(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】治療剤を胃壁の中に送達するためのデバイス、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/07 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61J3/07 A
(21)【出願番号】P 2021550223
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020020540
(87)【国際公開番号】W WO2020180745
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イムラン,ミール
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515576(JP,A)
【文献】特表2008-534028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤調製物を患者の胃の洞壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、
カプセル壁を有し、前記治療剤調製物が内部に収容された嚥下可能なカプセルと、
前記カプセルの内部にあり、前記治療剤調製物を前記カプセル壁を通り前記洞壁の中に前進させるように構成されたドライバと、
洞の蠕動収縮によって前記カプセル壁が圧搾されているときに感知する、前記カプセル壁に動作可能に結合されたセンサと、
前記センサおよび前記ドライバに動作可能に結合され、前記洞の前記蠕動収縮によって前記カプセルが圧搾されていることを前記センサが感知すると、前記ドライバに前記治療剤調製物を前記カプセル壁を通って前記洞壁の中に前進させ、前記カプセルの少なくとも一部分が前記洞の前記蠕動収縮によって圧搾されている間に、前記治療剤調製物が前記カプセル壁を通って前進させられるトリガと、を備える、嚥下可能なデバイス。
【請求項2】
前記嚥下可能なカプセル
の前記カプセル壁は、円筒形シェルを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記カプセル壁の少なくとも一部分が、
前記患者の腸管内で分解性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カプセル壁の前記少なくとも一部分は、約6.5以上のpHで分解する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記カプセル壁の少なくとも一部分が、
前記患者の胃腸管内で非分解性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ドライバは、推進剤を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記推進剤は、ニトロセルロースを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ドライバは、バルーンを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ドライバは、圧縮ばねを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ドライバは、第1のドライバであって、前記デバイスは、第2のドライバをさらに含み、前記第1のドライバおよび前記第2のドライバは、それぞれ前記治療剤調製物を少なくとも2つの方向に送るように構成された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記センサは、前記カプセル壁への外部
の圧力を表す圧力信号を生成する電子トランスデューサを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記トリガは、前記センサから前記圧力信号を受信し、前記圧力が所定の閾値を超えるとトリガ信号を生成する電子回路を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記所定の閾値は、約300ダイン/cm
2~約1100ダイン/cm
2の範囲にある、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記センサは、閾値を上回る前記カプセル壁への外部圧力の変化に応答して状態を変化させる機械的または流体センサ要素を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記閾値は、約300ダイン/cm
2~約1100ダイン/cm
2の範囲にある、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記治療剤調製物は、前記ドライバによって前記洞壁の中に前進させられるように構成された固体投与形態を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記固体投与形態は、先細の、鋭利な、またはホーニングされた先端を有する細長い部材になるように、賦形剤または結合剤のうちの少なくとも1つと形成または混合された治療剤を含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記治療剤調製物は、前記ドライバによって中空針を通って前記洞壁の中に前進させられる液体投与形態を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
治療剤調製物を患者の胃の洞壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、
前記患者の胃腸管を通過するようにサイズ決定され、対向した側部および対向した端部を含む壁を有し、前記壁の前記対向した側部の一方が前記洞壁に隣接するように、洞の蠕動収縮中に前記胃の洞内で長手方向に配向するように構成された細長い形状を有するカプセルと、
前記カプセルの内部にあり、治療剤を含み、組織貫通部材として成形されている、治療用調製物と、
前記カプセル
の前記壁の側壁部に配置され、前記洞の
前記蠕動収縮に対応する、前記カプセルに前記洞壁によって印加された力を感知し、前記力を感知すると出力を生成するように構成されたセンサと、
前記組織貫通部材および前記センサに動作可能に結合され、前記カプセルの少なくとも一部分が前記洞の前記蠕動収縮によって圧搾されている間に、前記センサからの前記出力に応答して、前記組織貫通部材を前記カプセルから洞壁組織の中に射出するように構成された射出手段と、を備える、嚥下可能なデバイス。
【請求項20】
治療剤調製物を患者の胃腸(GI)管の壁
であるGI壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、
カプセル壁を有し、前記治療剤調製物が内部に収容されている嚥下可能なカプセルと、
前記カプセルの内部にあり、前記治療剤
調製物を前記カプセル壁を通って前記GI壁の中に前進させるように構成されたドライバと、
前記GI壁の蠕動収縮によって前記カプセルが圧搾されているときに感知する、前記カプセル壁に動作可能に結合されたセンサと、
前記センサおよび前記ドライバに動作可能に結合され、前記GI壁の前記蠕動収縮によって前記カプセルが圧搾されていることを前記センサが感知すると、前記ドライバに前記治療剤
調製物を前記カプセル壁を通って前記GI壁の中に前進させ、前記カプセルの少なくとも一部分が前記GI壁の前記蠕動収縮によって圧搾されている間に、前記治療剤調製物は前記カプセル壁を通って前進させられるトリガと、を備える、嚥下可能なデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年3月1日に出願された米国仮特許出願第62/812,867号および2019年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,250号に対する優先権およびその利益を主張し、両出願の完全な開示は参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[技術分野]
本発明の実施形態は、嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。より具体的には、本発明は、治療剤を胃洞または胃壁の他の部分の中に送達するための嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。
【0003】
近年、様々な疾患の治療のための新しい薬物の開発が進んでいるが、タンパク質、抗体、ペプチド、および他の不安定な薬剤を含む多くの薬物は、経口投与できず、通常は、分解を避けるために静脈内または他の形態(例えば、筋肉内など)の非経口投与が必要であることから、用途が限定されている。胃の不快感および出血を含む合併症を伴う不良な経口耐性、胃内での薬物化合物の破壊/分解、および薬物の不良な、遅い、または一定しない吸収を含む、多くの理由のいずれかにより、薬物を経口で送達できないことがある。
【0004】
静脈内送達や筋肉内送達などの従来の代替的な薬物送達方法には、針を刺すことによる痛みや感染の危険性、滅菌技術の使用の必要、長期間にわたって患者の体内で静脈(IV)ラインを維持する必要及びそれに関連する危険性を含む、多くの欠点がある。埋込型薬物送達ポンプなどの他の薬物送達アプローチが採用されているが、これらのアプローチには、デバイスの半永久的な埋込が必要であり、依然として静脈内送達の制限の多くを有する可能性がある。
【0005】
したがって、薬物および他の治療剤の経口送達のための追加的、代替的、および改善された方法、デバイス、および物品が必要である。特に、薬物の経口投与、ならびに患者の胃洞の壁および患者の胃腸(GI)管の他の標的領域の中への薬物のその後の注入(吐出、injection)または他の送達を可能にする送達ビヒクルおよび構造を提供することが望ましい。
【0006】
米国特許公開第2017/0265598号は、肥満治療の一環として、収縮を誘発するために薬物を患者の洞(幽門ないし前庭部、antrum)の中に注入する埋込可能なシステムを説明している。薬物を胃腸(GI)管内の腸壁または他の壁の中に注入するための嚥下可能なカプセルを説明する、本出願と共通の発明者適格および/または共通の所有権を有する特許および公開特許出願には、米国特許第9,149,617号、米国特許公開第2011/0208270号、および米国特許公開第2012/0010590号が含まれる。国際公開公報WO2018/213582は、薬物を胃壁の中に注入するためのバネ機構を備えた薬剤構造を有するカプセルを説明している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の様々な実施形態は、胃洞(前庭部、gastric antrum)を含む患者の胃の壁、または患者のGI管の他の壁に薬物および他の治療剤を送達するためのデバイス、システム、物品、調製物、キット、および方法を提供する。多くの実施形態では、本発明は、タンパク質、ポリペプチド、および抗体など、胃腸(GI)管内において、吸収不良で、耐性不良で、および/または分解される薬物および他の不安定な治療剤の送達に適した嚥下可能なカプセルおよび他の嚥下可能なデバイスを提供する。かかる不安定な治療剤を胃洞の壁の中に注入する際に特に有用であるが、本発明の実施形態は、他の薬剤を使用してもよく、小腸壁、大腸壁などのGI管の他の場所、口内の頬側面、および患者の体の他の場所への導入に使用してもよい。
【0008】
多くの実施形態では、本発明は、嚥下可能なデバイスが胃洞に入ったことを検出することができる、圧力センサなどのセンサ、または他の機構もしくは感知手段を含んでもよい、嚥下可能な薬物送達デバイス(本明細書では嚥下可能なデバイスとしても説明される)を提供する。特定の実施形態は、薬物および他の治療剤を患者の胃洞の壁に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを含む。例えば、デバイスは、洞の収縮によってデバイスの外部に印加された圧力を検出または応答し、カプセルが洞内にある間に、治療剤を注入または別の方法で送達するように構成された嚥下可能なカプセルであってもよい。さらに、そのような嚥下可能なカプセルおよび他のデバイスは、通常は、洞内にあるときに自己整列し、薬物または他の治療剤がカプセルから所定の方向で胃洞に隣接する壁に注入されるように構成される。好ましくは、該方向は、洞壁もしくは胃又はGI管の他の壁部分に略垂直である。しかしながら、45°の角度など他の方向もまた考慮される。特定の実施形態では、該方向は、洞壁の長手方向軸の両側で約45°に及ぶ範囲内であってもよい。
【0009】
本発明の特定の実施形態は、固体投与形態の薬物および他の治療剤、特に、GI壁組織の中に送達されない場合には、GI管内の消化液への曝露により分解されるか、または別の方法でそれらの生物活性を失うものの送達に特に有用である。他の実施形態は、液体、ゲル、粉末、および他の従来の薬剤/薬物形態、特に、GI壁組織の中に送達されない場合には、GI管内の消化液への曝露により分解されるか、または別の方法でそれらの生物活性を失うものの送達に有用である。例示的な固体投与形態は、しばしば自己貫通性(自己浸透性、self-penetrating)であり、例えば、GI管の洞(別名腔)または他の内腔壁の表面に貫通するのを容易にするために、鋭利な、尖った、先細の、または他の形状の遠位先端を有する。そのような自己貫通性の固体投与形態は、本明細書では、以下、組織貫通部材(TPM)と呼ばれることがある。本発明の多くの実施形態では、GI管の任意の部分の通過による分解を最小限にするかまたは分解を生じさせずに、経口送達を介して薬物を血流の中に迅速に放出することが可能である。
【0010】
第1の特定の態様では、本発明の実施形態は、治療剤調製物を胃の腔壁(洞壁とも呼ばれる)などの患者のGI管の壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスを含む。デバイスは、カプセル壁を有する、嚥下可能なカプセルまたは他のエンクロージャを備えてもよく、治療剤調製物はカプセルまたは他のエンクロージャ内に収容されている。ドライバもカプセルの内部に含まれ、カプセルの洞壁への近接および/またはカプセル壁に洞壁によって印加される圧力または力の量、特にカプセルの周囲で洞壁の蠕動収縮を示す圧力または力の量など、カプセルの周囲で選択された状態が検出されたときに、治療剤をカプセル壁を通って腔壁または他のGI壁の中に前進させるように構成されている。嚥下可能なデバイス上またはその中のセンサは、蠕動収縮のために洞壁がカプセルの一部分の周囲で収縮する(例えば、圧搾する)ときに発生するように、カプセル壁が洞(または他のGI)壁に隣接するときに感知する。ドライバは、カプセル壁が洞壁または他のGI壁に隣接していることをセンサが感知すると、治療剤をカプセル壁を通って胃壁の中に前進させるように構成されている。特定の実施形態では、例えば、カプセルの一部分の周囲で蠕動収縮による、カプセルの洞壁への近接は、カプセル壁に洞壁によって加えられる力の量が約200~3100ダインの範囲にあることによって決定されてもよく、より狭い範囲が本明細書でより詳細に説明される。多くの実施形態では、ドライバおよびセンサは、洞(または他のGI壁)がカプセル壁の少なくとも一部分の周囲で収縮している(例えば、圧搾している)かまたは別の方法でそれと接触している間に、治療剤を洞壁の中に前進させるように十分迅速に(例えば、1秒の数十分の1以下以内に)応答するように構成されている。
【0011】
特定の態様および実施形態では、嚥下可能なカプセル壁は、円筒形シェルを備えてもよく、カプセルは、患者のGI管の全部または一部分で分解性であってもよくあってもよくあってもよく、または患者の胃腸管の全部または一部分で非分解性であってもよくあってもよい。例えば、カプセル壁は、例えば、本明細書の例示的な実施形態では、約6.5以上のpHで分解するが、胃、特に、カプセルによって配置または担持される薬物や他の治療剤が概して放出される洞においては破損しない腸溶性材料を含む、GI管の特定の領域で分解する材料から全体的または部分的に作製されてもよい。
【0012】
本発明の実施形態による例示的なドライバは、センサからのトリガに応答して、薬物や他の治療剤を洞壁(またはGI管の他の壁)の中に選択的に送達することができる、機械的、化学的、または他の構成要素を含んでもよい。例えば、1つ以上の実施形態によれば、ドライバは、圧縮ばねであってもよくもよく、バルーンであってもよくもよく、または治療用調製物を前進させるために必要に応じてエネルギーを蓄積および/または生成することができる別の機械的構成要素であってもよくもよい。代替的に、開示された実施形態では、ドライバは、機械的要素を駆動して治療剤をカプセル壁を通して前進させるのに十分なエネルギーを放出することができる化学推進剤材料を含んでもよい。以下により詳細に説明される特定の実施形態では、ドライバは、ニトロセルロース、または電気的もしくは他の点火源もしくは開始源によって点火されてもよい他の化学推進剤を含む。
【0013】
様々な実施形態では、本発明の嚥下可能なデバイスは、治療剤を少なくとも2つの方向に送るように構成された2つ以上のドライバを含み得、任意選択で、治療剤を3つ、4つ、またはそれよりも多くの方向に向けることができる3つのドライバ、4つのドライバ、またはそれよりも多くを含む。少なくとも2つのドライバは、治療剤を少なくとも2つの正反対の方向に送るようにさらに構成されてもよい。同様に、3つ以上のドライバが利用されるときは、ドライバは、治療剤を対称または非対称のパターンで配向することができる。
【0014】
本発明の実施形態による好適なセンサは、嚥下可能なカプセルの壁または他の外部領域への外部圧力など、近接を表す信号を生成する電子センサを含んでもよい。電子センサは、固体圧力トランスデューサ、例えば圧電トランスデューサ、またはカプセル壁内またはカプセル壁を通してフィットするように小型化することができる他のトランスデューサを含んでもよい。近接を検出するために採用することができる他のセンサには、静電容量、抵抗(電気的)または光学系センサのうちの1つ以上が含まれる。
【0015】
圧電または他の圧力/力トランスデューサなどの電子センサを採用すると、嚥下可能なデバイスは、通常は、センサから圧力/力または他のセンサ信号を受信し、嚥下可能なカプセルが洞(またはGI壁の他のセクション)に隣接しているときにトリガ信号を生成するコントローラまたは他の電子回路(アナログまたはデジタル)をさらに含む。隣接状態は、例えば、圧力センサが所定の閾値を超える圧力を検出したときに決定することができる。嚥下可能なカプセルが患者の洞内にあるときに印加されうる力の閾値は、通常は約200~3100ダインの範囲であり、大抵は200~750ダインの範囲であり、しばしば約400~750ダインの範囲の印加された力である。最も広い範囲の力では、これは、約300~1100ダイン/cm2の圧力に対応してもよい。摂食状態および絶食状態でカプセルが服用されたとき、そのような閾値力に対して特定の許容差を認めることができる。摂食状態では、トリガ閾値は、約570~750ダインの範囲の印加された力(約835~1086ダイン/cm2の圧力に対応する)であってもよく、対応する一方で、絶食状態では、トリガ閾値は、約200~610ダインの範囲の印加された力(約300~900ダイン/cm2の圧力に対応する)であってもよくる。前述の力のうちの1つ以上は、医学用センサ技術で知られている方程式および計算方法を使用して圧力に変換されてもよい。GI管内の力および圧力のさらなる説明は、Laulichtaらによる「Understanding gastric forces calculated from high-resolution pill tracking」というタイトルの論文(PNAS,May 4,2010,vol.107,no.18.pages 8201-8206)に見出すことができ、参照によりあらゆる目的のために本明細書に完全に組み込まれる。
【0016】
他の実施形態では、圧力または他の近接センサは、嚥下可能なカプセルの壁または他の外部領域上の近接または外部圧力の変化に応答して状態を変化させる機械的流体要素を含んでもよい。そのような場合、トリガは、機械的または流体センサの状態の変化に応答し、ドライバを機械的に放出して、治療剤をカプセル壁を通って洞または他のGI壁の中に前進させる、機械的または流体トリガ要素を含む。好ましい実施形態では、トリガおよびドライバは、カプセル壁がまだ洞壁(またはGI管の他の壁)に近接している間に、治療剤をカプセル壁を通って洞壁の中に前進させるのに十分に速く感知および応答するように構成される。そのような機械的または流体センサ要素は、通常は、洞に特有である上記と同じ圧力/力範囲に応答するように構成される。しかしながら、他の力も考えられる考えられる。
【0017】
多くの場合、嚥下可能なデバイスによって送達される治療剤は、ドライバによって腸壁の中に前進させられる組織貫通端を有する固体投与形態を含む。そのような固体投与形態は、しばしば、一端に、直線でも又は湾曲してもよい先細の、鋭利な、またはホーニングされた先端を有する細長い部材になるように、圧縮されるか、または別の方法で賦形剤または結合剤のうちの少なくとも1つと形成される活性剤を含む。しかしながら、他の形状も考えられる考えられる。他の場合では、治療剤は、ドライバまたは関連するデバイスによって中空針または他の注入器を通って腸壁の中に前進させられる液体投与形態または他の非固体形態を含んでもよい。また、1つ以上の場合では、治療剤は、洞またはGI管の他の内腔壁の中に送達されない場合には、GI管内の消化液(例えば、小腸液)によって化学的に分解される生物学的分子または生物学的物質(例えば、細胞)を含んでもよい。そのような生物学的分子には、タンパク質、抗体、ポリペプチド、および細胞または他の生物学的プロセスによって生成される他の分子のうちの1つ以上を含む様々なバイオロジクスを含んでもよい。
【0018】
第2の態様では、本発明の実施形態は、治療剤を患者の腸管の腔壁の中に送達するための方法を提供し、治療剤調製物が中に収容されている嚥下可能なカプセルを提供することを含む。患者は嚥下可能なカプセルを摂取し、カプセルは患者の胃を通過して患者の胃洞の中に入る。胃の中にある間、治療剤は嚥下可能なカプセルの内部に留まり、洞に入ると、カプセルは、洞の収縮によってカプセルの外部表面に外部から印加された圧力を感知する。カプセルは、感知された圧力が所定の閾値および/または収縮の頻度を超えると、治療剤を腔壁の中に注入するように構成されている。特定の実施形態では、カプセルは、特定の印加された力/圧力および収縮頻度を有する蠕動収縮を感知するように構成されている。
【0019】
所定の閾値は、通常は、腔壁によって加えられるピーク圧力に基づいて選択されるが、他の圧力および生理学的イベントも考慮される。ピーク圧力は、母集団の平均値であってもよく、または、他の場合では、特定の患者について決定されてもよい。いずれの場合も、治療剤の放出をトリガするために選択される閾値は、通常は、腔壁によって加えられると予想されるピーク圧力の約50%~95%の範囲にあり、しばしばピーク圧力において60%~90%であり、しばしばピーク圧力の75%~85%であり、しばしばピーク圧力の約80%である。上記のように、感知されたピーク圧力に加えて、トリガ閾値またはイベントはまた、収縮の頻度を組み込んでもよい。1つ以上の実施形態では、トリガする収縮の頻度は、毎秒3~6回の収縮、より好ましくは3~4回、さらにより好ましくは毎秒約3回の収縮の範囲に対応してもよく、これは、本明細書に説明する洞ポンプ機能の一部である粉砕運動で食物の周囲で洞が強く収縮する洞の収縮運動に対応する。特定の実装形態では、カプセルは、(例えば、プロセッサ他の論理手段によって)収縮の頻度を決定するために必要な数の収縮が感知されるまで、非展開状態で洞内に留まり、その時点で、カプセルは、治療剤を洞壁の中に射出する。関連する実装形態では、カプセルは、本明細書に説明されるピークまたはピーク圧力の%(例えば、50~95%など)を有する、必要な数の収縮が感知されるまで洞内に留まる。いくつかの実施形態によれば、患者は、最初に、テストカプセルまたはカプセル模倣物を飲み込んでもよく、これは、必ずしもトリガおよび治療剤を含有せず、むしろその主機能はいくつかの腔蠕動収縮を通してカプセルに印加された圧力を記録し、次に、平均ピーク蠕動圧、収縮の頻度および期間のうちの1つ以上を含むこれらの収縮に関連する様々な情報を計算して外部デバイスに送信することである。次に、その情報は、外部デバイスから、カプセルに組み込まれるプロセッサまたは他の制御モジュールにダウンロードされてもよく、次に、腔壁の中への治療剤の放出をトリガする、または別の方法で制御するために利用されてもよい。
【0020】
嚥下可能なカプセルは、大抵は、洞内に存在するとき、特に、洞が蠕動収縮などによる収縮を受けるときに自己整列するように構成されている。例えば、カプセルは、丸みを帯びた遠位端および近位端を有する円筒形など、細長くてもよく、カプセルが胃から胃洞の中に通過するときに患者の胃洞の内腔方向と整列する軸を有する。このようにカプセルを配向することにより、治療剤は、カプセルの長手方向軸に対して横方向または他の事前に選択された方向(例えば、45°などの鋭角)に注入されてもよく、それにより、治療剤が腔壁の所与の場所に入る保証が高くなる。
【0021】
カプセルの周囲で収縮する洞壁からの力/圧力は、様々なやり方で感知することができる。例えば、一実施形態によれば、嚥下可能なカプセルは、嚥下可能なカプセルの壁に組み込まれた、固体圧電トランスデューサなどの電子圧力トランスデューサを備えてもよい。そのような場合、電子トランスデューサは、感知された圧力が所定の閾値を超えると、推進剤をトリガして治療剤を腔壁の中に前進させるためのデバイスまたは他の手段に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、電子トランスデューサは、推進剤をトリガして治療剤を腔壁の中に前進させるように、推進剤に直接または別の方法で動作可能に結合されてもよい。
【0022】
他の場合では、圧力は、嚥下可能なカプセルに、例えば、カプセル壁に組み込まれた機械的または流体圧力トランスデューサによって感知されてもよい。そのような機械的または流体トランスデューサは、感知された圧力が所定の値を超えると、バルーン、圧縮ばね、または他のそのような機械的要素をトリガして治療剤を腔壁の中に前進させるためのデバイスまたは他の手段に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、機械的または流体圧力トランスデューサは、バルーン、圧縮ばね、または他のそのような機械的要素をトリガして治療剤を腔壁の中に前進させるように、バルーン、圧縮ばね、または他のそのような機械的要素に直接または別の方法で動作可能に結合されてもよい。
【0023】
さらに他の場合では、治療剤は、カプセルから少なくとも2つの異なる方向に注入されてもよい。例えば、治療剤は、剤が注入されるときにカプセルに対して作用する力が互いに釣り合うように、カプセルから正反対の2つの方向に注入されてもよい。使用中、増加した量の薬物を送達することに加えて、そのような実施形態は、ニトロセルロースまたは他の点火性化学推進剤などのドライバによって固体投薬調剤(solid drug dosage)がカプセルから射出されるときに、腔表面から離れるようにカプセルを押す傾向のある任意の力(例えば、反跳力)を相殺することによって、腔壁(またはGI管内の他の場所)の中への薬物の改善された信頼性を提供する。
【0024】
すべてのそのような方法において、治療剤は、例えば、固体投与形態、液体投与形態、または粉末、ゲルなどの他の形態、ならびに前述の形態のいずれかの組み合わせを含む様々な形態であってもよい。好ましい場合では、治療剤は、自己貫通性の遠位先端を有して、腔壁またはGI管の他の壁部分の中への前進を強化する固体投与形態である。しかしながら、他の実施形態は、自己貫通性の遠位先端を有さない固体治療剤の形態を企図している。固体投与形態の治療剤の場合、固体調剤の寸法および形状は、GI管内の特定の標的送達エリア、例えば、洞壁に合わせて調整することができる。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、治療剤調製物を患者の胃の壁(腔壁など)またはGI管の他の部分の中に送達するための嚥下可能なデバイスは、カプセル、治療用調製物、センサ、および射出手段を備える。カプセルは、患者の胃腸管を通過するようにサイズ決定され、対向した側部および対向した端部を含む壁を有する。カプセルは、好ましくは、カプセル壁の側部が洞の壁に隣接するように、胃の蠕動収縮中に胃の洞内で長手方向に配向するように構成された細長い形状を有する。カプセルは、通常は、組織貫通部材(TPM)として成形される治療剤を含む治療用調製物を担持する。センサは、カプセル壁の側壁部分に配置され、センサは、洞の蠕動収縮の結果としてカプセル壁(またはカプセルの他の外部領域)に腔壁によって加えられる力/圧力を感知し、感知された圧力/力に関する情報に対応するか別の方法でそれを含む出力を生成するように構成されている。射出手段は、センサおよび組織貫通部材に動作可能に結合されている。センサは、洞壁(または他のGI壁部分)からカプセル壁(他のカプセル外部領域)に印加された、選択された量の力/圧力を感知すると、出力を生成し、これは、望ましくは、カプセル壁がまだ洞壁(またはGI管の他の壁)に近接している間に、射出手段が組織貫通部材をカプセル壁を通って洞壁(またはGI管の他の壁または周囲の組織)の中に射出することをもたらす。このようにして、射出器手段は、センサの出力に応答して、組織貫通部材をカプセルから腔壁組織の中に射出することができる。射出手段をトリガするための圧力/力の量は、望ましくは、例えば、洞壁が近接している、および/または組織貫通部材が洞壁(または他のGI壁)の中に入るのに十分な力でカプセルを圧搾していることを保証することによって、組織貫通部材の洞壁(または他のGI壁)の中への送達を改善または強化するために選択される。
【0026】
射出手段は、ばね、圧縮空気ばね、化学的貯蔵器などの任意のエネルギー蓄積機構を含んでもよい。特定の実施形態では、射出手段は、可燃性推進剤、またはエネルギーを放出して組織貫通部材を組織の中に送るために点火されてもよい他の反応物などの化学物質を含む。例えば、射出手段は、化学反応物、化学反応物を含浸させた繊維、化学反応物を含浸させた膜、硝酸塩を含浸させた繊維もしくは膜、ニトロセルロースなどのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0027】
様々な実施形態では、圧力センサは、電子圧力センサ、機械的圧力センサ、またはそれらの組み合わせであってもよい。例示的な実施形態では、圧力センサは、上記の範囲の圧力を検出するように較正された固体の圧電センサを含む。また、いくつかの実施形態によれば、患者は、最初に、テストまたは測定カプセルを服用してもよく、これは、洞収縮からカプセル壁に印加された圧力/力を測定し(例えば、治療剤、ドライバ、射出手段などを含有しない)、次に、そのデータを外部デバイスに送信するためだけに構成されている。特定の実施形態では、圧力センサまたは他の近接センサは、固体投薬調剤(例えば、組織貫通部材の形態にある)がカプセルを出る場所に近接して(例えば、約1~5mm)位置付けられ得る。そのため、ドライバがトリガされてその固体投薬調剤を洞壁の中に射出するときに、洞壁が実際にカプセル表面と接触しているという保証を高めることができる。このようにして、固体投薬調剤が、腔壁またはGI管の他の望ましい場所の中に送達されるという信頼性が高まる。さらに他の実施形態では、射出手段は、例えば、一対の組織貫通部材を対向した方向に前進させるための対向した表面を有するベローズ(または類似の構造)を備えてもよい。
【0028】
さらに別の実施形態では、治療剤調製物を患者の胃の壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスは、カプセル、治療用調製物、センサ、論理手段、および射出手段を備える。カプセル、治療用調製物、センサ、および射出手段は、今説明したとおりであってもよい。論理手段は、圧力センサからの電気出力を分析し、洞(または胃またはGI管の他の部分)の蠕動状態が検出されるとトリガ信号を生成するように構成されている。様々な実施形態によれば、論理手段は、マイクロプロセッサまたは他のデジタルプロセッサもしくはアナログデバイスに対応してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、TPMは、薬物または他の治療剤を含有し、推進要素、送達バルーン、または他の拡張可能な送達手段などの駆動部材の拡張によって腔または他の腸壁の中に挿入されるように構成されている。TPMは、通常は、送達デバイスに分離可能に結合された近位部分、組織貫通遠位部分、および任意選択で、組織貫通部材を腸壁の腔または他の領域内に保持するための保持機構(機能、feature)を有するシャフトを備える。組織貫通端は、通常は、組織の中に送り込まれたときの組織貫通を強化するために、先細にされる、面取りされる、または別の方法で形成もしくは鋭利化される。組織保持機構は、組織の中への前進を可能にするが、組織からの引き込みに抵抗するフック、バーブ、分岐などであってもよい。様々な実施形態では、TPMは、保持機構を有する必要はないが、代わりに、保持機構なしで胃または腸壁に保持されるような形状を有するか、または別の方法で構成されてもよい。
【0030】
TPMは、通常は、治療剤調製物を患者の血流に送達するように、腸壁内で溶解または別の方法で吸収されるように構成された薬物または他の治療剤を含む治療剤調製物から少なくとも部分的に形成される。治療剤調製物はまた、当技術分野で知られている1つ以上の医薬品賦形剤、例えば、崩壊剤、結合剤など、を含んでもよい。TPMは、望ましくは、治療剤を腸壁の特定の組織層、例えば、粘膜層、粘膜下層などに送達するように、胃、腸壁、またはいずれかの周囲組織の中に選択された距離を貫通するように構成されている。これは、TPMシャフト上に配置された複数の止め部を使用する、および/または、腸壁の中の選択された距離を貫通すると、屈曲または場合によってはせん断するようにTPMシャフトを構成することで実現することができる。
【0031】
通常は、TPMによって送達される薬物または他の治療剤は、PEO(ポリエチレンオキシド)、PGLAなどの生分解性ポリマーおよび/またはマルトースなどの糖と混合される。そのような実施形態では、TPMは、薬物と生分解性ポリマーとの略不均一な混合物を含んでもよい。代替的に、貫通部材は、略生分解性材料から形成された部分と、薬物もしくは他の治療剤から形成されるかまたは薬物もしくは他の治療剤を含む別個のセクションまたはコンパートメントとを含んでもよい。例えば、一実施形態では、TPMは、治療剤のスラグ(例えば、円筒形)がフィットされ中空コアを有する生分解性材料の外側シェルを備えてもよい。TPMの先端または組織貫通部は、例えば、洞壁または腸管の他の壁(例えば、小腸の壁)の組織を含む組織に容易に貫通することができるように、糖または金属(例えば、マグネシウム)などのより硬い材料を含んでもよい。胃壁(例えば、洞壁)またはGI管の他の壁内に配置されると、組織貫通部材は、壁組織内の間質液によって分解され、薬物はそれらの液に溶解し、胃、腸または他のGI壁組織(例えば、腹膜)の中または周囲で毛細血管によって血流の中に吸収される。TPMはまた、前進後に貫通部材を胃壁またはGI管の他の壁(例えば、腸壁)の組織内に保持するためのバーブまたはフックなどの1つ以上の組織保持機構を含んでもよい。保持機構は、部材シャフトの周りに対称的に分布する2つ以上のバーブなど、組織保持を強化するために様々なパターンで配置することができる。しかしながら、TPMはまた、逆テーパ形状または他の形状によってなど、他の手段によって、胃壁または他のGI管壁に保持することもできる。逆テーパ形状はまた、保持をさらに強化するために1つ以上の保持機構と組み合わせることができる。
【0032】
薬物または他の治療剤は、固体形態であってもよく、次に、モールディングまたは他の類似の方法を使用して組織貫通部材の形状に形成されるか、または固体もしくは液体形態であってもよく、次に、液体形態の生分解性ポリマーに添加され、次に、混合物が、モールディングまたはポリマー技術分野で知られている他の形成方法を使用してTmに形成される。望ましくは、薬物および分解性ポリマーを含む組織貫通部材の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物を含む薬物の任意の実質的な熱分解を生じない温度で形成される(例えば、硬化される)。これは、室温硬化ポリマーと、当技術分野で知られている室温モールディングおよび溶媒蒸発技術との使用を通じて実現することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材内の熱分解された薬物の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度は、既知であるか、または当技術分野で知られている方法を使用して決定することができ、次に、この温度を使用して、特定のポリマー処理方法(例えば、モールディング、硬化、溶媒蒸発方法など)を選択および調整することができる。
【0033】
他の態様では、本発明は、本明細書に説明される嚥下可能なデバイスの実施形態を使用して、小腸の壁(またはGI管内の内腔の他の壁)の中に送達するための治療剤調製物を提供する。調製物は、治療有効用量の少なくとも1つの治療剤(例えば、インスリン、インクレチン、抗発作化合物、NSAID、抗生物質など)を含む。調製物は、固体、液体、ゲル、およびそれらの組み合わせを含み得、そして1つ以上の医薬品賦形剤を含んでもよい。調製物は、嚥下可能なカプセル内に含まれ、カプセルから内腔壁の中に送達され、内腔壁内で分解して治療剤の用量を放出するための形状および材料稠度を有する。通常は、この形状および材料稠度は、調製物を本明細書に説明される組織貫通部材の1つ以上の実施形態の中に配置または形成することによって実現される。調製物はまた、小腸の壁または他の体の内腔における調製物の分解速度を強化するか、または別の方法で制御するように、選択可能な表面積対体積比を有してもよい。調製物中の薬物または他の治療剤の用量は、従来の経口送達方法に必要とされる用量から下方に滴定することができ、それにより、薬物からの潜在的な副作用を低減することができる。
【0034】
別の態様では、本発明は、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用する、薬物および治療剤の患者の胃洞の壁およびGI管の他の領域の中への送達のための方法を提供する。そのような方法は、治療有効量の様々な薬物および他の治療剤の送達に使用することができる。これらには、例えば、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロン(MSおよび他の状態の治療のため)、および他の類似の化合物である、さもなければ、胃内での化学的分解のために注入を必要とする多くの大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。本発明の実施形態によって送達されてもよい好適な薬物および他の治療剤には、様々な抗体(例えば、HER2抗体)、化学治療剤(例えば、インターフェロン)、インスリンおよび糖尿病を治療するための関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エキセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、IFGおよび他の成長因子)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、コルチゾンなど)、ワクチン、および様々な抗マラリア剤などの抗寄生虫剤が含まれる。特定の実施形態では、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、関節リウマチなどの様々な自己免疫関連障害の治療のために治療有効量のモノクローナル抗体アダリムマブを送達することができる。このまたは特定の治療剤の投与量は、患者の体重、年齢、状態、または他のパラメータに応じて滴定することができる。
【0035】
本発明の様々な方法の実施形態では、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用して、複数の状態の治療のために、または単一の状態の治療のために、特に、治療が複数の薬剤(例えば、HIVエイズ治療のためのプロテアーゼ阻害剤の混合物)の送達を必要とするかまたは送達から利益を得るものについて、複数の薬物を送達することができる。使用中、そのような実施形態は、患者が特定の1つ以上の状態のために複数の医薬を服用しなければならない必要性をなしで済ませることを可能にする。また、それらは、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸、したがって血流の中に送達および吸収されることを容易にするための手段を提供する。化学的組成、分子量などの違いにより、薬物は異なる速度で腸壁を通じて吸収され得、異なる薬物動態分布曲線がもたらされる。本発明の実施形態は、ほぼ同時に、望ましい薬物混合物を注入することによってこの問題に取り組む。これは、ひいては薬物動態、したがって、選択された薬物の混合物の有効性を改善する。
【0036】
本発明のこれらならびに他の実施形態および態様のさらなる詳細は、添付の図面図を参照して、以下により完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】本発明のデバイスおよび方法に関連する、患者の胃腸(GI)管の領域、特に胃を示す。
【
図2A】本発明の原理に従って構築された嚥下可能な薬物送達デバイスの主要な構成要素を示す。
【
図2B】患者のGI管内の圧力を測定するためのテストカプセルを示す。
【
図3】本発明の原理に従って構築された嚥下可能な薬物送達デバイスの特定の実施形態の主要な構成要素を示す。
【
図4】食物の正常な消化処理中の患者の胃洞内の典型的な圧力プロファイルを示すグラフである。
【
図5A-1-5F-2】
図5D-1および
図5D-2に示すように、治療剤の腔壁の中への注入をもたらす、患者の胃洞内での嚥下可能なカプセルの処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態は、薬物、物質、薬物などを腔壁または体内の他の場所の中に送達するためのデバイス、システム、および方法を提供する。本明細書で使用される場合、「治療剤」、「薬剤」、「医薬」、および「薬物」という用語は交換可能に使用され、薬物または他の治療剤、ならびに1つ以上の医薬品賦形剤を含むことができる任意の形態の治療、診断、または他の生物学的に活性な目的として意図される任意の医療調製物を指す。本発明の多くの実施形態は、医薬を胃洞GAまたはGI管の他の領域内に送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、洞の収縮によってカプセルに印加される圧力に応答して、医薬を洞の壁の中に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。
【0039】
本発明のデバイス、システム、および方法は、薬物を、例えば、洞壁などの胃壁の部分を含む、GI管内の特定の領域に送達するのに特に適している。さらに、部分的に消化された食物が胃に存在する場合でも、薬物を洞壁の中に送達するのにも適している。胃の本体部で消化プロセスを開始した後、部分的に消化された食物は胃の底部または本体部に入り、次に胃洞の中に移る。本発明のデバイスおよび方法が好ましくは治療剤を洞の壁の中に送達するのは、胃洞GA(洞Aとも呼ばれる)内である。治療剤を送達した後、デバイスは幽門括約筋PSを通過して十二指腸Dに入り、そこから無傷の、部分的に分解された、または完全に分解されたデバイスが大腸を通過し、体から排泄される。
【0040】
本発明の多くの実施形態は、胃洞の壁を含むGI管の壁の中への薬物および他の治療剤の送達を企図しているので、ここで胃を含むGI管の解剖学的構造および機能についての簡単な説明を提供する。
図1Aに示すように、GI管は食道Eから始まり、噴門Cで胃Sに入る。したがって、食物は、食道を通って噴門を通過した後、胃に入る。
図1Bに示すように、胃の主な解剖学的領域には、底部F、コーパスまたは本体部B、洞(A)、および幽門Pが含まれる。底部の壁は薄いが、洞の壁ははるかに厚く(筋層のために)、本明細書に説明される固体投薬調剤(solid drug dose)の実施形態の送達を容易に可能にする。しかしながら、胃の機能性領域は解剖学的領域に対応していない。
図1Cに示すように、機能的には、胃は胃貯蔵器GRと胃ポンプGPとに分けることができる。胃貯蔵器には、底部Fとコーパスまたは本体部Bが含まれる。胃ポンプは、蠕動波が発生するエリアによって表され、コーパスの遠位部および洞が含まれる。平滑筋細胞の特性が異なるため、胃貯蔵器は緊張性活動を特徴とし、胃ポンプは蠕動波として知られる段階的活動を特徴としている。胃ポンプの主な特徴は蠕動波である。それは近位胃から生じ、幽門に伝播する。蠕動波は、胃壁から生じる電波に基づいている。胃および小腸の両方の壁には、カハールの間質細胞(ICC)と呼ばれる間質細胞のネットワークがある。これらの間質細胞は、それらの膜電位の振動により電気的なペースメーカ電位を生成する。ICCのペースメーカ電位は、平滑筋細胞内に電気的イベントを送り、そこでそれらは徐波によって反射される。ペースメーカ電位の頻度および結果としてもたらされる蠕動収縮は、1分間に約3回、または約20秒で発生する。ペースメーカ電位は、蠕動波の最大頻度および伝播速度を決定する。胃コーパスの領域では、蠕動波は浅く、それらは、前述のように、胃貯蔵器のポンプを表す。蠕動波が洞(A)に到達すると、洞の円形のくびれが深くなり、それにより、洞が管状の形状に発達し、その中で洞の内容物に力が印加される。腔ポンプの排出機構は、3つの段階:1)推進の段階、2)排出および混合の段階、ならびに3)逆推進および粉砕の段階、に分けることができる。ここで、3つの段階の簡単な説明を提供する。蠕動波が近位洞を移動すると、以前に収縮していた末端洞が弛緩する。これにより、粥状液および他の胃の内容物が、遠位(すなわち、末端)洞の中に推進され、これは、推進段階に対応する)。蠕動波が洞の中央を移動すると、幽門が開き、十二指腸の収縮が抑制される。したがって、少量の胃粥状液が幽門を越えて十二指腸の中に送達される。排出および混合のこの段階では、蠕動波は幽門から比較的離れている。すなわち、胃粥状液は圧力によって十二指腸の中に押し込まれるのではなく、蠕動波によって小腸の中に押し流される。腔ポンプのこの機構は、ふるい分け効果に関連している。特に、洞の形状は管状になり、幽門から十二指腸の中への液体および小さな粒子の流れを可能にするが、嚥下可能なカプセル10の実施形態を含むより固体の物質は、幽門の比較的小さな開口部によって遮断されることによって洞内に保持される。腔収縮のこの段階の間にそのように保持されると、収縮する洞の力がカプセルの表面に加えられ、そこで圧力または以下に説明する他のセンサ12を使用してそれらを感知することができる。
【0041】
1つ以上の実施形態によれば、治療剤のGI管の内腔壁の中への送達のための嚥下可能なカプセルまたは他の嚥下可能なデバイス10は、
図2Aに示すように、圧力または他の近接センサ12、ドライバ14、および送達されるべき投薬調剤16を含んでもよい。これらの特定の構成要素の性質は、薬物送達のモードおよびGI管内の標的薬物送達領域に応じて、大きく異なる可能性がある。例えば、圧力または他の近接センサ12は、デバイス10が胃または小腸のどちらに送達することを意図しているかに応じて、機械的、電気的、またはそれらの組み合わせであってもよい。センサ12は、通常は、嚥下可能なカプセル10に外部から印加された力/圧力を感知することができ、特に、洞の収縮によってカプセルの外部に圧力が印加されているときを感知することができる。洞によって加えられる圧力はGI管内で固有であり、、嚥下可能なカプセル10が洞の内部に到達したことを示すために最小閾値を超える圧力の感知に依っててもよいことが理解されるであろう。
【0042】
ドライバ14はまた、様々な形態のいずれか1つを有してもよい。また、それらは、
図2Aに示す破線の矢印によって示されるように、カプセルからの治療剤の放出を開始するために、機械的、電気的、化学的、または他の蓄積エネルギーにしてもよい依ってもよい。ドライバ14は、圧力または他の近接センサ12に結合され、嚥下可能なカプセル10が患者の洞の内部に到達したことを示す、圧力センサが所定の閾値を上回る圧力を感知することに応答してドライバは作動する。場合によっては、センサおよびドライバは、胃洞の収縮によって加えられる圧力を、薬物を腔壁の中に送る力に変換するように構成されてもよい。
【0043】
ここで
図3を参照すると、本発明の動作可能な構成要素を有する嚥下可能なカプセル24の特定の実施形態がより詳細に示されている。固体圧電要素などの固体圧力センサ26が、通常、カプセルの外壁に据え付けられる。特定の実施形態によれば、圧力センサ26または他の近接センサ12は、固体投薬調剤40(例えば、組織貫通部材TPM)がカプセル24を出る場所(例えば、カプセル内でシリンダ36が位置付けられている場所)に近接して(1~5mm)位置付けられ得る。そのため、ドライバ14がトリガされてその固体投薬調剤を洞壁の中に射出するときに、洞壁が実際にカプセル表面と接触することを確実にすることができる。このようにして、固体投薬調剤40が、胃内の腔壁または他の望ましい場所、またはGI管の他の部分の中に送達されるという信頼性が高まる。圧力センサ26は、カプセルの内部の制御モジュール28(本明細書ではコントローラ28とも呼ばれる)に接続されている。制御モジュール28は、通常は、以下でより詳細に説明するように、嚥下可能なカプセル24のすべて(または一部分)の動作を制御するように構成されたマイクロプロセッサ(およびプロセッサ上で実行可能な関連ソフトウェア)を備えまたは含む。代替または追加の実施形態では、制御モジュール28はまた、アナログデバイスにも対応してもよい。いくつかの実施形態では、嚥下可能なカプセル24はまた、カプセル電源をオンにして圧力センサによる圧力の感知を開始するように、嚥下可能なカプセルがいつ嚥下され、胃の中にあるかを確認するための流体または他のセンサ30を有する。1つ以上の実施形態によれば、流体センサ30は、カプセルが胃に入ったことを確認するために、胃内の消化液による電極間の導電性架橋を感知する、カプセル表面またはカプセル上の他の場所に配置された電極に対応してもよい。使用中、流体センサ30は、電池または他の電源48の電力を節約するのに役立ち、カプセルが嚥下された後のみ、カプセルは表面によってカプセルに印加された圧力を感知するために電力を消費し始める。
【0044】
嚥下可能なカプセル24は、一対の薬物送達モジュール34を収容した内部を囲むカプセル壁32によって取り囲まれている。各薬物送達モジュール34は、その中に往復ピストン38を有するシリンダ36を含む。ピストン38は、
図3に示すように、最初は引き込まれ、関連するシリンダ36の底部に隣接する空間を有する。空間は、化学推進剤44が充填されてもよく、その中にコイルまたは他の点火剤46を有してもよい。このようにして、制御モジュール28は、推進剤44を電気的に点火し、固体投与量薬物40を
図3の破線で示す方向に送ることができる。嚥下可能なカプセル24は、通常は、制御モジュール28、点火剤46、および他の構成要素に電力を供給するために、化学蓄電池(例えば、リチウム電池)または他の電源48も担持する。いくつかの実施形態では、電源48はコンデンサに対応してもよい。ドライバが、ニトロセルロース、または点火剤によって点火される他の点火性化学推進剤に対応する特定の実施形態では、点火剤は、点火剤46を点火するのに十分な電流および電圧を提供するように構成されたコンデンサに通常は対応する独自の専用電源48’を有してもよい。
【0045】
投薬調剤16は、固体、液体、粉末、ゲル、およびそれらの組み合わせを含む様々な形態を有してもよい。多くの実施形態では、投与量16の少なくとも一部は、固体形態であり、および/または固体担体によって担持される。通常は、固体形態の投薬調剤16および/またはその担体は自己貫通性であり、しばしば鋭利な、ホーニングされた、または他の組織貫通性の先端を有する。多くの実施形態では、投与量16および/またはその担体のそのような自己貫通性形態は、組織貫通部材40の形態である。治療剤の組織貫通部材40および他のそのような固体投与形態16の詳細は、以下により詳細に提供される。
【0046】
特定の実施形態によれば、圧力センサ26および制御モジュール28は、腔蠕動として知られる腔壁の蠕動によってカプセル壁に加えられる外部圧力/力の変化を感知するように構成およびプログラムされてもよい。腔蠕動は、通常は、
図4に示すように、ピーク圧力P
pを有する一連の圧力波を含む。特定のピーク圧力値が患者集団および/または特定の患者について決定されてもよく、嚥下可能なカプセル24からの治療調製物の送達を開始する、ピーク圧力未満の圧力値が選択されてもよい。例えば、
図4のP
0.8に示すように、トリガ圧力はピーク圧力値の80%であってもよい。他のトリガ圧力値(例えば、ピーク圧力P
pの70、85、90%など)が選択されてもよいことが考えられる考えられる。いくつかの実施形態に従って説明されるように、ピーク圧力は、洞のいくつかの蠕動収縮の間、洞内に保持されるようにカプセルを構成し、蠕動収縮のいくつかのサイクルを通して印加された腔圧力を記録し、次に、平均ピーク圧と、平均頻度および収縮期間を含む腔蠕動収縮に関連する他の情報を計算するようにコントローラ28およびまたは制御モジュールを構成することによって決定されてもよい。いくつかの実施形態によれば、患者は、最初に、テストカプセルまたはカプセル模倣物24’(
図2B)を飲み込んでもよく、これは、必ずしもドライバ14および治療剤40を含有せず、むしろその主な機能はいくつかの腔蠕動収縮(またはGI管の他の場所での蠕動収縮)を通してカプセル24’に印加された圧力を記録し、次に、平均ピーク蠕動圧、収縮の頻度および期間などのうちの1つ以上を含むこれらの収縮に関連する様々な情報を計算して外部デバイス(例えば、携帯電話またはタブレット)に送信することである。通常は、テストカプセル24’は、そのような圧力データを測定するためにその外表面に位置付けられた、または動作可能に結合された圧力または関連するセンサ25と、テストカプセル24’がGI管を通って進むにつれて観察された圧力データを記録および/または送信するための内部回路(図示せず)とを有する。次に、その取得されたデータまたは情報は、外部デバイスから、カプセル24に組み込まれるか、または別の方法で関連する制御モジュール28(例えば、プロセッサまたは他の論理手段)に入力されてもよく、次に、腔壁の中への治療剤の放出をトリガする、修正する、または別の方法で制御するために利用されてもよい。これらおよび関連する実施形態では、制御モジュール28は、取得したデータおよび/またはデバイスの動作においてコントローラ/プロセッサ上で実行可能なアプリケーションソフトウェアを格納するためのメモリ手段(例えば、RAM、DRAM、揮発性メモリなど)、ならびに当技術分野で知られているRF送信デバイスなどの送信手段を含むか、またはそうでなければそれらに動作可能に結合することができる。特定の実施形態では、RF送信/トランシーバデバイスは、携帯電話、タブレットなどの外部デバイスと通信するように、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルを使用するように構成されてもよい。
【0047】
ここで
図5A-1から
図5F-2を参照して、本発明の原理による、嚥下可能なカプセル10の腔壁への送達について説明する。
図5B-1および
図5B-2に示すように、最初は、胃洞GAは空であり、腔壁AWは蠕動収縮を受けており、したがってくびれている。次に、患者は嚥下可能なカプセル10を摂取し、
図5C-1および
図5C-2に示すように、カプセルは、最終的に胃洞GAに近づく。嚥下可能なカプセル10が胃洞GAに入るにつれて、
図5D-1および
図5D-2に示すように、胃壁はその外部をくびれさせる。次に、カプセル24の外部に腔壁AWによって印加される圧力/力が、圧力/力センサ26によって感知され、
図5D-1および
図5D-2に示すように、(例えば、制御モジュール28の使用を通じて)固体投与形態40がカプセルの壁を通して腔壁AWの中へ放出される。
【0048】
特定の実施形態では、制御モジュール28または他の回路は、洞壁のいくつかの蠕動収縮から圧力/力対時間曲線を測定および格納して、特に、上記の腔ポンプ1つ以上の段階中に発生する、個々の患者の腔収縮の圧力/力曲線のデータベースを開発するように構成することができる。さらに以下に説明するように、カプセルに加えられるピーク蠕動圧/力(またはピーク圧の選択された例えば80%)、ならびに洞の蠕動収縮の頻度および/または期間などのパラメータを含む様々な情報は、制御モジュール28または論理手段によって圧力/力曲線から導出されてもよい。様々な実施形態では、これらのまたは他のパラメータのうちの1つまたは両方の組み合わせが制御モジュール28によって使用されて、洞壁の中への組織貫通部材40の放出がトリガされてもよい。特定のアプローチでは、制御モジュール28は、選択されたパーセンテージのピーク収縮圧と選択された収縮期間との両方を使用して、組織貫通部材40の放出をトリガするように構成することができる。これらのアプローチのうちの1つ以上を使用すると、カプセルは、カプセル10への洞の望ましい量の収縮および/または接触をもたらす、洞(または他のGI壁)の蠕動波/収縮が発生したときをより適切に感知することができるようになる。このようにして、腔壁(または胃もしくはGI管の他の部分)の中への組織貫通部材40(または他の形態の投薬調剤16)の送達の信頼性が著しく改善される。
【0049】
様々な実施形態では、カプセル24は、腔ポンプのいくつかの蠕動収縮段階中に洞内に留まるように望ましくサイズ決定および成形されるか、または別の方法で構成され得、カプセルに印加された平均ピーク腔蠕動圧、ならびに腔蠕動収縮の頻度および/または期間を含む、特定の患者に固有の腔収縮の情報を導出するように、洞の複数の蠕動収縮を感知および記録してもよい。これは、様々なアプローチを通して実現することができる。例えば、1つのアプローチによれば、カプセル24の直径は、部分的にのみ開いた幽門括約筋の直径よりもいくらか大きくなるようにサイズ決定することができる。追加または代替の実施形態では、カプセルの少なくとも一部分の周囲で洞または胃もしくはGI壁の他の部分の収縮中にカプセル24の壁32への洞の把持または保持を高めるまたは改善するための様々な表面コーティングまたは表面機構の使用を通じて、カプセル24は、そうでなければ洞Aまたは括約筋PSからそれを押し出してもよい蠕動収縮中に洞内に留まるように構成することができる。コーティングは、当技術分野で知られている接着力が弱い圧力作動生体接着剤を含む、圧力作動生体接着剤コーティングを含んでもよい。そのような表面機構は、カプセルが洞によって把持されたときに洞の表面とカプセル表面との間の摩擦係数を増加させ、したがって、洞もしくは他のGI壁の蠕動もしくは他の収縮中に、カプセルを洞の遠位に押し出すために必要な力の量を増加する、および/または洞内のカプセルの移動を減少させる、ローレット表面を含む、当技術分野で知られている様々なテクスチャ加工された表面を含んでもよい。使用中、そのような表面コーティングまたは機構は、蠕動収縮中の洞壁の中への組織貫通部材40(または投薬調剤16の他の担体もしくは形態)の前進の信頼性を改善する。
【0050】
図5E-1および
図5E-2に示すように、腔壁は蠕動を受け続け、最終的に嚥下可能なカプセル10を放出する。カプセル10は、完全に分解されていない場合、
図5F-1および
図5F-2に示すように、幽門括約筋PS(幽門弁PSとも説明される)を通過して十二指腸Dに入る。幽門括約筋PSを通過して十二指腸Dに入った後、最終的にカプセル10が患者から排泄される。
【0051】
図3に戻って参照すると、様々な実施形態では、組織貫通部材40を含む嚥下可能なカプセル24は、液体、半液体または固体形態の医薬、または3つすべての組み合わせの送達のために構成されてもよい。形態がどうであれ、医薬は、望ましくは、医薬が嚥下可能なカプセル24から洞または他のGI壁(例えば、小腸)上の標的場所の中に前進させられ、次に壁内で分解して薬物または他の治療剤を壁および/または周囲の中に、ひいては患者の血流の中に放出することを可能にする材料稠度を有する。医薬の材料稠度には、(体液中の)調製物の硬度、多孔性、および溶解度のうちの1つ以上が含まれ得る。組織貫通部材または他の投薬調剤40の材料および寸法もまた、GI管内の特定の標的場所に対して最適化されてもよい。例えば、腔壁の中への送達のために、洞壁のより筋肉質の部分に貫通するために、より長い組織貫通部材をより高い硬度で使用することができる。材料稠度は、以下のうちの1つ以上を選択して使用することで実現することができる:i)調製物を作るために使用される圧縮力、ii)当技術分野で知られている1つ以上の医薬品崩壊剤の使用、iii)他の医薬品賦形剤の使用、iv)調製物(例えば、微粉化粒子)の粒子サイズおよび分布、ならびにv)当技術分野で知られている微粉化および他の粒子形成方法の使用。
【0052】
嚥下可能なカプセル24は、嚥下され、少なくともGI間を通過して洞に入るようにサイズ決定される。しかしながら、特定の実施形態では、カプセルの直径は、幽門括約筋が部分的にのみ開かれたときに洞内で再訓練されるようにサイズ決定されてもよい。サイズはまた、送達される薬物の量、ならびに患者の体重、および成人と小児の用途に応じて調整することもできる。追加または代替のアプローチでは、幽門括約筋が部分的にのみ開かれているときにカプセルを洞内に保持するのを助けるために、カプセルはまた、本明細書に説明した表面コーティングおよび特徴を含んでもよい。通常は、カプセルは、ビタミンと同様の湾曲した端を有する管状の形状を有する。これらおよび関連する実施形態では、カプセルの長さは0.5~2インチの範囲であってもよく、直径は0.1~0.5インチの範囲であってもよく、他の寸法が考えられる。嚥下可能なカプセル24は、内部空間または体積を画定する外部表面および内部表面を有する、カプセル壁32を含む。いくつかの実施形態では、カプセル壁は、組織貫通部材40の外向きの前進のためにサイズ決定された1つ以上の開口を含むことができる。
【0053】
嚥下可能なカプセル24は、通常は、必ずしもではないが、医薬品技術分野で知られているゼラチンなどの生分解性材料から作製され、胃および洞内での(酸などによる)分解からカプセルを保護し、その後、小腸または腸管の他のエリアにあるより高いpHで分解するように構成された腸溶コーティングを含んでもよい。様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、そのうちの1つ以上が生分解性であってもよい複数の部分またはセグメント(例えば、2つの半体)から形成されてもよい。
【0054】
上で論じたように、カプセル24の1つ以上の部分は、好ましい実施形態では、セルロース、ゼラチン材料PGLA(ポリ乳酸-コ-グリコール酸)を含んでもよい様々な生分解性ポリマーを含む、当技術分野で知られている様々な生体適合性ポリマーから作製することができる。他の好適な生分解性材料には、本明細書に説明した様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、それらのブレンドおよびコポリマーが含まれる。
【0055】
生分解性腸溶性材料を含む、嚥下可能なカプセル24用の生分解性材料の使用は、カプセルが全体的または部分的に分解することを可能にして、薬物送達の前、最中、または後にGI系を通過するのを容易にする。本明細書でさらに詳細に説明するように、様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、腸管をより容易に通過するより小さな断片23に制御可能に分解するように、生分解性材料のシーム22を含むことができる。
【0056】
様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、蛍光透視法、超音波、MRIなどの1つ以上の医用イメージングモダリティを使用してデバイスの場所のための様々な放射線不透過性、エコー源性または他の材料を含んでもよい。特定の実施形態では、カプセルの全部または一部が、放射線不透過性/エコー源性を含んでもよい。放射線不透過性マーカに適した材料には、硫酸バリウム、化合物、二酸化チタン、およびそれらの化合物が含まれる。使用中、そのような材料は、GI管内の嚥下可能なカプセル24の場所、ならびにその展開状態(例えば、特色のあるマーカを両端、および任意選択で壁32の他の場所に位置付けることができる)を可能にし、嚥下可能なカプセル24は、治療剤の放出前に洞内で適切に整列しているという目視による確認を可能にする。それらはまた、GI管を通るデバイスの通過時間の決定を可能にするために使用されてもよい。このような情報を使用して、特定の患者の薬物の投与量を滴定したり、例えば、糖尿病の治療のためにインスリンを服用する場合に、食事の摂取などのイベントの後に特定の薬を服用する時期に関する情報を提供したりすることができる。
【0057】
組織貫通部材40は、様々な薬物および他の治療剤、1つ以上の医薬品賦形剤(例えば、崩壊剤、安定剤など)、および以下に論じられかつ米国特許第9,757,548号、同第8,562,589号、同第8,809,269号、同第8,969,293号、同第8,809,271号、同第8,980,822号、同第9,861,683号、同第9,259,386号、同第9,284,367号、同第9,149,617号、同第8,734,429号、同第9,283,179号、同第8,764,733号、同第9,402,806号、同第9,629,799号、同第9,415,004号、同第9,402,807号、同第8,846,040号、同第10,098,931号、および同第10,220,003号、および米国出願第15/144,733号、同第15/150,379号、同第15/260,260号、同第15/928,606号、同第16/183,573号、ならびに本出願と共通の発明者適格を有する、同時係属中の仮出願第62/786,831号、に詳細に説明されている、先端を有するシャフトを含むTPMの主要な構造的構成要素を形成するために使用されてもよい1つ以上の生分解性材料(例えば、PEO)から作製することができ、これらの完全な開示は参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0058】
特定の材料を選んで、貫通部材に望ましい構造的特性および材料特性(例えば、胃または腸壁の中への挿入のためのカラム強度、または貫通部材の崩壊、したがって薬物の放出を制御するための多孔性および親水性)を与えることができる貫通部材。多くの実施形態では、貫通部材40は、例えば
図5D-1および
図5D-2に示すように、洞または他の腸壁の組織に貫通しやすいように、シャフトおよび針先端または他の尖った先端を有するように形成されてもよい。例示的な実施形態では、先端はトロカールを有し、先端の硬度および組織貫通性を増加させるスクロース、マルトースまたは他の糖などの様々な分解性材料(先端の本体内に、またはコーティングとして)を含んでもよい。腸壁内に配置されると、貫通部材40は、壁組織内の間質液によって分解され、それにより、薬物または他の治療剤がそれらの流体内に溶解し、血流の中に吸収される。組織貫通部材40のサイズ、形状、および化学組成のうちの1つ以上を選択して、組み込まれた薬物の溶解および吸収を数秒、数分、または数時間のうちに可能にすることができる。溶解速度は、医薬品技術分野で知られている様々な崩壊剤の使用を通じて制御することができる。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウムなどの様々なデンプン、およびカルボキシメチルセルロースなどの様々な架橋ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤の選択は、小腸の壁内の環境、例えば、血流、蠕動収縮の平均数などに合わせて具体的に調整することができる。
【0059】
組織貫通部材40はまた、通常は、前進後に腸壁の腔または他の領域の組織内に貫通部材を保持するためのバーブ(返し、barb)またはフックなどの1つ以上の組織保持機構を含んでもよい。保持機構は、2つ以上のバーブが部材シャフトの周りにおよびそれに沿って対称的に、または別方法で分布するなど、様々なパターンで配置して組織をより強く保持することができる。追加的に、多くの実施形態では、貫通部材はまた、送達機構上の結合構成要素への取り付けのための凹部または他の嵌合機構を含んでもよい。そのような機構は、米国特許第8,734,429号にさらに詳細に説明され、これは、参照により本明細書に既に組み込まれている。
【0060】
組織貫通部材40は、望ましくは、ピストン38に分離可能に結合されるように構成され、それにより、組織貫通部材40の腔壁の中への前進後、組織貫通部材はピストンから分離する。分離可能性は、以下を含む様々な手段によって実装することができる。すなわち、i)ピストンの開口とのぴったりとはまった状態または嵌入、ii)ピストンからの分離を促進するために、組織貫通部材を組織に固定する、組織貫通部材40上の組織保持機構の構成および配置、ならびにiii)腸壁の中への組織貫通部材の貫入深さ。これらの因子のうちの1つ以上を使用して、組織貫通部材40は、ピストンが引き込まれるか、もしくは別の方法で腔壁から離れて引き戻されるときに、および/または洞の蠕動収縮もしくは他の収縮によって嚥下可能なカプセル24に力が印加されるときに分離するように構成されてもよい。
【0061】
上記のように、様々な実施形態では、組織貫通部材40は、いくつかの薬物および他の治療剤から作製することができる。また、1つ以上の実施形態によれば、組織貫通部材は、完全に薬物から作製されてもよく、または他の構成成分、例えば、様々な医薬品賦形剤(例えば、結合剤、防腐剤、崩壊剤など)、望ましい機械的特性を与えるポリマーなどをさらに有してもよい。さらに、様々な実施形態では、1つ以上の組織貫通部材40が、他の組織貫通部材と同じまたは異なる薬物(または他の治療剤)を担持することができる。前者の構成は、より多くの量の特定の薬物の送達を可能にし、後者は、複数の薬物の略同時の送達を必要とする薬物治療レジメンを容易にするために、2つ以上の異なる薬物をほぼ同時に腔壁の中に送達することを可能にする。
【0062】
通常は、組織貫通部材40によって担持される薬物または他の治療剤は、生分解性材料と混合されて、組織貫通部材40を形成する。生分解性材料は、PEO(ポリエチレンオキシド)、PGLA、セルロースなどの1つ以上の生分解性ポリマー、ならびにマルトースなどの糖、または本明細書に説明したまたは当技術分野で知られている他の生分解性材料を含んでもよい。そのような実施形態では、貫通部材40は、薬物と生分解性材料との略不均一な混合物を含んでもよい。代替的に、組織貫通部材40は、略生分解性材料から形成された部分と、本明細書では薬物セクションとして説明される、薬物から略形成された、または薬物を含む別個のセクションとを含んでもよい。そのような別個の薬物セクションは、別個のセクションとして事前に形成されてもよく、次に、組織貫通部材40の空洞の中に挿入されてモジュール作製を可能にする、成形セクションを含んでもよい。代替的に、薬物および/または薬物調製物は、例えば、組織貫通部材40の空洞、ウェル、中空内部、または他のレセプタクルの中に注入されるまたは注入される粉末、液体、またはゲルとして組み合わされることによって、組織貫通部材40の空洞の中に導入されてもよい。成形セクション42は、薬物自体、または薬物と1つ以上の結合剤、防腐剤、崩壊物および他の賦形剤とを含有する薬物調製物から形成されてもよい。
【0063】
様々な実施形態では、組織貫通部材40の重量は、約10~15mgの範囲であってもよく、より大きなおよびより小さな重量が考えられる。マルトースから作製された組織貫通部材40の実施形態では、重量は約11~14mgの範囲であってもよいが、PEOでは、組織貫通部材の重量は10~15mgの範囲であってもよい。様々な実施形態では、薬物および望ましい送達用量に応じて、部材40中の薬物の重量パーセントは、約0.1~約15%の範囲であってもよい。部材40中の薬物の重量パーセントは、望ましい用量に応じて、ならびに薬物に構造的および化学量論的安定性を提供し、また薬物の望ましい溶出プロファイルを実現するために調整することができる。表1は、組織貫通部材40によって送達されてもよいいくつかの薬物の用量および重量パーセントの範囲を列挙している。
【表1】
【0064】
組織貫通部材40は、1つ以上のポリマーおよび当技術分野で知られている医薬品作製技術を使用して作製することができる。例えば、薬物(生分解性材料を有するまたは有さない)は、固体形態であってもよく、次に、1つ以上の結合剤が添加されて、モールディング、圧縮または他の類似の方法を使用して組織貫通部材40の形状に形成されてもよい。代替的に、薬物および/または薬物調製物は、固体または液体形態であってもよく、次に、液体形態の生分解性材料に添加され、混合物は、モールディングまたはポリマー技術で知られている他の形成方法を使用して貫通部材40に形成される。
【0065】
望ましくは、薬物または他の治療剤および分解性材料を含む組織貫通部材40の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物を含む薬物(または他の治療剤)の任意の実質的な熱分解を生じない温度で形成される。これは、室温硬化ポリマーと、当技術分野で知られている室温モールディングおよび溶媒蒸発技術との使用を通じて実現することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材の内部の熱分解された薬物または他の治療剤の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度は、既知であるか、または当技術分野で知られている方法を使用して決定することができ、次に、この温度を使用して、特定のポリマー処理方法(例えば、モールディング、硬化、溶媒蒸発方法など)を選択および調整して、温度および関連する薬物の熱分解レベルを最小限に抑えることができる。
【0066】
医薬送達後、嚥下可能なカプセル24(圧力センサ26、制御モジュール28、および薬物送達モジュール34の一部またはすべてを含む)は、洞から小腸および大腸を含む腸管を通過し、最終的に排泄されてもよい。生分解性シームまたは他の生分解性部分を有するカプセル24の実施形態では、カプセルは、腸管内でより小さな断片に分解されて、腸管を通過し、腸管から排泄されるのを容易にする。生分解性組織貫通性針/部材40を有する特定の実施形態では、針が胃、腸(小腸または大腸)またはGI管の他の場所の壁から取れなくなることがあれば、針は生分解し、カプセル24を胃または腸壁から放出する。
【0067】
上記の方法の1つ以上の実施形態は、様々な疾患および状態を治療するために、治療有効用量の様々な薬物および他の治療剤を含有する調製物の送達に使用することができる。これらには、例えば、tnfアルファ抗体、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロン、および他の類似の化合物など、様々なモノクローナル抗体を含む抗体を含む、さもなければ、胃または腸内での化学的分解および/または不活性化のために注入を必要とする多くの大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。本発明の実施形態によって送達されてもよい好適な薬物および他の治療剤には、様々な免疫化学剤(例えば、インターフェロン)、抗生物質、抗ウイルス薬、インスリンおよび関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エキセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、IFGおよび他の成長因子)、抗発作剤(例えば、フロセミド)、抗片頭痛医薬(スマトリプタン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、および様々な抗マラリア剤などの抗寄生虫剤が含まれる。特定の薬物の投与量は、患者の体重、年齢、または他のパラメータについて滴定することができる。また、望ましいまたは治療効果を実現するための薬物(例えば、血糖調節のためのインスリン、抗発作のためのフロセミド)は、薬物が従来の経口送達によって送達された場合に必要な量(例えば、胃で消化され、小腸の壁を通して吸収される嚥下可能な錠剤)よりも少なくすることができる。これは、胃の中の酸および他の消化液による薬の分解がないという事実と、薬の一部分だけではなく、すべてが小腸(または胃腸管、例えば、大腸、胃などの他の内腔)の壁の中に送達されるという事実によるものである。薬物に応じて、調製物で送達される用量は、望ましい治療効果(例えば、血糖調節、発作調節など)を実現するために、従来の経口送達手段によって送達される用量の5%~100%の範囲であってもよく、さらに少ない量が考えられる。特定の用量低減は、特定の薬物、治療される状態、ならびに患者の体重、年齢、および状態に基づいて滴定することができる。いくつかの薬物(腸管内での分解レベルがわかっている)では、標準的な用量低減を採用することができる(例えば、10~20%)。分解する傾向および吸収が不良である傾向が強い薬物には、より大きい量の用量低減を使用することができる。このようにして、摂取用量が低下するため、嚥下可能なカプセル24によって送達される特定の1つまたは複数の薬物の潜在的な毒性および他の副作用(例えば、胃のけいれん、過敏性腸、出血など)を低減することができる。これは、ひいては患者の副作用の重症度および出現率の両方が低減するため、患者のコンプライアンスが改善される。薬物の用量低減を採用する実施形態の追加の利点には、患者が薬物に対する耐性を発達させる(より高い用量を必要とする)尤度、および抗生物質の場合、患者が細菌耐性株を発達させる尤度の低減が含まれる。また、胃バイパス手術、および小腸のセクションが除去された、またはその作用(例えば、消化)の長さが効果的に短縮された他の処置を受けている患者に対して、他のレベルの用量低減を実現することができる。
【0068】
単一の薬物の送達に加えて、嚥下可能な薬物送達嚥下可能なカプセル24およびそれらの使用方法の実施形態は、複数の状態の治療のための複数の薬物、または特定の状態の治療のための複数の薬物(例えば、HIVエイズ治療のためのプロテアーゼ阻害剤)を洞壁またはGI管内の他の場所の中に送達するために使用することができる。使用中、そのような実施形態は、患者が特定の1つまたは複数の状態のために複数の医薬を服用しなければならない必要性をなしで済ませることを可能にする。また、それらは、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸(または周囲の組織)、したがって血流の中に送達および吸収されることを容易にするための手段を提供する。化学的組成、分子量などの違いにより、薬物は異なる速度で腸壁を通じて吸収され得、異なる薬物動態分布曲線がもたらされる。本発明の実施形態は、略同時に、望ましい薬物混合物を注入することによってこの問題に取り組む。これは、ひいては薬物動態、したがって、選択された薬物の混合物の有効性を改善する。追加的に、複数の薬物を服用する必要をなくすことは、認知能力または身体能力が損なわれている患者を含む、1つ以上の長期的な慢性状態を有している患者にとって特に有益である。
【0069】
様々な用途では、上記の方法の実施形態を使用して、薬物および他の治療剤を含む調製物を送達して、多くの医学的状態および疾患の治療を提供することができる。本発明の実施形態で治療することができる医学的状態および疾患には、癌、ホルモン状態(例えば、甲状腺機能低下症/甲状腺機能亢進症、成長ホルモン状態)、骨粗鬆症、高血圧、高コレステロールおよび高トリグリセリド、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染症(局所または敗血症)、てんかんおよび他の発作障害、骨粗鬆症、冠状動脈不整脈(心房性および心室性の両方)、冠状動脈虚血性貧血または他の類似の状態が含まれるが、これらに限定されない。多発性硬化症、ギランバレー症候群、強直性脊椎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、多巣性運動ニューロパチー、狼瘡および他の類似の状態を含む、様々な自己免疫障害などのさらに他の状態および疾患もまた考えられる。後者の状態の治療剤には、IgGおよびリツキシマブが含まれ得る。
【0070】
多くの実施形態では、特定の疾患または状態の治療は、薬物または他の治療剤を注入する(または、坐剤などの他の非経口形態の送達の)必要なしに、代わりに、洞、小腸、またはGI管の他の部分の壁の中へ送達される治療剤のみに依り行うことができる。例えば、糖尿病または別のグルコース調節障害は、患者がインスリンを全く注入する必要なしに、洞、小腸の壁の中に送達されるインスリンの使用を通じてのみ(例えば、血糖値を制御することによって)治療することができる。同様に、患者は、従来の経口形態の薬物または他の治療剤を服用する必要はないが、ここでも、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、洞または小腸の壁の中への送達のみに依り行うことができる。他の実施形態では、小腸の壁の中に送達される治療剤は、注入調剤と併せて送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、血糖調節のためにインスリンまたは化合物の1日の用量を服用することができるが、数日ごとに、または患者の状態がそれを必要とするとき(例えば、高血糖)に注入調剤を取るだけでよい。同じことが、伝統的に経口形態で送達される治療剤にも当てはまる(例えば、患者は、嚥下可能なカプセルを服用し、必要に応じて従来の経口形態の剤を服用することができる)。そのような実施形態で送達される投薬調剤(例えば、嚥下された調剤および注入された調剤)は、必要に応じて滴定することができる(例えば、標準的な用量反応曲線を使用して、および、他の薬物動態学的方法を使用して、適切な投与量を決定することができる)。また、従来の経口手段によって送達することができる治療剤を使用する実施形態では、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して送達される調剤は、胃または腸管の他の部分で略又は全く分解されないので、剤の経口送達に通常与えられる投与量未満に滴定することができる(ここでも、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態学的方法を適用することができる)。
【0071】
ここで、様々な疾患および状態の治療のための1つ以上の薬物または他の治療剤を含有する調製物の実施形態の様々なグループについて、投与量を参照して説明する。特定の治療剤およびそれぞれの投与量を含むこれらの実施形態は例示的なものであり、調製物は、嚥下可能なカプセル24の様々な実施形態を使用した、腸管内の内腔壁(例えば、小腸壁)の中への送達のために構成された、本明細書に説明した多くの他の治療剤(および当技術分野で知られているもの)を含んでもよいことを理解されたい。投与量は、説明したものよりも多くても少なくてもよく、本明細書に説明するかまたは当技術分野で知られている1つ以上の方法を使用して調整することができる。実施形態の1つのグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療有効用量のインスリンを含んでもよい。インスリンは、当技術分野で知られているように、ヒトまたは合成由来であってもよい。一実施形態では、調製物は、約1~10単位の範囲(1単位は、約45.5μgの純結晶インスリンの生物学的等価物である)の治療有効量のインスリンを含有し得、特定の範囲は、2~4、3~9、4~9、5~8、または6~7である。調製物中のインスリンの量は、以下の因子(ここでは「グルコース制御滴定因子」)の1つ以上に基づいて滴定することができる:i)患者の状態(例えば、1型糖尿病対II型糖尿病、ii)患者の血糖制御の以前の全体的なレベル、iii)患者の体重、iv)患者の年齢、v)投与量の頻度(例えば、1日1回対複数回)、vi)時刻(例えば、朝対夕方)、vii)特定の食事(朝食対夕食)、viii)特定の食事の内容/血糖指数(例えば、高脂肪/脂質および糖含量の食事(血糖の急激な上昇を引き起こす傾向があり、したがって血糖指数が高い)対しない低脂肪および糖含量の食事(したがって血糖指数が低い))、およびix)患者の全体的な食生活の内容(例えば、毎日消費される糖質および他の炭水化物、脂質、ならびにタンパク質の量)。
【0072】
実施形態の別のグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療有効用量の1つ以上のインクレチンを含んでもよい。このようなインクレチンには、グルカコン様ペプチド1(GLP-1)およびそれらの類似体、ならびに胃抑制ペプチド(GIP)が含まれ得る。好適なGLP-1類似体には、エキセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチド、ならびにそれらの類似体、誘導体および他の機能的等価物が含まれる。一実施形態では、調製物は、約1~10μgの範囲の治療有効量のエキセナチドを含有し得、特定の範囲は、それぞれ、2~4、4~6、4~8、および8~10μgである。別の実施形態では、調製物は、約1~2mg(ミリグラム)の範囲の治療有効量のリラグルチドを含有し得、特定の範囲は、それぞれ、1.0~1.4、1.2~1.6、および1.2~1.8mgである。エキセナチド、リラグルチド、もしくは他のGLP-1類似体、またはインクレチンの用量範囲を滴定するために、グルコース制御滴定因子のうちの1つ以上を適用することができる。
【0073】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療剤の組み合わせを含んでもよい。そのような組み合わせの実施形態には、治療有効用量のインクレチンおよびビグアニド化合物が含まれ得る。インクレチンは、エキセナチドなどの本明細書に説明した1つ以上のGLP-1類似体を含み得、ビグアニドは、メトホルミン(例えば、Merck Sante S.A.S.によって製造されるGLUCOPHAGEの商標で入手可能である)ならびにその類似体、誘導体、および他の機能的等価物を含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約1~10μgの範囲の治療有効量のエキセナチドと、約1~3グラムの範囲の治療有効量のメトホルミンとの組み合わせを含んでもよい。エキセナチド(または他のインクレチン)およびメトホルミンまたは他のビグアニドのそれぞれの用量を滴定するために使用されるグルコース制御滴定因子のうちの1つ以上を用いて、より小さな範囲およびより大きな範囲も考えられる。追加的に、エキセナチドまたは他のインクレチンおよびメトホルミンまたは他のビグアニドの投与量をマッチングさせて、数時間(例えば、12)から1日から数日までの範囲の長期間にわたる患者のグルコース制御のレベルを改善することができ(例えば、正常な生理学的レベル内の血糖の維持および/または高血糖および/または低血糖の場合の出現率および重症度の低減)、さらに長い期間が企図されている。投与量のマッチングはまた、グルコース制御調節因子の使用、ならびにグリコシル化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c、HbA1c、A1C、またはHb1cとして知られている)および長期平均血糖値と相関する他の生体分析物および測定値を使用した患者の血糖値の長期間のモニタリングによっても実現することができる。
【0074】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、1つ以上の成長障害の治療、ならびに創傷治癒のための治療有効用量の成長ホルモンを含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約0.1~4mgの範囲の治療有効量の成長ホルモンを含有し得、特定の範囲は、0.1~1、1~4、1~2、および2~4であり、さらに大きな範囲が企図されている。特定の用量は、以下のうちの1つ以上に基づいて滴定することができる:i)治療する特定の状態およびその重症度(例えば、発育不全対創傷治癒)、ii)患者の体重、iii)患者の年齢、およびiv)投与量の頻度(例えば、毎日対1日2回)。
【0075】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、骨粗鬆症または甲状腺障害の治療および/または予防のための治療有効用量の副甲状腺ホルモンを含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約1~40μgの範囲の治療有効量の成長ホルモンを含有してもよく、特定の範囲は、10~20、20~30、30~40、および10~40μgであり、さらに大きな範囲が企図されている。特定の用量は、以下のうちの1つ以上に基づいて滴定することができる:i)治療する特定の状態およびその重症度(例えば、骨密度測定によって決定される骨粗鬆症の程度)、ii)患者の体重、iii)患者の年齢、およびiv)投与量の頻度(例えば、毎日対1日2回)。特定の実施形態は、閉経後の女性における骨粗鬆症の予防を含む、中年(例えば、50歳+)またはそれ以上の年齢の患者における骨粗鬆症の予防のための予防的用量のPTHの送達(例えば、毎日)を企図する。そのような予防的用量は、薬物の長期投与のための骨肉腫のリスクを低減するために、より低い範囲、例えば5~20μgにすることができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかでない限り、複数の指示対象を含んでもよい。単数形の物体への参照は、明示的に述べられていない限り、「唯一の」を意味することを意図しておらず、むしろ「1つ以上」を意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「セット」という用語は、1つ以上の物体の集合を指す。したがって、例えば、物体のセットには、単一の物体または複数の物体が含まれ得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「略」および「約」という用語は、小さな変動を説明および伝えるために使用される。イベントまたは状況と併せて使用されるとき、これらの用語は、イベントまたは状況が正確に発生する場合、およびイベントまたは状況が近い近似で発生する場合を指してもよい。数値と併せて使用されるとき、これらの用語は、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または0.05%以下など、その数値の±10%以下の変動範囲を指してもよい。例えば、「略」整列した は、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、または±0.05°以下など、±10°以下の角度変動の範囲を指してもよい。
【0079】
追加的に、量、比率、および他の数値は、本明細書に範囲形式で提示される場合がある。この範囲形式は、便宜および簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に規定される数値を含むが、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明示的に規定されているかのように含むと柔軟に理解されるべきであることを理解すべきである。例えば、約1~約200の範囲の比率は、明示的に記載された約1および約200の限界を含むが、約2、約3、および約4などの個々の比率、および約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0080】
本発明の様々な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。多くの修正、変形、および改良は、当業者には明らかであろう。例えば、デバイスの実施形態は、様々な小児および新生児の用途、ならびに様々な獣医学の用途に合わせてサイズ決定および別の方法で適合させることができる。また、当業者は、慣例に過ぎない実験を使用して、本明細書に説明されている特定のデバイスおよび方法に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、以下の添付の特許請求の範囲によってカバーされる。
【0081】
一実施形態からの要素、特性、または行為は、他の実施形態からの1つ以上の要素、特性、または行為と容易に再結合または置換されて、本発明の範囲内の多数の追加の実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わされているものとして示されているまたは説明されている要素は、様々な実施形態において、独立した要素として存在してもよい。さらに、要素、特性、構成要素、特徴、行為、ステップなどの任意の肯定的な記載について、本発明の実施形態は、その要素、値、特性、構成要素、特徴、行為、ステップなどの除外を具体的に企図する。したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態の詳細に限定されず、代わりに、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。