別またはフラグ付けすることができる。このようなリミットは、例えば、更なる電子的問い合わせが行われるにつれて、時間の経過とともに再決定され得る。基準のリミットまたは閾値、およびそのような基準のリミットが超過されたかどうか(それによって第2のモードの入力をトリガする)は、例えば、メモリシステム104に保存され、そしてプロセッサシステム102によって実行可能なソフトウェアを介して決定され得る。図2には、最初のキャリブレーションポイント(製造時)からのMPV値の変化を80日以上にわたってプロットした例が示されている。
【0062】
図2において、基準の動作を示すセンサは、センサ10a(i)とラベル付けされている。図2の結果において、80日以上にわたる平均は26カウントであり、標準偏差は107カウントである。リミット値または閾値は、例えば、標準偏差の倍数(例えば、±1から±3のシグマ)を用いて設定され得る。図示された実施形態では、リミット値は、標準偏差の±3倍を用いて設定され、基準の分布の99.7%を捕捉した。このようなリミット(上限および下限の閾値)は、図2の上下の破線トレースで示されている。上述の第1のモードでは、デルタMPVが経時的に追跡され、そして基準のデルタMPV値(基準のデルタMPV値の上限および下限の閾値)と比較される。いったんデルタMPVがこれらの制限の1つを越えて移動すると、システムは、例えば、第2のモードまたは観察モードに入ることができ、ここでは電子的問い合わせの応答の分析は、第1のモードにおけるものとは異なる。上述したように、デルタMPVの変化率は、電子的問い合わせに対するセンサ応答が安定化しているかどうかを決定するために、第2のモードで1つ以上の期間にわたって追跡され得る。従って、第2のモードのいくつかの実施形態では、電子的問い合わせは上述のように継続し、そしてデルタMPVは依然として追跡されるが、デルタMPVの変化率(dΔMPV/dt)も同様に追跡される。
【0063】
デルタMPVの変化率を追跡する2つの代表的な例が図2に示されている。センサ10a(ii)のデータトレースは、センサがMPV値の段階的変化を経験したことを示す。いったんデルタMPVが-3シグマ値/制限を超えると、変化率は、上記のように第2の動作モードでモニターされる。さらに、センサが第2のモードに入ったことをユーザに警告するために、警告または通知がユーザに提供され得る(しかし、必須ではない)。しかし、ユーザがその時点で何らかのアクションをとる必要はない。本明細書に記載される第2のモードまたは観察モードを提供することは、不必要な双方向のメンテナンスを減らすことにより、現在利用可能なセンサと比較してユーザに必要とされるインタラクションを減らすため、顕著な利点を提供し得る。センサのメモリシステム104に保存される制御ソフトウェアに応じて、センサは、例えば、補償を変更し、パルス/電子的問い合わせ試験の頻度を増加させ、1つ以上の追加パラメータを測定し、基準のセンサ応答の範囲を第2のモードで変更することができる。このような動作は、例えば、自動化され得、または、ユーザの介入を必要としないものであり得る。
【0064】
電子的問い合わせに対する応答が第2のモードで安定化することが見出されるセンサの場合(例えば、電子または電気回路100を介して)、その応答は、基準の応答の元の範囲内、または基準の応答の別の範囲、または基準の応答のオフセット範囲内で安定化し得る。センサについての許容可能な応答/基準の応答のための1つ以上の制限または閾値が定義され得る。センサが、そのようなリミットまたは閾値を超過する応答範囲で安定する場合、センサは、例えば、サービスまたは交換のためにフラグ付けされ得る。センサ10a(ii)の場合、変化率は安定し、そしてシステムは、センサ10a(ii)の将来の状態は、元の範囲または基準の応答からオフセットされているが、新しい許容可能な基準の範囲内で安定であると予測する。システムは、例えば、「センサを再キャリブレーション」表示または警告をトリガし得、および/または、新しい状態にシステムを再設定し得る。「新しい」キャリブレーションの場合、例えば、センサは、新しいキャリブレーションの間に決定された新しい「アンカー」値からデルタMPVを決定し得る。また、センサは、(代替的にまたは追加的に)製造時のキャリブレーションからデルタMPVを決定し続けてもよい。
【0065】
一方、センサ10a(iii)のデータトレースは、センサ10a(iii)の破局的な故障を示す。再度、デルタMPVが-3シグマ下限を超えると、変化率は、例えば、第2のモードで1つ以上の時間期間にわたってモニターされ、電子的問い合わせに対するセンサ応答が安定になるかどうかを決定し得る。センサ10a(iii)の場合、センサ応答(この例ではデルタMPV)は急速に変化し続け、そしてシステムはセンサ10a(iii)が、ガス検出のためにその有用な状態から急速に移動することを予測する。システムは、例えば、「センサ交換」警告をトリガし得る。そのような決定を行った後に、定量化が実施され得、そして修理が可能な場合にはセンサを永久的または一定期間(例えば、24時間または数日)、動作から外すために警告が提供され得る。使用停止期間が過度に危険であるかまたは負担が大きい場合は、その期間中にセンサを交換し得る。
【0066】
電子的問い合わせに対する応答の「グループ」基準の範囲は、例えば、類似センサであること以外に、少なくとも1つの共通特性を共有することができるセンサの集団(例えば、複数の類似センサ)にわたるデータ分布を用いて決定することもできる。本明細書で使用される場合、「類似」という用語は、同様のまたは同一の方法で製造されたセンサを指す。一般に、このようなセンサは、同じ分析対象物を感知するように製造され、そして同じ方法で製造された検知構成要素を含む。例えば、特定のガス分析物に対する類似電気化学的ガスセンサは、同様の方法で製造された作用電極を含み得、そして同じ電解質を含み得
る。このようなセンサの対極、参照電極、および/または電子回路も、同様のまたは同一の方法で製造され得る。このような電気化学的ガスセンサは、例えば、当技術分野で公知の2つまたは3つの電極センサであり得る。類似燃性ガスセンサは、例えば、感知素子、補償素子、および/または、同様のまたは同一の方法で製造された電子回路を含むことができる。
【0067】
共通の特性(類似センサであること以外の)に関して、センサの集団は、例えば、同一のローカル環境、および/または、製造日時の共通の範囲を共有し得る。このようなセンサは、特定の顧客の同じ場所で全て使用されるユニット、または、より広い地域(例えば、都市または郡)で使用される全てのユニットであってもよい。また、分布は、例えば、センサ製造日コードに基づいてもよく、そしてグローバルおよび/またはローカライズされた集団をカバーしてもよい。類似センサのグループおよびサブグループは、異なる共有または共通特性に基づいて確立され得る。各ユニットの結果がまとめられ、そして母集団全体の分布が基準のデータセットとして使用され得る。
【0068】
図3は、同じローカル環境の15個のセンサからのデータの代表的な例を示している。上述のように、最初のキャリブレーションポイントからのMPV値の変化は、80日以上にわたる全てのセンサについてプロットされる。80日以上にわたる平均値は5カウントで、標準偏差は117カウントであった。図3の代表的な例では、グループリミットまたは閾値は、例えば、シグマの倍数を用いて確立され得る。図示された実施形態では、標準偏差の±3倍を用いてグループの上限および下限閾値が確立され、基準の分布の99.7%が捕捉された。グループリミットは、例えば、複数の類似センサの各々と通信して、そこからデータ/情報を受信する、複数の類似センサの外部のプロセッサシステムを介して決定され得る。決定されたグループリミットは、例えば、外部処理システムから複数の類似センサの各々に送信され得る。このようなグループリミットは、図3において、上部および下部の破線で示されている。特定のセンサについて測定されたデルタMPVがこれらのリミットを超えて移動すると、センサシステムは第2のモードまたは観察モードに入ることができる。上述のように、いくつかの実施形態では、センサ応答が安定するかどうかを決定するために、第2のモードのセンサについてデルタMPVの変化率が追跡され得る。図2と同様に、センサステップ変化(センサ10a(ii))および破局的なセンサ故障(センサ10(iii))の2つの例が図3に示されている。そのような個々のセンサに対する動作(例えば、基準の閾値の調整、または「再キャリブレーション警告」および「センサの交換」警告のような、通知/警告の開始)は、例えば、図2の単一のセンサの例に関連して上述したものと同じであり得る。
【0069】
再び図3を参照すると、研究されたセンサのローカル集団は、ローカルの環境の日々の変化と同様の様式で応答することが明らかである。この結果は、局所集団データを使用した、各センサの日々のデルタMPV値を、その局所集団内の全てのセンサについての日々の平均デルタMPVと比較する、追加の処置を示唆する。このようにして、母集団に関する基準の動作は、各問い合わせ事象について正規化され、そして基準の動作からの偏差はより明確になる。図4は、この方法を示している。80日以上にわたる平均は0カウントであるが、しかしながら標準偏差は55カウントにすぎない。ここでも、標準偏差の±3倍を用いて基準の分布の99.7%を捕捉して、グループリミットを設定することができる。これらは図4の点線で示されている。このデータ処理はデルタMPV値における日々のノイズの一部を除去し、そして2つの偏差したケースが他のセンサから容易に識別されるようにする。
【0070】
いくつかのセンサは、一般集団よりもいくつかの固有ノイズを示し得る。図3に関連して説明された集団処理によってフラグ付けされたセンサ(すなわち、集団/複数の類似センサについて決定されたグループリミットまたは閾値に対する1つ以上の電子的問い合わせに対するセンサ応答の比較に際して)は、それ自体の履歴と比較した場合(すなわち、1つ以上の電子的問い合わせに対するセンサ応答と、個々のセンサについて決定された個々のリミットまたは閾値との比較に際して)、依然として基準上の動作をしている。他のケースと照らし合わせると、図3に関連して説明した処理は、図2に関連して説明した単一のセンサ処理と組み合わせられ得る。図4の代表的な例では、センサ10a(iv)は、監視されているグループ/複数の類似センサについて、-3標準偏差/閾値ラインを下回るいくつかの例を示す。センサ10a(iv)は、例えば、フォローアップのための単一の処置または評価のためにフラグ付けられたものとして識別され得る。図5は、センサ10a(iv)に対する単一のセンサ処理(例えば、上述の図2に関連して説明したような)を示す。図5に示すように、センサ10a(iv)は、個々のセンサの-3標準偏差リミットを一時的に下回るものの、回復する。明細書に記載のグループ、母集団または分布処理、および個々のセンサ処理の両方を組み合わせることにより、より包括的な評価が得られ、センサ10a(iv)は、例えば、適切に機能しているとみなされ得る。
【0071】
例えば、少なくとも1つの共通特性(すなわち、類似センサであること以外の共通特性、例えば、地理的位置、製造日の範囲など)を共有する類似センサの集団に関する傾向を評価する場合、測定値が基準の範囲外であるかどうかの決定以外のデータ分析が行われ得る。例えば、(センサ母集団からのデータに基づいて)特定のセンサが安定されるかまたは一定のトレンドを追従すべきであるが、特定のセンサは、監視される集団内の仲間または他のセンサとは異なる出力を示し得ると期待することができる。そのような差は、例えば、閾値範囲(例えば、+/-3標準偏差の外)の特定の値/パラメータ(例えば、MPVまたはデルタMPV)の出力以外の方法で示され得る。例えば、応答の大きさ、変化率の大きさ、および/または仲間に対する各センサの変化の方向を判定/分析することができる。図6に示すように、センサ10a(v)は、調査された母集団の他のセンサとは逆のデルタMPVの変化率を示している。センサ10a(v)は、例えば、センサの母集団および/または個々のセンサ10a(v)についてデルタMPV挙動が基準の範囲内にあるとしても、そのピアとは異なる、更なる/代替分析および/またはそのようなトレンドに基づく評価のために、識別されまたはフラグ付けされ、第2のモードまたは観察モードに配置され得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、例えば、特定のセンサが再キャリブレーションされるべきであること、および/または、その基準の応答範囲が、その特定のセンサがメンバーである母集団/複数の類似センサの基準の範囲から、少なくとも定義された量または所定の量だけオフセットされるべきであることが第2のモードにおいて決定される場合、例えば、特定のセンサが、母集団/複数の類似センサのメンバーとして追跡されるべきではないことが決定され得る。特定のセンサが、母集団/複数の類似センサの基準の範囲内で安定化するか、またはそれらからわずかにオフセットする場合、例えば、特定のセンサを、母集団/複数の類似センサのメンバーとして追跡し続けるべきであると決定されることができ、そして、その応答は、母集団/複数の類似センサのグループに関する基準の閾値を決定する際に引き続き考慮され得る。
【0073】
母集団/複数の類似センサをモニターする場合、複数の仲間または他のモニターされる母集団/複数の類似センサ内の他のセンサと異なるセンサ応答または応答トレンドは、問題のセンサが誤作動していることを示すものではなく、センサがモニターされる母集団/複数の類似センサのメンバーであるべきではないことを示すものであり得る。そのような異なる応答は、例えば、特定の場所における異なる微小環境から生じ得る。例えば、異なる応答/トレンドを示すモニターされた母集団/複数の類似センサのセンサは、特定の位置の構造内に配置され得、一方、母集団/複数の類似センサの他のセンサは、ドアの外に配置され得る。同様に、異なる応答/トレンドを示すモニターされた母集団/複数の類似センサのセンサは、直射日光内に配置され得るが、一方で母集団/複数の類似センサの他のセンサは直射日光内には配置されない。従って、母集団/複数の類似センサにおけるその仲間の応答と異なるセンサ応答は、センサが母集団/複数の類似センサに適切に含まれるかどうかの調査をトリガし得る。例えば、調査中のセンサは、個別にのみ、または別の母集団/複数の類似センサ内でのみモニターされるべきであると決定され得る。
【0074】
1つ以上のセンサ応答を分析する際のさらなる情報/ガイダンスを提供することに加えて、母集団/複数の類似センサの周期的な電子的問い合わせに対する応答を追跡することは、例えば、母集団/複数の類似センサのセンサとの体系的な問題に関する情報を提供し得る。このようなセンサは、例えば、決定された日付/時刻または製造コード範囲で製造された可能性がある。特定の欠陥(例えば、電解質組成の欠陥)は、製造時には発見されないことがあるが、その後の電子的問い合わせに対する異常な応答を生じさせ得る。電子的問い合わせに対するこのような複数の類似センサ応答の追跡は、例えば、このような欠陥が他の点で明らかになる前でさえ、センサに関する体系的な問題の検出をもたらし得る。
【0075】
センサの製造時から(および/または、次回のキャリブレーションのような他の開始点若しくはアンカー点から)からセンサの寿命の後期までの、最大ピーク値および/または1つ以上の他のパラメータの変化は、例えば、その履歴期間中にセンサが経験した環境条件のタイプ(例えば、低湿度または乾燥条件)を判別するために分析され得る。そのような履歴データに基づいて、センサ動作の1つ以上のパラメータを変更し得る。メモリに格納され、そして1つ以上のプロセッサによって実行可能なソフトウェアアルゴリズムは、例えば、異なる温度補償を適用し得る。アルゴリズムは、例えば、そのような履歴データに基づいて異なる感度補償を適用することができる。本明細書の(そのような履歴データに基づく)アルゴリズムは、例えば、そのような履歴データに基づき基準の応答範囲を変更するために使用され得る。
【0076】
類似センサではないセンサからのデータ、または、監視/分析されている1つ以上のセンサとは非常に異なる特性を有するセンサからのデータもまた、本明細書の装置、システム、および方法におけるセンサの動作状態を判別するために使用され得る。類似センサではないこのようなセンサは、例えば、動作状態が判別されているセンサ以外の、分析物用のセンサであり得る。類似センサではないこのようなセンサは、例えば、異なるタイプのセンサ(例えば、類似センサが電気化学的ガスセンサである場合には、可燃性ガスセンサ)であり得る。
【0077】
さらに、圧力センサ、湿度センサ、高度センサまたは高度計などの環境条件用のセンサもまた、または代替的に、動作状態を決定するために使用され得る。温度および/または湿度センサからのデータは、例えば、測定されたパラメータ(例えば、本明細書の代表的な実施例に記載されているデルタMPV)のための適切な基準の範囲を決定する際に使用され得る。センサの配置が冷たく乾燥した場所では、温かく湿度の高い場所とは異なる設定値が設定され得る。高度は、例えば、酸素センサおよび可燃性ガスセンサの出力に影響する酸素濃度に関連し得る。高地では、酸素の濃度は海面より低い(単位体積当たりの酸素の分子数が少ない)。海面下、例えば地下鉱山では、環境は酸素リッチであり得る。
【0078】
例えば、1つ以上の可燃性ガスセンサの動作状態が本明細書の方法の下で追跡されている場合、酸素センサを使用して、可燃性ガスセンサが特定の期間にわたって酸素欠乏または酸素過剰の状態で、動作していること/複数動作していること、を判定することができる。このような酸素センサは、例えば、電気化学ガスセンサであり得る。同様に、可燃性ガスセンサ(例えば、硫黄含有化合物、ハロゲン、ケイ素含有化合物など)の阻害剤および/または毒物用のセンサは、例えば、電気化学センサおよび/または他のセンサによって感知され得る。
【0079】
本明細書の方法の下で、1つ以上の電気化学的ガスセンサの動作状態が追跡されている場合、可燃性ガスセンサまたは他のセンサが、例えば、電気化学的ガスセンサに対する干渉ガスを検出するために使用され得る。アルコールは、例えば、可燃性ガスセンサを介して検出され得る。例えば、その開示は参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,234,412号に開示されているようなスペシエーションは、アルコールの種を検出するのに用いられ得る。アルコールは、一酸化炭素またはCOセンサのようなある種の電気化学的ガスセンサに影響を及ぼすことがある。可燃性ガスセンサ出力のわずかな増加でさえ、COセンサ用の電気化学的ガスセンサからの異常な出力、またはそのようなセンサがオフラインになることにやがて関連し得る。アルケンはまた、可燃性ガスセンサを介しても検出され得る。アルケンは、同様に、CO用の電気化学的ガスセンサの干渉物質である。1つ以上の可燃性ガスセンサからのデータを用いて、1つ以上のCOセンサにおいて応答を引き起こしているアルケンが存在するかどうかを決定し得る。
【0080】
1つ以上のガスセンサ、圧力センサ、湿度センサ、温度センサなどからの履歴またはデータのタイムスパンを分析して、そのようなデータ履歴が、本明細書の方法の下でモニターされる1つ以上のセンサの性能にどのように影響を及ぼし得るかを決定し得る。位置データ(例えば、GPSまたは他のシステムからの)および施設内のモニターされる単一のセンサまたは複数のセンサの位置は、例えば、ガス試験データ、異常、警報、アップスケール測定値、ダウンスケール測定値などと相関され得る。非標準状態または事象の決定および/または分析は、モニターされる1つまたは複数のセンサの出力に関連付けられ得る。
【0081】
種々のタイプのガスセンサは、例えば、ガス感知素子が抑制剤、毒物、干渉剤などと接触することや、または曝露されることを制限または阻止するために、1つ以上のフィルターを含み得る。このような阻害剤、毒物、干渉物質などへの曝露による、そのようなフィルターの輸送特性の変化は、センサ応答に影響を及ぼす可能性がある。本明細書の方法論を用いてモニターされる1つのセンサまたは複数のセンサの抑制剤、毒物、干渉物質などに対して敏感なセンサは、例えば、そのようなセンサの出力トレンドを解釈する際に使用され得る。同様に、抑制剤、毒物、干渉物質などに感受性のあるこのようなセンサを使用して、本明細書の方法論を使用して監視される1つ以上のセンサのためのフィルターの動作状態を監視または追跡し得る。
【0082】
図7は、例えば、単一の施設に配置され得るか、または複数の施設にわたって分散され得る、1つ以上のセンサからのデータの収集、通信、および分析のためのシステムの代表的な実施形態を示す。本明細書のいくつかの実施形態では、施設200a(例えば、石油精製施設、海洋掘削リグ、製造施設、工業化学プラントなど)は、本明細書の1つ以上のセンサ10a(i)~10a(vii)を含み、一方、施設200bによって表される1つ以上の他の施設は、本明細書の1つ以上の他のセンサ10b(i)~10b(vii)を含む。7つのセンサが、設備200aおよび200bの各々に示されているが、設備は、より少ない、または、より多くのセンサを含み得る。いくつかの施設は、例えば、100個以上のセンサを含み得る。データ収集、通信および/または処理に関する施設200b(および/または他の施設)のシステム構成要素の動作は、施設200aの構成要素と非常に類似している。従って、本明細書のシステムにおけるデータ通信および/または処理は、主に、施設200aに関連して以下に説明される。
【0083】
上述したように、本明細書の各センサ10a(i)は、有線または無線であり得る通信システム(例えば、トランシーバ)を含む。センサ10a(i)~10a(vii)からのデータは、例えば、遠隔処理システム500に直接通信することができ、これについては以下でさらに説明する。あるいは、センサ10a(i)~10a(vii)からのデータは、ローカルシステム250aを介してリモートシステム500に送信され得る。いくつかの実施形態において、データは、例えば、当該技術分野で公知の4~20ミリアンペアの伝送システム、イーサネットベースのネットワーク、および/または無線ネットワークを含むローカルネットワーク220aを介して、センサ10a(i)~10a(vii)からローカルシステム250aに通信され得る。データは、例えば、分析のために収集され、そしてリアルタイムでリモートシステム500に送信され得る。データ転送は、連続的に、または不連続的に/バッチ的に行い得る。例えば、生のセンサデータまたは処理されたセンサデータは、リモートシステム500による処理(またはさらなる処理)および/または分析のために、ローカルシステム250aによってリモートシステム500に送信されてもよい。リモートシステム500は、いくつかのローカルシステム250a、250bなど(すなわち、いくつかの異なる施設から)からデータを受信することができる。ローカルシステム250aは、例えば、処理システム252a(例えば、1つ以上のプロセッサまたはマイクロプロセッサを含む)、プロセッサシステム252aと通信接続する関連メモリシステム254a、およびプロセッサシステム252aと通信接続する通信システム256aを含み得る。処理/分析は、例えば、センサの処理システム、ローカルシステム、およびリモートシステム500内に分散されてもよい(例えば、グループの上限閾値および下限値を決定する際に)。センサ10a(i)から10a(vii)および/またはローカルシステム250aからリモートシステム500への送信は、有線および/または無線通信プロトコル(例えば、携帯電話伝送プロトコル、インターネット伝送プロトコル、電話線プロトコルなどを介するデータ)を含み得るネットワーク400を介して行われる。
【0084】
リモートシステム500は、例えば、中央処理システムまたは分散処理システムを含み得、これらは、例えば、1つ以上のコンピュータ、サーバ、またはサーバシステム510を含み得る。コンピュータ、サーバ、またはサーバシステム510は、例えば、コンピュータ技術において知られているように、1つ以上のメモリまたはメモリシステム514と通信接続している1つ以上のプロセッサまたはプロセッサシステム512を含み得る。メモリシステム514は、その中に格納された1つ以上のデータベース516を含み得る。ローカルシステム250a、250bなどは、上述のように、1つ以上の有線または無線通信チャネル400(例えば、固定電話、無線電話、ブロードバンドインターネット接続、および/または他の通信チャネル)を介して、リモートシステム500の通信システムまたはシステム520と通信し得る。メモリシステム514、またはプロセッサ512と通信接続している1つ以上の他のメモリシステムに格納されたソフトウェアは、ローカルシステム250a、250bなどからのデータを処理または分析するために使用され得る。
【0085】
前述の説明および添付の図面は、現時点でいくつかの代表的な実施形態を記載している。当然のことながら、種々の修正、追加、および代替の設計は、前述の説明ではなく、以下の特許請求の範囲によって示される本明細書の範囲から逸脱することなく、前述の教示に照らして当業者に明らかになるであろう。クレームの同等性の意味および範囲内にある全ての変更および変形は、それらの範囲内に包含されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7