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特許7465893配線板の製造方法及び配線板、並びに、成形品の製造方法及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】配線板の製造方法及び配線板、並びに、成形品の製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/20 20060101AFI20240404BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240404BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H05K3/20 Z
H05K3/00 W
H05K3/46 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021561344
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042995
(87)【国際公開番号】W WO2021106713
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019212302
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小清水 和敏
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137070(JP,A)
【文献】特開平10-051108(JP,A)
【文献】特開2018-142750(JP,A)
【文献】特開2018-148150(JP,A)
【文献】特開平07-007242(JP,A)
【文献】特公平07-039230(JP,B2)
【文献】特開2011-180228(JP,A)
【文献】特開2006-285179(JP,A)
【文献】特開2003-264368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/20
H05K 3/00
H05K 3/46
H05K 3/28
B32B 37/02
B29D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
前記第1のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層を形成する第1の硬化工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第2のレジスト材料を硬化して第2のレジスト層を形成する第2の硬化工程と、
前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを熱圧着する熱圧着工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記基板を構成する材料は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂である配線板の製造方法。
【請求項2】
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1及び第2のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層及び第2のレジスト層を形成する硬化工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記基板を構成する材料は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂である配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線板の製造方法であって、
前記第1のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であり、前記第2のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上である配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の配線板の製造方法であって、
前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料は同一の組成を有する配線板の製造方法。
【請求項5】
配線板の製造方法であって、
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
前記第1のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層を形成する第1の硬化工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第2のレジスト材料を硬化して第2のレジスト層を形成する第2の硬化工程と、
前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを熱圧着する熱圧着工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記導体部は、第1の導体部と、第2の導体部と、を含み、
前記配線板は、前記第1及び第2の導体部の間に介在する絶縁層を備え、
前記第2の形成工程は、
前記樹脂層上に前記第2の導体部を形成することと、
前記第2の導体部の少なくとも一部上に前記絶縁層を形成することと、
前記樹脂層及び前記絶縁層上に前記第1の導体部を形成することと、を含む配線板の製造方法。
【請求項6】
配線板の製造方法であって、
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1及び第2のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層及び第2のレジスト層を形成する硬化工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記導体部は、第1の導体部と、第2の導体部と、を含み、
前記配線板は、前記第1及び第2の導体部の間に介在する絶縁層を備え、
前記第2の形成工程は、
前記樹脂層上に前記第2の導体部を形成することと、
前記第2の導体部の少なくとも一部上に前記絶縁層を形成することと、
前記樹脂層及び前記絶縁層上に前記第1の導体部を形成することと、を含む配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の配線板の製造方法と、
前記配線板の製造方法により製造された配線板の少なくとも一部を立体的に成形して成形部を形成する成形工程と、を備え、
前記導体部の少なくとも一部は、前記成形部に配置されている成形品の製造方法。
【請求項8】
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
前記第1のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層を形成する第1の硬化工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第2のレジスト材料を硬化して第2のレジスト層を形成する第2の硬化工程と、
前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを熱圧着する熱圧着工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記第1の配置工程の前に、前記基板の少なくとも一部を立体的に成形して成形部を形成する成形工程を備え、
前記導体部の少なくとも一部は、前記第1及び第2のレジスト層を介して、前記成形部に配置されている成形品の製造方法。
【請求項9】
基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、
離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、
前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、
前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、
前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記第1及び第2のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層及び第2のレジスト層を形成する硬化工程と、
前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備え、
前記第1の配置工程の前に、前記基板の少なくとも一部を立体的に成形して成形部を形成する成形工程を備え、
前記導体部の少なくとも一部は、前記第1及び第2のレジスト層を介して、前記成形部に配置されている成形品の製造方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に設けられた第1のレジスト層と、
前記第1のレジスト層上に設けられた第2のレジスト層と、
前記第2のレジスト層上に設けられた導体部と、
前記導体部の少なくとも一部を覆うように前記第2のレジスト層上に設けられたオーバーコート層と、
を備え、
前記基板を構成する材料は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂である配線板。
【請求項11】
請求項10に記載の配線板であって、
前記第1のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であり、
前記第2のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上である配線板。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の配線板であって、
前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層は、同一の組成を有する材料から構成されている配線板。
【請求項13】
配線板であって、
基板と、
前記基板上に設けられた第1のレジスト層と、
前記第1のレジスト層上に設けられた第2のレジスト層と、
前記第2のレジスト層上に設けられた導体部と、
前記導体部の少なくとも一部を覆うように前記第2のレジスト層上に設けられたオーバーコート層と、
を備え、
前記導体部は、第1の導体部と、第2の導体部と、を含み、
前記配線板は、前記第1及び第2の導体部の間に介在する絶縁層を備え、
前記第1の導体部は、前記第2のレジスト層上に形成されており、
前記第2の導体部は、前記第2のレジスト層及び前記絶縁層上に形成されている配線板。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の配線板を備えた成形品であって、
前記配線板は、前記配線板の少なくとも一部を立体的に成形した成形部を備え、
前記導体部の少なくとも一部は、前記成形部に配置されている成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品用の配線板の製造方法及び成形品用の配線板、並びに、成形品の製造方法及び成形品に関するものである。
文献の参照による組み込みが認められる指定国については、2019年11月25日に日本国に出願された特願2019-212302号に記載された内容を参照により本明細書に組み込み、本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
成形体は、基材と、基材上に積層されたアンダーコート層と、アンダーコート層上に積層されたナノカーボン層と、ナノカーボン層上に積層されたオーバーコート層と、を含む導電積層体を成形することで作製されている(例えば、特許文献1参照)。アンダーコート層、ナノカーボン層、及び、オーバーコート層は、塗液を塗布した後に当該塗液を加熱して乾燥させることを繰り返すことによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/208371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような成形用の導電積層体では、基材としてポリカーボネート樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂)等の耐熱性が低く線膨張係数の大きな樹脂が使用されている。そのため、上記のような導電積層体を作製するために塗液の乾燥工程を繰り返すと、上記の樹脂から成る基材が繰り返し加熱され、基材に収縮や歪みが発生してしまうことで、ナノカーボン層に破断が生じてしまう場合がある、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、導体部における破断の発生の抑制を図ることができる配線板の製造方法及び配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明における配線板の製造方法は、基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、前記第1のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層を形成する第1の硬化工程と、離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、前記第2のレジスト材料を硬化して第2のレジスト層を形成する第2の硬化工程と、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ工程の後、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層とを熱圧着する熱圧着工程と、前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備える配線板の製造方法である。
【0007】
[2]本発明における配線板の製造方法は、基板上に第1のレジスト材料を配置する第1の配置工程と、離型フィルム上に樹脂層を形成する第1の形成工程と、前記樹脂層上に導体部を形成する第2の形成工程と、前記導体部を覆うように前記樹脂層上に第2のレジスト材料を配置する第2の配置工程と、前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ工程の後、前記第1及び第2のレジスト材料を硬化して第1のレジスト層及び第2のレジスト層を形成する硬化工程と、前記離型フィルムを前記樹脂層から剥離する剥離工程と、を備える配線板の製造方法である。
【0008】
[3]上記発明において、前記第1のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であり、前記第2のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であってもよい。
【0009】
[4]上記発明において、前記第1のレジスト材料と前記第2のレジスト材料は同一の組成を有していてもよい。
【0010】
[5]上記発明において、前記導体部は、第1の導体部と、第2の導体部と、を含み、前記配線板は、前記第1及び第2の導体部の間に介在する絶縁層を備え、前記第2の形成工程は、前記樹脂層上に前記第2の導体部を形成することと、前記第2の導体部の少なくとも一部上に前記絶縁層を形成することと、前記樹脂層及び前記絶縁層上に前記第1の導体部を形成することと、を含んでいてもよい。
【0011】
[6]上記発明において、前記基板を構成する材料は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0012】
[7]本発明における成形品の製造方法は、上記の配線板の製造方法と、前記配線板の製造方法により製造された配線板の少なくとも一部を立体的に成形して成形部を形成する成形工程と、を備え、前記導体部の少なくとも一部は、前記成形部に配置されている成形品の製造方法である。
【0013】
[8]本発明における成形品の製造方法は、上記の配線板の製造方法を備えた成形品の製造方法であって、前記第1の配置工程の前に、前記基板の少なくとも一部を立体的に成形して成形部を形成する成形工程を備え、前記導体部の少なくとも一部は、前記第1及び第2のレジスト層を介して、前記成形部に配置されている成形品の製造方法である。
【0014】
[9]本発明における配線板は、基板と、前記基板上に設けられた第1のレジスト層と、前記第1のレジスト層上に設けられた第2のレジスト層と、前記第2のレジスト層上に設けられた導体部と、前記導体部の少なくとも一部を覆うように前記第2のレジスト層上に設けられたオーバーコート層と、を備える配線板である。
【0015】
[10]上記発明において、前記第1のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であり、かつ、前記第2のレジスト層は、100℃における破断伸度が50%以上であってもよい。
【0016】
[11]上記発明において、前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層は、同一の組成を有する材料から構成されていてもよい。
【0017】
[12]上記発明において、前記導体部は、第1の導体部と、第2の導体部と、を含み、前記配線板は、前記第1及び第2の導体部の間に介在する絶縁層を備え、前記第1の導体部は、前記第2のレジスト層上に形成されており、前記第2の導体部は、前記第2のレジスト層及び前記絶縁層上に形成されていてもよい。
【0018】
[13]上記発明において、前記基板を構成する材料は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0019】
[14]本発明における成形品は、上記の配線板を備えた成形品であって、前記配線板は、前記配線板の少なくとも一部を立体的に成形した成形部を備え、前記導体部の少なくとも一部は、前記成形部に配置されている成形品である。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、基板上で、樹脂層、導体部、第2のレジスト層の形成を行うことなく、離型フィルム上にこれらの層を形成してから基板上に転写するため、基板に対して繰り返し加熱を行うことがない。従って、本発明であれば、基板の収縮や歪みの発生の抑制することで、導体部における破断の発生の抑制を図ることができる。また、第2のレジスト層を基板に直接貼り付けると、十分な剥離強度が得られず、基板から第2のレジスト層が剥離してしまうが、本発明では、第1のレジスト層を介して第2のレジスト層を基板に転写するため、十分な剥離強度を得ることができ、上記のような剥離の発生の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態における配線板を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態における成形品を示す平面図である。
図4図4は、図3のIV- IV線に沿った断面を示す断面図である。
図5図5(a)~図5(j)は、本発明の実施形態における配線板の第1の製造方法を示す断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、図5(i)に示す熱圧着工程を詳細に説明する断面図である。
図7図7(a)~図7(c)は、本発明の実施形態における成形品の製造方法の成形工程を示す断面図である。
図8図8(a)~図8(i)は、本発明の実施形態における配線板の第2の製造方法を示す断面図である。
図9図9(a)~図9(l)は、本発明の実施形態における成形品の製造方法の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本実施形態における配線板1を示す平面図であり、図2図1のII-II線に沿った断面を示す断面図である。本実施形態における配線板1は、本発明における「配線板」の一例に相当する。
【0024】
本実施形態における配線板1は、熱成形や真空成形されることで、所定の三次元形状に成形される成形用の配線板である。配線板1は、成形された後に電子機器等に組み込まれる。本実施形態の配線板1は、静電容量方式のタッチセンサ等に用いられる。なお、配線板1及びその成形品の用途として、上記実施形態では静電容量式のタッチセンサを例示したがこれに限定されない。
【0025】
図2に示すように、配線板1は、基板10と、第1のレジスト層20と、第2のレジスト層30と、第1の導体部41と、絶縁層50と、第2の導体部61と、オーバーコート層70と、を備えている。本実施形態における基板10が本発明における「基板」の一例に相当し、本実施形態における第1のレジスト層20が本発明における「第1のレジスト層」の一例に相当し、本実施形態における第2のレジスト層30が本発明における「第2のレジスト層」の一例に相当する。また、本実施形態における第1の導体部41が本発明における「第1の導体部」の一例に相当し、本実施形態における第2の導体部61が本発明における「第2の導体部」の一例に相当し、本実施形態における絶縁層50が本発明における「絶縁層」の一例に相当し、本発明におけるオーバーコート層70が本発明における「オーバーコート層」の一例に相当する。
【0026】
基板10は、薄板形状を有しており、真空成形や熱成形などの成形加工に用いられる成形用のフィルムである。本実施形態の基板10は、100℃~200℃程度で軟化する熱可塑性樹脂で構成されている。基板10を構成する熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、又はポリアリレート樹脂等を挙げることができる。この基板10は、上記の軟化する温度まで加熱された後に、金型等によって所定の立体形状に成形され、その後冷却されることで、立体形状を保ったまま固体化される。
【0027】
第1のレジスト層20は、基板10上に形成されており、常温(例えば、27℃)において固体である。この第1のレジスト層20を構成する材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を挙げることができる。因みに、ホットメルト及び粘着テープは、成形時に80℃以上に加熱されると融解して、基板10から剥離したり、破断したりしてしまうため、第1のレジスト層20を構成する材料として、ホットメルトや粘着テープを使用することはできない。このように、ホットメルト及び粘着テープが剥離又は破断すると、第1及び第2の導体部41,61やオーバーコート層70に破断が生じてしまう場合がある。また、ホットメルト及び粘着テープが剥離又は破断すると、基板10から、第1及び第2の導体部41,61やオーバーコート層70が剥離してしまう場合もある。
【0028】
また、第1のレジスト層20は、100℃における破断伸度Eが50%以上であることが好ましい(E≧50%)。第1のレジスト層20が100℃において50%以上の破断伸度を有することで、成形時の基板10の変形に第1のレジスト層20がより確実に追従することができるため、第1のレジスト層20の基板10からの剥離や、第1及び第2の導体部41,61及びオーバーコート層70の破断が一層生じ難くなる。
【0029】
なお、第1のレジスト層20の破断伸度は、JIS K 7161-1及びJIS K 7161-2に準拠する測定方法を用いて測定することができる。特に限定されないが、例えば、島津製作所製の恒温槽内引張試験装置を用いて、雰囲気温度を100℃に設定した恒温槽内で第1のレジスト層20と同一材料からなる試験片の破断伸度を測定すればよい。
【0030】
また、第1のレジスト層20のガラス転移温度Tgは、100℃以下であることが好ましい(Tg≦100℃)。第1のレジスト層20が100℃以下で軟化するものであることで、成形時の基板10の変形に第1のレジスト層20がより確実に追従することができるため、第1のレジスト層20の基板10からの剥離や、第1及び第2の導体部41,61の破断が一層生じ難くなる。
【0031】
第2のレジスト層30は、第1のレジスト層20上に形成されており、常温において固体である。第2のレジスト層30を構成する材料としては、第1のレジスト層20を構成する材料と同様のものを用いることができる。
【0032】
本実施形態では、第1のレジスト層20を構成する材料と、第2のレジスト層30を構成する材料と同一の組成を有している。このように、第1及び第2のレジスト層20,30を構成する材料が同一の組成を有することで、第1及び第2のレジスト層20,30の間の接着強度の向上を一層図ることができる。
【0033】
また、この第2のレジスト層30は、第1のレジスト層20と同様に、100℃における破断伸度Eが50%以上であることが好ましい(E≧50%)。第2のレジスト層30が100℃において50%以上の破断伸度を有することで、成形時の基板10の変形に第2のレジスト層30がより確実に追従することができるため、第2のレジスト層30の基板10からの剥離や、第1及び第2の導体部41,61の破断が一層生じ難くなる。
【0034】
また、第2のレジスト層30のガラス転移温度Tgは、第1のレジスト層20と同様に、100℃以下であることが好ましい(Tg≦100℃)。第2のレジスト層30も、100℃以下で軟化するものであることで、成形時の基板10の変形に第2のレジスト層30がより確実に追従することができるため、第2のレジスト層30の基板10からの剥離や、第1及び第2の導体部41,61の破断が一層生じ難くなる。
【0035】
なお、第1のレジスト層20を構成する材料と第2のレジスト層30を構成する材料は、異なる組成を有していてもよい。この場合、第1のレジスト層20を構成する材料と、第2のレジスト層30を構成する材料としては、互いに相溶するレジスト材料を用いることができる。
【0036】
図1に示すように、それぞれの第1の導体部41は、図中のX方向に沿って延在する直線状の配線である。この複数の第1の導体部41は、Y方向に沿って並んでいる。図2に示すように、複数の第1の導体部41は、第2のレジスト層30に埋設されている。
【0037】
また、図1及び図2に示すように、Z方向から見た平面視において、第1の導体部41において第2の導体部61と交差する部分は、絶縁層50によって覆われており、第2の導体部61から電気的に絶縁されている。一方で、第1の導体部41において第2の導体部61と交差していない部分は、オーバーコート層70に覆われている。
【0038】
この第1の導体部41の両端には第1の接続部42が配置されており、この第1の接続部42は第1の導体部41と一体的に形成されている。第1の接続部42は、第2のレジスト層30から離れる方向に突出した凸形状を有しており、オーバーコート層70から露出している。この第1の接続部42は、特に限定されないが、電子機器との接続端子として用いることができる。
【0039】
第1の導体部41は、導電性粒子がバインダ中に分散されることで構成されており、高い伸び率を有している。ここでは、第1の導体部41に含まれるバインダが高い伸び率を有する材料により構成されることで、第1の導体部41も高い伸び率を有している。このようなバインダとしては、エラストマーを用いることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、これらの2種以上の複合体等を用いることができる。導電性粒子としては、金、銀、白金、ルテニウム、鉛、錫、亜鉛、ビスマス等の金属又はこれらの合金からなる金属材料、若しくは、カーボン等の非金属材料を用いることができる。導電性粒子の形状としては、片鱗状又は不定状とされた形状であることが好ましい。
【0040】
第1の接続部42は、第1の導体部41と同一の材料から構成されている。なお、配線板1の用途に応じて、第1の接続部42に含まれる導電性粒子と、第1の導体部41に含まれる導電性粒子の種類を異なるものとしてもよい。例えば、特に限定されないが、第1の接続部42に含まれる導電性粒子としてカーボンを用い、第1の導体部41に含まれる導電性粒子として銀を用いてもよい。
【0041】
絶縁層50は、第1の導体部41と、第2の導体部61と、の間に介在しており、両者を電気的に絶縁している。この絶縁層50を構成する材料としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂を例示することができる。また、絶縁層50は、100℃における破断伸度Eが50%以上であることが好ましい(E≧50%)。上記と同様に、成形時の基板10の変形に絶縁層50をより確実に追従させるためである。また、絶縁層50のガラス転移温度Tgは、例えば、100℃以下である。
【0042】
図1に示すように、それぞれの第2の導体部61は、図中のY方向に沿って延在する直線状の配線である。この複数の第2の導体部61は、X方向に沿って並んでいる。それぞれの第2の導体部61は、平面視において、第1の導体部41と直交している。図2に示すように、第2の導体部61は、第2のレジスト層30上及び絶縁層50上に設けられており、オーバーコート層70に覆われている。
【0043】
この第2の導体部61の両端には第2の接続部62が配置されており、この第2の接続部62は第2の導体部61と一体的に形成されている。第2の接続部62は、第2のレジスト層30から離れる方向に突出した凸形状を有しており、オーバーコート層70から露出している。この第2の接続部62は、特に限定されないが、電子機器との接続端子として用いることができる。
【0044】
第2の導体部61及び第2の接続部62を構成する材料としては、特に限定されないが、第1の導体部41及び第2の接続部62と同一の伸び率を有する導電性材料を用いることができる。
【0045】
オーバーコート層70は、第2のレジスト層30上に設けられていると共に、第1及び第2の導体部41,61を覆っている。このオーバーコート層70には、一方の主面から他方の主面まで貫通する孔701が複数形成されており、当該孔701の内部には、第1及び第2の接続部42,62が形成されている。
【0046】
オーバーコート層70を構成する材料としては、特に限定されないが、上記の絶縁層50と同様の樹脂材料を挙げることができる。また、オーバーコート層70は、100℃における破断伸度Eが50%以上であることが好ましい(E≧50%)。上記と同様に、成形時の基板10の変形にオーバーコート層70をより確実に追従させるためである。また、オーバーコート層70のガラス転移温度Tgは、例えば、100℃以下である。
【0047】
図3は本発明の実施形態における成形品を示す平面図であり、図4図3のIV-IV線に沿った断面を示す断面図である。以下、成形品1aの配線板1に対する相違点についてのみ説明し、配線板1と同様の構成である部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図3及び図4に示すように、成形品1aは、上記の平面的な形状を有する配線板1を、真空成形や熱成形等によって、立体的な形状に成形することで作製されたものである。
【0049】
図3及び図4に示すように、成形品1aは、立体的な形状に成形された成形部Mと、成形されておらず平面的な形状を有している非成形部Nと、を有している。本実施形態における成形品1aが本発明における「成形品」の一例に相当し、本実施形態における成形部Mが本発明における「成形部」の一例に相当する。
【0050】
成形部Mは、矩形の平面形状を有しているとともに、成形品1aの中央部分に配置されている。この成形部Mは、Z方向に屈曲する屈曲部Mと、平坦部Mと、から構成されている。屈曲部Mは、平坦部Mの外周に沿って配置されていると共に、平坦部Mの外周と接続している。このため、成形部Mは、Z方向に突出した凸形状の外形を有している。
【0051】
成形部Mには、第1及び第2の導体部41,61が配置されている。成形部Mにおいて、第1及び第2の導体部41,61の形状は、成形部Mの立体的形状に対応している。
【0052】
一方で、非成形部Nは、枠状の平面形状を有しており、成形品1aの外周部分に配置されている。この非成形部Nは、全体が平面的な形状を有しており、凸形状を有する部分や凹形状を有する部分を有していない。
【0053】
なお、本実施形態の成形品1aは、成形部MがZ方向に突出する立体形状を有しているがこれに限定されず、成形品1aの用途に応じて、適宜、成形品1aの形状を選択することができる。
【0054】
次に、上記のような成形品1aの製造方法を図5図9を参照しながら説明する。
【0055】
<<第1の製造方法>>
図5(a)~図5(j)は本実施形態における配線板1の第1の製造方法を示す断面図であり、図6(a)及び図6(b)は図5(i)に示す熱圧着工程を詳細に説明する断面図であり、図7(a)~図7(c)は本実施形態における成形品の製造方法の成形工程を示す断面図である。
【0056】
まず、図5(a)に示すように、基板10上に第1のレジスト材料200を配置する。基板10としては、上記の熱可塑性樹脂を用いることができ、第1のレジスト材料としては、上記のレジスト材料を用いることができる。
【0057】
第1のレジスト材料200は、例えば、塗布によって基板10上に配置される。塗布方法として、具体的には、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。本実施形態の図5(a)に示すステップが、本発明における「第1の配置工程」の一例に相当する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、第1のレジスト材料200を硬化させて、第1のレジスト層20を形成する。第1のレジスト材料200の硬化方法としては、例えば、紫外線、赤外線レーザ光等のエネルギ線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を採用することができる。また、硬化方法として加熱を用いる場合には、例えば、遠赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、第1のレジスト材料200を80℃~100℃に加熱することで、第1のレジスト材料200を硬化させることができる。本実施形態の図5(b)に示すステップが、本発明における「第1の硬化工程」の一例に相当する。
【0059】
次に、図5(c)に示すように、上記の基板10とは別に、離型フィルム80を準備し、当該離型フィルム80上にオーバーコート層70を形成する。この際、離型フィルム80上において、上記の孔701が配置される部分には、オーバーコート層70を形成しない。
【0060】
離型フィルム80は、離型処理が施された樹脂フィルムであり、特に限定されないが、例えば、離型処理PETフィルムを離型フィルム80として用いることができる。離型処理としては、例えば、樹脂フィルム上に離型剤を塗布し、塗布した離型剤を乾燥させることで離型材層を形成する方法を挙げることができる。離型剤としては、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等を挙げることができる。
【0061】
オーバーコート層70は、上述のオーバーコート層70を構成する材料を離型フィルム80上に塗布し、これを硬化させることで形成される。塗布方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。硬化方法としては、紫外線、赤外線レーザ光等のエネルギ線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を採用することができる。また、硬化方法として加熱を用いる場合には、例えば、IR炉を用いて、オーバーコート層70を構成する材料を100℃~150℃に加熱することで、オーバーコート層70形成することができる。
【0062】
本実施形態における離型フィルム80が本発明における「離型フィルム」の一例に相当し、本実施形態におけるオーバーコート層70が本発明における「樹脂層」の一例に相当し、本実施形態の図5(c)に示すステップが本発明における「第1の形成工程」の一例に相当する。
【0063】
次に、図5(d)に示すように、オーバーコート層70上に第2の導体部61を形成する。このとき、孔701の内部には、第2の接続部62を形成する。
【0064】
第2の導体部61は、導電性ペーストをオーバーコート層70上に塗布し、これを硬化させることで形成される。この際、導電性ペーストは、オーバーコート層70の孔701の内部にも充填され、硬化される。こうした導電性ペーストの具体例としては、導電性粒子、バインダ、水もしくは溶剤、及び各種添加剤を混合して構成する導電性ペーストを例示することができる。導電性ペーストに含まれる溶剤としては、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、イソホロン、テルピネオールを例示することができる。導電性ペーストの塗布方法及び硬化方法は、オーバーコート層70の形成時と同様の方法を用いることができる。
【0065】
次に、図5(e)に示すように、第2の導体部61の一部上に絶縁層50を形成する。絶縁層50は、後述の図5(f)の工程において、第2の導体部61の上面のうち、第1の導体部41が形成される部分に形成される。この絶縁層50は、オーバーコート層70と同様の材料から構成されており、オーバーコート層70と同様の塗布方法及び硬化方法により形成することができる。
【0066】
次に、図5(f)に示すように、第1の導体部41を形成する。第1の導体部41は、上記の絶縁層50上及びオーバーコート層70上に形成される。なお、図5(f)に示す断面図では、第1の導体部41においてオーバーコート層70上に形成されている部分は図示されていない。また、図5(f)の断面には図示されていないが、このとき、第1の接続部42が、オーバーコート層70の孔701内に形成される。
【0067】
この第1の導体部41及び第1の接続部42は、第2の導体部61及び第2の接続部62と同様の材料から構成されており、上記の第2の導体部61及び第2の接続部62と同様の方法により形成することができる。また、本実施形態における図5(d)~図5(f)に示すステップが、本発明における「第2の形成工程」の一例に相当する。
【0068】
次に、図5(g)に示すように、第1及び第2の導体部41,61、第1及び第2の接続部42,62及びオーバーコート層70上に、第2のレジスト材料300を配置する。第2のレジスト材料300としては、第1のレジスト材料200と同一の組成を有するものを用いることができる。また、第2のレジスト材料300は、第1のレジスト材料200と同様に、塗布により配置することができる。本実施形態における図5(g)に示すステップが、本発明における「第2の配置工程」の一例に相当する。
【0069】
次に、図5(h)に示すように、第2のレジスト材料300を硬化させて、第2のレジスト層30を形成する。第2のレジスト材料300の硬化方法としては、上記の第1のレジスト材料200の硬化方法と同様の方法を用いることができる。本実施形態における図5(h)に示すステップが、本発明における「第2の硬化工程」の一例に相当する。
【0070】
次に、図5(i)に示すように、第1のレジスト層20と第2のレジスト層30とを貼り合わせた後に、両者を熱圧着する。ここで、本実施形態における熱圧着方法を、図6(a)及び図6(b)を参照しながら詳細に説明する。
【0071】
本実施形態における熱圧着方法には、図6(a)に示すような熱圧着機900を用いることができる。熱圧着機900は、圧着ヘッド901と、圧着台902と、を有している。圧着ヘッド901は、不図示のヒータを備えており、圧着ヘッド901の温度を所定の温度まで上昇させる機能を有している。また、圧着ヘッド901は、圧着台902に対して相対的に接近することで、圧着台902上に載置された被圧着物を圧着台902に向かって押圧することができる。
【0072】
この熱圧着機900を用いる熱圧着方法では、まず、図6(a)に示すように、第1のレジスト層20と第2のレジスト層30とを貼り合わせて作製された中間体100を、圧着台902上に載置する。本実施形態の図6(a)に示すステップが、本発明における「貼り合わせ工程」の一例に相当する。
【0073】
次に、図6(b)に示すように、圧着ヘッド901を所定の温度まで加熱した後に、圧着ヘッド901を中間体100に押し当てる。これにより、第1のレジスト層20と第2のレジスト層30とが熱圧着される。
【0074】
この熱圧着において、圧着ヘッド901の温度は、例えば、100℃~150℃とすることができ、圧着時間は、例えば、10秒~120秒とすることができる。この際、中間体100の第1及び第2のレジスト層20,30は、80℃~130℃まで加熱される。本実施形態の図6(b)に示すステップが、本発明における「熱圧着工程」の一例に相当する。
【0075】
次に、図5(j)に示すように、離型フィルム80をオーバーコート層70から剥離し、配線板1を作製する。本実施形態における図5(j)に示すステップが、本発明における「剥離工程」の一例に相当する。
【0076】
次に、以上のようにして作製した配線板1を図7(a)~図7(c)に示すように熱成形することで、本実施形態の成形品1aを製造することができる。
【0077】
図7(a)に示すように、本実施形態の熱成形では金型950を用いる。この金型950は、相互に嵌合する凸型951及び凹型952を有していると共に、凸型951及び凹型952のそれぞれの嵌合面953,954が成形品1aの立体形状に対応した形状を有している。
【0078】
このような金型950を用いた熱成形方法では、図7(b)に示すように、凸型951及び凹型952を所定の温度まで昇温した後に、凸型951及び凹型952の嵌合面953,954で配線板1を上下から挟み込む。
【0079】
この時、金型950の温度は、基板10が変形できる温度とすればよい。この際、中間体100の第1及び第2のレジスト層20,30は、100℃~200℃まで加熱される。
【0080】
次に、図7(c)に示すように、凸型951及び凹型952を相互に離間することで、成形品1aが製造される。本実施形態の図7(a)~図7(c)に示すステップが、本発明における「成形工程」の一例に相当する。
【0081】
なお、本実施形態では、成形方法として熱成形を例示したがこれに限定されず、成形方法は真空成形であってもよい。真空成形を用いる場合、配線板1を加熱して軟化させた後に、上記の凸型951と同様の形状を有する金型に配線板1を真空吸着する。その後、配線板1を金型に沿った形状としたまま冷却する。これにより、上記の成形品1aを作製することができる。
【0082】
以上のように、本実施形態では、基板10に対して加熱を繰り返し行うことなく、離型フィルム80上に複数の層(第1及び第2の導体部41,61、絶縁層50、及びオーバーコート層70)を形成してから基板10上に転写する。従って、貼り合わせ工程の前まで、基板10から分離して複数の層を形成しており、基板10に繰り返し熱が加わることがないため、基板10の収縮や歪みの発生の抑制し、第1及び第2の導体部41,61の破断の発生の抑制を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態では、基板10側に第1のレジスト層20が形成されているため、第2のレジスト層30と第1のレジスト層20の密着性の向上を図ることができ、成形時において、第1及び第2の導体部41,61、絶縁層50、及びオーバーコート層70が基板10の確実に変形に追従できる。
【0084】
また、本実施形態では、基板10としてポリカーボネート樹脂やABS樹脂のような耐熱性が低く線膨張係数が大きい材料を使用したとしても、基板10の収縮や歪みの発生の抑制を図ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、多層の導体部(第1及び第2の導体部41,61)を形成している。従来、導体部を多層で形成する場合には、基板の加熱回数がより増加して、基板の収縮や歪みがより大きくなってしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、導体部の総数が増加しても、離型フィルム80の加熱回数が増加するだけで、基板10の加熱回数が増加しないため、基板10の収縮や歪みの発生の抑制を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、オーバーコート層70、第1及び第2の導体部41,61が、第1及び第2のレジスト層20,30を介して基板10に接着されている。第1及び第2のレジスト層20,30は、後述するような成形時の温度下でも粘着性を失うことなく、かつ、成形時の温度下でも基板10の変形に追従できる。そのため、成形時に第1及び第2のレジスト層20,30の基板10からの剥離の発生の抑制を図ることができるとともに、第1及び第2の導体部41,61の破断の発生の抑制を図ることができる。これに対して、第1及び第2のレジスト層20,30の代わりにホットメルト又は粘着テープを用いると、ホットメルト及び粘着テープは成形時の温度下で融解してしまうので、基板10の剥離や第1及び第2の導体部41,61の破断が生じてしまう。
【0087】
また、本実施形態の配線板1及び成形品1aは、相互に接着する第1及び第2のレジスト層20,30を有しており、剥離強度の向上を図ることができるため、基板10からの第1及び第2の導体部41,61及びオーバーコート層70の剥離の発生の抑制を図ることができると共に、基板10、第1及び第2の導体部41,61、及びオーバーコート層70の破断の発生の抑制を図ることができる。
【0088】
<<第2の製造方法>>
図8(a)~図8(i)は、本発明の実施形態における配線板1の第2の製造方法を示す断面図である。ここでは、第1のレジスト材料200及び第2のレジスト材料300を硬化させる前に、両者を貼り合わせる点で第1の製造方法と相違するが、それ以外の構成は第1の製造方法と同様である。
【0089】
まず、図8(a)に示すように、基板10上に第1のレジスト材料200を形成する。このステップは、第1の製造方法の図5(a)と同様のステップである。
【0090】
次に、図8(b)~図8(f)に示すように、離型フィルム80上に、オーバーコート層70,第2の導体部61及び第2の接続部62、絶縁層50、第1の導体部41及び第1の接続部42、及び第2のレジスト材料300を、この順に形成する。これらのステップは、第1の製造方法の図5(c)~図5(g)と同様のステップである。
【0091】
次に、図8(g)に示すように、硬化前のペースト状態の第1及び第2のレジスト材料200,300を貼り合わせる。この図8(g)に示すステップが、本発明における「貼り合わせ工程」の一例に相当する。
【0092】
次に、図8(h)に示すように、第1及び第2のレジスト材料200,300を硬化し、第1のレジスト層20及び第2のレジスト層30を形成する。
【0093】
次に、図8(i)に示すように、離型フィルム80をオーバーコート層70及び第2の接続部62から剥離し、配線板1を作製する。このステップは、第1の製造方法の図5(j)と同様のステップである。
【0094】
次に、以上のようにして作製した配線板1を、図7(a)~図7(c)を参照しながら説明した上記の方法により熱成形することで、本実施形態の成形品1aを製造することができる。
【0095】
以上の配線板1及び成形品1aの製造方法では、第1及び第2のレジスト材料200,300を貼り合わせた後に、両者の硬化を行うことから、第1の製造方法と比較して、基板10に対する加熱回数が1回増加するものの、基板上で第1及び第2の導体部とオーバーコート層とを形成する方法と比較して、基板10に対する加熱回数は減少する。従って、この製造方法を用いた場合にも、配線板1及び成形品1aにおいて基板10の収縮や歪みの発生を抑制し、第1及び第2の導体部41,61の破断の発生の抑制を図ることができる。
【0096】
<<第3の製造方法>>
図9(a)~図9(l)は、本発明の実施形態における成形品1aの他の製造方法を示す断面図である。ここでは、貼り合わせ工程の前に予め基板10を成形する点で、配線板1を成形する第1の製造方法と相違するが、それ以外の構成は第1の製造方法と同様である。
【0097】
まず、図9(a)に示すように、基板10を準備する。次に、図9(b)に示すように、基板10を成形する。これにより、基板10に、成形部M及び非成形部Nが形成される。基板10の成形方法としては、上記の熱成形や真空成形を用いることができる。
【0098】
次に、図9(c)に示すように、成形後の基板10上に第1のレジスト材料200を配置し、図9(d)に示すように、第1のレジスト材料200を硬化することで、第1のレジスト層20を形成する。
【0099】
次に、図9(e)~図9(j)に示すように、離型フィルム80上に、オーバーコート層70,第2の導体部61及び第2の接続部62、絶縁層50、第1の導体部41及び第1の接続部42、及び第2のレジスト層30を、この順に形成する。これらのステップは、第1の製造方法の図5(c)~図5(h)と同様のステップである。
【0100】
次に、図9(k)に示すように、第1のレジスト層20と第2のレジスト層30とを貼り合わせた後に、両者を熱圧着する。この時に、離型フィルム80、オーバーコート層70,第2の導体部61、絶縁層50、第1の導体部41、及び第2のレジスト層30は、基板10の立体形状に沿った形状とされる。なお、熱圧着方法としては、上記の図6(a)及び図6(b)と同様の方法を用いることができる。
【0101】
次に、図9(l)に示すように、離型フィルム80をオーバーコート層70及び第2の接続部62から剥離し、配線板1を作製する。このステップは、第1の製造方法の図5(j)と同様のステップである。
【0102】
以上の第3の製造方法においても、第1の製造方法と同様に、基板10上で、加熱を繰り返し行うことなく、離型フィルム80上にこれらの層を形成してから基板10上に転写する。従って、第1の製造方法と同様に、基板10の収縮や歪みの発生を抑制し、第1及び第2の導体部41,61の破断の発生の抑制を図ることができる。
【0103】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0104】
例えば、上記実施形態の導体部は2層の導体部41,61を有しているが、導体部の層数はこれに限定されず、1層でもよいし、3層以上であってもよい。また、上記実施形態の導体部は直線状の配線であるが、導体部の平面形状は、特にこれに限定されず、任意の形状とすることができる。
【0105】
また、上記実施形態の第1の導体部41と第2の導体部61は、電気的に完全に絶縁されているが、これに限定されず、成形品1aの用途に応じて部分的に接続していてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…配線板
1a…成形品
10…基板
20…第1のレジスト層
30…第2のレジスト層
41…第1の導体部
42…第1の接続部
50…絶縁層
61…第2の導体部
62…第2の接続部
70…オーバーコート層
701…孔
80…離型フィルム
M…成形部
N…非成形部
100…中間体
200…第1のレジスト材料
300…第2のレジスト材料
900…熱圧着機
901…圧着ヘッド
902…圧着台
950…金型
951…凸型
952…凹型
953,954…嵌合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9