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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】赤血球の等体積球状化
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20240404BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240404BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240404BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240404BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240404BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20240404BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20240404BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240404BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240404BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01N33/49 K
G01N21/17 A
G01N21/05
G01N15/14 C
G01N37/00 101
G01N33/72 A
C12M1/42
C12N5/078
C12Q1/04
C12M1/34 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021547888
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019077849
(87)【国際公開番号】W WO2020088927
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】18203264.9
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・リューリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アン-カトリン・ライヘンヴァルナー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ・ヘーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】カール-フィリップ・マティス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ウーゲル
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/005984(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363579(US,A1)
【文献】特開2000-199744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237110(US,A1)
【文献】国際公開第2018/009920(WO,A1)
【文献】Hemanth Jagannathan et al.,Ultrasonic temperature control and measurement in microfluidic channels,Proceedings of SPIE Medical Imaging,2003年01月25日,vol.4982,pp.243-247
【文献】N Matsumoto et al.,Association of decreased membrane protein phosphorylation with red blood cell spherocytosis,Blood,1977年02月01日,vol.49, No.2,pp.233-239,http://www.bloodjournal.org/content/bloodjournal/49/2/233.full.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用試料を分析するための自動分析装置であって、該自動分析装置は、試料用の分析セルと、圧電素子と、分析装置とから構成され、圧電素子は、電圧と周波数を印加することにより操作可能であり、音波場を発生させることができ、圧電素子の操作中は、分析セル内の試料が音波場内に位置し、
該医療用試料が、細胞であり、
前記細胞が、球状化の直後に分析および/または画像化され、
前記細胞が、球状化後、光学顕微鏡からなる分析装置を用いて分析および/または画像化され、前記細胞は、分析および/または画像化の間、顕微鏡の焦点領域内に位置することを特徴とする、医療用試料を分析するための自動分析装置。
【請求項2】
前記分析セル内に位置する試料が、前記圧電素子の動作中に音波場によって、少なくとも48℃まで加熱される、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記分析セルがフローセルである、請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記試料が分析セル内を毎秒0.002~5mmの流量で移動する、請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記分析装置が、分析セル内の試料を分析するためのデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)で構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記顕微鏡が20倍から60倍の対物レンズで構成されている、請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記分析セル内に試料が配置され、前記試料がヒトまたは動物の細胞で構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項8】
加熱手段によって医療用試料の細胞を球状化する方法であって、前記細胞が分析セル内に位置し、電圧と周波数で作動する圧電素子によって音波場が生成され、前記細胞が前記音波場内に位置して加熱され、その音波場によって球状化され
前記細胞が、球状化の直後に分析および/または画像化され、
前記細胞が、球状化後、光学顕微鏡からなる分析装置を用いて分析および/または画像化され、前記細胞は、分析および/または画像化の間、顕微鏡の焦点領域内に位置していることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記球状化が等体積的に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セルが、少なくとも48℃に加熱される、請求項8または9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記分析セルがフローセルである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、毎秒0.002~5mmの流量で前記分析セル内を移動する、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、球状化後、デジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)からなる分析装置を用いて分析および/または画像化される、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、音波およびマイクロ流体力の同時使用によって顕微鏡の焦点領域にもたらされ、および/または保持される方法であって、細胞の球状化と同時に行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、球状化の後0.05~1秒以内に分析および/または画像化される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞がヒトまたは動物の細胞である、請求項8~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が赤血球であり、前記細胞の分析が、体積の決定および/または単細胞ヘモグロビン(MCH)の決定および/またはマラリア寄生虫の検出からなる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか1項に記載の自動分析装置における、請求項8~17のいずれか1項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関するものであって、試料中の細胞を分析するための血液分析装置に関する。ここで、細胞は分析に先立って圧電加熱によって加熱され等体積球状化される。
【背景技術】
【0002】
これらの自動化された装置はその高い処理数に加えて、例えば、高い客観性(観察者に依存する変動性がない)、手動での計測(高い細胞数の計測)により通常生じる統計的変動の排除など、いくつかの利点を提供する。また、手作業での計数の場合には利用できない多数のパラメータを用いて、より効率的で費用対効果の高い処理を実現する。これらの装置の中には、1時間に120~150件の患者の試料を処理できるものもある。
【0003】
自動細胞分析の技術的原理は、通常、インピーダンス(抵抗値)測定または光学系測定(散乱光または吸収の測定)のいずれかに基づいている。さらに、例えば、血液塗抹標本の細胞を自動化された方法で画像化して評価する画像化システムも確立されている。インピーダンス法の場合、粒子が小さな開口部を移動することによって生じる電気伝導度(抵抗値)の変化の検出と測定に基づき、細胞の計数とそのサイズの決定が行われる。
【0004】
粒子、例えば血球などはそれ自体は非導電性であるが、電気的に導電性の希釈剤に懸濁される。このような細胞の懸濁液を開口部に導くと、個々の細胞が通過する際に、開口部の両側に位置する2つの電極間の電気経路のインピーダンス(抵抗値)が一時的に増加する。
【0005】
インピーダンス法とは対照的に、光学的方法は、レーザ光またはLED光を希釈された血液試料に透過して導くことからなり、レーザ光またはLED光によって連続的な流れの中で計測される。このための光線は、例えば光導波路を用いてフローセルに対し導くことができる。
【0006】
フローセルの捕捉域を通過する細胞は、集光された光を散乱させる。次に、散乱した光は光検出器で検出され、電気パルスに変換される。ここで生成されるパルスの数は、規定時間内に捕捉域を通過する細胞数に正比例している。
【0007】
光学的方法の場合、捕捉域を通過する一つの細胞の光散乱が様々な角度で測定される。結果として捕捉されるのは、光放射に対して対象となる細胞の散乱挙動であり、その散乱挙動から、例えば、細胞の構造、形状、反射率などを導き出すことができる。
【0008】
この散乱挙動は、様々なタイプの血球を区別するために使用することができ、また、試料の血球が、例えば、正常と分類された基準試料の基準から逸脱しているかどうかを診断するために、得られたパラメータを使用することができる。
【0009】
例えば、血液塗抹標本などの細胞の自動分析の場合、現在の分析装置は、高い分解能を実現するために、スライドと対物レンズの間に、高い絞りではめ込まれた顕微鏡を使用している。
【0010】
しかし、その結果として生じる被写界深度は比較的小さく、血液塗抹を含むスライドの表面の垂直な細胞の厚さよりも明らかに小さい。そのため一点のみの焦点設定による二次元画像では、細胞の全体の深さ情報をシャープに画像化することはできない。
【0011】
したがって、頻繁に発生するのは不明確に分類された血球であり、訓練を受けた職員、例えば検査室の医師によって手動で再分類されなければならない。
【0012】
現在血液学で使用されている測定装置は、光学系に関しては、100nm=0.1μmの物体平面上のセンサーエレメントに有効な、横方向の解像度が約100倍の倍率を持つ顕微鏡が用いられている。
【0013】
使用されているカメラは、0.3~100万画素以下の画素数を有している。その結果、対象物の視野は数百μmの大きさにしかならない。
【0014】
幅が数mm、長さが数十mmである血液試料の染色された血液塗抹標本を記録して分析するためには、分析すべき塗抹を、スライディングユニットを用いて蛇行走査法で走査しなければならない。
【0015】
測定操作を迅速化するために、はじめの走査は低い倍率、例えば10倍の視野に対応する10倍の倍率で実施し、測定対象の細胞を見つけるためのはじめの画像評価の後、細胞を含む関心領域(RoI)のみがより高い倍率で分析される。
【0016】
これは、高倍率での試料の完全な分析が行われないことを意味している。
【0017】
高解像度の光学顕微鏡で分析できるよう細胞を十分に可視化するために、血液塗抹は事前の工程で染色される。
【0018】
複数の染色方法が世界的に確立されているが、これらは地域ごとにいくつかの違いがある。したがって、同じ染色方法で染色された細胞の画像のみが効果的に比較できるので、血液塗抹標本の分析の比較は地域的に制限される。
【0019】
赤血球(RBC)の分析では、特にフロー系では赤血球は球状化されており、この工程は球状化(sphering)と呼ばれている。
【0020】
ネイティブな双曲面赤血球を球形にしたり球状化することで、幾何学的な計算式を用いて赤血球の体積やその他のパラメータを正確に分析することができる;例えば、非特許文献1を参照。
【0021】
これに関連して、球状化の工程は、迅速な処理と共に高い検査数を達成するために、血液検査に要する複雑な試料の前処理工程に、簡便に結合されるべきである。
【0022】
等体積球状化は、例えば追加的にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの細胞膜不安定化剤を含む低張性緩衝液で試料をアドミックスすることにより、既知の血液分析装置で用いられている。
【0023】
球状化のための低張性液体の使用は、試料の非常に高い割合の希釈、例えば630の係数で結果をもたらす。さらに、等体積球状化のためのこの操作により、赤血球が本来の状態とは大きく異なる状態となる。これについての対応は、低張性液体と細胞膜不安定化剤の組み合わせによって行うことができる。
【0024】
これらの球状細胞の分析には、例えば、その体積やヘモグロビンの決定が含まれており、血液分析装置では、例えば、レーザやLEDによって生成された単色光を光学的に使用したり、球状物体の評価のために三重理論(Mie theory)を応用したりして実施される。あるいは、球状セルはまた、例えばイオン含有液体(コールター原理)の特定の体積の導電率を測定することによるインピーダンス測定により分析することができる。
【0025】
赤血球を球状化するために、適切な温度に調整された水浴(water bath)での熱を使用する方法も知られている、例えば、非特許文献2を参照。
【0026】
これにより、非常に高い割合での試料の希釈をある程度避けることが可能となる。しかし、加熱は、赤血球に更なる変化、例えば、血球内および血球上のタンパク質の凝集などを容易に引き起こし、その結果、赤血球の形態が過熱のために非常に大きく変化し細胞の正確な分析が不可能になる。
【0027】
さらに、画像解析を行うには、球状赤血球を顕微鏡の光学焦点に近づけて精密な画像解析を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【文献】Y. C. B. B. Fung and P. Tong "Theory of sphering of red blood cells", Biophysical Journal, Volume 8 (1968)
【文献】松本、八幡およびH. S. Jocob "Association of Decreased Membrane Protein Phosphorylation With Red Blood Cell Spherocytosis", Blood, volume 49, No. 2 (February) (1977)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、医療用試料を分析するための自動分析装置(automatic analyzer)および医療用試料の細胞を球状化するための方法を提供することであり、ここで、細胞の球状化は、試料を非常に高い希釈をすることなく達成することができ、同時に、細胞は、可能な限りオリジナルの状態で分析することができ、球状化以外の変化をほとんどまたは全く示さない、すなわち、例えば、細胞の化学的前処理は可能な限り省略され、細胞の標識付けは理想的には完全に省略することである。
【0030】
さらに、球状化のために熱を使用する既知の方法の場合に生じる不都合も回避される。例えば、避けなければならないのは細胞内や細胞上でのタンパク質の凝集や過熱による形態変化である。
【0031】
本発明のさらなる目的は、その後の精密な画像解析を可能にするために、適切に標識のない穏やかな方法で球状化された細胞を、顕微鏡の光学焦点に配置できるようにすることである。
【0032】
本発明の目的は、独立請求項による分析装置および本発明による方法によって達成される。本発明の有利な効果は従属請求項によっても与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、特に医療用試料を分析するための分析装置(analyzer)を提供し、その分析装置は、試料用の分析セルと、圧電素子と、分析装置(analysis device)とからなり、圧電素子は、電圧と周波数の印加によって操作可能であり、音波の場を発生させ、圧電素子の操作中に分析セル内に位置する試料が音波場内に配置されるようになっている。
【0034】
本発明の分析装置は、従来必要とされていた低張性緩衝剤や細胞の球状化のための細胞膜安定化剤の使用が不要になるという利点がある。
【0035】
さらに、試料を非常に高い希釈をする必要がなくなり、同時に、従来の水浴による加熱の場合に生じる欠点も可能な限り回避される。
【0036】
さらに、球状細胞は、生成された音波場とそれに対応する音響力によって、同時に顕微鏡の光学焦点に配置し保持されて、その後の精密な画像分析を可能にする。
【0037】
さらに、その後の顕微鏡分析のための試料の染色または他の標識(ラベリング)を完全にまたは部分的に省略することが可能となる。
【0038】
本発明の分析装置は自動分析装置であり、特に好ましくは半自動または全自動分析装置である。さらに好ましくは、分析装置は血液分析装置であり、特に好ましくは自動血液分析装置である。
【0039】
本発明の分析装置の好ましい実施形態では、分析セル内に位置する試料は、圧電素子の動作中に音波場によって、好ましくは少なくとも48℃まで、特に好ましくは少なくとも50℃まで加熱される。これは、赤血球の完全な球状化を信頼性の高い方法で達成できるという利点を有する。
【0040】
分析装置の好ましい実施形態では、圧電素子は、35ボルトから100ボルト、好ましくは40ボルトから80ボルト、特に好ましくは75ボルトの電圧を印加し、約1MHz、好ましくは1.113MHz、または約5MHz、好ましくは5.397MHzの周波数を印加することによって作動する。
【0041】
これは、分析セル内に位置する医療用試料のセルを、特に安全で迅速かつ効率的な方法で、48℃または50℃の温度に加熱することができるという利点を有する。
【0042】
分析装置のさらに好ましい実施形態は、分析セルはフローセル、好ましくはマイクロ流体フローセルである。これは、最適化された処理および高い試料処理数を達成できるという利点を有する。さらに、分析セルを流体環境中で、したがってよりネイティブな条件で分析できるという利点を有する。
【0043】
好ましくは、試料は、毎秒0.002~5mm、特に好ましくは毎秒0.002~0.1mmの間の流量で分析セル内を移動する。同時に、流動条件は有利には層流である。
【0044】
分析装置のさらに好ましい実施形態では、分析装置は、分析セル内に位置する試料を分析するための光学顕微鏡、好ましくはデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)からなる。好ましくは、顕微鏡は20倍から60倍の対物レンズで構成されている。これは1回の焦点設定で球状赤血球を十分な鮮鋭度で撮像できるように倍率を調整できるという利点がある。
【0045】
本発明の分析装置のさらに好ましい実施形態では、分析セル内に位置する医療用試料の細胞は、音響力(音波)によって顕微鏡の焦点領域内に引き込まれ、および/または保持され、音響力は圧電素子によって発生する。好ましくは、この目的のために印加される電圧は8~12ボルトであり、周波数は約1MHz、好ましくは約1.113MHz、または約5MHz、好ましくは約5.397MHzである。
【0046】
これは、セルを非接触で焦点領域に持ち込んだり、保持したりすることができるという利点がある。同時に、細胞の加熱がなく、それによってより高い電圧の場合に生じるような細胞の熱的に誘導された形態学的変化もない。このようにして、細胞は球状にはならないが双曲面のままである。
【0047】
本発明はさらに、加熱手段によって医療用試料の細胞を球状化する方法を提供し、ここで、細胞は分析セル内に位置し、電圧および周波数で作動する圧電素子によって音波場が生成され、細胞は音波場内で加熱され、それによって球状になることを特徴とする。
【0048】
本方法の好ましい実施形態では、球状化は等体積的に行われる。これは、例えば赤血球の細胞体積が球状化によって変化しないという利点がある。これは、細胞体積の定量的で正確な分析にとって非常に重要である。
【0049】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は少なくとも48℃、特に好ましくは少なくとも50℃に加熱される。これは、赤血球の完全な球状化を確実な方法で達成できるという利点を有する。
【0050】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、毎秒0.002~5mm、特に好ましくは毎秒0.002~0.01mmの間の流量で分析セル内を移動する。
【0051】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、球状化の後、光学顕微鏡、好ましくはデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)からなる分析装置を用いて分析および/または画像化され、ここで、細胞は、好ましくは、分析および/または画像化の間、顕微鏡の焦点領域に位置する。
【0052】
これは、高品質での細胞の画像化を達成することが可能であり、したがって、例えば細胞体積または他の細胞パラメータの正確で定量的な分析を達成することが可能であるという利点を有する。
【0053】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、音響力によって顕微鏡の焦点領域内に引き込まれ、および/または保持され、ここで、好ましくは、細胞の球状化と同時に行われる。
【0054】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、音響力およびマイクロ流体力の同時使用により顕微鏡の焦点領域に引き込まれ、および/または保持され、ここで、好ましくは細胞の球状化と同時に行われる。
【0055】
顕微鏡の焦点領域に細胞を搬入および/または保持するための音響力は、圧電素子によって発生する。好ましくは、この目的のために印加される電圧は8~12ボルトであり、周波数は約1MHz、好ましくは約1.113MHz、または約5MHz、好ましくは約5.397MHzである。
【0056】
本方法のさらに好ましい実施形態では、フローセル内での細胞の球状化は、フローセルの第1の領域で、好ましくは約1MHz、特に好ましくは約1.113MHzの周波数を圧電素子に印加することによって行われる。
【0057】
好ましくは、フローセルの第1の領域は、顕微鏡の焦点領域の上流側に位置する。好ましくは、顕微鏡のフォーカス領域はフローセルの第2の領域に位置し、第1の領域は、好ましくは第2の領域の上流側に配置される。
【0058】
好ましくは、顕微鏡の焦点領域へのセルの投入は、フローセルの第2の領域の下流側で、好ましくは、圧電素子に印加される5MHzの周波数、特に好ましくは5397MHzの周波数によって行われる。
【0059】
これは、球状化とフォーカシングを同時に行うことによる望ましくない変化を伴う場合、および/またはそのような変化を除外することが不可能であったとしても、熱的に誘起される望ましくない変化を伴わない細胞の球状化が可能という利点を有する。
【0060】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、球状化の直後、好ましくは球状化後0.05~1秒以内に分析および/または画像化される。
【0061】
これにより細胞の加熱または過熱のために起こり得る細胞への望ましくない変化が、細胞の分析および/または画像化が完了した時点でのみ起こるという利点を有する。
【0062】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は、ヒトまたは動物の細胞であり、好ましくは血球であり、特に好ましくは赤血球である。
【0063】
本方法のさらに好ましい実施形態では、細胞は赤血球であり、ここで、細胞の分析は、体積の決定および/または単細胞ヘモグロビン(MCH)の決定および/またはマラリア寄生虫の検出からなる。
【0064】
本発明はさらに、本発明の方法を自動分析装置で使用することを提供する。好ましくは、医学的試料は、細胞および/または医学的調製物を包含する。
【0065】
好ましくは、医療用調製物は、組織切片、体分泌物からの沈殿物および/または体液および/または微結晶である。これは、非常に多種多様な異なる細胞を含む、非常に多種多様な異なる試料タイプを試験し特徴付けることができるという利点を有する。
【0066】
本発明は、添付の図面を参照し特定の例示的な実施形態によって、より明らかになるであろう。
【0067】
図中で示された例は、本発明の好ましい実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、圧電素子(1)が23ボルトで動作している赤血球(7)が、音波による加熱なしに配置されている分析セル(9)を示している。
図2図2は、圧電素子(1)が75ボルトで動作する音波による加熱で球状赤血球(7)が配置された分析セル(9)を示しています。
図3図3は、赤血球(7)が配置された分析セル(9)を示しており、圧電素子(1)が23ボルトで動作している。
図4図4は、球状赤血球(7)が配置された分析セル(9)を示しており、圧電素子(1)は75ボルトで動作している。
【0069】
図1に示す分析セル(9)は、チャネル壁(2)と圧電素子(1)から構成され、試料中の細胞を分析するための自動分析装置の一部である。
【0070】
分析装置は、光学顕微鏡として構成された分析装置(10)からなり、分析セル(9)内の試料を照明するための光源と、照明された試料から進む光ビームを収束させて集束させるための収束レンズとからなる。試料は、赤血球(7)を含む血液試料である。試料は、マイクロ流体フローセルとして構成された分析セル(9)内に位置している。さらに、顕微鏡は、顕微鏡内で撮像された光場を記録するためのデジタルレコーダからなるカメラからなり、レコーダはCCDチップまたはCMOSチップからなる。
【0071】
分析セル(9)と顕微鏡は、光学窓(4)内に位置する赤血球(7)を撮像して分析できるように構成されている。圧電素子(1)は、赤血球(7)の流れ方向xにおいて、光学窓(4)の直前の流路壁(2)の外側領域に配置されている。赤血球(7)の流れ方向x内を移動する赤血球(7)の速度プロファイル(8)は、赤血球の流れ方向yの位置に応じたベクトルで表される。
【0072】
圧電素子(1)は、25ボルトの電圧と約1MHz、好ましくは1.113MHzの周波数で動作するか、または25ボルトの電圧と約5MHz、好ましくは5.397MHzの周波数で動作する。赤血球(7)の温度は48℃以下であり、赤血球(7)は本来の状態で存在し、球状ではない。
【0073】
図2は、図1と同じ分析セル(9)を示している。
【0074】
圧電素子(1)は、75ボルトの電圧と約1MHz、好ましくは1.113MHzの周波数で動作するか、または75ボルトの電圧と約5MHz、好ましくは5.397MHzの周波数で動作する。赤血球(7)の温度は少なくとも48℃であり、赤血球(7)は球状である。
【0075】
図3は、赤血球(7)が配置された更なる分析セル(9)を示す。
【0076】
フローセル内で方向xに移動する赤血球(7)の速度プロファイル(8)は、方向zにおける赤血球の位置に応じたベクトルとして表される。圧電素子(1)(図示せず)が流路壁の外側の領域に配置され、23ボルトの電圧と約1MHz、好ましくは1.113MHzの周波数で動作するか、または23ボルトの電圧と約5MHz、好ましくは5.397MHzの周波数で動作する。赤血球(7)の温度は36℃であり、赤血球(7)は本来の状態で存在し、球状ではない。
【0077】
示されているのは、圧電素子(1)によって生成された音波(5)の進行である。チャンネルの半分の高さ(3)と赤血球(7)の領域に音波の結節(6)が存在している。音響力により、赤血球(7)は音波ノードの領域に引き込まれ、そこに保持される。
【0078】
図4は、図3と同じ分析セル(9)を示す。圧電素子(1)は、75ボルトの電圧と約1MHz、好ましくは1.113MHzの周波数で動作するか、または75ボルトの電圧と約5MHz、好ましくは5.397MHzの周波数で動作する。赤血球(7)の温度は48℃であり、赤血球(7)は完全に球状である。
【0079】
示されているのは、圧電素子(1)によって生成された音波(5)の進行である。チャンネルの半分の高さ(3)と赤血球(7)の領域に音波の結節(6)がある。音響力により、赤血球(7)は音波ノードの領域に引き込まれ、そこに保持される。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電素子
2 チャンネルの壁
3 チャンネル半角
4 光学窓
5 音波
6 音波ノード
7 赤血球(RBC
8 速度プロファイル
9 分析セル
図1
図2
図3
図4