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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電磁放射検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/04 20060101AFI20240404BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240404BHJP
【FI】
G01J1/04 B
H01L31/10 D
H01L31/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021528003
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 FR2019051855
(87)【国際公開番号】W WO2020021211
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】1857039
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520342828
【氏名又は名称】リンレッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ、ペル-ラペルネ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115229(WO,A1)
【文献】米国特許第5365088(US,A)
【文献】国際公開第2015/004235(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/104655(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/121630(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/008166(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/145127(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
H01L 27/00-H01L 27/15
H01L 31/00-H01L 31/18
H01L 21/00-H01L 21/98
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射を検出する検出装置であって、
少なくとも第1の波長範囲の電磁放射を吸収するように構成され、第1の熱膨張係数を示す吸収性の第1の積層体であって、吸収材料から作られる層を備える吸収性の第1の積層体と、
光学機能体を形成し、第2の熱膨張係数を示す第2の積層体
を備え、
前記第1の熱膨張係数が、前記第2の熱膨張係数とは異なること、および
第2の積層体によって導入される一連の機械的応力から前記吸収性の第1の積層体を分離するために前記吸収性の第1の積層体第2の積層体を分離する緩衝層であって、0.5μmから50μmの間で構成される厚さを示す緩衝層さらにえ、および
前記緩衝層が、前記第1の積層体と格子整合する半導体材料によって形成されることまたは前記緩衝層と吸収性の第1の積層体との間の格子パラメータの差が、1%未満であり、前記緩衝層が一界面において前記第1の積層体と面し、逆側の界面において前記第2の積層体と面し、および
前記吸収材料が、II-VI材料もしくはIII-V材料であることを特徴とする
検出装置
【請求項2】
前記緩衝層が、電気的に絶縁性である、請求項1に記載の検出装置
【請求項3】
前記緩衝層が、前記第1の波長範囲を吸収しないように構成される、請求項1または2のいずれか一項に記載の検出装置
【請求項4】
前記吸収性の第1の積層体が、第1の光検出器、および前記第1の光検出器に隣接する第2の光検出器を備え、
前記第2の積層体が、前記第1の光検出器に面する第1のフィルタを備え、前記第1のフィルタが、第1の波長範囲を通過させ、前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲を遮断するように構成され、前記第2の光検出器が、前記第1の光検出器および前記第2の光検出器によって受け取られる電磁放射を分離するために前記第1のフィルタとは異なる光学機能体によって覆われる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置
【請求項5】
前記光学機能体が、前記第1の光検出器も覆う反射防止層である、請求項4に記載の検出装置
【請求項6】
前記光学機能体が、前記第2の光検出器に面し、かつ前記第2の波長範囲を通過させ、前記第1の波長範囲を遮断するように構成される第2のフィルタである、請求項4に記載の検出装置
【請求項7】
前記第1の光検出器および前記第2の光検出器が、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲を吸収するように構成される、請求項4から6のいずれか一項に記載の検出装置
【請求項8】
前記吸収性の第1の積層体が、繰り返しピッチPで配置される複数の光検出器を備え、前記緩衝層が、nが前記緩衝層の光学指数である
【数1】
であるような厚さdを示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の検出装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
状況の1つ以上の電磁信号を検出するために、検出装置を使用することが一般的である。検出装置は、観測信号の検出に必要な光学的および電気光学機能を果たすために、互いに積み重ねられた複数の層を備える。
【0003】
検出装置は、電磁放射を収集し、検出装置で形成された電荷を、処理される電気信号の出力端子に向けるように組み立てられた導電層、電気絶縁層、および/または半導体層を備える。
【0004】
検出装置は、対象の波長範囲外の電磁放射を遮断する一般に光学フィルタである、干渉光信号の少なくとも一部を除去するように構成された層の積層体をさらに備える。フィルタ機能に加えて、電気信号への電磁放射の変換が実行される領域の方向に電磁放射を集中させる1つ以上のレンズを有することが一般的である。
【0005】
検出装置を形成するために使用される積層体は複雑であるため、これらの製品を製造およびテストする前に、かなりのシミュレーション作業が実行される。
【0006】
電磁放射を検出するために、冷却検出装置を使用することが一般的な慣例であり、すなわち、検出装置が低温で動作するように、検出装置は冷却器に関連付けられる。冷却器は、特定のノイズ成分を低減するために検出装置を冷却することを可能にする。
【0007】
シミュレートされた検出装置の実際の実施が行われるとき、得られる性能は必ずしもシミュレーションの結果と一致しないため、時間および費用のかかる補完的な開発ステップが必要になることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、これらの欠点を改善すること、および従来技術の検出装置と比較して、特に低温において、改善された性能を示す検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも第1の波長範囲の電磁放射を吸収するように構成され、第1の熱膨張係数を示す吸収性の第1の積層体と、
光学機能体(optical function)を形成し、第2の熱膨張係数を示す第2の積層体と
を備える検出装置を提供することが特に好適である。
【0010】
検出装置は、第1の熱膨張係数が第2の熱膨張係数とは異なる点で、また、検出装置が第1の積層体と第2の積層体を分離する緩衝層を備え、緩衝層が、第1の積層体によって誘発される機械的応力を吸収するために、0.5μmから50μmの間で構成される厚さを示す点で注目に値する。
【0011】
一開発では、緩衝層は、電気的に絶縁性である。
【0012】
特定の実施形態では、緩衝層は、第1の波長範囲を吸収しないように構成される。
【0013】
吸収性の第1の積層体が、第1の光検出器、および第1の光検出器に隣接する第2の光検出器を備え、
第2の積層体が、第1の光検出器に面する第1のフィルタを備え、第1のフィルタが、第1の波長範囲を通過させ、第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲を遮断するように構成され、第2の光検出器が、第1の光検出器および第2の光検出器によって受け取られる電磁放射を分離するために第1のフィルタとは異なる光学機能体によって覆われる
検出装置を提供することが好適である。
【0014】
代替の実施形態では、光学機能体は、第1の光検出器も覆う反射防止層である。
【0015】
第2の波長範囲を通過させ、第1の波長範囲を遮断するように構成される第2のフィルタである光学機能体を実現することが好適である。
【0016】
別の開発では、第1の光検出器および第2の光検出器は、第1の波長範囲および第2の波長範囲を吸収するように構成される。
【0017】
他の利点および特徴は、非限定的な例を挙げるためにのみ与えられ、添付の図面に表されている本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】検出装置の実施形態を断面で概略的に示している。
図2】検出装置の製造方法の製造ステップを断面で概略的に表している。
図3】検出装置の製造方法の製造ステップを断面で概略的に表している。
図4】検出装置の製造方法の製造ステップを断面で概略的に表している。
図5】検出装置の別の製造方法の製造ステップを断面で概略的に表している。
図6】検出装置の別の製造方法の製造ステップを断面で概略的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示されているように、検出装置1は、少なくとも第1の波長範囲の、好適には少なくとも第1の波長範囲および第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の電磁放射Aを収集するように配置された1つ以上の導電層および半導体層によって形成されたの吸収性の第1の積層体2を備える。第1の波長範囲は、第2の波長範囲との重複を有さない。
【0020】
第1の積層体2は、好適には、入射放射線を吸収し、これを、電気信号を形成する電荷担体に変換するように構成された、吸収材料とも呼ばれる吸収層を備える。光放射の吸収から生じる電荷担体は、キャリア光子とも呼ばれる。吸収材料は、II-VI材料またはIII-V材料であり得る。吸収材料は、HgCdTe、InSb、InAsSb、InGaAs、およびInPから選択され得る。III-V材料によって意味されているのは、メンデレーエフの周期表のIII列(ホウ素、ガリウム、アルミニウム、インジウムなど)およびV列(ヒ素、アンチモン、リンなど)からの1つ以上の元素で構成される半導体材料である。II-VI材料によって意味されているのは、メンデレーエフの周期表のII列(亜鉛、カドミウム、水銀など)およびVI列(硫黄、セレン、テルルなど)からの1つ以上の元素で構成される半導体材料である。
【0021】
第1の積層体2の第1の表面は、光学機能体を形成する第2の積層体3によって少なくとも部分的に覆われる、すなわち、部分的または完全に覆われる。実施形態に応じて、光学機能体は、反射防止体、フィルタ、またはレンズであり得る。上記の機能のうちの1つより多くの機能、例えば、反射防止に関連付けられたフィルタまたは反射防止に関連付けられたレンズの役割を果たす第2の積層体3を実現することも可能である。これらの3つの機能を果たす第2の積層体3を実現することがさらに可能である。構成に応じて、フィルタは、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、またはバンドパスフィルタであり得る。
【0022】
反射防止層は、入射光放射の少なくとも99%を、対象の波長範囲全体、例えば光検出器によって吸収される波長範囲全体、または関連するフィルタを通過する波長範囲全体にわたって通過させるように構成された層である。
【0023】
反射防止機能は、誘電体材料とも呼ばれる電気絶縁材料から優先的に作られる単一の層またはいくつかの層によって果たされ得る。反射防止機能が単一の層によって果たされる場合、nが反射防止層の光学指数であり、λが反射防止機能が必要とされる波長範囲の特性波長であるd=λ/4nによって定義された厚さdを有する層によって反射防止機能を形成することが好適である。特性波長は、好適には、波長範囲の平均波長であるが、対象の波長範囲内でこの平均値から離れることが可能である。反射防止機能は、その入力と出力との間で入射光ビームの形状を変化させるようには構成されない。
【0024】
レンズは、入射光放射の少なくとも99%を対象の波長範囲全体にわたって通過させ、放射線入射を成形するように構成された光学機能体である。したがって、入射放射線の形状は、レンズの入力とレンズの出力との間で異なる。
【0025】
フィルタは、ある波長範囲を通過させ、別の波長範囲を遮断するように構成された光学機能体である。例えば、フィルタは、第1の波長範囲を通過させ、第2の波長範囲を遮断するように構成される。フィルタは、好適には、第1の波長範囲の少なくとも90%を通過させ、第2の波長範囲の少なくとも90%を遮断するように、またはその逆になるように構成される。
【0026】
吸収性の第1の積層体2は、緩衝層4によって、光学機能体を形成する第2の積層体3から分離される。緩衝層4は、第1の積層体2と第2の積層体3との間に存在する熱機械的応力を吸収するように構成される。
【0027】
本発明者らは、吸収性の第1の積層体2が、光学機能体を形成する第2の積層体3に存在する第2の熱膨張係数とは異なる第1の熱膨張係数を示すことを観察した。第1の積層体2が第2の積層体3と直接接触している場合、この熱膨張係数の差は、吸収性の第1の積層体2に生じる一連の応力をもたらし、この一連の応力は、第1の積層体2の電気光学的挙動を変化させる。したがって、第1の積層体2に対して第2の積層体3によって加えられる応力を低減またはさらには除去するために第1の積層体2と第2の積層体3を分離することが好適である。
【0028】
熱膨張係数によって意味されているのは、第1の温度と第2の温度との間に及ぶ温度範囲にわたる平均熱膨張係数である。第1の温度は、例えば、検出装置が電磁信号を捕捉し、これを電子信号の形で処理回路に転送するときの検出装置の動作温度に対応する。第1の温度は、例えば、20℃から30℃の間で構成される。好適な態様では、第1の温度は、0℃未満であり、優先的には200K未満であり、さらにより好適には80Kから200Kの間で構成される。第2の温度は、光学機能体を形成する1つ以上の層3の堆積温度に対応し得る。堆積温度は50℃より高くてもよい。例えば、第2の温度は80℃に等しい。
【0029】
光学機能体を形成する第2の積層体3によって生じる機械的応力を吸収することによって、緩衝層4は、第1の積層体2がその予定された動作、すなわち、光学機能体の機械的応力のない動作、または吸収性の積層体に形成された光検出器間の応力がより均一であるまたはさらには同一である動作に近づくことを可能にする。
【0030】
緩衝層4は、単一の層またはいくつかの異なる層によって形成され得る、すなわち、異なる材料によって形成され得る。光学機能体を形成する第2の積層体3と対象の放射線を吸収する第1の積層体2との間の光学的擾乱を低減するように単一の層によって形成される緩衝層4を実現することは特に好適である。光信号が界面に到達するたびに、光信号の一部が回折されて失われる。
【0031】
好適な態様では、緩衝層4は均一である。それは、好適には、吸収層2と接触する表面から第2の積層体3と接触する表面まで同一の組成を示す。この組成の均一性は、優先的には、吸収層と緩衝層との間の界面の平面に平行な、場合によっては緩衝層4と吸収層2との間の界面に垂直な1つ以上の方向に存在する。同一の組成によって意味されているのは、好適には、ドープが、一方の表面から他方の表面まで、および/または吸収層2と緩衝層4との間の界面の平面に平行な1つ以上の方向に一定であることである。
【0032】
緩衝層4は、いかなる光学機能体も、特に上で挙げた光学機能体のいずれも得ることのないように構成される。緩衝層4は、対象の電磁放射、すなわち、第1の積層体2によって吸収される必要がある電磁放射を吸収しないように構成される。緩衝層4は、20%未満の対象の放射線の吸収レベルを示すように構成される、すなわち、第1の積層体2は、第2の積層体3が透過させた放射線の100%から80%の間を受け取る。このようにして、緩衝層4は、検出装置の動作に関して最も光学的に中性である。好適には、緩衝層4は、10%未満またはさらには5%である対象の放射線の吸収レベルを示すように構成される。
【0033】
緩衝層4は、電気的機能を示さないように構成される、すなわち、それは、電流を第1の積層体2から第2の積層体3に流さないように構成される。緩衝層4は、電流が横方向に、すなわち、緩衝層4と第1の積層体2との間の界面に平行な方向に流れることを可能にしないようにも構成される。
【0034】
緩衝層4は、電気絶縁層によって形成され得る。緩衝層4は、部分的または完全に誘電体材料によって、すなわち電気絶縁材料によって形成され得る。高分子材料によって部分的または完全に形成される緩衝層4を実現することも可能である。緩衝層4はまた、電流の流れを阻止するように、ドープされていないまたは弱くドープされた半導体材料によって部分的または完全に形成され得る。半導体材料が使用される場合、それは、所望の電磁放射を吸収しない。
【0035】
特定の実施形態では、緩衝層4は、1*1016cm-3を超える電気的に活性なドーパントによるドープを示す層によって形成され得る。しかしながら、緩衝層4は、対象のスペクトル範囲でキャリア光子の生成および収集機能を実行するように構成されない。このドープは不随意のドープであり得る、すなわち、この層は意図せずにドープされる。
【0036】
好適な実施形態では、緩衝層4は、アモルファス材料から作られる。別の実施形態では、緩衝層4は、吸収材料2との格子不整合に関連する応力の発生を誘発しないまたは制限するように吸収材料2との格子整合を示す。
【0037】
緩衝層4は、0.5μmから50μmの間で構成される合計の厚さを示す。この厚さ範囲は、例えば複数のレンズおよび/または複数のフィルタを備える第2の積層体3の技術的制約に対応することを可能にするため、特に好適である。レンズは、大量の観測光信号をより小さな断面の光検出器に向かって収束させることを可能にする。
【0038】
緩衝層4の厚さは、第1の積層体2と第2の積層体3との間に存在する光キャビティが2つの隣接する画素間、すなわち2つの直接隣接する光検出器間のクロストークの問題を被るようになる閾値よりも小さい。本発明者らは、50μmの厚さを超えると、クロストークの問題を示さない光キャビティを実現することが非常に困難であることを観察した。
【0039】
例えば、15μmに等しい繰り返しピッチで配置された複数の画素を備える検出装置の場合、幾何光学シミュレーションは、50μmを超える緩衝層4を採用すると、光学的クロストークが悪化し、装置の性能が大幅に低下することを示す。例えば、この例では、40μm以下の厚さを有する緩衝層4の使用は、許容可能なクロストーク性能を有する検出装置を維持することを可能にする。
【0040】
例えば、15μmに等しい繰り返しピッチで画素が配置される検出装置の場合、ほぼ最適な性能を実現するために、26μm以下の厚さを有する緩衝層4を使用することが好適である。
【0041】
好適な態様では、クロストークを制限するために、検出装置が、繰り返しピッチPを有する吸収層2の複数の光検出器を示す場合、nが緩衝層4の光学指数であるP/(2*tan(1/2n))より小さな厚さd、すなわち、
【数1】
【0042】
を有する緩衝層4を使用することが好適である。
【0043】
本発明者らは、不均一な光学機能体の組み込みも、吸収性の積層体を最小値を超えて変えることを必要とすることを観察した。不均一な光学機能体は、第2の積層体3内の複数のレンズおよび/または複数のフィルタによって、すなわち、緩衝層4と第2の積層体3との間の界面に垂直な方向に少なくとも2つの異なる積層体3aおよび3bが存在することによって形成され得る。2つの異なる積層体3aおよび3bは、第1の積層体2と緩衝層4との間の界面に平行な方向に隣接する。
【0044】
2つの積層体は異なるため、これらは、吸収層2に異なる機械的応力を誘発し得る。
【0045】
好適な実施形態では、緩衝層4は、第1の積層体2との格子整合を示すか、または第1の積層体2との実質的な格子整合を実質的に示す半導体材料によって形成される。格子整合を示すことによって意味されているのは、緩衝層4と第1の積層体2との間の格子パラメータの差が1%未満であることである。
【0046】
図2図3、および図4に示されている特定の実施形態では、第1の積層体2は、初期基板5の第1の表面上に作られ、例えば、第1の積層体2は、エピタキシーによって生成される(図2)。第1の積層体2の異なる層が、第1の表面5a上に形成される。次に、第1の表面5aの反対側の第2の表面5bが、第2の積層体3によって覆われる。基板5は、応力を吸収するために少なくとも部分的に残しておかれる。非常に多くの場合、基板の厚さが非常に大きく、検出装置に光学的擾乱を引き起こすため、初期基板5の薄化ステップは、第2の積層体3を堆積させる前に実行される。基板5の薄化は、第2の積層体3の形成ステップ(図4)の前の図3に示されている。
【0047】
図2図5、および図6によって示されている別の特定の実施形態では、第1の積層体2は、例えばエピタキシーによって、初期基板5の第1の表面5a上に作られる(図2)。第1の積層体2の異なる層が、第1の表面5a上に形成され、次に、初期基板5が、図5に示されているように除去される。緩衝層4は、第1の積層体2上、第2の積層体3の形成前に除去された基板5(図6)と初期に接触していた表面上に堆積される。
【0048】
次に、第2の積層体3が、第1の積層体2と第2の積層体3が緩衝層4によって分離されるように緩衝層4上に堆積される。光学機能体の形成が実行されるときに光検出器2a/2bの機械的強度を確保するために光検出器が支持基板、例えば読み出し回路7または中間支持体に非常に頻繁に関連付けられるため、図5は概略図である。読み出し回路7は、信号処理集積回路に向けられたキャリア光子の収集を実行するように構成される。
【0049】
特定の実施形態では、検出装置は、第1の積層体2が、第1のスペクトル波長帯とも呼ばれる第1の波長範囲に感度のある第1の光検出器2aと、第2のスペクトル波長帯とも呼ばれる第2の波長範囲に感度のある第2の光検出器2bとを少なくとも備えるマルチスペクトル検出装置である。
【0050】
特定の実施形態では、第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bは、第1の波長範囲および第2の波長範囲を吸収するように構成された単一の半導体フィルムを備える。この実施形態は、非常にコンパクトであり、かつ2つの光検出器を同時に製造することを可能にするため、特に好適である。
【0051】
好適な実施形態では、検出装置は、複数の第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bを備える。複数の第1の光検出器2aおよび複数の第2の光検出器2bは、焦点面アレイを形成する、すなわち、すべての光検出器は、同じ平面に配置される。
【0052】
優先的な態様では、第1の積層体2は、第2の光検出器2bと同じ数の第1の光検出器2aを備える。代替案としては、第2の光検出器2bの数とは異なる数の第1の光検出器2aを備える第1の積層体2を実現することも可能である。
【0053】
特定の実施形態では、第2の波長範囲は、第1の波長範囲とは異なる。好適な態様では、第2の波長範囲は、第1の波長範囲から分離される、すなわち、波長範囲は重複しない。実施形態に応じて、第1の波長範囲および第2の波長範囲は、共通の境界を有するか、またはそれらは、波長範囲によって分離される。
【0054】
第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bは両方とも、第1の波長範囲および第2の波長範囲に感度がある。言い換えれば、第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bは、第1の波長範囲で放出された放射線を収集し、この放射線を表す電気信号を提供することができる。第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bはまた、第2の波長範囲で放出された放射線を収集し、この放射線を表す電気信号を提供することができる。
【0055】
好適な態様では、第1の波長範囲および第2の波長範囲は、赤外線放射範囲である。特定の実施形態では、第1の波長範囲および第2の波長範囲は、以下の範囲から選択される。
【0056】
MWIR:3μmから8μmの間、
LWIR:8μmから15μmの間、
SWIR:1.4μmから3μmの間。
【0057】
したがって、さまざまな波長範囲のペア、例えばMWIR/LWIR、MWIR/SWIR、またはLWIR/SWIRを検出し得るように検出装置を構成することが可能である。
【0058】
さらに、上に提示したさまざまな範囲を2つの異なる部分範囲に分けることが可能である。特定の実施形態では、第1の波長範囲および第2の波長範囲は、例えば、MWIR放射を2つの別個の部分範囲に分割する。LWIRおよびSWIRの場合も同様であり得る。
【0059】
光検出器2aおよび2bの供給条件は異なり得る。好適には、供給条件は、すべての光検出器で同一である。供給条件は、第1の光検出器2a用の第1の読み出し回路および第2の光検出器2b用の第2の読み出し回路によって提供される。
【0060】
光検出器2aおよび2bならびに読み出し回路7aおよび7bは、好適には、支持体6上に配置される。支持体6は、第1の熱膨張係数および第2の熱膨張係数とは異なり得る第3の熱膨張係数を示す。このとき、緩衝層4は、支持体6および吸収性の第1の積層体2によって形成されたアセンブリが、光学機能体を形成する第2の積層体3によってあまり妨害されないまたは妨害されないように適合される。
【0061】
好適には、第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bを特殊化するために、第2の積層体3は、入射放射線のフィルタリングシステムを形成するように構成される。
【0062】
第1の構成では、第2の積層体3は、第1の光検出器2aの入力に対する入射放射線の一部を遮断し、第2の光検出器2bの入力に対する入射放射線を遮断しないように構成される。
【0063】
例えば、第2の積層体3は、第1の波長範囲を通過させ、第2の波長範囲を遮断するように構成された第1のフィルタ3aを備える。第1のフィルタ3aは、干渉フィルタまたは吸収フィルタであり得る。
【0064】
実施形態に応じて、第1の波長範囲は、第2の波長範囲よりも長いまたは短い波長を示し得る。したがって、第1のフィルタ3aは、カットオフ波長が第1の波長範囲と第2の波長範囲との間に位置するローパスフィルタまたはハイパスフィルタであり得る。代替案としては、第1の波長範囲を通過させ、第2の波長範囲を遮断するバンドパスフィルタである第1のフィルタ3aを実現することも可能である。
【0065】
第1のフィルタ3aは、緩衝層4上、すなわち、焦点面アレイの一部の上に直接堆積されるフィルタである。第1のフィルタ3aは、第2の光検出器2b上には形成されないため、第1のフィルタ3aは、第1の光検出器2aを覆い、第2の光検出器2bを覆われないままにしておく。第1のフィルタ3aは、緩衝層4を介して第1の光検出器2aと機械的に接触する。
【0066】
この特定の構成によって、第1の光検出器2aは、入射放射線の一部のみを受け取る。第1の光検出器2aは、第1の波長範囲を受け取り、第2の波長範囲を受け取らない。他方、第2の光検出器2bは、第1のフィルタ3aに関連付けられないため、第1の波長範囲および第2の波長範囲を受け取る。
【0067】
第1の光検出器2aは、受け取った放射線を表す電気信号を放出する。第1の光検出器2aから発生する電気信号は、第1の波長範囲の放射線を表す。
【0068】
好適な態様では、第1の光検出器2aは、関連する光検出器によって放出された信号を記憶する読み出し回路7に接続される。読み出し回路7は、好適には電圧信号である別の第1の電気信号を処理回路(図示せず)に送信する。第2の光検出器2bもまた、第2の電気信号を受信する処理回路に接続される。
【0069】
特定の実施形態では、反射防止層3cが、第2の積層体3に形成される。一実施形態では、反射防止層3cは、第1のフィルタ3aと緩衝層4との間に配置される。代替案としては、反射防止層3cは、第1のフィルタ3aが反射防止層3cと第1の積層体2を分離するように第1のフィルタ3a上に配置される。
【0070】
第1のフィルタ3aとは異なる光学機能体によって覆われる第2の光検出器2bを実現することは特に好適である。この光学機能体は、好適には、先に提示した光学機能体から選択され、例えば別のフィルタである。
【0071】
優先的な態様では、第2の光検出器2b上に配置される追加の光学機能体は、反射防止層によって構成されるか、またはこれを備える。この構成では、第2の積層体3は、第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2b上の、異なる積層体の層に関して不均一である。積層体が異なるため、熱膨張係数も異なり、および/またはこれら2つの積層体に存在する残留応力が異なる。このとき、一方の光学機能体から他方の光学機能体にかけて空間的に変化する一連の応力が導入される。緩衝層4が存在しないと、第1の光検出器2aおよび第2の光検出器2bからの応答が異なることになる。検出装置が製造されるとき、第1の積層体2は、第2の積層体3の位置調整に対してより敏感である。緩衝層4を導入することによって、期待される動作に関してより再現性が高く、より適合した検出装置を形成することが可能である。
【0072】
別の実施形態では、第2の積層体3は、異なる2つの隣接する光学機能体、例えば、異なる光学特性を示す第1のフィルタ3aおよび第2のフィルタ3bを備える。第2のフィルタ3bは、第1の積層体2と緩衝層4との間の界面に平行な方向で第1のフィルタ3aに隣接する。第2のフィルタ3bは、第2の波長範囲を通過させ、第1の波長範囲を遮断するように構成される。第2のフィルタ3bは、干渉フィルタまたは吸収フィルタであり得る。
【0073】
画素を機能化するために、フィルタ3aと3bは異なり、この結果、光検出器間に応力が生じる。検出器に加えられる応力が異なる限り、これは、隣接する光検出器と比較した場合、光検出器の経年劣化の差をもたらし得る。これはまた、電気的応答の差をもたらし得る。この応力はまた、検出装置の動作を損なう結晶学的欠陥をもたらし得る。
【0074】
シミュレーションは、光検出器上の光学機能体の差異化から生じる応力差が、光学応答差異化フィルタが形成された界面を起点にして約400nmの深さで均一になる不均一な一連の応力を誘発することを示した。
【0075】
したがって、すべての光検出器が同じ一連の応力を受けるように、より一般的な態様では、吸収材料が均一な応力を受けるように、少なくとも500nmに等しい厚さを有する緩衝層4を使用することが特に好適である。
【0076】
特に好適な態様では、少なくとも2μmに等しい厚さを有する緩衝層4は、吸収層2の光学機能体によって導入される応力を大幅に低減するまたはさらには除去することを可能にする。このようにして、光検出器の動作は、光学機能体なしのシミュレーションまたはテストが実行されたときに予想されたものにより近づく、またはさらにはこれと同一になる。
【0077】
好適な態様では、検出装置は、冷却検出装置、すなわち、200K未満の温度で動作するように構成された装置である。例えば、検出装置は、80Kから200Kの間で構成される動作温度を示すように構成される。検出装置は、好適には、検出装置をその動作温度まで冷却することを可能にする冷却システム7と結合される。これらの条件下では、第2の積層体3が形成される温度と動作温度との間に存在する温度差は非常に大きく、これは、高い応力をもたらし得る。
図1
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図6